説明

映像表示装置、映像表示方法及びプログラム

【課題】移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供できるようにする。
【解決手段】視聴者検知部102は、映像表示部101から一定の距離の領域204に存在する人物を視聴者として検知し、視聴者の座標を取得する。また、移動速度測定部103は、視聴者の移動速度を測定する。そして、表示領域決定部104は、視聴者検知部102で検知した視聴者の位置と、移動速度測定部103で測定した視聴者の移動速度とに基づいて、映像表示部101上の映像表示領域202を決定する。表示領域決定部104は、視聴者が映像を視聴しながらも、移動方向に視線が向けられる領域に映像を表示するように決定する。また、視聴者が障害物を認識してから十分に回避できるまでの時間を確保するために、視聴者の移動速度が速いほど視聴者よりも離れた位置に映像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示する映像表示領域を変えて映像を提供する映像表示装置、映像表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCDやPDPに代表される表示パネルの大型化が進み、1つの表示パネルに対して複数の子画面を表示する映像表示装置が広く普及している。更に、表示パネルの大型化が進むことで、表示パネルの一部を利用して子画面を表示し視聴するといった視聴形態も提案されている。
【0003】
このような視聴形態において、特許文献1によれば、視聴者の視聴位置に基づきディスプレイ上での表示位置を決定する技術が開示されている。この技術によれば、視聴者の視聴位置に基づいて表示位置を決定することで視聴し易い映像を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−094900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような視聴位置に基づいて表示位置を決定する映像表示装置を用いて、移動中の視聴者に映像を提供した場合、視聴者が提供されている映像に気を取られて、移動方向の障害物と衝突してしまう可能性がある。特に駅等の人通りの激しい公共機関に設置されたデジタルサイネージ等に用いられている映像表示装置により映像を提供した場合、視聴者が映像に気を取られて、歩行者等の障害物と衝突する可能性がある。
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の映像表示装置は、映像を表示する映像表示手段と、視聴者の位置を検知する視聴者検知手段と、視聴者の移動速度を測定する移動速度測定手段と、前記視聴者検知手段で検知した視聴者の位置と、前記移動速度測定手段で測定した視聴者の移動速度とに基づいて、前記映像表示手段上の映像を表示する映像表示領域を決定する表示領域決定手段と、前記表示領域決定手段で決定した映像表示領域に応じて映像を制御して表示する映像制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、視聴者の位置と移動速度に基づいて、映像表示手段上の映像を表示する映像表示領域を決定するので、視聴者が移動中であっても、移動方向を視界に入れつつ映像を視聴することができる。これにより、デジタルサイネージやウォールディスプレイ等で、移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る映像表示装置の使用状態を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る映像表示装置による映像表示処理を示すフローチャートである。
【図4】視聴者の位置と移動速度によって映像表示領域が変わる様子を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る映像表示装置の使用状態、及び、視聴者の位置と移動速度によって映像表示領域が変わる様子を示す図である。
【図6】第3の実施形態に係る映像表示装置で行う台形補正を説明するための図である。
【図7】第4の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に第1の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す。また、図2に第1の実施形態に係る映像表示装置の使用状態を示す。映像表示装置100は、映像表示部101と、視聴者検知部102と、移動速度測定部103と、表示領域決定部104と、映像制御部105とを備える。
【0011】
映像表示部101は、LCDやPDPに代表されるディスプレイ装置である。また、LCOSに代表される投影装置であってもよい。図2に示すように、通路の壁に映像表示部101が設けられ、映像表示部101の長手方向が水平方向に向くように配置される。
【0012】
視聴者検知部102は、映像表示部101に表示される映像を視聴している視聴者の位置を検知する。図2において視聴者検知部102は図示されないが、視聴者検知部102は、映像表示部101から一定の距離の領域(視聴者検知領域)204に存在する人物を視聴者として検知し、視聴者の座標を取得する。ここでは、映像表示部101に対して水平方向で、映像表示部101の左端を基準とした長手方向の座標を取得する(以下、水平方向の座標と称する)。視聴者検知部102は、赤外線センサや撮像装置を用いて得た撮像データから人物を検出するといった公知の技術を用いれば良い。
【0013】
