説明

映像信号送信機および受信機

【課題】伝送レート以上の高画質の非圧縮映像信号を伝送可能にする。
【解決手段】非圧縮の映像信号を伝送する映像信号送信機は、映像信号の伝送先での映像信号のフィルタリング処理の制御に係るフィルタ制御情報を生成するフィルタ制御情報生成部(20)と、フィルタリング処理に係るフィルタ係数およびフィルタ制御情報をそれぞれパケット化するフィルタ情報パケット化部(30)と、映像の有効期間に映像信号を伝送し、ブランキング期間にフィルタ情報パケット化部(30)が生成したパケットを伝送する伝送部(40)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号送信機および受信機に関し、特に、デジタル映像信号を非圧縮で伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波デジタル放送などのHD(High Definition)放送の普及に伴い、HDTV受信機、HD映像を再生/録画できるBlu-rayプレイヤ/レコーダ、HD映像を撮影できるビデオカメラなどが普及しつつある。このため、高画質なHD映像をデジタルテレビジョン受信機などへ伝送するためのデジタル映像インタフェースのニーズが高まっている。このようなHD映像の伝送規格の一つとしてHDMI(High-Definition Multimedia Interface)がある。HDMI規格では、非圧縮の映像信号の伝送を基本にして、さらにHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection System)を用いた著作権保護技術による暗号化を施した映像伝送が行われる。HDMIは、各種デジタル映像機器をはじめ最近では携帯電話機などにも搭載されている。
【0003】
高画質(例えば、高解像度、高色階調、高フレームレートなど)の映像信号を非圧縮で伝送しようとすると必然的に伝送レートを上げることとなる。そこで、伝送レートを上げずに高画質の映像信号を伝送するために、送信機側では映像信号の上位ビットを有効画素期間に伝送するとともに下位ビットを映像信号の水平ブランキング期間に伝送し、受信機側では受信した映像信号に水平ブランキング期間に伝送された下位ビットを付加して元の高解像度の映像信号を復元するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−333553号公報(第6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、非圧縮で伝送される映像信号のフォーマットは2K1Kであるが、今後は4K2Kや8K4Kなどの超高解像度の映像信号の非圧縮伝送が要求される。HDMI規格では4K2K映像フォーマットへの対応に向けた準備がなされている。
【0006】
より高画質な映像信号を非圧縮で伝送するには単に伝送レートを上げればよい。しかし、受信機によっては高伝送レートの映像信号を受信することができない。このため、機器のばらつきや接続環境の違いなどにより相互接続性が低下するおそれがある。また、伝送レートを上げると消費電力が増加するため、特にバッテリ駆動の送信機および受信機では高伝送レートは好ましくない。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、映像信号の非圧縮伝送について伝送レート以上の高画質の映像信号を伝送可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明では次のような手段を講じた。すなわち、非圧縮の映像信号を伝送する映像信号送信機として、映像信号の伝送先での映像信号のフィルタリング処理の制御に係るフィルタ制御情報を生成するフィルタ制御情報生成部と、フィルタリング処理に係るフィルタ係数およびフィルタ制御情報をそれぞれパケット化するフィルタ情報パケット化部と、映像の有効期間に映像信号を伝送し、ブランキング期間にフィルタ情報パケット化部が生成したパケットを伝送する伝送部とを備えているものとする。一方、非圧縮の映像信号を受信する映像信号受信機として、入力される映像信号から、映像の有効期間に伝送される映像信号とブランキング期間に伝送されるパケットとを分離する映像・パケット分離部と、分離されたパケットから映像信号のフィルタリング処理に係るフィルタ係数およびその制御に係るフィルタ制御情報を抽出するフィルタ情報抽出部と、分離された映像信号に対してフィルタ係数およびフィルタ制御情報に従ってフィルタリング処理を行うフィルタリング処理部とを備えているものとする。
【0009】
