説明

映像伝送システム

【課題】駅のプラットホームやコンコースなどに設置したディスプレイ装置に、テレビジョン映像やコマーシャル映像などを高画質で、且つほぼリアルタイムで放送可能とせしめる映像伝送システムを提供すること。
【解決手段】中央制御システムで取り込んだハイディフィニション映像の光信号を電気信号に変換しエンコードして拠点駅制御システムに送出し、拠点駅制御システムは、その電気信号に基づいて大型ディスプレイ装置で放送すると共に、一般駅制御システムに対して映像の光信号を送出し、一般駅制御システムは、その映像を大型ディスプレイ装置で放送すると共に、他の一般駅制御システムに対して映像の光信号を送出し、拠点駅または一般駅の制御システムは、センサが鉄道車両を検知すると、ディスプレイ装置の表示を消すことで、ディスプレイ装置が発生する電波と、鉄道無線用のアンテナから送出される電波との干渉を防止する、映像伝送システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームやコンコースに設置したディスプレイ装置に、テレビジョン映像やコマーシャル映像などを高画質で、且つほぼリアルタイムで放送可能とせしめる映像伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から駅のプラットホームやコンコースでは広告看板を設置し、そこに大型の広告用ポスターなどを掲示することによって、所望の情報を駅の利用者に告知するものがある。また広告看板は静止画なので、提供する情報を増やすために、小型のディスプレイを設置して、そこでテレビ映像やコマーシャル映像などを放送する装置がある(特許文献1)。
【0003】
例えば特許文献1に記載の装置では、テレビ映像やコマーシャル映像を取得して、それをインターネットを介して、各駅に配信するなどの仕組みをとっている。
【0004】
また特許文献2に開示の発明は、ホームサーバを設置することによってテレビ映像などを放送することが出来るが、映像を一度、蓄積することになるので、ほぼリアルタイムの放送は行えない。また高画質の映像を放送する場合には、その情報量が膨大となるので、実質的に画質を落とさざるを得ない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−354138号公報
【特許文献2】特開2002−142208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、大型ディスプレイ装置(例えば103インチのプラズマディスプレイパネル(PDP)など)が開発されたことなどから、大型ディスプレイ装置をプラットホームやコンコースに設置することによって、より迫力ある映像を提供することが出来る。しかし大型ディスプレイ装置で映像の再生を行った場合、画質が目立ちやすくなるので、必然的に高画質な映像を配信する必要性がある。例えばハイディフィニション映像(High Definition 映像)(ハイビジョン映像)を配信することが望まれる。
【0007】
しかし高画質の映像を配信する場合、配信する映像の情報量が膨大になってしまう。そして、上述の特許文献1や特許文献2の装置や従来の駅や車両における放送システムでは対応することが出来ない。その一つの要因としては、例えば特許文献1の装置では、映像を配信する制御装置が全ての駅や駅舎などに同時に配信を行っているので、制御装置とその配信経路のネットワークに極めて多くの負荷がかかり、映像信号のうち一部がデータ落ちしたり、処理の遅延が発生する可能性が極めて高いからである。
【0008】
その為、駅のプラットホームやコンコースなどに大型ディスプレイ装置を設置したとしても、高画質の映像をほぼリアルタイムで放送することが出来ない。寧ろ、大型ディスプレイ装置を設置したことによって、乗客からの注目度は上がるが、映像信号のデータ落ちや処理の遅延が逆に目立ってしまい、ディスプレイ装置を見る駅の利用者からすると、ストレスが溜まり、広告効果なども落ちてしまう。
【0009】
そこで大型ディスプレイ装置で放送する高画質な映像をほぼリアルタイムで放送可能とせしめるための映像伝送システムが待望されている。またこのようなシステムを駅に設置するにあたり、鉄道車両の運行の安全性が損なわれてはならない。そこで、上記のような点を実現するとともに、鉄道車両の運行の安全性を損なわない映像伝送システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記問題点に鑑み、大型ディスプレイ装置で放送する高画質な映像をほぼリアルタイムで放送可能とせしめるための映像伝送システムを発明した。
【0011】
