説明

時刻付与観測システムおよび時刻付与観測方法

【課題】通信ケーブルを介する遠隔地に時刻情報を高精度でおくりたい。
【解決手段】観測システムに、クロック同期フレームに時刻情報を格納すると共に、時刻情報の示す時刻とクロック同期フレームに格納される時刻情報の示す時刻との時間的ズレと、時刻情報を格納するクロック同期フレームと通信路を介して折り返されてきたクロック同期フレームとの時間的ズレとを、遅延として検出する上位局と、通信路を介してクロック同期フレームを受信すると共に、送られてきた時刻情報と、事象を観測して得たデータとを関連付ける下位局と、事象を観測して得たデータに関連付けられた時刻情報を、検出した遅延に基づき補正する補正手段とを設けることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測地点の事象を収集したデータに正確な時刻情報を付与する観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、多くの場所で大規模且つ緻密に観測地点の事象を収集し、収集結果を瞬時又は事後的に解析使用することが行われている。このとき観測データとして求められることは、観測地点の事象を正確にデータ化すると共に、その事象が何時発生したのかを正確に識別できることである。
【0003】
ところで、地上などであって人間が立ち入ることが容易な場所での観測では、事象の発生を観測することも、その観測したデータに時刻を示す情報(時刻情報)を付することも容易である。また、時刻を示す情報は、観測対象の事象に対する十分な分解能であり加えて精密であることが求められる。このような時刻を示す情報は、一般的にGPS(Global Positioning System)から受信して生成したり、高精度時計を用いて生成したりして取得される。
【0004】
他方、人間が立ち入ることが容易でない場所での観測では、事象を観測する困難性もあるものの、観測データに正確な時刻情報を付与することも困難である。また、長時間にわたる観測でも同様である。尚、人間が立ち入ることが容易でない場所としては、水中や海底、深海、地底などが挙げられる。
【0005】
このような時刻付与観測システムは、例えば特許文献1に記載されている。また、GPS電波から正確な時刻情報を得る方法は、例えば特許文献2に記載されている。
【0006】
特許文献1には、海底の事象を観測する観測システムであり、海底に設置する観測装置に複数のブイを設け、所定期間毎にブイを海面まで伸ばすと共に、ブイに設けられたGPS受信部によって観測装置の内部時計を校正する。このように、動作することによって、観測装置の内部時計をGPSシステムに同期させて時刻情報の正確性を担保している。
【0007】
また、別の時刻付与観測システムを図10に示す。図10に示される時刻付与観測システムは、陸上局装置(上位局)でGPS電波を受信し、時刻情報生成部で時刻情報を生成して、送信機端(陸上局装置端)から延々な海底ケーブルを介して、海底局装置に時刻情報を送信する。時刻付与観測システムを構成する海底局装置は、観測装置に時刻情報を入力し、海底の様々な事象を観測データとして記録すると共に時刻情報を付与する。観測データの解析時には、当該時刻付与観測システムが、陸上局装置と海底局装置間、海底局装置と記憶装置間の何れも片方向通信であるため、記憶装置を海底より引き上げ、陸上にて時刻情報が付与された観測データを解析する。
【0008】
尚、大規模な海洋観測システムでは、深さ数km、海底ケーブル延長を数百kmに亘り張り巡らせて観測可能とすることを要求される。例えば、東海・東南海に施設する海洋観測システムでは、深さ2km、海底ケーブル全長を約220kmに亘って観測装置を海底に設置して形成している。また、地球深部探査船を利用して深層に観測装置を敷設する海洋観測システムも計画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−194193号公報
【特許文献2】特開2000−292572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1や例示した時刻付与観測システムでは、長時間にわたる事象に対する正確な時刻を供与できなかった。
【0011】
具体的には、特許文献1に記載された水中観測システムは、ブイ数で内部時計を校正する回数が定まり、長時間に亘る観測に不向きである。また、校正から次回の校正までの間は、時計誤差が順次蓄積する。加えて、バッテリ電圧等による時計の速度変化にも対応できない。即ち、内部時計の校正直後から、既に観測データに付する時刻情報に狂いが生じており、正確且つ緻密な時刻情報を観測データに付することができない。また、特許文献1では、地上局との接続ケーブルを不要とできることをメリットとして記載しているが、深海では、水中観測システムと海面までの距離が長く、通信ケーブルを接続したブイを海面まで延長すること自体に、設備的負担が生じ、加えて、通信開始までに多大な時間を要する。
【0012】
また、図10に示した時刻付与観測システムでは、時刻情報生成部で生成された時刻情報が海底に設置される観測装置に到達するまでに遅延が生ずる。遅延は、主に時刻情報の生成後、陸上局装置から出力されるまでに発生する遅延、海底ケーブルによって発生する遅延、海底局内で発生する遅延に分けられる。また、片方向通信のため、解析時に記憶装置(海底局)を引き上げて観測データを収集する必要がある。
【0013】
また、海底の事象の収集に、時刻情報を送出する海岸中継局と海底事象観測装置とを延々たる通信ケーブル(光海底ケーブルなど)を用いた場合、ケーブル長から遅延が生じ、計測した事象の時刻が不正確となる。これは、例えば地震観測の様に、複数個所の観測データの僅かな差を用いて、地殻の状態を識別する場合に、不鮮明さ又は大きな誤差を生ずる。