これによると、受信機側において、受信した映像信号に対してブランキング期間に伝送されるフィルタリング処理に関する情報に基づいて送信機の指示通りのフィルタリング処理が行われる。したがって、受信機側で元の映像信号に近い高画質の映像信号を得ることができる。すなわち、実質的に伝送レート以上の高画質の映像信号の伝送が可能となる。
【0010】
上記の映像信号送信機は、入力される映像信号の間引き処理を行う間引き処理部を備えていてもよい。この場合、フィルタ制御情報生成部は、間引き処理後の映像信号に対して互いに異なるフィルタリング処理を行う複数のフィルタと、複数のフィルタから出力される映像信号のそれぞれと間引き処理前の映像信号との誤差を算出する複数の誤差算出部と、複数の誤差算出部の出力に基づいて、複数のフィルタのうち誤差がより小さいフィルタの識別情報をフィルタ制御情報として出力するフィルタ特定部とを有するものとし、また、伝送部は、間引き処理後の映像信号を伝送するものとする。より具体的には、間引き処理部は、入力される映像信号の下位ビットを破棄するものであり、複数のフィルタは、それぞれ、間引き処理後の映像信号に対して畳み込み演算を行うものである。一方、上記の映像信号受信機において、フィルタリング処理部は、フィルタ係数のうちフィルタ制御情報によって指定されたものを選択的に適用して分離された映像信号のフィルタリング処理を行うものとする。
【0011】
これによると、映像信号の間引き処理を行って伝送レートを下げて映像信号を伝送しても受信機側で適切なフィルタリング処理が行われる。したがって、受信機側で間引き処理前の映像信号に近い高画質の映像信号を得ることができる。
【0012】
上記の映像信号送信機は、第1および第2のフレームメモリを備えていてもよい。この場合、間引き処理部は、入力される映像信号を第1および第2のフレームメモリに1フレームごとに交互に格納する。複数のフィルタは、それぞれ、間引き処理部に入力される映像信号および第1のフレームメモリに格納された2フレーム前の映像信号から映像信号を生成する。誤差算出部は、複数のフィルタから出力される映像信号のそれぞれと第2のフレームメモリに格納された1フレーム前の映像信号との誤差を算出する。伝送部は、第1のフレームメモリに格納された映像信号を、間引き処理部に入力される映像信号の1/2のフレームレートで伝送する。一方、上記の映像信号受信機は、分離された映像信号が格納される第1のフレームメモリと、フィルタリング処理後の映像信号が格納される第2のフレームメモリと、第1および第2のフレームメモリから1フレームごとに交互に映像信号を読み出して分離された映像信号の2倍のフレームレートで出力するフレームレート変換部とを備えていてもよい。この場合、フィルタリング処理部は、入力される映像信号および第1のフレームメモリに格納された1フレーム前の映像信号から映像信号を生成する。
【0013】
これによると、映像信号のフレーム間引き処理を行って伝送レートを下げて映像信号を伝送しても受信機側で適切なフィルタリング処理が行われる。したがって、受信機側でフレーム間引き処理前の映像信号に近い高画質の映像信号を得ることができる。
【0014】
伝送部は、垂直ブランキング期間にフィルタ係数のパケットを伝送し、水平ブランキング期間にフィルタ制御情報のパケットを伝送してもよい。この場合、フィルタ情報抽出部は、垂直ブランキング期間に伝送されるパケットからフィルタ係数を抽出し、水平ブランキング期間に伝送されるパケットからフィルタ制御情報を抽出する。これによると、水平ラインごとにフィルタ制御情報が更新されるため、受信機側においてより適応的なフィルタリング処理を行うことができる。
【0015】
フィルタ制御情報生成部は、複数のフィルタリング処理のうち適用すべきものの識別情報、および適用すべきフィルタリング処理が複数ある場合には適用順序をフィルタ制御情報として生成してもよい。この場合、フィルタリング処理部は、複数のフィルタリング処理のうちフィルタ制御情報によって指定されたものを選択的に適用し、適用すべきフィルタリング処理が複数ある場合にはフィルタ制御情報によって指定された順に適用する。これによると、受信機側でより複雑なフィルタリング処理を行うことができる。
【0016】
フィルタ制御情報生成部は、特定のフィルタリング処理すべき画素位置をフィルタ制御情報として生成してもよい。この場合、フィルタリング処理部は、フィルタ制御情報によって指定された画素に対して特定のフィルタリング処理を行う。これによると、受信機側においてより適応的なフィルタリング処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、映像信号の非圧縮伝送について伝送レート以上の高画質の映像信号を伝送することができる。したがって、映像信号送信機および受信機間で下位のデジタル映像インタフェースの伝送レートに合わせて非圧縮映像信号を伝送することができ、相互接続性を良好に保つことができる。また、伝送レートを抑えてより少ない消費電力で高画質の非圧縮映像信号を伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る映像信号送信機の構成図である。
