説明

映像再生装置および映像再生システム

【課題】ネットワークの状態に拘わらずスムーズな再生映像を得ることができる映像再生装置を提供すること。
【解決手段】サーバ装置から映像情報を受信して再生する映像再生装置30において、サーバ装置から映像情報を受信する複数の受信手段(NIC31−1〜31−n)と、複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信する状態となるようにサーバ装置に対して映像情報の送信要求を行う送信要求手段(CPU36、NIC31−1〜31−n)と、受信手段によって受信された映像情報を再生する再生手段(デコーダ34)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像再生装置および映像再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、MPEG(Moving Picture Expert Group)方式に基づいて圧縮された映像を再生する場合、通常の速度で再生する以外にも、巻き戻し再生または早送り再生等の高速再生を行う必要がある。
【0003】
このような高速再生を行う技術としては、例えば、特許文献1に示すような技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−48598号公報(要約書、特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、映像情報をネットワークを介して伝送し、これを受信した映像再生装置において再生する場合、高速再生時に単位時間あたりの情報伝送量が十分でなくなり、映像の再生がスムーズでなくなるという問題点がある。これを以下に説明する。
【0006】
図6は、従来において、ネットワークを介して映像情報を伝送し、これを受信した映像再生装置において再生する場合の映像再生システムの構成を示す図である。この例では、映像再生システムは、サーバ装置1、HUB2、映像再生装置3、および、テレビジョン受像機4を構成要素としている。
【0007】
ここで、サーバ装置1は、各種の映像情報(MPEG方式に基づいて圧縮された映像情報)を複数格納しており、映像再生装置3からの送信要求に対応する映像情報を読み出して送信する。
【0008】
HUB2は、例えば、スイッチングハブであり、各ポートのポート番号と、各ポートに接続されているネットワーク機器のアドレスとを対応付けてテーブルとして記憶しており、当該テーブルを参照し、パケットを所定のポートから他のポートへ転送する。
【0009】
映像再生装置3は、NIC(Network Interface Card)3a、パケットバッファ3b、フレームバッファ3c、デコーダ3d、D/A(Digital to Analog)変換器3e、および、CPU(Central Processing Unit)3fを構成要素としている。
【0010】
ここで、NIC3aは、HUB2を介してサーバ装置1との間でパケットを授受するインタフェースである。
【0011】
パケットバッファ3bは、NIC3aによって受信されたパケットを一時的に格納するための記憶装置である。
【0012】
フレームバッファ3cは、パケットバッファ3bに格納されたパケットに含まれている映像情報から抽出されたフレームを格納するための記憶装置である。
【0013】
デコーダ3dは、フレームバッファ3cに格納されているフレームをMPEG方式に基づいて復号し、もとの映像データを生成して出力する。
【0014】
D/A変換器3eは、デコーダ3dから供給された映像データ(ディジタル信号)を対応する映像信号(アナログ信号)に変換して出力する。
【0015】
テレビジョン受像機4は、D/A変換器3eから出力された映像信号を表示部(例えば
CRT(Cathode Ray Tube))に表示する。
【0016】
つぎに、以上の従来例の動作について説明する。
【0017】
まず、通常再生を行う場合には、CPU3fがNIC3aに対して、所定の映像情報に対する送信要求を、サーバ装置1に対して行う。その結果、サーバ装置1は、要求された映像情報を内蔵されている記憶装置から読み出し、パケット化するとともに、映像再生装置3を送信先としてHUB2を介して送出する。
【0018】
映像再生装置3では、NIC3aが当該パケットを受信し、パケットバッファ3bに格納する。CPU3fは、パケットバッファ3bに格納されているパケットに含まれている映像情報の中から、フレームデータを抽出し、フレームバッファ3cにフレームの種類毎に格納する。
【0019】
デコーダ3dは、フレームバッファ3cに格納されているフレームデータを読み出して復号処理を施し、もとの映像データを生成してD/A変換器3eに供給する。
【0020】
D/A変換器3eは、デコーダ3dから供給された映像データを映像信号に変換して出力する。その結果、テレビジョン受像機4には、所定の映像が通常の再生速度にて表示される。
【0021】
つぎに、高速再生を行う場合について説明する。
【0022】
高速再生を行う場合の基本的な動作は、前述の通常再生の場合と同様であるが、デコーダ3dが複数のフレームの中から、単独再生可能なフレーム(MPEGの場合はI(Intra)ピクチャ)を抽出して通常と同じフレームレートにて再生することにより、通常よりも速い速度で再生を行う。