【0014】
本発明の目的は、時刻情報を遠隔地である事象を観測する場所に送信すると共に、観測データに関連付ける時刻を正確な時刻に補正する時刻付与観測システムを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、システム全体を高精度な時刻同期状態に維持可能な観測システムを提供することにある。
【0016】
本発明の更に別の目的は、観測地点の記憶装置を回収することなく観測データを取得できる観測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の時刻付与観測システムは、クロック同期フレームに時刻情報を格納すると共に、前記時刻情報の示す時刻と前記クロック同期フレームに格納される時刻情報の示す時刻との時間的ズレと、前記時刻情報を格納するクロック同期フレームと通信路を介して折り返されてきたクロック同期フレームとの時間的ズレとを、遅延として検出する上位局と、通信路を介してクロック同期フレームを受信すると共に、送られてきた時刻情報と、事象を観測して得たデータとを関連付ける下位局と、事象を観測して得たデータに関連付けられた時刻情報を、前記検出した遅延に基づき補正する補正手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、時刻情報を遠隔地である事象を観測する場所に送信すると共に、観測データに関連付ける時刻を正確な時刻に補正する時刻付与観測システムを提供できる。
【0019】
また、本発明によれば、システム全体を高精度な時刻同期状態に維持し、高精度な観測システムを提供可能とできる。
【0020】
また、本発明によれば、観測地点の記憶装置を回収することなく観測データを取得可能な観測システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の一形態の観測システムを示すブロック図である。
【図2】観測システムの検出処理を示すチャートである。
【図3】適応例の観測システムを示すブロック図である。
【図4】時刻情報の示す時刻とフレームに格納される時刻情報の示す時刻との時間的ズレを説明するタイミングチャートである。
【図5】時刻情報を格納するフレームと通信路を介して折り返されてきたフレームとの時間的ズレを説明するタイミングチャートである。
【図6】別の適応例の観測システムを示すブロック図である。
【図7】更に別の適応例の観測システムを示すブロック図である。
【図8】第2の実施の一形態の観測システムを示すブロック図である。
【図9】第2の実施の一形態の適応例の観測システムを示すブロック図である。
【図10】関連する観測システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明について、実施の一形態を示して説明する。実施の一形態では、本発明を適用した大規模観測システムを示し説明する。尚、本発明と関係の少ない細部については、説明を明瞭にするため、省略又は簡略化して記載する。
【0023】
図1は、実施の一形態の観測システムを示すブロック図である。
実施の一形態の観測システムは、大きく分けると、システム内で使用される時刻情報を送信する上位局となる時刻情報送信局10、時刻情報を受信して観測時刻とする下位局である時刻情報受信局20、上位局から下位局に送信される時刻情報の経路となる通信ケーブル30に分けられる。
【0024】
時刻情報送信局10は、フレームを生成送出するフレーム送出部11と、時刻情報をフレームに挿入する時刻情報挿入部12と、時刻情報の示す時刻とフレームに時刻情報を挿入するタイミングのズレを検出して遅延情報としてフレームに挿入する遅延情報挿入部13と、通信先から折り返し送信されてきたフレームと送信するフレームとの時間的ズレを検出して遅延情報とし、フレームに挿入する遅延情報挿入部14を備える。
【0025】
フレーム送出部11は、クロック周波数に基づきフレーム周期を有するフレーム(クロック同期フレーム)を生成又は受信し、必要に応じて各種データをフレーム内に記録して送出する。
【0026】
時刻情報挿入部12は、高精度時計やGPS等の精度の良い時刻情報を生成又は取得する。また、時刻情報挿入部12は、生成又は取得した時刻情報を、フレームの所定位置に、前記フレームに同期させて所定間隔で挿入する。尚、後述するように、フレームに所定間隔で時刻情報を挿入する為、前記所定間隔とフレーム周期のタイミングとが異なるタイミングの場合に待ち時間が発生し、遅延が生じる。
【0027】
遅延情報挿入部13は、時刻情報の生成又は取得タイミング(真正な時刻)からフレームに時刻情報を挿入するタイミングの遅延を検出して遅延情報を生成する。また、遅延情報挿入部13は、遅延情報をフレームに挿入する。当該遅延情報は、後述する遅延状態となっている時刻情報を真正な時刻情報に補正する為に用いられる。
【0028】
遅延情報挿入部14は、送信されたフレームが時刻情報受信局10にて折り返し送信され、受信したフレームと、送信するフレームとの時間差を検出して、通信ケーブル30等によって発生する遅延を検出して遅延情報を生成する。また、遅延情報挿入部14は、遅延情報をフレームに挿入する。尚、フレームには、遅延情報挿入部13と遅延情報挿入部14で挿入されるそれぞれの遅延情報を、別々に挿入しても良いし、まとめて挿入しても良い。
【0029】
時刻情報受信局20は、通信ケーブル30を介して、時刻情報と2つの遅延情報とを格納したフレームを受信して、時刻情報送信局10に送出する折り反しフレーム送出部21と、受信したフレームに格納されている時刻情報(遅延状態となっている時刻情報)を2つの遅延情報に基づき、正確な時刻情報に補正する時刻情報補正部22と、観測対象の事象を計測すると共に、補正した時刻情報を付与する観測部23を備える。観測機器でデータ化される事象を例示すれば、音響、電磁波、振動、加速度、重力方向、温度、圧力などである。