【図2】フィルタ制御情報生成部の一構成例を示す図である。
【図3】伝送される映像信号と走査線との関係を示す図である。
【図4】伝送される映像信号および各種同期信号のタイミングチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る映像信号受信機の構成図である。
【図6】フィルタリング処理部の一構成例を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る映像信号送信機の構成図である。
【図8】フィルタ情報パケットのフォーマット例を示す図である。
【図9】命令コードとフィルタリング処理との対応関係表である。
【図10】各種フィルタリング処理に係るフィルタ係数行列を示す図である。
【図11】垂直ブランキング期間におけるフィルタ情報パケット伝送に係るフローチャートである。
【図12】フィルタ制御情報パケットのフォーマット例を示す模式図である。
【図13】特定のフィルタリング処理をすべき画素の位置情報抽出に係るフローチャートである。
【図14】第2の実施形態に係る映像信号受信機の構成図である。
【図15】補完フィルタを適用する場合のフローチャートである。
【図16】第3の実施形態に係る映像信号送信機の構成図である。
【図17】フィルタ制御情報生成部の一構成例を示す図である。
【図18】第3の実施形態に係る映像信号受信機の構成図である。
【図19】フィルタリング処理部の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
<送信機>
図1は、第1の実施形態に係る映像信号送信機の構成を示す。映像信号送信機は後述する映像信号受信機と合わせて映像信号伝送システムを構成する。間引き処理部10は、入力される非圧縮の映像信号の間引き処理を行う。具体的には、間引き処理部10は右シフト回路で実現することができ、例えば、10ビットの入力映像信号の下位2ビットを破棄して8ビットの映像信号を出力する。フィルタ制御情報生成部20は、間引き処理前後の映像信号に基づいて、映像信号の伝送先において映像信号にどのようなフィルタリング処理をすべきかを示すフィルタ制御情報を生成する。
【0020】
図2は、フィルタ制御情報生成部20の一構成例を示す。フィルタ201,202は、それぞれ、間引き処理前の映像信号に対して畳み込み演算を行って、例えば、8ビットの映像信号から10ビットの映像信号を生成する。フィルタ201とフィルタ202とでは適用されるフィルタ係数が異なっている。すなわち、フィルタ201,202は、互いに異なるフィルタリング処理を行う。誤差算出部211,212は、それぞれ、フィルタ201,202から出力される映像信号と間引き処理前の映像信号との誤差を算出し、さらに、誤差の絶対値を例えば水平ライン単位で累計する。フィルタ特定部220は、誤差算出部211,212の出力を受け、フィルタ201,202のうち誤差の累計値が小さい方の識別情報をフィルタ制御情報として出力する。図2の構成例ではフィルタ制御情報は1ビットで足りる。このように、フィルタ制御情報生成部20は、映像信号をフィルタ201,202のいずれで処理すべきかを所定の単位で(例えば、水平ラインごとに)判断してフィルタ制御情報を生成する。
【0021】
図1に戻り、フィルタ情報パケット化部30は、フィルタ制御情報および伝送先における映像信号のフィルタリング処理に係るフィルタ係数をパケット化する。フィルタ制御情報生成部20が図2に示した構成の場合、フィルタ201のフィルタ係数00,01,02,03およびフィルタ202のフィルタ係数10,11,12,13がパケット化される。これらフィルタ係数は、例えば1フレームごとに更新してもよい。伝送部40は、間引き処理後の映像信号を映像の有効期間に伝送し、フィルタ情報パケット化部30が生成したフィルタ情報パケットをブランキング期間に伝送する。
【0022】
図3は、伝送される映像信号と走査線との関係を示す。伝送部40は、有効ライン期間および水平有効画素期間で特定される映像の有効期間に間引き処理後の映像信号1を伝送する。また、伝送部40は、例えば、垂直ブランキング期間にフィルタ係数のパケット2を伝送し、水平ブランキング期間にフィルタ制御情報のパケット3を伝送する。水平ブランキング期間にフィルタ係数のパケット2を伝送し、垂直ブランキング期間にフィルタ制御情報のパケット3を伝送してもよいが、上述したようにフィルタ制御情報が水平ラインごとに生成される場合には水平ブランキング期間にフィルタ制御情報のパケット3を伝送することが好ましい。
