説明

映像表示装置

【課題】立体視を提供する映像表示装置において視聴者の使い勝手を損なわずに視聴者の体調に配慮する。
【解決手段】映像表示装置100は、3Dとして見ることが可能な映像を表示する表示手段103と、その3D表示を開始した時点からの時間である第1の時間をカウントするカウント手段104と、前記第1の時間があらかじめ設定された第2の時間に対応する時間になったときに3D表示を継続することへの注意を喚起するメッセージを生成するメッセージ生成手段105と、を備え、前記表示手段103は、生成した前記メッセージを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置に関し、特に、立体視可能な映像を表示する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビなどの映像表示装置で立体視(以下、「3D」と呼ぶ場合がある)機能を利用する場合、連続して長時間視聴すると体調に悪影響が出る可能性があるため視聴者に注意喚起することが、JEITA(電子情報技術産業協会)のガイドラインで定められている。
【0003】
平面に映像を表示し、映像を観察する視聴者に立体感を感じさせる3D技術としては、種々の方式のものがあるが、映像のコンテンツそのものが右眼用と左眼用のコンテンツに分かれている方式の場合は、注意喚起をコンテンツの配信元(例えば、放送局)がコンテンツの開始前に入れておくことが多い。
【0004】
通常の2Dコンテンツを擬似的に3D化する機能を搭載している製品においては、一定時間が経過すると自動的に2D表示に戻るものがある。
【0005】
特許文献1には、映像表示装置における注意喚起をする技術として、装置の利用開始とともに装置の使用時間のカウントを始め、設定された時間の直前等に、設定された時間がまもなく終了する旨の通知をすることなどが開示されている(例えば、段落0032等)。また、「第7の実施の形態」として3D表示の場合の構成についても言及がある。しかしながら、特許文献1は、外部の視覚情報が完全にシャットアウトされてしまうヘッドマウントディスプレイ固有の課題である時間間隔の麻痺を課題としており、装置の利用開始時点を使用時間のカウント開始時点としているなど、本願とは技術的背景等が大きく異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−326977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば3Dコンテンツを配信するテレビ放送のように、番組冒頭に注意文を表示しても、番組の途中から視聴する視聴者には、注意文が読まれない。したがって、受信する映像表示装置側で何らかの適切な注意喚起を行う必要性がある。
【0008】
また、一定時間が経過することによって自動的に3D表示を解除する機能の場合は、視聴者本人の体調の良し悪しを配慮しないため、実際には体調に問題がない場合であっても視聴者の意向にかかわらず3D表示を解除してしまう可能性がある。他には、視聴者が途中で替わった場合も、実際には問題がないにもかかわらず自動的に3D表示を解除してしまう可能性がある(この課題は、ヘッドマウントディスプレイでは生じ得ない課題である)。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、立体視を提供する映像表示装置において視聴者の使い勝手を損なわずに視聴者の体調に配慮することが可能な映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、第1の態様として、立体視可能な映像を表示する表示手段と、立体視可能な映像の表示を開始した時点からの時間である第1の時間をカウントするカウント手段と、前記第1の時間があらかじめ設定された第2の時間に対応する時間になったときに立体視可能な映像の表示を継続することへの注意を喚起するメッセージを生成するメッセージ生成手段と、を備え、前記表示手段は、生成した前記メッセージを表示することを特徴とする、映像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立体視を提供する映像表示装置において視聴者の使い勝手を損なわずに視聴者の体調に配慮することが可能な映像表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態における注意喚起のメッセージの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本実施形態の構成を示す。
本実施形態に係る映像表示装置100は、放送局から配信される放送波を受信する機能と、DVDやBlu−ray(登録商標)ディスクなどの映像が記録された記録媒体を読み込んで再生する機能を具備する。したがって、映像表示装置100は、受信/再生装置でもある。
【0014】
放送局からの放送波には、あらかじめ3D表示用に作られたコンテンツ(テレビ番組)あるいは通常のコンテンツ(テレビ番組)が含まれている。通常のコンテンツを、以下、2Dコンテンツと呼ぶ。一方で、記録媒体から供給されるコンテンツ(映画など)にも3Dコンテンツと2Dコンテンツがある。このように、映像表示装置100に入力されるコンテンツを、以下では「入力される映像信号」と呼ぶ。なお、入力される映像信号の例として、テレビ番組や記録媒体に記録された映画を挙げたが、これらに限定する意図はない。コンテンツの種類としては種々のものが考えられ、また、映像信号を入力する手段としても種々のものが利用できる(例えば、ビデオカメラで撮影した映像を入力する)。
