説明

映像表示システム、スクリーン、プログラムおよび映像表示方法

【課題】簡易な構成にて臨場感の高い映像を表示すること
【解決手段】スクリーン10とスクリーン10に映像を投写するプロジェクタ20とからなる映像表示システムにおいて、スクリーン10は、複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備する。プロジェクタ20は、変調の単位である変調画素を投写する領域の特性に応じた変調方法で、該変調画素の光を変調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示システム、スクリーン、プログラムおよび映像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクタは、カラーホイールの色をRGB(赤緑青)だけでなく、CMY(シアン、マゼンタ、イエロー)を加えた6原色としている(例えば、特許文献1参照)。これにより、再現可能な色域を拡げている。
また、グレイスクリーンの表面に、CMYの3色のドットを設けて、迷光の影響を低減し(すなわち、外部光の映り込みを低減し)つつ、投影画像の反射率または透過率を高く維持しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−178460号公報
【特許文献2】特開2001−033878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のプロジェクタにあっては、色域が広がり映像の再現性が高くなり、臨場感が上がるものの、装置の構成が複雑になり、コストがかかるという問題がある。また、従来のスクリーンにあっては、外部光の映り込みを抑えることにより彩度の低下を抑えているが、彩度を上げているわけではないため、暗室など外部光のない環境と比較すると、再現性が高くなっているわけではない。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な構成にて臨場感の高い映像を表示することができる映像表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の映像表示システムは、スクリーンと該スクリーンに映像を投写するプロジェクタとからなる映像表示システムにおいて、前記スクリーンは、複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備し、前記プロジェクタは、変調の単位である変調画素を投写する領域の前記特性に応じた変調方法で、該変調画素の光を変調することを特徴とする。
【0006】
これにより、本発明の映像表示システムは、スクリーンの複数の異なる反射特性または透過特性に応じた変調を行うので、表現の幅が広がり、簡易な構成にて臨場感の高い映像を表示することができる。
【0007】
また、本発明の映像表示システムは、上述の映像表示システムであって、前記複数の領域は、可視光全体の波長域に渡って入射光に対する射出光の比率が高い広帯域領域と、RGB3色各々の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い狭帯域領域とであることを特徴とする。
【0008】
これにより、本発明の映像表示システムは、狭帯域領域に投写される変調画素において、彩度の高い色を表示することができるため、簡易な構成にて臨場感の高い映像を表示することができる。
【0009】
また、本発明の映像表示システムは、上述の映像表示システムであって、前記プロジェクタは、入力された映像において色を指定する単位である映像画素に、彩度が所定の閾値より高い映像画素があるか否かを判定し、前記閾値より高い映像画素があると判定したときは、前記狭帯域領域に投写される変調画素にて各映像画素を表示し、前記閾値より高い映像画素がないと判定したときは、前記広帯域領域に投写される変調画素にて各映像画素を表示することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の映像表示システムは、上述の映像表示システムであって、前記複数の領域は、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの短波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い短波長寄り領域と、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの長波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い長波長寄り領域とであることを特徴とする。
【0011】
これにより、本発明の映像表示システムは、短波長寄り領域と長波長寄り領域とに投写する変調画素の合成色が広色域となるため、簡易な構成にて臨場感の高い映像を表示することができる。
【0012】