【0023】
図4は、伝送される映像信号および各種同期信号のタイミングチャートである。垂直同期信号VSYNCが“L”の期間において水平同期信号HSYNCおよびデータイネーブル信号DEが“H”のときにフィルタ係数のパケット2が伝送される。垂直同期信号VSYNCが“H”の期間において水平同期信号HSYNCが“L”かつデータイネーブル信号DEが“H”のときにフィルタ制御情報のパケット3が、水平同期信号HSYNCが“H”かつデータイネーブル信号DEが“H”のときに間引き処理後の映像信号1が伝送される。
【0024】
<受信機>
図5は、第1の実施形態に係る映像信号受信機の構成を示す。映像・パケット分離部50は、映像の有効期間に伝送される非圧縮の映像信号とブランキング期間に伝送されるパケットとを分離する。フィルタ情報抽出部60は、分離されたパケットから映像信号のフィルタリング処理に係るフィルタ係数およびその制御に係るフィルタ制御情報を抽出する。例えば、フィルタ情報抽出部60は、垂直ブランキング期間に伝送されるパケットからフィルタ係数00,01,02,03,10,11,12,13を抽出し、水平ブランキング期間に伝送されるパケットからフィルタ制御情報を抽出する。フィルタリング処理部70は、抽出されたフィルタ係数およびフィルタ制御情報に従って、分離された非圧縮の映像信号に対してフィルタリング処理を行う。
【0025】
図6は、フィルタリング処理部70の一構成例を示す。フィルタリング処理部70は、図2に示したフィルタ201,202と同じフィルタリング処理を行うことができるようになっている。フィルタリング処理部70にはフィルタ情報抽出部60によって抽出されたフィルタ係数(例えば、フィルタ係数00,01,02,03,10,11,12,13)が設定される。フィルタリング処理部70は、フィルタ制御情報によって指定されたフィルタ係数を選択し、その選択したフィルタ係数で例えば8ビットの映像信号の畳み込み演算を行って10ビットの映像信号を生成する。フィルタ制御情報が水平ラインごとに更新されることで、フィルタリング処理部70は、水平ラインごとに映像信号に対して適応的なフィルタリング処理を行うことができる。
【0026】
以上、本実施形態によると、映像信号以外に映像信号のフィルタリング処理に係る情報を伝送することで、受信した映像信号に対して送信機側の指示通りのフィルタリング処理を行うことができる。これにより、伝送レートを抑えるために映像信号の解像度を落として伝送しても、受信側において受信した映像信号を本来の高解像度の映像信号に近づけることができる。すなわち、伝送レートを上げなくとも実質的に伝送レート以上の高解像度の映像信号を伝送することができる。
【0027】
なお、フィルタ制御情報生成部20により多くのフィルタを設けることで、受信した映像信号に対してより好適なフィルタリング処理を行うことができる。また、フィルタリング処理の単位を1水平ラインよりもさらに細かくする、例えば、水平ラインの前半と後半とでそれぞれフィルタ制御情報を生成することで、受信した映像信号に対してより適応的なフィルタリング処理を行うことができる。
【0028】
また、上記送信機においてフィルタ情報パケットを伝送しない動作モードを選択できるようにしてもよい。これにより、フィルタ情報パケットを処理することができない従来の受信機との接続互換性を確保することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
<送信機>
図7は、第2の実施形態に係る映像信号送信機の構成を示す。映像信号送信機は後述する映像信号受信機と合わせて映像信号伝送システムを構成する。以下、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。フィルタ制御情報生成部20Aは、複数のフィルタリング処理のうち適用すべきものの識別情報、および適用すべきフィルタリング処理が複数ある場合には適用順序をフィルタ制御情報として生成する。また、フィルタ制御情報生成部20Aは、必要に応じて、特定のフィルタリング処理すべき画素位置をフィルタ制御情報として生成する。
【0030】
図8は、フィルタ情報パケットのフォーマット例を示す。各パケットは8ビットである。上位3ビットが“000”および“001”であるパケットは対になっており、前者の残り5ビットにはフィルタ係数の下位5ビットが、後者の残り5ビットにはフィルタ係数の上位5ビットがそれぞれ格納される。上位3ビットが“010”であるパケットは複数のフィルタリング処理からなるフィルタパターンを定義するものである。フィルタパターンは2ビットで表され、残り3ビットにフィルタリング処理を特定するための命令コードが格納される。個々のフィルタリング処理の適用順序は例えばフィルタパターン手順パケットの伝送順で決まる。上位3ビットが“011”であるパケットは続く2ビットで表されるフィルタパターンの伝送終了を示すフィルタパターン終了パケットである。
