説明

時計

【課題】従来の日車と24時間小針表示を持つ時計では、日回し車で24時間表示を行うものは日回し車の位置が動かせず、また、筒車で日回し車と24時間車を駆動するものは各歯車が大きく、いずれも複数の表示バリエーションが作れなかった。
【解決手段】筒車10で駆動される24時間中間車30で日回し車20と24時間車50を駆動することで各車を小さくし、複数の表示バリエーションを可能とした。また、各バリエーションのいずれも24時間車50の配置されない場所に日回し車20を固定配置することで、安定した日送りを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計内部の輪列配置に関し、特に、日車によるカレンダー表示を行いつつ複数の小針による多針表示を行う時計において、指針位置のバラエティーを効率的に行う輪列配置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、時計の暦表示を行う構造においては、一日一回転する日回し車を使用して日、曜、月齢などの表示車を送る構造になっている。
この一日一回転する日回し車は、通常筒車と呼ばれる主動車によって回転させられ、筒車の中心軸には時刻表示用の時針が取り付けられている。
筒車は、12時間で一回転するように構成されているが、日回し車の回転方向を時計回転に合わせると、日車の回転方向も時計回りとなる。
【0003】
従って、この回転方向の日車を、リューズの早送りで修正する場合、リューズの正回転(時計回転)で修正した場合に、日車の回転方向も時計回転となる。
人間の手でリューズを回転操作する場合には、一般的なねじを回して締め込むのと同じ回転方向(時計回転)でリューズを回転操作する方法が自然であり、操作感覚も時計回転にすることが好ましいことは一般的な共通認識である。
【0004】
しかし、リューズを手で操作する方向が、時計回転の場合、親指を動かす方向が12時方向となるのに対して、日車が時計回転で回転すると、日窓がある一般的な時計においては、親指を動かす方向と反対に日車が回転することとなり、リューズ操作方向と日車回転方向が一致せず違和感が生じることとなる。
よって、日車の回転方向もリューズを回す方向に回転してくれる方が、人間の感覚として自然であり、違和感がないことがわかる。
【0005】
従って、日回し車が時計方向に回転する時計の場合、この違和感を解消するための方法として、日回し車と筒車の間に、中間車を設けずに、日回し車の回転方向を、反時計周りにすることで、日車の回転方向をリューズの送り方向に合わせることで、良好な操作感を得ることが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−162076号公報(第2図)
【特許文献2】実開平6−65890号公報(第3図)
【特許文献3】特開2000−314778号公報(第1図)
【特許文献4】特開2002−243869号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような日車付きの時計に、24時間を示す針や時差を示す円盤や針を取り付ける事が良く行われる。このような時計の技術を開示したものとして、特許文献1〜4の文献が存在する。
しかしながら、従来の構造においては、以下に示すような問題が存在する。以下、その問題点を、図面を用いて、説明を行う。
【0008】
特許文献1や2には、普段は日車を回すのみに使用する日回し車を24時間や時差の表
示車として兼用することにより、表示車を増やすことなくこれらの表示を効率的に行う技術が開示されている。図4aにその輪列つなぎを示す。
しかし、小針によって24時間表示を行うには、日回し車を時計方向に回転させる必要性から、日車の回転方向も、時計方向に回転させる必要があるので、リューズ操作による早修正感覚は、親指でリューズを回す方向に対して、反対方向に日車が回転するので、操作感覚を犠牲にすることとなる。
【0009】
また、この構造を利用して、24時間車の配置を変更し、別の文字板デザインに対応させようとした場合、24時間車が日回し車の役割も果たしているため、デザイン変更の度に24時間車の位置を、3時位置から、2時位置、又は12時位置など、デザイン的にバランスのいい場所へ移動させねばならない。
【0010】
一方、日車の駆動系には、日回し車のほか、日車の位置規制を行っている日ジャンパーや、日車の早修正機構も存在する。日車を安定して送るには、これらの部品が適切に配置されている必要がある。しかし、上記の如く、日回し車を24時間車と兼用した場合、デザイン変更の度に日回し車の位置のみが変更されるため、他の部品とのバランスを欠き、日送り開始時間や送り完了時間のズレ、あるいは、全く日送り作動が行われなくなるという問題が発生してしまう場合がある。
