説明

映像受信装置

【課題】ビットレートが低い場合であってもデコードの開始が遅れることを回避することが可能な映像受信装置を得る。
【解決手段】映像受信装置4は、それぞれにタイムスタンプ50が付加された複数のトランスポートパケットTPを含むトランスポートストリームS1を一時的に記憶するバッファメモリ11と、基準クロックを発生するVCO18と、基準クロックに基づいてカウント動作を行うTTSカウンタ16と、各トランスポートパケットTPに付加されているタイムスタンプ50の値と、TTSカウンタ16のカウント値とに基づいて、バッファメモリ11からの各トランスポートパケットTPの出力を制御するTTSゲート12と、バッファメモリ11に入力されたトランスポートパケットTPの滞留時間に基づいて、基準クロックの周波数を調整する調整部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG(Moving Picture Experts Group)2−TS(Transport Stream)を用いた通信プロトコルにおいて、送信側のエンコーダは、所定間隔のトランスポートパケット毎に、PCR(Program Clock Reference)を付加する。受信側のデコーダは、トランスポートパケット内に含まれるPCRを検出し、検出したPCRに基づいて、エンコーダのクロックを再生する。また、MPEG2−TSにおいては、通信速度の調整のために、無意味なトランスポートパケット(ヌルパケット)が、トランスポートストリーム内に含まれている。エンコーダでは、ヌルパケットを含むトランスポートストリームに対して、PCRを付加する。
【0003】
地上デジタル放送やBSデジタル放送等の再送信サービスにおいては、通信データ量の削減のために、ヌルパケットを削除した後にトランスポートストリームを送信することが望ましい。この場合には、PCRを含むトランスポートパケットの位置が、ヌルパケットの削除の前後で異なる。そのため、デコーダが受信するトランスポートストリームにおいても、PCRを含むトランスポートパケットの位置が、本来の位置(ヌルパケットが削除される前のトランスポートストリーム内における位置)とは異なっている。従って、デコーダは、検出したPCRのみによっては、エンコーダのクロックを正確に再生することができない。
【0004】
下記特許文献1,2には、MPEG2−TSの各トランスポートパケットにタイムスタンプを付加することにより、MPEG2−TSをMPEG2−TTS(Time-stamped Transport Stream)に変換する技術が開示されている。エンコーダにおいてヌルパケットが削除された場合であっても、デコーダは、タイムスタンプに基づいて、PCRを含むトランスポートパケットの本来の位置を復元することができる。従って、デコーダは、本来の位置に復元されたトランスポートパケット内に含まれるPCRに基づいて、エンコーダのクロックを再生することが可能となる。
【0005】
図8は、MPEG2−TTSを扱うデコーダの構成の一部を抜き出して示すブロック図である(例えば下記特許文献3参照)。TTSデコーダ330は、クロック発生部334が発生する基準クロックに基づいて動作し、各TTSパケットに付加されているタイムスタンプに従って、TTSパケットバッファ332からTTSパケットを読み出して、TSパケットとしてMPEGデコーダ340に入力する。
【0006】
また、TTSデコーダ330は、以下のようにして基準クロックの周波数を調整する機能を有している。TTSパケットバッファ332には、デコード開始前に規定量(例えばバッファメモリの容量の半分程度)のTTSパケットが蓄積される。TTSデコーダ330は、TTSパケットバッファ332の占有量を監視し、その占有量が規定範囲を上回る場合には、基準クロックの周波数を上げる。これにより、TTSパケットバッファ332からTTSパケットが読み出されるペースが早くなる。一方、その占有量が規定範囲を下回る場合には、基準クロックの周波数を下げる。これにより、TTSパケットバッファ332からTTSパケットが読み出されるペースが遅くなる。このように、バッファメモリの増減傾向を監視することでエンコーダ側のクロックを再生する方式は、バッファメモリ方式と称されている。一般的に、バッファメモリ方式によるクロック再生は、エンコーダのビットレートが固定である方式(CBR:Constant Bit Rate)に対して適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−35197号公報
【特許文献2】特開2008−35198号公報