【0031】
図9は、命令コードとフィルタリング処理との対応関係を示す。フィルタリング処理として、補完フィルタ、平滑化フィルタ、縦方向エッジ強調フィルタ、横方向エッジ強調フィルタがある。図10は、各種フィルタリング処理に係るフィルタ係数行列を示す。処理対象の画素およびそれを中心とする周囲8画素の計9画素にそれぞれフィルタ係数を適用することで各種フィルタリング処理を行うことができる。各種フィルタリング処理は異なる複数のフィルタ係数行列を含んでいてもよい。例えば、補完フィルタには3種類のフィルタ係数行列がある。
【0032】
フレームごとに変更することが好ましいフィルタ係数は例えば垂直ブランキング期間などに伝送するとよい。図11は、垂直ブランキング期間におけるフィルタ情報パケット伝送に係るフローを示す。このフローでは、3つの補完フィルタ0,1,2と3つのフィルタパターン00,01,10を水平ラインごとに分けて順に伝送している。なお、フレームごとに変更する必要のないフィルタ係数、例えば、平滑化フィルタなどは垂直ブランキング期間ではなくシステム起動時などに一度だけ伝送すればよい。
【0033】
一つのフィルタリング処理に複数のフィルタ係数行列がある場合、どの画素にどのフィルタ係数行列を適用するのかを指定する必要がある。そのような指定はフィルタ制御情報で明示することができる。図12は、フィルタ制御情報パケットのフォーマット例を示す。各パケットは8ビットである。上位2ビットが“00”および“01”であるパケットは対になっており、前者の残り6ビットには画素の水平方向座標の下位6ビットが、後者の残り6ビットには画素の水平方向座標の上位6ビットがそれぞれ格納される。これらパケットで指定される画素については例えば補完フィルタ0を適用する。同様に、上位2ビットが“10”および“11”であるパケットは対になっており、前者の残り6ビットには画素の水平方向座標の下位6ビットが、後者の残り6ビットには画素の水平方向座標の上位6ビットがそれぞれ格納される。これらパケットで指定される画素については例えば補完フィルタ1を適用する。特に座標位置が指定されない画素については例えば補完フィルタ2を適用する。
【0034】
図13は、特定のフィルタリング処理を適用すべき画素の位置情報抽出に係るフローを示す。具体的には、水平ラインごとに補完フィルタ0,1を適用する候補画素を10点まで抽出し、それらの位置情報をパケット化する。画素の水平方向座標xを初期値からカウントアップしていき、当該画素の画素値から上および左の画素の画素値のうち大きい方を引いた値が第1閾値よりも大きい場合、および当該画素の画素値から上および左の画素値のうち小さい方を引いた値が第2閾値よりも小さい場合、それらの計算値を保持しておく。水平ラインの各画素について解析が終了すると、保持している計算値を絶対値の大きい順に10個選択し、それらに対応する画素の位置情報をパケット化する。すなわち、周辺画素に比べて非常に明るいあるいは暗い画素については位置情報を伝送して受信側で特定のフィルタリング処理を行えるようにする。
【0035】
<受信機>
図14は、第2の実施形態に係る映像信号受信機の構成を示す。以下、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。フィルタ情報抽出部60Aは、受信した映像信号から分離されたパケットから映像信号のフィルタリング処理に係るフィルタ係数およびその制御に係るフィルタ制御情報を抽出する。例えば、フィルタ情報抽出部60Aは、垂直ブランキング期間に伝送されるパケットから3つの補完フィルタのフィルタ係数を抽出する。また、フィルタ情報抽出部60Aは、水平ブランキング期間に伝送されるパケットからフィルタリング処理の適用順序や特定のフィルタリング処理を行うべき画素の位置情報を示すフィルタ制御情報を抽出する。フィルタリング処理部70Aは、抽出されたフィルタ係数およびフィルタ制御情報に従って、分離された非圧縮の映像信号に対してフィルタリング処理を行う。
【0036】
図15は、補完フィルタを適用する場合の処理フローを示す。水平ブランキング期間であれば、フィルタ制御情報パケットから特定のフィルタリング処理(補完フィルタ0,1)を行うべき画素の位置情報を抽出して図示しない座標レジスタに順に保持する。座標レジスタは補完フィルタ0,1ごとにあり、各座標レジスタには10点までの画素の位置情報が格納できる。水平ブランキング期間でなければ、画素の水平方向座標xを初期値からカウントアップしていき、xが補完フィルタ0,1の座標レジスタに格納された値と一致すれば補完フィルタ0,1をそれぞれ選択してフィルタパターン00,01の手順に従ってそれぞれフィルタリング処理を行う。xが補完フィルタ0,1のいずれの座標レジスタにも格納されていなければ補完フィルタ2を選択してフィルタパターン10の手順に従ってフィルタリング処理を行う。
