説明

時刻情報受信装置及びプログラム

【課題】 送信所が標準電波を送信してから実際に内部時計の時刻を修正するまでの間に生じる遅延の考慮を受信場所に応じて適切に行って、内部時計の時刻修正を行うことのできる時刻情報受信装置等を実現すること。
【解決手段】 受信場所である現在位置に最も近い最近接送信所2を選択し、受信場所と最近接送信所2との距離に基づいて調整時間を決定する。そして、最近接送信所2から送信される時刻データを含む標準電波f1を受信して時刻データを取得する。取得した時刻データ基づいて内部時刻を修正する際に、調整時間を加味した修正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部時刻の修正を行う時刻情報受信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各国(例えば日本、アメリカ、イギリス、ドイツ等)では、時刻コード、即ちタイムコード入り長波標準電波(以下、単に「標準電波」という。)が送出されている。我が国(日本)では、2つの送信所(福島県及び佐賀県)より、図12に示すようなフォーマットの標準タイムコードで振幅変調された40kHz及び60kHzの標準電波が送出されている。図12によれば、このタイムコードは、正確な時刻の分の桁が更新される毎、すなわち1分毎に、1周期60秒のフレームで送出される。このタイムコードを受信し、これにより計時回路の時刻データ(以下、適宜「内部時刻」という。)を修正する、いわゆる電波時計と呼ばれる時刻情報受信装置が知られている。
【0003】
従来、電波時計は、送信所から送信されている時刻データを含む標準電波をアンテナ等の電波受信手段により受信して、受信した標準電波に含まれる時刻データに基づいて、計時回路部等が計時している現在時刻を修正する処理動作を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−270370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、送信所が標準電波を送信したタイミングと、送信されてきた標準電波を受信し、タイムコードを再生した後、実際に時刻を修正するタイミングとは物理的に同一ではなく遅れが生じる。従来の時刻情報受信装置は、この遅れとして一定の時間を考慮して時刻修正している。しかし、検波回路の処理による遅延は、受信信号レベル、信号のふらつきによる強弱、送信所からの距離等によって様々に変化するため、一定ではない。
【0005】
例えば、図13は、同じ送信所から送信された標準電波である送信電波f131を受信した場合でも、受信場所に応じて検波される信号波形に生じる遅延が異なることを示している。具体的には、受信地域1において送信電波f131を受信して検波した検波信号波形f132は、送信電波f131に対して時間DT1分の遅延が生じた波形である。一方、受信地域2において送信電波f131を受信して検波した検波信号波形f133は、送信電波f131に対して時間DT2分の遅延が生じた波形である。このように、受信場所が異なることによって、遅延時間の長さが異なる。
【0006】
受信場所によって遅延時間の長さが異なる要因には上述した様々なものがあるが、中でも、送信所から受信場所までの距離の長さは大きな要因の1つである。すなわち、距離が長くなることによって伝播遅延が生じるだけでなく、伝播してくる標準電波の信号レベルが徐々に弱くなるため、更なる遅延を引き起こすことになる。具体的には、受信信号の信号レベルが低下することによって、検波回路におけるAGC(Auto Gain Control)制御が働くこととなるが、AGC制御はフィードバック制御であるため電波時計内部の処理に遅延が発生するといった問題である。
【0007】
以上の問題に鑑みて本発明はなされたものであり、その目的とするところは、送信所が標準電波を送信してから実際に内部時計の時刻を修正するまでの間に生じる遅延の考慮を受信場所に応じて適切に行って、内部時計の時刻修正を行うことのできる時刻情報受信装置等を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の時刻情報受信装置は、
時刻データを含む標準電波を受信する受信手段(例えば、図2又は図8の電波受信回路部16)と、
現在時刻を計時する計時手段(例えば、図2又は図8の計時回路部20)と、
現在位置を取得する現在位置取得手段(例えば、図2のCPU10;図6のステップD3、図2あるいは図4の地域コードテーブル284、又は図8の位置データ取得部24)と、
予め前記標準電波を送信する送信所として設定された複数の送信所の中から一の送信所を選択する送信所選択手段(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD5、又は図10のステップE7、図8あるいは図9の送信所テーブル384)と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置と前記送信所選択手段により選択された送信所との位置関係に基づいて調整時間を決定する調整時間決定手段(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD9、又は図10のステップE11)と、
