説明

映像音声再生装置

【課題】 映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理を行う映像音声再生装置に関し、映像ズーム処理された映像に合わせて、より臨場感のある再生音場を実現することができる映像音声再生装置を提供する。
【解決手段】 映像信号を映像ズーム処理する映像信号処理回路と、映像信号とともに再生するマルチチャンネル音声信号の各レベル、ならびに、各遅延時間を変更する音声信号処理回路と、映像信号処理回路および音声信号処理回路を制御する制御回路と、を備え、制御回路が、映像ズーム処理におけるズーム倍率の変更指示を与える場合に、映像信号処理回路が映像ズーム処理を施した映像信号を出力し、音声信号処理回路が、ズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理、および、遅延変更処理、を施したマルチチャンネル音声信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理を行う映像音声再生装置であって、映像信号とともにマルチチャンネル音声信号を再生する映像音声再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映画等の音声信号が同期した映像信号を含むコンテンツを再生する場合に、映像信号および音声信号を再生する映像音声再生装置が、映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理の機能を有することがある。例えば、ユーザーが映像ズーム処理を行うように操作する場合には、この映像音声再生装置からディスプレイ等の映像を表示する機器へ出力される映像信号は、映像ズーム処理して指定の領域が拡大された映像を再生する映像信号に信号処理される。その結果、ユーザーは、映像ズーム処理して拡大して視たい領域の映像を、映像音声再生装置の操作により選択的に視ることができる。
【0003】
映像信号に映像ズーム処理が施される場合には、映像信号とともに再生する音声信号についても、適切な音声信号処理が施されるのが好ましい。従来には、ズーム率に応じて、フロント側のスピーカーに対応するオーディオ信号と、サラウンド側のスピーカーに対応するオーディオ信号との音量比を制御する制御手段を備え、例えば、制御手段が、ズーム処理が行われているときに、フロント側のスピーカーに対応するオーディオ信号の音量を増加させるとともに、サラウンド側のスピーカーに対応するオーディオ信号の音量を減少させ、上記音量増加および減少の度合いをズーム率が大きくなるほど大きくさせるものがある(特許文献1)。
【0004】
また、従来には、テレビ会議システムにおいて、ズーム位置に対応して、画像データと音声データとを同期または非同期で出力することにより、画像と音声との間に不自然さを生じさせないようにするものがある(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−336430号公報 (第1図)
【特許文献2】特開平6−276427号公報 (第1図)
【0006】
しかしながら、従来の方法では、映像ズーム処理して拡大して視たい領域の映像がディスプレイに表示されても、視聴するユーザーにとっては、音声信号により再生される再生音像、ならびに、再生音場の臨場感が不足する場合がある、という問題がある。すなわち、映像信号とともにマルチチャンネル音声信号を再生する場合には、映像ズーム処理された映像に合わせて、マルチチャンネル音声信号のそれぞれのチャンネル信号について音声信号処理を行い、臨場感のある再生音場を実現する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理を行う映像音声再生装置に関し、映像ズーム処理された映像に合わせて、より臨場感のある再生音場を実現することができる映像音声再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像音声再生装置は、映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理を行う映像音声再生装置であって、映像信号を映像ズーム処理する映像信号処理回路と、映像信号とともに再生するマルチチャンネル音声信号の各レベル、ならびに、各遅延時間を変更する音声信号処理回路と、映像信号処理回路および音声信号処理回路を制御する制御回路と、を備え、制御回路が、映像ズーム処理におけるズーム倍率の変更指示を与える場合に、映像信号処理回路が映像ズーム処理を施した映像信号を出力し、音声信号処理回路が、ズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理、および、遅延変更処理、を施したマルチチャンネル音声信号を出力する。
【0009】
