説明

映像信号変換装置,映像表示装置,映像信号変換方法

【課題】色域が映像表示部よりも広い一次映像信号を映像表示部の色域内の二次映像信号に変換する際に,その変換後の映像信号における色の連続性を極力確保でき,さらに,低い演算負荷で信号変換できること。
【解決手段】(A1),(A2)式で求まる中間信号値に出力上限値を超える値が含まれる場合に,最大の中間信号値を出力上限値に変換し,その他の中間信号値を,最大の中間信号値を出力範囲の上限値へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率で圧縮して二次映像信号を生成し,そうでない場合,中間信号値をそのまま二次映像信号とする。なお,Sminは出力下限値,Xr〜Xbは一次映像信号のRGBの値,kは定数,Lr〜LbはRGB中間信号値。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,所定の出力範囲を一部に含む(出力範囲よりも広い)拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号を,前記出力範囲の値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号へ変換する映像信号変換装置及びその方法,並びにその映像信号変換装置を備えた映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受像機等の映像表示装置において,液晶ディスプレイ等の映像表示部は,RGB3原色それぞれの信号からなる映像信号(以下,二次映像信号という)に基づいて映像を表示する。一般に,前記二次映像信号におけるRGB3原色の信号は,その組合せが映像表示部により表示可能(再現可能)な色域(色再現領域又は色再現範囲ともいう)内の色と対応するように,信号値(RGB3原色の信号値)が予め定められた下限値(以下,出力下限値という)からそれより大きい上限値(以下,出力上限値という)までの出力範囲(例えば,0〜255或いは0〜1等)内で正規化されている。
ところで,映像表示装置に入力される映像信号若しくはその入力映像信号に対して既知の色域変換処理が施された映像信号(以下,一次映像信号という)により表現可能な色域が,映像表示部により再現可能(表示可能)な色域と一致する場合,前記一次映像信号の信号値をそのまま前記二次映像信号として採用すれば,映像表示部により前記一次映像信号に対応した映像(色)が表示される。
一方,前記一次映像信号により表現可能な色域が,映像表示部により再現可能(表示可能)な色域から外れている場合(映像表示部の色域よりも広い場合等)がある。この場合,前記一次映像信号の信号値は前記出力範囲から外れた値をとり得ることとなり,それをそのまま前記二次映像信号として採用することができない。例えば,映像表示部の色域に対応する映像信号の3原色の信号値の範囲(前記出力範囲)が0〜1であるのに対し,前記一次映像信号の信号値が負の値となる場合や1を超える値となる場合があり,そのような場合には,前記一次映像信号を,前記出力範囲に収まる信号値からなる前記二次映像信号へ変換しなければならない。このような状況としては,例えば,前記一次映像信号がIEC 61966−2−4規格(通称,xvYCC規格)やIEC 61966−2−1規格に準拠した映像信号であるのに対し,前記二次映像信号がITU−R BT.709規格に準拠した映像信号である状況が考えられる。
ここで,前記一次映像信号の信号値が前記出力範囲から外れている場合の信号変換方法としては,最も簡易な方法として,前記一次映像信号の信号値に前記出力範囲でのクリップ処理(リミッタ処理といってもよい)を施すことによって前記出力側映像信号に変換する処理が考えられる。
また,特許文献1には,出力系の色域(映像表示部の色域に相当)が入力系の色域(前記一次映像信号の色域に相当)よりも小さい場合に,入力系の色域を明度及び彩度の2次元平面上において領域分割し,分割領域ごとに色相を一定にしつつ色域の圧縮(信号値の圧縮)を行うことについて示されている。
【特許文献1】特開平9−98298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,前記一次映像信号をクリップ処理によって前記出力側映像信号に変換した場合,前記出力範囲を超える前記一次映像信号の信号値が全て前記出力下限値又は前記出力上限値に置き換えられるため,前記一次映像信号における色の連続性が著しく損なわれてしまうという問題点があった。
また,特許文献1に示される技術は,映像信号を明度及び彩度の2次元平面上のデータとして処理するため,色域圧縮(信号変換)を行う処理が三角関数を用いた演算処理となって演算負荷が高いという問題点もあった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,映像表示部に入力されるべき映像信号(前記二次映像信号に相当)に対して色域が一致しない映像信号(前記一次映像信号に相当)が与えられた場合に,映像表示部の色域外の領域の色から映像表示部の色域内の色への変換を行うにあたり,その変換後の映像信号における色の連続性を極力確保でき,さらに,低い演算負荷で信号変換処理を実行できる映像信号変換装置及びその方法,並びに映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明に係る映像信号変換装置は,予め定められた出力下限値から出力上限値までの出力範囲を一部に含む拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる一次映像信号を,所定の映像表示手段に入力される映像信号であり,前記出力範囲の値をとり得るRGB各原色の信号からなる二次映像信号へ変換する装置であり,例えば,次の(1−1)〜(1−3)に示される各構成要素を備えるものである。
(1−1)前記一次映像信号から前記二次映像信号への変換過程において,前記出力上限値よりも大きな信号値を含むRGB各原色の信号値である上限超え含有RGB信号値が得られた場合に,その上限超え含有RGB信号値のうち値が最大である第1の原色の信号値に応じて,その第1の原色の信号値を前記出力上限値へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率を設定する圧縮率設定手段。
(1−2)前記上限超え含有RGB信号値のうち前記第1の原色の信号値を除く残りの第2の原色の信号値を前記圧縮率設定手段により設定された圧縮率に従って圧縮した信号値,又はその圧縮した信号値が前記出力上限値を超える場合は前記出力上限値を,圧縮後信号値として算出する信号値圧縮手段。
(1−3)前記一次映像信号から前記二次映像信号への変換過程において,前記上限超え含有RGB信号値を,前記第1の原色の信号値及び前記第2の原色の信号値にそれぞれ前記出力上限値及び前記圧縮後信号値が設定されたRGB各原色の信号値に変換する上限超え信号変換手段。
【0005】
また,本発明に係る映像信号変換装置は,次の(1−4)〜(1−8)に示される各構成要素を備えるものであればなお好適である。
(1−4)前記一次映像信号におけるRGB各原色の信号の値を次の(A1)式及び(A2)式に適用して得られるRGB各原色の中間信号値を算出する中間信号値算出手段。
【数1】

但し,Sminは前記出力下限値(二次映像信号におけるRGB各信号の下限値),Xr,Xg及びXbはそれぞれ前記一次映像信号におけるR信号の値,G信号の値及びB信号の値,c,m,y,Xr’,Xg’及びXb’は変数,kは定数(0<k),Lr,Lg及びLbはそれぞれR中間信号値,G中間信号値及びB中間信号値である。
(1−5)前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれない場合に,RGB各原色の信号値に前記中間信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第1の二次映像信号生成手段。
(1−6)前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれる場合に,RGB各原色の前記中間信号値のうち値が最大である第1の原色の信号値に応じて,その第1の信号値を前記出力上限値へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率を設定する圧縮率設定手段。
なお,前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれる場合とは,前記中間信号値が前記出力上限値よりも大きな値を含む前記上限超え含有RGB信号値である場合であることを意味する。
(1−7)前記出力上限値よりも大きな値を含むRGB各原色の前記中間信号値(即ち,前記上限超え含有RGB信号値)のうち前記第1の原色の信号値を除く残りの第2の原色の信号値を前記圧縮率設定手段により設定された圧縮率に従って圧縮した信号値,又はその圧縮した信号値が前記出力上限値を超える場合は前記出力上限値を,圧縮後信号値として算出する信号値圧縮手段。
(1−8)前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれる場合に,前記第1の原色の信号値及び前記第2の原色の信号値にそれぞれ前記出力上限値及び前記圧縮後信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第2の二次映像信号生成手段。
なお,前記第2の二次映像信号生成手段は,前記上限超え信号変換手段の一例である。
ここで,前記二次映像信号が,正規化された値として0から1までの範囲である前記出力範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号である場合,前記一次映像信号は,正規化された値として負の値から1より大きい値までの範囲である前記拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号である。この場合,前記出力下限値及び前記出力上限値がそれぞれ0及び1であるので,前記(A1)式は,次の(A1’)式に置き換えられる。この(A1’)式は,前記(A1)式の一例である。
【数2】

