易開裂性包装用フィルム
【課題】 被包装物の種類、形状にかかわらず、手指で容易に開裂、開封することができる包装用フィルムで、さらには単層フィルム単独で密封性を確保できる包装用フィルムを提供する。
【解決手段】 帯状フィルムの長手方向に設けられた開裂帯にて、該帯状フィルムの幅方向の力により易開裂性の包装用フィルムであって、前記開裂帯は、一対の凹部の組が前記フィルムの長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している。エンボスローラとロックウェル硬度R80以上乃至R130未満の受けローラとの間にフィルムを挟んで走行させることにより、未貫通孔の凹部を形成する。
【解決手段】 帯状フィルムの長手方向に設けられた開裂帯にて、該帯状フィルムの幅方向の力により易開裂性の包装用フィルムであって、前記開裂帯は、一対の凹部の組が前記フィルムの長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している。エンボスローラとロックウェル硬度R80以上乃至R130未満の受けローラとの間にフィルムを挟んで走行させることにより、未貫通孔の凹部を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定位置において、手指の力で容易に開裂、開封することができる包装用フィルムに関し、特に、被包装物が食品やストローのように直接、口に触れるものであるため、外界からの塵、埃、雑菌の侵入を防止する必要がある包装、包装用袋に用いられるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
容器や商品のフィルム包装において、容易に開封できるように、種々の工夫がなされている。端縁をヒートシールして密封した包装袋の場合には、ヒートシール部分に、V字状又はI字状のノッチを切り込み、このノッチ部分から袋を構成しているフィルムに直交するように引裂くことで開封している。しかしながら、Iノッチは、使用者にとってどこに設けられているか見つけにくいという欠点があり、VノッチはV字形の切断片が飛散したり、ゴミが増えるなど、生産者側にとって作業性がよいものではない。このため、ノッチを設けることなく、手指の力で容易に、開裂、開封できる包装材が望まれている。
【0003】
ノッチのような切り込みを設けることなく、易開封性を改善した密封袋としては、例えば、特開平7−206033(特許文献1)に、多数の引っ掻き傷からなる易裂き部分を形成した基材フィルムに他のプラスチックフィルムを積層したフィルムを用いて作製した包装袋で、前記易裂き部分をヒートシールして開封開始位置とすることが提案されている。
【0004】
また、特開平6−8966(特許文献2)には、密封袋において、端縁線に対して、横断方向に多数の細長形状の傷跡を千鳥形に設けた密封袋が提案されている。傷跡群を千鳥状に設けることによって、フィルム端縁のいずれの位置においても傷跡がかかるようになるので、手で容易に切断できるというものである。特開2004−315055(特許文献3)にも、多数の貫通孔からなる微細な傷跡群を袋の周辺部外縁に沿って設けることで、易開封性を付与することが開示されている。
【0005】
上記特許文献1−3のいずれも傷跡群をシール部分に設けることで、ノッチの代りに、フィルムに易裂き性を付与するものである。従って、端縁に設けられた傷痕群に、袋を構成するフィルム面に直交する力を加えてフィルムを引裂くことで、ノッチに相当する開封開始部を形成し、この開封開始部から、フィルム面に直交するように、フィルムを引裂いていくことで、包装袋を開封している。
【0006】
シュリンク包装の場合においても、端縁部が存在する包装形態において、傷痕群を易開封性付与に利用することが行なわれている。例えば、特開平2006−276515(特許文献4)では、フィルム端縁同士をヒートシールすることで円筒状としたシュリンクフィルムにおいて、ミシン目からなる剥離帯をヒートシール部に沿って両側に形成し、且つミシン目を構成する細長形の貫通孔を千鳥状に配列させることで、フィルム端縁にノッチに相当する剥離開始部を形成している。この剥離開始部から、剥離帯を剥離していくことで、円筒形シュリンクフィルムを開裂し、円筒容器からフィルムを剥離できるようにしている。
【0007】
しかし、被包装物全体を包装するシュリンク包装やストレッチ包装では、ノッチに相当する開封開始部を形成できるような端縁が存在しない場合がある。端縁が存在しない包装形態においては、易開封性を付与する方法として、フィルム自体を破断しやすくして、開封開始部を形成する方法が提案されている。
【0008】
例えば、特開平7−60912(特許文献5)に、無数の微細な貫通孔を付した細帯状帯域をフィルムに設け、この細帯域を包装材の流れ方向と平行な方向になるように包装した包装体が提案されている。かかる包装体は、この細帯域でねじったりすることで、容易にフィルムが引裂かれるので、開封できるというものである。
【0009】
また、シュリンク包装体において易開封性を付与したものとしては、手指でフィルムをおさえて破断し、開封口を形成するものがある。例えば、特開2007−210617(特許文献6)では、被包装物に手指を押し込めるような凹部を設け、この凹部を横断するようにヒートシール部を設け、このヒートシール部分に沿って傷痕列を設けることが提案されている。凹部部分を横断している傷跡群を手指で押し込むことにより、フィルムを破断して開封開始部を形成できるので、この開封開始部分から傷痕群に沿って開封できる。
【0010】
特開2006−44797(特許文献7)では、複数の被包装物をシュリンク包装するフィルムで、被包装物間の間隙に、複数本のミシン目を並列的に且つ隣接するミシン目の位相をずらした包装態様が開示されている。被包装物間の間隙のミシン目を指で押さえることにより、ミシン目からフィルムを破断し、開封できるようにしている。
【0011】
以上のように、ミシン目は、破断性に優れているものの、フィルムに貫通孔が連続して多数形成されることになるため、包装内部と外界とがミシン目の貫通孔を通して、空気が流通することになる。このため、被包装物が食品であったり、ストローのような食品関連製品を直接包装する包装用フィルムには適用できない。
【0012】
このように、端縁が存在しないシュリンク包装においては、破断開始部分となる手指で押し込める部分が包装体に必要となる。被包装物によっては、このような押し込み部分を設けることが困難な場合がある。例えば、CDの容器では、容器のコンパクト化の要求から、手指を押し込むための凹部を設けることは望まれていないのが現状である。また、飲料パックのストローの包装用袋のように、小さい被包装物では、手指で押して開けることが困難である。
【0013】
また、ミシン目は、破断性に優れているものの、フィルムに貫通孔が連続して多数形成されることになるため、包装内部と外界とがミシン目の貫通孔を通して、空気が流通することになる。このため、被包装物が食品であったり、ストローのような食品関連製品を直接包装する包装用フィルムには適用できない。