好ましくは、本発明の映像音声再生装置は、制御回路が、1.0倍を超えるズーム倍率を変更指示する場合に、音声信号処理回路におけるズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、前方配置のスピーカーから再生する前方信号(前方左信号、前方中央信号、前方右信号)の各レベルを基準値よりも増大し、かつ、後方配置のスピーカーから再生するサラウンド信号(サラウンド左信号、サラウンド右信号)の各レベルを基準値よりも減少させるとともに、前方中央信号の遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、サラウンド信号の各遅延時間を基準値よりも長くする。
【0010】
好ましくは、本発明の映像音声再生装置は、制御回路が、複数のズーム倍率に基づく複数の所定のレベル変更処理と、遅延変更処理と、を記憶しており、音声信号処理回路におけるズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、ズーム倍率が大きくなるに連れて、前方信号の各レベルを相対的に増大し、かつ、サラウンド信号の各レベルを相対的に減少させるとともに、前方中央信号の遅延時間を相対的に短くし、かつ、サラウンド信号の各遅延時間を相対的に長くする。
【0011】
また、好ましくは、本発明の映像音声再生装置は、制御回路が、映像のズーム領域の中心を示すズーム中心位置を検出し、ズーム中心位置が、映像領域を縦方向に分割して規定される中央領域よりも左側の左領域にある場合に、音声信号処理回路におけるズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、前方左信号、および、サラウンド左信号の各レベルを基準値よりも増大し、かつ、前方右信号、前方中央信号、および、サラウンド右信号の各レベルを基準値よりも減少させるとともに、前方中央信号、および、サラウンド左信号の各遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、サラウンド右信号の各遅延時間を基準値よりも長くし、ズーム中心位置が、中央領域よりも右側の右領域にある場合に、所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、前方右信号、および、サラウンド右信号の各レベルを基準値よりも増大し、かつ、前方左信号、前方中央信号、および、サラウンド左信号の各レベルを基準値よりも減少させるとともに、前方中央信号、および、サラウンド右信号の各遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、サラウンド左信号の各遅延時間を基準値よりも長くする。
【0012】
また、好ましくは、本発明の映像音声再生装置は、制御回路が検出するズーム中心位置が左領域もしくは右領域に有る場合に、音声信号処理回路におけるズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、ズーム中心位置が映像の両端部に近づくに連れて、マルチチャンネル音声信号の各レベルの変化量を相対的に増大させるとともに、各遅延時間の変化量を相対的に長くする。
【0013】
以下、本発明の作用について説明する。
【0014】
本発明の映像音声再生装置は、映像音声再生装置は、映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理を行う映像音声再生装置であって、代表的には、ディスクプレーヤー、もしくは、映像信号に同期した音声信号を音声として再生するAVセンターであり、映像信号を映像として再生するモニターと、映像音声再生装置に接続する複数のスピーカーと、とともに映像音声再生システムを構成する。映像音声再生装置は、映像信号を映像ズーム処理する映像信号処理回路と、映像信号とともに再生するマルチチャンネル音声信号の各レベル、ならびに、各遅延時間を変更する音声信号処理回路と、映像信号処理回路および音声信号処理回路を制御する制御回路と、を備える。本発明の映像音声再生装置は、映像信号の映像ズーム処理によって、映像の一部分を拡大縮小してモニターに再生する。
【0015】
映像音声再生装置の制御回路は、映像ズーム処理におけるズーム倍率の変更指示を与える場合に、映像信号処理回路が映像ズーム処理を施した映像信号を出力し、音声信号処理回路が、ズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理、および、遅延変更処理、を施したマルチチャンネル音声信号を出力する。すなわち、映像ズーム処理された映像に合わせて、スピーカーの配置に合わせて各マルチチャンネル音声信号のレベル変更を施すだけでなく、マルチチャンネル音声信号の各遅延時間を変更する。
【0016】