逆に、安定した日送りのために、日回し車の変更時に日ジャンパーや早修正機構の位置も変更した場合には、変更規模が大きくなってコスト的に高くついてしまう。
【0011】
この問題を回避する方法として、特許文献4(第1図)には、筒車3からの輪列配置を二系統に分割して、日回し車7と、副針中間車4からの24時間表示を行う副針車5に分岐させ、副針車の配置に自由度を与える技術が開示されている。しかし、特許文献4の図1からも分かるとおり、筒車からの輪列配置を二系統に分割する方法は、特に中心部の平面スペースを広く使用する必要がある。
【0012】
従って、余った平面スペースを活用して、他の表示機能、例えば、クロノグラフ機能などを追加することもできない。図4bにその輪列つなぎと、図2のB列a行のマス(以下、このような場合、図2Baと表記する)にその平面配置を示す。
【0013】
そして、実際に特許文献4の技術を利用して24時間車の配置変更を実施する場合には、ベースから別部品として、違う輪列配置の製品を設計する必要があり、デザインによっては、日回し車、日ジャンパー、早修正機構の配置変更も必要となってしまう。そして、ベースからの設計変更で、デザインごとに部品の種類も増えてしまい、コストや部品管理の負担まで増えてしまう。
【0014】
本発明は、従来技術の欠点である、良好な早修正操作感と一般的な24時間車の回転方向の両立を行いながら、日回し車、日ジャンパー、早修正機構の配置変更を行わずに、安価、かつ容易に移動範囲の広い24時間車の配置変更を実施しすることができ、更に余ったスペースを他の表示機能に活用することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の筒車と日回し車は、配置が固定されている。
該筒車は、表示用の小針の付いた24時間車を1日1回回転させるため、該筒車に噛合う配置変更が可能な24時間中間車を有し、該日送り車は、該24時間中間車と噛合い
該日送り車を1日に1回回転させる、配置変更が可能な日回し中間車を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明を実施することで、以下のような効果を得ることができる。
(1)筒車から24時間中間車を介して、24時間車と日回し車に分岐させるとともに、筒車、日ジャンパー、早修正機構は配置固定、日回し車は略配置固定とし、
24時間中間車と、日回し中間車、24時間車の位置を変更可能とすることによって
日車の送りを安定に保ったまま、24時間表示の小針配置を容易に、広範囲で変更することができる。
(2)24時間中間車を介して分岐する形態を採用したので、筒車、日回し車を小さく設計することができる。
また、筒車から輪列を二系統に分割する必要もないため、日車と24時間車の駆動系をコンパクトに配置することができ、余った、平面スペースを他の表示機能に利用することができる。図2Bbに本発明の平面配置を示すが、従来技術の輪列配置である図2Baに対し、占有スペースが非常に少なくなっている。
(3)従来の方法で、これら複数の24時間車の小針配置や、他表示の機能を追加するとベース部品から、部品が新規設計となり、コスト、部品管理の負担が増えてしまう、しかし、本発明を利用することで、これらの負担を増やさずに、部品の組換えによって、複数の表示デザインを実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】標準的な文字板表示顔に対する、24時間車と日回し車の輪列配置と、クロノグラフ輪列を合わせて配置した場合での図を表に表した図である。
【図2】日回し車と、24時間車における従来構造と、本発明の違いを簡略平面図で表したものを表にした図である。
【図3】本発明の日車・24時間輪列配置に、クロノグラフ輪列を加えた平面図である。
【図4】日回し車と24時間車における、従来案と本発明のつなぎの違いを表した輪列ブロック図である。
【図5】3時位置のリューズ断面から、日車の修正を行う輪列機構の斜視図である。
【図6】本発明である輪列配置を行うための地板の穴位置を示した平面図である。
【図7】本発明の筒車と平面的に重なる位置に、クロノグラフ輪列の一部を配置した外観斜視図である。
【図8a】本発明を利用した輪列構成ブロック図の一覧表である。
【図8b】図8a−1,図8a−2の輪列構成によって、配置を行った場合の輪列構成を簡略化した平面図の一覧表である。
【図8c】図8a−3,図8a−4の輪列構成によって、配置を行った場合の輪列構成を簡略化した平面図の一覧表である。