なお,本発明は,必ずしも(A1)及び(A2)式に従って前記RGB各原色の中間信号値を算出することを要件とするものではなく,(A1)式及び(A2)式に従った処理と同等の結果が得られる処理を実行することによって前記RGB各原色の中間信号値を算出するものであればよい。例えば,前記(A1)式及び(A2)式に従った信号値算出処理と同等の結果が得られる他の演算式に基づく信号値算出処理,或いは,予め設定された信号値テーブルに基づく信号変換処理等を実行することにより,前記RGB各原色の中間信号値を算出することも考えられる。
また,前記一次映像信号は,前記映像表示手段により表示(再現)可能な色域に対応するように色域変換がなされた後の信号であるものとする。従って,前記一次映像信号の信号値が前記出力範囲内である場合,その一次映像信号をそのまま前記二次映像信号とすれば,前記一次映像信号が表す本来の色が前記映像表示手段によって正しく再現(表示)される。
【0006】
以下,本発明における映像信号の変換処理の内容について説明する。ここでは,前記(1−1)〜(1−3)を構成要件とする発明の一例である,前記(1−4)〜(1−8)を構成要件とする発明を説明の対象とする。
なお,以下の説明において,「階調レベル」とは,RGB各原色の信号値(Xr,Xg,Xb)から前記出力下限値(Smin)を差し引いた値を意味する。なお,前記出力下限値が0(Smin=0)である場合,RGB各原色の信号値と「階調レベル」とは同じ値となる。
本発明においては,前記一次映像信におけるRGBの各信号値(Xr,Xg,Xb)が前記出力範囲内である場合,その一次映像信号をそのまま前記二次映像信号とする。即ち,(A1)式及び(A2)式において,前記中間信号値がLr=Xr,Lg=Xg,Lb=Xgとなり,それらの値がそのまま前記二次映像信号におけるRGB3原色の信号値となる。
また,本発明においては,前記一次映像信号におけるある原色の階調レベルが負のレベルである(即ち,信号値Xr,Xg,Xbが前記出力下限値Sminよりも小さい)場合,その階調レベル(負のレベル)を,その大きさ(絶対値)に応じたレベルの他の2原色の正の階調レベルに置き換える。例えば,前記中間信号値算出手段は,前記出力範囲が0〜1であり,前記一次映像信号におけるR信号の値が−0.1である場合,そのR信号の負の階調レベル(−0.1−0=−0.1)を,その大きさに応じた他の2原色(G及びB)の正の階調レベル(k・c:但し,c=0−(−0.1),kは正の定数)に置き換える。これは,原色Rの負の階調レベル(−c)をその原色Rの補色であるシアンの正の階調レベル(c)に置き換え,さらにそのシアンの正の階調レベル(c)を加法混色法によって他の2原色(G及びB)それぞれの正の階調レベル(k・c)に換算することを意味する。
【0007】
以上に示したように,本発明によれば,前記一次映像信号の信号値(Xr,Xg,Xb)が前記出力範囲内である場合,その一次映像信号がそのまま前記二次映像信号となるため,前記一次映像信号が表す本来の色が前記映像表示手段によって正しく再現(表示)される。
また,本発明によれば,前記一次映像信号における3原色の信号それぞれについて,その値が前記出力下限値よりも小さい(階調レベルが負である)場合には,当該原色の負の階調レベルが,その大きさ(絶対値)に応じて他の2原色の正の階調レベルに置き換えられる。そのため,本発明によれば,前記一次映像信号に階調レベルが負である信号値が含まれる場合(RGBの各信号値の1つ以上が前記出力下限値を下回る場合)であっても,その階調レベルの組合せ(RGBの組合せ)に応じた色を表示手段によって再現(表示)でき,多くの場合に(前記中間信号値が前記出力上限値を超えない限り),前記映像表示手段の色域外の領域での色の連続性を確保できる(グラデーションの破綻を回避できる)。しかも,本発明における映像信号の変換処理は,RGB各原色の信号値に基づく簡易な(演算負荷の低い)四則演算により実現できる。
但し,3原色の信号それぞれについて,負の階調レベルを他の2原色の信号の正の階調レベルに置き換えることにより得られたRGB各原色の中間信号値Lr,Lg,Lbが,前記出力上限値を超えることもある。そのような場合,本発明では,前記(1−1)〜(1−3)に示される処理,又は前記(1−4)〜(1−8)に示される処理により,前記出力上限値を超えるRGB各原色の信号値が,前記出力上限値を超えない信号値(例えば,前記二次映像信号の信号値)へ変換される。
例えば,前記中間信号値Lr,Lg,Lbの1つ以上が前記出力上限値を超える場合,それらの最大値Max(Lr,Lg,Lb)を前記出力上限値へ圧縮するときの圧縮率で,3つの前記中間信号値Lr,Lg,Lbの全てを圧縮すること(以下,単純圧縮という)が考えられる。この単純圧縮では,例えば,前記出力範囲が0〜1,(Lr,Lg,Lb)=(2,1,1)である場合,前記二次映像信号におけるRGBの信号値が(1,0.5,0.5)となる。即ち,前記単純圧縮では,3つの前記中間信号値Lr,Lg,Lbのうちの最大値が大きくなるほど,残りの中間信号値が,前記最大値に反比例した小さな値となる。その結果,前記単純圧縮では,本来は前記映像表示手段の色域外の色が,極端に彩度の高い色や暗い色になってしまうという問題点がある。前述の例,(Lr,Lg,Lb)=(2,1,1)では,前記二次映像信号が,前記単純圧縮によって非常に彩度の高いピンク色(1,0.5,0.5)を表す信号となる。
一方,本発明においては,3つの前記中間信号値Lr,Lg,Lbのうち,それらの最大値Max(Lr,Lg,Lb)である前記第1の原色の信号値は,前記出力上限値へ圧縮される。一方,その他の前記第2の原色の信号値については,前記第1の原色の信号値での圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率で圧縮される。
その結果,本来は前記映像表示手段の色域外の色が,前記映像表示手段において極端に彩度の高い色や暗い色で表示されて見る人に違和感を生じさせることを防止できる。また,前記映像表示手段の色域外の領域での色の連続性もある程度は確保できる。
【0008】
また,本発明に係る映像信号変換装置が,さらに,次の(2)に示される構成要素を備えることも考えられる。
(2)所定の操作入力に応じて,前記圧縮率設定手段による圧縮率の設定に用いられる前記第1の原色の信号値と圧縮率との対応関係の情報を変更する圧縮調整手段。
これにより,例えば,ユーザが,本来は前記映像表示手段の色域外の色について,その表示色を好みに応じて変更でき,利便性が高まる。
なお,前記一次映像信号の例としては,IEC 61966−2−4規格(いわゆる新動画用拡張色空間国際規格であるxvYCC)若しくはIEC 61966−2−1規格に準拠した映像信号や,その映像信号にガンマ処理が施された信号が考えられる。なお,IECは,International Electrotechnical Commission(国際電気標準会議)の略である。
一方,前記二次映像信号又はその二次映像信号にガンマ処理が施された信号の例として,ITU−R BT.709規格又はITU−R BT.601−5規格に準拠した映像信号が考えられる。なお,ITUは,International Telecommunication Union(国際電気通信連合)の略である。
また,本発明は,以上に示した本発明に係る映像信号変換装置及びその映像信号変換装置により生成された前記二次映像信号に基づく映像を表示する映像表示手段を備えた映像表示装置として捉えることもできる。
また,本発明は,以上に示した本発明に係る映像信号変換装置における各手段が実行する処理をプロセッサ(演算手段或いはコンピュータといってもよい)によって実行する映像信号変換方法として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,映像表示部の色域外の領域の色から映像表示部の色域内の色への変換を行うにあたり,その変換後の映像信号における色の連続性を極力確保することができる。しかも,本発明における映像信号の変換処理は,RGB各原色の信号値に基づく簡易な(演算負荷の低い)四則演算により実現できるので,比較的低い性能のプロセッサにより実現できる。
また,本発明によれば,前記一次映像信号から前記二次映像信号への変換の過程で,映像表示手段の出力可能な上限値を超える信号値が,前記単純圧縮よりも圧縮度合いの小さな圧縮率で圧縮される。そのため,本来は前記映像表示手段の色域外の色が,前記映像表示手段において極端に彩度の高い色や暗い色で表示され,見る人に違和感を生じさせるという前記単純圧縮の場合の問題を解消できる。
また,前記一次映像信号の信号値(Xr,Xg,Xb)が前記出力範囲内(映像表示手段に入力される前記二次映像信号の信号値がとり得る範囲内)である場合,その一次映像信号がそのまま前記二次映像信号となるため,前記一次映像信号が表す本来の色が前記映像表示手段によって正しく再現(表示)される。