【0023】
その場合、デコーダ3dは、複数のフレームの中から特定のフレームだけを抽出して再生する。したがって、例えば、2倍速で再生する場合には、サーバ装置1から映像再生装置3への転送速度は略2倍となり、また、3倍速、4倍速等では、倍速数に応じてデータの転送速度が速くなる。
【0024】
その場合、サーバ装置1と映像再生装置3との間の通信状態が悪化した場合には、前述したように、伝送速度が十分でなくなり、スムーズな再生映像が得られないという問題が発生する。
【0025】
本発明は、上記の事情に基づきなされたもので、その目的とするところは、ネットワークの状態に拘わらずスムーズな再生映像を得ることができる映像再生装置および映像再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述の目的を達成するため、本発明の映像再生装置は、サーバ装置から映像情報を受信して再生する映像再生装置において、サーバ装置から映像情報を受信する複数の受信手段と、複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信する状態となるようにサーバ装置に対して映像情報の送信要求を行う送信要求手段と、受信手段によって受信された映像情報を再生する再生手段と、を有する。
【0027】
また、他の発明の映像再生装置は、上述の発明に加えて、受信手段とサーバ装置とは、複数のケーブルによって接続されている。
【0028】
また、他の発明の映像再生装置は、上述の発明に加えて、複数の受信手段は、複数のネットワークインタフェースカードによって構成されている。
【0029】
また、他の発明の映像再生装置は、上述の発明に加えて、送信要求手段は、再生手段が少なくとも高速再生を行う場合には、複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信する状態となるようにサーバ装置に対して映像情報の送信要求を行うようにしている。
【0030】
また、他の発明の映像再生装置は、上述の発明に加えて、送信要求手段は、再生手段が通常再生を行っている場合において、サーバ装置との間の回線が通常再生を実行するのに十分でない程度に混雑している場合には、複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信する状態となるようにサーバ装置に対して映像情報の送信要求を行うようにしている。
【0031】
また、他の発明の映像再生装置は、上述の発明に加えて、送信要求手段は、受信手段が所定の順序で映像情報を受信するように、サーバ装置に対して送信要求を行うようにしている。
【0032】
また、他の発明の映像再生装置は、上述の発明に加えて、送信要求手段は、受信手段が有する映像情報を含むパケットを格納するためのパケットバッファが空いている受信手段を検出し、当該受信手段が映像情報を受信するようにサーバ装置に対して送信要求を行うようにしている。
【0033】
また、本発明の映像再生システムは、サーバ装置と、当該サーバ装置から映像情報を受信して再生する映像再生装置とを有する映像再生システムにおいて、映像再生装置は、サーバ装置から映像情報を受信する複数の受信手段と、複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信状態となるようにサーバ装置に対して映像情報の送信要求を行う送信要求手段と、受信手段によって受信された映像情報を再生する再生手段と、を有する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、ネットワークの状態に拘わらずスムーズな再生映像を得ることができる映像再生装置および映像再生システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態に係る映像再生システムの構成例を示す図である。この図に示すように、本発明の実施の形態に係る映像再生システムは、サーバ装置10、HUB20、映像再生装置30、および、テレビジョン受像機40を主要な構成要素としている。
【0037】
ここで、サーバ装置10は、後述するHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置に映像情報を記憶しており、映像再生装置30からの要求に応じて、所望の映像情報を記憶装置から読み出し、HUB20を介して送信する装置である。なお、映像情報としては、例えば、MPEG方式に基づいて符号化された情報を記憶している。
【0038】
図2は、サーバ装置10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、サーバ装置10は、CPU10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、HDD10d、画像処理部10e、I/F(Interface)10f、表示装置10g、および、操作部10hを主要な構成要素としている。
【0039】
ここで、CPU10aは、ROM10bおよびHDD10dに格納されているプログラムに基づいて各種演算処理を実行するとともに、装置の各部を制御する中央処理装置である。
【0040】