【0014】
未貫通孔を設けて、密封性を確保した包装用袋であって、且つ易開封性を付与した包装袋、包装材としては、例えば、上記特許文献5では、合成樹脂フィルムを、ブラスト処理によってロール表面を紙ヤスリ状にした金属ロールとゴムロールとの間を走行させる、あるいはフィルムを案内する受ロール上を通過させる際に、微細孔加工を施す丸刃アセンブリを加圧して押しつけることで微細な孔、包装材の流れ方向と平行な方向に走る細帯状帯域とした樹脂フィルムを最外層とした積層フィルムが提案されている。また、特許文献2では、エンボスロール等を用いて穿孔加工を行ない、表面に多数の傷痕ないし貫通孔を有する樹脂フィルムを少なくとも1層含む積層体などが提案されている。
【0015】
しかしながら、いずれの特許文献に記載されたものも、貫通孔ないし傷痕を多数付与することで易開裂性部分を形成し、密封性を確保するために、穿孔加工を施していない樹脂フィルム、金属箔、紙などを積層する工程を行なっている。易開裂性のための穿孔加工されたフィルムは、穿孔加工により貫通孔を形成することを必須としているわけではないが、貫通孔でなく、未貫通の傷痕を積極的に形成する方法は特に開示されていない。従って、易開裂性のための穿孔加工を施したフィルム単独で、密封性が高度に要求される食品用包装に適用することはできない。
【0016】
【特許文献1】特開平7−206033
【特許文献2】特開平6−8966
【特許文献3】特開2004−315055
【特許文献4】特開2006−276515
【特許文献5】特開平7−60912
【特許文献6】特開2007−210617
【特許文献7】特開2006−44797
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被包装物の種類、形状にかかわらず、手指で容易に開裂、開封することができる包装用フィルムで、さらには穿孔加工工程の他に新たなフィルム等の積層工程等を行なわなくても密封性を確保できる包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明の易開裂性包装用フィルムは、帯状フィルムの長手方向に設けられた開裂帯にて、該帯状フィルムの幅方向の力により易開裂性の包装用フィルムであって、
前記開裂帯は、一対の凹部の組が前記フィルムの長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している。
【0019】
前記凹部は、前記鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とが交点にて結合して、く字状を形成している未貫通孔であることが好ましく、前記凹部組列を構成する凹部は、千鳥になるように並列されていることが好ましい。
【0020】
また、前記フィルムの厚みは10〜50μmであることが好ましい。
本発明の易開裂性包装用フィルムは、シュリンク包装用、ストレッチ包装用として好適である。
【0021】
本発明の包装用フィルムの製造方法は、未貫通孔からなる易開裂性の開裂帯を有する包装用フィルムの製造方法であって、前記未貫通孔を形成するための凸部が凸設した金属製のエンボスローラと、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満のガイドローラとの間に長尺帯状体のフィルムを挟み込み、前記2つのローラの回転に従って、前記フィルムが走行する工程を含む。
【0022】
前記ガイドローラは、共重合ポリアセタール製であることが好ましく、前記エンボスローラの凸部の先端には凹みが形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の易開裂性包装用フィルムは、開裂帯に交差する力を付与すると、開裂帯が開裂して、容易に開封することができるので、シール部分にノッチ等を設ける必要がない。また、開裂帯を構成する凹部を未貫通孔とすることにより、密封性が要求される包装用途にも使用できる。
本発明の包装用フィルムの製造方法によれば、エンボスローラを用いただけなので、フィルムの引張り工程に凹部形成のためのエンボスローラを設置すればよく、従来のフィルム製造工程から、開裂帯形成のための追加工程、複雑な工程を設けなくてもよく、従来のフィルム製造工程を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の包装用フィルムは、図1に示すように、帯状フィルム1の長手方向に開裂帯2が設けられていて、該帯状フィルム1の開裂帯2を挟んで、幅端縁方向に働く力P(引裂き力に該当し、図中、白矢印で表す)を加えることにより、図2に示すように、開裂帯2に沿って開裂できるフィルムである。図2中、3は開裂した部分であり、この開裂部分は開裂帯2に沿って(点線矢印)広がっていく。
【0025】
開裂帯2は、帯状フィルム1の幅端縁方向に働く力Pを、開裂帯2に沿って伝播できる凹部群からなり、具体的には、2つの凹部からなる凹部組が長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している。
【0026】
上記のような凹部としては、具体的には、図3に示すように、フィルム長手方向(図3中、一点鎖線で示す)に対して鋭角αを形成する細長形状の辺11a(12a)と鈍角βを形成する細長形状の辺11b(12b)とが交点にて結合している、いわゆる角度γのく字状をしたものがある。
このようなく字状凹部11(又は12)は、一方の辺(a又はb)が平行になるように、配置した略同形同大形状の凹部12(又は11)とで一対をなし、凹部組を形成している。角度α、β、γの大きさは特に限定しないが、好ましくは30°<α<60°、120°<β<150°、60°<γ<120°程度である。
【0027】
そして、開裂帯は、凹部組列を構成する凹部11,12が、全体としては、図3に示すように、千鳥になるように並列されている。
【0028】
このような開裂帯は、開裂帯の任意位置において、開裂帯を挟むように、フィルム幅方向の引裂き力P(図中、白矢印)、すなわち開裂帯を押し広げる方向に力を加えると、各く字状凹部11,12は、角度γが大きくなるように広がって、やがて、図4に示すように、隣接する凹部の細長形状の辺と連通して、開裂開口部を形成するようになる。このように、凹部が順に開裂帯に沿って開いていき、隣接の凹部と連通するようになり、結果として、フィルムを開裂帯にて開裂することができる。
【0029】
開裂帯を構成する凹部組列は、1列に限らず、2列以上であってもよい。図5は3列の場合を示している。また、凹部は、図3に示すようなく字状凹部に限定しない。鋭角を形成する辺と鈍角を形成する辺との2つの辺から構成される凹部に限らず、図6に示すように、さらに他の辺を有する凹部であってもよい。また、鋭角を形成する辺と鈍角を形成する辺とが連結してく字を形成しなくても、図7に示すように、2つの楔形辺a、bをく字状に配置したものであってもよい。