また,本発明によれば,前記一次映像信号が前記映像表示手段の色域外の領域の色を表す信号である場合,少なくともその信号の階調レベルが負であるときには,多くの場合に,前記映像表示手段の色域外の領域での色の連続性を確保できる(グラデーションの破綻を回避できる)。特に,前記(A2)式における係数k(定数)を1とすれば,前記一次映像信号(元の映像信号)が表す色の色相と,前記二次映像信号が表す色の色相とを一致させることができ,前記一次映像信号が表す色(元の色)が前記映像表示手段の色域外の色である場合に,元の色と色味の近い色を前記映像表示手段において再現(表示)できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る映像表示装置Zの主要部の概略構成を表すブロック図,図2は映像表示装置Zの変形例である映像表示装置Z’の主要部の概略構成を表す図,図3は映像表示装置Zが備える信号範囲調整部が原色Bの負の階調レベルを他の2原色の正の階調レベルに置き換える様子をベクトルにより表現した概念図,図4〜図7は映像信号の再現色の具体例(第1の例〜第4の例)を色度図により表した図,図8は映像表示装置Zが備える信号範囲調整部により算出される中間信号値と圧縮率との関係の一例を表すグラフ,図9は映像表示装置Zが備える信号範囲調整部により生成される二次映像信号の信号値の一例を表すグラフである。
【0011】
本発明の実施形態に係る映像表示装置Zは,図1に示すように,映像表示手段であるディスプレイ5と,入力された映像信号を前記ディスプレイ5に供給するRGB信号(映像信号)に変換する映像信号変換装置Qとを備えている。
前記ディスプレイ5は,RGB各原色の信号(R信号,G信号及びB信号)からなる映像信号が入力され,その映像信号に基づく映像を表示する液晶ディスプレイやCRT等のデバイスである。このディスプレイ5に入力される映像信号(RGB信号)は,例えば,ITU−R BT.709規格やITU−R BT.601−5規格に準拠したRGB信号等であり,予め定められた出力下限値Sminから出力上限値Smaxまで(ここで,Smin<Smax)の範囲(以下,出力範囲Wという)の値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号(以下,非線形二次映像信号V2’という)である。なお,前記非線形二次映像信号V2’は,前記ディスプレイ5により表示可能(再現可能)な色域内の色と対応するように,信号値(RGB3原色の信号値)が前記出力範囲W(例えば,0〜255或いは0〜1等)内で正規化された映像信号である。
そして,映像表示装置Zには,前記ディスプレイ5が表示(再現)可能な色域よりも広く拡張された色域を表現可能な映像信号が入力される。この映像信号のことを,以下,入力映像信号V0という。
前記映像信号変換装置Qは,外部から入力される前記入力映像信号V0を,RGB信号(RGB各原色の信号からなる映像信号,以下,非線形一次映像信号V1’という)に変換するとともに,さらに,その非線形一次映像信号V1’を,前記ディスプレイ5に入力される前記非線形二次映像信号V2’(前記出力範囲Wの値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号)へ変換する処理を実行するものである。
【0012】
また,前記映像信号変換装置Qは,例えば,DSP(Digital Signal Processor)やASIC等のデジタル処理回路(素子)であり,演算用のプロセッサ(演算手段)及びそのプロセッサにより実行されるプログラムが記憶されたROM等の記憶手段,並びにRAM等のその他の周辺装置を備えて構成されている。そして,前記映像信号変換装置Qが備える各構成要素(RGB信号生成部1,一次側ガンマ処理部2,信号範囲調整部3及び二次側ガンマ処理部4)は,それぞれの処理に対応したプログラムを実行する前記プロセッサによって具現されている。
なお,前記映像信号変換装置Qが備える各構成要素は,前段の構成要素がメモリに記録したデジタルの信号値(信号処理の結果)を,後段の構成要素がそのメモリから読み出して参照することにより,処理結果(信号値)の受け渡しを行う。また,前記映像信号変換装置Qが備える各構成要素により,処理の過程で算出される各種信号値は,随時メモリに一時記憶される。
【0013】
続いて,前記映像信号変換装置QにおけるRGB信号生成部1,一次側ガンマ処理部2,信号範囲調整部3及び二次側ガンマ処理部4の処理について説明する。
前記RGB信号生成部1は,外部から入力される前記入力映像信号V0を,RGB各原色の信号からなる映像信号(以下,非線形一次映像信号V1’という)に変換する処理(即ち,RGB信号を生成する処理)を実行する。
前記入力映像信号V0は,例えば,IEC 61966−2−4規格,或いはIEC 61966−2−1規格に準拠したYUV信号やYcbcr信号等の映像信号であり,その色域は,前記ディスプレイ5により表示(再現)可能な色域よりも広く拡張されている。
そして,前記ディスプレイ5の色域(前記入力映像信号V0により表現可能な色域)よりも前記入力映像信号V0により表現可能な色域の方が広いため,前記非線形一次映像信号V1’は,前記出力範囲W(出力下限値Sminから出力上限値Smaxまで)を一部に含む拡張範囲W’の信号値をとり得るRGB信号(RGB各原色の信号からなる映像信号)となる。
なお,IEC 61966−2−4規格及びIEC 61966−2−1規格において,各規格に準拠したYUV信号やYcbcr信号を同規格に準拠したRGB信号に変換する規則(変換式)が規定されており,前記RGB信号生成部1は,その規則(変換式)に従った信号変換処理を行う。このため,前記入力映像信号V0が,IEC 61966−2−4規格,或いはIEC 61966−2−1規格に準拠したYUV信号やYcbcr信号等の映像信号である場合,前記非線形一次映像信号V1も,IEC 61966−2−4規格,或いはIEC 61966−2−1規格に準拠したRGB信号となる。
【0014】
ところで,前記非線形一次映像信号V1’及び前記非線形二次映像信号V2’は,信号値(輝度の階調値)とその信号値に対応する実際の色の輝度との対応関係が非線形である映像信号である。以下,前記非線形一次映像信号V1’及び前記非線形二次映像信号V2’それぞれについて,信号値とその信号値に対応する実際の色の輝度との対応関係が線形となるように修正(補正)された信号を,それぞれ線形一次映像信号V1及び線形二次映像信号V2という。
前記一次側ガンマ処理部2は,前記非線形一次映像信号V1’に対して周知のガンマ処理(ガンマ補正処理ともいう)を施すことにより,信号値(輝度の階調値)とその信号値に対応する実際の色の輝度との対応関係が非線形である前記非線形一次映像信号V1’を,信号値とその信号値に対応する実際の色の輝度との対応関係が線形である線形一次映像信号V1に変換する処理を実行する。通常,この一次側ガンマ処理部2は,ガンマ値が(1/2.2)であるガンマカーブに従ってガンマ処理を行う。なお,前記線形一次映像信号V1も,その信号値が前記拡張範囲W’内の値をとり得る映像信号である。また,前記一次側ガンマ処理部2が参照する前記非線形一次映像信号V1’から前記線形一次映像信号V1への信号変換テーブル又は変換式は,映像信号変換装置Qが備えるメモリ(ROM等)に予め記憶されている。
【0015】
また,前記信号範囲調整部3は,前記出力範囲Wを一部に含む前記拡張範囲W’の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる前記線形一次映像信号V1を,前記出力範囲Wの値をとり得るRGB各原色の信号からなる前記線形二次映像信号V2へ変換する処理を実行するものである。以下,前記信号範囲調整部3が実行する処理の詳細について説明する。
前記信号範囲調整部3が実行する処理は,概ね,中間信号値算出処理,第1の二次映像信号生成処理,圧縮率設定処理,信号値圧縮処理及び第2の二次映像信号生成処理に大別される。以下,それらの処理を分説する。
[中間信号値算出処理]
まず,前記信号範囲調整部3は,前記線形一次映像信号V1におけるRGB各原色の信号の値(Xr,Xg,Xb)を次の(A1)式及び(A2)式に適用(代入)して得られるRGB各原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)を算出する(中間信号値算出処理)。なお,当該映像信号変換装置Qにおいては,(A1)式及び(A2)式における「一次映像信号」におけるRGB3原色の信号の値(Xr,Xg,Xb)は,前記線形一次映像信号V1におけるRGB各原色の信号の値であるものとする。
【数3】

