説明

時間振幅変換装置

【課題】TAC方式の複数の時間振幅変換回路を用いた構成において、素子の電気的特性のばらつきの影響を小さくすることができる時間振幅変換装置を提供する。
【解決手段】差動増幅回路8は、非反転側の入力端子と反転側の入力端子との入力電圧の差分を検出し、その検出した差分に利得Aを乗算した電圧を出力する。調整用トランジスタ9のゲート端子には、差動増幅回路8の出力端子が接続されている。調整用トランジスタ9は、入力電圧にトランスコンダクタンスgを乗算した電流を出力する。S/H回路7−b,7−c、差動増幅回路8及び調整用トランジスタ9は、校正部をなしている。制御信号入力端子11〜13には、時間振幅変換回路10の回路動作を制御するための制御部としての制御回路が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばレーザ距離計等に利用される時間振幅変換装置に関するものであり、特に複数の時間振幅変換回路を有する時間振幅変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、パルスレーザレーダ等のレーダシステムでターゲットまでの距離計測を行う際の方式として、TAC(Time to Amplitude Converter:時間振幅変換)方式が知られている。このTAC方式は、レーダからターゲットに向けてレーザパルスを照射し、時間とともに振幅が増大するアナログ信号を発生させ、ターゲットによって反射、もしくは散乱されたパルスがレーダに帰還するまでの変化量を求める方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、レーダシステムにおいて、受光素子の受光面積を広くとることによって、広い受信視野を実現することが可能となる。しかしながら、受光面積を広くとると、受光素子に寄生する容量によって、応答性能や雑音性能の劣化が生じることが知られている。そこで、複数の受光素子とTAC方式の時間振幅変換回路とを複数設けることによって、広い受信視野を実現することが可能となる。
【0004】
次に、図5は、従来のTAC方式の時間振幅変換回路を示す構成図である。図5において、時間振幅変換回路は、電流源1と、第1のスイッチ3と、出力端子4と、容量5と、第2のスイッチ6とを有している。第1のスイッチ3は、電流源1と容量5との間に直列に接続されている。出力端子4は、第1のスイッチ3の容量5側の端子に接続されている。第2のスイッチ6は、容量5に対して並列に接続されている。
【0005】
この図5に示す時間振幅変換回路では、第1のスイッチ3がONし、第2のスイッチ6がOFFすると、電流源1から容量5に電荷が供給され、容量5の電極間電圧が増加する。ここで、電流源1を定電流源とすると、時間に対して一定の割合で電荷が供給される。このため、時間に対して一定の割合で電圧が増加するランプ電圧が出力端子4から出力される。
【0006】
次に、図6は、複数のTAC方式の時間振幅変換回路を並べてなる従来の時間振幅変換装置を示す構成図である。図6において、時間振幅変換装置は、電流源1と、ダイオード接続されたトランジスタ2−aと、並列接続されたN個のTAC方式の時間振幅変換回路10−b,10−cとを有している。時間振幅変換回路10−b,10−cの出力端子4−b,4−cの出力電圧は、外部からの信号に基づく基準時刻からの経過時間に応じて、出力電圧が変化する。
【0007】
時間振幅変換回路10−b,10−cは、トランジスタ2−aとともにカレントミラー回路を形成するトランジスタ2−b,2−cを有している。理想状態において充電電流は、トランジスタ2−aに流れる電流Iと等しく、また容量5−b,5−cの容量値が全て等しい値Cとすると、全ての時間振幅変換回路10(10−b,10−cの総称)の経過時間に対する出力電圧の増加率は、全てI/Cで表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−227483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、現実のトランジスタの電気的特性には、ばらつきがある。このため、図6に示すような従来装置の回路構成では、トランジスタ2−b,2−cの電気的特性のばらつきによって、容量5−b,5−cのそれぞれの充電電流値にばらつきが生じていた。