【特許文献3】特開2007−104085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、映像や音声の状況に応じてエンコーダのビットレートを変動させる方式(VBR:Variable Bit Rate)においては、ビットレートが高い場合にはバッファメモリがオーバーフローしやすく、ビットレートが低い場合にはバッファメモリがアンダーフローしやすい。従って、VBRにバッファメモリ方式を拡張しようとすると、デコード開始前にバッファメモリに蓄積しておくTTSパケットの規定量を、想定されるビットレートの変動幅に応じてある程度大きく設定する必要がある。
【0009】
従って、ビットレートが低い場合には規定量のTTSパケットをバッファメモリに蓄積するまでに長時間を要するため、デコードの開始が遅れ、それに伴って映像の再生開始も遅れるという問題がある。
【0010】
本発明はかかる問題を解決するために成されたものであり、ビットレートが低い場合であってもデコードの開始が遅れることを回避することが可能な映像受信装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る映像受信装置は、それぞれにタイムスタンプが付加された複数のパケットを含むトランスポートストリームを一時的に記憶する記憶部と、基準クロックを発生するクロック発生部と、前記基準クロックに基づいてカウント動作を行うカウンタ部と、各パケットに付加されているタイムスタンプの値と、前記カウンタ部のカウント値とに基づいて、前記記憶部からの各パケットの出力を制御するゲート部と、前記記憶部に入力されたパケットの滞留時間に基づいて、前記基準クロックの周波数を調整する調整部と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
第1の態様に係る映像受信装置によれば、調整部は、記憶部に入力されたパケットの滞留時間に基づいて、基準クロックの周波数を調整する。つまり、パケットの滞留時間が目標値より大きい場合には基準クロックの周波数を上げ、パケットの滞留時間が目標値より小さい場合には基準クロックの周波数を下げる。これにより、映像送信装置内のエンコーダの基準クロックを映像受信装置において再生することができる。しかも、エンコーダのビットレートに拘わらず、各パケットは記憶部に入力されてから所定の滞留時間が経過したタイミングで記憶部から出力される。従って、ビットレートが低い場合であってもデコードの開始が遅れることを回避することが可能となる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る映像受信装置は、第1の態様に係る映像受信装置において特に、前記調整部は、前記記憶部に入力されるパケットに付加されているタイムスタンプの値と、前記記憶部から出力されるパケットに付加されているタイムスタンプの値との差に基づいて、前記滞留時間を算出することを特徴とするものである。
【0014】
第2の態様に係る映像受信装置によれば、調整部は、記憶部に入力されるパケットに付加されているタイムスタンプの値と、記憶部から出力されるパケットに付加されているタイムスタンプの値との差に基づいて、滞留時間を算出する。このように、各パケットに付加されているタイムスタンプを用いて滞留時間を算出することにより、滞留時間を管理するための追加の計時手段を設ける必要がないため、構成及び処理の簡略化を図ることができる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る映像受信装置は、第2の態様に係る映像受信装置において特に、前記ゲート部は、前記トランスポートストリームに含まれる先頭のパケットが前記記憶部に入力された後、当該先頭のパケットに付加されているタイムスタンプの値に、目標滞留時間に相当する値を加算した値以上のタイムスタンプが付加されているパケットが前記記憶部に入力されたタイミングで、前記記憶部からの前記先頭のパケットの出力を開始することを特徴とするものである。
【0016】
第3の態様に係る映像受信装置によれば、ゲート部は、先頭のパケットが記憶部に入力された後、当該先頭のパケットに付加されているタイムスタンプの値に、目標滞留時間に相当する値を加算した値以上のタイムスタンプが付加されているパケットが記憶部に入力されたタイミングで、記憶部からの先頭のパケットの出力を開始する。これにより、先頭のパケットが記憶部に入力されてから目標滞留時間が経過したタイミングで、記憶部からの先頭のパケットの出力を開始できるため、目標滞留時間に相当する量のパケットが記憶部に溜まれば出力を開始することができる。