ROM10bは、CPU10aが実行する各種プログラムおよび各種データを格納している半導体記憶装置である。RAM10cは、CPU10aが実行する対象となるプログラムまたはデータを一時的に格納する半導体記憶装置である。
【0041】
HDD10dは、各種データおよび各種プログラムを格納している。この例では、HDD10dは、映像情報DB(Data Base)10d1、アプリケーションプログラム10d2、および、通信用プログラム10d3を記憶している。ここで、映像情報10d1は、映像再生装置30に送信するための情報であり、例えば、MPEG方式(例えば、MPEG−2,MPEG−4等)に基づいて符号化された映像情報である。アプリケーションプログラム10d2は、映像再生装置30から映像情報の送信要求がなされた場合に、オンデマンドで当該映像情報を送信するための処理を実行するプログラムである。通信用プログラム10d3は、映像再生装置30との間における通信を行うためのプログラムである。
【0042】
画像処理部10eは、例えば、グラフィックカード等によって構成され、CPU10aから供給された描画命令に従って描画処理を行い、得られた画像を映像信号に変換して出力する。
【0043】
I/F10fは、操作部10hおよびHUB20が接続され、これらとの間で情報を授受する際に、情報の表現形式を適宜変換するための変換装置である。なお、HUB20との間で情報を授受する際には、上述した通信用プログラム10d3に基づいて通信が行われる。
【0044】
表示装置10gは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)モニタまたはCRTモニタ等によって構成され、画像処理部10eから出力された映像信号を表示する。
【0045】
操作部10hは、例えば、キーボードおよび/またはマウス等によって構成され、サーバ装置10を管理する管理者の操作に応じた情報を生成して出力する。
【0046】
図1に戻って、HUB20は、例えば、スイッチングハブであり、サーバ装置10が接続される1つのポートと、映像再生装置30が有するn個のNIC(詳細は後述する)がそれぞれ接続されるn個のポートとを少なくとも有している。HUB20は、各ポートのポート番号と、各ポートに接続されているネットワーク機器のMAC(Media Access Control)アドレスとの対応関係を示すテーブルを有している。HUB20は、受信したパケットのヘッダに付加されている宛先を示すMACアドレスと、当該テーブルとを対照し、転送すべきポートを決定し、当該ポートにのみパケットを転送する。なお、サーバ装置10とHUB20とはケーブル11によって接続されている。
【0047】
映像再生装置30は、サーバ装置10に対して映像情報の送信要求を行い、その結果送信されてきた映像情報を復号して、テレビジョン受像機40に表示する。また、高速再生を行う場合には、複数のケーブル21−1〜21−nを並列して使用することにより、サーバ装置10から映像情報を高速に受信し、得られた高速再生映像をテレビジョン受像機40に表示する。なお、HUB20と映像再生装置30とは、n本のケーブル21−1〜21−nによって接続されている。
【0048】
図3は、映像再生装置30の構成例を示す図である。この図に示すように、映像再生装置30は、n個のNIC(ネットワークインタフェースカード)31−1〜31−n、n個のパケットバッファ32−1〜32−n、フレームバッファ33、デコーダ34、D/A変換器35、および、CPU36を主要な構成要素としている。
【0049】
ここで、受信手段および送信要求手段の一部としてのNIC31−1〜31−nは、HUB20を介してサーバ装置10との間でパケットを授受する際のインタフェースである。NIC31−1〜31−nは、それぞれがユニークなMACアドレスを有しており、当該MACアドレスに基づいて、サーバ装置10との間で映像情報を授受する。なお、NIC31−1〜31−nは、例えば、IEEE802.3規格に基づいて動作する。
【0050】
パケットバッファ32−1〜32−nは、NIC31−1〜31−nによってそれぞれ受信されたパケットを一時的に格納するための記憶装置である。パケットバッファ32−1〜32−nには、少なくとも1以上のセグメント(TCPにおける情報の単位)を格納可能な受信ウィンドウが設けられており、当該ウィンドウに所定量のセグメントが蓄えられた場合には、CPU36に対して通知を行う。CPU36は、ウィンドウに蓄えられているセグメントを読み出し、当該セグメントに含まれているフレームを抽出し、その種類に応じてフレームバッファ33の所定の領域に格納する。
【0051】
フレームバッファ33は、パケットバッファ32−1〜32−nに格納されたセグメントに含まれているフレーム(例えば、Iピクチャ、B(Bidirectionally Predictive Picture)ピクチャ、P(Predictive Picture)ピクチャ)を、フレームの種類に応じて分類して格納するための記憶装置である。
【0052】