請求項1の発明は、駅に設置したディスプレイ装置でハイディフィニション映像を放送するための映像伝送システムであって、前記映像伝送システムは、中央制御システムと、拠点駅制御システムと、一以上の一般駅制御システムとを有しており、前記中央制御システムは、前記ハイディフィニション映像の光信号を取り込む映像取込装置と、前記光信号を電気信号に変換して、その電気信号をエンコードした上で前記拠点駅制御システムにIP網を介して送出するハイディフィニションエンコーダと、を有しており、前記拠点駅制御システムは、拠点駅の所定箇所に設置されており、前記中央制御システムから送出された電気信号を受け取って光信号に変換し、その光信号を光ファイバーを介して送出する第1のメディアコンバータと、前記ディスプレイ装置を備える映像表示装置と、を有しており、前記映像表示装置には、前記第1のメディアコンバータから光信号を受け取り、それを電気信号に変換する第2のメディアコンバータ、前記電気信号をデコードするハイディフィニションデコーダ、前記デコードされた電気信号を光信号に変換して、その光信号を光ファイバーを介して前記一般駅制御システムに送出する光電送装置、が少なくとも更に備えられており、前記デコードされた電気信号の映像は、前記映像表示装置に備えられたディスプレイ装置で放送され、前記一般駅制御システムは、前記拠点駅制御システムまたはほかの一般駅制御システムから送出された光信号を受け取り、光ファイバーによって接続されている、前記光信号を送出した一般駅制御システム以外の一般駅制御システムに対して、受け取った光信号を送出するとともに、前記受け取った光信号を電気信号に変換する光電送装置と、前記電気信号の映像を放送するディスプレイ装置と、を有しており、鉄道車両が走行する軌道またはその近傍、トンネル内のいずれかには、前記鉄道車両を検知するセンサを設置しており、前記拠点駅制御システムまたは前記一般駅制御システムは、前記センサが鉄道車両を検知すると、前記ディスプレイ装置の表示を消すことで、前記ディスプレイ装置が発生する電波と、前記鉄道車両に設置されている鉄道無線用のアンテナから送出される電波との干渉を防止する、映像伝送システムである。
【0012】
本発明のように構成することで、高画質なハイディフィニション映像を、ほぼリアルタイムで各駅に設置されたディスプレイ装置で放送することが出来る。つまり、従来のように、中央制御システムから全ての駅の制御システムに直接、映像の映像信号を送出するのではなく、中央制御システムからは拠点駅の拠点駅制御システムに対して映像信号を送出し、拠点駅はそこと光ファイバーで接続している一般駅の一般駅制御システムに対して映像信号を送出し、一般駅はそこと光ファイバーで接続しているほかの一般駅の一般駅制御システムに対して映像信号を送出し、各駅のディスプレイ装置で放送を行う構成としている。これによって、いわばリレー方式で映像信号が送出されるので、従来とは異なり、中央制御システムの負荷が大幅に減少する。単なる映像ではなく、ハイディフィニション映像をリアルタイムで放送することにより、その映像信号の情報量が膨大なものとなるが、従来の構成では実質的に中央制御システムでは処理しきれず、ハイディフィニション映像の映像信号を送出することが出来なかったが、本発明のように構成することで処理が可能となる。またハイディフィニション映像の送出が可能となったことによって、ディスプレイ装置を大型化することができ、より迫力ある映像をリアルタイムで放送することが可能となる。
【0013】
また、ディスプレイ装置が鉄道車両の近くに設けられている場合、例えばトンネル内の壁面にディスプレイ装置が埋め込まれている場合、ディスプレイ装置から発される電波と、鉄道に備えられている鉄道無線用のアンテナから送出される電波とが干渉し、ノイズが発生する場合があることが、発明者の研究により分かっている。これを放置したままの場合、鉄道の安全な運行に支障を来すおそれがある。そこで、鉄道が接近したことを検知した場合には、ディスプレイ装置の表示を消すことによって、その干渉をなくすことが好ましい。そこで本発明の構成を採ることによって、上記問題点を解消することが出来る。
【0014】
請求項2の発明は、前記映像伝送システムにおいて、前記ディスプレイ装置から前記鉄道車両の進行方向に対して所定距離に、第1のセンサが備えられており、更に、前記第1のセンサよりも遠い所定距離に第2のセンサが備えられており、前記第1のセンサで鉄道車両を検知すると前記ディスプレイ装置が消され、前記第2のセンサで鉄道車両を検知すると前記ディスプレイ装置で表示が再開される、映像伝送システムのように構成することができる。
【0015】
本発明のように構成することで、第1のセンサでの検知によりディスプレイ装置を消した後、第2のセンサでの検知によりディスプレイ装置の表示を再開することが出来る。
【0016】