【0037】
以上、本実施形態によると、フィルタ制御情報に複数のフィルタリング処理の適用順序および特定のフィルタリング処理を行うべき画素の位置情報を含めることができる。これにより、受信側において受信した映像信号を本来の高解像度の映像信号により近づけることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
<送信機>
図16は、第3の実施形態に係る映像信号送信機の構成を示す。映像信号送信機は後述する映像信号受信機と合わせて映像信号伝送システムを構成する。以下、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。間引き処理部10Bは、入力された映像信号を、フレームカウンタが奇数のときにはフレームメモリ101に、偶数のときにはフレームメモリ102に、それぞれ格納する。伝送部40Bは、映像の有効期間に、フレームメモリ101に格納された映像信号を元の映像信号の1/2のフレームレートで伝送する。すなわち、本実施形態に係る映像信号送信機は映像信号をフレーム単位で間引いて伝送する。
【0039】
図17は、フィルタ制御情報生成部20Bの一構成例を示す。フィルタ201Bは、現在入力されている、フレームカウンタが2n+1のときの画素値P2n+1(x,y)に係数01を乗じた値と、フレームメモリ101に格納されている、フレームカウンタが2n−1のときの画素値P2n−1(x,y)に係数00を乗じた値とを加算して新たな画素値を算出する。ただし、xはフレームにおける水平方向座標、yはフレームにおける垂直方向座標である。すなわち、フィルタ201Bは、間引かれた映像信号、すなわち、フレームカウンタが2nのときの画素値P2n(x,y)を、その前後のフレームの画素値から推定する。フィルタ202Bは、フィルタ係数00,01に代えてフィルタ係数10,11を用いること以外はフィルタ201Bと同様である。誤差算出部211B,212Bは、それぞれ、フィルタ201B,202Bから出力される画素値と、フレームメモリ102に格納されている、フレームカウンタが2nのときの画素値との誤差を算出し、さらに、誤差の絶対値を例えば水平ライン単位で累計する。フィルタ特定部220は、誤差算出部211B,212Bの出力を受け、フィルタ201B,202Bのうち誤差の累計値が小さい方の識別情報をフィルタ制御情報として出力する。
【0040】
<受信機>
図18は、第3の実施形態に係る映像信号受信機の構成を示す。以下、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。フレームメモリ111には受信した映像信号から分離された非圧縮の映像信号が格納される。フィルタリング処理部70Bは、フィルタ情報抽出部60によって抽出されたフィルタ係数およびフィルタ制御情報に従って、分離された非圧縮の映像信号に対してフィルタリング処理を行う。フレームメモリ112にはフィルタリング処理後の映像信号が格納される。フレームレート変換部80は、フレームメモリ111,112から1フレームごとに交互に映像信号を読み出して、分離された非圧縮の映像信号の2倍のフレームレートで出力する。すなわち、本実施形態に係る映像信号受信機は、フレーム間引きされた映像信号を受信し、その間引かれたフレームを作り出して元のフレームレートの映像信号を復元する。
【0041】
図19は、フィルタリング処理部70Bの一構成例を示す。フィルタリング処理部70Bは、図17に示したフィルタ201B,202Bと同じフィルタリング処理ができるようになっている。フィルタリング処理部70Bにはフィルタ情報抽出部60によって抽出されたフィルタ係数(例えば、フィルタ係数00,01,10,11)が設定される。フィルタリング処理部70Bは、フィルタ制御情報によって指定されたフィルタ係数を選択し、その選択したフィルタ係数で、現在入力されている画素値およびフレームメモリ111から読み出した1フレーム前の画素値を重み付け加算して新たな画素値を算出する。
【0042】