具体的には、映像音声再生装置の制御回路が、1.0倍を超えるズーム倍率を変更指示する場合には、音声信号処理回路におけるズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、前方配置のスピーカーから再生する前方信号(前方左信号、前方中央信号、前方右信号)の各レベルを基準値よりも増大する。そして、後方配置のスピーカーから再生するサラウンド信号(サラウンド左信号、サラウンド右信号)の各レベルを基準値よりも減少させるとともに、前方中央信号の遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、サラウンド信号の各遅延時間を基準値よりも長くする。
【0017】
したがって、映像を拡大するズーム処理において、より臨場感のある再生音場を実現することができる。ズーム倍率が大きくなるに連れて、前方信号の各レベルを相対的に増大し、かつ、サラウンド信号の各レベルを相対的に減少させるとともに、前方信号の各遅延時間を相対的に短くし、かつ、サラウンド信号の各遅延時間を相対的に長くすることで、さらに臨場感のある再生音場にすることができる。
【0018】
また、映像のズーム領域の中心を示すズーム中心位置が、映像領域を縦方向に分割して規定される中央領域よりも左側の左領域にある場合、あるいは、中央領域よりも右側の右領域にある場合には、前方信号(前方左信号、前方中央信号、前方右信号)の各レベルおよび各遅延時間を、および、サラウンド信号(サラウンド左信号、サラウンド右信号)の各レベルおよび各遅延時間を、基準値とは左右間で異なるように変更して、よりズーム処理された映像に合致した臨場感のある再生音場にすることができる。ズーム中心位置が映像の両端部に近づくに連れて、マルチチャンネル音声信号の各レベルの変化量を相対的に増大させるとともに、各遅延時間の変化量を相対的に長くすることで、さらに臨場感のある再生音場にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の映像音声再生装置は、映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理再生時に、視聴者にとって、より臨場感のある再生音場を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の映像音声再生装置は、映像ズーム処理された映像に合わせて、より臨場感のある再生音場を実現するという目的を、映像信号を映像ズーム処理する映像信号処理回路と、映像信号とともに再生するマルチチャンネル音声信号の各レベル、ならびに、各遅延時間を変更する音声信号処理回路と、映像信号処理回路および音声信号処理回路を制御する制御回路と、を備え、制御回路が、映像ズーム処理におけるズーム倍率の変更指示を与える場合に、映像信号処理回路が映像ズーム処理を施した映像信号を出力し、音声信号処理回路が、ズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理、および、遅延変更処理、を施したマルチチャンネル音声信号を出力するようにすることにより、実現した。
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態による映像音声再生装置について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施形態による映像音声再生装置を含む映像音声再生システム100について説明する図である。映像音声再生システム100は、映像音声再生装置であるDVDプレーヤー1と、DVDプレーヤー1からの再生信号が入力されるAVセンター2と、AVセンター2に接続するモニター装置3と、AVセンター2の増幅回路に接続する複数のスピーカー41〜45と、から構成される。映像音声再生システム100は、視聴位置4に位置する視聴者Pに対して、モニター装置3から映像Vを、周囲に配置されたスピーカー41〜45から後述するそれぞれの音声を再生し、DVDプレーヤー1で再生される記録媒体(DVDディスク)に記録された映像音声コンテンツを再生する。
【0023】
ここで、複数のスピーカー41〜45は、視聴位置4からモニター装置3が配置される方向を正面として、正面方向にセンタースピーカー41と、左前方方向に左スピーカー42と、右前方方向に右スピーカー43と、左後方方向に左サラウンドスピーカー44と、右後方方向に右サラウンドスピーカー45と、を含んでおり、いわゆる5チャンネルサラウンド音場を再生する。正面方向のセンタースピーカー41からはセンターチャンネル音声Cが再生され、他のスピーカー42〜45からもそれぞれ左チャンネル音声L、右チャンネル音声R、左サラウンドチャンネル音声LS、右サラウンドチャンネル音声RSが再生される。なお、図1においては、明示しているAVセンター2とセンタースピーカー41との接続線を除いて、AVセンター2と他のスピーカー42〜45との接続線は、図面の簡略のために省略している。