【0017】
本発明の第4の態様に係る映像受信装置は、第1の態様に係る映像受信装置において特に、前記記憶部に入力されるパケットに対して所定の時刻情報を付加する情報付加部をさらに備え、前記調整部は、前記記憶部に入力されるパケットに対して付加する時刻情報の値と、前記記憶部から出力されるパケットに付加されている時刻情報の値との差に基づいて、前記滞留時間を算出することを特徴とするものである。
【0018】
第4の態様に係る映像受信装置によれば、調整部は、記憶部に入力されるパケットに対して付加する時刻情報の値と、記憶部から出力されるパケットに付加されている時刻情報の値との差に基づいて、滞留時間を算出する。従って、離散的な値であるタイムスタンプを用いて滞留時間を算出する場合と比較すると、誤差を低減できるため、基準クロックの再生精度を向上することができる。
【0019】
本発明の第5の態様に係る映像受信装置は、第4の態様に係る映像受信装置において特に、前記ゲート部は、前記トランスポートストリームに含まれる先頭のパケットが前記記憶部に入力された後、当該先頭のパケットに付加されている時刻情報で示される時刻から、前記滞留時間が経過したタイミングで、前記記憶部からの前記先頭のパケットの出力を開始することを特徴とするものである。
【0020】
第5の態様に係る映像受信装置によれば、ゲート部は、トランスポートストリームに含まれる先頭のパケットが記憶部に入力された後、当該先頭のパケットに付加されている時刻情報で示される時刻から、目標滞留時間が経過したタイミングで、記憶部からの先頭のパケットの出力を開始する。これにより、先頭のパケットが記憶部に入力されてから目標滞留時間が経過したタイミングで、記憶部からの先頭のパケットの出力を開始できるため、目標滞留時間に相当する量のパケットが記憶部に溜まれば出力を開始することができる。
【0021】
本発明の第6の態様に係る映像受信装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る映像受信装置において特に、前記調整部は、所定期間内に求めた複数の滞留時間の平均値に基づいて、前記基準クロックの周波数を調整することを特徴とするものである。
【0022】
第6の態様に係る映像受信装置によれば、調整部は、所定期間内に求めた複数の滞留時間の平均値に基づいて、基準クロックの周波数を調整する。従って、ジッタやシェーピング等の影響によってエンコーダから映像受信装置へのパケットの到着時間が揺らぎ、それに起因して記憶部へのパケットの入力タイミングが変動する場合であっても、基準クロックの周波数が頻繁に変更される事態を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ビットレートが低い場合であってもデコードの開始が遅れることを回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】映像通信システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る映像受信装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【図3】映像受信装置が受信するトランスポートストリームの一部を抜き出して示す図である。
【図4】トランスポートパケットの構造を示す図である。
【図5】TTSゲートに入力されるトランスポートストリームと、TTSゲートから出力されるトランスポートストリームとの関係を示すタイミングチャートである。
【図6】変形例に係る映像受信装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【図7】バッファメモリに記憶されているトランスポートパケットの構造を示す図である。
【図8】デコーダの構成の一部を抜き出して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0026】
図1は、映像通信システム1の全体構成を示す図である。映像送信装置2は、映像を送信する送信局に設置されており、地上デジタル放送やBSデジタル放送の再送信サービス等を提供するための送信サーバである。映像送信装置2は、MPEG(Moving Picture Experts Group)2−TS(Transport Stream)の各トランスポートパケットにタイムスタンプを付加することにより、MPEG2−TSをMPEG2−TTS(Time-stamped Transport Stream)に変換する。タイムスタンプは、映像送信装置2内のエンコーダにおいて、27MHzのクロックを用いたカウンタのカウント動作によって生成される4バイトのカウント値である。映像送信装置2は、タイムスタンプを付加した後、通信データ量の削減のために、MPEG2−TSのトランスポートストリームに含まれているヌルパケットを削除した後に、MPEG2−TTSのトランスポートストリームを送信する。