【図8d】図8bに示された輪列配置に、文字板と針を取り付けした外観図である。
【図8e】図8cに示された輪列配置に、文字板と針を取り付けした外観図である。
【図9】24時間中間車30と日回し車20を挟んで日回し中間車40を対称に配置可能であることを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0]全体構成
図3の平面図に基づき、本発明の時計の輪列構成の概略を説明する。
図3は、本発明の日車・24時間輪列配置に、クロノグラフ輪列を加えた平面図であり、日車120は各輪列が見やすいように除いてある。
<日車・24時間系輪列>
10は筒車であり、不図示の時刻系駆動輪列によって12時間で1回転する。
30は本発明の主要構成部品である24時間中間車であり、24時間(1日)で1回転する。
50は、24時間車であり、24時間中間車30と噛み合い24時間(1日)で1回転する。24時間車50の軸に24時間針51が取り付けられ、24時間表示を行う(図1
参照)。
40は日回し中間車であり、24時間中間車30と噛み合い24時間(1日)で1回転する。
20は日回し車であり、日回し中間車40と噛み合い24時間(1日)で1回転し、日車を駆動する。
60は日ジャンパー(躍制レバー)であり、日板の非駆動時に日車がガタ付かないように抑えるためのバネである。
140は巻真であり、リューズ(不図示)により巻真140を回転させることで、151〜154に示す早修正輪列を駆動し、日車120を早修正する。
なお、24時間中間車30、及び、日回し中間車40を除く各部品の役割は、従来技術の時計と同じであり、これ以上の詳細説明は省略する。
【0019】
<クロノグラフ輪列>
200は不図示のクロノグラフ用モータのロータであり、以降に示すクロノグラフ輪列を駆動する。210,220,230は各秒クロノグラフ中間車(1)(2)(3)であり、クロノグラフ用ロータ200の回転を減速して秒クロノグラフ車300を駆動する。秒クロノグラフ車300の軸にはクロノ秒針301が取り付けられ、クロノグラフ秒を表示する(図1参照)。
310,320,330は各分クロノグラフ中間車(1)(2)(3)であり、秒クロノグラフ車300の回転を減速して分クロノグラフ車400を駆動する。分クロノグラフ車400の軸にはクロノ分針71が取り付けられ、クロノグラフ分を表示する(図1参照)。
【0020】
日車・24時間系輪列、クロノグラフ輪列の輪列構成を示すブロック図を図8aに示す。特に、図8a−1が基本構成である。以下、本発明の説明を実施例毎に行う。
[1]第1実施例
以下、図面に基づき第1実施例について説明を行う。
第1実施例においては、日車と24時間車の配置変更を主に説明を行う。
(1.1)表示形態
図1は、標準的な表示形態(以降「顔」と表記する場合有り)のバリエーションと、それに対応する輪列配置を表形式にまとめた図であり、
A列に24時間車と日車の駆動輪列構成の平面図を、
B列にA列の輪列にクロノグラフ輪列を加えた駆動輪列構成の平面図を、
C列に各バリエーションの表示形態を示す。また、
a行に示されるのは、通称「下3つ目」と呼ばれる表示形態であって、
小針が、3時、6時、9時に配置され、
b行に示されるのは、通称「縦3つ目」と呼ばれる表示形態であって、
小針が、12時、6時、9時に配置され、
c行に示されるのは、通称「スイス顔」と呼ばれる表示形態であり、
小針がY字位置の配置で、2時、6時、10時に配置されている。
この3つの表示形態は、標準的な表示形態として人気が高く、バリエーションとして用意されている事が求められる。
図1C列において、6時位置の小針301はクロノ秒を示すクロノ秒針であって、3つの表示形態で共通であり、位置の変更は無い。9時位置の小針71aと10時位置の小針71bはクロノ分を示すクロノ分針であり、図1Ccのスイス顔のみ位置が異なるが、指針自体は同じものである。
これらクロノ分、クロノ秒については、後述の第2実施例にて説明するので、その詳細説明は省略する。
【0021】
(1.2)輪列構成
第1実施例では、これら三種類の小針配置を輪列の組換えにより容易に実現するため、日回し車20、日ジャンパー60、早修正機構151〜154を固定して日板送りの安定性を保ちつつ、24時間中間車30、日回し中間車40の配置変更により、24時間車50の配置を、12時位置、2時位置、3時位置に組換えすることを実現する。以下にこの方法について説明する。
【0022】
図1Aaにおいて、10は筒車、20は日回し車、60は日ジャンパー、120は日車(日板)であり、これらについては、従来技術と同じ構成・役割のため、その説明は省略する。