請求項3の発明において、前記第1のセンサの所定距離は、車両の先頭部から、前記鉄道車両の進行方向に対してもっとも先頭に位置するアンテナまでの距離以下であって、前記第2のセンサの所定距離は、前記車両の先頭部から、前記鉄道車両の進行方向に対してもっとも後方に位置するアンテナまでの距離以上であって、前記第1のセンサが鉄道車両を検知すると、前記ディスプレイ装置に対して信号を送出することにより、前記ディスプレイ装置の表示が消され、前記第2のセンサが鉄道車両を検知すると、前記ディスプレイ装置に対して信号を送出することにより、前記ディスプレイ装置の表示が行われる、映像伝送システムのように構成することができる。
【0017】
第1のセンサ、第2のセンサは本発明のような位置に設置されることが好ましい。このような位置に設置することによって、干渉の原因となる鉄道に設置されたアンテナと、表示が行われた状態のディスプレイ装置との接近を防止することが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の映像伝送システムを用いることによって、駅のプラットホームやコンコースなどに大型ディスプレイ装置を設置したとしても、高画質なハイディフィニション映像をほぼリアルタイムで放送可能とすることが出来る。これによって、駅の利用者から大型ディスプレイ装置に対する注目度も高まり、そこで放送されるコマーシャル映像の広告効果も必然的に高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の映像伝送システム1のシステム構成の一例を図1に示す。映像伝送システム1は、所定箇所に設置される中央制御システム2と、予め定めた一つの駅(拠点駅)に設置する拠点駅制御システム3と、拠点駅以外の駅(一般駅)に設置する一般駅制御システム4とを有している。なお図1で示した映像伝送システム1においては、一つの中央制御システム2と、一つの拠点駅制御システム3と、複数の一般駅制御システム4とを有しているが、拠点駅制御システム3は、路線毎、あるいは鉄道会社毎に一つ設けられていることが好ましい。従って、複数の路線、あるいは鉄道会社において、中央制御システム2で取り込んだ映像を放送する場合には、中央制御システム2と、路線毎あるいは鉄道会社毎に設けられた拠点駅制御システム3との間で情報の送受信が可能である。この場合を模式的に図7に示す。また駅の鉄道は地下鉄であることが好ましいが、それ以外の地上を走行する鉄道であっても良い。
【0020】
中央制御システム2と拠点駅制御システム3との間は、IP網を介して情報が送受信される。また拠点駅制御システム3と一般駅制御システム4との間、あるいは一般駅制御システム4同士は、光ファイバーを介して情報が送受信される。なお、各システム間でやりとりされる映像(本明細書では「映像」との表記に、「音声」も含まれる)の信号について、光信号、電気信号の双方を用いて処理を実現している。
【0021】
中央制御システム2は、映像取込装置5とハイデフィニションエンコーダとを有している。映像取込装置5は、放送局で放送される映像の光信号(上述のように、ここには音声の光信号も含まれるものとする。本明細書において同様)を放送局のシステムから受け取り、あるいは記録媒体に予め録画されたコマーシャル映像の光信号などを読み出す装置である。そしてこれらの映像の光信号をハイディフィニションエンコーダ6に送出する。なおこれらの映像は高画質な映像(ハイディフィニション映像など)、例えばHD−SDI規格に則った映像などが好ましい。
【0022】
なお公共放送の放送局のシステムから受け取った映像の信号を放送する場合には、その前後に、コマーシャル映像以外の映像、例えば風景などの環境映像の信号を記録媒体などから読み出し、所定時間、コマーシャル映像以外の映像を放送した後、公共放送の放送局のシステムから受け取った映像を放送するとよい。これによって公共放送の映像であることをより明確に識別させることが出来る。
【0023】
ハイディフィニションエンコーダ6は、映像取込装置5から受け取った映像の光信号を電気信号に変換し、そのエンコードをし、それをIP網を介して、所定の拠点駅制御システム3に送出する装置である。従ってこのエンコーダは単に光信号を電気信号に変換するのみならず、ネットワーク機能も搭載している。例えば映像信号がHD−SDI規格の場合、それをMPEG2−TS規格にエンコードする。なおここでのエンコードは、電気信号をIP網を介して送出するために、パケット化するなど公知のエンコードが該当する。
【0024】
拠点駅制御システム3は、駅の所定箇所、例えば配電室などに設置されるメディアコンバータ(第1のメディアコンバータ7)と、駅のホームやコンコースなどの大型ディスプレイ装置11が設置される場所にある映像表示装置20とを有している。映像表示装置20には第2のメディアコンバータ8とハイディフィニションデコーダ9と大型ディスプレイ装置11と分配器10と光電送装置12とを備えている。
【0025】