また、本発明の映像表示システムは、上述の映像表示システムであって、前記プロジェクタは、前記短波長寄り領域による射出光の色と前長短波長寄り領域による射出光の色との合成色により、前記映像画素の色を再現するように変調した前記短波長寄り領域への変調画素と前記長波長寄り領域への変調画素とを、前記スクリーンに投写することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の映像表示システムは、上述の映像表示システムであって、前記複数の領域は、鏡面反射の多いパール領域と、前記パール領域よりも鏡面反射が少なく乱反射の多いマット領域とであることを特徴とする。
【0014】
これにより、本発明の映像表示システムは、パール領域とマット領域とに投写する変調画素でことなる質感を表現することができるため、簡易な構成にて臨場感の高い映像を表示することができる。
【0015】
また、本発明の映像表示システムは、上述の映像表示システムであって、前記プロジェクタは、入力映像に関する情報に基づき、入力映像の各画素について光沢の要否を判定し、該判定に基づき入力映像の各画素を表示する画素を、前記パール領域に投写される画素と前記マット領域に投写される画素とから選択することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の映像表示システムは、上述のいずれかの映像表示システムであって、前記複数の領域は、市松模様状、または、縞状に配されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のスクリーンは、プロジェクタが映像を投写するスクリーンにおいて、複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のスクリーンは、上述のスクリーンであって、前記複数の領域は、可視光全体の波長域に渡って入射光に対する射出光の比率が高い広帯域領域と、RGB3色各々の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い狭帯域領域とであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のスクリーンは、上述のスクリーンであって、前記複数の領域は、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの短波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い短波長寄り領域と、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの長波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い長波長寄り領域とであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のスクリーンは、上述のスクリーンであって、前記複数の領域は、鏡面反射の多いパール領域と、前記パール領域よりも鏡面反射が少なく乱反射の多いマット領域とであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のプログラムは、複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備するスクリーンに映像を投写するプロジェクタが備えるコンピュータを、変調の単位である変調画素を投写する領域の前記特性に応じた変調方法で、該変調画素の光を変調する手段として機能させる。
【0022】
また、本発明の映像表示方法は、複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備するスクリーンに映像を投写するプロジェクタにおける映像表示方法であって、前記プロジェクタが、変調の単位である変調画素を投写する領域の前記特性に応じた変調方法で、該変調画素の光を変調する過程を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、この発明の第1の実施形態による映像表示システムの概略構成を示す外観図である。10は、映像を投写されるスクリーンであり、詳細は後述するが、複数の反射特性の異なる領域を具備する。20は、入力された映像信号に含まれる各映像画素の色情報に基づき、変調の単位である各変調画素について、R(赤)G(緑)B(青)毎に変調して合成した光をスクリーン10に投写するプロジェクタである。
【0024】
図2は、横軸に波長、縦軸に反射率をとり、スクリーン10の各領域A1(広帯域領域)、A2(狭帯域領域)における光の反射特性を表したグラフである。図2に示すように、スクリーン10の領域A1においては、可視光全体の波長域に渡って反射率が高く(可視光全体の波長域に渡って反射率が略一定であり)、領域A2においては、RGB3色、それぞれの波長域にて反射率が高く(A1と略同等の反射率であり)、その他の波長域では反射率がRGB3色の波長域より低くなっている。可視光の波長域は、例えば380nm〜780nmであり、赤の波長域は、例えば600nm〜760nmであり、緑の波長域は、例えば500nm〜570nmであり、青の波長域は、例えば450nm〜500nmである。