30は24時間中間車であり、筒車10により駆動され24時間で1回転するとともに、24時間車50、日回し中間車40と噛み合い、これらを駆動する。24時間車50、日回し中間車40については、24時間中間車30と噛み合っている以外は、従来技術と同じ役割のため、その説明は省略する。
【0023】
特許文献3,4で示した従来例による輪列構成と、本実施例における輪列構成による輪列の大きさの比較を図2に示す。図2a行の従来技術では、筒車10により直接日回し車20と24時間車50を駆動するため、各歯車が大きくなっていた。それに対し、図2b行に示す本発明では、24時間中間車30と、日回し中間車40を介して日回し車20と24時間車50を駆動する構成としたので、各歯車を小さくする事が可能となり、日車と24時間車の駆動系をコンパクトに配置することができ、余った平面スペースを他の表示機能に利用することが可能となる。
【0024】
(1.3)ベース部材(地板、輪列受)
図6は、本実施例の他、後続の実施例の説明でも使用される、地板や輪列受などのベース部材の穴位置を示した平面図である。
図6において、
50aは図1Caの下三つ目を実現するために24時間車50のホゾを入れるための地板にあけた穴であり、
50bは図6の縦三つ目を実現するために24時間車50のホゾを入れるための地板にあけた穴であり、
50cは図1Ccのスイス顔を実現するために24時間車50のホゾを入れるための地板にあけた穴である。
【0025】
30aは下三つ目と縦三つ目の場合に24時間中間車30のホゾを入れるための地板にあけた穴であり、
30bはスイス顔の場合に24時間中間車30のホゾを入れるための地板にあけた穴である。
40aは下三つ目と縦三つ目の場合に日回し中間車40のホゾを入れるための地板にあけた穴であり、
40bはスイス顔の場合に日回し中間車40のホゾを入れるための地板にあけた穴である。
各表示バリエーションに対応するための車のホゾ穴を設けておくことにより、地板や輪列受を新規に作成することなく対応する事が可能となる。
なお、30aと30b、40aと40b、50cと50bは各々筒車10の軸と日回し車20の軸を結ぶ線L1に対し対称に配置されており、以下で示す下三つ目もしくは縦三つ目とスイス顔との組み換えを容易にしている。
【0026】
(1.4)下三つ目から縦三つ目への変更
まず、図1Caで示される下三つ目から、図1Cbに示される縦三つ目への変更について説明する。
図1Aaで示される3時位置の24時間車50を、図6の3時位置である50aから図6の12時位置である50bに移動させる。これにより、筒車10、日送り車20、24時間中間車30、日回し中間車40の位置変更を行わないまま、24時間車50の配置を図1Aaの3時位置から、図1Abの12時位置に変更することができる。
【0027】
これは、本発明の輪列つなぎを利用して、24時間中間車30の位置を、3時と12時の24時間車50の位置が、24時間中間車30と筒車10を結ぶ直線に対し、対角になる場所に配置することで、簡単に表示位置を変更できるように輪列配置を行った例である。
具体的には、24時間車50の配置替えのみで下三つ目から縦三つ目への変更にするために、30aは巻真140を通る軸線L2とそれに直交する直線L3を略二等分する角度で筒車10の中心を通る直線L4上に配置される。L4上のどこに配置されるかは、歯車の噛み合いやサイズにより決定される。
このように、表示をしたい複数の位置をあらかじめ、中間車と筒車を結ぶ直線に対して、対角となるように配置すると、中間車を移動させずに表示車の移動のみで、簡単に表示車を配置することが可能となる。
なお、30bの位置は、上述のようにして決まった30aの位置に対し、筒車10と、日回し車20を結んだ直線であるL1に対称となる位置に決定される。
【0028】
(1.5)下三つ目からスイス顔への変更
次に、図1Caで示される下三つ目から、図1Ccに示されるスイス顔への変更について説明する。
(1.4)で示した、下三つ目から縦三つ目への変更時は、12時位置に24時間車50を移動させるスペースが存在したため、24時間車50の移動のみで変更が可能であった。
それに対し、今回の変更の場合、24時間車50の移動先である2時位置には日回し中間車40が存在するため、日回し中間車40の移動も必要である。
また、24時間車50と、24時間中間車30の噛み合いを維持するため、必然的に24時間中間車30の移動も必要となる。
【0029】
変更は、以下のように行われる。
(1)24時間中間車30の位置を図6の30aから30bに移動させる。
(2)日回し中間車40を、図6の40aから40bに移動させる。
(3)24時間車50を50aから50cに移動させる。