【0030】
各凹部は、貫通孔であってもよいが、食品やストローのように、被包装物の衛生性から、包装体内部と外気とが連通しないように、密封性を要する包装用フィルムの場合には、各凹部は未貫通孔であることが好ましい。具体的には、図8に示すように、凹部15の深さtは フィルムの厚みTの1/2以上、好ましくは2/3以上とすることが好ましい。
【0031】
本発明の包装用フィルムは、上記のような構成を有する開裂帯が長手方向に設けられたプラスチックフィルムで、その材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;PET等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系樹脂のフィルム;ポリスチレン等のスチレン系樹脂フィルム;PVA、、EVOH等のビニルアルコール系樹脂フィルム又はこれらを適宜積層してなる積層フィルムなどを用いることができる。これらの樹脂フィルムは、延伸されていてもよいし、無延伸であってもよい。延伸フィルムの場合、一軸延伸であっても、2軸延伸であってもよい。また、熱収縮フィルムであってもよい。
【0032】
フィルムの厚みは、特に限定しないが、通常10〜50μm、好ましくは15〜40μmである。かかる範囲で、フィルム構成樹脂の種類、包装用途等により適宜選択される。10μm未満では、未貫通の凹部を形成することが困難であり、また包装フィルムとしての強度も十分でない。一方、50μmを越えると、開裂帯の開裂力が伝播しにくく、凹部が変形しても、破断しにくくなる。
【0033】
本発明の包装用フィルムは、シュリンク包装、ヒートシールにより端縁をシールする包装袋、ストレッチ包装など、フィルムを利用した種々の包装形態に適用できる。開裂帯に引裂き力を加えやすいように、開裂帯が平面部分に延設されるように、包装することが好ましい。本発明の包装用フィルムは、開裂帯の任意位置に、開裂帯を引裂くフィルム面に沿った力により開裂できるので、開裂開始部を形成するためのフィルム端縁、端縁となるヒートシール部が存在しない包装形態に利用できる。例えば、図9(a)に示すようなCD容器のシュリンク包装、図9(b)に示すような、飲料用紙パックに取付けられるストローの包装、図9(c)に示すような生鮮食料品の容器のストレッチ包装に適用できる。図9中、21,31,41は包装用フィルムであり、22,32、42は開裂帯を示す。
【0034】
尚、上記実施態様では、く字状凹部は貫通孔であって、フィルム強度が確保される限りは貫通孔であってもよい。但し、く字状凹部を未貫通孔とすることにより、密封性が要求される用途、特に食品包装用に利用できる。
【0035】
また、包装体において、開裂帯は1カ所だけ設けられていれば、そこから開封可能であるが、包装体に2カ所以上設けられていてもよい。引裂き力が加えられない限り、そこから開裂することは困難であり、また食品包装の場合にも、凹部を未貫通孔とすることにより、複数の開裂帯を設けたために密封性が損なわれるといったことはない。
【0036】
次に、本発明の未貫通孔の凹部組列からなる開裂帯を備えた包装用フィルムの製造方法について説明する。
本発明の包装用フィルムは、図10に示すように、凹部形成のための凸部51が連続的に配設されたエンボスローラ52と受けローラ53との間に長尺帯状フィルム50を挟みこみ、ローラ52,53の回転に従って、フィルム50を走行させている。フィルム50において、エンボスローラ52により押圧された部分は、凹部が連続的に形成された開裂帯55となる。
【0037】
使用するエンボスローラは、高速度鋼、合金工具鋼等の鋼製、鋳鉄製等の金属製ローラであり、好ましくは鋼製である。高硬度な金属製のエンボスローラ52でフィルム50を押圧することにより、フィルム50に凹部が形成される。それに対して、受けローラ53は、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満、好ましくはR90〜125程度の材料で構成されている。ここで、ロックウェル硬さは、プラスチック(Rスケール)用の市販のロックウェル硬さ試験機を用いて測定できる。ロックウェル硬さR80未満では、破断に必要な深さを有する未貫通孔凹部を形成することができない。一方、R130以上では、例えば金属製ローラでは、凹部は貫通孔となってしまう。フィルム送り速度は80〜150m/分が好ましい。
【0038】
上記受けローラの材質としては、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満の材料、好ましくはR90〜125の材料で、且つ摩擦係数が高くないものが好ましく用いられる。具体的には、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロンなどのエンジニアプラスチックが好ましく用いられる。これらのうち、特にポリアセタール樹脂が好ましい。ポリアセタール樹脂としては、デルリン(登録商標)に代表されるポリオキシメチレンであってもよいし、ジュラコン(登録商標)に代表されるポリアセタール共重合体であってもよいが、好ましくはポリアセタール共重合体である。
【0039】
エンボスローラの凸部の形状は特に限定しないが、有効な開裂帯を形成する観点から、所定角度を形成できる2つの辺を有するもの、好ましくは、く字を有する。また、図6、図7に示す凹部に対応する形状であってもよい。各凸部の断面形状は、図11(a)に示すような断面台形の凸部43であってもよいが、好ましくは、図11(b)に示すように、上底部に窪み44aがある凸部44である。凸部のサイズは特に限定しないが、凸部高さHは、フィルム厚み程度とすることが好ましい。フィルム厚みよりも小さいと、形成される凹部の深さが不十分となり、フィルム厚みよりも高くなると、貫通孔が形成されてしまうからである。
【0040】
以上のような凸部が、上記本発明の包装用フィルムに採用した開裂帯を形成できるように、く字を形成する2つの辺がエンボスローラの周方向に対して鋭角及び鈍角を形成するように配置され、且つく字を形成する2つの辺の交点が相対するように配置したもう一方の凸部とで1対を形成し、全体としては、く字状の凸部が千鳥になるように並列されていることが好ましい。
【0041】
以上のような本発明の方法によれば、同一材質からなる単層樹脂フィルムであっても、未貫通孔の凹部組列からなる開裂帯を備えた包装用フィルムを製造することができる。
【実施例】
【0042】
〔測定評価方法〕
(1)凹部の状態
エンボスローラにより押圧された側のフィルム面(以下、「フィルム表面」という)を上面として、インキを塗布し、フィルムを除去して、白紙にエンボスローラの模様が転写されているかどうかを調べた。フィルムに貫通孔が形成されている場合には、白紙上にエンボスローラの凸部の模様が転写され、未貫通孔の場合には、何も転写されない。