【0027】
映像受信装置4は、例えばユーザの自宅に設置されたセットトップボックスである。映像受信装置4は、映像送信装置2から送信されたMPEG2−TTSのトランスポートストリームを、IP(Internet Protocol)ネットワーク等の通信ネットワーク3を介して受信する。そして、受信したトランスポートストリームをデコードすることにより、テレビ5において映像を再生する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態に係る映像受信装置4の構成を簡略化して示すブロック図である。図2に示すように、この映像受信装置4は、バッファメモリ11、TTSゲート12、デコード回路13、抽出部14,15、TTSカウンタ16、調整部17、及びVCO(Voltage Control Oscillator)18を備える。映像受信装置4は、バッファメモリ11に入力されたパケットの滞留時間に基づいて、VCO18が発生する基準クロックの周波数を調整する。
【0029】
バッファメモリ11(記憶部)には、映像送信装置2から図示しない受信部によって受信したトランスポートストリームS1が入力され、バッファメモリ11はそのトランスポートストリームS1を一時的に記憶する。
【0030】
VCO18(クロック発生部)は、27MHzの基準クロックを発生する。後述するように、VCO18が発生する基準クロックの周波数は、調整部17によって調整可能である。
【0031】
TTSカウンタ16(カウンタ部)は、VCO18が発生した基準クロックに基づいてカウント動作を行う。
【0032】
TTSゲート12(ゲート部)は、この例において、各トランスポートパケットに付加されているタイムスタンプの値と、TTSカウンタ16のカウント値とに基づいて、バッファメモリ11からデコード回路13へ向けての各トランスポートパケットの出力を制御する。
【0033】
抽出部14は、バッファメモリ11に入力されるトランスポートパケット(例えば、バッファメモリ11への入り口をまさに通過しようとしているトランスポートパケット)に付加されているタイムスタンプの値を抽出する。
【0034】
抽出部15は、バッファメモリ11から出力されるトランスポートパケット(例えば、TTSゲート12をまさに通過しようとしているトランスポートパケット)に付加されているタイムスタンプの値を抽出する。
【0035】
調整部17は、バッファメモリ11に入力されたトランスポートパケットの、バッファメモリ11における滞留時間に基づいて、VCO18が発生する基準クロックの周波数を調整する。調整手法の詳細については後述する。
【0036】
図3は、映像受信装置4が受信するトランスポートストリームS1の一部を抜き出して示す図である。トランスポートストリームS1は、複数のトランスポートパケットTPを含む。図3では、説明の簡単化のため、この順に連続する8個のトランスポートパケットTP1〜TP8のみを示している。トランスポートストリームS1に含まれる複数のトランスポートパケットTPのうちの先頭のトランスポートパケットは、トランスポートパケットTP1であるものとする。
【0037】
図4は、トランスポートパケットTPの構造を示す図である。トランスポートパケットTPは、ヘッダ部とペイロード部とを有しており、これらの合計のデータ長は188バイトである。トランスポートパケットTPには、データ長が4バイトのタイムスタンプ50が付加されている。
【0038】
以下、映像受信装置4の動作について説明する。映像受信装置4は、映像送信装置2から送信されたMPEG2−TTSのトランスポートストリームS1を、通信ネットワーク3を介して受信する。そして、受信したトランスポートストリームS1を、バッファメモリ11内に一時的に記憶する。図2を参照して、トランスポートストリームS1は、バッファメモリ11から読み出されて、トランスポートストリームS2としてTTSゲート12からデコード回路13に向けて出力される。
【0039】
図5は、TTSゲート12に入力されるトランスポートストリームS1と、TTSゲート12から出力されるトランスポートストリームS2との関係を示すタイミングチャートである。トランスポートストリームS1に関しては、トランスポートパケットTP1〜TP8がこの順にバッファメモリ11から連続して読み出されて、TTSゲート12に入力される。