これに加えて、容量5−b,5−cの電気的特性である容量値にもばらつきがあるため、経過時間に対する出力電圧の増加率にばらつきが生じていた。このように、図6に示すような従来装置の回路構成では、複数の時間振幅変換回路10において、経過時間に対する出力電圧の増加率を等しくすることが難しくなっていた。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数のTAC方式の時間振幅変換回路を用いた構成における素子の電気的特性のばらつきの影響を小さくすることができる時間振幅変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の時間振幅変換装置は、調整用電流源を有し、前記調整用電流源から電流を受け、回路動作を制御するための制御部からの信号に基づく基準時刻からの経過時間に応じて、出力電圧が変化する複数の時間振幅変換回路と、前記複数の時間振幅変換回路のうちの2つの時間振幅変換回路の出力電圧の差分を検出する差分検出手段を有し、前記差分検出部の出力に応じて、前記調整用電流源の電流値を調整することによって、前記時間振幅変換回路における前記経過時間に対する出力電圧の増加率を校正する校正部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の時間振幅変換装置によれば、校正部が、差動増幅回路の出力に応じて、調整用電流源の電流値を調整することによって、時間振幅変換回路における経過時間に対する出力電圧の増加率を校正するので、複数のTAC方式の時間振幅変換回路を用いた構成における素子の電気的特性のばらつきの影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1による時間振幅変換装置を示す構成図である。
【図2】図1の各部から出力される主要な信号波形を示すタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2による時間振幅変換装置を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態3による時間振幅変換装置を示す構成図である。
【図5】従来のTAC方式の時間振幅変換回路を示す構成図である。
【図6】複数のTAC方式の時間振幅変換回路を並べてなる従来の時間振幅変換装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による時間振幅変換装置(受信装置)を示す構成図である。
図1において、時間振幅変換装置100は、電流源1と、ダイオード接続されたトランジスタ2−aと、複数の時間振幅変換回路10−b,10−cと、差分検出手段としての差動増幅回路8とを有している。時間振幅変換回路10−cは、調整用トランジスタ9を有している。なお、時間振幅変換装置100における図5,6に示す従来装置と同一の構成部分については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
時間振幅変換回路10−b,10−cは、トランジスタ2−aとともにカレントミラー回路(調整用電流源)をなすトランジスタ2−b,2−cをそれぞれ有している。また、時間振幅変換回路10−b,10−cは、S/H(Sample Hold)回路7−b,7−cをそれぞれ有している。S/H回路7−b,7−cは、それぞれ制御信号入力端子13からのS/Hトリガ信号を受けて、S/Hトリガ信号の立ち下がり時刻の容量5−b,5−cのそれぞれの電極間電圧を保持する。
【0016】
差動増幅回路8の非反転側の入力端子には、S/H回路7−bの出力端子が接続されている。差動増幅回路8の反転側の入力端子には、S/H回路7−cの出力端子が接続されている。また、差動増幅回路8は、非反転側の入力端子と反転側の入力端子との入力電圧の差分を検出し、その検出した差分に利得Aを乗算した電圧を出力する。調整用トランジスタ9のゲート端子には、差動増幅回路8の出力端子が接続されている。調整用トランジスタ9は、入力電圧にトランスコンダクタンスgを乗算した電流を出力する。なお、実施の形態1では、S/H回路7−b,7−c、差動増幅回路8及び調整用トランジスタ9が校正部をなしている。
【0017】
