説明

時刻表示装置及び時刻表示装置の駆動方法

【課題】電気泳動表示パネルを備えた時刻表示装置であって、電気泳動表示パネルの表示特性の劣化が回避可能な、時間精度測定モードを有した時刻表示装置の提供。
【解決手段】時間精度測定モードでは、タイミングM10で、書き換え期間Ta(前半Ta1、後半Ta2)において、表示の書き換えが行われ、セグメント5XAに相当するセグメント5D(図2参照)が、黒で表示され、休止期間Tb’後、タイミングM20からタイミングM30までの期間Tcにおいて、駆動信号SEG1,SEG2,SEG3及び駆動信号COMにより、各セグメント電極14(図4参照)と共通電極25(図4参照)とに、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧(0V)と、互いに同相且つ同電位であって第1の駆動電圧と異なる電位の第2の駆動電圧(+12V)とが、基準信号CLに同期して、交互に繰り返して印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示パネルを用いた時刻表示装置及び時刻表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気泳動現象を利用した電気泳動表示パネルを備えた表示装置が提案されている。
この種の電気泳動表示パネルは、電極間に、例えば白色と黒色の電気泳動粒子を封入した電気泳動層(以下、電気泳動素子ともいう)を設け、電極間にプラス電位またはマイナス電位の駆動電圧を印加することにより、白黒の電気泳動粒子のいずれかを表示面側へ移動させ、表示面の表示色を白や黒にすることができる。
上記の電気泳動表示パネルを備えた表示装置は、腕時計などの時刻表示装置としても用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−79170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、時刻表示装置には、表示された時刻の進み遅れの程度である時間精度を、クオーツテスターなどと呼ばれる時間精度測定器によって測定するための時間精度測定モード(歩度測定モードなどともいう)を備えているものがある。
例えば、液晶表示パネルを備えた時刻表示装置では、この時間精度測定モードにおいて、時間精度測定用に安定した電界を継続して発生させるために、通常表示状態である通常モードに移行されるまでの間、すべての電極間に互いに逆相の交流駆動電圧が印加され続けることにより、全表示部分が継続して点灯されている。
【0005】
しかし、電気泳動表示パネルでは一般に表示の書き換え時に対向する電極に互いに逆相と同相交互の駆動電圧を印加する。
そのため、上記の時間精度測定モードのような連続的な駆動を、電気泳動表示パネルを備えた時刻表示装置に適用すると、以下のような問題が発生する虞がある。
(1)本来、表示の保持性により、表示の書き換え時のみに駆動電圧の印加が必要な電気泳動表示パネルの対向する電極に、互いに逆相と同相交互の駆動電圧が印加され続けて、全表示部分が継続して表示されていると、焼き付きのような状態となり、電気泳動表示パネルの応答性、コントラストなどの表示特性(以下、単に表示特性という)が著しく劣化する。
(2)1つの電極に同方向の駆動電圧が断続的に印加され続けて、各表示部分が白または黒などの同一色で継続して表示駆動されていると、電気泳動表示パネルのDCバランスが崩れて、電極を構成している例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide)膜などの透明電極が腐食され、電気泳動表示パネルの表示特性が著しく劣化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる時刻表示装置は、対向する電極間に電気泳動素子を有する電気泳動表示パネルと、前記両電極に前記電気泳動素子を駆動する駆動電圧を印加して前記電気泳動表示パネルの表示を制御し、少なくとも時刻を表示させる表示制御部と、前記時刻の基準となる時間標準源と、を備え、前記時間標準源から生成された基準信号に同期して、前記表示制御部が前記両電極に、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって前記第1の駆動電圧の電位と異なる電位の第2の駆動電圧とを交互に印加する、時間精度測定モードを有していることを特徴とする。
【0008】
これによれば、時刻表示装置は、時間標準源から生成された基準信号に同期して、表示制御部が両電極に、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって第1の駆動電圧の電位と異なる電位の第2の駆動電圧とを交互に印加する、時間精度測定モードを有している。
このことから、時刻表示装置は、時間精度測定モードにおいて、電気泳動表示パネルの両電極間に電位差が生じないことにより、上記の焼き付きのような状態や、DCバランスの崩れによるITO膜などの透明電極の腐食が抑制され、電気泳動表示パネルの表示特性の劣化を回避できる。
加えて、時刻表示装置は、電気泳動表示パネルの両電極に、第1の駆動電圧と、第1の駆動電圧の電位と異なる電位の第2の駆動電圧とを交互に印加することから、電気泳動表示パネル全体としては、第1の駆動電圧の電位と第2の駆動電圧の電位との電位差により電界が発生する。
これにより、時刻表示装置は、時間精度測定モードにおいて、時間精度測定器による時間精度測定が可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる時刻表示装置は、前記電気泳動表示パネルがセグメント表示パネルまたはアクティブマトリクス表示パネルであることが好ましい。
【0010】
これによれば、時刻表示装置は、電気泳動表示パネルがセグメント表示パネルまたはアクティブマトリクス表示パネルであることから、多様な表示の形態が選択可能となる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる時刻表示装置は、前記時間精度測定モードでは、前記電気泳動表示パネルに、前記時間精度測定モードであることを示す情報が表示されていることが好ましい。
【0012】
これによれば、時刻表示装置は、時間精度測定モードにおいて、時間精度測定モードであることを示す情報が表示されていることから、時間精度測定モードであることを、より確実に周知できる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる時刻表示装置は、前記時間精度測定モードでは、所定の周期で、前記電気泳動表示パネルの表示の書き換えが行われることが好ましい。
【0014】
これによれば、時刻表示装置は、時間精度測定モードにおいて、所定の周期で、電気泳動表示パネルの表示の書き換えが行われることから、電気泳動表示パネルの表示状態の劣化を回避できる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる時刻表示装置は、前記時間精度測定モードでは、前記電気泳動表示パネルの前記両電極に印加される前記第1の駆動電圧と前記第2の駆動電圧との電位差が、通常の表示状態である通常モードにおける前記駆動電圧間の電位差より、大きいことが好ましい。