【0025】
図3(a)は、図2に示した反射特性を備えるスクリーン10への領域A1、A2の配置例を示した図である。図2に示すように、スクリーン10には、領域A1と領域A2とが交互に横縞状に配置されているが、縦縞状であってもよいし、図3(b)に示すように、縦にも横にも領域A1と領域A2とが交互に配置された市松模様状であってもよい。本実施形態では、プロジェクタ20が投写する映像の変調画素のうち、上から一つ目の横方向のラインの変調画素がスクリーン10の領域A1のラインと一致し、二つ目の横方向のラインの変調画素が領域A2のラインと一致し、三つ目の横方向のラインの変調画素が領域A1のラインと一致し、・・・というように、プロジェクタ20が投写する映像の変調画素とスクリーン10の領域A1および領域A2の配置とが一致する位置にプロジェクタ20を配置する。
【0026】
図4は、プロジェクタ20が、スクリーン10の領域A1に映像を投写したときの色域C1と、領域A2に映像を投写したときの色域C2とをxy色度図上に示した図である。図4に示すように、領域A2では、RGBの3色、それぞれの波長域にて反射率が高いため、可視光全体の波長域に渡って反射率が高い領域A1に比べて、より高い彩度の色を表示させることができる。このため、色域C2は、色域C1の赤緑青の各頂点を外側に広げた三角形となる。このように、本実施形態の映像表示システムは、領域A2では、領域A1よりもxy色度図上で、広い色域を再現することができる。
【0027】
図5は、プロジェクタ20のうちの投写光学系部の構成を示す概略ブロック図である。100は、高圧水銀ランプ等のランプと該ランプが発した光を均一化する均一化手段とからなる光源である。101は、光源100が射出した光を受けて、R(赤)成分の光を透過し、残りのG(緑)成分とB(青)成分との光からなるシアン色の光を反射するR(Red)C(Cyan)分離素子である。102は、RC分離素子101を透過したR成分の光を反射するミラーである。103は、後述する制御系により各変調画素について設定された透過率にて、ミラー102が反射したR成分の光を透過することで、R成分の色変調を行うRライトバルブである。
【0028】
104は、RC分離素子101が反射したシアン色の光を受けて、G成分の光のみを反射し、残りのB成分の光を透過するG(Green)B(Blue)分離素子である。105は、後述する制御系により各変調画素について設定された透過率にて、GB分離素子104が反射したG成分の光を透過することで、G成分の色変調を行うGライトバルブである。106は、R成分の光を透過し、G成分の光を反射することで、Rライトバルブ103が色変調したR成分の光と、Gライトバルブ105が色変調したG成分の光を合成するRG合成素子である。
【0029】
107は、後述する制御系により各変調画素について設定された透過率にて、GB分離素子104が透過したB成分の光を透過することで、B成分の色変調をおこなうBライトバルブである。108は、Bライトバルブ107が色変調したB成分の光を反射するミラーである。109は、ミラー108が反射したB成分の光を反射し、RG合成素子106が合成したR成分とG成分とからなるイエロー色の光を透過することで、これらの光を合成するB(Blue)Y(Yellow)合成素子である。110は、BY合成素子109が合成した光を、スクリーン10に投写する投写レンズである。
【0030】
図6は、プロジェクタ20のうちの制御系部の構成を示す概略ブロック図である。同図において図5の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。200は、プロジェクタ20に入力された映像信号を受付ける映像入力部である。201は、映像入力部200が受付けた映像信号を受けて、該映像信号の映像画素の色に基づき、各変調画素における各ライトバルブの透過率(射出光量を入射光量で割った値)を決定する色解析部である。詳細には、図7のフローチャートを用いて説明する。202は、Rライトバルブ103、Gライトバルブ105、Bライトバルブ107の透過率が、色解析部201が決定した各ライトバルブの透過率になる駆動電圧を、各ライトバルブについて決定し、決定した駆動電圧にて各ライトバルブを駆動するRGBライトバルブ駆動部である。203は、同図において、便宜的にRライトバルブ103、Gライトバルブ105、Bライトバルブ107を纏めてあらわしたRGBライトバルブである。
【0031】