【0040】
まず、抽出部15は、バッファメモリ11から読み出されたトランスポートストリームS1のうち、先頭のトランスポートパケットTP1に付加されているタイムスタンプ50の値(タイムスタンプ値ST(1))を抽出し、そのタイムスタンプ値ST(1)をTTSゲート12に入力する。
【0041】
TTSカウンタ16は、VCO18が発生した基準クロックに基づいてカウント動作を行っており、TTSカウンタ16から出力されるカウント値はTTSゲート12に入力される。なお、バッファメモリ11から読み出されたトランスポートパケットのタイムスタンプ値と、TTSカウンタ16のカウント値との差が所定の閾値を超えた場合には、トランスポートパケットのタイムスタンプ値がTTSカウンタ16にセットされる。これによって、TTSカウンタ16はカウント値を初期化し、カウント動作を再開する。
【0042】
映像受信装置4においては、バッファメモリ11内におけるトランスポートパケットTPの滞留時間に関する目標値(以下「目標滞留時間」と称す)が予め設定されている。目標滞留時間は、バッファメモリ11の記憶容量や、映像送信装置2内のエンコーダがVBR(Variable Bit Rate)方式を採用している場合には、想定されるビットレートの最大値及び最小値等に応じて、適切な値(例えば100〜500msec)に設定される。
【0043】
抽出部14は、バッファメモリ11に入力されるトランスポートパケットに付加されているタイムスタンプの値を抽出し、TTSゲート12に入力する。
【0044】
TTSゲート12は、抽出部15から入力されたタイムスタンプ値ST(1)に、目標滞留時間に相当するタイムスタンプ値を加算した値以上のタイムスタンプ値が、抽出部14から入力されることにより、そのタイミングでゲートをオープンする。これにより、TTSゲート12からデコード回路13に向けてのトランスポートパケットTP1の出力が開始される。トランスポートパケットTP1がTTSゲート12の通過を完了すると、ゲートは再びクローズされる。なお、TTSゲート12を通過する際、トランスポートパケットTP1に付加されているタイムスタンプ50が削除されることにより、MPEG2−TTSからMPEG2−TSへの変換が行われる。
【0045】
次に、抽出部15は、トランスポートパケットTP1に続くトランスポートパケットTP2に付加されているタイムスタンプ50の値(タイムスタンプ値ST(2))を抽出し、そのタイムスタンプ値ST(2)をTTSゲート12に入力する。
【0046】
TTSゲート12は、タイムスタンプ値ST(2)に等しいカウント値がTTSカウンタ16から入力されることにより、そのタイミングでゲートをオープンする。これにより、TTSゲート12からデコード回路13に向けてのトランスポートパケットTP2の出力が開始される。上記と同様に、トランスポートパケットTP2がTTSゲート12の通過を完了すると、ゲートは再びクローズされる。また、TTSゲート12を通過する際、トランスポートパケットTP2に付加されているタイムスタンプ50が削除されることにより、MPEG2−TTSからMPEG2−TSへの変換が行われる。
【0047】
トランスポートパケットTP3以降についても上記と同様の動作が繰り返されることにより、TTSゲート12からデコード回路13にトランスポートストリームS2が入力される。
【0048】
図5を参照して、トランスポートストリームS2に関して、例えば、トランスポートパケットTP2は、トランスポートパケットTP1に連続してデコード回路13に入力されている。これは、映像送信装置2内のエンコーダにおいて、トランスポートパケットTP1とトランスポートパケットTP2との間に、ヌルパケットが存在していなかったことに起因する。なお、厳密には、トランスポートパケットTP1の末尾とトランスポートパケットTP2の先頭との間には、TTSゲート12において削除されたタイムスタンプ50に相当する4バイト分の間隔が存在しているが、図5ではその間隔を無視して図示している。
【0049】
また例えば、トランスポートパケットTP3は、トランスポートパケットTP2から遅延してデコード回路13に入力されている。遅延量は、先頭同士の比較で、トランスポートパケットTPの2個分に相当する時間WT1である。これは、映像送信装置2内のエンコーダにおいて、トランスポートパケットTP2とトランスポートパケットTP3との間に存在していた1個のヌルパケットが削除されたことに起因する。
【0050】