これにより、筒車10、日回し車20の配置を変更せず、24時間車の配置を図1Aaの3時位置から、図1Acの2時位置に変更することができる。
【0030】
本変更の場合は、それまで日回し中間車40の存在した位置に24時間車50を配置するために日回し中間車40の移動が必要になる。図9に示すように、日回し車と筒車を結ぶ直線の左右どちらの領域にも日回し中間車40の配置位置を確保しておくことで、この配置が可能となる。
これは、30aと30b、40aと40b、50cと50bを各々筒車10の軸と日回し車20の軸を結ぶ線L1に対し対称に配置することで可能になっている。
【0031】
上述の3表示形態において、1日1回転のため日回し車20と略同じ大きさとなる24時間車50がそれぞれ12時、2時、3時に配置されるため、日回し車20を1時位置に配置している。このように、表示車が配置されない位置に日回し車を配置することにより、表示バリエーションを増やしながら、安定した日送りを行うことが可能となる。なお、日回し車20の位置は、固定である事が好ましいが、31日の日車であれば、1日分である11.6°の間隔で移動させても日送り動作上での大きな問題は無い。
【0032】
以上説明したように、共通のベースを使用したまま、24時間車50の位置を、12時、2時、3時へ、日回し車20の配置を変更することなく移動が可能となるので、日車120と相対的に配置が決まる日ジャンパー60や、早修正機構151〜154の配置変更も行う必要性が無い。そのため、表示形態を変更しても安定した日送りが可能となる。
更に、筒車10は、時針を取り付けする関係上、常に時計方向に回転するが、24時間車50との間に、24時間中間車30を介したことで、24時間車50は常に時計方向に回転することもできる。
【0033】
そして、日回し車20についても、筒車10から、24時間中間車30、日回し中間車40を伝達して回転させられることにより、日車120を反時計方向に回転させることができるので、手操作で、リューズ回転を行った場合でも、日車120が反時計方向に回転してくれるので、良好な操作感も得ることができる。
【0034】
さらに、上記3つの表示形態に対応しながら、24時間表示と日表示の駆動系をほぼ12時−3時の領域にコンパクトに詰め込む事が可能となるので、後述するクロノ系輪列を追加し、多機能化を計る事が可能となる。
なお、図1、図2、図3、図7、図8b、図8cでは、日回し車と24時間車の構造について、平歯車とかな歯の違いも表現されているが、平歯のつなぎをかな歯へ、あるいは、かな歯のつなぎを平歯へ変更した場合でも、本発明の輪列構造を成立させることが可能である。
【0035】
[2]第2実施例
以下、図面に基づき第2実施例について説明を行う。
第2実施例は、第1実施例により空いた空間にクロノグラフ系輪列を効率的に配置するとともに、クロノグラフ系輪列の配置も工夫することで、効率的に表示バリエーションを増やす事が可能なことを示すものである。
以下、図面に基づき説明を行う。
【0036】
図8aは24時間・日板輪列とクロノグラフ系輪列のつなぎ構成を示すブロック図を示した図である。
図8b、図8cは、図1で示した配置を含むバリエーション例であり、24時間・日板輪列とクロノグラフ系輪列の構成を示した図8aのつなぎを利用して実現することが可能な表示形態の輪列配置を示した図である。図8d、図8eは、24時間・日板車輪列とクロノグラフ系輪列の構成を示すブロック図と各輪列ブロック構成で実現可能な表示形態を示した外観図である。
【0037】
(2.1)基本輪列構成
図8bの1行や図8cの3行に示すように、三つの小針表示を行う場合には、クロノグラフ系輪列の殆どが24時間・日車輪列が配置される略12時〜3時の領域を除く領域に配置され、特に、L3を境に9時側の領域に配置される(図3参照)。
これは、12時〜3時の領域には24時間・日板輪列が配置され、3時〜6時の領域には日車等の早修正用の輪列151〜154が配置されるためである。
【0038】
本実施例のクロノグラフ系輪列は、クロノグラフ用モータのロータ200から秒クロノグラフ中間車(1)210、秒クロノグラフ中間車(2)220、秒クロノグラフ中間車(3)230の3つの中間車を介して秒クロノグラフ車300を駆動する。
さらに、秒クロノグラフ車300から、分クロノグラフ中間車(1)310、分クロノグラフ中間車(2)320、分クロノグラフ中間車(3)330の3つの中間車を介して分クロノグラフ車400を駆動する。
【0039】