図7は、プロジェクタ20の動作を説明するフローチャートである。映像入力部200は、プロジェクタ20に入力された映像信号を受付ける(Sa1)。色解析部201は、映像入力部200が受付けた映像信号の各映像画素の彩度を算出し、該彩度と予め決められた閾値とを比較する(Sa2)。色解析部201は、ステップSa2にて比較した結果、閾値を超える彩度の映像画素があったときは(Sa3)、ステップSa4に遷移して、奇数番目のラインの変調画素の透過率を全て「0」とする(Sa4)。すなわち、奇数番目のラインの変調画素は黒となる。また、色解析部201は、偶数番目のラインの変調画素の透過率には、映像信号の映像画素の色情報に対応する値を設定する。次に、RGBライトバルブ駆動部202は、色解析部201が処理した映像信号に基づき、Rライトバルブ103、Gライトバルブ105、Bライトバルブ107を駆動する(Sa6)。
【0032】
一方、ステップSa2にて比較した結果、閾値を超える彩度の画素がなかったときは(Sa3)、色解析部201は、ステップSa5に遷移して、偶数番目のラインの変調画素の透過率を全て「0」とする(Sa5)。すなわち、偶数番目のラインの変調画素は黒となる。また、色解析部201は、奇数番目のラインの変調画素の透過率には、映像信号の映像画素の色情報に対応する値を設定する。RGBライトバルブ駆動部202は、色解析部201が処理した映像信号に基づき、Rライトバルブ103、Gライトバルブ105、Bライトバルブ107を駆動する(Sa6)。
【0033】
ステップSa3およびステップSa4の処理により、映像信号に彩度の高い画素があるときは、スクリーン10の奇数番目のラインにある領域A1は黒、すなわち光が投写されず、偶数番目のラインにある領域A2は映像信号に基づく色の光が投写される。ステップSa3およびステップSa5の処理により、映像信号に彩度の高い画素がないときは、スクリーン10の偶数番目のラインにある領域A2は黒、すなわち光が投写されず、奇数番目のラインにある領域A1は映像信号に基づく色の光が投写される。すなわち、映像信号中に彩度の高い画素があるときは、その反射光が広色域となっている領域A1に映像が投写されるため、広色域な彩度の高い映像を再現することができる。
【0034】
言い換えると、本実施形態のプロジェクタ20は、変調画素の光が投写される領域の特性に応じて変調方法を変更している。また、領域A2は、領域A1に比較して、可視光域全体の合計の反射率は低くなっているため、彩度の高い画素のないときは、領域A1に投写される変調画素の光について映像を表示するように変調することにより、明るい映像を表示することができる。
なお、本実施形態において、スクリーン10は反射型のスクリーンであるとして、説明したが透過型のスクリーンであってもよい。この場合、領域A1は、可視光全体の波長域に渡って透過率が高く(可視光全体の波長域に渡って透過率が略一定であり)、領域A2は、RGB3色のそれぞれの波長域にて透過率が高く(A1と略同等の透過率であり)、その他の波長域では透過率がRGB3色の波長域より低くなっている。
【0035】
[第2の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、この発明の第2の実施形態による映像表示システムの概略構成を示す外観図である。11は、映像を投写されるスクリーンであり、詳細は後述するが、互いに異なる反射特性を備える領域であって、図1のスクリーン10の領域A1に対応する位置に配置された領域A3と領域A2に対応する位置に配置された領域A4とを具備する。しかし、領域A3と領域A4とにおける反射特性は、領域A1と領域A2とは異なる。21は、入力された映像信号に含まれる各映像画素の色情報に基づき、変調の単位である各変調画素について、R(赤)G(緑)B(青)毎に変調して合成した光をスクリーン10に投写するプロジェクタである。
【0036】
図9は、横軸に波長、縦軸に反射率をとり、スクリーン11の各領域A3、A4における光の反射特性を表したグラフである。図9に示すように、スクリーン11の領域A3(短波長寄り領域)においては、RGB3色、それぞれの波長域を半分に分割したうちの短波長側の波長域にてその他の波長域より反射率が高く、領域A4(長波長寄り領域)においては、RGB3色、それぞれの波長域を半分に分割したうちの長波長側の波長域にてその他の波長域より反射率が高い。スクリーン11においても、スクリーン10と同様に、領域A3と領域A4とが交互に横縞状に配置されている。
【0037】
図10は、プロジェクタ21が、スクリーン11の領域A3に映像を投写したときの色域C3と、領域A4に映像を投写したときの色域C4とをxy色度図上に示した図である。例えば、緑色の光をスクリーン11に投写した場合、領域A3の反射光は短波長側に片寄るためにシアン寄りの緑となり、領域A4の反射光は長波長側に片寄るためにオレンジ寄りの緑となる。領域A3の反射光による色域C3の三角形は、第1の実施形態における領域A1の反射光による色域C1の三角形を左回りに回転したような位置にあり、各頂点は色域C1の外側にある。また、領域A4の反射光による色域C4の三角形は、色域C1の三角形を右回りに回転したような位置にあり、各頂点は色域C1の外側にある。
【0038】