【0016】
これによれば、時刻表示装置は、時間精度測定モードにおいて、両電極に印加される第1の駆動電圧と第2の駆動電圧との電位差が、通常モードにおける駆動電圧間の電位差より大きい。
このことから、時刻表示装置は、電気泳動表示パネル全体に発生する電界が、通常モードより強くなることにより、時間精度測定器による時間精度測定が、より確実に行われる。
【0017】
[適用例6]本適用例にかかる時刻表示装置の駆動方法は、対向する電極間に電気泳動素子を有する電気泳動表示パネルと、前記両電極に前記電気泳動素子を駆動する駆動電圧を印加して前記電気泳動表示パネルの表示を制御し、少なくとも時刻を表示させる表示制御部と、前記時刻の基準となる時間標準源と、を備えた時刻表示装置の駆動方法であって、前記時刻表示装置が、時間精度測定モードを有し、通常の表示状態である通常モードから前記時間精度測定モードに移行する第1工程と、前記時間精度測定モードにおいて、前記時間標準源から生成された基準信号に同期して、前記表示制御部が前記両電極に、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって前記第1の駆動電圧の電位と異なる電位の第2の駆動電圧とを交互に印加する第2工程と、前記時間精度測定モードから前記通常モードに移行する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
これによれば、時刻表示装置の駆動方法は、適用例1に記載の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態にかかる時刻表示装置としての腕時計の外観構成を示す図。
【図2】腕時計の表示パネルの構成を説明する図。
【図3】腕時計の時刻表示ユニットを模式的に示す断面図。
【図4】表示パネルの構成を説明する断面図。
【図5】時刻表示ユニットの電気的構成を示すブロック図。
【図6】通常モード時の表示制御動作を示すタイミングチャート。
【図7】時間精度測定モード時の表示制御動作を示すタイミングチャート。
【図8】第2の実施形態にかかる時刻表示装置としての腕時計の外観構成を示す図。
【図9】腕時計の表示パネル及び表示駆動回路の構成を示す図。
【図10】時間精度測定モード時の表示制御動作を示すタイミングチャート。
【図11】表示パネルの表示例を示す模式図。
【図12】時間精度測定モード時の別の表示制御動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる時刻表示装置としての腕時計の外観構成を示す図であり、図2は、腕時計の表示パネルの構成を説明する図である。
図1に示すように、腕時計1は、時計ケース2と、この時計ケース2に取り付けられ、使用者の手首に巻き付けられる一対の時計バンド3とを備えている。時計ケース2は、正面に時刻などを表示するための時刻表示窓4が形成され、時刻などを表示する表示パネル5を時刻表示窓4から視認可能に構成されている。
【0021】
また、時刻表示窓4には、透明樹脂や透明ガラスなどから形成されたカバー体6が嵌め込まれ、このカバー体6により表示パネル5が保護されている。
さらに、時計ケース2には、時刻修正や、通常の表示状態である通常モードから、外部の時間精度測定器を用いた時間精度測定のための時間精度測定モードなどへのモード変更(移行)などの各種指示を行うための操作ボタン8が設けられている。
【0022】
図2に示すように、表示パネル5には、複数のセグメントにより各種情報を表示するセグメント表示パネルが適用され、この表示パネル5の表示領域5Rには、0〜9の数字を表示するためのセグメント(いわゆる7セグメント)5Aが4列配列されている。
表示パネル5には、左2列のセグメント5Aにより時刻の「時」が表示され、右2列のセグメント5Aにより「分」が表示される。また、「時」のセグメント5Aと「分」のセグメント5Aとの間には、「時」、「分」の区切りを示す「コロン」を表示するための円形のセグメント5Bが配置されている。
【0023】
また、各セグメント5A,5Bのそれぞれには、背景を表示する背景セグメント5Cが設けられており、これら背景セグメント5Cにより、各セグメント5A,5Bにより表示される1文字(数字、コロン)毎に、背景(黒または白の背景)が表示される。
また、表示領域5Rの右上部分には、後述する時間精度測定モードの際に、時間精度測定モードであることを示す情報としての文字列状(L/G)のセグメント5Dが設けられている。
本実施形態では、この表示パネル5に電気泳動表示パネルが用いられており、その詳細な構成については後述する。また、以下の説明において、セグメント5A〜5Dのそれぞれを特に区別する必要がないときは、セグメント5Xと表記する。
【0024】
図3は、腕時計の時刻表示ユニットを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、上記の時計ケース2内には、表示パネル5と一体的に構成された時刻表示ユニット10が配置されている。この時刻表示ユニット10は回路基板11Aと、表示枠11Bと、ディスプレイ基板11Cと、透明基板11Dと、これらを保持する回路押さえ13とを備えている。
ディスプレイ基板11Cは、その上面に、各セグメント5A〜5Dに対応するセグメント電極14と、共通電極用セグメント電極15とが設けられている。
【0025】
このディスプレイ基板11Cの下面には、表示枠11Bを介して回路基板11Aが配置され、この回路基板11Aには、表示制御部としての表示駆動回路40や制御部50などを構成する素子16が実装されている。
上記回路基板11Aの上面には、上記素子16(表示駆動回路40など)に配線接続された接点11A1が設けられると共に、上記ディスプレイ基板11Cの下面には、セグメント電極14、共通電極用セグメント電極15に配線接続された接点11C1が設けられ、これら接点11A1及び接点11C1は、表示枠11Bを貫通する接続コネクター17を介して導通されている。
【0026】
さらに、回路基板11Aの側面には、スイッチ用電極18が設けられ、このスイッチ用電極18は、回路押さえ13に設けられた板ばね19を介して導通可能に構成され、この板ばね19が、上記操作ボタン8の押圧操作によって変形した場合に、この変形した板ばね19を介して導通する。この導通/非導通は、上記素子16(本実施形態では制御部50)によって検出される。
また、上記回路基板11Aの下面には、上記素子16に駆動電力を供給する電池(電源)20が着脱自在に設けられている。更に、この回路基板11Aには、上記素子16を覆う回路枠21が固定され、この回路枠21によって素子16が保護されている。なお、上記電池20には、一次電池であるボタン電池が適用されているが、これに限らず、二次電池が適用されてもよい。
【0027】
