説明

星形重合体の製造方法

【課題】本発明は、原子移動ラジカル重合において、末端ハロゲン基を高率で残存させ、触媒の沈降や触媒量の変化による重合速度の調整が困難である等の問題を解決し、容易で安全な重合の開始方法を提供し、重合速度の制御方法を提供し、重合方法の改善法を示す。
【解決手段】 ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を、以下の(1)、(2)、(3)及び(4)からなる群から選択される少なくとも一つの条件下において行なうことを特徴とする重合方法である。(1)実質的に脱水条件下、(2)ニトリル化合物存在下、(3)重合触媒の配位子を系中に添加して重合を開始する、(4)重合中に重合触媒の活性を変化させて重合速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子移動ラジカル重合の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでに、様々なリビング重合が開発され、分子量、分子量分布及び末端構造などの制御された重合体が製造されるようになってきた。例としては、ポリプロピレングリコールの配位アニオン重合、イニファーターとルイス酸触媒を用いたリビングカチオン重合などが挙げられる。これらに加えて、近年、制御が非常に困難であると考えられてきたラジカル重合を制御することを可能にしたリビングラジカル重合が開発されてきた。
【0003】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、コバルトポルフィリン錯体(非特許文献1)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(非特許文献2)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。原子移動ラジカル重合は、一般に有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤とし、周期律表第7族、第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(例えば、非特許文献3〜6参照)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。本明細書中、分子量分布というときは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量/数平均分子量の比の値をいうものとする。
【0004】
そして、原子移動ラジカル重合という名称が示す通り、重合体の成長末端には通常は開始剤由来のハロゲン基が存在する。しかし、実際には様々な副反応により消失することが問題となる。
【0005】
原子移動ラジカル重合に用いられる触媒としては、重合系において完全に溶解し均一系となるものもあるが、多くのものは完全には溶解せず不均一系で用いられる。例えば、CuClあるいはCuBrを用いた重合で、配位子として最も多く使用されるものの一つである2,2′−ビピリジルを用いると重合系は通常不均一となる。これを均一系にするための工夫として、アルキル基をビピリジルのピリジン環上に置換する方法があり、1−ブチルペンチル基等を置換すると均一系になることが報告されている。また、エチレンカーボネート等の極性の高い溶媒を用いると、錯体の溶解度が上がり、均一系に近づくことも報告されている(非特許文献7)。しかし、これにおいても、溶媒量を減少させると、溶解性が低下し、速度が低下すること等が記述されている。
【0006】
最近、ビピリジル系の配位子に変えて、安価で工業的に入手可能なペンタメチルジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミンも有効な配位子であることが報告された。しかし、この配位子を用いた場合でも、重合系は完全な均一系ではない。重合系が不均一な場合、触媒が沈降したり、器壁に固着したりするために、重合速度が安定化が容易でなく、触媒量の変化による重合速度の制御が困難である。
【0007】
一方、アセトニトリルを溶媒として使用することは、特許(特許文献1)に例示されているが、その特別な効果については全く記述されておらず、また、脂肪族系ポリアミン配位子に対してこのものが好適であるということも書かれていない。更に、これらの記載は全て溶媒としての記述であって、アセトニトリルあるいはニトリル系化合物を添加物として少量添加することは全く記載されていない。
【0008】
原子移動ラジカル重合の重合開始は一般に、モノマー/触媒/溶媒を混合した後に、最後に開始剤を添加して実施されている。開始剤が液状のものを用いる場合はシリンジ等により容易に添加することができるし、固体の場合でも溶媒に溶解させて同様に添加することができる。開始剤が添加された時点から重合がすぐに開始されるので、分子量分布の狭い重合体を得るためには、開始剤を一気に添加することが必要である。しかし、一気に開始剤を添加し、すぐに重合が開始する場合には、大きな発熱を伴うことになりがちである。スケールアップをしていく場合には、この発熱は非常に危険である。この問題を回避するために、モノマー/開始剤/溶媒を混合した後に、最後に触媒を添加する方法が考えられる。この場合、重合の開始の様子を見ながら添加することができ、危険を回避することができる。触媒の場合、上述の開始剤の場合と比べて、時間をかけて添加しても、原理的に、生成物の分子量分布等に大きな影響は与えない。しかし、原子移動ラジカル重合の触媒は多くの場合、金属錯体であり、固体である。しかも上述したように重合系が不均一になる触媒が多く、溶媒に溶解させることも容易ではないので、触媒を添加して重合を開始することは容易ではなく、これまで報告されたことはない。
【0009】
また、一般にリビング重合では、重合の初期から終期まで、成長末端の重合活性が保持され、その結果、重合速度はモノマーの濃度に対してほぼ一次の関係になる。重合に用いるモノマー全量を初期に反応装置に加えておくバッチ重合法でリビング重合を実施した場合、単位時間あたりに重合するモノマーの量は、初期が最も多く、モノマーの消費に伴い、徐々に低下していく。ラジカル重合の場合に特に懸念される重合の暴走などの危険を回避するために、モノマーを後から逐次あるいは連続で追加して実施されるセミバッチ重合法においても同様の問題がある。この場合は、重合系中に残留するモノマー量を仮に一定に保った場合でも、その成長末端及び触媒の濃度は初期が最も高く、生成した重合体の蓄積により希釈されていく。その結果、バッチ重合法と同様に単位時間あたりに重合するモノマーの量は、初期が最も多く、徐々に低下していく。この単位時間あたりに重合するモノマーの量が発熱量を決定するので、工業的な重合においては、この発熱をいかに制御して安定化するかが非常に重要である。しかし、上述したようなリビング重合においては、上述した理由で初期に大きな発熱が発生するのが常であり、これがスケールアップや生成物の構造制御の障害になっている。この発熱を抑えるために、触媒活性を低下させると、その結果として、トータルの重合時間が長くなりすぎてしまうことがある。工業的生産においては、生産性は非常に重要な要素であるが、トータルの重合時間を短縮するために触媒活性を高めると、今度は初期の発熱が大きくなりすぎるというジレンマに陥る。
【0010】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943
【非特許文献2】Macromolecules、1994、27、7228
【非特許文献3】Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614
【非特許文献4】Matyjaszewskiら、Macromolecules 1995,28,7901
【非特許文献5】Matyjaszewskiら、Science 1996,272,866
【非特許文献6】Sawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721
【非特許文献7】Macromolecules,1998,31,1535
【特許文献1】WO97/18247
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、原子移動ラジカル重合において、末端ハロゲン基を高率で残存させ、触媒の沈降や触媒量の変化による重合速度の調整が困難である等の問題を解決し、容易で安全な重合の開始方法を提供し、重合速度の制御方法を提供し、重合方法の改善法を示すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を、以下の(1)、(2)、(3)及び(4)からなる群から選択される少なくとも一つの条件下において行なうことを特徴とする重合方法である。
(1)実質的に脱水条件下(2)ニトリル化合物存在下(3)重合触媒の配位子を系中に添加して重合を開始する(4)重合中に重合触媒の活性を変化させて重合速度を制御する
【0013】
原子移動ラジカル重合には、開始剤及び成長末端と遷移金属錯体触媒とからなる平衡反応が介在しているが、基本的には、成長末端にラジカルが発生し、それがモノマーの重合を行うラジカル重合である。一般に、工業的には、ラジカル重合は、エマルジョン重合やディスパージョン重合などのように、水中で行われていることが示すように、水の影響はうけない。そして、原子移動ラジカル重合においても、エマルジョン重合やディスパージョン重合が可能であると文献及び特許等で示されている。更に水を重合系中に添加しても問題ないという記述はあっても、水を添加してはいけないという報告はない。また、重合制御の成否に関しては、通常、数平均分子量及び分子量分布をもって判断されており、末端基の残存率に関しては、その定量が困難なこともあり、ほとんど議論されていない。原子移動ラジカル重合はバルク重合も可能であり、文献等においては、蒸留されたモノマーが用いられた例も開示されているが、触媒や開始剤を含めたトータルの水分量及び末端基残存率については言及されておらず、溶媒を用いた場合にはなおさらである。