前記受信手段により受信された標準電波に含まれる時刻データによる前記計時手段で計時されている現在時刻の修正を、前記調整時間決定手段により決定された調整時間を加味して行う調整修正手段(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD15、又は図10のステップE15)と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の時刻情報受信装置において、
前記送信所選択手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に基づいて一の送信所を選択する手段(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD5、又は図10のステップE7、図8あるいは図9の送信所テーブル384)であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の時刻情報受信装置において、
前記調整時間決定手段により決定された調整時間を、ユーザの指示入力に従って補正する調整時間補正手段(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD19、又は図10のステップE19)を更に備え、
前記調整修正手段は、前記調整時間補正手段により補正された調整時間を加味して現在時刻の修正を行う手段(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD15、又は図10のステップE15)である、
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の時刻情報受信装置において、
前記調整時間決定手段は、前記受信手段により受信された標準電波の信号レベルが所定の強度条件を満たす場合に、前記調整時間を予め設定された強度良好用時間に決定し、前記強度条件を満たさない場合に、前記調整時間を前記現在位置取得手段により取得された現在位置と前記送信所選択手段により選択された送信所との位置関係に基づいて決定する手段(例えば、図8のCPU10;図11のステップF11〜F17)であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の時刻情報受信装置において、
前記現在位置取得手段は、所定時刻にGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて現在地を算出して再設定する現在地定期更新手段(例えば、図8のCPU10;図10のステップE5)を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明のプログラムは、
時刻データを含む標準電波を受信する受信手段(例えば、図2又は図8の電波受信回路部16)と、現在時刻を計時する計時手段(例えば、図2又は図8の計時回路部20)と、を備えたコンピュータに、
現在位置を取得する現在位置取得機能(例えば、図2のCPU10;図6のステップD3、図2あるいは図4の地域コードテーブル284、又は図8の位置データ取得部24)と、
予め前記標準電波を送信する送信所として設定された複数の送信所の中から一の送信所を選択する送信所選択機能(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD5、又は図10のステップE7、図8あるいは図9の送信所テーブル384)と、
前記現在位置取得機能により取得された現在位置と前記送信所選択機能により選択された送信所との位置関係に基づいて調整時間を決定する調整時間決定機能(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD9、又は図10のステップE11)と、
前記受信手段により受信された標準電波に含まれる時刻データによる前記計時手段で計時されている現在時刻の修正を、前記調整時間決定機能により決定された調整時間を加味して行う調整修正機能(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD15、又は図10のステップE15)と、
を実現させることを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の時刻情報受信装置は、
時刻データを含む標準電波を受信する受信手段(例えば、図2又は図8の電波受信回路部16)と、
現在時刻を計時する計時手段(例えば、図2又は図8の計時回路部20)と、
現在位置を取得する現在位置取得手段(例えば、図2のCPU10;図6のステップD3、図2あるいは図4の地域コードテーブル284、又は図8の位置データ取得部24)と、
この現在位置取得手段により取得された現在位置と前記標準電波を送信する送信所との間の距離に基づいて、前記計時手段で計時されている現在時刻の修正を行う時刻修正手段(例えば、図2又は図8のCPU10;図6のステップD9、又は図10のステップE11、図6のステップD15、又は図10のステップE15)と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、受信手段により受信された標準電波に含まれる時刻データに、調整時間決定手段により決定された調整時間を加味して、調整修正手段が、計時手段に計時されている現在時刻を修正することになる。また、調整時間決定手段は、現在位置取得手段により取得された現在位置と、送信所選択手段により選択された送信所との位置関係に基づいて調整時間を決定する。従って、受信場所である現在位置と選択された送信所との位置関係に応じた調整時間が決定されるため、受信場所に応じた適切な遅延時間を考慮に入れた時刻修正を行うことができる。請求項6に記載の発明によっても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が発揮される。