以上、本実施形態によると、伝送レートを抑えるために映像信号のフレームレートを下げて伝送しても、受信機側において元のフレームレートの映像信号に近い映像信号を得ることができる。なお、フレーム間引きに代えて例えばプログレッシブ−インターレース変換により映像信号を間引くようにしてもよい。この場合においても上記と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、フィルタリング処理は図2、図6、図17、図19に示したようなハードウェアとしてのフィルタで行うことに限定されない。例えば、DSP(Digital Signal Processor)を使用してソフトウェア的にフィルタリング処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る映像信号伝送システムは、伝送レート以上の高画質の非圧縮映像信号を伝送することができるため、下位互換性が求められる映像信号送信機および受信機、あるいはバッテリ駆動の映像信号送信機および受信機として有用である。
【符号の説明】
【0045】
10 間引き処理部
10B 間引き処理部
20 フィルタ制御情報生成部
201 フィルタ
202 フィルタ
211 誤差算出部
212 誤差算出部
220 フィルタ特定部
20A フィルタ制御情報生成部
20B フィルタ制御情報生成部
201B フィルタ
202B フィルタ
211B 誤差算出部
212B 誤差算出部
30 フィルタ情報パケット化部
40 伝送部
40B 伝送部
50 映像・パケット分離部
60 フィルタ情報抽出部
60A フィルタ情報抽出部
70 フィルタリング処理部
70A フィルタリング処理部
70B フィルタリング処理部
80 フレームレート変換部
101 フレームメモリ(第1のフレームメモリ)
102 フレームメモリ(第2のフレームメモリ)
111 フレームメモリ(第1のフレームメモリ)
112 フレームメモリ(第2のフレームメモリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非圧縮の映像信号を伝送する映像信号送信機であって、
映像信号の伝送先での映像信号のフィルタリング処理の制御に係るフィルタ制御情報を生成するフィルタ制御情報生成部と、
前記フィルタリング処理に係るフィルタ係数および前記フィルタ制御情報をそれぞれパケット化するフィルタ情報パケット化部と、
映像の有効期間に映像信号を伝送し、ブランキング期間に前記フィルタ情報パケット化部が生成したパケットを伝送する伝送部とを備えている
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項2】
請求項1の映像信号送信機において、
入力される映像信号の間引き処理を行う間引き処理部を備え、
前記フィルタ制御情報生成部は、
前記間引き処理後の映像信号に対して互いに異なるフィルタリング処理を行う複数のフィルタと、
前記複数のフィルタから出力される映像信号のそれぞれと前記間引き処理前の映像信号との誤差を算出する複数の誤差算出部と、
前記複数の誤差算出部の出力に基づいて、前記複数のフィルタのうち前記誤差がより小さいフィルタの識別情報を前記フィルタ制御情報として出力するフィルタ特定部とを有するものであり、
前記伝送部は、前記間引き処理後の映像信号を伝送するものである
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項3】
請求項2の映像信号送信機において、
前記間引き処理部は、入力される映像信号の下位ビットを破棄するものであり、
前記複数のフィルタは、それぞれ、前記間引き処理後の映像信号に対して畳み込み演算を行うものである
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項4】
請求項2の映像信号送信機において、
第1および第2のフレームメモリを備え、
前記間引き処理部は、入力される映像信号を前記第1および第2のフレームメモリに1フレームごとに交互に格納するものであり、
前記複数のフィルタは、それぞれ、前記間引き処理部に入力される映像信号および前記第1のフレームメモリに格納された2フレーム前の映像信号から映像信号を生成するものであり、
前記誤差算出部は、前記複数のフィルタから出力される映像信号のそれぞれと前記第2のフレームメモリに格納された1フレーム前の映像信号との誤差を算出するものであり、
前記伝送部は、前記第1のフレームメモリに格納された映像信号を、前記間引き処理部に入力される映像信号の1/2のフレームレートで伝送するものである
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項5】
請求項1の映像信号送信機において、
前記伝送部は、垂直ブランキング期間に前記フィルタ係数のパケットを伝送し、水平ブランキング期間に前記フィルタ制御情報のパケットを伝送する
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項6】
請求項1の映像信号送信機において、