【0024】
DVDプレーヤー1は、その動作を制御するCPU10と、記録媒体(DVDディスク)から記録された同期したビデオ信号ならびにオーディオビットストリームを読みだして再生するディスク駆動部11と、再生信号を出力する信号処理回路12と、を含む。また、信号処理回路12は、映像ズーム処理を行う映像信号処理回路13と、マルチチャンネル音声の各レベル、ならびに、各遅延時間を変更する音声信号処理回路14と、を少なくとも含む。DVDプレーヤー1は、記録媒体(DVDディスク)から記録されたビデオ信号ならびにオーディオビットストリームを読みだして再生し、後述するAVセンター2の入力端子に、HDMIで多重化されたビデオ信号ならびにオーディオビットストリームを入力する。信号処理回路12の音声信号処理回路14は、オーディオビットストリームを受けてこれを5チャンネルのサラウンド信号データC0、L0、R0、LS0およびRS0にデコードするデコード回路と、サラウンド信号データのゲインを調整する積算回路と、サラウンド信号データをそれぞれ遅延させる遅延回路と、遅延回路から遅延されたサラウンド信号データを再びオーディオビットストリームに変換するエンコード回路と、を含む。
【0025】
なお、もちろん、AVセンター2に入力される同期した映像音声コンテンツの再生データは、DVDプレーヤー1で再生されるものに限定されず、他の放送を受信する受信機や、インターネットに接続するデータ通信機器であってもよい。
【0026】
AVセンター2は、AVセンター2の動作を制御するCPU20と、入力されたHDMIで多重化されたビデオ信号ならびにオーディオビットストリームをそれぞれ映像データVdと音声データAdとに分離して出力する分離回路21と、分離回路21の出力を受けて、映像信号およびマルチチャンネル音声信号のデコードを行い、再生する映像V、ならびに、各マルチチャンネル音声信号との遅延同期をとる信号処理回路22と、スピーカー41〜45に接続する複数の増幅器23(図1に図示するのはセンターチャンネル音声C用のみ。)と、を含む。CPU20の制御によって、信号処理回路22はモニター装置3にHDMIで映像データVdを出力し、その結果、モニター装置3からは映像Vが再生される。
【0027】
また、信号処理回路22は、音声データAdを5チャンネルの音声信号にデコードし、増幅器23を介して各マルチチャンネル音声信号をそれぞれスピーカー41〜45に出力し、センタースピーカー41からはセンターチャンネル音声Cが、左スピーカー42からは左チャンネル音声Lが、右スピーカー43からは右チャンネル音声Rが、左サラウンドスピーカー44からは左サラウンドチャンネル音声LSが、右サラウンドスピーカー45からは右サラウンドチャンネル音声RSが、再生される。信号処理回路22は、CPU20によって動作が制御され、具体的にはDSP(Digital Signal Processor)、メモリを有する遅延ディレイ回路、デジタル/アナログ変換回路、オペアンプ、等により構成される。
【0028】
信号処理回路22は、音声データAdを受けてこれを5チャンネルのサラウンド信号データC0、L0、R0、LS0およびRS0にデコードするデコード回路と、サラウンド信号データをそれぞれ遅延させる遅延回路と、遅延回路から遅延されたサラウンド信号データをそれぞれアナログ信号の5チャンネルのサラウンド信号Cs、Ls、Rs、LSsおよびRSsに変換するデジタル/アナログ変換器と、を含む。デジタル/アナログ変換器から出力されたサラウンド信号Cs、Ls、Rs、LSsおよびRSsは、それぞれAVセンター2の複数の増幅器23へ入力される。
【0029】
モニター装置3は、モニター装置3の動作を制御するCPU30と、映像データVdが入力される映像変換回路31と、映像変換回路31の出力信号が入力される画面走査回路を含む液晶ディスプレイ32と、を含む。映像変換回路31では、映像データVdを液晶ディスプレイ32が表示可能なアナログ映像信号に変換する。例えば、液晶ディスプレイ32は、横16に対して縦9の比率を有する画素数:1920×1080の映像データVdを表示可能であり、また、後述する映像のズーム領域の中心を示すズーム中心位置Z0を示すカーソルCzを、映像とともに表示する。モニター装置3の液晶ディスプレイ32は、視聴位置4から距離Xの正面方向に配置される。具体的には、映像音声再生システム100を一般家庭で使用する場合では、距離Xもセンタースピーカー41との距離Yにほぼ等しく、約1m〜6m程度が一般的である。
【0030】