第1のメディアコンバータ7は、中央制御システム2からIP網を介して送出された、映像の電気信号を受け取り、その電気信号を光信号に変換する装置である。IP網を介して映像の電気信号を受け取っているので、駅の配電室などに備えられていると良い。また配電室から駅のホームやコンコースなどに設置されている映像表示装置20までは、光ファイバーでその光信号を送出する。
【0026】
映像表示装置20に備えられた第2のメディアコンバータ8は、光信号を電気信号に変換する装置である。第1のメディアコンバータ7、第2のメディアコンバータ8は、いずれもハイディフィニション映像の処理に対応している装置である。
【0027】
ハイディフィニションデコーダ9は、第2のメディアコンバータ8で電気信号に変換された映像についてデコードする装置である。ここでのデコードは通常のデコード処理でよく、上述のハイディフィニションエンコーダ6でパケット化された電気信号を、もとの映像の電気信号に戻すための公知のデコードが該当する。
【0028】
分配器10は、大型ディスプレイ装置11と光電送装置12に、映像の電気信号を分配する装置である。なおこの分配器10は、ハイディフィニション映像の電気信号を処理可能な機能を有している。分配器10には、D/Aコンバータ、オーディオプロセッサ、変調器、増幅器、なども備えられている。D/Aコンバータは複数台(好適には2台)備えられており、一台は大型ディスプレイ装置11と接続している。つまり分配された電気信号について、大型ディスプレイ装置11で表示を行う。もう一台は大型ディスプレイ装置11及びオーディオプロセッサと接続している。つまり電気信号については大型ディスプレイ装置11に送出することで、大型ディスプレイ装置11で表示を行うと共に、音声の電気信号についてはオーディオプロセッサに送出して音声に係る出力処理を行う。音声に係る出力処理としては通常用いられる方法でよく、音声の電気信号がD/Aコンバータからオーディオプロセッサに送出され、更に変調器に送出される。そして変調器で変調処理が行われた後、増幅器でその電気信号が増幅され、各スピーカーから出力されることとなる。スピーカーについては後述する。なお上述の処理は大型ディスプレイ装置11から音声出力を行わない場合の処理であるが、大型ディスプレイ装置11から音声出力を行う場合には、分配器10は、音声の電気信号も大型ディスプレイ装置11に送出すればよい。
【0029】
大型ディスプレイ装置11は、映像表示装置20の土台21に設置される大型の表示装置であり、例えば103インチのPDP(プラズマディスプレイパネル)などが該当する。この大型ディスプレイ装置11は、映像表示装置20の表側と裏側の両面に、PDPの背面が向き合うようにして設置することが好ましいが、それに限定されるものではない。また映像の迫力さなどを考慮すると、大型ディスプレイ装置11は、50インチ以上であることが好ましいが、例えば103インチ以上のPDPであっても良い。またPDPに限らず、液晶ディスプレイ、表面電解ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)、有機ELを用いたディスプレイ装置など、様々なディスプレイ装置を用いることが出来る。この大型ディスプレイ装置11は、ハイディフィニション映像の電気信号を放送可能(再生可能)な機能を有している。
【0030】
なお音声の電気信号については、大型ディスプレイ装置11から直接、音声を再生可能にしても良いし、天井などにスピーカーを設置して音声を再生可能にしても良い。またこのスピーカーを指向性スピーカー30とすることによって、特定の領域のみに音声が再生可能となるように構成しても良い。駅のホームやコンコースなどでは通常のスピーカーで音声を再生すると、その音声が拡散し、業務放送などが聞こえなくなってしまう問題点がある。そこで、指向性スピーカー30とすることによって、その領域以外では放送の音声が再生されないので、上記問題点が解消できる。
【0031】
指向性スピーカー30とした場合、映像表示装置20の近傍を通過しようとする利用者に、いきなり音声が聞こえる状態となり、利用者は驚いてしまう。そこで、映像表示装置20に「音声が再生中です」といった表示部(映像表示装置20側面に表示をする、表示板を設置するなど)を設けたり、天井に指向性スピーカー30を設置した場合には、音声が聞こえる範囲の床面の色を、音声が聞こえない範囲の床面の色と異なる色とする、などの配慮措置を設けるとよい。このような状態を模式的に図5に示す。図5は、ホームを上方から見た場合の図であり、ホーム中央部に、ホームに対して平行に映像表示装置20が設置されている。そして映像表示装置20の近傍の天井(映像表示装置20よりも上方であることが好ましく、指向性スピーカー30は、床面方向に対して音が再生されるように設置されている)に指向性スピーカー30が設置されており、その音声が聞こえる範囲が網掛け部分で示されている。この網掛け部分に相当する床面を、それ以外の部分(音声が聞こえない範囲)の床面とは異なる色とすることが好ましい。なお床面の色を変更する範囲は、指向性スピーカー30からの音声が聞こえる範囲を含んでいて、ほぼ一致する範囲(略一致範囲)であれば、その範囲が完全に一致しなくても良い。