移動速度測定部103は、視聴者検知部102で検知した視聴者の移動速度を測定する。ここでは、映像表示部101に対して水平方向で、映像表示部101の長手方向への移動速度を測定する。移動速度測定部103は、例えば視聴者検知部102から送られる単位時間あたりの位置変化から移動速度を測定するものとする。なお、移動速度測定部103は、ドップラー効果を利用して速度を測定する公知の速度センサ等を用いて視聴者の移動速度を測定しても良い。
【0014】
表示領域決定部104は、視聴者検知部102で検知した視聴者の位置(座標)と、移動速度測定部103で測定した視聴者の移動速度とに基づいて、映像表示部101上の映像を表示する映像表示領域202を決定する。
【0015】
映像制御部105は、表示領域決定部104で決定した映像表示領域202に応じて映像を制御して表示する。映像制御部105は、外部からのコンテンツを入力するインタフェースを持つ。例えばHDMIやDVI等の各種標準規格のインタフェースであり、各種の映像コンテンツを入力できる。本実施形態では、映像制御部105は入力された映像を表示する座標を変更する機能を有するものとする。
【0016】
図3に第1の実施形態に係る映像表示装置による映像表示処理を示す。また、図4に視聴者の位置と移動速度によって映像表示領域202が変わる様子を示す。図4は、映像表示部101の前を人物が通過する状態を上方から俯瞰した図である。視聴者の位置、移動速度別に[状態A]〜[状態E]を示す。
【0017】
映像表示装置100は、図3のフローチャートのステップS301から処理を開始する。まずステップS310に遷移し、視聴者検知部102は、映像表示部101から一定の距離の領域(視聴者検知領域)204に存在する人物を視聴者として検知し、視聴者の座標を取得する。
【0018】
ステップS311では、ステップS310において視聴者検知部102で視聴者を検知したか否かを判定する。ステップS311において視聴者なしと判定すると、再びステップS310に遷移する。例えば図4の[状態A]では、視聴者検知領域204に人物がいないため、視聴者なしと判定して、再びステップS310に遷移する。
【0019】
一方、ステップS311において視聴者ありと判定すると、ステップS320に遷移する。例えば図4の[状態B]では、視聴者検知領域204において映像表示部101の左端(図4では下部)から30cmの位置に視聴者413が存在している。この場合、視聴者検知部102は、視聴者413の位置として映像表示部101の左端から30cmとする座標を取得する。
【0020】
ステップS320では、移動速度測定部103は視聴者の移動速度を測定する。例えば図4の[状態B]では、視聴者413が映像表示部101の前を平行に(映像表示部101に対して水平に)移動しており、移動速度測定部103は視聴者413の移動速度を50cm/sと測定する。
【0021】
次にステップS321に遷移し、表示領域決定部104は、視聴者検知部102で検知した視聴者の位置(座標)と、移動速度測定部103で測定した視聴者の移動速度とに基づいて、映像表示部101上の映像表示領域202を決定する。表示領域決定部104は、視聴者が映像を視聴しながらも、移動方向に視線が向けられる領域に映像を表示するように決定する。また、視聴者が障害物を認識してから十分に回避できるまでの時間を確保するために、視聴者の移動速度が速いほど視聴者よりも離れた位置に映像を表示する。
【0022】
本実施形態では、下記の式(1)に示すように、視聴者の水平方向の座標Aと視聴者の移動速度Sにより、水平方向の表示座標Xを決定する。Kは係数を表し、視聴者が障害物を認識してから十分回避できるまでの時間によって予め決定されている。本実施形態では視聴者が障害物を認識してから十分回避できるまでの時間を2秒として係数Kを決定する。
X=K・S+A・・・(1)
【0023】
図4の[状態B]では、視聴者413の位置は映像表示部101の左端から30cmの位置で、視聴者413の移動速度は50cm/sである。したがって、表示領域決定部104は、上記の式(1)から表示座標XをX=2・50+30=130と決定し、映像表示部101の左端から130cmの位置に映像表示領域202を決定する。この映像表示領域202は、視聴者413の座標から水平方向に100cm離れた位置にある。なお、本実施形態では、上記の式(1)で決定した位置を映像表示領域202の中央位置としている。
【0024】
次にステップS322に遷移し、映像制御部105は、ステップS321において決定した映像表示領域202に映像を表示する。図4の[状態B]では、映像表示部101の左端から130cmの映像表示領域202に映像を表示する。視聴者413から100cm前方に映像を表示することにより、視聴者413が映像を注視している場合においても100cmほど先の人物等の障害物415は十分視界に入ることとなる。視聴者413の移動速度は50cm/sであるので、100cmほど先の障害物415を視認してから回避するまでに必要な時間2秒を確保できることとなる。
【0025】
図4の[状態C]では、[状態B]よりも視聴者が速く移動している。ステップS310で、視聴者検知部102は、視聴者423の位置として映像表示部101の左端から30cmとする座標を取得する。また、ステップS320で、移動速度測定部103は、視聴者423の移動速度を105cm/sと測定する。
【0026】
そして、ステップS321で、表示領域決定部104は、上記の式(1)から表示座標XをX=2・105+30=240と決定し、映像表示部101の左端から240cmの位置に映像表示領域202を決定する。この映像表示領域202は視聴者423の座標から水平方向に210cm離れた位置にある。この場合も、[状態B]と同様に、210cmほど先の障害物425を視認してから回避するまでに必要な時間2秒を確保できることとなる。