【0016】
また、請求項7に記載の発明によれば、現在位置取得手段により取得された現在位置と標準電波を送信する送信所との間の距離に基づいて、計時手段で計時されている現在時刻の修正を行うことができる。このため、現在位置と送信所との間の距離に応じた時刻修正を確実かつ精確に行うことができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、上記送信所選択手段により、上記現在位置取得手段により取得された現在位置に基づいて、一の送信所が選択される。従って、受信場所である現在位置に関連する送信所が選択されることにより、受信場所と送信所との位置関係に基づく適切な調整時間が決定されて、受信場所に応じた適切な遅延時間を考慮に入れた時刻修正を行うことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ユーザの指示入力によって調整時間補正手段が、調整時間決定手段により決定された調整時間を補正する。遅延時間は、受信場所によって異なるが、その遅延の要因も様々であることは上述した通りである。従って、受信場所によっては、調整時間決定手段による調整時間の決定では対応できない場合もあり得る。このような場合、ユーザは、指示入力をすることで適切な調整時間に補正して、その受信場所の状況に応じた適切な遅延時間を考慮に入れた時刻修正を行わせることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、上記受信手段により受信された標準電波の信号レベルが所定の強度条件を満たす場合には、上記調整時間決定手段により、調整時間が予め設定された強度良好用時間とされる。従って、受信信号レベルが所定の強度条件を満たす場合には、例えば、受信場所が送信所から所定範囲内の近距離にあると考える。従って、調整時間を近距離の場合の強度良好用時間とすることで、受信場所と送信所との距離を算出することなく迅速に適切な調整時間を決定することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、現在位置取得手段が有する現在地定期更新手段が、所定時刻にGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて現在地を算出して再設定する。従って、移動中等、受信場所である現在位置が変化する場合にも、現在位置が定期的に更新されて最新の状況を把握することにより、常に適切な調整時間を決定して、現時点の受信場所に応じた適切な遅延時間を考慮に入れた時刻修正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下においては、本発明の時刻情報受信装置を電波時計に適用した場合について説明するが、本発明を適用可能な形態が、これに限定されるものではない。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明を適用した第1実施形態の電波時計1の動作の概要を説明するための図である。同図は、送信所2から40kHz(又は60kHz)の標準電波f1が送信されて、各電波時計1がそれぞれの受信場所において標準電波f1を受信することを示している。標準電波f1を受信した電波時計1は、タイムコードを生成して計時部が計時している現在時刻を修正する。
【0023】
図2は、第1実施形態の電波時計1の内部構成を示すブロック図である。同図によれば、電波時計1は、CPU(Central Processing Unit)10、入力部12、表示部14、電波受信回路部16、タイムコード生成回路部18、計時回路部20、発振回路部22、RAM(Random Access Memory)260、及びROM(Read Only Memory)280を備えて構成される。発振回路部22を除く各部はバス30によって接続されており、発振回路部22は計時回路部20に接続されている。
【0024】
CPU10は、所定のタイミングあるいは入力部12から入力された操作入力に応じて、ROM280に格納された各種プログラムを読み出してRAM260に展開し、このプログラムに基づいて電波時計1内の各部における動作を統括的に制御する。
【0025】
特に、CPU10は、第一時刻調整処理を実行して、送信所と受信場所との位置関係に基づいた調整時間を算出する。また、CPU10は、電波受信回路部16を制御して受信させた標準電波を受けてタイムコード生成回路部18により生成された時刻データに基づいて、計時回路部20が計時している内部時刻の修正を行う。但し、この内部時刻の修正の際に、算出した調整時間を加味して内部時刻の修正を行う。
【0026】
入力部12は、電波時計1に各種機能を実行させるためのスイッチ等で構成される。これらスイッチがユーザにより操作された時には、対応するスイッチの操作信号をCPU10に出力する。
【0027】