【0014】
我々は、鋭意研究の結果、重合系中の水分が、末端ハロゲン基の消失と深く関わっていることを見出し、それを除くことにより、末端ハロゲン基が高率で残存した重合体が得られることを見出した。更に、この技術は本発明のニトリル化合物や触媒配位子等の比較的親水性の高い極性化合物を使用する場合に有効である。
【0015】
我々は、また、鋭意研究の結果、ニトリル系化合物を添加すると、その遷移金属化合物に対する配位力から、触媒の拡散性を向上させる効果があることを見出した。この効果をより高めるためには、CuBr等の触媒の前駆体遷移金属化合物を、アミン等の配位子を添加する前に、ニトリル系化合物と混合しておくことが好ましい。
【0016】
本発明により得られる上記の効果は、単なる極性溶媒を使用した効果とは異なる。重合系が不均一系となる触媒を用いた場合、一般に極性溶媒を用いると触媒の溶解度が向上するが、溶媒量を少なくすると系全体の極性が低下し、その溶解性は落ち、反応速度が低下するなどの結果を招く(Macromolecules,1998,31,1535)。これに対し、本発明のニトリル系化合物の添加は、少量の添加でも効果を発揮するものであり、単に触媒の溶解性を向上させるわけではなく、不均一系となる触媒の器壁などへの付着や沈降などを防ぎ、その結果、攪拌において均一な拡散を達成するものである。そして、本技術は、次に述べる触媒配位子添加による重合開始において、配位子添加前の金属錯体あるいは塩の拡散性を高めておくためにも有効である。
【0017】
我々は、更に、鋭意研究の結果、原子移動ラジカル重合の配位子を添加することにより重合を開始する方法を見出した。すなわち、配位子を持たないCuBr等の金属塩だけを重合系中に添加しておき、触媒の配位子を添加すると系中で錯体を形成し、触媒活性を発揮し、重合が開始される。原子移動ラジカル重合の触媒は前述したように重合系が不均一となるものが多く、これをそのままあるいは溶媒に溶解させて添加することは容易ではない。これに対し、配位子自体は液体あるいは容易に溶媒に溶解させられるものが多く、これを添加することは容易である。配位子を添加する前の金属錯体(塩)は、触媒となる金属錯体以上に溶解性及び拡散性が悪い場合が多く、この配位子を添加する前の金属錯体(塩)が器壁に固着してしまうと、配位子を添加してもすぐに錯体形成ができないことがある。これを防ぐためには、上述のニトリル化合物の添加が有効である。
【0018】
我々は、更にまた、研究の結果、重合中に触媒の活性を変化させて重合速度を制御することにより重合を制御することを見出した。触媒活性を変化させる方法としては、触媒を追加する方法と、上述の開始反応と同様に触媒となる遷移金属錯体の配位子を追加する方法が提示される。本発明の触媒となる遷移金属錯体としては銅錯体が好ましく、溶媒あるいは添加剤としては、この遷移金属と錯体を形成するが触媒活性は持たないものを添加することが好ましい。
【0019】
本発明によって見出された上述値のこれら4つの条件(1)〜(4)は、それぞれ単独でも原子移動ラジカル重合を制御する方法として有効であるが、それぞれを組み合わせることにより、より大きな効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、原子移動ラジカル重合により末端のハロゲン基が高率で残存したビニル系重合体が得られる。また、不均一な重合触媒を用いた場合でも、触媒が器壁に付着したりなどせず、攪拌によって均一に拡散させることができ、重合のスケールアップ時等には、反応制御を容易にする。更に、この効果から、添加した触媒量により、重合速度を調整することが容易になる。そして、原子移動ラジカル重合において、重合速度を重合反応中に任意に調整することができ、発熱量なども制御することができる。これにより、一般に、初期の大きな発熱と重合時間のバランスが問題になるリビング重合において、初期の発熱を抑制し、且つ、重合時間の短縮も可能にする方法を与える。この効果は、スケールが大きくなるほど大きくなり、本発明は、原子移動ラジカル重合の工業化において非常に重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
<原子移動ラジカル重合概説>
「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0022】
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
【0023】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましいものである。この原子移動ラジカル重合法としては、上述の文献に加えて、例えばWO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などが挙げられる。
【0024】
また、上記のような有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤として用いる通常の原子移動ラジカル重合以外に、過酸化物のような一般的なフリーラジカル重合の開始剤と銅(II)のような通常の原子移動ラジカル重合触媒の高酸化状態の錯体を組み合わせた「リバース原子移動ラジカル重合」も原子移動ラジカル重合に含まれる。
【0025】
<モノマー>
本発明に用いられるビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。限定はされないが、なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、更に好ましくは、アクリル酸ブチルである。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合させても良く、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
【0026】
<開始剤>
原子移動ラジカル重合は、開始剤として一般に、有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するエステル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)又はハロゲン化スルホニル化合物等を用いる。また、ハロゲンの代わりになる基を用いても構わない。具体的に例示するならば、C65 −CH2 X、C65 −C(H)(X)CH3 、C65 −C(X)(CH32 、(ただし、上の化学式中、C65 はフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
1 −C(H)(X)−CO22 、R1 −C(CH3 )(X)−CO22 、R1 −C(H)(X)−C(O)R2 、R1 −C(CH3 )(X)−C(O)R2 、(式中、R1 及びR2 は、同一若しくは異なって、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
1 −C64 −SO2 X、(上記の各式において、R1 及びR2 は、同一若しくは異なって、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)等が挙げられる。
【0027】
リビングラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に官能基を、他方の主鎖末端にハロゲン基を有するビニル系重合体が製造される。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
【0028】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式(1)に示す構造を有するものが例示される。
45 C(X)−R6 −R7 −C(R3 )=CH2 (1)
(式中、R3 は水素、またはメチル基、R4 、R5 は水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル、または他端において相互に連結したもの、R6 は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R7 は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
【0029】
置換基R4 、R5 の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R4とR5 は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0030】
一般式(1)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、XCH2 C(O)O(CH2n CH=CH2 、H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2n CH=CH2 、(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2n CH=CH2 、CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2n CH=CH2
【0031】
【化1】