また例えば、トランスポートパケットTP6は、トランスポートパケットTP5から遅延してデコード回路13に入力されている。遅延量は、先頭同士の比較で、トランスポートパケットTPの3個分に相当する時間WT2である。これは、映像送信装置2内のエンコーダにおいて、トランスポートパケットTP5とトランスポートパケットTP6との間に存在していた2個のヌルパケットが削除されたことに起因する。
【0051】
さて次に、調整部17による基準クロックの調整処理について説明する。
【0052】
調整部17には、バッファメモリ11に入力されるトランスポートパケットに付加されているタイムスタンプの値(以下「入力タイムスタンプ値」と称す)が、抽出部14から入力される。また、調整部17には、同時刻にバッファメモリ11から出力されるトランスポートパケットに付加されているタイムスタンプの値(以下「出力タイムスタンプ値」と称す)が、抽出部15から入力される。
【0053】
調整部17は、入力タイムスタンプ値から出力タイムスタンプ値を減算することにより両者の差分値を求め、この差分値を時間に換算した値として、バッファメモリ11内におけるトランスポートパケットTPの滞留時間を算出する。そして、例えば、この滞留時間が目標滞留時間に等しくなるように(又は近付くように)、VCO18が発生する基準クロックの周波数を調整する。具体的に、調整部17は、算出した滞留時間が目標滞留時間より大きい場合は基準クロックの周波数を上げ、一方、算出した滞留時間が目標滞留時間より小さい場合は基準クロックの周波数を下げる。
【0054】
ここで、IPネットワーク等の通信ネットワーク11においては、ジッタやシェーピング等の影響によって映像送信装置2から映像受信装置4へのトランスポートパケットTPの到着時間が揺らぎ、それに起因してバッファメモリ11へのトランスポートパケットTPの入力タイミングが変動する場合がある。そこで、調整部17は、TTSゲート12から出力されるトランスポートパケットTP毎に、タイムスタンプ値に基づいて滞留時間を算出し、所定期間(例えば数分〜数10分)内に求めた複数の滞留時間の平均値と目標滞留時間との比較により、基準クロックの周波数を調整するのが望ましい。上記と同様に調整部17は、滞留時間の平均値が目標滞留時間より大きい場合は基準クロックの周波数を上げ、一方、滞留時間の平均値が目標滞留時間より小さい場合は基準クロックの周波数を下げる。
【0055】
<変形例>
図6は、本実施の形態の変形例に係る映像受信装置4の構成を簡略化して示すブロック図である。図6の接続関係で示すように、映像受信装置4は、バッファメモリ11、TTSゲート12、デコード回路13、抽出部15、TTSカウンタ16、調整部17、VCO18、及び時刻情報付加部21を備えて構成されている。以下、上記実施の形態との相違点について説明する。
【0056】
時刻情報付加部21は、バッファメモリ11に入力されるトランスポートパケットTPに対して、所定の時刻情報を付加する。映像受信装置4内には時計が設けられており、時刻情報付加部21は、この時計によって計時される時刻を、時刻情報としてトランスポートパケットTPに付加する。
【0057】
図7は、バッファメモリ11に記憶されているトランスポートパケットTPの構造を示す図である。トランスポートパケットTPには、タイムスタンプ50に加えて、時刻情報51が付加されている。
【0058】
図6を参照して、時刻情報付加部21は、トランスポートストリームS1の先頭のトランスポートパケットTP1に付加した時刻情報51の値(時刻情報値SQ(1))を、TTSゲート12に入力する。TTSゲート12は、時刻情報付加部21から入力された時刻情報値SQ(1)で示される時刻から、目標滞留時間が経過したタイミングで、ゲートをオープンする。これにより、TTSゲート12からデコード回路13に向けてのトランスポートパケットTP1の出力が開始される。トランスポートパケットTP1がTTSゲート12の通過を完了すると、ゲートは再びクローズされる。なお、TTSゲート12を通過する際、トランスポートパケットTP1に付加されているタイムスタンプ50が削除されることにより、MPEG2−TTSからMPEG2−TSへの変換が行われる。
【0059】
抽出部15は、バッファメモリ11から出力されるトランスポートパケットに付加されている時刻情報51の値を抽出し、調整部17に入力する。
【0060】
調整部17には、バッファメモリ11に入力されるトランスポートパケットに対して時刻情報付加部21が付加する時刻情報51の値(つまり現在の時刻を示す時刻情報値。以下「入力時刻情報値」と称す)が、時刻情報付加部21から入力される。また、調整部17には、同時刻にバッファメモリ11から出力されるトランスポートパケットに付加されている時刻情報51の値(以下「出力時刻情報値」と称す)が、抽出部15から入力される。