【0032】
また映像表示装置20自体、または映像表示装置20の近傍にセンサー40(例えば光センサー)などを取り付けて、そのセンサー40を利用者が横切ると、所定のスピーカー41(指向性スピーカー30とは異なるスピーカー。映像表示装置20自体またはその近傍に設置されている。)から、「テレビ放送の音声が再生されています、御注意下さい」といったようなアナウンスがなされても良い。このセンサー40は、利用者から見て、映像表示装置20の手前に備えられており、指向性スピーカー30の聞こえる範囲に利用者が到達する前に、センサー40が反応するように設置されている。そして、センサー40が反応すると、指向性スピーカー30とは異なる所定のスピーカー41から警告メッセージが再生され、その警告メッセージを利用者が聞いた後、指向性スピーカー30の聞こえる範囲を利用者が通過するように構成すると良い。図6にホームを上方から見た場合の図を示す。ホーム中央部には、ホームに対して平行に映像表示装置20が設置され、その左右にセンサー40a〜センサー40dが設置されている。例えば光センサー40の場合には、このセンサー40aとセンサー40bの間を利用者が図中の左方から右方に通過した場合、センサー40cとセンサー40dの間を利用者が図中の右方から左方に通過した場合などにセンサー40が反応し、所定のスピーカー41から警告メッセージが再生される。この所定のスピーカー41は天井やホーム、コンコースなどに設置されており、利用者の進行方向に対して、指向性スピーカー30の音声が聞こえる範囲よりも手前側に位置しており、指向性スピーカー30の音声が聞こえる範囲を通過する前に、所定のスピーカー41からの音声が聞こえるように設置されている。
【0033】
光電送装置12は、分配器10から分配された映像の電気信号を光信号に変換した上で、一般駅制御システム4に対して、光ファイバーを介して映像の光信号を送出する装置である。なおこの光電送装置12は、ハイディフィニション映像の光信号を処理可能な機能を有している。
【0034】
図3に、駅のホーム中央部に、大型ディスプレイ装置11を備えた映像表示装置20が設置された状態のイメージ図を示す。この映像表示装置20には、表側と裏側に二つの大型ディスプレイ装置11が設置されており、大型ディスプレイ装置11の下方に位置する映像表示装置20の土台21の内部に、第2のメディアコンバータ8、ハイディフィニションデコーダ9、分配器10、光電送装置12などが備えられている。図4に映像表示装置20の正面図を示す。図4の映像表示装置20はホームに設置される場合のものであり、土台21の上に大型ディスプレイ装置11が備えられている。なおこのような映像表示装置20は、ホームに設置されるほか、コンコースなどに設置されてもよい。また壁面に埋設されていてもよい。
【0035】
一般駅制御システム4は、拠点駅制御システム3または他の一般駅制御システム4から光ファイバーを介して映像の光信号を受け取り、その駅に設置された大型ディスプレイ装置11で受け取った映像を放送する。また他の一般駅制御システム4に、受け取った映像信号を光ファイバーを介して送出する。
【0036】
光電送装置13は、拠点駅制御システム3における光電送装置12または他の一般駅制御システム4における光電送装置13から映像の光信号を受け取り、光信号を電気信号に変換して分配器10に送出する装置である。また、この光電送装置13は、拠点駅制御システム3または他の一般駅制御システム4から受け取った映像の光信号を、光ファイバーを介して、その光ファイバーで接続された他の一般駅制御システム4に対して送出する装置でもある。
【0037】
分配器10は、光電送装置13から受け取った映像の電気信号を、各大型ディスプレイ装置11に分配する装置である。なおこの分配器10は、拠点駅制御システム3の分配器10と同様の装置でよい。
【0038】
なお一般駅制御システム4においても、拠点駅制御システム3と同様に、図4に示すような土台21と、その上方に位置する大型ディスプレイ装置11とを有する映像表示装置20を備えているが、土台21には、メディアコンバータ(第2のメディアコンバータ8)やハイディフィニションデコーダ9は設けなくても良い。また映像表示装置20に複数の大型ディスプレイ装置11を設ける場合には分配器10が必要となるが、一つの大型ディスプレイ装置11の場合には分配器10は不要であり、光電送装置12から直接、映像の電気信号を受け取っても良い。
【0039】
次に、本発明の映像伝送システム1の処理プロセスの一例を図2のフローチャート、図1の概念図を用いて説明する。
【0040】