【0030】
折り反しフレーム送出部21は、受信したフレームを、フレーム番号を変更せずに、時刻情報送信局10に折り返し送出する。尚、折り返し送出するフレームには、各種データを格納することが可能であり、図示しない書き込み部によって、必要に応じてデータが書き込まれる。
【0031】
時刻情報補正部22は、フレームに格納されている時刻情報と2つの遅延情報とを取得し、フレームに格納されていた遅延状態となっている時刻情報を、遅延情報挿入部13の生成した遅延情報で示される時間分を早めると共に、遅延情報挿入部14の生成した遅延情報で示される時間分の半分の時間を早めた時刻情報に置換する。ここで置換された時刻情報は、時刻情報送信局での時刻情報と同一の時間を示すこととなる。即ち、時刻情報送信局10と時刻情報受信局20とが、真正の時間に対して同一の時刻を識別可能となる。尚、遅延情報挿入部14にて、先に遅延時間の半分を遅延情報として格納するようにしてもよい。
【0032】
観測部23は、観測を所望する事象に合わせた観測器(観測機)を有し、当該観測機器によって収集されたデータに、時刻情報補正部22によって補正された時刻情報を関連付けて記録する。収集されたデータは、当該地点で記録せずに、折り返しフレームに乗せて時刻情報送信局10に送信することも可能である。
【0033】
尚、時刻情報受信局20は、図示するように一段階層でも良いし、観測部内に時刻情報補正部を設けて2段階層にしても良い。また、更なる多段階層構造を有しても、各段階で時刻情報補正部によって補正された時刻情報を関連付けて精確に良く時刻と事象の関連付けをおこなえる。
【0034】
通信ケーブル30は、どのような通信ケーブルでも用いることが可能である。尚、本発明は、通信ケーブル30や外乱による遅延が大きいほど有効に働く。
【0035】
次に、図2を用いて、観測システムの全体動作を説明する。
図2は、観測システムの検出処理を示すチャートである。観測システムでは、観測データに付する時刻を示す時刻情報を、時刻情報挿入部12が取得又は生成する。図2では、時分割(値の変化時間:1秒毎や1/20秒毎など)をn秒毎とする。尚、時刻情報は、基準にする時刻を、真正な時刻を用いても良いし、観測システムと接続する関連するシステムで用いられている時刻情報と同値を持つものとしてもよい。また、真正な時刻も、観測点(補正地点)の標準時刻を用いても良いし、送出地点の標準時刻を用いても良い。
【0036】
次に、図2に示す第1の遅延時間を説明する。第1の遅延時間は、時刻情報挿入部12によって、送出するフレームの所定位置に時刻情報をフレームに同期させて挿入するときに発生する遅延時間である。具体的には、フレームの基準クロックと時刻情報の変化タイミングとの差が第1の遅延時間となる。遅延情報挿入部13によって生成される遅延情報は、当該第1の遅延時間に基づく情報である。
【0037】
次に、図2に示す第2の遅延時間を説明する。第2の遅延時間は、下位局から折り返し送信されてきたフレームと送出するフレームとの時間的ヅレである。第2の遅延時間は、通信ケーブル30等を介してフレームが移動することによって実際に発生した遅延を示す。具体的に説明すれば、図2のフレームBは、フレームAを基準とすると、過去に送出されたフレームであり、下位局において送り返されたフレームである。即ち、フレームBは、フレームAに対し、通信ケーブル30の行きの遅延と、帰りの遅延の両遅延時間で遅れたフレームである。
【0038】
第2の遅延時間は、遅延情報挿入部14によって検出され、フレームBとフレームAとの偏差を示す値となる。偏差は、フレームAとフレームBの何れを基準としても良く、図2に示された第2の遅延時間は、フレームAとフレームB+1との偏差を示している。遅延情報挿入部14によって生成される遅延情報は、当該第2の遅延時間に基づく情報である。尚、後述するように時刻情報補正部を設ける位置によって、当該第2の遅延時間に含まれている行きと帰りの遅延時間の両方を利用する場合と、行きの遅延時間のみを利用する場合がある。
【0039】
また、行きの遅延時間と帰りの遅延時間とは同等の値となる為、第2の遅延時間の1/2時間の値を、行きまたは帰りの遅延時間値とみなすことが可能である。時刻情報受信局20では、上記の性質を用いて、フレームで受信した時刻情報を2つの遅延情報を用いて正確な時刻情報に補正し、観測したデータに補正した時刻情報を関連付ける。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、上位局たる時刻情報送信局で、基準時間と、基準時間の送信タイミングとフレームとの時間偏差と、受信フレームと送信フレームとの時間偏差とを、フレームに乗せて、下位局たる時刻情報受信局に送出し、時刻情報受信局で、基準時間に、2つの時間偏差を考慮した補正を行なうことで、時刻情報を遠隔地である事象を観測する場所に送信すると共に、観測データに関連付ける時刻を正確な時刻に補正する時刻付与観測システムを提供できる。また、観測システム全体を高精度な時刻同期状態に維持し、高精度な観測システムを提供可能になる。加えて、フレームを折り返すため、フレームに正しい時刻情報の観測データを格納でき、観測地点の記憶装置を回収することなく観測データを取得できる。
【0041】
次に、複数の適応例を示し、本発明を説明する。
以下、適応例として海洋観測システムにおいて、説明を明瞭にする為、フレームとして既存のSDH(Synchronous Digital Hierarchy)フレームフォーマットを用いて説明する。尚、SONET (Synchronous Optical Network)でも同様である。
【0042】