【0032】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCH2 C(O)O(CH2n O(CH2m CH=CH2 、H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2n O(CH2m CH=CH2 、(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2n O(CH2m CH=CH2 、CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2n O(CH2m CH=CH2
【0033】
【化2】

【0034】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2 −C64 −(CH2n −CH=CH2 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −(CH2n −CH=CH2 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −(CH2n −CH=CH2 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2 −C64 −(CH2n −O−(CH2m −CH=CH2 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −(CH2n −O−(CH2m −CH=CH2 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −(CH2n −O−(CH2m CH=CH2 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2 −C64 −O−(CH2n −CH=CH2 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −O−(CH2n −CH=CH2 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −O−(CH2n −CH=CH2 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2 −C64 −O−(CH2n −O−(CH2m −CH=CH2 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −O−(CH2n −O−(CH2m −CH=CH2 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −O−(CH2n −O−(CH2m −CH=CH2 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)等が挙げられる。
【0035】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
2 C=C(R3 )−R6 −C(R4 )(X)−R8 −R5 (2)
(式中、R3 、R4 、R5 、R6 、Xは上記に同じ、R8 は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
【0036】
6 は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R8 としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R6 が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R8 としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
【0037】
式(2)の化合物を具体的に例示するならば、CH2 =CHCH2 X、CH2 =C(CH3 )CH2 X、CH2 =CHC(H)(X)CH3 、CH2 =C(CH3 )C(H)(X)CH3 、CH2 =CHC(X)(CH32 、CH2 =CHC(H)(X)C25 、CH2 =CHC(H)(X)CH(CH32 、CH2 =CHC(H)(X)C65 、CH2 =CHC(H)(X)CH265 、CH2 =CHCH2 C(H)(X)−CO2 R、CH2 =CH(CH22 C(H)(X)−CO2 R、CH2 =CH(CH23 C(H)(X)−CO2 R、CH2 =CH(CH28 C(H)(X)−CO2 R、CH2 =CHCH2 C(H)(X)−C65 、CH2 =CH(CH22 C(H)(X)−C65 、CH2 =CH(CH23 C(H)(X)−C65 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)等を挙げることができる。
【0038】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、o−,m−,p−CH2 =CH−(CH2n −C64 −SO2 X、o−,m−,p−CH2 =CH−(CH2n −O−C64 −SO2 X、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)等である。
【0039】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式(3)に示す構造を有するものが例示される。
45 C(X)−R6 −R7 −C(H)(R3 )CH2 −[Si(R92-b (Y)b O]m −Si(R103-a (Y)a (3)
(式中、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、Xは上記に同じ、R9 、R10は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R' )3 SiO−(R' は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR' は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R9 またはR10が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
【0040】
一般式(3)の化合物を具体的に例示するならば、XCH2 C(O)O(CH2n Si(OCH33 、CH3 C(H)(X)C(O)O(CH2n Si(OCH33 、(CH32 C(X)C(O)O(CH2n Si(OCH33 、XCH2 C(O)O(CH2n Si(CH3 )(OCH32 、CH3 C(H)(X)C(O)O(CH2n Si(CH3 )(OCH32 、(CH32 C(X)C(O)O(CH2n Si(CH3 )(OCH32 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCH2 C(O)O(CH2n O(CH2m Si(OCH33 、H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2n O(CH2m Si(OCH33 、(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2n O(CH2m Si(OCH33 、CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2n O(CH2m Si(OCH33 、XCH2 C(O)O(CH2n O(CH2m Si(CH3 )(OCH32、H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2n O(CH2m −Si(CH3 )(OCH32 、(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2n O(CH2m −Si(CH3 )(OCH32 、CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2n O(CH2m −Si(CH3 )(OCH32 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2 −C64 −(CH22 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −(CH22 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −(CH22 Si(OCH33 、o,m,p−XCH2 −C64 −(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−XCH2 −C64 −(CH22 −O−(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −(CH22 −O−(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −(CH22 −O−(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−XCH2 −C64 −O−(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −O−(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −O−(CH23 −Si(OCH33 、o,m,p−XCH2 −C64 −O−(CH22 −O−(CH23 −Si(OCH33 、o,m,p−CH3 C(H)(X)−C64 −O−(CH22 −O−(CH23 Si(OCH33 、o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C64 −O−(CH22 −O−(CH23 Si(OCH33 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)等が挙げられる。