拠点駅、一般駅の大型ディスプレイ装置11で放送したい映像がある場合には、その映像を中央制御システム2の映像取込装置5が取り込む(S100)。この取り込みは、各放送局からその映像の光信号を受け取ったり、コマーシャル映像などは記録媒体に記録された映像の光信号を取り込むことによって行える。
【0041】
そして映像取込装置5が取り込んだ映像の光信号を電気信号に変換した上で、その電気信号をハイディフィニションエンコーダ6がエンコードする(S110)。例えばHD−SDI規格の映像信号を、MPEG2−TS規格の電気信号にエンコードする。
【0042】
そしてその電気信号を、ハイディフィニションエンコーダ6がIP網を介して拠点駅制御システム3に送出する(S120)。
【0043】
拠点駅制御システム3の配電室などに設けられた第1のメディアコンバータ7は、中央制御システム2からIP網を介して送出された映像の電気信号を光信号に変換する。そして光ファイバーを介して、映像表示装置20内に設けられた第2のメディアコンバータ8にその光信号を送出する。
【0044】
第2のメディアコンバータ8は、光信号を電気信号に変換した後、ハイディフィニションデコーダ9にその電気信号を送出する。そして、ハイディフィニションデコーダ9は、第2のメディアコンバータ8から送出された、映像の電気信号(MPEG2−TS規格など)デコードし(S130)、分配器10に送出する。
【0045】
そして分配器10はそのデコードされた電気信号を大型ディスプレイ装置11と光電送装置12とに分配する(S140)。そして大型ディスプレイ装置11では、電気信号の映像を再生することによって、中央制御システム2で取り込んだ映像が放送されることとなる(S150)。一方、光電送装置12は、それと並行し、分配器10から受け取った映像の電気信号を光信号に変換した上で、光ファイバーを介して、一般駅制御システム4に光信号を送出する(S160)。
【0046】
一般駅制御システム4の光電送装置13で映像の光信号を受け取ると、当該一般駅制御システム4と光ファイバーにより接続されている他の一般駅制御システム4に、光ファイバーを介してその光信号を送出する。また、光伝送措置13は、受け取った映像の光信号を電気信号に変換して、分配器10に送出する。
【0047】
一般駅制御システム4の分配器10は、各大型ディスプレイ装置11にその電気信号を分配し(S170)、大型ディスプレイ装置11では、映像の電気信号を再生することによって、中央制御システム2で取り込んだ映像が放送されることとなる(S180)。
【0048】
また他の一般駅制御システム4から映像信号を受け取った一般駅制御システム4では、上述と同様の処理を行うことによって、その駅の大型ディスプレイ装置11で放送を行うと共に、他の一般駅制御システム4に対して映像信号を送出することとなる。
【0049】
このように、中央制御システム2が全ての駅に映像の光信号または電気信号を送出するのではなく、中央制御システム2、拠点駅制御システム3、一般駅制御システム4、ほかの一般駅制御システム4と順番に信号が送出される、いわばリレー式に信号が送出されることによって、中央制御システム2に係るシステム負荷が大幅に減少されることとなる。これによって、極めて情報量が多い高画質の映像であっても、画質を落とすことなく、ほぼリアルタイムで各駅の大型ディスプレイ装置11で放送が可能となる。また高画質な映像なので、大型ディスプレイ装置11であっても画質の劣化は目立たず、駅の利用者の注目を惹起することとなり、コマーシャル映像に対する注目度も向上する。加えて、この映像伝送システム1を用いて、ニュースなどのテレビ映像を放送すると共に、その合間にコマーシャル映像を放送することが好ましい。一般的にニュース映像は、駅の利用者の注目度が高く、ニュース映像の合間に高画質なハイディフィニション映像によるコマーシャル映像を放送することによって、従来の広告看板などよりもコマーシャル映像に対する注目度が高まる。その結果、コマーシャル映像の価値が高まることとなる。
【0050】
また上述のようなコマーシャル映像の価値の向上のほか、災害時における災害情報などの緊急情報を放送することも出来る。駅にいる場合には、情報をなかなか取得できない場合があるが、このように駅のプラットホームやコンコースなどに大型ディスプレイ装置11を設けることによって、情報が少ない状況にいる駅の利用者に対して、様々な情報提供を迅速に行うことが出来る。
【0051】
なお上述の実施態様において、映像表示装置20をプラットホームや、地下鉄のトンネルの壁面に設置した場合(特に壁面に設置した場合)であって、鉄道が映像表示装置20に接近した場合、映像表示装置20における大型ディスプレイ装置11が発生する電波と、鉄道に設置されている鉄道無線用のアンテナから送出される電波とが互いに干渉し合い、映像表示装置20や鉄道無線にノイズが発生することがある。この場合、大型ディスプレイ装置11で表示される映像が乱れたり、鉄道無線にノイズが入ったりしてしまう。