ここで,前記非線形二次映像信号V2’及び前記線形二次映像信号V2が,正規化された値として0から1までの範囲(前記出力範囲Wの一例)の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号である場合,前記非線形一次映像信号V1’及び前記線形一次映像信号V1は,正規化された値として負の値から1より大きい値までの範囲(前記拡張範囲W’)の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる映像信号である。この場合,前記出力下限値Sminが0,前記出力上限値Smaxが1であるので,(A1)式は,次の(A1’)式に置き換えられる。この(A1’)式は,(A1)式の一例である。
【数4】

【0016】
[第1の二次映像信号生成処理]
そして,前記信号範囲調整部3は,前記RGB各原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)に前記出力上限値Smaxよりも大きな値が含まれるか否かを判別する。
ここで,前記信号範囲調整部3は,前記RGB各原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)に前記出力上限値Smaxよりも大きな値が含まれない場合,RGB各原色の信号値に前記中間信号値(Lr,Lg,Lb)が設定された前記線形二次映像信号V2を生成する(第1の二次映像信号生成処理)。即ち,「Lr≦SmaxかつLg≦SmaxかつLb≦Smax」である場合,前記信号範囲調整部3は,前記RGB各原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)をそのまま信号値(Yr,Yg,Yb)とする前記線形二次映像信号V2を生成する。
【0017】
[圧縮率設定処理]
一方,前記信号範囲調整部3は,前記RGB各原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)に前記出力上限値Smaxよりも大きな値が含まれる場合,即ち,Lr>Smax,Lg>Smax,Lb>Smaxの3条件うちのいずれか1つ以上の条件が成立する場合に,前記出力上限値Smaxよりも大きな前記RGB各原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)を前記出力範囲内Wの値に圧縮するときの圧縮率Rsを設定する。
具体的には,前記信号範囲調整部3は,RGB各原色の前記中間信号値(Lr,Lg,Lb)のうち値が最大である原色(以下,第1の原色という)の前記中間信号値Lmaxに応じて,その中間信号値を前記出力上限値Smaxへ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いが小さくなる範囲内で圧縮率Rsを設定する(圧縮率設定処理)。
例えば,前記信号範囲調整部3は,前記中間信号値(Lr,Lg,Lb)を次の(B1)に適用することによって圧縮率Rsを設定する。
【数5】

(B1)式は,前記中間信号値の最大値Lmaxと前記出力上限値Smaxとの差(Lmax−Smax)が大きくなるほど,値が1から所定の収束値a(0より大きく1未満の値)へ漸近する前記圧縮率Rsを算出する式の一例である。
なお,(B1)式における変数αの逆数(=1/α)が,前記中間信号値(Lr,Lg,Lb)における前記第1の原色の信号値を前記出力上限値Smaxへ圧縮するときの圧縮率を表す。即ち,圧縮率が大きい(1に近い)ほど,圧縮の度合いが小さいことを意味する。
また,次の(B1’)式は,それぞれ前記出力範囲が0〜1(Smin=0かつSmax=1)である場合における(B1)式に相当する式である。
【数6】