【0043】
(2)開裂性
図1に示すように、開裂帯の両側に両手をおき、フィルム面上で、開裂帯を押し広げるように力を加え、フィルムを開裂のしやすさを、◎(大変容易に開裂できる)、○(少しの力で開裂できる)、△(開裂できるが、かなりの力がいる)、×(開裂できない)の4段階で評価した。
【0044】
〔包装用フィルムの作製〕
フィルムNo.1:
図11(b)に示すような断面を有するく字状凸部(凸部高さH=20mm、頂部窪み深さ1mm)が、図5に示すように千鳥に3組配列した高速度鋼製エンボスローラAを用いた。受けローラとして、直径58mmの鉄製の円柱に、内径58mm、外径72mmのジュラコン製リングを挿通したものを用いた。このようなエンボスローラと受けローラとの間に、厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(興人のシュリンク用フィルムであるポリセット(商品名)を使用)を挟んで、送り速度100m/分でフィルムを走行させ、開裂帯を形成した。
作製した包装用フィルムについて、上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた。結果を表1に示す。
【0045】
フィルムNo.2〜5:
受けローラで使用したジュラコン製リングに代えて、表1に示す材質を有するリングを使用し、No.1と同様にして、開裂帯を形成した。作製した包装用フィルムについて、上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた結果を、併せて表1に示す。
【0046】
参考例1:
エンボスローラとして、図11(a)に示すような断面を有する凸部が1列凸設したエンボスローラ、高速度鋼製受けローラを用いて、ミシン目(貫通孔)が形成されたフィルムである。このフィルムについて、上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた結果を、併せて表1に示す。上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた結果を、表1に示す。
【0047】
参考例2:
フィルムNo.1で用いたエンボスローラを使用し、受けローラとして発泡ウレタン製リングを使用した。フィルムには、エンボスローラの模様はほとんど転写されなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1からわかるように、R100、R120の受けローラを用いて形成したフィルムNO.1,2では、未貫通孔の凹部が形成され、易開裂性も充足できた。しかし、R65以下の軟質材料からなる受けローラを用いて作製したフィルムNo.3、4では、、未貫通孔の凹部からなる開裂帯が形成されたが、凹部深さが不十分なために、開裂性を満足することができなかった。さらに、発泡ウレタン製受けローラを用いた場合、クッション性を有するため、エンボスローラの転動が不安定となり、ローラ間を通過したフィルムには、凹部模様がほとんど形成されていなかった。
【0050】
一方、金属製受けローラを用いて作製したフィルムNo.5では、貫通孔からなる開裂帯が形成され、容易に開裂することができた。しかしながら、貫通孔からなる単なるミシン目が形成された参照例1のフィルムでは、指で押し広げて開裂することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の包装用フィルムは、フィルム面に沿った力で開裂帯の任意位置から開裂して、包装体を開封することができるので、開封開始部となる端縁が存在しないような形態の包装に利用できる。さらに、開裂帯を構成する凹部を未貫通孔とすることにより、密封性が必要とされる食品等の包装用フィルムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の包装用フィルムの構成を示す図である。
【図2】本発明の包装用フィルムの作用を説明するための図である。
【図3】本発明のフィルムの開裂帯の一実施形態を示す図である。
【図4】開裂帯が開裂していく様子を説明するための概略模式図である。
【図5】開裂帯の他の実施形態を示す図である。
【図6】開裂帯の他の実施形態を示す図である。
【図7】開裂帯の他の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の包装用フィルムの断面を示す図である。
【図9】本発明の包装用フィルムの使用例を示す図である。
【図10】本発明の製造方法を説明するための図である。
【図11】本発明の製造方法で用いるエンボスローラの凸部の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 帯状フィルム
2 開裂帯
11,12,13、15 凹部
22,32,3,42 開裂帯
51 凸部
52 エンボスローラ
53 受けローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定位置において、手指の力で容易に開裂、開封することができる包装用フィルムに関し、特に、被包装物が食品やストローのように直接、口に触れるものであるため、外界からの塵、埃、雑菌の侵入を防止する必要がある包装、包装用袋に用いられるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
容器や商品のフィルム包装において、容易に開封できるように、種々の工夫がなされている。端縁をヒートシールして密封した包装袋の場合には、ヒートシール部分に、V字状又はI字状のノッチを切り込み、このノッチ部分から袋を構成しているフィルムに直交するように引裂くことで開封している。しかしながら、Iノッチは、使用者にとってどこに設けられているか見つけにくいという欠点があり、VノッチはV字形の切断片が飛散したり、ゴミが増えるなど、生産者側にとって作業性がよいものではない。このため、ノッチを設けることなく、手指の力で容易に、開裂、開封できる包装材が望まれている。
【0003】
ノッチのような切り込みを設けることなく、易開封性を改善した密封袋としては、例えば、特開平7−206033(特許文献1)に、多数の引っ掻き傷からなる易裂き部分を形成した基材フィルムに他のプラスチックフィルムを積層したフィルムを用いて作製した包装袋で、前記易裂き部分をヒートシールして開封開始位置とすることが提案されている。
【0004】
また、特開平6−8966(特許文献2)には、密封袋において、端縁線に対して、横断方向に多数の細長形状の傷跡を千鳥形に設けた密封袋が提案されている。傷跡群を千鳥状に設けることによって、フィルム端縁のいずれの位置においても傷跡がかかるようになるので、手で容易に切断できるというものである。特開2004−315055(特許文献3)にも、多数の貫通孔からなる微細な傷跡群を袋の周辺部外縁に沿って設けることで、易開封性を付与することが開示されている。