表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)やセグメント型ディスプレイ等で構成された表示装置である。そして、CPU10から出力される表示データ、例えば、計時回路部20で計時されている内部時刻等をデジタル表示する。
【0028】
電波受信回路部16は、スーパーヘテロダイン方式等の受信機であり、標準電波の受信を開始した直後に高速なAGC動作により、受信利得を調整し、速やかに該当する周波数信号をタイムコード生成回路部18に出力する。そして、タイムコード生成回路部18は、電波受信回路部16から出力された信号に基づいて、図12に示したフォーマットを有する標準タイムコードを生成してCPU10に出力する。
【0029】
計時回路部20は、発振回路部22から出力されるクロック信号を計数して内部時刻データとし、この内部時刻データをCPU10へ出力する。発振回路部22は、水晶発信機等で構成され、常時一定周波数のクロック信号を計時回路部20へ出力する。
【0030】
RAM260は、CPU10が第一時刻調整処理を実行する際に、書き込まれるあるいは読み出される複数の処理データのメモリエリアを有している。具体的には、最近接送信所262、調整時間264、及び受信開始時刻266等のメモリエリアである。
【0031】
最近接送信所262は、第一時刻調整処理において、ユーザによる入力部12の操作入力によって入力された地域コードデータに基づいて選択される送信所の送信所データである。図3に、地域コード入力画面141の一例を示す。地域コード入力画面141は、コード入力ウィンドウ142を有しており、ユーザによる入力部12の操作入力によって入力されたコード番号を表示する。そして、コード番号が入力された後に決定指示が入力された場合には、CPU10は、コード入力ウィンドウ142に表示させたコード番号を地域コードとし、この地域コードに基づいて送信所を選択して最近接送信所262としてRAM260に記憶させる。
【0032】
調整時間264は、第一時刻調整処理において、最近接送信所262と地域コードによって表される受信場所との位置関係に基づいて決定される時間データであり、単位は「msec」である。本実施の形態では、例えば、最近接送信所262と受信場所との距離の大きさによって、その位置関係を「近」、「中」、「遠」の3つに分類している。具体的には、500km未満である場合には「近」に、500km以上1000km未満である場合には「中」に、1000km以上である場合には「遠」に、それぞれ分類される。また、各位置関係には予め所定の時間が対応付けられているものとする。例えば、CPU10は、「近」の場合には調整時間264を“1”に、「中」の場合には調整時間264を“2”に、「遠」の場合には調整時間264を“3”に、決定してRAM260に記憶させる。なお、調整時間264は、送信所2から電波が送信された時点から、該電波が電波時計1において受信されて検波信号がCPU10に出力され、内部時刻を修正するまでに要する時間として予め設定された時間を表している。
【0033】
また、ユーザによる調整時間264の修正指示の入力があった場合には、入力されたデータを調整時間264として決定する。図5に、調整時間修正画面143の一例を示す。調整時間修正画面143は、時間入力ウィンドウ144を有しており、ユーザによる入力部12の操作入力によって入力された時間データを表示する。そして、時間データが入力された後に決定指示が入力された場合には、CPU10は、時間入力ウィンドウ144に表示させた時間データを調整時間264としてRAM260に記憶させる。
【0034】
受信開始時刻266は、第一時刻調整処理開始時に設定される時刻データであり、計時回路部20が計時している内部時刻を修正するための一連の電波受信処理を開始する時刻である。
【0035】
ROM280は、各種初期設定値や初期プログラムの他、電波時計1が有する各機能を実現するためのプログラムやデータ等を格納する領域である。特に、本実施形態に係る第一時刻調整処理を実行するためのプログラムあるいはデータである、第一時刻調整処理プログラム282及び地域コードテーブル284が格納されている。第一時刻調整処理プログラム282は、第一時刻調整処理を実行するためのプログラムである。すなわち、CPU10は、第一時刻調整処理プログラム282を読み出してRAM260に展開し、第一時刻調整処理を実行する。
【0036】
地域コードテーブル284は、第一時刻調整処理において、最近接送信所262を決定する際に参照するためのテーブルである。図4に、地域コードテーブル284の構成例を示す。地域コードテーブル284には、地域コード、地域名、及び各送信所との位置関係が対応付けられて記憶されている。各送信所との位置関係には、調整時間264の説明で述べた通り、近い位置関係の順に「近」、「中」、「遠」の3つの分類がある。例えば、地域コード「001」には、福島送信所との距離「中」と、佐賀送信所との距離「遠」とが対応付けられている。従って、第一時刻調整処理においては、ユーザによって入力された地域コードが「001」であった場合には、最近接送信所262として福島送信所が選択されて、位置関係が「中」であることによって調整時間264が2msecに決定されることになる。
【0037】