【0018】
図8は,前記出力範囲が0〜1であるときの前記第1の原色の中間信号値Lmaxと(B1’)式に基いて設定される圧縮率Rsとの関係を表すグラフである。図8において,グラフ線g1.1,g1.2は(B1’)式に基く圧縮率であり,グラフ線g0は,前記第1の原色の信号値Lmaxを前記出力上限値Smaxへ圧縮するときの圧縮率である。なお,図8におけるグラフ線g1.1は,(B1)式における定数(a,b)の値を(0.5,2)とした場合の例,グラフ線1.2は,(B1)式における定数(a,b)の値を(0.5,1)とした場合の例である。
図8に示されるように,(B1’)式に基けば,前記第1の原色の信号値を前記出力上限値Smaxへ圧縮するときの圧縮率よりも,圧縮度合いの小さな前記圧縮率Rsが設定されることがわかる。このことは,(B1)式に基づいて圧縮率Rsが設定される場合も同様である。
【0019】
ここで,(B1)式のような前記圧縮率Rsの算出方法を規定する情報は,前記映像信号変換装置Qが備えるEEPROM等のメモリに予め記憶される情報であるが,前記映像信号変換装置Qが,その情報を変更する圧縮調整処理を実行する機能を備えることも考えられる。
例えば,前記映像信号変換装置Qが,前記映像表示装置Zが備える操作入力部(リモコンに設けられた操作キー等)を通じて,予め定められた圧縮パラメータ変更操作が行われたことを検知した場合に,その変更操作の内容に従って,前記圧縮率Rsの設定に用いられる前記第1の原色の信号値Lmaxと圧縮率Rsとの対応関係を規定する情報を変更し,変更結果をメモリに記録する圧縮調整処理を行うことが考えられる。
より具体的には,前述した(5)式又は(6)式に基づいて前記圧縮率Rsを設定する場合,前記圧縮パラメータ変更操作に応じて,定数aを変更すること等が考えられる。
これにより,例えば,ユーザが,本来は前記ディスプレイ5の色域外の色について,その表示色を好みに応じて変更でき,利便性が高まる。
なお,前記圧縮率Rsの算出方法を規定する情報は,例えば,前記圧縮率Rsの算出式そのもの,その算出式に含まれる定数,又はその算出式の内容を表す信号変換テーブル情報等が考えられる。
【0020】
[信号圧縮処理]
さらに,前記前記信号範囲調整部3は,RGB各原色のうち前記第1の原色を除く残りの原色(以下,第2の原色という)について,前記中間信号値に前記(B1)式等に基き設定された圧縮率Rsを乗算することによってその中間信号値を圧縮した信号値を,前記第2の原色の圧縮後信号値として算出する。但し,そのようにして算出された前記第2の原色の圧縮後信号値が前記出力上限値Smaxを超える場合は,前記出力上限値Smaxを前記第2の原色の圧縮後信号値として算出する(信号値圧縮処理)。
【0021】
[第2の二次映像信号生成処理]
前記第1の原色の信号値に前記出力上限値Smaxが設定され,さらに前記第2の原色の信号値に前記信号値圧縮処理により得られた前記第2の原色それぞれの前記圧縮後信号値が設定された前記線形二次映像信号V2を生成する(第2の二次映像信号生成処理)。
なお,前記信号圧縮処理及び前記第2の二次映像信号生成処理も,前記RGB各原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)に前記出力上限値Smaxよりも大きな値が含まれる場合に行われる処理であることはいうまでもない。
以上のようにして前記信号範囲調整部3により生成された前記線形二次映像信号V2は,その信号値(Yr,Yg,Yb)が前記出力範囲W1に収まる信号となる。
【0022】
また,前記二次側ガンマ処理部4は,前記信号範囲調整部3により生成された前記線形二次映像信号V2に周知のガンマ処理を施すことにより,前記線形二次映像信号V2を前記非線形二次映像信号V2’(RGB3原色の信号)に変換する。通常,この二次側ガンマ処理部4は,ガンマ値が2.2(前記一次側ガンマ処理部2でのガンマ値の逆数)であるガンマカーブに従ってガンマ処理を行う。
なお,この前記二次側ガンマ処理部4が出力する前記非線形二次映像信号V2’も,その信号値(Yr’,Yg’,Yb’)が前記出力範囲W1に収まる信号となる。そして,前記ディスプレイ5は,前記二次側ガンマ処理部4から出力される前記非線形二次映像信号V2’に基づく映像を出力(表示)する。
【0023】
以下,映像信号変換装置Qによる映像信号の変換処理の内容について説明する。なお,以下の説明において,RGB各原色の信号値(Xr,Xg,Xb)から前記出力下限値(Smin)を差し引いた値を「階調レベル」と称する。
映像信号変換装置Qにおいては,前記線形一次映像信号V1の信号値(Xr,Xg,Xb)が前記出力範囲W内である場合,その線形一次映像信号V1をそのまま前記線形二次映像信号V2とする。即ち,(A1)式及び(A2)式において,前記中間信号値がLr=Xr,Lg=Xg,Lb=Xgとなり,それらの値がそのまま前記線形二次映像信号V2におけるRGB3原色の信号値(Yr,Yg,Yb)となる。
また,映像信号変換装置Qにおいては,前記線形一次映像信号V1におけるある原色の階調レベルが負のレベルである(即ち,信号値Xr,Xg,Xbが前記出力下限値Sminよりも小さい)場合,その階調レベル(負のレベル)を,その大きさ(絶対値)に応じたレベルの他の2原色の正の階調レベルに置き換える。例えば,前記信号範囲調整部3は,前記出力範囲が0〜1であり,前記線形一次映像信号V1におけるR信号の値Xrが−0.1である場合,そのR信号の値Xrの負の階調レベル(−0.1−0=−0.1)を,その大きさに応じた他の2原色(G及びB)の正の階調レベル(k・c:但し,c=0−(−0.1),kは正の定数)に置き換える。これは,原色Rの負の階調レベル(−c)をその原色Rの補色であるシアンの正の階調レベル(c)に置き換え,さらにそのシアンの正の階調レベル(c)を加法混色法によって他の2原色(G及びB)それぞれの正の階調レベル(k・c)に換算することを意味する。
同様に,前記信号範囲調整部3は,前記出力範囲が0〜1であり,前記線形一次映像信号V1におけるG信号の値Xgが−0.1である場合,そのG信号の値Xgの負の階調レベル(−0.1−0=−0.1)を,その大きさに応じた他の2原色(R及びB)の正の階調レベル(k・m:但し,m=0−(−0.1),kは正の定数)に置き換える。これは,原色Gの負の階調レベル(−m)をその原色Rの補色であるマゼンタの正の階調レベル(m)に置き換え,さらにそのマゼンタの正の階調レベル(m)を加法混色法によって他の2原色(R及びB)それぞれの正の階調レベル(k・m)に換算することを意味する。
同様に,前記信号範囲調整部3は,前記出力範囲が0〜1であり,前記線形一次映像信号V1におけるB信号の値Xbが−0.1である場合,そのB信号Xbの負の階調レベル(−0.1−0=−0.1)を,その大きさに応じた他の2原色(R及びG)の正の階調レベル(k・y:但し,y=0−(−0.1),kは正の定数)に置き換える。これは,原色Bの負の階調レベル(−y)をその原色Bの補色であるイエローの正の階調レベル(y)に置き換え,さらにそのイエローの正の階調レベル(y)を加法混色法によって他の2原色(R及びG)それぞれの正の階調レベル(k・y)に換算することを意味する。
図3は,前記信号範囲調整部3が原色Bの負の階調レベルを他の2原色(R,G)それぞれの正の階調レベルに置き換える様子をベクトルにより表現した概念図である。なお,図3において,6方向への矢印は原色R,G,B及びその補色であるシアン(C),マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の座標軸を表す。
図3に示すように,前記信号範囲調整部3は,前記線形一次映像信号V1における原色Bの階調レベル(Xb−Smin)が負である場合,それを原色Bの補色であるイエローの正の階調レベル(y)に置き換え,さらにそのイエローの正の階調レベル(y)を加法混色法によって他の2原色(R及びG)それぞれの正の階調レベル(k・y)に置き換える。なお,図3に示す例はk=1の場合の例である。
【0024】
図4〜図7は映像信号の再現色の具体例を色度図(xy式度図)により表した図である。また,図4〜図7において,実線で示す枠及びその内側の領域は,いわゆる高品位ディスプレイである前記ディスプレイ5により再現可能な色域(前記線形二次映像信号V2及び前記非線形二次映像信号V2’の色域)を表し,波線で表す枠及びその内側の領域は,CIE1931色度図の色域を表す。なお,図4〜図7の説明において,前記出力範囲は0〜1(Smin=0,Smax=1)である。
また,RGB3原色の信号値からxy色度図の座標値x,yへの変換式は,IEC 61966−2−4規格において定められた次の(E1)式を用いている。なお,(E1)式におけるR,G,Bは,それぞれRGB3原色の信号値,x,yは,xy色度図の座標値である。
【数7】