【0041】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式(4)で示される構造を有するものが例示される。
(R103-a (Y)a Si−[OSi(R92-b (Y)bm −CH2 −C(H)(R3 )−R11−C(R4 )(X)−R8 −R5 (4)
(式中、R3 、R4 、R5 、R7 、R8 、R9 、R10、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
【0042】
このような化合物を具体的に例示するならば、(CH3 O)3 SiCH2 CH2 C(H)(X)C65 、(CH3 O)2 (CH3 )SiCH2 CH2 C(H)(X)C65 、(CH3 O)3 Si(CH22 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH22 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)3 Si(CH23 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH23 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)3 Si(CH24 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH24 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)3 Si(CH29 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH29 C(H)(X)−CO2 R、(CH3 O)3 Si(CH23 C(H)(X)−C65 、(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH23 C(H)(X)−C65 、(CH3 O)3 Si(CH24 C(H)(X)−C65 、(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH24 C(H)(X)−C65 、(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)等が挙げられる。
【0043】
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH2n −OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
【0044】
上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
2 N−(CH2n −OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
【0045】
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
【0046】
【化3】

【0047】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
【0048】
上記リビングラジカル重合において、開始剤として、2つ以上の開始点を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いて重合を行うと、ハロゲン基を両末端に有するビニル系重合体が得られる。この開始剤を具体的に例示すれば、
【0049】
【化4】

【0050】
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または炭素数7〜20アラルキル基を表す。C64 は、フェニレン基を表す。nは0〜20の整数を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)
【0051】
【化5】

【0052】
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または炭素数7〜20アラルキル基を表す。C64 は、フェニレン基を表す。nは0〜20の整数を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)等が挙げられる。
【0053】
<触媒>
原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されず、PCT/US96/17780に記載されているものが利用可能である。中でも好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2 (PPh33 )も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2 (PPh32 )、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2 (PPh32 )、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2 (PBu32 )も、触媒として好適である。
【0054】
触媒として銅化合物を用いる場合、その配位子として、PCT/US96/17780に記載されている配位子の利用が可能である。特に限定はされないが、アミン系配位子が良く、好ましくは、2,2′−ビピリジル及びその誘導体等のビピリジル化合物、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、ビスピコリルアミン、トリアルキルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミン等の脂肪族アミン等の配位子である。本発明においては、これらの内では、ポリアミン化合物、特にペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミン等の脂肪族ポリアミンが好ましい。また、触媒として銅化合物を用いる場合の配位子として、ポリアミン化合物、ピリジン系化合物、又は脂肪族アミン化合物を用いる場合には、これらの配位子がアミノ基を3つ以上持つものであることが好ましい。なお、本発明におけるアミノ基とは、窒素原子−炭素原子結合を有する基を表すが、この中でも、窒素原子が炭素原子及び/又は水素原子とのみ結合する基であることが好ましい。
【0055】
本発明の脱水条件での重合という点において、末端ハロゲン基の消失は重合系中の塩基性にも影響を受けるので、アミン類、特に脂肪族アミン類を配位子として用いる場合において、本発明の効果は大きい。
【0056】
触媒は、触媒活性を持つ錯体の状態で、重合装置に加えてもよいし、触媒の前駆体である遷移金属化合物と配位子を重合装置中で混合して錯体化しても構わない。公知の原子移動ラジカル重合においては、一般にこの錯体化の操作は、開始剤を添加する前に行われる。それに対し、本発明では、配位子を、開始剤を添加した後に重合系中に添加し、触媒の前駆体である遷移金属化合物と錯体化させ、触媒活性を発現し、重合を開始する、及び/または、触媒活性を制御することが開示される。
【0057】
また、本発明のニトリル系化合物存在下で重合を行う場合、開始剤を錯体形成後に添加する通常の原子移動ラジカル重合の開始方法においても、錯体前駆体遷移金属化合物とニトリル系化合物を配位子よりも先に混合しておくことが、錯体の分散性が高まるので好ましい。
【0058】
上記のような配位子を用いる量は、通常の原子移動ラジカル重合の条件では、遷移金属の配位座の数と、配位子の配位する基の数から決定され、ほぼ等しくなるように設定されている。例えば、通常、2,2′−ビピリジル及びその誘導体をCuBrに対して加える量はモル比で2倍であり、ペンタメチルジエチレントリアミンの場合はモル比で1倍である。本発明において配位子を添加して重合を開始する、及び/または、配位子を添加して触媒活性を制御する場合は、特に限定はされないが、金属原子が配位子に対して過剰になる方が好ましい。配位座と配位する基の比は好ましくは1.2倍以上であり、更に好ましくは1.4倍以上であり、特に好ましくは1.6倍以上であり、特別に好ましくは2倍以上である。
【0059】
本発明においては、ニトリル系化合物を添加する代わりに、最初からニトリル系化合物が配位した遷移金属錯体を触媒前駆体の遷移金属化合物として用いても同様の効果が得られる。このような錯体としては、特に限定はされないが、ニトリル系化合物が過剰に存在する状態に、遷移金属化合物を添加しニトリル系化合物を配位させ、過剰のニトリル系化合物を除くことにより得られる錯体が例示される。また、CuBr(NC−R)n 、CuCl(NC−R)n (式中、Rはメチルなどの一価の有機基、nは1以上の整数)等も例示される。
【0060】
<溶媒、添加剤>
本発明の重合は無溶媒又は各種の溶媒中で行うことができる。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0061】
これらの溶媒の中ではアプロティックな溶媒が好ましい。また、極性の高い溶媒は一般的に吸水性が高く、また、末端消失反応も速い傾向があるので、本発明の脱水条件での重合はより有効である。基準としては、25℃における比誘電率が10以上の溶媒を用いた場合が挙げられる。本発明において添加剤として用いることが提示されているニトリル系化合物は、溶媒として用いても構わない。