図11は、プロジェクタ21のうちの制御系部の構成を示す概略ブロック図である。同図において図6の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。また、プロジェクタ21のうちの投写光学系部の構成は、図5に示すものと同一であるため、その説明を省略する。211は、映像入力部200が受付けた映像信号を受けて、該映像信号の映像画素の色に基づき、各変調画素における各ライトバルブの透過率(射出光量を入射光量で割った値)を決定する色解析部である。
【0039】
図12は、プロジェクタ21の動作を説明するフローチャートである。このフローチャートは、入力された映像信号による映像を構成する1つの静止画をプロジェクタ21が表示するための動作を記述したものである。このフローチャートの処理を繰り返して、連続的に静止画を表示させることで映像とする。映像入力部200は、プロジェクタ21に入力された映像信号を受付ける(Sb1)。色解析部211は、映像入力部200が受付けた映像信号の各映像画素の彩度を算出し、該彩度と予め決められた閾値とを比較する(Sb2)。色解析部211は、ステップSb2にて比較した結果、閾値を超える彩度の映像画素があったときは(Sb3)、ステップSb4に遷移して、ステップSb4からSb8を1画面分繰り返す。まず、ステップSb4では、色解析部211は、縦に並んだ2画素の色情報(RGB値)を映像信号から取得する(Sb4)。色解析部211は、取得した2画素の色情報の平均をとり、平均のRGB値をガンマ処理した後に、CIE(国際照明委員会)表色系のXYZ値に変換する(Sb5)。本実施形態では、RGB値は、それぞれ8ビット(0〜255)で表されており、色解析部211は、ガンマ処理を以下の式(1)、(2)、(3)を用いて行う。
r=(R/255)^2.2 ・・・・(1)
g=(G/255)^2.2 ・・・・(2)
b=(B/255)^2.2 ・・・・(3)
ここで、値R、G、Bは、それぞれ映像信号のR成分、G成分、B成分の値であり、値r、g、bは、ガンマ処理した後のR成分、G成分、B成分の値である。また、「^」は累乗を表す演算子である。
【0040】
色解析部211は、式(1)、(2)、(3)にて算出した値r、g、bに対して、以下の式(4)、(5)、(6)を用いてXYZ値に変換する。
X=0.607r+0.174g+0.200b ・・・(4)
Y=0.299r+0.587g+0.114b ・・・(5)
Z=0.000r+0.066g+1.116b ・・・(6)
【0041】
色解析部211は、予めXYZ値と縦2画素分のRGB値とを対応付けて記憶している3D(3次元)−LUT(Look Up Table)(詳細は後述する)を具備しており、該3D−LUTを参照して、ステップSb5にて得たXYZ値に対応する2画素分のRGB値(R1、G1、B1、R2、G2、B2)を取得する(Sb6)。ステップSb6にて取得したRGB値のうち、R1、G1、B1を縦2画素のうちの上の画素に割り当て、R2、G2、B2を下の画素に割り当てる(Sb7)。これらの処理を1画面全ての画素について行うまで、繰り返す(Sb8)。RGBライトバルブ駆動部202は、ステップSb7にて各変調画素に割り当てられたRGB値にて、RGBライトバルブ203を駆動する(Sb9)。このステップSb1からステップSb9を、映像信号の各画像に対して行い、スクリーン11に映像を投写して表示させる。
【0042】
一方、ステップSb2にて比較した結果、閾値を超える彩度の画素がなかったときは(Sb3)、色解析部211は、映像入力部200が受付けた映像信号の色情報(RGB値)を、そのままRGBライトバルブ駆動部202に通知し、RGBライトバルブ駆動部202は、そのRGB値に従い、RGBライトバルブ203を駆動する(Sb9)。このときは、従来技術と同様の色域となる。
【0043】
なお、映像を構成する静止画毎にステップSb2にて各映像画素の彩度を閾値と比較し、その結果に応じて、ステップSb3にて分岐するとして説明したが、最初の所定の枚数についてのみ、このステップSb2とSb3の処理を行い、その所定の枚数の中に閾値を超える彩度の映像画素があった場合には、以後のステップSb2の処理は行わずにステップSb3にて、ステップSb4に遷移するようにしてもよい。また、ユーザ操作による入力を色解析部211が受付けて、色解析部211は、該入力に従い、ステップSb4に遷移するか否かを決めるようにしてもよい。
【0044】
ステップSb6で用いた3D−LUTについて説明する。図13は、領域A3による三角形の色域C3の赤、緑、青の頂点R1、G1、B1と領域A4による三角形の色域C4の赤、緑、青の頂点R2、G2、B2とを示したxy色度図である。本実施形態では、領域A3の反射光と領域A4の反射光とを合わせた合成色が、頂点R1、R2、B1、B2、G1、G2を結んだ6角形の色域C5内となることを利用して、広色域を実現する。例えば、図13中のターゲット色Tの場合、頂点G1、G2、B2を結んだ三角形内にあるので、領域A3の緑色(頂点G1)の反射光と、領域A4の緑色(頂点G2)および青色(頂点B2)の反射光との合成色にて再現できる。これを利用して、本実施形態では、縦2画素のうち、領域A3に投写される上の変調画素については、Gライトバルブ105のみが光を透過するように駆動し、領域A4に投写される下の変調画素については、Gライトバルブ105とBライトバルブ107とが光を透過するように駆動する。