また,前記信号範囲調整部3による処理において,前記(A2)式における定数kは0.5であるものとし,また,前記二次変換規則は,前記(B1)式に基づく変換規則であるものとする。
図4において,映像信号の信号値(R,G,B)が,1つの負の値を含む(0.027397,0,−0.803228)である色(以下,第1の色という)の座標がa1,(0.027397,0,−0.100000)である色(以下,第2の色という)の座標がa2,前記第1の色及び前記第2の色それぞれを表す映像信号の信号値をクリップ処理により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がb1及びb2,前記第1の色及び前記第2の色それぞれを表す映像信号(前記線形一次映像信号V1)の信号値を前記信号範囲調整部3により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がc1及びc2として表記されている。
図4から,クリップ処理では,異なる色である前記第1の色(座標a1)及び前記第2の色(座標a2)が,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における同じ色(同じ座標b1,b2)に変換されてしまうことがわかる。一方,図4から,前記信号範囲調整部3の処理によれば,異なる色である前記第1の色(座標a1)及び前記第2の色(座標a2)は,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における異なる色(異なる座標c1,c2)に変換されことがわかる。
【0025】
また,図5において,映像信号の信号値(R,G,B)が,負の値と1より大きい値とを含む(−0.6647,1.1739,0.0241)である色(以下,第3の色という)の座標がa3,(−0.3,1.1739,0.0241)である色(以下,第4の色という)の座標がa4,前記第3の色及び前記第4の色それぞれを表す映像信号の信号値をクリップ処理により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がb3及びb4,前記第3の色及び前記第4の色それぞれを表す映像信号(前記線形一次映像信号V1)の信号値を前記信号範囲調整部3により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がc3及びc4として表記されている。
図5からも,クリップ処理では,異なる色である前記第3の色(座標a3)及び前記第4の色(座標a4)が,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における同じ色(同じ座標b3,b4)に変換されてしまうことがわかる。一方,図5から,前記信号範囲調整部3の処理によれば,異なる色である前記第3の色(座標a3)及び前記第4の色(座標a4)は,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における異なる色(異なる座標c3,c4)に変換されことがわかる。
【0026】
また,図6において,映像信号の信号値(R,G,B)が,1つの1より大きい値を含む(2.0,0.8,0.7)である色(以下,第5の色という)の座標がa5,(1.3,0.8,0.7)である色(以下,第6の色という)の座標がa6,前記第5の色及び前記第6の色それぞれを表す映像信号の信号値をクリップ処理により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がb5及びb6,前記第5の色及び前記第6の色それぞれを表す映像信号(前記線形一次映像信号V1)の信号値を前記信号範囲調整部3により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がc5及びc6として表記されている。
図6からも,クリップ処理では,異なる色である前記第5の色及び前記第5の色が,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における同じ色(同じ座標b5,b6)に変換されてしまうことがわかる。一方,図6から,前記信号範囲調整部3の処理によれば,異なる色である前記第5の色及び前記第6の色は,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における異なる色(異なる座標c5,c6)に変換されことがわかる。
【0027】
また,図7において,映像信号の信号値(R,G,B)が,2つの負の値を含む(0.7,−0.5,−0.8)である色(以下,第7の色という)の座標がa7,(0.5,−0.5,−0.8)である色(以下,第8の色という)の座標がa8,前記第7の色及び前記第8の色それぞれを表す映像信号の信号値をクリップ処理により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がb7及びb8,前記第7の色及び前記第8の色それぞれを表す映像信号(前記線形一次映像信号V1)の信号値を前記信号範囲調整部3により前記出力範囲W内の信号値に変換して得られる色の座標がc7及びc8として表記されている。
図7からも,クリップ処理では,異なる色である前記第7の色(座標a7)及び前記第8の色(座標a8)が,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における同じ色(同じ座標b7,b8)に変換されてしまうことがわかる。一方,図7から,前記信号範囲調整部3の処理によれば,異なる色である前記第7の色(座標a7)及び前記第8の色(座標a8)は,信号変換によって前記ディスプレイ5の色域内における異なる色(異なる座標c7,c8)に変換されことがわかる。
以上図4〜図7に示したように,映像表示装置Zにおいては,前記線形一次映像信号V1が前記ディスプレイ5の色域外の領域の色を表す信号である場合でも,その映像信号の色を代替色でディスプレイ5上に表示できるとともに,前記線形一次映像信号V1の信号値の変化に応じてディスプレイ5による表示色も変化するので,ディスプレイ5による表示色の連続性を確保できる(グラデーションの破綻を回避できる)。
【0028】
次に,前記線形一次映像信号V1の色相と前記線形2次映像信号V2の色相との関係について説明する。
前記出力下限値Sminが0であるときの前記線形一次映像信号V1におけるRGB信号の信号値(Xr,Xg,Xb)と,そのRGB信号に相当するYcbcr信号(輝度値Y,原色Bの色差Cb,原色Rの色差Crの組合せ)との関係は,次の(C1)式により表される。
【数8】

この(C1)式から,前記線形一次映像信号V1に相当するYcbcr信号における両色差信号値の比Cr/Cbは,次の(C2)式で表される。
【数9】

一方,前記出力下限値Sminが0であるときの前記線形二次映像信号V2におけるRGB信号の信号値(Yr,Yg,Yb)と,そのRGB信号に相当するYcbcr信号(輝度値Y’,原色Bの色差Cb’,原色Rの色差Cr’の組合せ)との関係は,次の(D1)式により表される。
【数10】

【0029】
ここで,前記線形一次映像信号V1における原色Bの信号値Xbのみが前記出力下限値Smin未満であり,その他の2原色(R,G)の信号値Xr,Xb,及び前記RGB3原色の中間信号値(Lr,Lg,Lb)が前記出力範囲W内である(即ち,前記出力上限値Smaxを超えない)場合を考える。この場合,前記(A1)式及び前記(A2)式から次の(D2)式が得られる。
【数11】