図3において、陸上局装置100は、海岸や場合によっては船上に設けられて、光海底ケーブルを用いて海底局装置200に対して時刻情報を提供する。
【0043】
陸上局装置100には、時刻情報を取得する時刻情報生成装置110が設けられ、GPS装置を用いてGPS電波から時刻情報を生成する。また、陸上局装置100には、陸上SDH多重化装置120が設けられ、時刻情報生成装置110から出力される時刻情報tを受信し、受信した時刻情報tをSDHのOH(Over Head)に格納して海底局装置200に送出する。
【0044】
陸上SDH多重化装置120には、SDH多重化装置としての一般的機能に加え、位相差検出回路121と位相差検出回路122が設けられる。
【0045】
位相差検出回路121は、高次SDHフレームに時刻情報を挿入時のするタイミングの時刻情報の変化点と高次SDHフレーム周期の位相差を検出して、検出した値を位相差情報nとして高次SDHフレームに挿入する。
【0046】
位相差検出回路122は、海底SDH多重装置210に送信した高次SDHフレームと、海底SDH多重化装置210から折り返ってきた高次SDHフレームの差分により、ケーブル遅延情報Tnを検出して、高次SDHフレームに挿入する。
【0047】
延々なる光海底ケーブルを介して陸上局装置100と接続される海底局装置200には、陸上SDH多重化装置120の対向装置となる海底SDH多重化装置210と、複数の観測装置220が設けられる。
【0048】
海底SDH多重化装置210には、SDH多重化装置としての一般的機能に加え、光海底ケーブルを介して到達したSDH信号に含まれる時刻情報tと、位相差情報nと、ケーブル遅延情報Tnに基づき、時刻情報tを補正するTIMER211が設けられている。海底SDH多重化装置210は、TIMER211によって補正されて生成された時刻情報t1を、観測装置220に送出する。時刻情報t1は、時刻情報tと時刻同期した値となり、観測装置220に送出する低次SDHフレームに格納されて、観測装置220に送出される。
【0049】
ここで、低次SDHフレームに時刻情報t1を格納するときに、高次SDHフレームに時刻情報tを格納する場合と同様の理由により位相差が発生するため、位相差検出回路212を設ける。位相差検出回路212では、時刻情報t1と低次SDHフレームとの位相差情報n1を低次SDHフレームのOHに付与して観測装置220に送出する。
【0050】
位相差検出回路212の動作は、位相差検出回路121と同様であり、時刻情報tと低次SDHフレームとの位相差を検出し、格納時の遅延時間を示す位相差情報n1を低次SDHフレームに格納する。
【0051】
観測装置220では、送られてきた時刻情報t1を基準に、TIMER211と同様に動作するTIMER221を用いて、海底SDH多重化装置210と時刻同期した時刻情報t2を生成する。
【0052】
観測装置220は、生成した時刻情報t2を、デジタイズ222に送出し、観測した海洋事象に関連付ける。デジタイズ222では、様々な観測地点で得られる事象を収集し、海中や海底、地底の海洋事象をデータ化し、過酷な環境でも記録保持可能な記憶装置223に記録する。
【0053】
尚、位相差検出回路212とTIMER221で実現される補正機能は、時刻情報を更に多段階に転送する場合には、同様の装置を多段階に設ければ良く、2段に限定するものではない。また、低次SDHフレームを用いなければ、位相差検出回路212とTIMER221を削除して1段階の補正としても良い。
【0054】
次に、図3ないし図5のタイムチャートを用いて、SDHを用いた適応例の時間同期方法(時刻付与観測方法)について説明する。
【0055】
はじめに海底光ケーブルによる遅延時間を測定する。海底SDH多重化装置210は、陸上SDH多重化装置120から受信した信号を折り返す機能を有しており、海底SDH多重装置210に送出した時刻情報tと海底SDH多重化装置210から折り返ってきた時刻情報t’の差分により、光海底ケーブルの往復遅延時間t1’を測定し、往復遅延時間t1’の値を1/2の値にすることにより、陸上SDH多重化装置120と、海底SDH多重化装置210間の光ケーブル遅延時間Tnを算出する。算出は、次式Tn=T1’/2=(t-t’)/2をもちいれば良い。ただし、往路長と復路超は等しいものとする。
【0056】
次に、陸上SDH多重化装置120内の信号処理について説明する。
GPS電波から取得する時刻を基準とした、時刻情報生成装置110からの時刻情報tは、年月日秒の1秒周期の時刻情報である。尚、他の周期でも出力するようにしても良い。
【0057】
それに対して、SDHフレームは、高次SDHフレーム、低次SDHフレーム共に125μsの周期である。そのため、1秒周期の時刻情報tを125μ周期のSDHフレームで転送した場合、最大で1フレーム分の125μSの誤差が生じる。上位局の位相差検出回路121と位相差検出回路122、下位局の位相検出装置212は、時刻情報tとSDHフレームを高速CLKでサンプリングすることにより、位相差情報(遅延情報)を検出する。
【0058】
陸上SDH多重化装置120は、各部を用いて、時刻情報tと光海底ケーブルの遅延時間Tnと位相差情報nをSDHフレームのOHに挿入し、海底SDH多重化装置210に送出する。海底SDH多重化装置210は、陸上SDH多重化装置120から送られてきた時刻情報tと光ケーブル遅延時間Tnと位相差情報nからTIMER211で補正し時刻情報t1を再生する。この時点で、時刻情報t1≒時刻情報tの値となる。
【0059】
海底SDH多重化装置210は、各部を用いて、時刻情報t1と位相差情報n1を低次SDHフレームのOHに挿入し、複数の観測装置220にそれぞれ転送する。
【0060】