【0062】
これらの溶媒、あるいは他に重合系に添加される添加剤としては、触媒として用いられる金属化合物に対して配位し、触媒活性を持たない錯体を形成するが、配位子が添加されると活性な触媒となるものが好ましい。溶媒が配位性を持たない場合でも、配位子の追加による触媒活性の制御は可能であるが、配位子のない状態のCuBr等の金属化合物の分散性が不十分で、器壁に付着したりなどして、安定した活性制御が容易ではない場合がある。このような要件を満たす例として、CuBrを金属化合物として用い、溶媒としてニトリル系溶媒を用いる組み合わせが挙げられる。PCT/US96/17780においては、アセトニトリルは重合触媒の好ましい配位子として記述されているが、実際には、CuBrのアセトニトリル錯体は重合活性を持たないことが確認された。しかし、この錯体は、結晶性が高く、不均一でも適切な攪拌により、重合系中に良好に分散することが我々の研究で明らかになった。そして、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位子の添加により、速やかに活性な錯体を形成し、重合を触媒する。
【0063】
<水分量>
本発明の実質上の脱水条件とは、好ましくは、水分量が重合系全体で1000ppm以下であることであり、更に好ましくは300ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下であることである。
【0064】
また、重合系中の水分は末端ハロゲン基を等量反応的に攻撃するので、この末端ハロゲン基と水分量の比という視点も重要であり、水分量は末端ハロゲン基に対して等量以下が好ましく、更に好ましくは50%以下であり、特に好ましくは10%以下である。
【0065】
<ニトリル系化合物>
本発明において用いられるニトリル系化合物は、特に限定されないが、以下の化合物が例示される。アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、2−メチルバレロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、4−メチルバレロニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ウンデシルシアニド、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、2−メチルグルタロニトリル、1,4−ジシアノブタン、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、アゼラニトリル、セバコニトリル、1,1,3,3−プロパンテトラカルボニトリル等の飽和脂肪族系ニトリル類、シクロプロピルシアニド、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘプチルシアニド、2−ノルボルナンカルボニトリル、1−アダマンタンカルボニトリル等の脂肪族環状系ニトリル類、グリコロニトリル、ラクトニトリル、3−ヒドロキシプロピオニトリル、アセトンシアノヒドリン、シクロヘキサノンシアノヒドリン等のヒドロキシル基含有ニトリル類、メトキシアセトニトリル、メチルチオアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、3,3−ジエトキシプロピオニトリル、2−シアノエチルエーテル、ジエトキシアセトニトリル、3,3−ジメトキシプロピオニトリル、3−シアノプロピオンアルデヒドジメチルアセタール、3−シアノプロピオンアルデヒドジエチルアセタール等のエーテル基含有ニトリル類、シアンアミド、ジメチルシアンアミド、ジエチルシアンアミド、ジイソプロピルシアンアミド、1−ピロリジンカルボニトリル、1−ピペリジンカルボニトリル、4−モルフォリンカルボニトリル、1,4−ピペラジンジカルボニトリル等のシアンアミド類、ジメチルアミノアセトニトリル、2−(ジエチルアミノ)アセトニトリル、イミノジアセトニトリル、N−メチル−β−アラニンニトリル、3,3−イミノジプロピオンニトリル、3−(ジメチルアミノ)プロピオニトリル、1−ピペリジンプロピオニトリル、4,4′−トリメチレンビス(1−ピペリジンプロピオニトリル)、4−モルフォリンプロピオニトリル、1−ピロリジンブチロニトリル等のアミノ基含有ニトリル類、トリス(2−シアノエチル)ニトロメタン等のニトロ基含有ニトリル類、ピルボニトリル、4−メチル−2−オキソペンタンニトリル、5−オキソヘキサンニトリル、2−オキソオクタンニトリル、アセチルマロノニトリル、2−オキソ−1−シクロヘキサンプロピオニトリル等のシアノケトン類、メチルシアノフォルメート、エチルシアノフォルメート、1,1−ジシアノエチルアセテート、メチルシアノアセテート、メチルイソシアノアセテート、エチルシアノアセテート、エチルイソシアノアセテート、ブチルシアノアセテート、オクチルシアノアセテート等のシアノカルボネート類、ベンジルシアニド、αメチルベンジルシアニド、ベンゾニトリル、置換基を持つベンゾニトリル等の芳香族ニトリル類が挙げられる。
【0066】
本発明においてニトリル系化合物を重合系に添加する量は特に制限はないが、重合系全体の体積比で50%以下が好ましく、通常は30%以下が好ましく、更に10%以下が好ましく、特に5%以下が好ましい。
【0067】
また、ニトリル系化合物は遷移金属原子に対し、配位するので、その添加量は、遷移金属原子とのモル比で規定しても構わない。特に限定はされないが、遷移金属原子に対して、好ましくは、4倍以上で、100倍以下、更に好ましくは30倍以下、特に好ましくは10倍以下である。4倍より少なすぎると、十分な効果を発揮しないことがある。
【0068】
<触媒活性を制御する方法>
本発明の触媒活性を制御する方法としては特に限定されないが、触媒である錯体自体を重合開始後に追加添加する方法、及び、配位子と錯体を形成して触媒となりうるが配位子がない状態では触媒活性がないあるいは低い金属化合物を、初期には配位子に対し過剰に系中に添加しておき、後に配位子を追加する方法、すなわち、重合触媒の金属錯体の配位子を重合開始後に追加添加することにより、重合中に触媒の活性を変化させて重合速度を制御する方法が挙げれる。これらの中では、限定はされないが後者が好ましい。
【0069】
触媒となる錯体は多くの場合、不均一であり、これを制御して追加することは困難である場合があるので、後者の方が好ましい。触媒錯体及び配位子は、単独で添加しても、適当な溶媒の溶液あるいは分散液にして添加しても構わない。
【0070】
これらの化合物を追加する時期は、特に限定されない。連続的に添加しても構わないし、逐次に分割して添加しても構わない。
【0071】
追加する量は特に限定されないが、配位子を追加する場合、触媒金属原子に対し配位飽和する以上に添加しても、それ以上の活性の向上は期待できないので、そうならないように、金属化合物は最終的な配位子の添加量に対して過剰であることが好ましい。また、金属化合物をも後から追加しても構わないが、最初から必要な全量を添加しておく方が工程上好ましい。
【0072】
理想的な条件であれば、原子移動ラジカル重合においては、重合速度は一般に、触媒量に対して一次の関係、成長末端の量に対して一次の関係、モノマーの量に対して一次の関係であると考えられている。よって、特に限定はされないが例示すると、バッチ重合で、単位時間当たりのモノマーの重合量を一定にしようとする場合、モノマーの残存量と活性な触媒量の積が一定になるように触媒量を調整していけば良いことになる。また、モノマーを追加していくセミバッチ重合では、モノマーの追加に伴い全体積が増加し、触媒及び成長末端の濃度が低下するので、例えば、最終的な重合速度が好ましくなるように最終的な触媒濃度を決定し、この時の触媒濃度と成長末端濃度の積と、モノマー追加中の各時点での触媒濃度と成長末端濃度の積が等しくなるように触媒の必要量を計算することが考えられる。
【0073】
<重合条件>
重合は、特に限定されないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。重合の雰囲気は、特に限定されないが、酸素不存在雰囲気が好ましい。ラジカルは酸素による影響を受けるし、また、酸素存在下では、触媒が酸化され活性を失う可能性がある。
【0074】
重合混合物はよく攪拌されることが好ましい。特に、触媒金属錯体あるいは配位子を添加する際には、速やかに均一に拡散させるためにも、十分な攪拌が好ましい。
【0075】
重合の方法としては、バッチ重合、モノマーを追加していくセミバッチ重合、連続重合等に適用できる。
【0076】
<末端ハロゲン残存率>
本発明の方法は、末端のハロゲン基が高率で残存する重合体を与える効果を有する。末端のハロゲン基が高率で残存するとは、通常、ハロゲン基の残存率が20%以上のものを示すが、好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0077】
一般に、末端ハロゲン基の残存率は、モノマーの重合率が高い場合に問題になる場合が多い。重合率が低い場合には、重合速度(単位時間当たりのモノマーの重合する量)が充分に速く、競争反応である末端基消失があまり目立たないが、重合率が高くなってくると、重合速度が落ちるため、末端基消失が目立ってくる。また、重合率が高まってから末端基が消失しても、数平均分子量、分子量分布等にはあまり大きな影響を与えないので、見過ごされる場合が多い。本発明の方法は、高重合率でより効果を発揮し、好ましくはモノマーの重合率がモル数で50%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0078】