【0027】
[状態D]では、視聴者が移動していない。ステップS310で、視聴者検知部102は、視聴者433の位置として映像表示部101の左端から30cmとする座標を取得する。また、ステップS320で、移動速度測定部103は、視聴者433の移動速度を0cm/sと測定する。
【0028】
そして、ステップS321で、表示領域決定部104は、上記の式(1)から表示座標XをX=2・0+30=30と決定し、映像表示部101の左端から30cmの位置に映像表示領域202を決定する。この映像表示領域202は視聴者433の正面となる。立ち止まっている視聴者433は障害物と衝突する可能性が無いため、視聴者433が最も視聴し易い正面に映像が表示されることとなる。
【0029】
[状態E]では、視聴者が映像表示部101の前を平行に移動していない。ステップS310で、視聴者検知部102は、視聴者443の位置として映像表示部101の左端から30cmとする座標を取得する。また、ステップS320で、移動速度測定部103は、視聴者433の移動速度を50cm/sと測定する。なお、移動速度測定部103が視聴者検知部102から送られる単位時間あたりの位置変化から移動速度を測定する場合、その移動速度は映像表示部101に対して水平方向の移動速度であるので、そのままの値を視聴者433の移動速度とする。また、視聴者の移動速度そのものを測定する場合は、移動速度を映像表示部101に対して水平方向と垂直方向に分解し、水平方向の移動速度を視聴者443の移動速度とする。
【0030】
そして、ステップS321で、表示領域決定部104は、上記の式(1)から表示座標XをX=2・50+30=130と決定し、映像表示部101の左端から130cmの位置に映像表示領域202を決定する。この映像表示領域202は視聴者443の座標から水平方向に100cm離れた位置にある。この場合も、[状態B]と同様に、100cmほど先の障害物445を視認してから回避するまでに必要な時間2秒を確保できることとなる。
【0031】
以上述べたように、視聴者が移動中であっても、移動方向を視界に入れつつも映像を視聴することができる。これにより、移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供することが可能である。
【0032】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、視聴者の移動速度に応じて映像表示領域202の表示サイズも変更する例を示す。第2の実施形態に係る映像表示装置の構成は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、図1に示される。ただし、表示領域決定部104は、第1の実施形態で述べたように映像表示領域202の位置だけでなく、映像表示領域202の幅と高さを決定する機能を有する。
【0033】
図5に第2の実施形態に係る映像表示装置の使用状態、及び、視聴者の位置と移動速度によって映像表示領域202が変わる様子を示す。視聴者の移動速度別に[状態F]、[状態G]を示す。
【0034】
第2の実施形態に係る映像表示装置による映像表示処理は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、図3に示される。ただし、ステップS321で、表示領域決定部104は、視聴者検知部102で検知した視聴者の位置(座標)と、移動速度測定部103で測定した視聴者の移動速度とに基づいて、映像表示領域202の位置及びその幅と高さを決定する。映像表示領域202の位置の決定方法に関しては、第1の実施形態と同じである。本実施形態では、下記の式(2)、(3)を用いて、視聴者の移動速度Sに応じて映像表示領域202の高さhを決定する。映像表示領域202の幅wは、下記の式(2)、(3)によって演算された高さhに対してアスペクト比を保つように変更される。Kは係数を表し、視聴者が障害物を認識してから十分回避できるまでの時間によって予め決定されている。Sdは移動速度の閾値であり、視聴者の移動速度Sが閾値Sdを上回った場合に高さhが変更されるものとし、視聴者の移動速度Sが閾値Sdより下回っている場合、高さhは初期値の高さhdとなるものとする。
h=hd (S<Sd)・・・(2)
h=hd・(S/Sd) (S>Sd)・・・(3)
【0035】
例えば閾値Sdが50cm/sで、初期値の高さhdが60cmの場合、視聴者の移動速度Sが静止状態の0cm/s〜50cm/sであるときには高さhは60cmとなる。図5の[状態F]に示すように視聴者の移動速度Sが50cm/Sであるとき、映像表示領域202の高さhは60cmとなる。それに対して、視聴者の移動速度Sが50cm/sを超えるときには高さhは上記の式(3)により決定される。図5の[状態G]に示すように視聴者の移動速度Sが100cm/sであるとき、映像表示領域202の高さhはh=60・(100/50)=120cmとなる。このように視聴者の移動速度Sが速くなり、映像表示領域202が前方に移動した場合でも映像表示領域202を拡大することで視聴者の視認性を保つことができる。よって、移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供することが可能である。