再生手段としてのデコーダ34は、CPU36からの指令に基づいて、フレームバッファ33に格納されている各種フレームをMPEG方式に基づいて復号し、もとの映像データを生成して出力する。なお、通常再生の場合には、デコーダ34は、全ての種類のフレーム(I,B,Pピクチャ)を復号し、D/A変換器35に供給する。一方、高速再生の場合は、Iピクチャのみを抽出し、デコーダ34に供給する。具体的には、高速早送り再生の場合は、Iピクチャを正順(通常再生と同じ順序)で抽出して復号する。一方、高速巻き戻し再生の場合は、Iピクチャを逆順(通常再生と逆の順序)で抽出して復号する。なお、倍速再生の場合には、Iピクチャを所定の割合で抽出し(例えば、2倍速の場合は1/2の割合で抽出し)、復号する。
【0053】
D/A変換器35は、デコーダ34から供給された映像データ(ディジタル信号)を対応する映像信号(アナログ信号)に変換して出力する。
【0054】
送信要求手段の一部としてのCPU36は、装置の各部を制御するための中央処理装置である。
【0055】
図1に戻って、テレビジョン受像機40は、D/A変換器35から出力された映像信号(例えば、NTSC信号)を表示部(例えば、CRT)に表示する。
【0056】
つぎに、以上の実施の形態の動作を説明する。
【0057】
以下では、まず、通常再生時の動作について説明した後、高速再生時の動作について説明する。
【0058】
通常再生時の動作.
【0059】
図3において、ユーザが図示せぬ操作部を操作し、所望の映像情報の再生(通常再生)を指示したとすると、CPU36はこれを認識し、初期段階での通常再生用に設定されている所定のNIC(例えば、NIC31−1(以下、これを通常再生用のNICとする))に対して、映像情報の転送要求をサーバ装置10に対して行うように指示する。
【0060】
この結果、通常再生用のNIC31−1は、再生の対象となる映像情報を特定するための情報(例えば、ファイル名)およびパケットバッファ32−1のウィンドウサイズを示す情報等に対して、自己のMACアドレスを送信元とし、サーバ装置10のMACアドレスを送信先のMACアドレスとして付加してケーブル21−1を介して送信する。
【0061】
HUB20は、ケーブル21−1を介して送られてきた送信要求を受信し、当該送信要求のヘッダに含まれている送信先MACアドレスを参照し、当該パケットはサーバ装置10が接続されているポートに送信する必要があることを認識する。その結果、HUB20は、当該パケットをケーブル11を介して送信する。
【0062】
サーバ装置10は、通信用プログラム10d3の動作により、HUB20から送信されたパケットを受信する。そして、CPU10aは、映像再生装置30から映像情報の送信要求がなされたことを認識する。その結果、CPU10aは、アプリケーションプログラム10d2に基づいて、要求された映像情報を映像再生装置30に送信する処理を実行する。すなわち、CPU10aは、映像再生装置30から要求された映像情報を、HDD10dの映像情報DB10d1から取得する。そして、CPU10aは、通信用プログラム10d3のTCP(Transmission Control Protocol)の制御に基づいて、映像再生装置30から送信されたウィンドウサイズに応じた所定の大きさのセグメントに映像情報を分割する。つぎに、CPU10aは、セグメントの順番を示すシーケンス番号等の情報を含むヘッダをセグメントに付加し、IP(Internet Protocol)によって、送信先および送信元のアドレスを付加した後、I/F10fを介して送信する。
【0063】
サーバ装置10から送信されたパケットは、ケーブル11を介してHUB20に供給される。HUB20は、送信先アドレスを参照して、当該パケットをケーブル21−1に送り出す。
【0064】
映像再生装置30は、ケーブル21−1を介して送られてきたパケットをNIC31−1によって受信し、当該パケットから前述した各種ヘッダ情報を取り除いたデータをパケットバッファ32−1に設けられているウィンドウに格納する。そして、ウィンドウに所定量のデータが格納されると、NIC31−1はCPU36に例えば、割り込み信号等によって通知する。
【0065】
CPU36は、パケットバッファ32−1に格納されているデータから、例えば、1つのGOP(Group of Pictures)を構成するフレーム(Iピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャ)を抽出し、フレームバッファ33にフレームの種類に応じて定まる領域に格納する。
【0066】
つぎに、CPU36は、デコーダ34に対してデコード処理を開始するように指示する。その結果、デコーダ34は、フレームバッファ33に格納されている各種フレームをデコードし、映像データを生成する。このようにして生成された映像データは、D/A変換器35に供給され、映像信号に変換された後、テレビジョン受像機40に供給されて表示される。
【0067】
なお、パケットバッファ32−1に格納されているデータの量が所定量より少なくなった場合には、CPU36は、NIC31−1に対して、続きの映像情報を送信要求するように指示する。その結果、前述の場合と同様の手順によって、映像情報がサーバ装置10から送信され、NIC31−1を介してパケットバッファ32−1に格納される。そして、フレーム毎に抽出されてフレームバッファ33に格納された後、デコーダ34によって再生される。
【0068】
以上の処理により、サーバ装置10に格納されている映像情報がダウンロードされ、通常速度で再生されてテレビジョン受像機40に表示される。
【0069】
高速再生時の動作.