上記透明基板11Dは、ディスプレイ基板11C側の面に、ITO膜などで形成された透明の共通電極25が設けられ、この透明の共通電極25とディスプレイ基板11Cのセグメント電極14との間には、電気泳動素子としての電気泳動層30が設けられている。 また、共通電極25と共通電極用セグメント電極15との間には、共通電極用導通材26が介挿されている。この共通電極用導通材26は、例えば、導電性ゴムで形成され、この導電性ゴムが共通電極25と共通電極用セグメント電極15との間の間隙に合わせて変形することにより、これら共通電極25、共通電極用セグメント電極15間の導通が確実に確保される。
【0028】
図4は、表示パネルの構成を説明する断面図である。
図4に示すように、電気泳動層30には、二色の粉末流体方式と呼ばれる構成が適用されている。電気泳動層30は、複数のマイクロカプセル31から構成され、これらマイクロカプセル31には、電気泳動分散液33が封入されている。
この電気泳動分散液33には、黒色の電気泳動粒子(以下、黒粒子ともいう)34と、白色の電気泳動粒子(以下、白粒子ともいう)35とが混合されている。
これら黒粒子34及び白粒子35は、互いに異なる極性に帯電しており、本実施形態では、黒粒子34がプラスに帯電し、白粒子35がマイナスに帯電している。
【0029】
このことから、表示駆動回路40により共通電極用セグメント電極15(図3参照)を介して共通電極25に0V電位の駆動電圧が印加されると共に、所定のセグメント電極14にプラス電位の駆動電圧が印加された場合、セグメント電極14から共通電極25に向かう電界が発生し、マイクロカプセル31内のプラスに帯電した黒粒子34が共通電極25側に移動し、マイナスに帯電した白粒子35がセグメント電極14側に移動する。
この結果、透明基板11D側から(矢印A方向)視認されるマイクロカプセル31が黒色となることから、セグメント5Xが黒を表示する。
【0030】
これとは逆に、表示駆動回路40により共通電極25にプラス電位の駆動電圧が印加されると共に、所定のセグメント電極14に0V電位の駆動電圧が印加された場合、マイクロカプセル31内のマイナスに帯電した白粒子35が共通電極25側に移動し、プラスに帯電した黒粒子34がセグメント電極14側に移動する。
この結果、透明基板11D側から視認されるマイクロカプセル31が白色となることから、セグメント5Xが白を表示する。
【0031】
なお、共通電極25とセグメント電極14との間に電位差が生じない場合には、電界が発生せず、黒粒子34、白粒子35が移動しないことから、セグメント5Xの表示色は変化せずに以前の状態が維持される。
なお、本実施形態では、表示駆動回路40が昇圧回路を内蔵し、電池20から供給される電圧(例えば、3V)を昇圧して+12Vの電圧を生成して、この+12Vの電圧、及び0Vの電圧を駆動電圧として、セグメント電極14及び共通電極25に印加している。
【0032】
図5は、時刻表示ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
制御部50は、ディスプレイ基板11Cに設けられた配線パターンを介して表示駆動回路40や電池20と電気的に接続されている。
この制御部50は、計時回路51と、入出力回路(I/O)52と、電圧制御回路53と、操作制御回路54と、制御回路57とを備えている。
【0033】
計時回路51は、発振回路51aにおける時間標準源としての水晶振動子などの所定の周波数の発振パルスを、分周回路51bで分周し、計時カウンター51cでカウントすることにより時刻を計時するものである。この計時回路51は、入出力回路52を介して表示駆動回路40と接続されている。
電圧制御回路53は、電池20からの供給電力を制御部50内の各部と表示駆動回路40とに供給するものであり、操作制御回路54は、上記スイッチ用電極18の導通/非導通を検出することにより、操作ボタン8の操作を検出し、この検出結果を制御回路57に通知する。
【0034】
制御回路57は、この時刻表示ユニット10全体を中枢的に制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有し、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、制御部50の各部の動作を制御すると共に、入出力回路52を介して表示駆動回路40に各種信号を出力する。
表示駆動回路40は、表示パネル5を駆動する回路であり、制御回路57の指示の下、計時回路51により計時されている時刻情報などの情報を取得し、指示された書き換え間隔で表示パネル5の書き換えを行い、時刻などを表示パネル5に表示させる。
【0035】
ところで、上記制御回路57は、この腕時計1のモードを、表示パネル5に表示される時刻情報などを時刻の更新間隔(本実施形態では1分間隔としている)で書き換える通常の表示状態である通常モードと、外部の時間精度測定器を用いた時間精度測定のための表示状態である時間精度測定モードとに切り替える機能を有している。
このモードの切り替え(移行)は、使用者による所定の操作ボタン8の所定操作(短押し、長押し、同時押しなど)によって行われる。
【0036】
ここで、上記各モードにおける腕時計1の駆動方法としての表示制御動作について説明する。
まず、通常モード時の表示制御動作について説明する。
図6は、通常モード時の表示制御動作を示すタイミングチャートである。なお、図6においては、制御回路57から表示駆動回路40に対して、表示書き換え指示信号が出力されたタイミングをM1とし、M1から1分経過したタイミングをM2とする。
【0037】
図6においては、共通電極25に印加される駆動電圧を供給する駆動信号をCOM、3つのセグメント電極14のそれぞれに印加される駆動電圧を供給する駆動信号を、それぞれSEG1,SEG2,SEG3とする。
また、セグメント電極14に印加される駆動電圧を供給する各駆動信号を特に区別する必要のないときは、駆動信号SEGと表記する。
なお、ここでは、3つのセグメント5Xのうち、1つ目の表示色が黒に書き換えられ、2つ目の表示色が白に書き換えられ、3つ目の表示色が変化しない場合を説明する。
これらのセグメント5Xを互いに区別するために、1つ目をセグメント5XAと表記し、2つ目をセグメント5XBと表記し、3つ目をセグメント5XCと表記する。
【0038】
図6に示すように、表示書き換え指示信号が表示駆動回路40に入力されるタイミングM1から、次の表示書き換え指示信号が入力されるタイミングM2までの間の期間T(1分)には、書き換え期間Ta及び休止期間Tbが設けられている。
書き換え期間Taは、表示駆動回路40が共通電極25及び各セグメント電極14に対して駆動信号COM、駆動信号SEGにより駆動電圧を印加して、各セグメント5Xの表示色を変化または維持させ、時刻表示を書き換える期間である。
書き換え期間Taは、前半Ta1と後半Ta2とから構成されている。前半Ta1と後半Ta2とは、略等しい長さの期間であり、DCバランスをとるために、前半Ta1と後半Ta2とでは逆の書き換え動作が行われる。
【0039】
休止期間Tbは、時刻表示の書き換え後に、次の表示書き換え指示信号が入力されるタイミングM2まで待機する期間である。表示駆動回路40は、この休止期間Tbにおいて、その動作状態を省電力状態とする。