また、センタースピーカー41を含むスピーカー41〜45は、それぞれが配置されるべき音源位置の方向に、視聴位置4から距離Yをとって設置される。具体的には、距離Yは約1m〜6m程度が一般的なため、スピーカー41〜45で再生される各マルチチャンネル音声は、約1〜18msecの伝達時間を伴って視聴位置4に到達する。一方、前述のモニター装置3の映像変換回路31における映像変換に伴う処理時間(約30〜100msec)は、上述の各マルチチャンネル音声の伝達時間に比較しても、映像Vと各マルチチャンネル音声C、L、R、LS、RSとの同期再生に最も影響が大きい。したがって、AVセンター2の信号処理回路22は、視聴位置4における映像と音声との同期再生を実現するため、映像よりもいわば早く再生されてしまう音声信号を遅延させる処理を行い、映像とマルチチャンネル音声との同期再生を実現する。
【0031】
図2は、DVDプレーヤー1が行う映像ズーム処理を説明する図である。図2(a)は、モニター装置3の液晶ディスプレイ32に表示される映像Vについて、映像ズーム処理により拡大表示されるズーム映像Vzを説明する模式図であり、図2(b)は、映像ズーム処理に伴ってマルチチャンネル音声に施す音声信号処理によって、聴取位置Sが移動して聴取位置Szに変化する様子を説明する図である。つまり、本発明のDVDプレーヤー1では、映像ズーム処理によって倍率αに拡大された映像Vzが表示される場合には、映像がズームされることで、視聴者Pが、より前方の音像に近づいた様に感じるようにし、聴取位置Sがあたかも聴取位置Szに変化するかのようにマルチチャンネル音声を再生して、臨場感のある再生音場を実現する。
【0032】
また、図3は、図2と同様に、DVDプレーヤー1が行う映像ズーム処理を説明する図である。図3(a)は、モニター装置3の液晶ディスプレイ32に表示される映像Vについて、映像ズーム処理で拡大表示する領域を示すカーソルウィンドウCwと、映像Vのズーム領域の中心を示すズーム中心位置を指示するカーソルCzを説明する模式図であり、図3(b)は、映像ズーム処理に伴ってマルチチャンネル音声に施す音声信号処理によって、聴取位置Sが移動して聴取位置Szに変化する様子を説明する図である。つまり、本発明のDVDプレーヤー1では、映像ズーム処理によって拡大する映像Vzの中心位置を指示するカーソルCzが、画面中央(図示するZCの領域)から左右方向に外れて位置している場合(図示するZL1、ZL2、ZR1、ZR2の領域)には、聴取位置Sがあたかも横方向の聴取位置Szに変化するかのようにマルチチャンネル音声を再生して、視聴者Pにとって、より臨場感のある再生音場を実現することができる。
【0033】
図4は、DVDプレーヤー1が行う映像ズーム処理の方法を説明する図である。図4(a)は、DVDプレーヤー1のCPU10が制御する映像ズーム処理を説明するフローチャートであり、図4(b)は、ズーム倍率αによって音声信号処理で変更するゲイン並びに遅延時間を説明する表であり、図4(c)は、カーソルCzの位置によって音声信号処理で変更するゲイン並びに遅延時間を説明する表である。なお、記号(a1〜a3、・・・、f1〜f3、m1〜m5、n1〜n5)は、約±0.5〜6.0dBの範囲でのゲインの絶対値を表し、記号(g1〜g3、・・・、l1〜l3、o1〜o5、p1〜p5)は、約±0.01〜1.00msecの範囲での遅延時間の絶対値を表す。ゲインの絶対値(a〜f、m、n)は、(a<b<c<d<e<f、n<m)という関係を有し、また、遅延時間の絶対値(g〜l、o、p)は、(g<h<i<j<k<l、p<o)という関係を有する。
【0034】
DVDプレーヤー1のCPU10は、DVDディスクに記録されているコンテンツを再生する再生時(S101)において、ズーム処理を指定するZOOMキーを設けている(S102)。CPU10は、視聴者PによってZOOMキーが押されると、信号処理回路12の映像信号処理回路13にコマンドを送り、映像信号処理回路13は、拡大表示する領域を示すカーソルウィンドウCwと、映像Vのズーム領域の中心を示すズーム中心位置を指示するカーソルCzと、をコンテンツの映像Vとともに表示する。表示されるカーソルウィンドウCwの大きさが、液晶ディスプレイ32の画面全体の大きさよりも小さくなるほど、ズーム倍率αは1.0倍よりも大きくなる。DVDプレーヤー1では、例えば、所定のズーム倍率α(1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍)で映像ズーム処理を可能にしているので、CPU10は、いずれかのズーム倍率αが選択されたかを検出する。
【0035】