【0005】
上記特許文献1−3のいずれも傷跡群をシール部分に設けることで、ノッチの代りに、フィルムに易裂き性を付与するものである。従って、端縁に設けられた傷痕群に、袋を構成するフィルム面に直交する力を加えてフィルムを引裂くことで、ノッチに相当する開封開始部を形成し、この開封開始部から、フィルム面に直交するように、フィルムを引裂いていくことで、包装袋を開封している。
【0006】
シュリンク包装の場合においても、端縁部が存在する包装形態において、傷痕群を易開封性付与に利用することが行なわれている。例えば、特開平2006−276515(特許文献4)では、フィルム端縁同士をヒートシールすることで円筒状としたシュリンクフィルムにおいて、ミシン目からなる剥離帯をヒートシール部に沿って両側に形成し、且つミシン目を構成する細長形の貫通孔を千鳥状に配列させることで、フィルム端縁にノッチに相当する剥離開始部を形成している。この剥離開始部から、剥離帯を剥離していくことで、円筒形シュリンクフィルムを開裂し、円筒容器からフィルムを剥離できるようにしている。
【0007】
しかし、被包装物全体を包装するシュリンク包装やストレッチ包装では、ノッチに相当する開封開始部を形成できるような端縁が存在しない場合がある。端縁が存在しない包装形態においては、易開封性を付与する方法として、フィルム自体を破断しやすくして、開封開始部を形成する方法が提案されている。
【0008】
例えば、特開平7−60912(特許文献5)に、無数の微細な貫通孔を付した細帯状帯域をフィルムに設け、この細帯域を包装材の流れ方向と平行な方向になるように包装した包装体が提案されている。かかる包装体は、この細帯域でねじったりすることで、容易にフィルムが引裂かれるので、開封できるというものである。
【0009】
また、シュリンク包装体において易開封性を付与したものとしては、手指でフィルムをおさえて破断し、開封口を形成するものがある。例えば、特開2007−210617(特許文献6)では、被包装物に手指を押し込めるような凹部を設け、この凹部を横断するようにヒートシール部を設け、このヒートシール部分に沿って傷痕列を設けることが提案されている。凹部部分を横断している傷跡群を手指で押し込むことにより、フィルムを破断して開封開始部を形成できるので、この開封開始部分から傷痕群に沿って開封できる。
【0010】
特開2006−44797(特許文献7)では、複数の被包装物をシュリンク包装するフィルムで、被包装物間の間隙に、複数本のミシン目を並列的に且つ隣接するミシン目の位相をずらした包装態様が開示されている。被包装物間の間隙のミシン目を指で押さえることにより、ミシン目からフィルムを破断し、開封できるようにしている。
【0011】
以上のように、ミシン目は、破断性に優れているものの、フィルムに貫通孔が連続して多数形成されることになるため、包装内部と外界とがミシン目の貫通孔を通して、空気が流通することになる。このため、被包装物が食品であったり、ストローのような食品関連製品を直接包装する包装用フィルムには適用できない。
【0012】
このように、端縁が存在しないシュリンク包装においては、破断開始部分となる手指で押し込める部分が包装体に必要となる。被包装物によっては、このような押し込み部分を設けることが困難な場合がある。例えば、CDの容器では、容器のコンパクト化の要求から、手指を押し込むための凹部を設けることは望まれていないのが現状である。また、飲料パックのストローの包装用袋のように、小さい被包装物では、手指で押して開けることが困難である。
【0013】
また、ミシン目は、破断性に優れているものの、フィルムに貫通孔が連続して多数形成されることになるため、包装内部と外界とがミシン目の貫通孔を通して、空気が流通することになる。このため、被包装物が食品であったり、ストローのような食品関連製品を直接包装する包装用フィルムには適用できない。
【0014】
未貫通孔を設けて、密封性を確保した包装用袋であって、且つ易開封性を付与した包装袋、包装材としては、例えば、上記特許文献5では、合成樹脂フィルムを、ブラスト処理によってロール表面を紙ヤスリ状にした金属ロールとゴムロールとの間を走行させる、あるいはフィルムを案内する受ロール上を通過させる際に、微細孔加工を施す丸刃アセンブリを加圧して押しつけることで微細な孔、包装材の流れ方向と平行な方向に走る細帯状帯域とした樹脂フィルムを最外層とした積層フィルムが提案されている。また、特許文献2では、エンボスロール等を用いて穿孔加工を行ない、表面に多数の傷痕ないし貫通孔を有する樹脂フィルムを少なくとも1層含む積層体などが提案されている。
【0015】
しかしながら、いずれの特許文献に記載されたものも、貫通孔ないし傷痕を多数付与することで易開裂性部分を形成し、密封性を確保するために、穿孔加工を施していない樹脂フィルム、金属箔、紙などを積層する工程を行なっている。易開裂性のための穿孔加工されたフィルムは、穿孔加工により貫通孔を形成することを必須としているわけではないが、貫通孔でなく、未貫通の傷痕を積極的に形成する方法は特に開示されていない。従って、易開裂性のための穿孔加工を施したフィルム単独で、密封性が高度に要求される食品用包装に適用することはできない。
【0016】
【特許文献1】特開平7−206033
【特許文献2】特開平6−8966
【特許文献3】特開2004−315055
【特許文献4】特開2006−276515
【特許文献5】特開平7−60912
【特許文献6】特開2007−210617
【特許文献7】特開2006−44797
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被包装物の種類、形状にかかわらず、手指で容易に開裂、開封することができる包装用フィルムで、さらには穿孔加工工程の他に新たなフィルム等の積層工程等を行なわなくても密封性を確保できる包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明の易開裂性包装用フィルムは、帯状フィルムの長手方向に設けられた開裂帯にて、該帯状フィルムの幅方向の力により易開裂性の包装用フィルムであって、
前記開裂帯は、一対の凹部の組が前記フィルムの長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している。
【0019】
前記凹部は、前記鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とが交点にて結合して、く字状を形成している未貫通孔であることが好ましく、前記凹部組列を構成する凹部は、千鳥になるように並列されていることが好ましい。
【0020】
また、前記フィルムの厚みは10〜50μmであることが好ましい。
本発明の易開裂性包装用フィルムは、シュリンク包装用、ストレッチ包装用として好適である。
【0021】