【0052】
そこで、映像表示装置20から所定距離手前に、センサを設置し、そのセンサで車両を検知して、検知した場合に、大型ディスプレイ装置11をミュートさせ(表示を消す)、且つ車両に備えられたアンテナが大型ディスプレイ装置11を通過した後に、ミュートを解除する(表示を再開する)機能を映像表示装置20に備えていても良い。これを模式的に図8に示す。
【0053】
図8の場合、車両の2,3両目と、4,5両目の2カ所に鉄道無線用のアンテナがあり、映像表示装置20(大型ディスプレイ装置11)(図8ではPDPと図示)の右端位置から、車両の進行方向に対して所定距離に第1のセンサが備えられており、更に、車両の進行方向に対して第1のセンサよりも遠い所定距離に第2のセンサが備えられている。映像表示装置20と第1のセンサとの所定距離は、車両の進行方向に対して、車両の先頭部から第1のアンテナまでの距離よりも短い距離であって、且つその短さは、第1のセンサが車両の先頭部を検知したことによって大型ディスプレイ装置11がミュートされるまでに、鉄道が移動する距離だけあることが好ましい。同様に、映像表示装置20と第2のセンサとの所定距離は、車両の先頭部から第2のアンテナまでの距離よりも長い距離であることが好ましい。
【0054】
つまり第1のセンサが鉄道の車両の先頭が通過することを検知すると、その信号が映像表示装置20に送出され、映像表示装置20は、大型ディスプレイ装置11をミュートする(表示を消す)こととなる。そして第2のセンサが鉄道の車両の先頭が通過することを検知すると、その信号が映像表示装置20に送出され、映像表示装置20は、大型ディスプレイ装置11のミュートを解除する(表示を再開する)こととなる。
【0055】
例えば、進行方向からみて、車両の先頭から第1のアンテナまでの距離が38メートルであり、検知してからミュートされるまでの移動距離が10メートルであったとすると、第1のセンサは、映像表示装置20の端(進行方向に対してもっとも端)から28メートル以下の場所に設置されていることが好ましい。また車両の先頭から第2のアンテナまでの距離が80メートルあったとすると、第2のセンサは、映像表示装置20の端(進行方向に対してもっとも端)から80メートル以上の場所に設置されていることが好ましい。
【0056】
つまり、第1のセンサが車両を検知すると、大型表示装置11をミュートする信号を映像表示装置20に送出し、第2のセンサが車両を検知すると、大型表示装置11のミュートを解除する信号を映像表示装置20に送出する。
【0057】
なお図8では鉄道にアンテナが2つだけ備えられている場合を説明したが、複数備えられている場合には、第1のアンテナはもっとも進行方向側に備えられているアンテナに対応し、第2のアンテナは、もっとも進行方向とは反対側(進行方向に対して最後尾)に備えられているアンテナに対応する。
【0058】
このような機能を設けることによって、大型表示装置11から発生する電波と、鉄道用アンテナから送出される電波とが干渉することがなくなる。
【0059】
なお上述では第1のセンサ、第2のセンサの2つのセンサを用いた場合を説明したが、一つのセンサのみとしても良い。この場合、センサの機能は、第1のセンサに相当する機能を備えている。そしてこのセンサで大型ディスプレイ装置の表示を消した後、映像表示装置20に備えたタイマ(図示せず)により時間を計測し、予め設定された時間が経過した後に、大型表示装置11での表示を再開するように構成することも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の映像伝送システム1を用いることによって、駅のプラットホームやコンコースなどに大型ディスプレイ装置11を設置したとしても、高画質なハイディフィニション映像をほぼリアルタイムで放送可能とすることが出来る。これによって、駅の利用者から大型ディスプレイ装置11に対する注目度も高まり、そこで放送されるコマーシャル映像の広告効果も必然的に高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のシステム構成の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【図3】駅のホームに、大型ディスプレイ装置を備えた映像表示装置を設置した場合のイメージ図である。
【図4】映像表示装置の正面図である。
【図5】音声を指向性スピーカーで再生する場合に、その聞こえる範囲の床面の色を変更することを模式的に示す図である。
【図6】映像表示装置の周囲にセンサーを設置し、指向性スピーカーとは異なる所定のスピーカーからメッセージを再生することを模式的に示す図である。
【図7】本発明の映像伝送システムの他の概念図である。