この(D2)式を前記(D1)式に代入(適用)することにより,次の(D3)式が得られる。
【数12】

この(D3)式から,前記線形二次映像信号V2に相当するYcbcr信号における両色差信号値の比Cr’/Cb’は,次の(D4)式で表される。
【数13】

周知の通り,2つのYcbcr信号について,色差信号値の比(Cr/Cb及びCr’/Cb’)が一致すれば,それら2つのYcbcr信号それぞれにより表される色は,色相が同一である。ここで,前記(C2)式に基づくCr/Cbと,(D4)式に基づくCr’/Cb’とを一致させるには,定数kが1であればよい。また,色相の一致について以上に示したことは,前記線形一次映像信号V1におけるRGB3原色の信号値の組合せが他の組合せである場合であっても同様である。
従って,前記(A2)式における定数kが1であれば,多くの場合(前記中間信号値Lr,Lg,Lbが前記出力上限値Smaxを超えない限り),前記信号範囲調整部3による信号変換(信号値の範囲の調整)の前後において,映像信号が表す色の色相を維持する(一致させる)ことができ,前記線形一次映像信号V1が表す色(元の色)が前記ディスプレイ5の色域外の色である場合に,元の色と色味の近い色を前記ディスプレイ5において再現(表示)できる。
また,前記(B1)式に基づく信号変換の前後において,RGB3原色の信号値の比は変化しないので色相は維持される。従って,前記(A2)式における定数kを1とし,前記二次変換規則として前記(B1)式に基づく変換規則を採用すれば,常に,前記信号範囲調整部3による信号変換(信号値の範囲の調整)の前後において,映像信号が表す色の色相を維持する(一致させる)ことができる。
【0030】
以上に示したように,映像表示装置Zによれば,前記線形一次映像信号V1の信号値(Xr,Xg,Xb)が前記出力範囲W内である場合,その線形一次映像信号V1がそのまま前記線形二次映像信号V2となるため,前記非線形一次映像信号V1’及び前記線形一次映像信号V1が表す本来の色が,前記ディスプレイ5によって正しく再現(表示)される。
また,映像表示装置Zにおいては,前記線形一次映像信号V1における3原色の信号それぞれについて,その値(Xr,Xg,Xb)が前記出力下限値Sminよりも小さい(階調レベルが負である)場合には,当該原色の負の階調レベルが,その大きさ(絶対値)に応じて他の2原色の正の階調レベルに置き換えられる。そのため,映像表示装置Zによれば,前記非線形一次映像信号V1’及び前記線形一次映像信号V1が前記ディスプレイ5の色域外の領域の色を表す信号である場合,少なくともその信号の階調レベルが負であるときには,多くの場合に(前記中間信号値Lr,Lg,Lbが前記出力上限値Smaxを超えない限り),前記ディスプレイ5の色域外の領域での色の連続性を確保できる(グラデーションの破綻を回避できる)。特に,前記(A2)式における定数kが1であれば,前記線形一次映像信号V1が表す色(元の色)が前記ディスプレイ5の色域外の色である場合に,元の色と色味の近い色(色相が同じ色)を前記ディスプレイ5において再現(表示)できる。しかも,前記映像信号変換装置Qが実行する映像信号の変換処理は,RGB各原色の信号値に基づく簡易な(演算負荷の低い)四則演算により実現できる。
但し,RGB各原色の中間信号値Lr,Lg,Lbが,前記出力上限値Smaxを超えることもまれに生じ得る。その場合,前記圧縮率設定処理,前記信号圧縮処理及び前記二次映像信号生成処理により,前記出力範囲W内へ信号値が圧縮された前記線形二次映像信号V2が生成される。
【0031】
図9は,前記第2の二次映像信号生成処理により生成される前記線形二次映像信号V2におけるRGBそれぞれの信号値(Yr,Yg,Yb)の一例を表すグラフである。図9に示される例は,前記出力範囲が0〜1であり,前記RGB各原色の前記中間信号値(Lr,Lg,Lb)=(Lr,0.8,0.5)であり,前記圧縮率Rsが定数(a,b)=(0.5,2)とする(B1’)式に基づき設定された場合の例である。また,図9のグラフにおける横軸はR(赤色)の前記中間信号値Lr,縦軸は前記線形二次映像信号V2の信号値を表す。なお,図8に波線で示された2つのグラフ線は,それぞれ前記第1の原色の信号値Lmaxを前記出力上限値Smaxへ圧縮するときの圧縮率で前記中間信号値(Lr,Lg,Lb)=(Lr,0.8,0.5)を圧縮した場合(前記単純圧縮が行われた場合)の圧縮後のG信号値Lr’及びB信号値Lb’のグラフである。
図9からわかるように,前記第2の二次映像信号生成処理によれば,前記単純圧縮の場合と比較して,本来は前記ディスプレイ5の色域外の色が,極端に彩度の高い色や暗い色になってしまうことが防止される。
【0032】
ところで,信号変換が行われる前後の2つの映像信号について,色相を維持するためには,前述したように,元の映像信号をYcbcr信号で表したときの色差信号の比Cr/Cbと,変換後の映像信号をYcbcr信号で表したときの色差信号の比Cr’/Cb’とを一致させつつ色域の圧縮を行えばよい。しかしながら,Ycbcr信号において,Cr/Cb=Cr’/Cb’となるように色域の圧縮を行うためには,例えば,θ=arctan(Cr/Cb)=arctan(Cr’/Cb’)などとし,このθに対応する色相について,前記(D1)式に基づいて,RGBの信号値が前記出力範囲を超えないような色域の範囲を特定した上で,その色域の範囲内の色(変換後のYcbcr信号が表す色)を予め定めた規則に従って特定する,といった手順で変換後の映像信号を算出する必要がある。しかしながら,そのような手順で信号変換処理を行う場合,煩雑な三角関数の演算や二元一次方程式を解く演算を行う必要が生じ,演算負荷が高くなる。
一方,前記信号変換装置Qにおいては,(A1)式及び(A2)式,さらには(B1)式に示したような簡易な条件判別処理と四則演算とを行うだけで済み,低い演算負荷で信号変換処理を実行できる。
【0033】
次に,図2に示すブロック図を参照しつつ,前記映像表示装置Zの応用例である映像表示装置Z’について説明する。なお,図2において,図1に示した前記映像表示装置Zの構成要素と同じ構成要素については同じ符号が付されている。
前記映像表示装置Zにおける前記映像信号変換装置Qにおいては,信号値の範囲の調整前(信号変換前)の一次映像信号が,IEC 61966−2−4規格やIEC 61966−2−1規格に準拠した映像信号である前記非線形一次映像信号V1’に,前記一次側ガンマ処理部2によってガンマ処理が施された線形の映像信号(前記線形一次映像信号V1)であった。
さらに,前記映像信号変換装置Qにおいては,信号値の範囲の調整後(信号変換後)の二次映像信号が線形の映像信号(前記線形二次映像信号V2)であり,その映像信号に前記二次側ガンマ処理部4によってガンマ処理が施された非線形の信号(前記非線形二次映像信号V2’)が,ITU−R BT.709規格やITU−R BT.601−5規格等に準拠した映像信号(RGB信号)であった。
これにより,信号変換に簡易な線形式(一次式)である前記(A2)式や前記(B1)式を採用しても,非線形の映像信号に線形処理を施した場合に生じる画質の低下を招くことがない。
【0034】
一方,前記映像表示装置Z’は,前記映像表示装置Zにおける前記映像信号変換装置Qに代えて,その映像信号変換装置Qから前記一次側ガンマ処理部2及び前記二次側ガンマ処理部3が除かれた映像信号変換装置Q’を備えている。即ち,映像信号変換装置Q’は,前記RGB信号生成部1と前記信号範囲調整部3とを備えている。
そして,前記映像信号変換装置Q’における前記信号範囲調整部3は,前記RGB信号生成部1により生成された前記非線形一次映像信号V1’に対し,前記映像信号変換装置Qにおける前記信号範囲調整部3が前記線形一次映像信号V1に対して行ったのと同じ処理を行う。
このように,前記映像信号変換装置Q’においては,信号値の範囲の調整前(信号変換前)の一次映像信号が,IEC 61966−2−4規格やIEC 61966−2−1規格に準拠した映像信号(前記非線形一次映像信号V1’)である。
さらに,前記映像信号変換装置Q’においては,信号値の範囲の調整後(信号変換後)の二次映像信号(前記非線形二次映像信号V2’)が,ITU−R BT.709規格やITU−R BT.601−5規格等に準拠した映像信号(RGB信号)である。
前記映像信号変換装置Q’のように,非線形の一次映像信号V1’に対し,前記(A2)式や前記(B1)式のような線形式(一次式)を用いて信号変換を行った場合,多少の画質の低下を招くが,2回のガンマ処理を省略できる点で,演算負荷低減効果が高い。このような映像信号変換装置Q’及びそれを備えた映像表示装置Z’も本発明の実施形態の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は,一次側の映像信号を,その信号値が所定範囲に収まるように二次側の映像信号に変換する信号変換装置及びそれを備えた映像表示装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る映像表示装置Zの主要部の概略構成を表すブロック図。
【図2】映像表示装置Zの変形例である映像表示装置Z’の主要部の概略構成を表す図。
【図3】映像表示装置Zが備える信号範囲調整部が原色Bの負の階調レベルを他の2原色の正の階調レベルに置き換える様子をベクトルにより表現した概念図。
【図4】映像信号の再現色の具体例(第1の例)を色度図により表した図。
【図5】映像信号の再現色の具体例(第2の例)を色度図により表した図。
【図6】映像信号の再現色の具体例(第3の例)を色度図により表した図。
【図7】映像信号の再現色の具体例(第4の例)を色度図により表した図。
【図8】映像表示装置Zが備える信号範囲調整部により算出される中間信号値と圧縮率との関係の一例を表すグラフ。
【図9】映像表示装置Zが備える信号範囲調整部により生成される二次映像信号の信号値の一例を表すグラフ。
【符号の説明】
【0037】
Z,Z’:映像表示装置
Q,Q’:映像信号変換装置
1 :RGB信号生成部
2 :一次側ガンマ処理部
3 :信号範囲調整部
4 :二次側ガンマ処理部
5 :ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた出力下限値から出力上限値までの出力範囲を一部に含む拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる一次映像信号を,所定の映像表示手段に入力される映像信号であり,前記出力範囲の値をとり得るRGB各原色の信号からなる二次映像信号へ変換する映像信号変換装置であって,
前記一次映像信号から前記二次映像信号への変換過程において,前記出力上限値よりも大きな信号値を含むRGB各原色の信号値である上限超え含有RGB信号値が得られた場合に,該上限超え含有RGB信号値のうち値が最大である第1の原色の信号値に応じて,該第1の原色の信号値を前記出力上限値へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率を設定する圧縮率設定手段と,
前記上限超え含有RGB信号値のうち前記第1の原色の信号値を除く残りの第2の原色の信号値を前記圧縮率設定手段により設定された圧縮率に従って圧縮した信号値,又は該圧縮した信号値が前記出力上限値を超える場合は前記出力上限値を,圧縮後信号値として算出する信号値圧縮手段と,
前記一次映像信号から前記二次映像信号への変換過程において,前記上限超え含有RGB信号値を,前記第1の原色の信号値及び前記第2の原色の信号値にそれぞれ前記出力上限値及び前記圧縮後信号値が設定されたRGB各原色の信号値に変換する上限超え信号変換手段と,
を具備してなることを特徴とする映像信号変換装置。
【請求項2】
予め定められた出力下限値から出力上限値までの出力範囲を一部に含む拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる一次映像信号を,所定の映像表示手段に入力される映像信号であり,前記出力範囲の値をとり得るRGB各原色の信号からなる二次映像信号へ変換する映像信号変換装置であって,
前記一次映像信号におけるRGB各原色の信号の値を次の(A1)式及び(A2)式に適用して得られるRGB各原色の中間信号値を算出する中間信号値算出手段と,
【数1】