次に、第一時刻調整処理の動作について、図6を参照しながら詳細に説明する。図6は、第一時刻調整処理のフローチャートを示している。CPU10は、初期設定として予め設定されている時刻あるいはユーザの操作入力によって入力された時刻を受信開始時刻266として設定して(ステップD1)、第一時刻調整処理を開始する。
【0038】
CPU10は、入力部12による地域コードの入力を検出した場合(ステップD3;Yes)には、地域コードテーブル284を参照して、入力された地域コードに対応付けられている各送信所との位置関係の中から、最も近い位置関係の送信所を最近接送信所262に選択し(ステップD5)、この送信所との距離が「遠」「近」「中」何れであるかを取得する(ステップD7)。次いで、CPU10は、取得した距離に基づいて調整時間264を決定する(ステップD9)。ただし、入力部12による地域コードの入力を検出しなかった場合(ステップD3;No)には、ステップD5〜D9の処理は実行しない。
【0039】
次に、CPU10は、内部時刻が受信開始時刻266になったことを検出した場合(ステップD11;Yes)には、最近接送信所262が送信する標準電波の周波数に基づいて電波受信回路部16を制御して、標準電波の受信動作を開始させるとともに、受信された信号に基づいて、タイムコード生成回路部18にタイムコードを生成させる(ステップD13)。そして、CPU10は、生成されたタイムコードが示す時刻に調整時間264を加味して内部時刻を修正する(ステップD15)。尚、ステップD11において、内部時刻が受信開始時刻266になっていなかった場合(ステップD11;No)には、ステップD13〜D15の処理は実行しない。
【0040】
また、CPU10は、調整時間264を修正する指示入力を検出した場合(ステップD17;Yes)には、ユーザによる入力部12の操作入力によって入力された時間データを調整時間264としてRAM260に記憶させる(ステップD19)。ただし、調整時間264を修正する指示入力を検出しなかった場合(ステップD17;No)には、ステップD19の処理は実行しない。ステップD19の処理の後、CPU10は、ステップD3の処理を続行してステップD3〜D19の処理を繰り返し実行する。
【0041】
以上、第1実施形態によれば、電波時計1は、地域コードテーブル284を参照して、ユーザにより入力された地域コードに対応付けられた受信場所である地域と、各送信所との位置関係を取得し、最も近い位置関係にある送信所を最近接送信所262として選択して、最近接送信所262との位置関係に基づいて調整時間264を決定する。そして、標準電波を受信して内部時刻を修正する際、標準電波から取得される時刻データに調整時間264を加味して内部時刻を修正する。従って、受信場所と最近接送信所262との距離に基づいて適切な調整時間264が決定されて、受信場所に応じた適切な遅延時間を考慮して内部時刻の修正を行うことができる。また、調整時間264は、ユーザによる修正指示入力があった場合には、この入力に従って再決定されて、内部時刻を修正する際に、再決定された調整時間264が加味されることとなる。従って、上述したように、遅延を生じさせる様々な要因は受信場所によって異なるため、内部的に決定する調整時間264では対応できない場合にも、ユーザによる指示入力に従った調整時間264を採用することによって対処できる。
【0042】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ユーザによって入力された地域コードから受信場所に関するデータを取得する場合の実施形態について述べたが、第2実施形態は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される信号に基づいて、受信場所である現在位置を算出して取得する場合の実施形態である。
【0043】
図7は、本発明を適用した第2実施形態の電波時計1の動作の概要を説明するための図である。第1実施形態の電波時計1との違いは、GPS衛星から衛星の位置データを含むGPS信号f2を電波時計1が受信して、GPS信号f2に含まれる位置データに基づいて、電波時計1が位置する現在地の緯度及び経度を算出して現在位置を取得することである。
【0044】
図8は、第2実施形態の電波時計1の内部構成を示すブロック図である。なお、図2に示した電波時計1と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。図8によれば、第1実施形態と異なるのは、位置データ取得部24と、RAM360に記憶される現在位置362と、処理開始時刻364と、ROM380に格納されている第二時刻調整処理プログラム382と、送信所テーブル384と、である。
【0045】
位置データ取得部24は、GPSアンテナ(図示せず)を有しており、このGPSアンテナによりGPS衛星3から受信したL1帯のC/Aコードを復調・解読して現在位置の緯度及び経度を算出する。この算出された緯度及び経度から成る位置データは、現在位置362としてRAM360に記憶される。すなわち、現在位置362は、受信場所である現在位置の位置データである。
【0046】
処理開始時刻364は、第二時刻調整処理において、内部時刻を修正するための一連の処理を定期的な実行を開始するために設定された時刻データである。例えば、毎日午前2時や毎週金曜日午前3時等の時刻データが挙げられる。
【0047】