また、休止期間Tbにおいては、表示駆動回路40の駆動信号COM、駆動信号SEGを出力する出力端がハイインピーダンス状態(HI−Zと表記)となる。
したがって、休止期間Tbにおいては、共通電極25と各セグメント電極14との間に電位差が生じることがない。このことから、各セグメント5Xの表示色は、書き換え期間Taの後半Ta2における色で維持される。
【0040】
図6に示すように、書き換え期間Taにおいて、表示色を黒に書き換えるセグメント5XAに対しては、駆動信号SEG1により、前半Ta1で0Vの駆動電圧を印加して、後半Ta2で+12Vの駆動電圧を印加する。
また、表示色を白に書き換えるセグメント5XBに対しては、駆動信号SEG2により、前半Ta1で+12Vの駆動電圧を印加し、後半Ta2で0Vの駆動電圧を印加する。 また、表示色が変化しないセグメント5XCに対しては、駆動信号SEG3により、前半Ta1後半Ta2共、後述する駆動信号COMと同一の駆動電圧を印加する。
【0041】
共通電極25に対しては、駆動信号COMにより、0Vの駆動電圧と+12Vの駆動電圧とを、交互に一定の周期で繰り返すパルス状に印加する。
駆動信号COMの1パルスのパルス幅Wは、分周回路51b(図5参照)で生成可能な周期(例えば、125ms,62.5msなど)の分周信号に基づいて設定されている。 共通電極25に対しては、駆動信号COMにより、このパルス幅Wのパルス列Pを用いて、駆動信号SEGとの間で各セグメント5Xの表示色を変化させるのに十分なパルス数の駆動電圧が印加される。
【0042】
この結果、書き換え期間Taの前半Ta1において、駆動信号COMにより共通電極25に印加される駆動電圧が+12Vのときには、駆動信号SEG1により0Vの駆動電圧が印加されているセグメント5XAのセグメント電極14と共通電極25との間に電界が発生する。
これにより、黒粒子34がセグメント電極14側に移動し、白粒子35が共通電極25側に移動して、セグメント5XAの表示色が多少白に変化する。
【0043】
次に、駆動信号COMにより共通電極25に印加される駆動電圧が0Vのときには、駆動信号SEG2により+12Vの駆動電圧が印加されているセグメント5XBのセグメント電極14と共通電極25との間に電界が発生する。
これにより、黒粒子34が共通電極25側に移動し、白粒子35がセグメント電極14側に移動して、セグメント5XBの表示色が多少黒に変化する。
以降、同様にして、駆動信号COMにより共通電極25に印加される駆動電圧の時系列的変化に応じて黒粒子34、白粒子35が共通電極25及びセグメント電極14との間で少しずつ移動することで、各セグメント5XA,5XBの表示色が段階的に変化する。
【0044】
この結果、書き換え期間Taの前半Ta1では、セグメント5XAの表示色が白となり、セグメント5XBの表示色が黒となる。
【0045】
同様にして、書き換え期間Taの後半Ta2において、駆動信号COMにより共通電極25に印加される駆動電圧が0Vのときには、駆動信号SEG1により+12Vの駆動電圧が印加されているセグメント5XAのセグメント電極14と共通電極25との間に電界が発生する。
これにより、黒粒子34が共通電極25側に移動し、白粒子35がセグメント電極14側に移動して、セグメント5XAの表示色が多少黒に変化する。
【0046】
次に、駆動信号COMにより共通電極25に印加される駆動電圧が+12Vのときには、駆動信号SEG2により0Vの駆動電圧が印加されているセグメント5XBのセグメント電極14と共通電極25との間に電界が発生する。
これにより、黒粒子34がセグメント電極14側に移動し、白粒子35が共通電極25側に移動して、セグメント5XBの表示色が多少白に変化する。
以降、同様にして、駆動信号COMにより共通電極25に印加される駆動電圧の時系列的変化に応じて黒粒子34、白粒子35が共通電極25及びセグメント電極14との間で少しずつ移動することで、各セグメント5XA,5XBの表示色が段階的に変化する。
【0047】
この結果、書き換え期間Taの後半Ta2では、セグメント5XAの表示色が黒となり、セグメント5XBの表示色が白となる。
【0048】
なお、セグメント5XCは、駆動信号SEG3により印加される駆動電圧が、駆動信号COMにより共通電極25に印加される駆動電圧と同一であることから、セグメント5XCのセグメント電極14と共通電極25との間に電界が発生せず、表示色が変化しない。
【0049】
そして、書き換え期間Taが経過した後、表示駆動回路40は、次に表示書き換え指示
信号が入力されるタイミングM2まで待機する。
そして、タイミングM2で表示書き換え指示信号が入力されると、表示駆動回路40は、書き換え期間Taにおいて、上記と同様にして、各セグメント5XA,5XB,5XCの表示色を変化または維持させることになる。
【0050】
次に、時間精度測定モード時の表示制御動作について説明する。
図7は、時間精度測定モード時の表示制御動作を示すタイミングチャートである。
[第1工程]
まず、通常モードから時間精度測定モードへは、使用者による所定の操作ボタン8の所定操作によって移行する。
【0051】
[第2工程]
次に、図7に示すように、時間精度測定モードでは、時間精度測定モードに移行したタイミングM10で、まず、書き換え期間Taにおいて、通常モードと同様の表示制御動作による表示の書き換えが行われる。
このとき、セグメント5XAに相当する時間精度測定モードであることを示すセグメント5D(図2参照)が、黒で表示される。
【0052】
次に、休止期間Tb’の後、タイミングM20から通常モードへ移行するタイミングM30までの期間Tcにおいて、水晶振動子などの発振パルスを分周回路51bで分周して生成された基準信号CLに同期して、表示駆動回路40によって、各セグメント電極14と共通電極25とに、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって第1の駆動電圧と異なる電位の第2の駆動電圧とが、交互に繰り返して印加される。
なお、ここでは、第1の駆動電圧の電位を0V、第2の駆動電圧の電位を+12Vとする。
【0053】
つまり、期間Tcにおいて、表示駆動回路40が、駆動信号SEG1,SEG2,SEG3及び駆動信号COMにより、各セグメント電極14と共通電極25とに印加する駆動電圧を、基準信号CLに同期して、0Vの電位と+12Vの電位とに交互に変化するように設定して、表示パネル5を駆動する。
これにより、期間Tcにおいては、各セグメント電極14と共通電極25との間に電位差が生じないことから、すべてのセグメント5Xに表示の変化がないことになる。
【0054】
このとき、表示パネル5全体としては、0Vの電位である第1の駆動電圧と、+12Vの電位である第2の駆動電圧との電位差により電界が発生する。
なお、このときの基準信号CLとしては、16Hzなどを用いることが好ましい。
【0055】
[第3工程]
次に、時間精度測定モードから通常モードへは、第1工程と同様に、使用者による所定の操作ボタン8の所定操作によって移行する。なお、時間精度測定モードから通常モードへは、例えば、3分〜10分程度の所定時間経過後、自動的に移行する設定としてもよい。