本発明の包装用フィルムの製造方法は、未貫通孔からなる易開裂性の開裂帯を有する包装用フィルムの製造方法であって、前記未貫通孔を形成するための凸部が凸設した金属製のエンボスローラと、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満のガイドローラとの間に長尺帯状体のフィルムを挟み込み、前記2つのローラの回転に従って、前記フィルムが走行する工程を含む。
【0022】
前記ガイドローラは、共重合ポリアセタール製であることが好ましく、前記エンボスローラの凸部の先端には凹みが形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の易開裂性包装用フィルムは、開裂帯に交差する力を付与すると、開裂帯が開裂して、容易に開封することができるので、シール部分にノッチ等を設ける必要がない。また、開裂帯を構成する凹部を未貫通孔とすることにより、密封性が要求される包装用途にも使用できる。
本発明の包装用フィルムの製造方法によれば、エンボスローラを用いただけなので、フィルムの引張り工程に凹部形成のためのエンボスローラを設置すればよく、従来のフィルム製造工程から、開裂帯形成のための追加工程、複雑な工程を設けなくてもよく、従来のフィルム製造工程を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の包装用フィルムは、図1に示すように、帯状フィルム1の長手方向に開裂帯2が設けられていて、該帯状フィルム1の開裂帯2を挟んで、幅端縁方向に働く力P(引裂き力に該当し、図中、白矢印で表す)を加えることにより、図2に示すように、開裂帯2に沿って開裂できるフィルムである。図2中、3は開裂した部分であり、この開裂部分は開裂帯2に沿って(点線矢印)広がっていく。
【0025】
開裂帯2は、帯状フィルム1の幅端縁方向に働く力Pを、開裂帯2に沿って伝播できる凹部群からなり、具体的には、2つの凹部からなる凹部組が長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している。
【0026】
上記のような凹部としては、具体的には、図3に示すように、フィルム長手方向(図3中、一点鎖線で示す)に対して鋭角αを形成する細長形状の辺11a(12a)と鈍角βを形成する細長形状の辺11b(12b)とが交点にて結合している、いわゆる角度γのく字状をしたものがある。
このようなく字状凹部11(又は12)は、一方の辺(a又はb)が平行になるように、配置した略同形同大形状の凹部12(又は11)とで一対をなし、凹部組を形成している。角度α、β、γの大きさは特に限定しないが、好ましくは30°<α<60°、120°<β<150°、60°<γ<120°程度である。
【0027】
そして、開裂帯は、凹部組列を構成する凹部11,12が、全体としては、図3に示すように、千鳥になるように並列されている。
【0028】
このような開裂帯は、開裂帯の任意位置において、開裂帯を挟むように、フィルム幅方向の引裂き力P(図中、白矢印)、すなわち開裂帯を押し広げる方向に力を加えると、各く字状凹部11,12は、角度γが大きくなるように広がって、やがて、図4に示すように、隣接する凹部の細長形状の辺と連通して、開裂開口部を形成するようになる。このように、凹部が順に開裂帯に沿って開いていき、隣接の凹部と連通するようになり、結果として、フィルムを開裂帯にて開裂することができる。
【0029】
開裂帯を構成する凹部組列は、1列に限らず、2列以上であってもよい。図5は3列の場合を示している。また、凹部は、図3に示すようなく字状凹部に限定しない。鋭角を形成する辺と鈍角を形成する辺との2つの辺から構成される凹部に限らず、図6に示すように、さらに他の辺を有する凹部であってもよい。また、鋭角を形成する辺と鈍角を形成する辺とが連結してく字を形成しなくても、図7に示すように、2つの楔形辺a、bをく字状に配置したものであってもよい。
【0030】
各凹部は、貫通孔であってもよいが、食品やストローのように、被包装物の衛生性から、包装体内部と外気とが連通しないように、密封性を要する包装用フィルムの場合には、各凹部は未貫通孔であることが好ましい。具体的には、図8に示すように、凹部15の深さtは フィルムの厚みTの1/2以上、好ましくは2/3以上とすることが好ましい。
【0031】
本発明の包装用フィルムは、上記のような構成を有する開裂帯が長手方向に設けられたプラスチックフィルムで、その材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;PET等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系樹脂のフィルム;ポリスチレン等のスチレン系樹脂フィルム;PVA、、EVOH等のビニルアルコール系樹脂フィルム又はこれらを適宜積層してなる積層フィルムなどを用いることができる。これらの樹脂フィルムは、延伸されていてもよいし、無延伸であってもよい。延伸フィルムの場合、一軸延伸であっても、2軸延伸であってもよい。また、熱収縮フィルムであってもよい。
【0032】
フィルムの厚みは、特に限定しないが、通常10〜50μm、好ましくは15〜40μmである。かかる範囲で、フィルム構成樹脂の種類、包装用途等により適宜選択される。10μm未満では、未貫通の凹部を形成することが困難であり、また包装フィルムとしての強度も十分でない。一方、50μmを越えると、開裂帯の開裂力が伝播しにくく、凹部が変形しても、破断しにくくなる。
【0033】
本発明の包装用フィルムは、シュリンク包装、ヒートシールにより端縁をシールする包装袋、ストレッチ包装など、フィルムを利用した種々の包装形態に適用できる。開裂帯に引裂き力を加えやすいように、開裂帯が平面部分に延設されるように、包装することが好ましい。本発明の包装用フィルムは、開裂帯の任意位置に、開裂帯を引裂くフィルム面に沿った力により開裂できるので、開裂開始部を形成するためのフィルム端縁、端縁となるヒートシール部が存在しない包装形態に利用できる。例えば、図9(a)に示すようなCD容器のシュリンク包装、図9(b)に示すような、飲料用紙パックに取付けられるストローの包装、図9(c)に示すような生鮮食料品の容器のストレッチ包装に適用できる。図9中、21,31,41は包装用フィルムであり、22,32、42は開裂帯を示す。
【0034】
尚、上記実施態様では、く字状凹部は貫通孔であって、フィルム強度が確保される限りは貫通孔であってもよい。但し、く字状凹部を未貫通孔とすることにより、密封性が要求される用途、特に食品包装用に利用できる。
【0035】
また、包装体において、開裂帯は1カ所だけ設けられていれば、そこから開封可能であるが、包装体に2カ所以上設けられていてもよい。引裂き力が加えられない限り、そこから開裂することは困難であり、また食品包装の場合にも、凹部を未貫通孔とすることにより、複数の開裂帯を設けたために密封性が損なわれるといったことはない。