観測装置220では、海底SDH多重化装置210から転送されてきた時刻情報t1と位相差情報n1からそれぞれTIMER221を用いて、時刻情報t2を再生する。この時点で、時刻情報t2≒時刻情報t1≒時刻情報tの値となる。
【0061】
観測装置220では、海洋事象をデジタイズ化し、時刻情報t2と共に記憶装置223に記録する。
【0062】
上述のように、SDH伝送方式を適応し、時刻情報と光ケーブルによる遅延情報、SDHフレーム位相差情報を転送することにより、システム全体を高精度で同期化することが可能となる。また、観測地点で発生した事象に高精度である時間を付与できる。
【0063】
尚、時刻情報の同期精度は、位相差検出のサンプリングCLK周波数±1CLKの精度となる。本例として、19.44MhzのCLKでサンプリングしており、±51.44nsの精度での時刻合わせが可能となる。
【0064】
ここで、位相差検出回路122の値の処理例を示す。図5は、送出するフレームをFrame_Aとし、折り返しフレームをFrame_Bとして示した図である。
【0065】
光海底ケーブルに起因する遅延は、次式であり、往復のケーブル遅延=Frame_A - Frame_B + X CLK(差分クロック)となる。各値に、例えば、以下に示す値をとすると、片方向のケーブル遅延情報Tnの生成値は、往復のケーブル遅延の1/2であり、以下の様になる。また、遅延時間も算出しておく。
【0066】
Frame_A = 2009年5月18日10時00分0秒 7000Frame 1000CLK ,
Frame_B = 2009年5月18日10時00分0秒 6999Frame 1000CLK ,
X CLK = 500
片方向ケーブル遅延情報Tn = ((Frame_A - Frame_B) + X CLK)/2
= (1 Frame + 500CLK)/2
= (2430CLK+500CLK)/2
= 0Frame + 1465 CLK
片方向ケーブル分の遅延時間= 1465 CLK × 51.44ns = 75.3596us
尚、当該情報からケーブル長を算定することも可能であり、1465CLK遅延の場合のケーブル長を考えると、約5ns/mの光ファイバーケーブルを用いている場合、遅延時間が75.3596uSであるので、ケーブル長=75.3596uS / 5ns =15071.92mとなる。
【0067】
以上説明したように、本適応例の海洋観測システムでは、SDHフレームにて時刻情報を転送すると共に適時補正することで、サンプリング周波数速度±51.44nsの制度で遠隔地と時刻同期できる。また、GPS電波の届かない場所でも、時刻同期が可能となる。
【0068】
即ち、システム全体を精確に時刻同期させ、かつ海底光ケーブルによる遅延時間を測定できる機能を持たせたことにより、海底事象の発生した時間を高精度に観測できる。
【0069】
即ち、高精度の観測機器と組み合わせることで、高精度な海洋観測システムを実現できる。
【0070】
次に、別の適用例を示し、本発明を説明する。尚、本適用例では、観測データの収集を観測装置(記憶装置)の引き上げを必要としない形態について説明する。
【0071】
本適用例の海洋観測システムは、図6に示すように、陸上SDH多重化装置120に、観測信号受信装置130を組み合わせ、観測装置220の記憶装置223内のデータをダウンロードする機能を配備する。これにより、観測装置220を海底から引き上げることなく、データの解析が可能になる。
【0072】
この場合、観測信号受信装置130から、高次SDHフレームを用いて観測データのダウンロード指示(送信指示)を、海底SDH多重化装置210に設けられる情報読み出し格納部213が識別し、記憶装置223から観測データを読み出すと共に、読み出した観測データを高次SDHフレームのペイロード領域に格納する。観測信号受信装置130は、高次SDHフレームに格納されている観測データを取得し、必要に応じた解析等の処理に用いる。
【0073】
また、同様に、図7に示す様に、観測装置220の観測データを記憶装置223を経由することなく、低次SDHフレームのペイロードにマッピングして観測信号受信装置130に送信するようにしても良い。
【0074】
これにより、観測装置220を海底から引き上げることなく、リアルタイムでの海洋事象をモニタが可能となる。
【0075】
次に、別の実施の一形態を示す。本実施の一形態では、前記の実施の一形態で下位装置に設けられていた、時刻情報補正部を上位局に設けたところが異なる。
【0076】
図8は、第2の実施の一形態の観測システムを示すブロック図である。
第2の実施の一形態の観測システムは、大きく分けると、システム内で使用される時刻情報を送信する上位局となる時刻情報送信局10、時刻情報を受信して観測時刻とする下位局である時刻情報受信局20、上位局から下位局に送信される時刻情報の経路となる通信ケーブル30に分けられる。
【0077】
上位局は、フレーム送出部11と、時刻情報をフレームに挿入する時刻情報挿入部12と、フレームに時刻情報を挿入するタイミングの遅延を検出して遅延情報を生成して、通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたフレームに遅延情報を挿入する遅延情報挿入部13と、通信先から折り返されたフレームと送信するフレームとを用いて、フレーム間の遅延を検出して、折り返し送信されてきたフレームに遅延情報を挿入する遅延情報挿入部14と、折り返し送信されてきたフレームに格納されている2つの遅延情報に基づき、折り返し送信されてきたフレームに格納されている時刻情報を、観測の正確な計測時刻の時刻情報に補正する時刻情報補正部15を備える。
【0078】
下位局は、通信路を介して受信したフレームのタイミングで、上位局に折り反し送出するフレームを送信する折り返しフレーム送出部24と、観測対象の事象を計測すると共に、時刻情報を関連付け、計測して得たデータをフレームに格納する観測部25とを備える。