【0070】
例えば、通常再生中において、図示せぬ操作部の高速早送り再生ボタンまたは高速巻き戻しボタンが操作された場合には、CPU36は、高速再生が指示されたことを認識し、図4に示すフローチャートの処理を実行する。このフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0071】
ステップS10:CPU36は、変数iに現在使用中のNICの番号を代入する。具体的には、いまの例では、NIC31−1が初期段階での通常再生用となっているので、変数iには値“1”が代入される。
【0072】
ステップS11:CPU36は、変数iに代入されている値が、NICの最大番号であるnと等しいか否かを判定する。その結果、等しいと判定した場合にはステップS12に進み、それ以外の場合にはステップS13に進む。
【0073】
ステップS12:CPU36は、変数iに値“1”を代入して初期化する。
【0074】
ステップS13:CPU36は、変数iの値を1インクリメントする。
【0075】
ステップS14:CPU36は、番号が#iのNIC(NIC#i)に対して、パケットの送信要求を行うように指示する。例えば、いまの例では、i=2であるので、NIC31−2に対して送信を要求するように指示がなされる。その結果、NIC31−2は、再生の対象となる映像情報を特定するための情報(例えば、ファイル名および再生位置)およびパケットバッファ32−2のウィンドウサイズを示す情報等に対して、自己のMACアドレスを送信元とし、サーバ装置10のMACアドレスを送信先のアドレスとして付加してケーブル21−2を介して送信する。
【0076】
HUB20は、ケーブル21−2を介して送られてきた送信要求のパケットを受信し、当該パケットのヘッダに含まれている送信先MACアドレスを参照し、当該パケットはサーバ装置10が接続されているポートに送信する必要があることを認識する。その結果、HUB20は、当該パケットをケーブル11を介して送信する。
【0077】
サーバ装置10は、通信用プログラム10d3の動作により、HUB20から送信されたパケットを受信する。そして、CPU10aは、映像再生装置30から映像情報の送信要求がなされたことを認識する。その結果、CPU10aは、アプリケーションプログラム10d2に基づいて、要求された映像情報を送信する処理を実行する。すなわち、CPU10aは、映像再生装置30から要求された映像情報を、HDD10dの映像情報DB10d1から取得する。そして、CPU10aは、通信用プログラム10d3のTCPの制御に基づいて、映像再生装置30から送信されたウィンドウサイズに応じた所定の大きさのセグメントに映像情報を分割する。つぎに、CPU10aは、セグメントの順番を示すシーケンス番号等の情報を含むヘッダをセグメントに付加し、IPによって、送信先および送信元のアドレスを付加した後、I/F10fを介して送信する。
【0078】
サーバ装置10から送信されたパケットは、ケーブル11を介してHUB20に供給される。HUB20は、送信先アドレスを参照して、当該パケットをケーブル21−2に送り出す。
【0079】
映像再生装置30は、ケーブル21−2を介して送られてきたパケットをNIC31−2によって受信し、当該パケットから前述した各種ヘッダ情報を取り除いたデータをパケットバッファ32−2に設けられているウィンドウに格納する。
【0080】
以上の処理により、ステップS14の処理により要求されたデータが受信される。
【0081】
ステップS15:CPU36は、NIC31−1〜31−nからの割り込み等に基づいて、受信データが有るか否かを検出する。その結果、受信データが有ると判定された場合にはステップS19に進み、それ以外の場合にはステップS16に進む。
【0082】
ステップS16:CPU36は、変数iの値がNICの最大番号であるnと等しいか否かを判定し、等しい場合にはステップS17に進み、それ以外の場合にはステップS18に進む。
【0083】
ステップS17:CPU36は、変数iに値“1”を代入する。
【0084】
ステップS18:CPU36は、変数iの値を1インクリメントする。
【0085】
なお、ステップS14〜S18の一連の処理により、受信データがない場合には、NIC31−1〜31−nからデータの送信要求が順次なされ、受信データがある場合には、ステップS19以降の処理が実行される。ステップS19以降の処理に必要な時間は、データの受信に必要な時間よりも短いので、処理が開始された当初は、NIC31−1〜31−nの略全てから送信要求がなされ、前述のステップS14と同様の処理が実行されてデータが受信される。すなわち、NIC31−1〜31−nは、並列的にデータを受信する動作を行う。そして、データの受信が完了した場合には、後述する処理が実行される。
【0086】
ステップS19:CPU36は、データの受信が完了したNICのパケットバッファに格納されているデータからフレームを抽出し、フレームの種類に応じた所定の領域に格納する。