表示形態変更は、秒クロノグラフ車300と分クロノグラフ車400の位置を、主に、12時、3時、6時、9時の4方向に配置することで行われる。しかし、クロノグラフ系輪列は例えば、図8a−1で示されるように、ロータ200〜分クロノグラフ車400までの歯車が噛み合って初めて成立する。よって、図8a−1での輪列構成を保ちながら、4方向への秒クロノグラフ車300と分クロノグラフ車400の配置変更を可能にするために、分クロノグラフ中間車(1)310、分クロノグラフ中間車(2)320、分クロノグラフ中間車(3)のうちのいずれかを筒車10と略同軸に配置し、筒車10と略同軸の中間車の周りに他のクロノグラフ系輪列の車を配置する構成としている。本実施例では、分クロノグラフ中間車(2)320を筒車10と略同軸に配置している。図7は、分クロノグラフ中間車(2)320と筒車10が略同軸に配置されている状態を示す斜視図である。
図8a−1以外のブロック図については、後述の表示変更の説明の箇所で適宜説明する。
【0040】
ところで、図3や図7において、分クロノグラフ中間車(2)320は筒車10に対し、8時方向に偏心して配置されている。これは、各歯車が比較的大きい24時間・日車駆動輪列が多く配置される12時−3時方向のスペースを少しでも確保するためと、筒車10のかな歯と、分クロノグラフ中間車(1)310との干渉を防ぐことを目的としており、この結果、12時−3時方向のスペース確保と、大きなサイズのクロノグラフ中間車でも効率よく省スペースで配置することができるようになる。
【0041】
(2.2)ベース部材(地板、輪列受)
地板130や輪列受には、クロノグラフ系輪列の配置変更に対応するためのホゾ穴も用意されている。
図6において、
70aは図1Caの下三つ目と、図1Cbの縦三つ目を実現するために分クロノグラフ車400のホゾを入れるための地板にあけた穴であり、
70bは図1Ccのスイス顔を実現するために分クロノグラフ車400のホゾを入れるための地板にあけた穴である。
【0042】
60aは図1Caの下三つ目と図1Cbの縦三つ目の場合に分クロノグラフ中間車(3)330のホゾを入れるための地板にあけた穴であり、
60bは図1Ccのスイス顔の場合に分クロノグラフ中間車(3)330のホゾを入れるための地板にあけた穴であり、
60cは図8d−A2の縦二つ目の場合に分クロノグラフ中間車(3)330のホゾを入れるための地板にあけた穴である。
60aは、筒車10の軸と分クロノグラフ車の9時表示位置70aを通る前出の直線L2に対称となる左右の位置に配置が可能であり、同様に60bは、分クロノグラフ車の10時表示位置70bにおいても、筒車の軸と70bを通る直線L5に対称となる左右の位置に配置が可能である。
図6の例においては、分クロノグラフ中間車の配置スペースを最小にするため、9時の表示位置である70aと、70bの間に分クロノグラフ中間車(3)を配置することで、輪列配置のスペースを最小限とし、ベース部材の支持を外周部に設けることで、強度を保てるように配慮しており、筒車10の軸と70bを通る直線L5と略等角をなす直線L6に対し、対称に配置される。
【0043】
(2.3)表示形態変更の具体例
以下、図面を元に、表示形態変更の具体例を示す。
図1Caの下三つ目から、図1Cbの縦三つ目への配置変更は24時間車の移動のみな
ので、クロノグラフ輪列の配置を変更する必要は無いため、説明を省略する。
(2.3.1)下三つ目からスイス顔への配置変更
図1Caの下三つ目から図1Ccへのスイス顔への配置変更は、
1)分クロノグラフ車400を、70a→70bへ移動し、さらに、
2)分クロノグラフ中間車(3)330を、60a→60bへ移動することで、
分クロノグラフ車400の配置を9時位置から、10時位置に変更することができる。
【0044】
図1Caの下三つ目、図1Cbの縦三つ目、図1Ccのスイス顔は、それぞれ輪列位置の組換えを行って、小針表示位置の変更を行っているが、輪列のつなぎそのものは、図8−a1の関係のまま成立している。これは、図3や図7で示すように、分クロノグラフ中間車の一つを筒車と略同軸に配置したことで、時計の中心部から、中間車を介して放射状に分クロノグラフ車を配置することが可能になったことで実現される。
【0045】
(2.3.2)縦三つ目から縦二つ目、逆縦三つ目への表示変更
縦三つ目から図8d−A2に示す縦二つ目、図8d−D1に示す逆縦三つ目への表示変更を行うには、次の順序で行う。
1)12時位置の24時間車50を削除する。
2)分クロノグラフ中間車(3)330を60cに移動する。
3)1)で空いた50bに、分クロノグラフ車400を移動する。この状態にて、縦二つ目表示となる。
4)逆縦三つ目の場合は、さらに、3時位置に24時間車50を配置する。
4)については、下三つ目と同じ配置であり、説明を省略する。