【0045】
このように駆動させるために、3D−LUTは、図14に示す記憶内容の一部の一例のように、XYZ値の組み合わせと、それに対応する上(領域A3)の変調画素のRライトバルブ103の透過率Rt1、Gライトバルブ105の透過率Gt1、Bライトバルブ107の透過率Bt1および下(領域A4)の変調画素のRライトバルブ103の透過率Rt2、Gライトバルブ105の透過率Gt2、Bライトバルブ107の透過率Bt2とを対応付けて記憶している。3D−LUTは、全ての組合せのXYZ値について、図14に示した記憶内容例のように、その組合せと、それに対応する透過率Rt1、Gt1、Bt1、Rt2、Gt2、Bt2とを対応付けて記憶している。
本実施形態においては、図13に示すように色域C5を、頂点G1、G2、B2を結んだ三角形と、頂点G2、B2、R2を結んだ三角形と、頂点G2、R1、R2を結んだ三角形と、頂点R2、B1、B2を結んだ三角形とに分割し、各三角形内に入る色については、該三角形の頂点に対応するライトバルブにて変調することで、該色を再現する。
【0046】
図15は、色解析部211が3D−LUTに基づき透過率を決定し、該決定された透過率となるようにRGBライトバルブ駆動部202が駆動したRGBライトバルブ203を透過した光の変調画素と、その変調画素がスクリーン11に投写される位置との関係を示した図である。このように、透過率Rt1、Gt1、Bt1にて変調された変調画素の光は、領域A3に投写され、透過率Rt2、Gt2、Bt2にて変調された変調画素の光は、領域A4に投写される。この結果、これら2つの変調画素の光がスクリーン11にて反射して得られる光の合成色は、3D−LUTを参照したXYZ値の色であり、映像信号から取得した縦2画素の平均の色となる。
【0047】
このように、本実施形態の映像表示システムは、Rライトバルブ103を透過した光が、スクリーン11の領域A3にて反射したときの光の色がxy色度図上で頂点R1となり、領域A4にて反射したときの光の色が頂点R2となり、同様にGライトバルブ105、Bライトバルブ107についても頂点G1、G2、B1、B2となるので、これらのうちの3つを用いて、所望の色を再現することにより、特殊な投写光学系を用いることなしに、図13における頂点R1、R2、B1、B2、G1、G2を結んだ6角形を色域とする広色域を実現できる。
【0048】
なお、本実施形態において、色解析部211は、3D−LUTを具備し、該3D−LUTを参照して透過率を得るとして説明したが、XYZ値から透過率を算出するようにしてもよい。このときは、色解析部211は、XYZ値が表すxy色度が、図13に示す頂点R1、R2、B1、B2、G1、G2を結んだ6角形を分割した4つの三角形のいずれの中にあるかを判定し、該判定結果の三角形の頂点に対応するライトバルブを変調する透過率を算出する。すなわち、各ライトバルブについて該ライトバルブのみ透過率を最大にして他ライトバルブの透過率を「0」としたときの反射光のXYZ値をベクトルとして考え、変調する3つのライトバルブの該ベクトルを合成すると表示する色のXYZ値となるような、各ベクトルの係数が透過率であるので、これらを算出する。
【0049】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、透過型のスクリーンを用いても良い。また、本実施形態においては、映像信号の映像画素数と、投写する変調画素数が同じであるため、縦に並んだ2つの映像画素のXYZ値の平均に対して、縦に並んだ2つの変調画素の各ライトバルブの透過率を求めるとして説明したが、映像画素数に対して変調画素数が縦方向に2倍の数であれば、各映像画素のXYZ値に対して、縦に並んだ2つの変調画素の各ライトバルブの透過率を求めるようにしてもよい。
【0050】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1の実施形態の変形であり、第1の実施形態とは、スクリーン10の各領域の特性と、色解析部201における投写先の領域の判定方法が異なる。本実施形態におけるスクリーン10は、2種類の特性の異なる領域を備え、1つは入射光を鏡面反射する割合の方が少なく乱反射する割合の方が多いために光沢のないマット系の領域A5(マット領域)であり、もう1つは入射光を鏡面反射する割合の方が多く乱反射する割合の方が少ないために光沢のあるパール系の領域A6(パール領域)である。これら領域A5と領域A6とが、第1および第2の実施形態と同様に、横縞状に配置されている。