前記フィルタ制御情報生成部は、複数のフィルタリング処理のうち適用すべきものの識別情報、および適用すべきフィルタリング処理が複数ある場合には適用順序を前記フィルタ制御情報として生成する
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項7】
請求項1の映像信号送信機において、
前記フィルタ制御情報生成部は、特定のフィルタリング処理すべき画素位置を前記フィルタ制御情報として生成する
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項8】
請求項1の映像信号送信機において、
前記フィルタ情報パケット化部が生成したパケットを伝送しない動作モードを選択可能に構成されている
ことを特徴とする映像信号送信機。
【請求項9】
非圧縮の映像信号を受信する映像信号受信機であって、
入力される映像信号から、映像の有効期間に伝送される映像信号とブランキング期間に伝送されるパケットとを分離する映像・パケット分離部と、
前記分離されたパケットから映像信号のフィルタリング処理に係るフィルタ係数およびその制御に係るフィルタ制御情報を抽出するフィルタ情報抽出部と、
前記分離された映像信号に対して前記フィルタ係数およびフィルタ制御情報に従ってフィルタリング処理を行うフィルタリング処理部とを備えている
ことを特徴とする映像信号受信機。
【請求項10】
請求項9の映像信号受信機において、
前記フィルタリング処理部は、前記フィルタ係数のうち前記フィルタ制御情報によって指定されたものを選択的に適用して前記分離された映像信号のフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする映像信号受信機。
【請求項11】
請求項10の映像信号受信機において、
前記分離された映像信号が格納される第1のフレームメモリと、
前記フィルタリング処理後の映像信号が格納される第2のフレームメモリと、
前記第1および第2のフレームメモリから1フレームごとに交互に映像信号を読み出して前記分離された映像信号の2倍のフレームレートで出力するフレームレート変換部とを備え、
前記フィルタリング処理部は、入力される映像信号および前記第1のフレームメモリに格納された1フレーム前の映像信号から映像信号を生成する
ことを特徴とする映像信号受信機。
【請求項12】
請求項9の映像信号受信機において、
前記フィルタ情報抽出部は、垂直ブランキング期間に伝送されるパケットから前記フィルタ係数を抽出し、水平ブランキング期間に伝送されるパケットから前記フィルタ制御情報を抽出する
ことを特徴とする映像信号受信機。
【請求項13】
請求項9の映像信号受信機において、
前記フィルタリング処理部は、複数のフィルタリング処理のうち前記フィルタ制御情報によって指定されたものを選択的に適用し、適用すべきフィルタリング処理が複数ある場合には前記フィルタ制御情報によって指定された順に適用する
ことを特徴とする映像信号受信機。
【請求項14】
請求項9の映像信号受信機において、
前記フィルタリング処理部は、前記フィルタ制御情報によって指定された画素に対して特定のフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする映像信号受信機。
【請求項15】
請求項1の映像信号送信機と、
請求項9の映像信号受信機とを備えている
ことを特徴とする映像信号伝送システム。
【請求項16】
非圧縮の映像信号を伝送する映像信号伝送方法であって、
映像信号の伝送先での映像信号のフィルタリング処理の制御に係るフィルタ制御情報を生成するステップと、
前記フィルタリング処理に係るフィルタ係数および前記フィルタ制御情報をそれぞれパケット化するステップと、
映像の有効期間に映像信号を伝送し、ブランキング期間に前記生成したパケットを伝送するステップと、
受信した映像信号から、映像の有効期間に伝送される映像信号とブランキング期間に伝送されるパケットとを分離するステップと、
前記分離したパケットから前記分離した映像信号のフィルタリング処理に係るフィルタ係数およびその制御に係るフィルタ制御情報を抽出するステップと、
前記抽出したフィルタ係数およびフィルタ制御情報に従って、前記分離した映像信号に対してフィルタリング処理を行うステップとを備えている
ことを特徴とする映像信号伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−61503(P2011−61503A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209059(P2009−209059)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】