【0015】
図1に示すように、映像表示装置100は、デコード/映像生成手段101、映像合成手段102、表示手段103、カウント手段104、メッセージ生成手段105、ユーザインタフェース106を備える。
【0016】
デコード/映像生成手段101は、入力される映像信号からコンテンツの映像を生成する機能を備える。なお、デコード/映像生成手段101を実現する方式としては、ハードウェアデコーダやソフトウェア的に実現する方式など、当業者に種々の方式が知られている。同様に、映像表示装置100が備える各機能ブロックは、ハードウェアやハードウェアと協働するソフトウェアによって実現される。
【0017】
デコード/映像生成手段101は、デコードした映像信号を、2D、3D、疑似3Dのいずれかの方法で映像を生成するものであり、どの方法で表示するかは、ユーザがユーザインタフェース106を通じて任意に選択する。一般的な使い方としては、入力される映像が3Dコンテンツ(右眼用映像と左眼用映像が映像ストリームに含まれている3D表示用に作られたコンテンツ)であれば、3D表示を選択し、2Dコンテンツ(通常のコンテンツ)であれば2D表示又は疑似3D表示を視聴者の好みにより選択する。
【0018】
疑似3Dとは、通常のコンテンツである2Dコンテンツを画像解析し、所定のアルゴリズムにしたがって自動的に擬似的な3D表示をするものを指す。所定のアルゴリズムとは、例えば、画像内の動きの大きいオブジェクトを近くにあるオブジェクト、動きの少ないオブジェクトを遠くにあるオブジェクトとして判断するようなアルゴリズムである。この判断に応じて、近くにあると判断されたオブジェクトほど視差を付けて疑似3D表示する。
【0019】
つまり、3D表示には、コンテンツ制作側が3Dコンテンツとして製作したものをその意図通りに3D表示する場合と、コンテンツ制作側は2Dコンテンツとして制作したものを受信/再生側が擬似的に3D表示する場合の2種類のケースが存在する。
【0020】
映像合成手段102は、入力された映像信号に基づいてデコード/映像生成手段101が生成した映像と、メッセージ生成手段105が生成したメッセージとを合成する機能を備える。表示手段103は、合成された映像を表示する機能を備える。表示手段103は、3D表示のときには、立体視を実現する方式(偏光眼鏡方式、液晶シャッタ方式、レンティキュラレンズアレイ方式、視差バリア方式等種々のものが利用できる)に応じた特殊な表示方式で3D表示を行う。
【0021】
カウント手段104は、デコード/映像生成手段101で3D表示に係る映像が生成され始めた時点からの時間をカウント、計時する。厳密には、表示手段103が3D表示の映像を視聴者に表示し始めた時点からの時間をカウントすることを目的としているが、本実施形態では、映像合成手段102と表示手段103による処理による遅延がほとんどないものとして、デコード/映像生成手段101で3D表示に係る映像が生成され始めた時点からの時間をカウントする。
【0022】
カウント手段104による時間のカウントは、疑似でない3Dの表示時間と、疑似3Dの表示時間を通算すると良い。前述のように疑似でない3Dコンテンツは、コンテンツ制作側が3Dで見せることを意図して制作しているため、例えば、強烈な光の明滅を見せる映像(いわゆるパカパカフラッシュ)についてなされているような配慮(「最低でも数秒間」など短時間に区切る)が、3Dコンテンツに対してもなされていることが考えられる。
【0023】
これに対し、疑似3Dは、受信/再生側が自動的に生成するものなので、コンテンツ制作側が視聴者の体調への配慮をすることができない。疑似でない3Dは、3D視聴時の疲労に対し、配慮する主体が放送局(コンテンツ制作側)であるのに対して、疑似3Dは、配慮する主体がメーカーである。疑似3D視聴時の疲労に対し、メーカーによる配慮がなされていたとしても、従来あまり視差を付けずにマイルドな映像を提供する程度にとどまる。3Dと疑似3Dのどちらが比較的疲れやすいかは、ケースバイケースであるが、少なくとも疲れやすさが異なる可能性は高い。
【0024】
したがって、短時間に区切られている可能性のある疑似でない3Dコンテンツに続けて疑似3Dコンテンツの表示を視聴し続けるケースへの配慮が従来なされていなかった。
そこで、カウント手段104による時間のカウントを、疑似でない3Dの表示時間と、疑似3Dの表示時間とで通算するものとすることによって、視聴者にとってより安全なものとなる。
【0025】
さらに、疑似でない3Dと疑似3Dとではカウントする時間の上限に差を設けると良い。その理由は、通算する構成における説明と同様のことが言える。疑似でない本来の3Dコンテンツと擬似的な3D表示の特徴を比較すると、前者はコンテンツ制作側の最終的な品質チェックが一般的に期待される一方、後者は一定のアルゴリズムにしたがい自動的に擬似的な3D表示を実現する違いがあるため、後者(疑似3D)の方が体調への悪影響について無頓着である可能性がある。この可能性があることを持って直ちに「疑似3Dの方が3Dよりも連続視聴時への配慮が無いため疲れやすい」とは言えないまでも、少なくとも、疑似3Dと3Dとで、疲れやすさが異なる可能性は高いと言える。
【0026】
そこで、疑似でない3Dと疑似3Dとではカウントする時間の上限に差を設ける(例えば、前者は30分でメッセージ生成手段105にカウントアップを通知し、後者は60分で通知するなど)と、視聴者にとってより安全な映像表示装置を提供することができる。カウントする時間の上限に差を設けるということは、視聴時間の計時の重み付けを疑似3Dと3Dとで変えるということである。したがって、この構成によれば、疲れやすさの違いに適切に対応することができる。