本実施形態のプロジェクタ20には、映像信号とともに、該映像信号の各画素により表示されるものが、光沢を持つものか否かを表すメタデータ(入力映像に関する情報)が入力される。本実施形態の色解析部201は、該メタデータに基づき、該画素が光沢を持ち、かつ、領域A5に投写される奇数番目のラインにあるときは、黒(全てのライトバルブの透過率を「0」とする)にする。また、同様に、該画素が光沢を持たず、かつ、領域A6に投写される偶数番目のラインにあるときは、黒にする。これにより、図16に示すように表示される映像中で、光沢のある水面などを表示している部分は、パール系の領域A6に投写された変調画素にて表示され、光沢のない空などを表示している部分は、マット系の領域A5に投写された変調画素にて表示されるため、臨場感を増した映像を得ることができる。
【0051】
なお、色解析部201、211は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、これらの各部はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、これらの各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0052】
また、色解析部201、あるいは、色解析部211の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりこれら各部の処理を行い、その結果をプロジェクタに入力するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0053】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0054】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、高リアリティな画質を実現する映像表示システムに用いて好適であるが、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の第1の実施形態による映像表示システムの概略構成を示す外観図である。
【図2】同実施形態におけるスクリーン10の各領域A1、A2における光の反射特性を表したグラフである。
【図3】同実施形態におけるスクリーン10への領域A1、A2の配置例を示した図である。
【図4】同実施形態における領域A1に映像を投写したときの色域C1と、領域A2に映像を投写したときの色域C2とを、xy色度図上に示した図である。
【図5】同実施形態におけるプロジェクタ20のうちの投写光学系部の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】同実施形態におけるプロジェクタ20のうちの制御系部の構成を示す概略ブロック図である
【図7】同実施形態におけるプロジェクタ20の動作を説明するフローチャートである。
【図8】この発明の第2の実施形態による映像表示システムの概略構成を示す外観図である。
【図9】同実施形態におけるスクリーン10の各領域A1、A2における光の反射特性を表したグラフである。
【図10】同実施形態における領域A3による色域C3と、領域A4による色域C4とを示したxy色度図である。
【図11】同実施形態におけるプロジェクタ21のうちの制御系部の構成を示す概略ブロック図である。
【図12】同実施形態におけるプロジェクタ21の動作を説明するフローチャートである。
【図13】同実施形態における領域A3による色域C3の頂点R1、G1、B1と領域A4による色域C4の頂点R2、G2、B2とを示したxy色度図である。
【図14】同時実施形態における3D−LUTの記憶内容の一部の一例である。
【図15】同時実施形態における変調画素と投写される位置との関係を示した図である。
【図16】この発明の第3の実施形態における表示映像の例である。
【符号の説明】
【0057】
10、11…スクリーン
20、21…プロジェクタ
100…光源
101…RC分離素子
102、108…ミラー
103…Rライトバルブ
104…GB分離素子
105…Gライトバルブ
106…RG合成素子
107…Bライトバルブ
109…BY合成素子
110…投写レンズ
200…映像入力部
201、211…色解析部
202…RGBライトバルブ駆動部
203…RGBライトバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンと該スクリーンに映像を投写するプロジェクタとからなる映像表示システムにおいて、
前記スクリーンは、複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備し、
前記プロジェクタは、変調の単位である変調画素を投写する領域の前記特性に応じた変調方法で、該変調画素の光を変調することを特徴とする映像表示システム。
【請求項2】
前記複数の領域は、可視光全体の波長域に渡って入射光に対する射出光の比率が高い広帯域領域と、RGB3色各々の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い狭帯域領域とであることを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項3】