【0036】
次に、本発明の未貫通孔の凹部組列からなる開裂帯を備えた包装用フィルムの製造方法について説明する。
本発明の包装用フィルムは、図10に示すように、凹部形成のための凸部51が連続的に配設されたエンボスローラ52と受けローラ53との間に長尺帯状フィルム50を挟みこみ、ローラ52,53の回転に従って、フィルム50を走行させている。フィルム50において、エンボスローラ52により押圧された部分は、凹部が連続的に形成された開裂帯55となる。
【0037】
使用するエンボスローラは、高速度鋼、合金工具鋼等の鋼製、鋳鉄製等の金属製ローラであり、好ましくは鋼製である。高硬度な金属製のエンボスローラ52でフィルム50を押圧することにより、フィルム50に凹部が形成される。それに対して、受けローラ53は、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満、好ましくはR90〜125程度の材料で構成されている。ここで、ロックウェル硬さは、プラスチック(Rスケール)用の市販のロックウェル硬さ試験機を用いて測定できる。ロックウェル硬さR80未満では、破断に必要な深さを有する未貫通孔凹部を形成することができない。一方、R130以上では、例えば金属製ローラでは、凹部は貫通孔となってしまう。フィルム送り速度は80〜150m/分が好ましい。
【0038】
上記受けローラの材質としては、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満の材料、好ましくはR90〜125の材料で、且つ摩擦係数が高くないものが好ましく用いられる。具体的には、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロンなどのエンジニアプラスチックが好ましく用いられる。これらのうち、特にポリアセタール樹脂が好ましい。ポリアセタール樹脂としては、デルリン(登録商標)に代表されるポリオキシメチレンであってもよいし、ジュラコン(登録商標)に代表されるポリアセタール共重合体であってもよいが、好ましくはポリアセタール共重合体である。
【0039】
エンボスローラの凸部の形状は特に限定しないが、有効な開裂帯を形成する観点から、所定角度を形成できる2つの辺を有するもの、好ましくは、く字を有する。また、図6、図7に示す凹部に対応する形状であってもよい。各凸部の断面形状は、図11(a)に示すような断面台形の凸部43であってもよいが、好ましくは、図11(b)に示すように、上底部に窪み44aがある凸部44である。凸部のサイズは特に限定しないが、凸部高さHは、フィルム厚み程度とすることが好ましい。フィルム厚みよりも小さいと、形成される凹部の深さが不十分となり、フィルム厚みよりも高くなると、貫通孔が形成されてしまうからである。
【0040】
以上のような凸部が、上記本発明の包装用フィルムに採用した開裂帯を形成できるように、く字を形成する2つの辺がエンボスローラの周方向に対して鋭角及び鈍角を形成するように配置され、且つく字を形成する2つの辺の交点が相対するように配置したもう一方の凸部とで1対を形成し、全体としては、く字状の凸部が千鳥になるように並列されていることが好ましい。
【0041】
以上のような本発明の方法によれば、同一材質からなる単層樹脂フィルムであっても、未貫通孔の凹部組列からなる開裂帯を備えた包装用フィルムを製造することができる。
【実施例】
【0042】
〔測定評価方法〕
(1)凹部の状態
エンボスローラにより押圧された側のフィルム面(以下、「フィルム表面」という)を上面として、インキを塗布し、フィルムを除去して、白紙にエンボスローラの模様が転写されているかどうかを調べた。フィルムに貫通孔が形成されている場合には、白紙上にエンボスローラの凸部の模様が転写され、未貫通孔の場合には、何も転写されない。
【0043】
(2)開裂性
図1に示すように、開裂帯の両側に両手をおき、フィルム面上で、開裂帯を押し広げるように力を加え、フィルムを開裂のしやすさを、◎(大変容易に開裂できる)、○(少しの力で開裂できる)、△(開裂できるが、かなりの力がいる)、×(開裂できない)の4段階で評価した。
【0044】
〔包装用フィルムの作製〕
フィルムNo.1:
図11(b)に示すような断面を有するく字状凸部(凸部高さH=20mm、頂部窪み深さ1mm)が、図5に示すように千鳥に3組配列した高速度鋼製エンボスローラAを用いた。受けローラとして、直径58mmの鉄製の円柱に、内径58mm、外径72mmのジュラコン製リングを挿通したものを用いた。このようなエンボスローラと受けローラとの間に、厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(興人のシュリンク用フィルムであるポリセット(商品名)を使用)を挟んで、送り速度100m/分でフィルムを走行させ、開裂帯を形成した。
作製した包装用フィルムについて、上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた。結果を表1に示す。
【0045】
フィルムNo.2〜5:
受けローラで使用したジュラコン製リングに代えて、表1に示す材質を有するリングを使用し、No.1と同様にして、開裂帯を形成した。作製した包装用フィルムについて、上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた結果を、併せて表1に示す。
【0046】
参考例1:
エンボスローラとして、図11(a)に示すような断面を有する凸部が1列凸設したエンボスローラ、高速度鋼製受けローラを用いて、ミシン目(貫通孔)が形成されたフィルムである。このフィルムについて、上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた結果を、併せて表1に示す。上記測定評価方法にしたがって、凹部の状態、開裂性を調べた結果を、表1に示す。
【0047】
参考例2:
フィルムNo.1で用いたエンボスローラを使用し、受けローラとして発泡ウレタン製リングを使用した。フィルムには、エンボスローラの模様はほとんど転写されなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1からわかるように、R100、R120の受けローラを用いて形成したフィルムNO.1,2では、未貫通孔の凹部が形成され、易開裂性も充足できた。しかし、R65以下の軟質材料からなる受けローラを用いて作製したフィルムNo.3、4では、、未貫通孔の凹部からなる開裂帯が形成されたが、凹部深さが不十分なために、開裂性を満足することができなかった。さらに、発泡ウレタン製受けローラを用いた場合、クッション性を有するため、エンボスローラの転動が不安定となり、ローラ間を通過したフィルムには、凹部模様がほとんど形成されていなかった。
【0050】