【0027】
メッセージ生成手段105は、カウント手段104がカウントしている時間が、設定されている視聴時間の上限を超えた(カウントアップ)場合に、カウント手段104よりその旨が通知される。通知を受けると、注意喚起のメッセージを生成する。あるいは、メッセージ生成手段105がカウント手段104のカウントしている時間を監視して、設定されている視聴時間の上限を超えたら、注意喚起のメッセージを生成するようにしてもよい。図3に、注意喚起のメッセージの表示例を示す。
【0028】
図2に、上述した本実施形態の動作の流れを示す。
映像表示装置100において、デコード/映像生成手段101により、疑似3Dを含む3D表示が開始されると(ステップS101)、カウント手段104は、表示時間のカウントを始める(ステップS102)。
【0029】
カウントしている表示時間があらかじめ定めておく所定の時間を経過した場合(ステップS103のYes)、メッセージ生成手段105は、注意喚起メッセージを生成する(ステップS104)。
【0030】
次に、映像合成手段102が、生成された注意喚起メッセージを、デコード/映像生成手段101が入力された映像信号から生成している3D映像に、合成する(ステップS105)。表示手段103は、合成された映像を表示する(ステップS106)。
【0031】
図2に示すフローの結果、図3に示すような注意喚起メッセージが表示される。
図3において、表示手段103は、3D映像201に重ね合わせて注意喚起ダイアローグ202を表示し、注意喚起メッセージを表示する。好ましくは、注意喚起メッセージに併せて、視聴者の意向を入力する入力手段を表示しておき、デフォルトでフォーカス203を3D表示を続けない方においておく。「いいえ」を選択すると2Dに戻す。「はい」を選択すると3D表示を継続する。
【0032】
上述した本実施形態によれば、立体視を提供する映像表示装置において視聴者の使い勝手を損なわずに視聴者の体調に配慮することが可能な映像表示装置を提供することが可能になる。
【0033】
なお、視聴時間の通算と、疑似でない3Dと疑似3Dとではカウントする時間の上限に差を設ける構成とを組み合わせる場合は、視聴時間を単に通算するだけではなく、疑似でない3Dと疑似3Dとで異なる疲れやすさの違いを考慮すると良い。
【0034】
3Dと疑似3Dではどちらが比較的疲れやすいかはケースバイケースであり一概には言えないが、1秒ごとに蓄積する疲労度が異なるため、3Dと疑似3Dを切り換えたときに、その度合いに比例して時間カウントを適切に行う。一例として、メッセージ表示までの時間を3Dは60分、疑似3Dは30分に設定する実施例がある。この実施例の設定は、疑似3Dは3Dに対して2倍の速さで疲労すると仮定した場合の設定である。
【0035】
この実施例では、例えば、疑似3Dを15分視聴した後で連続して3D視聴に切り換えた場合、それまでに視聴していた疑似3Dの表示時間は3Dで30分視聴した場合と同程度の疲労度と見なし、カウント時間に合算する。これは、言い換えれば、疑似3Dの表示時間に所定の重みを付けてカウント、計時し、疑似でない3Dの表示時間と通算する構成である。このように構成すると、疑似3Dと本来の3Dとの疲労度の違いに適切に対応することができる。
【符号の説明】
【0036】
100 映像表示装置
101 デコード/映像生成手段
102 映像合成手段
103 表示手段
104 カウント手段
105 メッセージ生成手段
106 ユーザインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体視可能な映像を表示する表示手段と、
立体視可能な映像の表示を開始した時点からの時間である第1の時間をカウントするカウント手段と、
前記第1の時間があらかじめ設定された第2の時間に対応する時間になったときに立体視可能な映像の表示を継続することへの注意を喚起するメッセージを生成するメッセージ生成手段と、
を備え、
前記表示手段は、生成した前記メッセージを表示する
ことを特徴とする、映像表示装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記メッセージに併せて、立体視可能な映像の表示を継続するか解除するかを操作者に選択させる入力手段を表示することを特徴とする、請求項1記載の映像表示装置。
【請求項3】
立体視可能な映像を生成する映像生成手段を備え、
前記第1の時間は、
前記映像生成手段が、左眼用と右眼用の映像信号から前記立体視可能な映像を生成した場合の時間と、
前記映像生成手段が、1つの映像信号から前記立体視可能な映像を生成した場合の時間と、
を通算してなることを特徴とする、請求項1又は2記載の映像表示装置。
【請求項4】
立体視可能な映像を生成する映像生成手段を備え、
前記第1の時間は、
前記映像生成手段が、左眼用と右眼用の映像信号から前記立体視可能な映像を生成した場合の時間と、
前記映像生成手段が、1つの映像信号から前記立体視可能な映像を生成した場合の時間に所定の重みを付けて計時した時間と、
を通算してなることを特徴とする、請求項1又は2記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−182741(P2012−182741A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45548(P2011−45548)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(311012169)NECパーソナルコンピュータ株式会社 (116)
【Fターム(参考)】