【0061】
調整部17は、入力時刻情報値から出力時刻情報値を減算することにより両者の差分値を求め、この差分値として、バッファメモリ11内におけるトランスポートパケットTPの滞留時間を算出する。そして、この滞留時間が目標滞留時間に等しくなるように(又は近付くように)、VCO18が発生する基準クロックの周波数を調整する。具体的に、調整部17は、算出した滞留時間が目標滞留時間より大きい場合は基準クロックの周波数を上げ、一方、算出した滞留時間が目標滞留時間より小さい場合は基準クロックの周波数を下げる。
【0062】
ここで、IPネットワーク等の通信ネットワーク11においては、ジッタやシェーピング等の影響によって映像送信装置2から映像受信装置4へのトランスポートパケットTPの到着時間が揺らぎ、それに起因してバッファメモリ11へのトランスポートパケットTPの入力タイミングが変動する場合がある。そこで、調整部17は、TTSゲート12から出力されるトランスポートパケットTP毎に、時刻情報値に基づいて滞留時間を算出し、所定期間(例えば数分〜数10分)内に求めた複数の滞留時間の平均値と目標滞留時間との比較により、基準クロックの周波数を調整するのが望ましい。上記と同様に調整部17は、滞留時間の平均値が目標滞留時間より大きい場合は基準クロックの周波数を上げ、一方、滞留時間の平均値が目標滞留時間より小さい場合は基準クロックの周波数を下げる。
【0063】
<本実施の形態のまとめ>
このように本実施の形態に係る映像受信装置4によれば、調整部17は、バッファメモリ11に入力されたトランスポートパケットTPの滞留時間に基づいて、基準クロックの周波数を調整する。つまり、トランスポートパケットTPの滞留時間が目標滞留時間より大きい場合には基準クロックの周波数を上げ、トランスポートパケットTPの滞留時間が目標滞留時間より小さい場合には基準クロックの周波数を下げる。これにより、映像送信装置2内のエンコーダの基準クロックを映像受信装置4において再生することができる。しかも、エンコーダのビットレートに拘わらず、各トランスポートパケットTPはバッファメモリ11に入力されてから所定の滞留時間が経過したタイミングでバッファメモリ11から出力される。従って、ビットレートが低い場合であってもデコードの開始が遅れることを回避することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態に係る映像受信装置4によれば、調整部17は、バッファメモリ11に入力されるトランスポートパケットTPに付加されているタイムスタンプの値と、バッファメモリ11から出力されるトランスポートパケットTPに付加されているタイムスタンプの値との差に基づいて、滞留時間を算出する。このように、各トランスポートパケットTPに付加されているタイムスタンプを用いて滞留時間を算出することにより、滞留時間を管理するための追加の計時手段を設ける必要がないため、構成及び処理の簡略化を図ることができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る映像受信装置4によれば、TTSゲート12は、先頭のトランスポートパケットTP1がバッファメモリ11に入力された後、トランスポートパケットTP1に付加されているタイムスタンプ50の値に、目標滞留時間に相当する値を加算した値以上のタイムスタンプが付加されているトランスポートパケットTPがバッファメモリ11に入力されたタイミングで、バッファメモリ11からのトランスポートパケットTP1の出力を開始する。これにより、トランスポートパケットTP1がバッファメモリ11に入力されてから目標滞留時間が経過したタイミングで、バッファメモリ11からのトランスポートパケットTP1の出力を開始できるため、目標滞留時間に相当する量のトランスポートパケットがバッファメモリ11に溜まれば出力を開始することができる。
【0066】
また、本実施の形態の変形例に係る映像受信装置4によれば、調整部17は、バッファメモリ11に入力されるトランスポートパケットTPに対して付加する時刻情報の値と、バッファメモリ11から出力されるトランスポートパケットTPに付加されている時刻情報の値との差に基づいて、滞留時間を算出する。従って、離散的な値であるタイムスタンプを用いて滞留時間を算出する場合と比較すると、誤差を低減できるため、基準クロックの再生精度を向上することができる。
【0067】