2)を実施するに当たり、図8a−1で示した輪列つなぎのまま、分クロノグラフ車400と分クロノグラフ中間車(3)330を移動させることで、図8b−AB1の小針配置から、図8b−D1の小針配置に変更することができる。図8a−2は、図8a−1から24時間車50を削除したブロック図を示す。
【0046】
(2.3.3)縦二つ目から横二つ目、上三つ目への表示変更
図8b−A2及び、図8d−A2に示す縦二つ目から、6時位置の秒クロノグラフ針車300を9時位置に移動し、12時位置の分クロノグラフ針車400を3時位置に移動させることで、図8b−B2及び、図8d−B2に示す横二つ目に変更が可能である。
分クロノグラフ針車400の位置変更については、分クロノグラフ中間車(2)320、
分クロノグラフ中間車(3)330、分クロノグラフ針車400の噛み合い比や歯車の大きさを適切にすることで、分クロノグラフ針車400を50aの位置に移動し、分クロノグラフ中間車(3)330を30a、あるいはその付近に移動させることで実現が可能である。
【0047】
秒クロノグラフ針車300については、図8a−1などで明らかなように、クロノグラフローター200から中間車や秒クロノグラフ車200を介して分クロノグラフ車400を駆動するため、秒クロノグラフ針車300の9時位置への移動は、スペースの関係上大幅な輪列変更を必要とする。そこで、図8a−3や図8a−4に示すように、9時位置での秒クロノグラフ表示専用の秒クロノグラフ中間車(1´)211、秒クロノグラフ中間車(2´)221、秒クロノグラフ中間車(3´)231、と秒クロノグラフ車(2)305を追加し、変更を容易にしている。
【0048】
本実施例では、6時位置の秒クロノグラフ車300は指針表示には使用されず、分クロノグラフを駆動するためにのみ使用される。もちろん、秒クロノグラフ車300を指針表示に使用し、6時と9時の両方の位置でクロノ秒表示を行っても良い。この場合、例えば一方の指針を円板表示などに替える。又は、二つの秒表示の前半部、後半部を互いにどち
らか一方を第二の文字板などを用いて覆い隠し、二つの表示によって、秒の前半部、後半部を交互に表示するようにしてもよい。
【0049】
秒クロノグラフ車300と秒クロノグラフ車(2)305は、それぞれ6時と9時の位置に配置される。その両方を駆動する秒クロノグラフ用モータ(不図示)のロータ200は、各秒クロノグラフ車の軸を通るL2とL3で囲まれる領域に配置される事が望ましい。
【0050】
図8c−C3及び、図8e−C3の上三つ目については、図8c−B4の横二つ目から分クロノグラフ車400と分クロノグラフ中間車(3)330を9時表示位置に移動し、24時間車50を3時位置に配置すれば実現できる。
【0051】
(2.3.4)横二つ目からサイド縦二つ目への表示変更
図8c−B4で示す横二つ目の輪列構成で、分クロノグラフ車400と、分クロノグラフ中間車(3)330を3時位置から図8c−A4に示す10時位置に移動させ、秒クロノグラフ車305を8時位置に移動させることで、図8c−A4に示すサイド縦二つ目に変更可能である。この際、秒クロノグラフ中間車(3)231、秒クロノグラフ中間車(2)221、秒クロノグラフ中間車(1)211を、若干移動させる。分クロノグラフ中間車(3)330は、秒クロノグラフ車305が移動したことで空いたスペースに配置される。
24時間車50を3時位置に配置し、図8c−A3のような表示にすることも可能である。
図8d,eには、その他にも各種表示バリエーションが示されている。いずれについても、地板にホゾ穴を適宜設けることで実現可能であるが、これらについては説明を省略する。
【0052】
よって、本発明を利用し、上記の構造にすることにより、日車式カレンダー付きの小針クロノグラフにおいて、カレンダーの良好な早修正方向を実現したまま、同じベースを利用しながら、ジャンパーや、早修正機構の配置を変更することなく、多数の小針配置バリエーションを簡単に実現することが可能となる。
また、図1、図3、図7、図8b、図8cのクロノグラフ輪列において、平歯車とかな歯の違いも表現されているが、平歯のつなぎをかな歯へ、あるいは、かな歯のつなぎを平歯へ変更した場合でも、本発明の輪列構造を成立させることが可能であり、更にクロノグラフ輪列に関しては、秒、及び分中間車の数を増減させても成立させることができる。
よって、図8aに記載されたクロノグラフの構成例と必ず車数が同じになるとは限らない。
【符号の説明】
【0053】
10 筒車
20 日回し車
30 24時間中間車
30a 24時間中間車用軸穴(1)
30b 24時間中間車用軸穴(2)
40 日回し中間車
40a 日回し中間車用軸穴(1)
40b 日回し中間車用軸穴(2)