【0036】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、視聴者の移動速度に応じて映像表示領域202の表示サイズも変更し、更に映像表示領域202に台形補正を施す例を示す。第3の実施形態に係る映像表示装置の構成は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、図1に示される。ただし、表示領域決定部104は、第1の実施形態で述べたように映像表示領域202の位置だけでなく、映像表示領域202の幅と高さを決定し、更に台形補正を施す機能を有する。
【0037】
第3の実施形態に係る映像表示装置による映像表示処理は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、図3に示される。ただし、ステップS310で、視聴者検知部102は、視聴者の水平方向の座標だけでなく、映像表示部101から視聴者までの距離も検知する。また、ステップS321で、表示領域決定部104は、視聴者検知部102で検知した視聴者の位置(座標)と、移動速度測定部703で測定した視聴者の移動速度とに基づいて、映像表示領域202の位置及びその幅と高さを決定し、更に映像表示領域202に台形補正を施す。映像表示領域202の位置の決定方法に関しては、第1の実施形態と同じである。また、映像表示領域202の位置と高さの決定方法に関しては、第2の実施形態と同じである。
【0038】
図6を参照して、ステップS321において行う台形補正の一例を説明する。630は視聴者を示す。本実施形態では、下記の式(4)に示すように、視聴者630の視点から映像表示領域202の左端までの距離Vl(612)と右端までの距離Vr(611)の比によって、映像表示領域202の左端の高さHl(602)と右端の高さHr(601)を決定する。
Vl:Vr=Hl:Hr・・・(4)
【0039】
まず、視聴者630の位置と移動速度に基づいて、映像表示領域202の位置d(622)を決定する。決定方法は第1の実施形態と同様、式(1)で算出する。次に、視聴者630の移動速度Sに応じて映像表示領域202の右端の高さHr(601)を決定する。決定方法は第2の実施形態と同様、式(2)で算出する。映像表示領域202の右端の高さHr(601)に対してアスペクト比を保つように幅wを算出する。
【0040】
次に、視聴者630の水平方向の座標を用いて、映像表示領域202の右端までの距離Xr(623)と、左端までの距離Xl(624)を算出する。視聴者の水平方向の座標から映像表示領域202の右端と左端までの距離Xr(623)、Xl(624)はそれぞれ下記の式(5)、(6)で算出される。
Xr=d+(w/2)・・・(5)
Xl=d−(w/2)・・・(6)
【0041】
次に、ステップ310で検知した視聴者630と映像表示部101との距離z(626)と、視聴者630の水平方向の座標から映像表示領域202の右端と左端までの距離Xr、Xlを用いて、視聴者630の視点から映像表示領域202の左端と右端までの距離Vl(612)と距離Vr(611)を算出する。
Vr=SQRT(z2+Xr2)・・・(7)
Vl=SQRT(z2+Xl2)・・・(8)
【0042】
視聴者630の視点から映像表示領域202の左端と右端までの距離VlとVrの比と、すでに算出済みの表示領域の右端の高さHrを用いて、上記の式(4)によりHlを算出する。このように表示領域を台形補正することで、映像の視認性を向上することができる。よって、移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供することが可能である。
【0043】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、視聴者の移動速度に応じて映像表示領域202に表示する映像の表示内容を変更する例を示す。図7に第4の実施形態に係る映像表示装置の構成を示す。映像表示装置700は、映像表示部101と、視聴者検知部102と、移動速度測定部703と、表示領域決定部104と、映像制御部705とを備える。映像表示部101、視聴者検知部102、移動速度測定部703、表示領域決定部104は第1の実施形態と同じであるが、映像制御部705は、移動速度測定部703から入力される視聴者の移動速度に応じて表示コンテンツを選択する機能を有する。
【0044】
第4の実施形態に係る映像表示装置による映像表示処理は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、図3に示される。ただし、ステップS322で、映像制御部705は、ステップS321において決定した映像表示領域202に映像を表示する際に、視聴者の移動速度に応じて表示コンテンツを変更する。例えば、映像制御部705は視聴者の移動速度が50cm/s以下の場合には動画コンテンツを表示し、移動速度が50cm/s以上の場合には静止画コンテンツに切り替える。
【0045】
また、複数の静止画を切り替えて表示するコンテンツの場合、移動速度に応じて静止画コンテンツの切替速度を変更しても良い。視聴者の移動速度が50cm/s以下の場合には静止画コンテンツの切り替えを10秒に1回行い、移動速度が50cm/s以上の場合には静止画コンテンツの切り替えを20秒に1回行う。
【0046】
このように映像制御部705は、視聴者の移動速度が速い場合には、注視しなくても情報が伝わる情報量の少ない表示コンテンツに切り替える機能を有している。また、映像制御部705は、視聴者の移動速度に応じて表示する文字数やフォントサイズを切り替えることも本発明の範疇である。移動速度が速く映像表示領域202が視聴者の前方にある場合、文字数を少なくすることで、注視する時間を少なくしながら情報を伝達することができる。また、フォントサイズを大きくすることで少ない視認性を向上させることができる。逆に移動速度が遅く表示領域が視聴者に近い際には、文字数を多くかつ、フォントサイズを小さく表示する。移動速度が遅い場合は、前方の障害物と衝突する可能性も低くなるので情報量の多いコンテンツを表示する。
