説明

映像出力装置、映像出力方法

【課題】1つの規格に従うデジタル映像データによりインタレース方式またはプログレッシブスキャン方式の表示方式を使用して状況に応じた良好な品質による表示を可能にする。
【解決手段】映像データ制御部10は、映像がデジタル符号化されたデータを含むデジタルデータに復号化し、この復号化されたデジタルデータと共に、インタレース方式またはプログレッシブスキャン方式を示す識別情報が所定バイト目に挿入された固定長情報をデジタルデータのデータフォーマット内に設定し、固定長情報と共にデジタルデータを出力するので、1つのデータ転送経路で転送される、1つの規格に従うデジタル映像データによってインタレース方式またはプログレッシブスキャン方式の表示方式を用いて映像を表示させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置あるいは表示制御機能を有するシステムへ転送されるデジタル映像データを扱う映像出力装置、映像出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、映像表示装置では、扱うデジタル映像データによって表示方式が特定されている。例えば、ITU−R656(国際電気通信連合 勧告第656号)「INTERFACES FOR DIGITAL VIDEO SIGNALS IN 525−LINE AND 625−LINE TELEVISION SYSTEMS」の規格に従うデジタル映像データを扱う場合には、インタレース方式によって映像が表示される。
【0003】
図4には、前述した規格におけるデジタル映像データの一部構成を示している。走査線1本分のデータには、実際に使用されるアクティブ映像データの他に、アクティブ映像データの始まり及び終わりを示す同期コードと、ブランキング・データが埋め込まれている。
【0004】
同期コードは、それぞれ4バイトで構成され、1バイト目から3バイト目までは、「FFh 00h 00h」で固定されており、4バイト目が図4に示すようになっている。なお、図4に示すバイトの中で最上位ビット(bit7)は、“1”で固定となっている。
【0005】
インタレース方式は、奇数フィールドの走査線を順次表示した後に偶数フィールドの走査線を表示、あるいは偶数フィールドの走査線を順次表示した後に奇数フィールドの走査線を表示する方式であり、走査が1本おきに行われる。インタレース方式は、動画を表示させる際にちらつきを少なくする特徴を有しているが、高精細または高解像度の表示装置を用いて映像を表示させた場合には、映像の粗さが目立ってしまう。
【0006】
一方、高精細または高解像度の表示装置を用いて高品質の表示を行なう表示方式としては、走査線を上から下まで順次走査するプログレッシブスキャン方式がある。プログレッシブスキャン方式を用いて映像の表示を行なう場合には、前述した規格とは異なるプログレッシブスキャン方式用のデジタル映像データによりデータ転送を行なう必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の映像表示装置では、扱うデジタル映像データによって表示方式が決められているため、例えばプログレッシブスキャン方式に適した高精細または高解像度の表示装置を用いていたとしても、前述したITU−R656(国際電気通信連合 勧告第656号)の規格に従うデジタル映像データを扱う場合にはインタレース方式による表示しかできなかった。
【0008】
また、扱うデジタル映像データによって表示方式が決められているため、映像素材の内容に関係なく、同じ表示方式を用いた映像表示しかできなかった。
【0009】
本発明は前記のような事情を考慮してなされたもので、1つの規格に従うデジタル映像データによりインタレース方式またはプログレッシブスキャン方式の表示方式を使用して状況に応じた良好な品質による表示が可能な映像出力装置、映像出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、映像がデジタル符号化されたデータを含むデジタルデータに復号化する手段と、前記復号化されたデジタルデータと共に、インタレース方式またはプログレッシブスキャン方式を示す識別情報が所定バイト目に挿入された固定長情報を前記デジタルデータのデータフォーマット内に設定する手段と、前記固定長情報と共に前記デジタルデータを出力する手段を有する。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したように本発明によれば、デジタル映像データに表示方式を示すインタレース方式またはプログレッシブスキャン方式を示す識別情報を設定して送信し、この送信されたデジタル送信データに設定された識別情報に基づいて表示方式を切り換えて映像を表示させるので、1つのデータ転送経路で転送される、1つの規格に従うデジタル映像データによってインタレース方式またはプログレッシブスキャン方式の表示方式を用いて映像の表示を行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係わる映像表示装置のシステム構成を示すブロック図である。本実施形態における映像表示装置は、例えばCD−ROM、DVD、磁気ディスク等の記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されるコンピュータによって実現される。