【0087】
具体的には、CPU36は、受信が完了したパケットバッファに格納されているデータから、例えば、1つのGOPを構成するフレーム(Iピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャ)を抽出し、フレームバッファ33のフレームの種類に応じて定まる領域に格納する。
【0088】
つづいて、CPU36は、デコーダ34に対して高速再生用のデコード処理を開始するように指示する。その結果、デコーダ34は、フレームバッファ33に格納されているIピクチャのみをデコードし、映像データを生成する。このようにして生成された高速再生用の映像データは、D/A変換器35に供給され、映像信号に変換された後、テレビジョン受像機40に供給されて表示される。その結果、テレビジョン受像機40には、高速再生された映像が表示される。
【0089】
ステップS20:CPU36は、サーバ装置10に格納されている映像情報のファイルが終了したか否かを判定する。すなわち、高速早送り再生の場合にはファイルの末尾に到達したか否かを判定し、高速巻き戻し再生の場合にはファイルの先頭に到達したか否かを判定し、これらに該当する場合には、映像が終了したと判定して処理を終了し、それ以外の場合にはステップS21に進む。
【0090】
ステップS21:CPU36は、通常再生要求がなされたか否かを判定する。すなわち、CPU36は、図示せぬ操作部が操作され、通常再生に復帰する指示がなされた場合(例えば、再生ボタンが操作された場合)には、ステップS22に進み、それ以外の場合にはステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。
【0091】
ステップS22:CPU36は、番号が(i+1)であるNICに対してパケットの送信要求を行うように指示する。すなわち、最後にパケットの送信要求を行ったNICの次のNICに対して通常再生用の送信要求を行うように指示する。なお、送信要求を行う対象となるパケットとしては、デコーダ34において最後にデコードされたフレームを含むGOPのつぎのGOPからパケットとして送信するように要求する。なお、番号が(i+1)であるNICが存在しない場合((i+1)>nの場合)には、NIC31−1に対して送信要求を行うように指示する。
【0092】
ステップS23:CPU36は、通常再生処理を実行する。すなわち、CPU36は、ステップS22において選択されたNICを再生用NICとし、前述した通常再生処理と同様の処理に基づいて映像の再生処理を実行する。
【0093】
以上の処理によれば、高速再生が指示された場合には、複数のNIC31−1〜31−nによってパケットの送信要求が並列してなされ、複数のケーブル21−1〜21−nによって並列してパケットが転送されるので、各ケーブルの伝送レートが低い場合であっても、十分な伝送レートを確保し、結果として高速再生をスムーズに実行することができる。
【0094】
例えば、n=1である従来の場合に比較して、nの値の設定状況によっては、略n倍の伝送レートを確保することができるので、例えば、2倍速、3倍速等の高速再生モードにも十分に対応することができる。
【0095】
また、以上の処理では、NICの番号の昇順に巡回するように送信要求を行うようにしたので、前述のように変数iの値に応じて送信要求処理を実行すればよいことから、制御を簡易化することが可能になる。
【0096】
なお、以上の実施の形態では、NICの番号の昇順に巡回するように送信要求を行うようにしたが、例えば、図5に示すように、各NICの番号と、各NICの状態と、受信したパケットのシーケンス番号とを対応付けて格納したテーブルを、例えば、フレームバッファ33等に設け、当該テーブルに基づいて送信要求処理を実行するようにしてもよい。
【0097】
図5の例では、「NIC番号」としてはNIC31−1〜31−nに対応する数値が格納されている。また、「状態」としては、送信要求を行ったパケットを受信済であることを示す「受信済」、パケットの送信要求を行ったパケットを受信待ちまたは受信中の状態である「受信中」、送信要求を行っていないかまたは受信済のデータが処理済となった状態を示す(すなわち、パケットバッファが実質的に空であることを示す)「空」の3つの状態がある。また、シーケンス番号としては、送信するセグメントの順番を示す数値が格納されている。なお、このテーブルの例では、1つのパケットバッファには、1つのセグメントが格納される場合を想定している。複数のセグメントが格納される場合には、シーケンス番号を複数格納できるようにすればよい。
【0098】