<分子量分布>
本発明の方法によれば、限定はされないが、一般にゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比で表される分子量分布の狭い重合体が得られる。分子量分布は、一般に1.8未満であり、好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.15以下である。
【0079】
<スケール>
本発明の方法は、実験室レベルの重合だけでなく、更に大きなスケールへの利用が可能であり、スケールが大きくなればなるほど発熱量や重合時間を制御する必要が高まるので、効果が大きい。好ましくは重合系全体の体積が1L以上、更に好ましくは10L以上、特に好ましくは1000L以上である。
【0080】
本発明によって見出されたこれら4つの条件;(1)実質上脱水条件、及び/または、(2)ニトリル化合物存在下、及び/または、(3)重合触媒の配位子を系中に添加して重合を開始する、及び/または、(4)重合中に触媒の活性を変化させて重合速度を制御する、は、それぞれ単独でも原子移動ラジカル重合を制御する方法として有効であるが、それぞれは密接な関与を持っており、それぞれを組み合わせることにより、より大きな効果を発揮することができる。
【0081】
例えば、次のような一連の操作が挙げられる。CuBrを乾燥したアセトニトリルと混合して錯体化させておき、乾燥したモノマー及び開始剤を加えて加熱する。ここに、乾燥したペンタメチルジエチレントリアミンを添加して重合を開始する。その後、重合の進行に伴い、乾燥したペンタメチルジエチレントリアミンを追加していき、触媒活性を向上させる。
【0082】
本発明の方法により製造された高率で末端にハロゲン基を持つ重合体は、そのままで、あるいは様々な変換反応により水酸基、アルケニル基やシリル基等の様々な官能基を導入し、硬化性組成物等に利用できる。
【0083】
実施例
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。下記実施例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。また、系中の水分はカールフィッシャー滴定法により測定した。末端官能基量は、1 H−NMRを利用して定量した。
【0084】
実施例1
100mLのガラス反応容器に、脱水した試薬;アクリル酸ブチル(50.0mL、44.7g、349mmol)、臭化第一銅(625mg、4.36mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.910mL、756mg、4.36mmol)、およびアセトニトリル(5mL)を仕込み、冷却後減圧脱気したのち窒素ガスで置換した。よく撹拌した後、2ーブロモプロピオン酸メチル(0.243mL、364mg、2.18mmol)を添加し、70℃で加熱撹拌した。70℃で加熱撹拌を7時間継続し、時々、サンプリングを実施した。反応混合物は活性アルミナで処理して触媒を除去した後、溶媒及び残存モノマーを減圧下加熱して留去した。300分でのサンプリング物は、重合率が67%、生成した重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により16600、分子量分布は1.10であった。開始剤基準の官能基残存率は0.8であった。最終生成物は、重合率が84%、数平均分子量は21500、分子量分布は1.12で、官能基残存率は0.7であった。この重合系に含まれている水分量は、末端に対し14%(120ppm)であった。
【0085】
実施例2
実施例1と同様に脱水した試薬;アクリル酸ブチル(50.0mL、44.7g、349mmol)、臭化第一銅(625mg、4.36mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.910mL、756mg、4.36mmol)、アセトニトリル(5mL)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(785mg、2.18mmol)を70℃で重合を8時間実施し、両末端にブロモ基を持つ重合体を製造した。最終生成物は、重合率が90%、数平均分子量は23600、分子量分布は1.14で、官能基残存率は1.46であった。
【0086】
実施例3
実施例1と同様にして、脱水した試薬;アクリル酸ブチル(300.0mL、268g、2090mmol)、臭化第一銅(3.00g、20.9mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(4.37mL、3.63g、20.9mmol)、アセトニトリル(30mL)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(18.8g、52.3mmol)を70℃で重合を450分間実施し、両末端にブロモ基を持つ重合体を製造した。340分で重合率が84%、数平均分子量は4700、分子量分布は1.40で、官能基残存率は1.90であった。最終生成物は、重合率が99%、数平均分子量は5400、分子量分布は1.37で、官能基残存率は1.73であった。
【0087】
比較例1
実施例1と同様にして、脱水していない試薬;アクリル酸ブチル(10.0mL、8.94g、69.8mmol)、臭化第一銅(250mg、1.74mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.364mL、302mg、1.74mmol)、トルエン(1mL)、2ーブロモプロピオン酸メチル(0.049mL、72.8mg、0.44mmol)を70℃で重合を8時間実施した。120分で重合率が93%、数平均分子量は22500、分子量分布は1.26で、官能基残存率は0.14であった。最終生成物は、重合率が96%、数平均分子量は24200、分子量分布は1.28で、官能基残存率は0であった。
【0088】
参考例1
末端基消失のモデル実験
2−ブロモブチル酸エチル(1.29ml、1.70g、8.72mmol)、臭化第一銅(1.25g、8.72mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(1.82mL、1.51g、8.72mmol)、アセトニトリル(5mL)を70℃で加熱攪拌し、ガスクロマトグラフィーで2−ブロモブチル酸エチルの残存量を定量した。結果は参考例2と共に記す。
【0089】
参考例2
参考例1の条件に蒸留水(0.157ml、0.157g、8.72mmol)添加し、同条件で反応させた。約10時間後に、水を添加していない参考例1では2−ブロモブチル酸エチルの残存率が56%、水を添加した参考例2では38%であった。
【0090】
実施例4
CuBr(625mg、4.36mmol)、アセトニトリル(5ml)、アクリル酸ブチル(50ml、44.70g、348.8mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.910ml、756mg、4.36mmol)を攪拌機のついたフラスコ中に加え、冷却減圧脱気し、窒素置換した。この混合物を70℃の油浴中で加熱攪拌した。器壁に付着した触媒は全くなく、攪拌により、触媒は反応系全体に均一に拡散していた。この混合物に重合開始剤である2−ブロモプロピオン酸メチル(0.973ml、1.456g、8.72mmol)を添加した。すぐに重合が開始したことが、重合系の昇温により確認された。40分後に86℃まで昇温し、その後、徐々に低下し浴温と一致した。重合率は30分後に38%、60分後に84%であった。30分後のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン基準の数平均分子量Mn=2400、重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mn=1.18、60分後のMn=5100、比Mw/Mn=1.11であった。この反応混合物は、240分後に重合率が99%に達した時点まで、器壁への触媒の付着は見られず、攪拌による均一な拡散が保たれていた。
【0091】
実施例5
CuBr(250mg、1.74mmol)、アセトニトリル(5ml)、アクリル酸ブチル(50ml、44.70g、348.8mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.364ml、302mg、1.74mmol)を攪拌機のついたフラスコ中に加え、冷却減圧脱気し、窒素置換した。この混合物を70℃の油浴中で加熱攪拌した。器壁に付着した触媒は全くなく、攪拌により、触媒は反応系全体に均一に拡散していた。この混合物に重合開始剤である2−ブロモプロピオン酸メチル(0.973ml、1.456g、8.72mmol)を添加した。すぐに重合が開始したことが、重合系の昇温により確認された。50分後に77℃まで昇温し、その後、徐々に低下し浴温と一致した。重合率は30分後に23%、60分後に46%、120分後に84%であった。60分後のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン基準の数平均分子量Mn=2700、重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mn=1.15、120分後のMn=4600、比Mw/Mn=1.11であった。この反応混合物は、240分後に重合率が95%に達した時点まで、器壁への触媒の付着は見られず、攪拌による均一な拡散が保たれていた。実施例4と5の結果を総合して、ニトリル系化合物(本実施例ではアセトニトリル)の添加により、重合中終始、重合触媒が系中で均一に拡散し、また、この効果として、触媒量により重合速度が制御できていることが明らかである。