前記プロジェクタは、入力された映像において色を指定する単位である映像画素に、彩度が所定の閾値より高い映像画素があるか否かを判定し、前記閾値より高い映像画素があると判定したときは、前記狭帯域領域に投写される変調画素にて各映像画素を表示し、前記閾値より高い映像画素がないと判定したときは、前記広帯域領域に投写される変調画素にて各映像画素を表示することを特徴とする請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項4】
前記複数の領域は、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの短波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い短波長寄り領域と、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの長波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い長波長寄り領域とであることを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項5】
前記プロジェクタは、前記短波長寄り領域による射出光の色と前長短波長寄り領域による射出光の色との合成色により、前記映像画素の色を再現するように変調した前記短波長寄り領域への変調画素と前記長波長寄り領域への変調画素とを、前記スクリーンに投写することを特徴とする請求項4に記載の映像表示システム。
【請求項6】
前記複数の領域は、鏡面反射の多いパール領域と、前記パール領域よりも鏡面反射が少なく乱反射の多いマット領域とであることを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項7】
前記プロジェクタは、入力映像に関する情報に基づき、入力映像の各画素について光沢の要否を判定し、該判定に基づき入力映像の各画素を表示する画素を、前記パール領域に投写される画素と前記マット領域に投写される画素とから選択することを特徴とする請求項6に記載の映像表示システム。
【請求項8】
前記複数の領域は、市松模様状、または、縞状に配されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかの項に記載の映像表示システム。
【請求項9】
プロジェクタが映像を投写するスクリーンにおいて、反射特性または透過特性の異なる複数の領域を具備することを特徴とするスクリーン。
【請求項10】
前記複数の領域は、可視光全体の波長域に渡って入射光に対する射出光の比率が高い広帯域領域と、RGB3色各々の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い狭帯域領域とであることを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項11】
前記複数の領域は、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの短波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い短波長寄り領域と、RGB3色各々の波長域を2つに分割したうちの長波長側の波長域において入射光に対する射出光の比率が高い長波長寄り領域とであることを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項12】
前記複数の領域は、鏡面反射の多いパール領域と、前記パール領域よりも鏡面反射が少なく乱反射の多いマット領域とであることを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項13】
複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備するスクリーンに映像を投写するプロジェクタが備えるコンピュータを、
変調の単位である変調画素を投写する領域の前記特性に応じた変調方法で、該変調画素の光を変調する手段として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
複数の反射特性または透過特性の異なる領域を具備するスクリーンに映像を投写するプロジェクタにおける映像表示方法であって、
前記プロジェクタが、変調の単位である変調画素を投写する領域の前記特性に応じた変調方法で、該変調画素の光を変調する過程を備えることを特徴とする映像表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−113335(P2008−113335A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295844(P2006−295844)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】