【0056】
上述したように、第1の実施形態の腕時計1は、時間精度測定モードを有し、時間精度測定モードにおいて、基準信号CLに同期して、表示駆動回路40によって、セグメント電極14と共通電極25とに、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧(0V)と、互いに同相且つ同電位であって第1の駆動電圧と異なる電位の第2の駆動電圧(+12V)とが、交互に繰り返して印加される。
【0057】
これによれば、腕時計1は、時間精度測定モードにおいて、表示パネル5のセグメント電極14と共通電極25との間に電位差が生じないことにより、前述した焼き付きのような状態や、DCバランスの崩れによる、ITO膜などからなる共通電極25の腐食が抑制され、表示パネル5の表示特性の劣化を回避できる。
加えて、腕時計1は、表示パネル5の両電極に、第1の駆動電圧と、第1の駆動電圧と異なる電位の第2の駆動電圧とを交互に印加することから、表示パネル5全体としては、第1の駆動電圧と第2の駆動電圧との電位差により電界が発生する。
【0058】
これにより、腕時計1は、時間精度測定モードにおいて、時刻の基準となる時間標準源としての水晶振動子などの発振パルスを分周して生成された基準信号CLに同期して、電界が発生することから、クオーツテスターなどの時間精度測定器による時間精度測定が可能となる。
【0059】
また、腕時計1は、時間精度測定モードにおいて、時間精度測定モードであることを示すセグメント5Dが表示されていることから、時間精度測定モードであることを、使用者らに確実に周知できる。
【0060】
なお、腕時計1は、時間精度測定モードの期間Tcにおいて、時間精度測定器の測定周期と同期しない所定の周期で、書き換え期間Taと同様に、表示パネル5の表示の書き換えが行われてもよい。
これによれば、腕時計1は、時間精度測定モードの期間Tcにおいて、表示パネル5の表示の書き換えが行われることから、期間Tcが継続され続けることに起因する表示パネル5の表示状態の劣化を回避できる。
【0061】
また、腕時計1は、時間精度測定モードにおいて、表示パネル5の両電極に印加される第1の駆動電圧と第2の駆動電圧との電位差が、通常の表示状態である通常モードにおける駆動電圧間の電位差(12V)より大きくなるように、第2の駆動電圧の電位を+12Vより高い、例えば、+15V、+18Vなどとしてもよい。
【0062】
これによれば、腕時計1は、時間精度測定モードにおける両電極に印加される第1の駆動電圧と第2の駆動電圧との電位差が、通常モードにおける駆動電圧間の電位差より大きい。
このことから、腕時計1は、表示パネル5全体に発生する電界が、通常モードより強くなることにより、時間精度測定器による時間精度測定が、より確実に行われる。
【0063】
また、腕時計1の駆動方法は、操作ボタン8の所定操作によって通常モードから時間精度測定モードに移行する第1工程と、時間精度測定モードにおいて、表示駆動回路40が基準信号CLに同期して、各セグメント電極14と共通電極25とに、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって第1の駆動電圧の電位と異なる電位の第2の駆動電圧とを、交互に繰り返して印加する第2工程と、操作ボタン8の所定操作などによって時間精度測定モードから通常モードに移行する第3工程と、を有している。
【0064】
この腕時計1の駆動方法によれば、腕時計1は、通常モードと時間精度測定モードとの間でモードの移行が可能となり、時間精度測定モードにおいて、クオーツテスターなどの時間精度測定器による時間精度測定が可能となる。
【0065】
なお、腕時計1は、時間精度測定モードにおいて、書き換え期間Taの書き換えが行われなくてもよい。つまり、腕時計1は、セグメント5Dによる時間精度測定モードを示す表示がなくてもよい。
これは、時間精度測定器による時間精度測定が期間Tcで行われることから、セグメント5Dによる時間精度測定モードの表示がなくても、時間精度測定上の技術的な支障がないことによる。
なお、時間精度測定モードの表示は、使い勝手の観点においては、あった方が好ましいことはいうまでもない。
【0066】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態にかかる時刻表示装置としての腕時計の外観構成を示す図である。なお、第1の実施形態との共通部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図8に示すように、第2の実施形態の腕時計101は、表示パネル205に、複数のマトリクス状の画素102を用いて時刻などの各種情報を画像として表示する、アクティブマトリクス表示パネルが適用されている。
ここでは、第1の実施形態の腕時計1と異なる、表示パネル205回りを中心に説明する。
【0068】
図9は、腕時計の表示パネル及び表示駆動回路の構成を示す図である。図9(a)は、全体の構成を示す図であり、図9(b)は、各画素の構成を示す図である。
図9に示すように、表示駆動回路140は、走査線駆動回路106と、データ線駆動回路107と、共通電源変調回路108と、コントローラー110とを備えている。
【0069】
表示パネル205には、画素102が、Y軸方向に沿ってm個、X軸方向に沿ってn個のマトリクス状に形成されている。走査線駆動回路106は、表示パネル205をX軸方向に沿って延在する複数の走査線104(Y1,Y2,…,Ym)を介して画素102に接続されている。
データ線駆動回路107は、表示パネル205をY軸方向に沿って延在する複数のデータ線105(X1,X2,…,Xn)を介して画素102に接続されている。
共通電源変調回路108は、第1の制御線111、第2の制御線112、第1の電源線113(Vdd)、第2の電源線114(Vss)、及び共通電極電源配線115を介して画素102に接続されている。
【0070】
走査線駆動回路106、データ線駆動回路107及び共通電源変調回路108は、コントローラー110により制御されている。なお、表示駆動回路140は、制御回路57(図5参照)により制御されている。
第1の制御線111、第2の制御線112、第1の電源線113、第2の電源線114及び共通電極電源配線115は、すべての画素102において共通配線として用いられている。
【0071】
画素102は、駆動用TFT(Thin Film Transistor)124と、SRAM(Static Random Access Memory)125と、スイッチ回路135と、対向する電極としての画素電極121及び共通電極122と、電気泳動素子としての電気泳動層30とを備えている。
【0072】
駆動用TFT124は、N−MOS(Negative Metal Oxide Semiconductor)で構成されている。駆動用TFT124のゲート部には、走査線104、ソース側にはデータ線105、ドレイン側にはSRAM125がそれぞれ接続されている。