【0092】
比較例2
CuBr(625mg、4.36mmol)、トルエン(5ml)、アクリル酸ブチル(50ml、44.70g、348.8mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.910ml、756mg、4.36mmol)を攪拌機のついたフラスコ中に加え、冷却減圧脱気し、窒素置換した。この混合物を70℃の油浴中で加熱攪拌した。この時点ですでに一部の触媒が器壁に付着していた。この混合物に重合開始剤である2−ブロモプロピオン酸メチル(0.973ml、1.456g、8.72mmol)を添加した。すぐに重合が開始したことが、重合系の昇温により確認された。25分後に104℃まで昇温し、その後、徐々に低下し浴温と一致した。重合率は15分後に43%、30分後に90%であった。15分後のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン基準の数平均分子量Mn=1700、重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mn=1.34、30分後のMn=5100、比Mw/Mn=1.16であった。この反応混合物は、60分後に重合率が96%に達した時点で加熱を止めたが、重合の進行に伴い、触媒の器壁への付着が増加した。
【0093】
比較例3
CuBr(250mg、1.74mmol)、トルエン(5ml)、アクリル酸ブチル(50ml、44.70g、348.8mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.364ml、302mg、1.74mmol)を攪拌機のついたフラスコ中に加え、冷却減圧脱気し、窒素置換した。この混合物を70℃の油浴中で加熱攪拌した。器壁に付着した触媒は全くなく、攪拌により、触媒は反応系全体に均一に拡散していた。この混合物に重合開始剤である2−ブロモプロピオン酸メチル(0.973ml、1.456g、8.72mmol)を添加した。発熱は観察されず、重合は240分後でもほとんど進行しなかった。比較例2、3の結果を総合し、実施例4、5の結果と比較すると、ニトリル系化合物を添加していない条件では、触媒の拡散が不十分で、器壁への触媒の付着が観察され、また、触媒量を変化させた場合の反応速度の制御が困難であることが明らかである。
【0094】
実施例6
CuBr(1.251g、8.72mmol)、アセトニトリル(5ml)、アクリル酸ブチル(50ml、44.70g、348.8mmol)を攪拌機のついたフラスコ中に加え、冷却減圧脱気し、窒素置換した。この混合物を70℃の油浴中で加熱攪拌した。CuBrは白色の結晶になり、器壁に付着した触媒は全くなく、攪拌により反応系全体に均一に拡散していた。この混合物に重合開始剤である2−ブロモプロピオン酸メチル(0.973ml、1.456g、8.72mmol)を添加した。360分間加熱攪拌したが、重合は全く進行しなかった。
【0095】
これに、ペンタメチルジエチレントリアミン(1.821ml、1.511g、8.72mmol)を添加すると、すぐに反応系全体に緑色の錯体が現れ、これは攪拌により均一に拡散した。添加と同時に発熱し重合が開始したことが確認された。重合率は15分後に85%、30分後に96%であった。この反応混合物は、最後まで、器壁への触媒の付着は見られず、攪拌による均一な拡散が保たれていた。この結果より、アミン配位子がない状態では、ニトリル系化合物が配位した錯体は触媒活性をほとんど持たないことが確認された。よって、遷移金属原子がアミン配位子等の触媒配位子に対して過剰な場合、触媒配位子が配位していないと考えられる遷移金属原子は、触媒活性を持たないことが確認された。
【0096】
実施例7
攪拌機付きの100mlの丸底フラスコに、CuBr(250mg、1.74mmol)、アセトニトリル(5ml)を入れ、よく攪拌した。これにアクリル酸ブチル(15.0ml、13.4g、0.105mol)を添加し、冷凍減圧脱気し、窒素置換した。オイルバス中70℃で30分間攪拌した。CuBrの淡緑色の沈殿はなくなり、白色結晶が均一に分散した状態になった。これによく攪拌しながら、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.0583ml、48.4mg、0.28mmol)(これ以降トリアミンと表す)を加えた。混合物の色が、薄い緑色になった。ここに70℃で、2官能開始剤である2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル(1.570g、4.36mmol)をアクリル酸ブチル(5.0ml、4.47g、34.9mmol)に溶解させたものを添加した。わずかに発熱しながら、重合が開始した。30分後から、アクリル酸ブチル(30.0ml、26.8g、0.209mol)を約6.3ml/時間の速度で連続的に滴下した。時々、サンプリングし、モノマーの残存量をガスクロマトグラフィーで確認しながら、2時間後にトリアミン(0.10ml、83mg、0.48mmol)を添加した。トリアミンを添加するとすぐにわずかな発熱が観察され、重合速度が回復したことが確認された。この後も4時間30分後にトリアミン(0.06ml、50mg、0.29mmol)、5時間10分後にトリアミン(0.10ml、83mg、0.48mmol)添加した。7時間後に重合を終了した。モノマーの添加量、残存量、消費量の時間に対するグラフを図1に示す。アクリル酸ブチルは添加に合わせて消費され、残存量がよく制御されていることが明らかである。生成物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン基準の数平均分子量は、モノマーの消費量に比例して設定通り上昇した。重合終了時点での重合率は93%で、生成物の数平均分子量Mn=11700、重量平均分子量と数平均分子量の比で表される分子量分布Mw/Mn=1.18で、両末端の臭素基の残存量は、1分子当たり1.8個であった。重合全体を通じて内温の最高は、浴温+4℃であり、上記の結果とも併せ、重合速度は非常によく制御されたことが明らかである。
【0097】
実施例8
攪拌機付きの500mlの丸底フラスコに、CuBr(3.00g、20.9mol)、アセトニトリル(30ml)を入れ、よく攪拌した。これにアクリル酸ブチル(100.0ml、89.4g、0.680mol)を添加し、冷凍減圧脱気し、窒素置換した。オイルバス中70℃で30分間攪拌した。CuBrの淡緑色の沈殿はなくなり、白色結晶が均一に分散した状態になった。これに2官能開始剤である2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル(18.83g、52.3mmol)をアクリル酸ブチル(20.0ml、17.9g、140mmol)に溶解させたものを添加した。この時点では、開始剤存在下でも重合は全く進行していなかった。ここに70℃で、よく攪拌しながらペンタメチルジエチレントリアミン(0.175ml、145mg、0.84mmol)(これ以降トリアミンと表す)を加えた。混合物の色が、薄い緑色になり、すぐにわずかな発熱を伴いながら、重合が開始した。30分後から、アクリル酸ブチル(180.0ml、161g、1.26mol)を約38ml/時間の速度で連続的に滴下した。時々、サンプリングし、モノマーの残存量をガスクロマトグラフィーで確認しながら、30分から1時間置きにトリアミンを0.02ml(17mg、0.10mmol)から0.04ml(33mg、0.19mmol)を添加した。トリアミンを添加するとすぐにわずかな発熱が観察され、重合速度が回復したことが確認された。7時間30分後に重合を終了した。モノマーの添加量、残存量、消費量の時間に対するグラフを図2に示す。アクリル酸ブチルは添加に合わせて消費され、残存量がよく制御されていることが明らかである。生成物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン基準の数平均分子量は、モノマーの消費量に比例して設定通り上昇した。重合終了時点での重合率は99%で、生成物の数平均分子量Mn=5400、重量平均分子量と数平均分子量の比で表される分子量分布Mw/Mn=1.37で、両末端の臭素基の残存量は、1分子当たり1.7個であった。重合スケールが実施例7に比較して大きくなったが、重合全体を通じて内温は浴温+8℃以下に保たれ、上記の結果とも併せ、重合速度は非常によく制御されたことが明らかである。
【0098】
実施例9
CuBr(1.251g、8.72mmol)、アセトニトリル(5ml)、アクリル酸ブチル(50ml、44.70g、348.8mmol)を攪拌機のついたフラスコ中に加え、冷却減圧脱気し、窒素置換した。この混合物を70℃の油浴中で加熱攪拌した。CuBrは白色の結晶になり、器壁に付着した触媒は全くなく、攪拌により反応系全体に均一に拡散していた。この混合物に重合開始剤である2−ブロモプロピオン酸メチル(0.973ml、1.456g、8.72mmol)を添加した。360分間加熱攪拌したが、重合は全く進行しなかった。
【0099】
これに、ペンタメチルジエチレントリアミン(1.821ml、1.511g、8.72mmol)を添加すると、すぐに反応系全体に緑色の錯体が現れ、これは攪拌により均一に拡散した。添加と同時に発熱し重合が開始したことが確認された。重合率は15分後に85%、30分後に96%であった。この反応混合物は、最後まで、器壁への触媒の付着は見られず、攪拌による均一な拡散が保たれていた。この結果より、アミン配位子がない状態では、ニトリル系化合物が配位した錯体は触媒活性をほとんど持たないことが確認された。よって、遷移金属原子がアミン配位子等の触媒配位子に対して過剰な場合、触媒配位子が配位していないと考えられる遷移金属原子は、触媒活性を持たないことが確認された。