また、本実施の形態の変形例に係る映像受信装置4によれば、TTSゲート12は、先頭のトランスポートパケットTP1がバッファメモリ11に入力された後、トランスポートパケットTP1に付加されている時刻情報51で示される時刻から、目標滞留時間が経過したタイミングで、バッファメモリ11からのトランスポートパケットTP1の出力を開始する。これにより、トランスポートパケットTP1がバッファメモリ11に入力されてから目標滞留時間が経過したタイミングで、バッファメモリ11からのトランスポートパケットTP1の出力を開始できるため、目標滞留時間に相当する量のトランスポートパケットがバッファメモリ11に溜まれば出力を開始することができる。
【0068】
また、本実施の形態及びその変形例に係る映像受信装置4によれば、調整部17は、所定期間内に求めた複数の滞留時間の平均値に基づいて、基準クロックの周波数を調整する。従って、ジッタやシェーピング等の影響によって映像送信装置2から映像受信装置4へのトランスポートパケットTPの到着時間が揺らぎ、それに起因してバッファメモリ11へのトランスポートパケットTPの入力タイミングが変動する場合であっても、基準クロックの周波数が頻繁に変更される事態を回避することが可能となる。
【0069】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
4 映像受信装置
11 バッファメモリ
12 TTSゲート
13 デコード回路
14,15 抽出部
16 TTSカウンタ
17 調整部
18 VCO
21 時刻情報付加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれにタイムスタンプが付加された複数のパケットを含むトランスポートストリームを一時的に記憶する記憶部と、
基準クロックを発生するクロック発生部と、
前記基準クロックに基づいてカウント動作を行うカウンタ部と、
各パケットに付加されているタイムスタンプの値と、前記カウンタ部のカウント値とに基づいて、前記記憶部からの各パケットの出力を制御するゲート部と、
前記記憶部に入力されたパケットの滞留時間に基づいて、前記基準クロックの周波数を調整する調整部と、
を備える、映像受信装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記記憶部に入力されるパケットに付加されているタイムスタンプの値と、前記記憶部から出力されるパケットに付加されているタイムスタンプの値との差に基づいて、前記滞留時間を算出する、請求項1に記載の映像受信装置。
【請求項3】
前記ゲート部は、前記トランスポートストリームに含まれる先頭のパケットが前記記憶部に入力された後、当該先頭のパケットに付加されているタイムスタンプの値に、目標滞留時間に相当する値を加算した値以上のタイムスタンプが付加されているパケットが前記記憶部に入力されたタイミングで、前記記憶部からの前記先頭のパケットの出力を開始する、請求項2に記載の映像受信装置。
【請求項4】
前記記憶部に入力されるパケットに対して所定の時刻情報を付加する情報付加部をさらに備え、
前記調整部は、前記記憶部に入力されるパケットに対して付加する時刻情報の値と、前記記憶部から出力されるパケットに付加されている時刻情報の値との差に基づいて、前記滞留時間を算出する、請求項1に記載の映像受信装置。
【請求項5】
前記ゲート部は、前記トランスポートストリームに含まれる先頭のパケットが前記記憶部に入力された後、当該先頭のパケットに付加されている時刻情報で示される時刻から、目標滞留時間が経過したタイミングで、前記記憶部からの前記先頭のパケットの出力を開始する、請求項4に記載の映像受信装置。
【請求項6】
前記調整部は、所定期間内に求めた複数の滞留時間の平均値に基づいて、前記基準クロックの周波数を調整する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の映像受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−78127(P2013−78127A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258415(P2012−258415)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2011−17491(P2011−17491)の分割
【原出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(502312498)住友電工ネットワークス株式会社 (212)
【Fターム(参考)】