駆動用TFT124は、走査線駆動回路106から走査線104を介して選択信号が入力される期間中、データ線105とSRAM125とを接続させることによって、データ線駆動回路107から、データ線105を介して入力される画像信号をSRAM125に入力させるために用いられる。
【0073】
SRAM125は2つのP−MOS(Positive Metal Oxide Semiconductor)125p1,125p2及び2つのN−MOS125n1,125n2によって構成されている。 P−MOS125p1,125p2のソース側には、第1の電源線113が接続され、N−MOS125n1,125n2のソース側には、第2の電源線114が接続されている。
したがって、P−MOS125p1及びP−MOS125p2のソース側が、SRAM125の高電位電源端子PHであり、N−MOS125n1及びN−MOS125n2のソース側がSRAM125の低電位電源端子PLである。
【0074】
またスイッチ回路135は、第1のトランスファーゲート136と第2のトランスファーゲート137とを備えている。第1のトランスファーゲート136は、P−MOS136pとN−MOS136nとを備えている。第2のトランスファーゲート137は、P−MOS137pとN−MOS137nとを備えている。
第1のトランスファーゲート136のソース側は、第1の制御線111と接続され、第2のトランスファーゲート137のソース側は、第2の制御線112と接続されている。 第1のトランスファーゲート136、第2のトランスファーゲート137のドレイン側は、画素電極121に接続されている。
【0075】
SRAM125は、駆動用TFT124のドレイン側と接続された入力端子N1と、スイッチ回路135と接続された第1の出力端子N2及び第2の出力端子N3とを備えている。
SRAM125のP−MOS125p1のドレイン側及びN−MOS125n1のドレイン側は、SRAM125の入力端子N1として機能する。
入力端子N1は、駆動用TFT124のドレイン側と接続されると共に、SRAM125の第2の出力端子N3(P−MOS125p2のゲート部及びN−MOS125n2のゲート部)と接続されている。
さらに、第2の出力端子N3は、第1のトランスファーゲート136のN−MOS136nのゲート部及び第2のトランスファーゲート137のP−MOS137pのゲート部に接続されている。
【0076】
SRAM125のP−MOS125p2のドレイン側及びN−MOS125n2のドレイン側は、SRAM125の第1の出力端子N2として機能する。
第1の出力端子N2は、P−MOS125p1のゲート部及びN−MOS125n1のゲート部と接続されると共に、第1のトランスファーゲート136のP−MOS136pのゲート部及び第2のトランスファーゲート137のN−MOS137nのゲート部に接続されている。
【0077】
SRAM125は、駆動用TFT124から送られた画像信号を保持するとともに、スイッチ回路135に画像信号を入力するために用いられる。
スイッチ回路135は、SRAM125から入力された画像信号に基づいて、第1の制御線111及び第2の制御線112のいずれかを択一的に選択し、画素電極121と接続させるセレクターとして機能する。このとき、第1のトランスファーゲート136及び第2のトランスファーゲート137は、画像信号のレベルに応じて一方のみが動作する。
【0078】
具体的には、画像信号としてSRAM125の入力端子N1にハイレベルが入力されると、第1の出力端子N2からはローレベルが出力されるので、第1の出力端子N2に接続されたトランジスターのうち、P−MOS136pが動作する。
さらに、第2の出力端子N3(入力端子N1)と接続されたN−MOS136nが動作して、第1のトランスファーゲート136が駆動される。
したがって、第1の制御線111と画素電極121とが電気的に接続される。
【0079】
一方、画像信号としてSRAM125の入力端子N1にローレベルが入力されると、第1の出力端子N2からはハイレベルが出力されるので、第1の出力端子N2に接続されたトランジスターのうち、N−MOS137nが動作する。
さらに、第2の出力端子N3(入力端子N1)と接続されたP−MOS137pが動作して第2のトランスファーゲート137が駆動される。
したがって、第2の制御線112と画素電極121とが電気的に接続される。
そして、動作した方のトランスファーゲート(第1のトランスファーゲート136または第2のトランスファーゲート137)を介して、第1の制御線111または第2の制御線112が画素電極121と導通し、画素電極121に駆動電圧が印加される。
なお、共通電極122は、共通電極電源配線115と電気的に接続されている。
【0080】
電気泳動層30は、前述したように、画素電極121と共通電極122との電位差によって、白及び黒の電気泳動粒子を移動させて画像を表示させるものである。
ここで、電気泳動層30の動作の概略を再度説明する。
画素電極121と共通電極122とに、相対的に共通電極122の電位が高くなるように駆動電圧を印加する。すると、図9(b)に示すように、プラスに帯電した黒粒子34は、マイクロカプセル31内で画素電極121側に引き寄せられる。
一方、マイナスに帯電した白粒子35は、マイクロカプセル31内で共通電極122側に引き寄せられる。
この結果、マイクロカプセル31内の表示面側(共通電極122側)には、白粒子35が集まることになり、表示面にはこの白粒子35の色(白)が表示されることになる。
なお、ここでの視認方向は、矢印B方向とする。
【0081】
逆に、画素電極121と共通電極122との間に相対的に画素電極121の電位が高くなるように駆動電圧を印加する。すると、マイナスに帯電した白粒子35が画素電極121側に引き寄せられる。
一方、プラスに帯電した黒粒子34は、共通電極122側に引き寄せられる。
この結果、マイクロカプセル31内の表示面側には黒粒子34が集まることになり、表示面にはこの黒粒子34の色(黒)が表示されることになる。
【0082】
ここで、腕時計101の駆動方法としての時間精度測定モード時の表示制御動作について説明する。
図10は、時間精度測定モード時の表示制御動作を示すタイミングチャートである。図10において、S1は、第1の制御線111の駆動電圧としての電位を示し、S2は、第2の制御線112の駆動電圧としての電位を示し、COMは、共通電極電源配線115の駆動電圧としての電位を示す。また、CLは、後述する基準信号を示す。
なお、第1工程、第3工程については、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0083】
[第2工程]
図10に示すように、時間精度測定モードでは、通常モードから時間精度測定モードに移行したタイミングM10で、まず、書き換え期間Taにおいて、通常モードと同様の表示制御動作により、時間精度測定モードであることを示すための表示の書き換えが行われる。
(なお、通常モードでは、下記の書き換え期間Taと休止期間Tb’とを合わせた期間T(図6参照)を1分とし、時刻の分の切り替わりに同期して、1分ごとに表示の書き換えが行われる。)