【0100】
比較例4
攪拌機付きの100mlの丸底フラスコに、CuBr(625mg、4.36mmol)、アセトニトリル(5ml)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.910ml、756mg、4.36mmol)を入れ、アクリル酸ブチル(20.0ml、17.9g、140mmol)を添加し、冷凍減圧脱気し、窒素置換した。オイルバス中70℃で30分間攪拌した。少し冷却した後、1官能開始剤である2−ブロモプロピオン酸メチル(0.973ml、1.46g、8.72mmol)を添加し、70℃のオイルバス中で加熱すると共に、アクリル酸ブチル(30.0ml、26.8g、209mmol)を6.3ml/分の速度で連続的な滴下を開始した。すぐに発熱が起こり、87℃まで内温が上がった。わずかに発熱しながら、重合が開始した。30分後から、アクリル酸ブチル(30.0ml、26.8g、0.209mol)を約6.3ml/時間の速度で連続的に滴下した。時々、サンプリングし、モノマーの残存量をガスクロマトグラフィーで確認した。モノマーの添加量、残存量、消費量の時間に対するグラフを図3に示す。アクリル酸ブチルの消費が昇温のためもあり、初期に非常に大きく、その後は、残存量が増加する傾向にあることが確認できる。8時間後に重合を終了した時点でも、アクリル酸ブチルの重合率は76%であった。この結果から、通常の方法では、重合速度の制御に問題があることが確認できる。
【0101】
実施例10
TREN配位子を用いた重合
30mLのガラス反応容器に窒素雰囲気下、臭化第一銅(12.5mg、0.0871mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を加え、70℃で加熱攪拌し、錯体化した。これに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(0.314g、0.872mmol)をアクリル酸ブチル(10.0mL、69.8mmol)に溶解させたものを添加した。70℃で攪拌しながら、トリス(ジエチルアミノエチル)アミン(16μL、0.0699mmol)を少量ずつ添加した。310分後、加熱を停止し、この時GC測定よりアクリル酸ブチルの消費率は93.6%であった。混合物をトルエンで希釈して活性アルミナで処理した後、揮発分を減圧下加熱して留去することで無色透明重合体を得た。得られた重合体のGPC測定(ポリスチレン換算)により、数平均分子量は12100、重量平均分子量13400、分子量分布は1.10、数平均分子量基準の臭素基導入率は1.99であった。
【0102】
実施例11
4kgBAセミバッチ重合
10Lのガラス反応容器に窒素雰囲気下、臭化第一銅(35.3g、0.246mol)、アセトニトリル(470mL)を投入し、70℃で60分間加熱した。これにアクリル酸ブチル(940mL、6.56mol)を加えてさらに60分攪拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(2.00mL、9.58mmol)を加えると反応溶液の穏やかな発熱が観測され、重合が開始した。55分後からアクリル酸ブチル(3.76L、26.2mol)を260分かけて加えた。この最中、反応溶液のサンプリングを行って反応を追跡しながら、ペンタメチルジエチレントリアミン(5.00mL、24.0mmol)を少量ずつ加えた。ペンタメチルジエチレントリアミンの投入時には速やかに穏やかな発熱が見られ、触媒活性が向上したことが確認された。アクリル酸ブチルの添加後さらに90分加熱を続けた。この時GC測定よりアクリル酸ブチルの消費率は97.1%であった。混合物をトルエンで希釈して活性アルミナで処理した後、揮発分を減圧下加熱して留去することで無色透明重合体を得た。得られた重合体のGPC測定(ポリスチレン換算)により、数平均分子量は10800、重量平均分子量12400、分子量分布は1.15、数平均分子量基準の臭素基導入率は1.8であった。
【0103】
実施例12
5kgアルケニル末端BAセミバッチ重合
10Lのガラス反応容器に窒素雰囲気下、臭化第一銅(41.9g、0.293mol)、アセトニトリル(559mL)投入し、70℃で45分間加熱した。これにアクリル酸ブチル(1.12L、7.80mol)を加えてさらに40分間加熱した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(4.00mL、19.2mmol)を加えると反応溶液の発熱が観測された。70℃で加熱攪拌を続け、60分後からアクリル酸ブチル(4.47L、31.2mol)を190分かけて加えた。この最中、反応溶液のサンプリングを行って反応を追跡しながら、ペンタメチルジエチレントリアミン(4.00mL、19.2mmol)を少量ずつ加えた。ペンタメチルジエチレントリアミンの投入時速やかに穏やかな発熱が見られ、触媒活性が向上したことが確認された。アクリル酸ブチルの添加終了後さらに60分加熱を続けた。この時GC測定よりアクリル酸ブチルの消費率は93.2%であった。1,7−オクタジエン(1.44L、9.75mol)およびペンタメチルジエチレントリアミン(20.5mL、98.2mmol)を加えて210分加熱を続けた。混合物をトルエンで希釈して活性アルミナで処理した後、揮発分を減圧下加熱して留去することで淡黄色重合体を得た。得られた重合体のGPC測定(ポリスチレン換算)により、数平均分子量は14000、重量平均分子量18800、分子量分布は1.34、数平均分子量基準のアルケニル基導入率は2.49であった。
【0104】
実施例13
100mLのガラス反応容器に窒素雰囲気下、臭化第一銅(0.375g、2.62mmol)、アセトニトリル(1.67mL)を加え、70℃で25分間加熱攪拌した。これに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(1.57g、4.36mmol)をアクリル酸ブチル(50.0mL、0.349mol)に溶解させたものを添加した。70℃で60分攪拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(90.0μL、0.437mmol)を添加すると速やかに重合が開始した。最終的なアクリル酸ブチルの重合率は98%であった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例7におけるモノマーの添加量、残存量、消費量の時間に対するグラフ
【図2】実施例8におけるモノマーの添加量、残存量、消費量の時間に対するグラフ
【図3】比較例4におけるモノマーの添加量、残存量、消費量の時間に対するグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系モノマーの、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とするリビングラジカル重合を、重合触媒の配位子を系中に添加して重合を開始するという条件下において行なうことを特徴とする重合方法であって、
ビニル系モノマーが(メタ)アクリル系モノマーであり、
重合触媒が、銅、ニッケル、ルテニウムまたは鉄の遷移金属錯体であり、
系中に添加して重合を開始する重合触媒の配位子が、ポリアミン化合物、ビピリジル化合物または脂肪族アミン化合物である重合方法。
【請求項2】
ニトリル化合物の存在下で行なうことを特徴とする請求項1に記載の重合方法。
【請求項3】
重合触媒が、銅錯体である請求項1又は2に記載の重合方法。
【請求項4】
銅錯体が、CuClまたはCuBrより調製されるものである請求項3記載の重合方法。
【請求項5】
水分量が、重合系全体で重合の成長末端のハロゲン基量に対してモル数で等量以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合方法。
【請求項6】
ニトリル化合物が、アセトニトリルである請求項2〜5のいずれか1項に記載の重合方法。
【請求項7】
ニトリル化合物の添加量が、遷移金属原子の量に対しモル比で4倍以上100倍以下である請求項2〜6のいずれか1項に記載の重合方法。
【請求項8】
ポリアミン化合物が、アミノ基を3つ以上持つものである請求項2記載の重合方法。
【請求項9】
アミノ基を3つ以上持つポリアミン化合物が、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、およびビスピコリルアミンよりなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8記載の重合方法。
【請求項10】
重合は、バッチ重合である請求項1〜9のいずれか1項に記載の重合方法。
【請求項11】
重合は、セミバッチ重合である請求項1〜9のいずれか1項に記載の重合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−266658(P2008−266658A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207095(P2008−207095)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【分割の表示】特願平11−153709の分割
【原出願日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】