50 24時間車
50a 24時間車用軸穴(3時位置用)
50b 24時間車用軸穴(12時位置用)
50c 24時間車用軸穴(2時位置用)
51a 24時間車 小針(3時位置)
51b 24時間車 小針(12時位置)
51c 24時間車 小針(2時位置)
60 日ジャンパー
60a 分クロノグラフ中間車(3)用軸穴(9時位置用)
60b 分クロノグラフ中間車(3)用軸穴(10時位置用)
70a 分クロノグラフ車用軸穴(9時位置用)
70b 分クロノグラフ車用軸穴(10時位置用)
71a 分クロノグラフ車 小針(9時位置)
71b 分クロノグラフ車 小針(10時位置)
71c 分クロノグラフ車 小針(12時位置)
71d 分クロノグラフ車 小針(3時位置)
71e 分クロノグラフ車 小針(2時位置)
120 日車
130 ベース(地板)
140 リューズ
150 早修正伝え車(1)
151 早修正伝え車(2)
152 早修正伝え車(3)
153 早修正伝え車(4)
154 早修正伝え車(5)
155 早修正作動車
200 クロノグラフ ローター
210 秒クロノグラフ中間車(1)
211 輪列追加方式での秒クロノグラフ中間車(1)
220 秒クロノグラフ中間車(2)
221 輪列追加方式での秒クロノグラフ中間車(2)
230 秒クロノグラフ中間車(3)
231 輪列追加方式での秒クロノグラフ中間車(3)
300 秒クロノグラフ車
301a 秒クロノグラフ車 小針(6時位置)
301b 秒クロノグラフ車 小針(9時位置)
301c 秒クロノグラフ車 小針(8時位置)
305 輪列追加方式での秒クロノグラフ車
306a 追加輪列での秒クロノグラフ車 小針(8時位置)
306b 追加輪列での秒クロノグラフ車 小針(9時位置)
306c 追加輪列での秒クロノグラフ車 小針(10時位置)
310 分クロノグラフ中間車(1)
320 分クロノグラフ中間車(2)
330 分クロノグラフ中間車(3)
400 分クロノグラフ車



【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻表示を行う指針が取り付けられる筒車と、
該筒車と連動し1日に1回転する24時間中間車と、
該24時間中間車と連動して1日に1回転するとともに回転軸に指針を取り付け可能に構成された24時間車と、
前記24時間中間車と連動する日回し中間車と、
該日回し中間車と連動して回転し日車を駆動する日回し車を有する
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
前記日回し車の位置は略固定であり、
前記24時間中間車、前記24時間車、前記日回し中間車は、複数の位置に配置が可能なように、前記複数位置で軸支するための穴が地板や輪列受に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記24時間中間車、前記24時間車、前記日回し中間車、前記日回し車の配置される位置以外のスペースに配置されるクロノグラフ輪列を有する
ことを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1つに記載の時計。
【請求項4】
前記クロノグラフ輪列が、クロノ秒車とクロノ分車の間に配置されるクロノグラフ中間車を有し、該クロノグラフ中間車が前記筒車と略同軸に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の時計。
【請求項5】
前記クロノグラフ秒車と前記クロノグラフ分車が複数の位置に配置が可能なように、
前記複数位置で軸支するための穴が前記地板や前記輪列受に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の時計。
【請求項6】
前記クロノグラフ秒車の複数の軸支位置が、筒車中心を通過し略直交する線上に配置され、
該直交線と時計外周で囲まれる領域に前記クロノグラフ輪列を駆動するためのクロノグラフモータのロータが配置されることを特徴とする請求項5に記載の時計。
【請求項7】
前記クロノグラフ秒車の複数の軸支位置に対応する前記クロノグラフ中間車を軸支する穴が前記地板や前記輪列受に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−223689(P2010−223689A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69823(P2009−69823)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】