【0084】
ここでは、画像信号がハイレベルである画素102が黒を表示し、画像信号がローレベルである画素102が白を表示して、白地に時刻などの各種情報が黒で表示される画像を正画像と定義し、これの白黒表示が逆になった画像を反転画像と定義する。
書き換え期間Taでは、DCバランスをとるために、前半Ta1において反転画像が表示され、後半Ta2において正画像が表示される。
【0085】
具体的には、書き換え期間Taの前半Ta1において、共通電源変調回路108から第1の制御線111(S1)にローレベル(電位:0V)の駆動電圧を供給する一方、第2の制御線112(S2)にハイレベル(電位:+15V)の駆動電圧を供給する。
このとき、画像信号がハイレベルである画素102では、SRAM125の第1の出力端子N2の電位はローレベルであり、第2の出力端子N3(入力端子N1)の電位はハイレベルである。したがって、第1のトランスファーゲート136が駆動されて、画素電極121と第1の制御線111とが接続される。これにより、画素電極121には、ローレベルの電位の駆動電圧が印加される。
【0086】
また、共通電極122には、共通電源変調回路108から共通電極電源配線115(COM)を介して、ハイレベル(電位:+15V)の期間とローレベル(電位:0V)の期間とを、交互に一定周期で繰り返すパルス状の駆動電圧が印加される。
そして、共通電極122に印加される駆動電圧の電位がハイレベルのときに、画素電極121と共通電極122との間に電位差(15V)が生じ、白粒子35は共通電極122側に引き寄せられ、黒粒子34は画素電極121側に引き寄せられる。
この結果、画像信号がハイレベルである画素102には、白が表示される。
【0087】
一方、画像信号がローレベルである画素102では、SRAM125の第1の出力端子N2の電位はハイレベルであり、第2の出力端子N3(入力端子N1)の電位はローレベルである。したがって、第2のトランスファーゲート137が駆動されて、画素電極121と第2の制御線112とが接続される。これにより、画素電極121には、ハイレベルの電位の駆動電圧が印加される。
【0088】
また、共通電極122には、共通電源変調回路108から共通電極電源配線115を介して、ハイレベル(電位:+15V)の期間とローレベル(電位:0V)の期間とを、交互に一定周期で繰り返すパルス状の駆動電圧が印加される。
そして、共通電極122に印加される駆動電圧の電位がローレベルのときに、画素電極121と、共通電極122との間に電位差(15V)が生じ、白粒子35は画素電極121側に引き寄せられ、黒粒子34は共通電極122側に引き寄せられる。
この結果、画像信号がローレベルである画素102には、黒が表示される。
以上の表示制御動作により、書き換え期間Taの前半Ta1においては、黒地に白表示の反転画像が表示される。
【0089】
書き換え期間Taの後半Ta2においては、上記と逆に、共通電源変調回路108から第1の制御線111にハイレベルの駆動電圧を供給する一方、第2の制御線112にローレベルの駆動電圧を供給する。なお、共通電極電源配線115には、前半Ta1と同様の駆動電圧が供給される。
これにより、画像信号がハイレベルである画素102では、画素電極121に第1の制御線111を介してハイレベルの電位の駆動電圧が印加され、画像信号がローレベルである画素102では、第2の制御線112を介して画素電極121にローレベルの電位の駆動電圧が印加される。
この結果、書き換え期間Taの後半Ta2においては、各画素102の表示色が前半Ta1と逆になり、画像信号がハイレベルである画素102に黒が表示され、画像信号がローレベルである画素102に白が表示されることで、白地に黒表示の正画像が表示される。
【0090】
この書き換え期間Taにおいて、図11の表示パネルの表示例を示す模式図に示すような、時間精度測定モードであることを示す情報としての画像205Dが、表示パネル205に表示される。
なお、図11では、書き換え期間Taの後半Ta2における正画像表示を示し、時刻(10:08)と時間精度測定モードを示す文字列(L/G)とが表示されている。
【0091】
図10に戻って、書き換え期間Taの終了後、所定の休止期間Tb’を設ける。
次に、休止期間Tb’の終了するタイミングM20から、通常モードへ移行するタイミングM30までの期間Tcにおいて、水晶振動子などの発振パルスを、分周回路51b(図5参照)で分周して生成された基準信号CLに同期して、表示駆動回路140によって、画素電極121と共通電極122とに、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって第1の駆動電圧と異なる電位の第2の駆動電圧とが、交互に繰り返して印加される。
なお、ここでは、第1の駆動電圧の電位を0V、第2の駆動電圧の電位を+15Vとする。
【0092】
つまり、表示駆動回路140は、共通電源変調回路108から第1の制御線111、第2の制御線112及び共通電極電源配線115に、ローレベル(電位:0V)の第1の駆動電圧と、ハイレベル(電位:+15V)の第2の駆動電圧とを、基準信号CLに同期して、交互に繰り返して供給する。
この結果、期間Tcにおいては、各画素102に対する画像信号のレベル状態(ハイレベルまたはローレベル)にかかわらず、画素電極121に印加される駆動電圧と共通電極122に印加される駆動電圧との間に電位差が生じない。
したがって、期間Tcにおいては、すべての画素102に表示の変化がないことになる。
【0093】
このとき、表示パネル205全体としては、第1の駆動電圧と第2の駆動電圧とが、基準信号CLに同期して、交互に繰り返して印加されることから、0Vの電位である第1の駆動電圧と、+15Vの電位である第2の駆動電圧との電位差(15V)により、基準信号CLに同期して電界が発生する。
【0094】
これにより、第2の実施形態の腕時計101は、第1の実施形態の腕時計1と同様に、時間精度測定モードにおいて、焼き付きのような状態や、DCバランスの崩れによる共通電極122の腐食が抑制され、表示パネル205の表示特性の劣化を回避できると共に、クオーツテスターなどの時間精度測定器による時間精度測定が可能となる。
なお、基準信号CLとしては、第1の実施形態と同様に、16Hzなどを用いることが好ましい。
【0095】
また、上述したように、腕時計101は、期間Tcにおいては、各画素102に対する画像信号のレベル状態にかかわらず、画素電極121に印加される駆動電圧と共通電極122に印加される駆動電圧との間に電位差が生じない。
これにより、腕時計101は、期間Tcにおいて、各画素102に対する駆動用TFT124からの画像信号を送信不要とすることもできる。
【0096】
なお、例えば、休止期間Tb’において、すべての画素102の画像信号をハイレベルまたはローレベルにしたときには、図12の時間精度測定モード時の別の表示制御動作を示すタイミングチャートのような、表示制御動作を行ってもよい。
【0097】