次に、DVDプレーヤー1のCPU10は、ズーム倍率αに応じて信号処理回路12の音声信号処理回路14にコマンドを送り、各マルチチャンネル音声信号のゲイン及び遅延時間を変更する(S103)。図4(b)の表に示すように、ズーム倍率αが、1.0倍を超える場合には、前方配置のスピーカー(つまり、センタースピーカー41と、左スピーカー42と、右スピーカー43。)から再生する前方信号(つまり、センターチャンネル音声Csと、左チャンネル音声Lsと、右チャンネル音声Rs。)の各レベルを基準値よりも増大させ、かつ、後方配置のスピーカー(つまり、左サラウンドスピーカー44および右サラウンドスピーカー45。)から再生するサラウンド信号(つまり、左サラウンドチャンネル音声LSsおよび右サラウンドチャンネル音声RSs。)の各レベルを基準値よりも減少させる。そして、前方中央信号Csの遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、サラウンド信号(LSs、RSs)の各遅延時間を基準値よりも長くする。音声信号処理回路14は、デコードされたサラウンド信号データC0、L0、R0、LS0およびRS0について、それぞれゲインを調整する積算回路と、遅延させる遅延回路とを備えているので、ゲイン及び遅延時間を変更することができる。
【0036】
そして、図4(b)の表に示すように、ズーム倍率αが、1.0倍を超えて大きくなるに連れて、DVDプレーヤー1のCPU10は、ズーム倍率が大きくなるに連れて、前方信号の各レベルを相対的に増大し、かつ、サラウンド信号の各レベルを相対的に減少させるとともに、前方中央信号の各遅延時間を相対的に短くし、かつ、サラウンド信号の各遅延時間を相対的に長くするように、音声信号処理回路14にコマンドを送る。ズーム倍率αが大きくなれば、視聴者Pがより前方の音像に近づいた様に感じるように、前方信号とサラウンド信号とのレベル差が顕著になり、また、視聴者Pへの前方からの前方信号による音声と、後方からのサラウンド信号によるサラウンド音声との到来時間差が、さらに大きくなるようにする。
【0037】
例えば、ズーム倍率αが2.0倍の場合には、センターチャンネル音声Csを+b2[dB]、左チャンネル音声Lsおよび右チャンネル音声Rsを+b1[dB]、として、レベルを増大させ、かつ、左サラウンドチャンネル音声LSsおよび右サラウンドチャンネル音声RSsを−b3[dB]、として、レベルを減少させる。そして、センターチャンネル音声Csを−h1[msec]、として、遅延時間を短くし、かつ、左サラウンドチャンネル音声LSsおよび右サラウンドチャンネル音声RSsを+h2[msec]、として、各遅延時間を長くする。なお、左チャンネル音声Lsおよび右チャンネル音声Rsは、−h3[msec]、として、遅延時間を短くするのが好ましい。
【0038】
そして、例えば、ズーム倍率αを3.0倍とする場合には、さらに音声信号処理による臨場感を高めるために、センターチャンネル音声Csを+d2[dB]、左チャンネル音声Lsおよび右チャンネル音声Rsを+d1[dB]、として、レベルをさらに増大させ、かつ、左サラウンドチャンネル音声LSsおよび右サラウンドチャンネル音声RSsを−d3[dB]、として、レベルをさらに減少させる。そして、センターチャンネル音声Csを−j1[msec]、として、遅延時間をさらに短くし、かつ、左サラウンドチャンネル音声LSsおよび右サラウンドチャンネル音声RSsを+j2[msec]、として、各遅延時間をさらに長くする。なお、左チャンネル音声Lsおよび右チャンネル音声Rsは、−j3[msec]、として、遅延時間を短くするのが好ましい。
【0039】
次に、DVDプレーヤー1のCPU10は、映像ズーム処理によって拡大するズーム映像Vzの中心位置を指示するカーソルCzが位置する左右方向の位置を検出する(S104)。すなわち、カーソルCzが、画面を横方向に分割した画面中央(ZCの領域)にあるのか、左右方向に外れて位置している(ZCの両側のZL1、ZL2、ZR1、ZR2の領域)を検出して、左右方向の音像定位を変更する。本実施例の場合には、図3(a)に示すように、液晶ディスプレイ32の画面の横方向をほぼ均等に5等分して、中央を左右の音像定位を変更しない領域ZCとし、領域ZCの左右隣をZL1およびZR1とし、さらにディスプレイ32の画面の横方向での両端側を、領域ZL2およびZR2としている。
【0040】
そして、DVDプレーヤー1のCPU10は、カーソルCzの位置を検出した結果に基づいて、ズーム倍率αに応じて信号処理回路12の音声信号処理回路14にコマンドを送り、各マルチチャンネル音声信号のゲイン及び遅延時間を変更する(S105)。つまり、本発明のDVDプレーヤー1では、図4(c)の表に示すように、ズームされるズーム映像領域が、画面中央(図示するZCの領域)から左右方向に外れて位置している場合には、ズーム映像Vzの左右方向と一致するように、聴取位置Sを横方向の聴取位置Szにあたかも変化させるようにマルチチャンネル音声を再生する。そして、画面の両端側である領域ZL2およびZR2の場合には、より左右チャンネル間でのレベル差および時間差が大きくなるようにする。
【0041】