【0013】
図1に示すように、本実施形態における映像表示装置は、映像データ制御部10、システム制御部11、入力装置12、表示制御部14、及び表示装置15によって構成されている。
【0014】
映像データ制御部10は、システム制御部11の制御のもとで、メディアから読み出されるデジタル映像データを扱うもので、読み取り制御部10a、送信制御部10bが設けられている。
【0015】
読み取り制御部10aは、メディア20(例えばDVD−ROM)に記録されたデジタルデータを読み込み、同デジタルデータを映像データに復号して送信制御部10bに与える。
【0016】
送信制御部10bは、読み取り制御部10aによってメディア20から読み出され、復号化された映像データに対して、表示方式を示す識別情報(識別データ)を付加して表示制御部14に送信するもので、システム制御部11から与えられる情報をもとに、読み取り制御部10aからの映像データを表示方式に応じた映像データに変換すると共に、表示方式を示す識別データを付加して表示制御部14へ与える。本実施形態の映像表示装置では、表示方式として、インタレース方式とプログレッシブスキャン方式が用いられるものとする。
【0017】
システム制御部11は、映像表示装置の制御を司るもので、入力装置12から入力される情報をもとに、読み取り制御部10aに対してメディア20をアクセスするための情報を与えると共に、送信制御部10bに対して何れの表示方式を用いるかを選択するための情報を与える。
【0018】
入力装置12は、リモートコントローラやキーボード等によって構成され、システム制御部11に対して映像表示装置の動作を制御するための指示を入力するもので、例えば映像データ制御部10における映像データ処理に対する指示、すなわち表示方式としてインタレース方式またはプログレッシブスキャン方式の何れを用いるかといった指示を入力するために使用される。
【0019】
表示制御部14は、映像データ制御部10の送信制御部10bから送信されたデジタル送信データを受信し、デジタル映像データ中に含まれる識別情報(識別データ)に基づいて表示方式(インタレース方式またはプログレッシブスキャン方式)を切り換えて、表示装置15によって映像を表示させる。
【0020】
表示装置15は、CRTやLCDにより構成されるもので、表示制御部14の制御のもとで映像等の表示を行なう。
【0021】
図2は、図1に示す本発明による映像表示装置において扱われるデジタル映像データのデータフォーマットを示す図である。図2に示すデジタル映像データは、ITU−R656(国際電気通信連合 勧告第656号)「INTERFACES FOR DIGITAL VIDEO SIGNALS IN 525−LINE AND 625−LINE TELEVISION SYSTEMS」の規格に従うデジタル映像データである。
【0022】
図2は、走査線1本分のデータ形式を示している。映像データの始まりと終わりのそれぞれに同期コードが付加され、同コードの4バイト目の最上位ビットには表示方式を示す識別情報(識別データT)が設けられている。
【0023】
図3には、同期コードの4バイト目を示している。図3に示すバイトの中で最上位ビット(bit7)は、規格の中では意味を持たなかった固定データであるが、本実施形態では識別データTとして取り扱うことで、デジタル映像データの規格の中で異なる2種類の表示方式を切り換えるようにする。本実施形態では、識別データTの値が“1”の時は、インタレース方式を示し、逆にTの値が“0”の時にプログレッシブスキャン方式を示すものとする。
【0024】
次に、本実施形態における動作について説明する。
【0025】
図1において、メディア20は、例えばDVD−ROMであり、映画等の映像信号のデジタルデータが記録されている。
【0026】
システム制御部11は、入力装置12から与えられる情報をもとに、メディア20へアクセスするための情報を読み取り制御部10aへ与えると共に、インタレース方式あるいはプログレッシブスキャン方式の何れの表示方式を選択するかを示す情報を送信制御部10bに与える。
【0027】
読み取り制御部10aは、システム制御部11から与えられる情報をもとに、メディア20にアクセスして、メディア20に記録されている符号化されたデジタルデータを読み込む。また、読み取り制御部10aは、メディア20から読み込んだデジタルデータを映像データに復号化して送信制御部10bへ与える。
【0028】
送信制御部10bは、システム制御部11から与えられる情報をもとに、読み取り制御部10aから与えられた映像データを、インタレース方式あるいはプログレッシブスキャン方式の何れかの映像データに変換する。また、送信制御部10bは、何れの表示方式を用いるかに応じて(何れの表示方式に応じた映像データに変換したかに応じて)、インタレース方式あるいはプログレッシブスキャン方式を示す識別データTを同期コード中の付加して表示制御部14へ与える。
【0029】