第二時刻調整処理プログラム382は、CPU10に読み出されて、第二時刻調整処理として実行されるプログラムである。第二時刻調整処理は、次のような処理である。すなわち、設定した処理開始時刻364になると、GPS信号f2を受信して現在位置を取得して、現在位置に最も近い最近接送信所と現在位置との位置関係に基づいた調整時間を算出する。また、最近接送信所から送信された標準電波を受信してタイムコードを生成し、生成したタイムコードに算出した調整時間を加味して内部時刻を修正する。
【0048】
送信所テーブル384は、第二時刻調整処理において、現在位置362に最も近い送信所を選択する際に参照されるテーブルである。図9に、送信所テーブル384の構成例を示す。送信所テーブル384には、各送信所の所在地と、経度及び緯度から成る位置データとが対応付けられている。これにより、現在位置362と各送信所との距離を算出して、現在位置362に最も近い送信所を決定することができる。例えば、現在位置362として、緯度「35°0′0″N」及び経度「140°0′0″E」(東京)が記憶されている場合には、最も近い送信所に緯度「37°22′10″N」及び経度「140°51′9″E」である福島(日本)が選択されることとなる。
【0049】
次に、第二時刻調整処理の動作について、図10を参照しながら詳細に説明する。図10は、第二時刻調整処理のフローチャートを示す図である。CPU10は、初期設定として予め設定されている時刻あるいはユーザの操作入力によって入力された時刻を処理開始時刻364として設定して(ステップE1)、第二時刻調整処理を開始する。
【0050】
CPU10は、内部時刻が処理開始時刻364になったことを検出した場合(ステップE3;Yes)には、位置データ取得部24を制御して受信したGPS信号に基づいて、現在位置の緯度及び経度を算出し、現在位置362としてRAM360に記憶させる(ステップE5)。そして、CPU10は、送信所テーブル384を参照して、現在位置362に最も近い送信所を1つ選択し、最近接送信所262としてRAM360に記憶させる(ステップE7)。現在位置362と最近接送信所262とから受信場所と送信所との距離を算出し(ステップE9)、算出した距離に基づいて調整時間を決定して調整時間264としてRAM360に格納する(ステップE11)。ステップE13〜E19の処理は、第一時刻調整処理と同様であるため説明を省略する。
【0051】
以上、第2実施形態によれば、電波時計1は、GPS信号に基づいて受信場所である現在位置の位置データを算出し、送信所テーブル384を参照して、複数の送信所の中から受信場所に最も近い送信所を最近接送信所262として選択して、算出した受信場所と最近接送信所262との距離に基づいて調整時間264を決定する。そして、標準電波を受信して内部時刻を修正する際、標準電波から取得される時刻データに調整時間264を加味して内部時刻を修正する。従って、乗り物に乗って移動している状況等、受信場所である現在位置が刻々と変化するような場合にも、現在位置を定期的に更新して最新の状況を把握することにより、現時点における受信場所と最近接送信所262との距離に基づいて適切な調整時間264を決定して、受信場所に応じた適切な遅延時間を考慮に入れた内部時刻の修正を行うことができる。
【0052】
<第2実施形態の変形例>
なお、第二時刻調整処理において、受信された電波の信号レベルが予め定められた閾値より大きいか否かを判定し、受信信号レベルが閾値より大きい場合に調整時間264を予め定めておいた所定の時間(強度良好用時間)に決定することとしてもよい。例えば、受信信号レベルが60dB以上であった場合、一般的に受信場所と送信所との距離は比較的近距離であると推定できる。従って、60dB以上の場合には、標準電波が伝播する時間等を考慮しても、調整時間264を所定の短時間(例えば、1msec)に決定すればよいと考えられる。このようにすることで、受信場所と送信所との距離を算出する処理を省略できる。以下、具体的な処理の流れについて図11を参照しながら説明する。
【0053】
図11に示したフローチャートの処理が、図10に示した第二時刻調整処理と異なっているのは、ステップF9〜F13の処理である。ステップF1〜F7の処理は、ステップE1〜E7の処理と同様にして、受信したGPS信号f2に基づいて現在地の位置データを算出して現在位置362を取得し、送信テーブル384を参照して最も近い送信所を選択する。そして、電波受信回路部16を制御して電波を受信し(ステップF9)、受信した信号レベルが閾値以下か否かを判定して閾値より大きいと判定した場合(ステップF11;No)には、調整時間264を予め定めておいた所定の時間、例えば、1msec等に決定してRAM360に記憶させる(ステップF13)。受信した信号レベルが閾値以下であると判定した場合(ステップF11;Yes)には、ステップE9〜E11の処理と同様の処理を実行する(ステップE15〜E17)。以降の処理は、上述した第2実施形態の第二時刻調整処理と同様である。
【0054】
以上、本発明を適用した2つの実施形態について説明したが、本発明が適用可能な実施形態はこれらに限られない。例えば、第1実施形態において、地域コードを入力するとして説明したが、地域名や現在地の座標を入力するとしてもよい。また、第1実施形態で、受信場所と送信所との距離の分類を「遠」「中」「近」の3段階としたが、4段階以上の分類としてもよい。その他、本実施形態における電波時計1の細部構成及び詳細動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を適用した電波時計の第1実施形態の概要を説明するための図である。