詳述すると、すべての画素102の画像信号をハイレベルにしたときには、図12(a)に示すように、期間Tcにおいて、共通電源変調回路108から第1の制御線111及び共通電極電源配線115のみに、第1の駆動電圧と第2の駆動電圧とを、基準信号CLに同期して、交互に繰り返して供給してもよい。
【0098】
これによれば、画素102の画像信号がハイレベルのときには、上述したように、画素電極121と第1の制御線111とが接続されるので、第2の制御線112に供給される駆動電圧の電位(ここでは、0V)にかかわらず、画素電極121に印加される駆動電圧と共通電極122に印加される駆動電圧との間に電位差が生じない。
このことから、腕時計101は、期間Tcにおいて、表示パネル205の表示が変化しないことになる。
【0099】
一方、すべての画素102の画像信号をローレベルにしたときには、図12(b)に示すように、期間Tcにおいて、共通電源変調回路108から第2の制御線112及び共通電極電源配線115のみに、第1の駆動電圧と第2の駆動電圧とを、基準信号CLに同期して、交互に繰り返して供給してもよい。
【0100】
これによれば、画素102の画像信号がローレベルのときには、上述したように、画素電極121と第2の制御線112とが接続されるので、第1の制御線111に供給される駆動電圧の電位(ここでは、0V)にかかわらず、画素電極121に印加される駆動電圧と共通電極122に印加される駆動電圧との間に電位差が生じない。
このことから、腕時計101は、期間Tcにおいて、表示パネル205の表示が変化しないことになる。
【0101】
なお、図9(b)に示した腕時計101の各画素の構成(回路構成)には、9T方式と呼ばれる方式が適用されているが、時間精度測定モードにおける表示制御動作が、上記と同様に行われるものであれば、例えば、1T方式と呼ばれる方式など、他の方式が適用されてもよい。
【0102】
なお、腕時計101は、時間精度測定モードにおいて、時間精度測定モードを示す文字列(L/G)が表示されることにより、使用者らに時間精度測定モードであることを確実に周知できるが、第1の実施形態と同様の理由から、時間精度測定モードにおいて、書き換え期間Taを設けずに、文字列(L/G)が表示されなくてもよい。
また、腕時計101は、第1の実施形態と同様に、時間精度測定モードでは、期間Tcにおいて、書き換え期間Taで行われるような表示パネル205の表示の書き換えが、時間精度測定器の測定周期と同期しない所定の周期で行われてもよい。
【0103】
また、腕時計101は、第1の実施形態と同様に、時間精度測定モードにおいて、表示パネル205の両電極に印加される第1の駆動電圧と第2の駆動電圧との電位差が、通常モードにおける駆動電圧間の電位差(ここでは、15Vとする)より大きくなるように、第2の駆動電圧の電位を+15Vより高い、例えば、+18Vなどとしてもよい。
これらによれば、腕時計101は、第1の実施形態の腕時計1と同様の効果を得ることができる。
【0104】
また、上記各実施形態において、表示パネル5,205にセグメント表示パネルまたはアクティブマトリクス表示パネルが用いられていることから、腕時計1,101は、時間精度測定器による時間精度測定を可能としつつ、多様な表示の形態を選択できる。
なお、時刻表示装置としては、腕時計に限定するものではなく、置時計や時刻表示機能を備えた携帯電話機、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、電子式卓上計算機、電子辞書、電子手帳、電子ビューワー、デジタルカメラなどでもよい。
【符号の説明】
【0105】
CL…基準信号、COM,SEG1,SEG2,SEG3…駆動信号、M10,M20,M30…タイミング、P…パルス列、Ta…書き換え期間、Ta1…書き換え期間の前半、Ta2…書き換え期間の後半、Tb’…休止期間、Tc…M20からM30までの期間、W…パルス幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する電極間に電気泳動素子を有する電気泳動表示パネルと、
前記両電極に前記電気泳動素子を駆動する駆動電圧を印加して前記電気泳動表示パネルの表示を制御し、少なくとも時刻を表示させる表示制御部と、
前記時刻の基準となる時間標準源と、を備え、
前記時間標準源から生成された基準信号に同期して、前記表示制御部が前記両電極に、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって前記第1の駆動電圧の電位と異なる電位の第2の駆動電圧とを交互に印加する、時間精度測定モードを有していることを特徴とする時刻表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の時刻表示装置において、前記電気泳動表示パネルがセグメント表示パネルまたはアクティブマトリクス表示パネルであることを特徴とする時刻表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の時刻表示装置において、前記時間精度測定モードでは、前記電気泳動表示パネルに、前記時間精度測定モードであることを示す情報が表示されていることを特徴とする時刻表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の時刻表示装置において、前記時間精度測定モードでは、所定の周期で、前記電気泳動表示パネルの表示の書き換えが行われることを特徴とする時刻表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の時刻表示装置において、前記時間精度測定モードでは、前記電気泳動表示パネルの前記両電極に印加される前記第1の駆動電圧と前記第2の駆動電圧との電位差が、通常の表示状態である通常モードにおける前記駆動電圧間の電位差より、大きいことを特徴とする時刻表示装置。
【請求項6】
対向する電極間に電気泳動素子を有する電気泳動表示パネルと、前記両電極に前記電気泳動素子を駆動する駆動電圧を印加して前記電気泳動表示パネルの表示を制御し、少なくとも時刻を表示させる表示制御部と、前記時刻の基準となる時間標準源と、を備えた時刻表示装置の駆動方法であって、
前記時刻表示装置が、時間精度測定モードを有し、
通常の表示状態である通常モードから前記時間精度測定モードに移行する第1工程と、
前記時間精度測定モードにおいて、前記時間標準源から生成された基準信号に同期して、前記表示制御部が前記両電極に、互いに同相且つ同電位の第1の駆動電圧と、互いに同相且つ同電位であって前記第1の駆動電圧の電位と異なる電位の第2の駆動電圧とを交互に印加する第2工程と、
前記時間精度測定モードから前記通常モードに移行する第3工程と、を有することを特徴とする時刻表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−223876(P2010−223876A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73853(P2009−73853)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】