すなわち、インタレース方式の映像データに変換を行った場合には、図2及び図3に示す同期コードの4バイト目の最上位ビットの値を“1”とし、プログレッシブスキャン方式の映像データに変換を行った場合には、最上位ビットの値を“0”とする。
【0030】
表示制御部14は、送信制御部10bからの映像データを受けると、同映像データに含まれる同期コード中の識別データTを参照し、表示方式がインタレース方式あるいはプログレッシブスキャン方式の何れであるかを判別する。
【0031】
表示制御部14は、判別結果をもとに映像データの出力形式を切り換え、表示装置15において表示させる。
【0032】
このようにして、規格の中で従来では固定データとして扱われて意味を持たなかったデータを、インタレース方式またはプログレッシブスキャン方式を示す識別データTとして取り扱うことにより、規格に従う1つのデジタル映像データによって表示方式を切り換えることが可能となる。従って、異なる2つの表示方式を用いるとしてもデータ転送経路は1つで良い。
【0033】
なお、映像素材が単一である場合(映画等)には、その映像を表示する際にはインタレース方式またはプログレッシブスキャン方式の一方の表示方式を用いれば良いので、送信制御部10bによって、何れかの(例えば最初の)同期コードに含まれる識別データに設定された値をもとに表示方式が決定された後は、各同期コードに設定された識別データTについて判別を行わないようにしても良い。
【0034】
また、映像素材に異なる種類の内容が含まれている場合には、送信制御部10bは、各同期コードに含まれる識別データに設定された値を判別し、識別データの値が変化した時点で表示方式を動的に変更するようにしても良い。
【0035】
例えば、映像素材の中に、インタレース方式用のカメラで撮影された映像と、プログレッシブスキャン方式用のカメラで撮影された映像とがある場合には、撮影時に使用した方式と同じ表示方式を用いて表示を行った方が、それぞれ本来あるべき品質によって映像を表示させることができる。
【0036】
従って、異なる表示方式に適した映像データが混在している場合には、それぞれに応じた表示方式を示す識別データTを、該当する映像データと連続する同期コードに付加することで、表示制御部14によって識別データTの値に応じて動的に表示方式を切り換え、映像素材に合った表示方式を用いて表示させることができる。
【0037】
また、デジタルTVにITU−R656の規格が用いられる場合には、本発明を適用して前述のようにして表示方式を切り換えることもできる。
【0038】
なお、上述した実施形態において記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで各種装置に提供することができる。また、通信媒体により伝送して各種装置に提供することも可能である。本装置を実現するコンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、または通信媒体を介してプログラムを受信し、このプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態に係わる映像表示装置のシステム構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す本発明による映像表示装置において扱われるデジタル映像データのデータフォーマットを示す図。
【図3】同期コードの4バイト目を示す図。
【図4】従来のデジタル映像データの一部構成を示す図。
【符号の説明】
【0040】
10…映像データ制御部、10a…読み取り制御部、10b…送信制御部、11…システム制御部、12…入力装置、14…表示制御部、15…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像がデジタル符号化されたデータを含むデジタルデータに復号化する手段と、
前記復号化されたデジタルデータと共に、インタレース方式またはプログレッシブスキャン方式を示す識別情報が所定バイト目に挿入された固定長情報を前記デジタルデータのデータフォーマット内に設定する手段と、
前記固定長情報と共に前記デジタルデータを出力する手段を有する映像出力装置。
【請求項2】
映像がデジタル符号化されたデータを含むデジタルデータに復号化し、
この復号化されたデジタルデータと共に、インタレース方式またはプログレッシブスキャン方式を示す識別情報が所定バイト目に挿入された固定長情報を前記デジタルデータのデータフォーマット内に設定し、
前記固定長情報と共に前記デジタルデータを出力する映像出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−251981(P2007−251981A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113215(P2007−113215)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【分割の表示】特願2004−159349(P2004−159349)の分割
【原出願日】平成10年3月13日(1998.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】