【0079】
フレーム送出部24は、上位装置に、観測部25で時刻情報と関連付けられた観測のデータを格納して送出する。観測部25は、観測対象の事象を計測すると共に、計測されて得たデータに時刻情報(この時点で遅延が生じている)を対応(関連)付けて記録する。尚、計測されたデータは、当該地点で記録せずに、折り返しフレームに乗せて上位局に送信することも可能である。また、下位局に、階層を設けても、各段階でフレームと時刻情報と観測したデータを関連付けて上位局におくれば、精確に良く時刻情報の補正が可能となる。
【0080】
次に、第2の実施の一形態の適用例を示し、本発明を説明する。本適用例の海洋観測システムは、図9に示すように、海底SDH多重化装置210のTIMERと観測装置のTIMERを省略して時刻同期機能を削除し構成を簡略化する。また、記憶装置を観測装置に設けずに、観測信号受信装置で記録して、構成を簡略化する。
【0081】
本適用例の海洋観測システムは、システム全体の時刻同期を図らず、位相差情報n1のみを転送し、陸上局装置100で集中的に補正を行い、事象の時間を再生するものである。海洋観測システムの海底SDH多重化装置210では、陸上SDH多重化装置120から転送されてきた遅延が生じている時刻情報t’'と低次SDHフレームとの位相差情報n1を、低次SDHフレームのOHに格納して観測装置220に転送する。観測装置220では、海洋事象と海底SDH多重化装置220から転送されてきた時刻情報t’'と、位相差情報n1をデジタライズ化し、SDHフレームのペイロードにマッピングし、陸上SDH多重化装置120に観測したデータと共に転送する。陸上SDH多重化装置120では、観測装置220から送られてきた高次SDHフレームに、位相差検出回路121および位相差検出回路122で生成された位相差情報nとケーブル遅延情報Tnを付加し、TIMER140を介して観測信号装置130に転送する。観測信号装置130では、TIMER140によって時刻情報t’’’を、位相差情報n、位相差情報n1、ケーブル遅延情報Tnに基づく補正された時刻情報を取得し、観測したデータに対応した正確な海底事象の発生時刻を再生する。
【0082】
この方式は、装置中継途中で正確な時刻をしる必要がなく、事象の発生時間のみを正確に知りたい場合などに使用でき、海底SDH多重化装置及び観測装置を簡略化できるため、過酷な環境での観測に対する有効な手段となる。
【0083】
以上説明したように、本発明においては、以下に示す多くの効果を奏する。
第1に、フレームにて時刻情報を転送する機能有しているので、GPS等で時刻情報の生成又は取得が出来ない場所でも、時刻同期ができる。
【0084】
第2に、時刻情報とフレームとの位相差を補正する機能を有しているので、必要に応じた高精度時刻同期が可能となる。
【0085】
第3の効果は、下位局にて、信号を折り返し、ケーブル遅延時間の補正を行う機能を有しているので、必要に応じた高精度時刻同期が可能となる。
【0086】
以上の効果を組み合わせることで、高精度に時刻情報を付与可能な観測システムを実現することが可能となる。
【0087】
また、ダウンロード機能や双方向通信機能を追加することにより、記憶装置を引き上げることなく、リアルタイムで観測データをモニタできる。
【0088】
また、広範囲の複数地点に対して、基準地点に対する決まった時刻情報を付与可能である。これは、複数の観測装置の位置と合わせて用いることで、事象の発生位置などの高速且つ高精細な検出および解析を可能とする。
【0089】
また、補正用に用いるサンプリングCLK周波数を更に高速にすれば、更に精度の良い時刻合わせが可能となる。この場合、観測対象の事象に求める分解能を考慮して、SDH等のサンプリングCLK周波数を上位局で逓倍し、逓倍サンプリングCLK周波数で遅延を検出し、下位局での補正時に、SDH等のサンプリングCLK周波数を同様に逓倍して、逓倍サンプリングCLK周波数を生成して当該周波数を用いて補正すれば、逓倍分の分解能を更に得られる。この場合は、上位局と下位局にそれぞれサンプリングCLK周波数を同一n倍数する逓倍回路を設ければ、達成できる。また、補正用に用いるサンプリングCLK周波数を低速にすれば、精度が悪くなるものの処理量を低減できる。この場合、観測対象の事象に求める分解能を考慮して、SDH等のサンプリングCLK周波数を上位局で分周し、分周サンプリングCLK周波数で遅延を検出し、下位局での補正時に、SDH等のサンプリングCLK周波数を同様に分周して、分周サンプリングCLK周波数を生成して当該周波数を用いて補正すれば、処理量を低減できる。この場合は、上位局と下位局にそれぞれサンプリングCLK周波数を同一1/n倍する分周回路を設ければ、達成できる。尚、逓倍回路と分周回路を同一の回路として、必要に時刻補正用のサンプリングCLK周波数を可変する手段と設けても良い。このような手段を設けることのよって、所望する時期の時刻付与をより精度良くおこなったり、観測機器の性能を最大限に引き出したりすることが可能となる。
【0090】
また、上記説明では、送信するフレームと下位局からの折り返えされるフレームとの差を計測してその値を半分として行きの遅延を算定しているが、他の方法で算定しても良い。例えば、下位局側に時刻情報の生成間隔と同程度の遅延判定基準情報を生成する装置を設け、当該遅延判定基準情報を上位局で生成される遅延情報と共にフレームに載せて上位局に送信して再送信して下位局で再取得することで、行きの遅延と帰りの遅延の切り分けが可能となる。
【0091】
また、同様に、下位局に、前回の時刻補正値の情報を上位局に通知する手段を設け、当該情報に基づいて、送信するフレームと下位局からの折り返えされるフレームとの差の値を、行きの遅延と帰りの遅延の切り分けに用いてもてもよい。