【0047】
このように視聴者の速度に応じて適切な情報量のコンテンツを表示することができる。よって、移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供することが可能である。
【0048】
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、視聴者の移動速度に応じて映像表示領域202に表示する映像の輝度を補正する例を示す。第5の実施形態に係る映像表示装置の構成は、第4の実施形態で述べたものと同様であり、図7に示される。ただし、映像制御部705は、移動速度測定部703から入力される視聴者の移動速度に応じて映像表示領域202に表示する映像の輝度を補正する機能を有する。
【0049】
第5の実施形態に係る映像表示装置による映像表示処理は、第1の実施形態で述べたものと同様であり、図3に示される。ただし、ステップS322で、映像制御部705は、ステップS321において決定した映像表示領域202に映像を表示する際に、視聴者の移動速度に応じて映像表示領域202に表示する映像の輝度を補正する。本実施形態では、下記の式(9)を用いて、視聴者の移動速度Sにより、輝度の補正量Lを決定する。Kは係数を表し、視聴者が障害物を認識してから十分回避できるまでの時間によって予め決定されている。Jはシステムで決定される係数である。
L=J・(K・S)2
【0050】
このように視聴者の速度が速くなり、映像の表示位置が前方に移動した場合でも、輝度を補正することで視聴者の視認性を保つことができる。よって、移動中の視聴者が障害物と衝突する可能性を低減しつつ映像を提供することが可能である。
【0051】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0052】
100、700:映像表示装置、101:映像表示部、102:視聴者検知部、103、703:移動速度測定部、104:表示領域決定部、105、705:映像制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する映像表示手段と、
視聴者の位置を検知する視聴者検知手段と、
視聴者の移動速度を測定する移動速度測定手段と、
前記視聴者検知手段で検知した視聴者の位置と、前記移動速度測定手段で測定した視聴者の移動速度とに基づいて、前記映像表示手段上の映像を表示する映像表示領域を決定する表示領域決定手段と、
前記表示領域決定手段で決定した映像表示領域に応じて映像を制御して表示する映像制御手段とを備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記表示領域決定手段は、前記移動速度測定手段で測定した視聴者の移動速度が速いほど、前記映像表示領域を視聴者から離れた位置とすることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記表示領域決定手段は、前記移動速度測定手段で測定した視聴者の移動速度に応じて前記映像表示領域の台形補正を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記映像制御手段は、前記移動速度測定手段で測定した視聴者の移動速度に応じて前記映像表示領域に表示するコンテンツを変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記映像制御手段は、前記移動速度測定手段で測定した視聴者の移動速度に応じて前記映像表示領域に表示する文字数及びフォントサイズの少なくともいずれかを変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記映像制御手段は、前記移動速度測定手段で測定した視聴者の移動速度に応じて前記映像表示領域に表示する映像の輝度を変更することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項7】
映像表示手段に映像を表示する映像表示方法であって、
視聴者の位置を検知するステップと、
視聴者の移動速度を測定するステップと、
前記検知した視聴者の位置と、前記測定した視聴者の移動速度とに基づいて、前記映像表示手段上の映像を表示する映像表示領域を決定するステップと、
前記決定した映像表示領域に応じて映像を制御して表示するステップとを有することを特徴とする映像表示方法。
【請求項8】
映像表示手段に映像を表示するためのプログラムであって、
視聴者の位置を検知する処理と、
視聴者の移動速度を測定する処理と、
前記検知した視聴者の位置と、前記測定した視聴者の移動速度とに基づいて、前記映像表示手段上の映像を表示する映像表示領域を決定する処理と、
前記決定した映像表示領域に応じて映像を制御して表示する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−118121(P2012−118121A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265343(P2010−265343)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】