【図8】ディスプレイ装置と鉄道車両のアンテナとの干渉を防止する仕組みを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1:映像伝送システム
2:中央制御システム
3:拠点駅制御システム
4:一般駅制御システム
5:映像取込装置
6:ハイディフィニションエンコーダ
7:第1のメディアコンバータ
8:第2のメディアコンバータ
9:ハイディフィニションデコーダ
10:分配器
11:大型ディスプレイ装置
12:光電送装置
20:映像表示装置
21:土台
30:指向性スピーカー
40:センサー
41:所定のスピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅に設置したディスプレイ装置でハイディフィニション映像を放送するための映像伝送システムであって、前記映像伝送システムは、中央制御システムと、拠点駅制御システムと、一以上の一般駅制御システムとを有しており、
前記中央制御システムは、
前記ハイディフィニション映像の光信号を取り込む映像取込装置と、
前記光信号を電気信号に変換して、その電気信号をエンコードした上で前記拠点駅制御システムにIP網を介して送出するハイディフィニションエンコーダと、を有しており、
前記拠点駅制御システムは、
拠点駅の所定箇所に設置されており、前記中央制御システムから送出された電気信号を受け取って光信号に変換し、その光信号を光ファイバーを介して送出する第1のメディアコンバータと、
前記ディスプレイ装置を備える映像表示装置と、を有しており、
前記映像表示装置には、前記第1のメディアコンバータから光信号を受け取り、それを電気信号に変換する第2のメディアコンバータ、
前記電気信号をデコードするハイディフィニションデコーダ、
前記デコードされた電気信号を光信号に変換して、その光信号を光ファイバーを介して前記一般駅制御システムに送出する光電送装置、が少なくとも更に備えられており、前記デコードされた電気信号の映像は、前記映像表示装置に備えられたディスプレイ装置で放送され、
前記一般駅制御システムは、
前記拠点駅制御システムまたはほかの一般駅制御システムから送出された光信号を受け取り、光ファイバーによって接続されている、前記光信号を送出した一般駅制御システム以外の一般駅制御システムに対して、受け取った光信号を送出するとともに、前記受け取った光信号を電気信号に変換する光電送装置と、
前記電気信号の映像を放送するディスプレイ装置と、を有しており、
鉄道車両が走行する軌道またはその近傍、トンネル内のいずれかには、前記鉄道車両を検知するセンサを設置しており、
前記拠点駅制御システムまたは前記一般駅制御システムは、前記センサが鉄道車両を検知すると、前記ディスプレイ装置の表示を消すことで、前記ディスプレイ装置が発生する電波と、前記鉄道車両に設置されている鉄道無線用のアンテナから送出される電波との干渉を防止する、
ことを特徴とする映像伝送システム。
【請求項2】
前記映像伝送システムにおいて、
前記ディスプレイ装置から前記鉄道車両の進行方向に対して所定距離に、第1のセンサが備えられており、更に、前記第1のセンサよりも遠い所定距離に第2のセンサが備えられており、
前記第1のセンサで鉄道車両を検知すると前記ディスプレイ装置が消され、前記第2のセンサで鉄道車両を検知すると前記ディスプレイ装置で表示が再開される、
ことを特徴とする請求項1に記載の映像伝送システム。
【請求項3】
前記第1のセンサの所定距離は、
車両の先頭部から、前記鉄道車両の進行方向に対してもっとも先頭に位置するアンテナまでの距離以下であって、
前記第2のセンサの所定距離は、
前記車両の先頭部から、前記鉄道車両の進行方向に対してもっとも後方に位置するアンテナまでの距離以上であって、
前記第1のセンサが鉄道車両を検知すると、前記ディスプレイ装置に対して信号を送出することにより、前記ディスプレイ装置の表示が消され、
前記第2のセンサが鉄道車両を検知すると、前記ディスプレイ装置に対して信号を送出することにより、前記ディスプレイ装置の表示が行われる、
ことを特徴とする請求項2に記載の映像伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−170089(P2012−170089A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54045(P2012−54045)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2006−303796(P2006−303796)の分割
【原出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390023168)株式会社エヌケービー (2)
【Fターム(参考)】