前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれない場合に,RGB各原色の信号値に前記中間信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第1の二次映像信号生成手段と,
前記中間信号値が前記出力上限値よりも大きな値を含む上限超え含有RGB信号値である場合に,該上限超え含有RGB信号値のうち値が最大である第1の原色の信号値に応じて,該第1の原色の信号値を前記出力上限値へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率を設定する圧縮率設定手段と,
前記上限超え含有RGB信号値のうち前記第1の原色の信号値を除く残りの第2の原色の信号値を前記圧縮率設定手段により設定された圧縮率に従って圧縮した信号値,又は該圧縮した信号値が前記出力上限値を超える場合は前記出力上限値を,圧縮後信号値として算出する信号値圧縮手段と,
前記中間信号値が前記上限超え含有RGB信号値である場合に,前記第1の原色の信号値及び前記第2の原色の信号値にそれぞれ前記出力上限値及び前記圧縮後信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第2の二次映像信号生成手段と,
を具備してなることを特徴とする映像信号変換装置。
【請求項3】
所定の操作入力に応じて,前記圧縮率設定手段による圧縮率の設定に用いられる前記第1の原色の信号値と圧縮率との対応関係の情報を変更する圧縮調整手段を具備してなる請求項2に記載の映像信号変換装置。
【請求項4】
前記一次映像信号がIEC 61966−2−4規格若しくはIEC 61966−2−1規格に準拠した映像信号又は該映像信号にガンマ処理が施された信号である請求項1〜3のいずれかに記載の映像信号変換装置。
【請求項5】
前記二次映像信号又は該二次映像信号にガンマ処理が施された信号がITU−R BT.709規又はITU−R BT.601−5規格に準拠した映像信号である請求項1〜4のいずれかに記載の映像信号変換装置。
【請求項6】
正規化された値として負の値から1より大きい値までの範囲である拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる一次映像信号を,所定の映像表示手段に入力される映像信号であり,正規化された値として0から1までの範囲である出力範囲の値をとり得るRGB各原色の信号からなる二次映像信号へ変換する映像信号変換装置であって,
前記一次映像信号におけるRGB各原色の信号の値を次の(A1’)式及び(A2)式に適用して得られるRGB各原色の中間信号値を算出する中間信号値算出手段と,
【数2】

前記中間信号値に1よりも大きな値が含まれない場合に,RGB各原色の信号値に前記中間信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第1の二次映像信号生成手段と,
前記中間信号値が1よりも大きな値を含む上限超え含有RGB信号値である場合に,該上限超え含有RGB信号値のうち値が最大である第1の原色の信号値に応じて,該第1の原色の信号値を1へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率を設定する圧縮率設定手段と,
前記上限超え含有RGB信号値のうち前記第1の原色の信号値を除く残りの第2の原色の信号値を前記圧縮率設定手段により設定された圧縮率に従って圧縮した信号値,又は該圧縮した信号値が1を超える場合は1を圧縮後信号値として算出する信号値圧縮手段と,
前記中間信号値が前記上限超え含有RGB信号値である場合に,前記第1の原色の信号値及び前記第2の原色の信号値にそれぞれ1及び前記圧縮後信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第2の二次映像信号生成手段と,
を具備してなることを特徴とする映像信号変換装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の映像信号変換装置と,該映像信号変換装置により生成された前記二次映像信号に基づく映像を表示する映像表示手段とを具備してなることを特徴とする映像表示装置。
【請求項8】
予め定められた出力下限値から出力上限値までの出力範囲を一部に含む拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる一次映像信号を,所定の映像表示手段に入力される映像信号であり,前記出力範囲の値をとり得るRGB各原色の信号からなる二次映像信号へ変換して出力する映像信号変換方法であって,
所定のプロセッサにより,
前記一次映像信号から前記二次映像信号への変換過程において,前記出力上限値よりも大きな信号値を含むRGB各原色の信号値である上限超え含有RGB信号値が得られた場合に,該上限超え含有RGB信号値のうち値が最大である第1の原色の信号値に応じて,該第1の原色の信号値を前記出力上限値へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率を設定する圧縮率設定処理と,
前記上限超え含有RGB信号値のうち前記第1の原色の信号値を除く残りの第2の原色の信号値を前記圧縮率設定手段により設定された圧縮率に従って圧縮した信号値,又は該圧縮した信号値が前記出力上限値を超える場合は前記出力上限値を,圧縮後信号値として算出する信号値圧縮処理と,
前記一次映像信号から前記二次映像信号への変換過程において,前記上限超え含有RGB信号値を,前記第1の原色の信号値及び前記第2の原色の信号値にそれぞれ前記出力上限値及び前記圧縮後信号値が設定されたRGB各原色の信号値に変換する上限超え信号変換処理と,
を実行してなることを特徴とする映像信号変換方法。
【請求項9】
予め定められた出力下限値から出力上限値までの出力範囲を一部に含む拡張範囲の信号値をとり得るRGB各原色の信号からなる一次映像信号を,所定の映像表示手段に入力される映像信号であり,前記出力範囲の値をとり得るRGB各原色の信号からなる二次映像信号へ変換して出力する映像信号変換方法であって,
所定のプロセッサにより,
前記一次映像信号におけるRGB各原色の信号の値を次の(A1)式及び(A2)式に適用して得られるRGB各原色の中間信号値を算出して記憶手段に記録する中間信号値算出処理と,
【数3】

前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれない場合に,RGB各原色の信号値に前記中間信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第1の二次映像信号生成処理と,
前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれる場合に,RGB各原色の前記中間信号値のうち値が最大である第1の原色の前記中間信号値に応じて,該中間信号値を前記出力上限値へ圧縮するときの圧縮率よりも圧縮度合いの小さな圧縮率を設定する圧縮率設定処理と,
RGB各原色のうち前記第1の原色を除く残りの第2の原色について,前記圧縮率設定処理により設定された圧縮率に従って前記中間信号値を圧縮した信号値又は該圧縮した信号値が前記出力上限値を超える場合は前記出力上限値を圧縮後信号値として算出する信号値圧縮処理と,
前記中間信号値に前記出力上限値よりも大きな値が含まれる場合に,前記第1の原色の信号値及び前記第2の原色の信号値にそれぞれ前記出力上限値及び前記圧縮後信号値が設定された前記二次映像信号を生成する第2の二次映像信号生成処理と,
を実行してなることを特徴とする映像信号変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−15001(P2010−15001A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175299(P2008−175299)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】