例えば、ズーム映像Vzの中心位置を指示するカーソルCzが、画面中央ZCの領域から左隣に位置する領域ZL1にある場合には、左チャンネル音声Lsを+n1[dB]、左サラウンドチャンネル音声LSsを+n4[dB]、として、レベルを増大させ、かつ、センターチャンネル音声Csを−n3[dB]、右チャンネル音声Rsを−n2[dB]、右サラウンドチャンネル音声RSsを−n5[dB]、として、レベルを減少させる。そして、センターチャンネル音声Csを−p1[msec]、左サラウンドチャンネル音声LSsを−p2[msec]、として、遅延時間を短くし、かつ、右サラウンドチャンネル音声RSsを+p3[msec]として、各遅延時間を長くする。なお、左チャンネル音声Lsは、−p4[msec]、として、遅延時間を短くし、右チャンネル音声Rsは、+p5[msec]、として、遅延時間を長くするのが好ましい。
【0042】
また、例えば、ズーム映像Vzの中心位置を指示するカーソルCzが、画面中央ZCの領域から右側に遠く離れて位置する領域ZR2にある場合には、右チャンネル音声Rsを+m2[dB]、右サラウンドチャンネル音声RSsを+m5[dB]、として、レベルを増大させ、かつ、センターチャンネル音声Csを−m3[dB]、左チャンネル音声Lsを−m1[dB]、左サラウンドチャンネル音声LSsを−m4[dB]、として、レベルを減少させる。そして、センターチャンネル音声Csを−o1[msec]、右サラウンドチャンネル音声RSsを−o3[msec]、として、遅延時間を短くし、かつ、左サラウンドチャンネル音声LSsを+o2[msec]として、各遅延時間を長くする。なお、左チャンネル音声Lsは、+o4[msec]、として、遅延時間を長くし、右チャンネル音声Rsは、−o5[msec]、として、遅延時間を短くするのが好ましい。
【0043】
最後に、CPU10は、信号処理回路12の音声信号処理回路14に、上記の設定の変更を有効にするコマンドを送る(S106)。好ましくは、雑音・ノイズを視聴者Pに感知させないように、ゲインおよび遅延時間の設定の切換時にミュートを掛けて、発生する設定の変更を有効にするコマンドを送った後にミュートを解除する。その結果、DVDプレーヤー1は、ズームされたズーム映像Vzとともに、音声信号処理を施したマルチチャンネル音声を再生し、視聴者Pにとって、より臨場感のある再生音場を実現する。
【0044】
また、CPU10では、図4(b)の実施例の場合に限定されず、信号処理回路12の映像信号処理回路13で行う映像ズーム処理のズーム倍率αをさらに細かく段階的に設定し、これに対応して、音声信号処理回路14でのゲインおよび遅延時間の設定の変更を、さらに細かく段階的に設定してもよい。また、図3(a)および図4(c)の実施例の場合に限定されず、液晶ディスプレイ32の画面の横方向を7等分以上に分割して、音声信号処理回路14でのゲインおよび遅延時間の設定の変更を、さらに細かく段階的に設定してもよい。
【0045】
なお、DVDプレーヤー1と、AVセンター2と、モニター装置3との信号伝送方式は、HDMIの他にも、有線や無線の接続に限らず、IEEE1394等の伝送方式であってもよい。また、DVDプレーヤー1に限られず、AVセンター2が映像ズーム処理を実行できる場合には、AVセンター2が備える信号処理回路の映像信号処理回路および音声信号処理回路を用いてもよい。
【0046】
また、マルチチャンネルサラウンド音声が、本実施例の5チャンネルよりも多いチャンネル数を有する場合であっても、それぞれに適切なゲインおよび遅延時間の設定の変更を設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の映像音声再生装置は、DVDプレーヤーのみならず、テレビジョンチューナー、増幅器を内蔵するマルチチャンネル音声再生用のAVセンター、増幅器を備えないコントロールアンプ、等にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の好ましい実施形態による映像音声再生システムについて説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明のDVDプレーヤー1が行う映像ズーム処理を説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明のDVDプレーヤー1が行う映像ズーム処理を説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明のDVDプレーヤー1が行う映像ズーム処理の方法を説明する図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0049】
1 DVDプレーヤー
10 CPU
11 ディスク駆動部
12 信号処理回路
13 映像信号処理回路
14 音声信号処理回路
2 AVセンター
20 CPU
21 分離回路
22 信号処理回路
23 増幅器