【0092】
また、時刻情報の補正手段によって補正した値を、観測したデータに付すようにしてもよい。
【0093】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や動作は、本発明の請求の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、観測地点間の時刻偏差の低減に使用できる。また、本発明は、GPS電波の届かない屋内、地下等にて高精度な事象の観測を必要とする観測システムに使用できる。
【符号の説明】
【0095】
10 時刻情報送信局
11 フレーム送出部
12 時刻情報挿入部
13 遅延情報挿入部
14 遅延情報挿入部
20 時刻情報受信局
21 折り反しフレーム送出部
22 時刻情報補正部
23 観測部
30 通信ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック同期フレームに時刻情報を格納すると共に、前記時刻情報の示す時刻と前記クロック同期フレームに格納される時刻情報の示す時刻との時間的ズレと、前記時刻情報を格納するクロック同期フレームと通信路を介して折り返されてきたクロック同期フレームとの時間的ズレとを、遅延として検出する上位局と、
通信路を介してクロック同期フレームを受信すると共に、送られてきた時刻情報と、事象を観測して得たデータとを関連付ける下位局と、
事象を観測して得たデータに関連付けられた時刻情報を、前記検出した遅延に基づき補正する補正手段と
を有することを特徴とする時刻付与観測システム。
【請求項2】
クロック同期フレームを生成して送出するフレーム送出部と、
時刻情報を生成又は取得すると共に、前記時刻情報をクロック同期フレームに所定間隔で挿入する時刻情報挿入部と、
前記時刻情報の生成又は取得タイミングから前記クロック同期フレームに前記時刻情報を挿入するタイミングの遅延を検出して第1の遅延情報を生成して、クロック同期フレームに前記第1の遅延情報を挿入する第1の遅延情報挿入部と、
通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたクロック同期フレームと送信するクロック同期フレームとを用いて、クロック同期フレーム間の遅延を検出して、クロック同期フレームに前記第2の遅延情報を挿入する第2の遅延情報挿入部と
を備える上位局と、
通信路を介して、時刻情報と第1の遅延情報と第2の遅延情報とを格納したクロック同期フレームを受信して、前記上位局に折り反し送出する折り反しフレーム送出部と、
受信したクロック同期フレームに格納されている前記時刻情報を、前記第1の遅延情報および前記第2の遅延情報に基づき、生成又は取得された正確な時刻に補正する時刻情報補正部と、
観測対象の事象を計測すると共に、前記補正した時刻情報を付与する観測部と
を備える下位局と
を有することを特徴とする時刻付与観測システム。
【請求項3】
前記下位局は、複数段の内部階層構造を有してなり、前記時刻情報補正部の補正結果の時刻を、転送するにあたり発生する遅延を検出する手段と、当該検出した遅延を補正する補正手段とを有する
ことを特徴とする請求項2記載の時刻付与観測システム。
【請求項4】
クロック同期フレームを生成して送出するフレーム送出部と、
時刻情報を生成又は取得すると共に、前記時刻情報をクロック同期フレームに所定間隔で挿入する時刻情報挿入部と、
前記時刻情報の生成又は取得タイミングから前記クロック同期フレームに前記時刻情報を挿入するタイミングの遅延を検出して第1の遅延情報を生成して、通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたクロック同期フレームに前記第1の遅延情報を挿入する第1の遅延情報挿入部と、
通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたクロック同期フレームと送信するクロック同期フレームとを用いて、クロック同期フレーム間の遅延を検出して、前記折り返し送信されてきたクロック同期フレームに前記第2の遅延情報を挿入する第2の遅延情報挿入部と、
前記折り返し送信されてきたクロック同期フレームに格納されている第1の遅延情報と第2の遅延情報に基づき、前記折り返し送信されてきたクロック同期フレームに格納されている時刻情報を、観測の正確な計測時刻の時刻情報に補正する時刻情報補正部と
を備える上位局と、
通信路を介して、クロック同期フレームを受信して、前記上位局に折り反し送出する折り反しフレーム送出部と、
観測対象の事象を計測すると共に、時刻情報を関連付け、計測して得たデータをクロック同期フレームに格納する観測部と
を備える下位局と
を有することを特徴とする時刻付与観測システム。
【請求項5】
前記下位局は、複数段の内部階層構造を有してなり、前記時刻情報の示す時刻を、転送するにあたり発生する遅延を検出する手段を有することを特徴とする請求項4記載の時刻付与観測システム。
【請求項6】
第1の遅延情報の生成に前記クロック同期フレームのサンプリングCLK周波数を用いることを特徴とする請求項2ないし5の何れかに一記載の時刻付与観測システム。
【請求項7】
第1の遅延情報の生成に前記クロック同期フレームのサンプリングCLK周波数を逓倍又は分周して用いることを特徴とする請求項2ないし6の何れかに一記載の時刻付与観測システム。
【請求項8】
前記下位局は、前記観測部を直列的、並列的又はその組み合わせて複数有することを特徴とする請求項1ないし7の何れかに一記載の時刻付与観測システム。
【請求項9】
GPS電波から時刻情報の取得し、
時刻情報の送信に光海底ケーブルを用い、前記下位局が海底に設けられることを特徴とする請求項1ないし8の何れかに一記載の時刻付与観測システム。
【請求項10】