このようなテーブルを使用した高速再生における送信要求処理は、つぎのようになる。すなわち、CPU36は、高速再生要求がなされた場合には、図5に示すテーブルにおいて、状態が「空」となっているNICを検索する。通常再生が実行されている状態において、高速再生が指示された場合には、通常再生用のNIC以外は空となっているのが通例であるため、例えば、番号が“1”であるNIC31−1が通常再生に使用されている場合には、それ以外のNIC31−2〜31−nは空の状態となっている。このため、CPU36は、例えば、NIC31−2に対して、パケットの送信要求を行うように指示する。その結果、NIC31−2は、高速早送り再生の場合は、現在デコード中のGOPの次のGOPを含むパケットに対する送信要求を行う。また、高速巻き戻し再生の場合は、現在デコード中のGOPの前のGOPを含むパケットに対する送信要求を行う。送信要求が開始されると、CPU36は、テーブルの当該NICに対応する状態を「受信中」とする。
【0099】
CPU36は、同様の処理を、状態が「空」となっている全てのNICに対して実行する。その結果、状態が空となっているNICはパケットの送信要求状態となる。すなわち、複数のNICが並列して送信要求を行う状態となる。このとき、テーブルの状態は「受信中」となる。
【0100】
このような状態において、所定のNICがパケットの受信を完了すると、CPU36は、これを検出し、まず、テーブルの状態を「受信済」にする。そして、受信されたパケットに含まれているセグメントのシーケンス番号を抽出し、テーブルに格納する。その結果、受信が完了した場合には、図5に示すテーブルの状態が「受信済」となり、また、シーケンス番号が格納される。
【0101】
CPU36は、テーブルに格納されているシーケンス番号を参照し、受信が完了したパケットを順番に(シーケンス番号の昇順に)特定し、その中に含まれているフレームを順次抽出して、フレームバッファ33に展開する。そして、展開が終了した場合には、デコーダ34に対してデコード処理を指示する。
【0102】
また、全てのデータのデコードが完了したパケットバッファについては、テーブルの状態を「空」にする。この結果、当該パケットバッファに対応するNICについては、送信要求が受け付け可能な状態となる。
【0103】
デコーダ34は、Iピクチャのみを抽出してデコードし、得られた映像をD/A変換器35に供給する。その結果、テレビジョン受像機40には、高速再生された映像が表示される。
【0104】
以上の処理によれば、ケーブル21−1〜21−nの伝送状態にばらつきがあり、NIC31−1〜31−n間において、送信要求とタイミングと受信のタイミングとが前後した場合であっても、シーケンス番号に基づいて再生処理がなされるため、適切な順序で映像を再生することができる。
【0105】
また、各NICの状態およびパケットバッファの状態を管理するようにしたので、例えば、送信要求済であって現在送信待ちの状態または受信中の状態のNICに対して、重ねて送信要求が指示されることを防止できる。
【0106】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0107】
例えば、以上の実施の形態では、通常再生においては、1つのNICによって送信要求を行うようにしたが、複数のNICによって送信要求を行うようにしてもよい。一般的には、通常再生よりも高速再生の方が送信要求を行うNICの数を増加するようにすればよい。また、ネットワークの混雑状況に応じて、通常再生時の送信要求を行うNICの数を可変するようにしてもよい。そのような実施の形態によれば、ネットワークが混在している場合でも通常再生をスムーズに実行することができる。
【0108】
また、以上の実施の形態では、高速再生時には全てのNICを使用するようにしたが、例えば、ネットワークの混雑状況または再生速度に応じて使用するNICの数を可変するようにしてもよい。例えば、ネットワークの混雑状況に応じて使用するNICの数を増減したり、再生速度に応じて使用するNICの数を増減するようにしたりしてもよい。
【0109】
また、以上の実施の形態では、HUB20と映像再生装置30の間は、n本のケーブル21−1〜21−nを使用するようにしたが、これらをまとめて絶縁材で被覆して1本のケーブルにすることも可能である。
【0110】
また、以上の実施の形態では、HUB20は、サーバ装置10とは独立した構成としたが、HUB20をサーバ装置10に内蔵するようにしてもよい。
【0111】
また、以上の実施の形態では、n個のNICと、n個のパケットメモリとを設けるようにしたが、例えば、パケットメモリについては、複数個のNICによって共有することも可能である。
【0112】
また、以上の実施の形態では、通信エラーについては考慮していないが、例えば、所定のNICにおいて、通信エラーが発生した場合には、当該パケットについての再送信要求を行うようにしてもよい。
【0113】
また、以上の実施の形態においては、音声については言及していないが、音声については、一般的には高速再生中はミュート(無音)状態とし、通常再生時にはデコーダ34によって再生された音声情報を、図示せぬD/A変換器によって音声信号に変換し、同じく図示せぬスピーカから出力するようにすればよい。