3 モニター装置
30 CPU
31 映像変換回路
32 液晶ディスプレイ
41 センタースピーカー
42 左スピーカー
43 右スピーカー
44 サラウンド左スピーカー
45 サラウンド右スピーカー
100 映像音声再生システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像の一部分を拡大縮小して再生する映像ズーム処理を行う映像音声再生装置であって、
映像信号を映像ズーム処理する映像信号処理回路と、該映像信号とともに再生するマルチチャンネル音声信号の各レベル、ならびに、各遅延時間を変更する音声信号処理回路と、該映像信号処理回路および該音声信号処理回路を制御する制御回路と、を備え、
該制御回路が、該映像ズーム処理におけるズーム倍率の変更指示を与える場合に、該映像信号処理回路が該映像ズーム処理を施した映像信号を出力し、該音声信号処理回路が、該ズーム倍率に基づく所定のレベル変更処理、および、遅延変更処理、を施した該マルチチャンネル音声信号を出力する、
映像音声再生装置。
【請求項2】
前記制御回路が、1.0倍を超える前記ズーム倍率を変更指示する場合に、
前記音声信号処理回路における該ズーム倍率に基づく前記所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、
前方配置のスピーカーから再生する前方信号(前方左信号、前方中央信号、前方右信号)の各レベルを基準値よりも増大し、かつ、後方配置のスピーカーから再生するサラウンド信号(サラウンド左信号、サラウンド右信号)の各レベルを基準値よりも減少させるとともに、該前方中央信号の遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、該サラウンド信号の各遅延時間を基準値よりも長くする、
請求項1に記載の映像音声再生装置。
【請求項3】
前記制御回路が、複数の前記ズーム倍率に基づく複数の所定のレベル変更処理と、遅延変更処理と、を記憶しており、
前記音声信号処理回路における該ズーム倍率に基づく前記所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、該ズーム倍率が大きくなるに連れて、前記前方信号の各レベルを相対的に増大し、かつ、前記サラウンド信号の各レベルを相対的に減少させるとともに、該前方中央信号の遅延時間を相対的に短くし、かつ、該サラウンド信号の各遅延時間を相対的に長くする、
請求項1または2に記載の映像音声再生装置。
【請求項4】
前記制御回路が、前記映像のズーム領域の中心を示すズーム中心位置を検出し、
該ズーム中心位置が、映像領域を縦方向に分割して規定される中央領域よりも左側の左領域にある場合に、
前記音声信号処理回路における該ズーム倍率に基づく前記所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、前方左信号、および、サラウンド左信号の各レベルを基準値よりも増大し、かつ、前方右信号、前方中央信号、および、サラウンド右信号の各レベルを基準値よりも減少させるとともに、該前方中央信号、および、該サラウンド左信号の各遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、該サラウンド右信号の各遅延時間を基準値よりも長くし、
該ズーム中心位置が、該中央領域よりも右側の右領域にある場合に、
該所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、前方右信号、および、サラウンド右信号の各レベルを基準値よりも増大し、かつ、前方左信号、前方中央信号、および、サラウンド左信号の各レベルを基準値よりも減少させるとともに、該前方中央信号、および、該サラウンド右信号の各遅延時間を基準値よりも短くし、かつ、該サラウンド左信号の各遅延時間を基準値よりも長くする、
請求項1から3のいずれかに記載の映像音声再生装置。
【請求項5】
前記制御回路が検出する前記ズーム中心位置が前記左領域もしくは前記右領域に有る場合に、
前記音声信号処理回路における該ズーム倍率に基づく前記所定のレベル変更処理および遅延変更処理が、該ズーム中心位置が該映像の両端部に近づくに連れて、前記マルチチャンネル音声信号の各レベルの変化量を相対的に増大させるとともに、各遅延時間の変化量を相対的に長くする、
請求項4に記載の映像音声再生装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−50544(P2010−50544A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210827(P2008−210827)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】