【図2】第1実施形態の電波時計の内部構成を示すブロック図である。
【図3】地域コード入力画面の表示画面例を示す図である。
【図4】地域コードテーブルのデータ構成を示す図である。
【図5】調整時間入力画面の表示画面例を示す図である。
【図6】第一時刻調整処理のフローチャートである。
【図7】本発明を適用した電波時計の第2実施形態の概要を説明するための図である。
【図8】第2実施形態の電波時計の内部構成を示すブロック図である。
【図9】送信所テーブルのデータ構成を示す図である。
【図10】第二時刻調整処理のフローチャートである。
【図11】第2実施形態の変形例で実行される第二時刻調整処理のフローチャートである。
【図12】標準電波のタイムコードフォーマットを示す図である。
【図13】従来の電波時計における検波信号波形の遅延を説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
1 電波時計
24 位置データ取得部
260、360 RAM
262 最近接送信所
264 調整時間
266 受信開始時刻
362 現在位置
364 処理開始時刻
280、380 ROM
282 第一時刻調整処理プログラム
284 地域コードテーブル
382 第二時刻調整処理プログラム
384 送信所テーブル
2 送信所
3 GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻データを含む標準電波を受信する受信手段と、
現在時刻を計時する計時手段と、
現在位置を取得する現在位置取得手段と、
予め前記標準電波を送信する送信所として設定された複数の送信所の中から一の送信所を選択する送信所選択手段と、
前記現在位置取得手段により取得された現在位置と前記送信所選択手段により選択された送信所との位置関係に基づいて調整時間を決定する調整時間決定手段と、
前記受信手段により受信された標準電波に含まれる時刻データによる前記計時手段で計時されている現在時刻の修正を、前記調整時間決定手段により決定された調整時間を加味して行う調整修正手段と、
を備えることを特徴とする時刻情報受信装置。
【請求項2】
前記送信所選択手段は、前記現在位置取得手段により取得された現在位置に基づいて一の送信所を選択する手段であることを特徴とする請求項1に記載の時刻情報受信装置。
【請求項3】
前記調整時間決定手段により決定された調整時間を、ユーザの指示入力に従って補正する調整時間補正手段を更に備え、
前記調整修正手段は、前記調整時間補正手段により補正された調整時間を加味して現在時刻の修正を行う手段である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の時刻情報受信装置。
【請求項4】
前記調整時間決定手段は、前記受信手段により受信された標準電波の信号レベルが所定の強度条件を満たす場合に、前記調整時間を予め設定された強度良好用時間に決定し、前記強度条件を満たさない場合に、前記調整時間を前記現在位置取得手段により取得された現在位置と前記送信所選択手段により選択された送信所との位置関係に基づいて決定する手段であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の時刻情報受信装置。
【請求項5】
前記現在位置取得手段は、所定時刻にGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて現在地を算出して再設定する現在地定期更新手段を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の時刻情報受信装置。
【請求項6】
時刻データを含む標準電波を受信する受信手段と、現在時刻を計時する計時手段と、を備えたコンピュータに、
現在位置を取得する現在位置取得機能と、
予め前記標準電波を送信する送信所として設定された複数の送信所の中から一の送信所を選択する送信所選択機能と、
前記現在位置取得機能により取得された現在位置と前記送信所選択機能により選択された送信所との位置関係に基づいて調整時間を決定する調整時間決定機能と、
前記受信手段により受信された標準電波に含まれる時刻データによる前記計時手段で計時されている現在時刻の修正を、前記調整時間決定機能により決定された調整時間を加味して行う調整修正機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項7】
時刻データを含む標準電波を受信する受信手段と、
現在時刻を計時する計時手段と、
現在位置を取得する現在位置取得手段と、
この現在位置取得手段により取得された現在位置と前記標準電波を送信する送信所との間の距離に基づいて、前記計時手段で計時されている現在時刻の修正を行う時刻修正手段と、
を備えることを特徴とする時刻情報受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−184203(P2006−184203A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380193(P2004−380193)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】