【0114】
また、以上の実施の形態では、映像再生装置が1つの場合を例に挙げて説明したが、複数の映像再生装置を接続することも可能である。なお、ケーブルを複数の映像再生装置にて共用する場合には、例えば、既存のコリジョン回避技術(例えば、CMSA/CD(Carrier Sense Multiple Access / Collision Detection)を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、例えば、ネットワークを介して映像を再生する映像再生装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態に係る映像再生システムの構成例を示す図である。
【図2】図1に示すサーバ装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示す映像再生装置の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す映像再生装置において高速再生時に実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態の映像再生装置に格納されているテーブルの一例である。
【図6】従来の映像再生システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10 サーバ装置,20 HUB,21−1〜21−n ケーブル,30 映像再生装置,31−1〜31−n NIC(受信手段、送信要求手段の一部),34 デコーダ(再生手段),36 CPU(送信要求手段の一部),40 テレビジョン受像機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置から映像情報を受信して再生する映像再生装置において、
上記サーバ装置から上記映像情報を受信する複数の受信手段と、
上記複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信する状態となるように上記サーバ装置に対して映像情報の送信要求を行う送信要求手段と、
上記受信手段によって受信された映像情報を再生する再生手段と、
を有することを特徴とする映像再生装置。
【請求項2】
前記受信手段と前記サーバ装置とは、複数のケーブルによって接続されていることを特徴とする請求項1記載の映像再生装置。
【請求項3】
前記複数の受信手段は、複数のネットワークインタフェースカードによって構成されていることを特徴とする請求項2記載の映像再生装置。
【請求項4】
前記送信要求手段は、前記再生手段が少なくとも高速再生を行う場合には、前記複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信する状態となるように前記サーバ装置に対して映像情報の送信要求を行うことを特徴とする請求項1記載の映像再生装置。
【請求項5】
前記送信要求手段は、前記再生手段が通常再生を行っている場合において、前記サーバ装置との間の回線が通常再生を実行するのに十分でない程度に混雑している場合には、前記複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信する状態となるように前記サーバ装置に対して映像情報の送信要求を行うことを特徴とする請求項1記載の映像再生装置。
【請求項6】
前記送信要求手段は、前記受信手段が所定の順序で前記映像情報を受信するように、前記サーバ装置に対して送信要求を行うことを特徴とする請求項1記載の映像再生装置。
【請求項7】
前記送信要求手段は、前記受信手段が有する前記映像情報を含むパケットを格納するためのパケットバッファが空いている前記受信手段を検出し、当該受信手段が前記映像情報を受信するように前記サーバ装置に対して送信要求を行うことを特徴とする請求項1記載の映像再生装置。
【請求項8】
サーバ装置と、当該サーバ装置から映像情報を受信して再生する映像再生装置とを有する映像再生システムにおいて、
上記映像再生装置は、
上記サーバ装置から上記映像情報を受信する複数の受信手段と、
上記複数の受信手段の少なくとも2つ以上が並行して映像情報を受信状態となるように上記サーバ装置に対して映像情報の送信要求を行う送信要求手段と、
上記受信手段によって受信された映像情報を再生する再生手段と、
を有することを特徴とする映像再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−150738(P2007−150738A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342530(P2005−342530)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】