一方、金属製受けローラを用いて作製したフィルムNo.5では、貫通孔からなる開裂帯が形成され、容易に開裂することができた。しかしながら、貫通孔からなる単なるミシン目が形成された参照例1のフィルムでは、指で押し広げて開裂することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の包装用フィルムは、フィルム面に沿った力で開裂帯の任意位置から開裂して、包装体を開封することができるので、開封開始部となる端縁が存在しないような形態の包装に利用できる。さらに、開裂帯を構成する凹部を未貫通孔とすることにより、密封性が必要とされる食品等の包装用フィルムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の包装用フィルムの構成を示す図である。
【図2】本発明の包装用フィルムの作用を説明するための図である。
【図3】本発明のフィルムの開裂帯の一実施形態を示す図である。
【図4】開裂帯が開裂していく様子を説明するための概略模式図である。
【図5】開裂帯の他の実施形態を示す図である。
【図6】開裂帯の他の実施形態を示す図である。
【図7】開裂帯の他の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の包装用フィルムの断面を示す図である。
【図9】本発明の包装用フィルムの使用例を示す図である。
【図10】本発明の製造方法を説明するための図である。
【図11】本発明の製造方法で用いるエンボスローラの凸部の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 帯状フィルム
2 開裂帯
11,12,13、15 凹部
22,32,3,42 開裂帯
51 凸部
52 エンボスローラ
53 受けローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状フィルムの長手方向に設けられた開裂帯にて、該帯状フィルムの幅方向の力により易開裂性の包装用フィルムであって、
前記開裂帯は、一対の凹部の組が前記フィルムの長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、
前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している易開裂性包装用フィルム。
【請求項2】
前記凹部は、前記鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とが交点にて結合して、く字状を形成している未貫通孔である請求項1に記載の包装用フィルム。
【請求項3】
前記凹部組列を構成する凹部は、千鳥になるように並列されている請求項1又は2に記載の包装用フィルム。
【請求項4】
前記フィルムの厚みは10〜50μmである請求項1〜3のいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項5】
前記フィルムは、シュリンク包装用又はストレッチ包装用である請求項1〜4のいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項6】
未貫通孔からなる易開裂性の開裂帯を有する包装用フィルムの製造方法であって、
前記未貫通孔を形成するための凸部が凸設した金属製のエンボスローラと、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満のガイドローラとの間に長尺帯状体のフィルムを挟み込み、前記2つのローラの回転に従って、前記フィルムが走行する工程を含む包装用フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ガイドローラは、共重合ポリアセタール製である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記エンボスローラの凸部の先端には凹みが形成されている請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項1】
帯状フィルムの長手方向に設けられた開裂帯にて、該帯状フィルムの幅方向の力により易開裂性の包装用フィルムであって、
前記開裂帯は、一対の凹部の組が前記フィルムの長手方向に並列した凹部組列1列以上からなり、
前記凹部組の各凹部は、フィルム長手方向に対して鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とを有している易開裂性包装用フィルム。
【請求項2】
前記凹部は、前記鋭角を形成する細長形状の辺と鈍角を形成する細長形状の辺とが交点にて結合して、く字状を形成している未貫通孔である請求項1に記載の包装用フィルム。
【請求項3】
前記凹部組列を構成する凹部は、千鳥になるように並列されている請求項1又は2に記載の包装用フィルム。
【請求項4】
前記フィルムの厚みは10〜50μmである請求項1〜3のいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項5】
前記フィルムは、シュリンク包装用又はストレッチ包装用である請求項1〜4のいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項6】
未貫通孔からなる易開裂性の開裂帯を有する包装用フィルムの製造方法であって、
前記未貫通孔を形成するための凸部が凸設した金属製のエンボスローラと、ロックウェル硬度R80以上乃至R130未満のガイドローラとの間に長尺帯状体のフィルムを挟み込み、前記2つのローラの回転に従って、前記フィルムが走行する工程を含む包装用フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ガイドローラは、共重合ポリアセタール製である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記エンボスローラの凸部の先端には凹みが形成されている請求項6又は7に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−154905(P2009−154905A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333900(P2007−333900)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(307001957)日本エ−スパック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(307001957)日本エ−スパック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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