クロック同期フレームを生成して送出するフレーム送出部と、
時刻情報を生成又は取得すると共に、前記時刻情報をクロック同期フレームに所定間隔で挿入する時刻情報挿入部と、
前記時刻情報の生成又は取得タイミングから前記クロック同期フレームに前記時刻情報を挿入するタイミングの遅延を検出して第1の遅延情報を生成して、クロック同期フレームに前記第1の遅延情報を挿入する第1の遅延情報挿入部と、
通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたクロック同期フレームと送信するクロック同期フレームとを用いて、クロック同期フレーム間の遅延を検出して、クロック同期フレームに前記第2の遅延情報を挿入する第2の遅延情報挿入部と
を備えることを特徴とする時刻情報送信局。
【請求項11】
通信路を介して、上位局から時刻情報を格納したクロック同期フレームを受信して、上位局に折り反し送出する折り反しフレーム送出部と、
時刻情報の生成又は取得タイミングから前記クロック同期フレームに前記時刻情報を挿入するタイミングの遅延を示す情報である第1の遅延情報と、前記上位局で通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたクロック同期フレームと送信するクロック同期フレームとのクロック同期フレーム間の遅延である第2の遅延情報とを格納したクロック同期フレームを受信すると共に、前記クロック同期フレームに格納されている前記時刻情報を前記第1の遅延情報および前記第2の遅延情報に基づき時刻情報が取得又は生成された時を表す時刻情報に補正する時刻情報補正部と、
観測対象の事象を計測すると共に、前記補正した時刻情報を付与する観測部と
を備えることを特徴とする時刻情報受信局。
【請求項12】
前記下位局は、複数段の内部階層構造を有してなり、前記時刻情報補正部の補正結果の時刻を、第2の同期クロックに載せて転送するにあたり発生する遅延を第3の遅延情報として検出する遅延検出手段と、
前記遅延検出手段の検出した第3の遅延情報に基づき、前記時刻情報補正部によって補正した時刻を補正する補正手段と
を有することを特徴とする請求項11記載の時刻情報受信局。
【請求項13】
クロック同期フレームに、時刻情報を格納する工程と、
前記時刻情報の示す時刻と前記クロック同期フレームに格納される時刻情報の示す時刻との時間的ズレと、前記時刻情報を格納するクロック同期フレームと通信路を介して折り返されてきたクロック同期フレームとの時間的ズレとを、遅延として検出する工程と、
通信路を介して上位局からクロック同期フレームを受信する工程と、
前記クロック同期フレームに格納されていた時刻情報と、事象を観測して得たデータとを関連付ける工程と、
前記データに関連付けられた時刻情報を、前記遅延に基づき補正する工程と
を有することを特徴とする時刻付与観測方法。
【請求項14】
時刻情報を送信する上位局は、
時刻情報を生成又は取得すると共に、前記時刻情報を生成したクロック同期フレームに所定間隔で挿入し、
前記時刻情報の生成又は取得タイミングから前記クロック同期フレームに前記時刻情報を挿入するタイミングの遅延を検出して第1の遅延情報を生成すると共に、前記クロック同期フレームに前記第1の遅延情報を挿入し、
通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたクロック同期フレームと送信するクロック同期フレームとのクロック同期フレーム間の遅延を検出すると共に、前記クロック同期フレームに前記第2の遅延情報を挿入し、
時刻情報を受信する下位局は、
通信路を介して、時刻情報と第1の遅延情報と第2の遅延情報とを格納したクロック同期フレームを受信すると共に、前記上位局にクロック同期フレームを折り反し送出し、
受信したクロック同期フレームに格納されている前記時刻情報を、前記第1の遅延情報および前記第2の遅延情報に基づき、生成又は取得された正確な時刻に補正し、
前記補正した時刻情報を観測対象の事象を計測して得たデータに付与する
ことを特徴とする時刻付与観測方法。
【請求項15】
時刻情報を送信する上位局は、
時刻情報を生成又は取得すると共に、前記時刻情報を生成したクロック同期フレームに挿入し、
前記時刻情報の生成又は取得タイミングから前記クロック同期フレームに前記時刻情報を挿入するタイミングの遅延を検出して第1の遅延情報を生成し、
通信路を介して通信先から折り返し送信されてきたクロック同期フレームと送信するクロック同期フレームとのクロック同期フレーム間の遅延を検出し、
時刻情報を受信する下位局は、
通信路を介して、時刻情報を格納したクロック同期フレームを受信すると共に、観測対象の事象を計測して得たデータに前記時刻情報を関連付けたデータを含むクロック同期フレームを折り反し送出し、
前記上位局は、
受信したクロック同期フレームに格納されている前記時刻情報を、前記第1の遅延情報および前記第2の遅延情報に基づき、生成又は取得された正確な時刻に補正する
ことを特徴とする時刻付与観測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−80885(P2011−80885A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234001(P2009−234001)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、「地震・津波監視システム構築の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【出願人】(390001454)NECネッツエスアイ株式会社 (36)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】