ここで、制御信号入力端子11〜13には、時間振幅変換回路10の回路動作を制御するための制御部としての制御回路(図示せず)が接続されている。制御回路は、制御信号及びS/Hトリガ信号等の信号を生成し、その生成した信号を制御信号入力端子11〜13に出力する。制御信号入力端子11に入力された制御信号によって、第1のスイッチ3−b,3−cのON・OFFが切り換えられる。また、制御信号入力端子12に入力された制御信号によって、第2のスイッチ6−b,6−cのON・OFFが切り換えられる。
【0018】
次に、図1に示す時間振幅変換装置100の動作について説明する。図2は、図1の各部から出力される主要な信号波形を示すタイミングチャートである。図2において、制御回路は、時間振幅変換装置100の電源ONの後、時間振幅変換回路10−b,10−cの充電及びリセットを複数回繰り返す校正時間を経て、時間振幅変換装置100を校正状態(準備状態)から使用可能状態へ移行させる。
【0019】
校正時間中には、第1のスイッチ3−b,3−cがONされてから時間tの経過後にHレベルからLレベルに立ち下がるS/Hトリガ信号が、制御回路から制御信号入力端子13に入力される。このS/Hトリガ信号の立ち下がり時刻が校正時刻である。即ち、校正時刻は、制御回路からのS/Hトリガ信号に基づく時刻である。また、校正時間中には、一定の周期の制御信号が、制御回路から制御信号入力端子11,12に入力される。
【0020】
制御信号入力端子12にHレベルの制御信号が入力されると、容量5−b,5−cの電極間電圧は、それぞれ0となりリセットされる。この後、制御信号入力端子11にHレベルの制御信号が入力されると、第1のスイッチ3−b,3−cがそれぞれONされ、容量5−b,5−cがそれぞれ一定の傾きで充電される。
【0021】
そして、制御信号入力端子13に入力されるS/Hトリガ信号がHレベルからLレベルに立ち下がると、S/H回路7−b,7−cの出力電圧は、それぞれの電極間電圧を保持する。ここで、S/H回路7−b,7−cの出力電圧をそれぞれV7-b,V7-c(1)とすると、それぞれ以下のように表わすことができる。但し、電流源1の電流をIとする。また、トランジスタ2−aとともにカレンミラーを形成するトランジスタ2−b,2−cの電気的特性には、ばらつきがあり、トランジスタ2−bの出力電流をIとし、トランジスタ2−cの出力電流をI+ΔIとする。さらに、容量5−b,5−cの容量値にもばらつきがあり、容量5−bの容量値をCとし、容量5−cの容量値をC+ΔCとする。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、差動増幅回路8の出力は、A(V7-b−V7-c(1))となる。次に、制御信号入力端子12に制御信号が入力され、2回目の校正が行われる。制御信号入力端子12にHレベルの制御信号が入力されると、容量5−b,5−cの電極間電圧がそれぞれ0となる。その後、制御信号入力端子11にHレベルの制御信号が入力されると、第1のスイッチ3−b,3−cがそれぞれONされ、容量5−b,5−cがそれぞれ一定の傾きで充電される。
【0024】
このときに、時間振幅変換回路10−cの調整用トランジスタ9のゲート端子には、差動増幅回路8の出力のA(V7-b−V7-c(1))の電圧が印加されているため、調整用トランジスタ9の出力電流I9(1)=g・A(V7-b−V7-c(1))と、カレントミラー回路の出力電流I+ΔIとを足し合わせた電流が、2回目の校正時の時間振幅変換回路10−cの充電電流となる。
【0025】
このように、校正時間中は、前回の校正後の差動増幅回路8の出力電圧に応じて調整用トランジスタ9から出力される電流と、カレントミラー回路の出力電流とを足し合わせた電流が充電電流となる。ここで、調整用トランジスタ9からの出力電流IOUT9(n+1)と、前回の出力電流IOUT9(n)とには、以下の関係がある。
【0026】
【数2】

【0027】
この漸化式により、N回目の調整用トランジスタ9の出力電流I9(n)と、N→∞を校正終了としたときのS/H回路7−cの出力電圧V7−C(∞)とは、以下のように与えられる。なお、ここでは、|Agt/(C+ΔC)|<1としている。
【0028】
【数3】

【0029】
ここで、以下の関係が成り立つ。
【0030】
【数4】

【0031】
この式により、充電時の傾きのばらつきに対し、IΔC−CΔIの項は、ばらつきを補償する符号をとる。このため、Iout9(n)の式の−Agt/(C+ΔC)の絶対値が1よりも大きくならない範囲でA・gの値を設定することによって、VOUT7−Cの式の第2項の分だけ、時間振幅変換回路10−cの経過時間に対する出力電圧の増加率を、時間振幅変換回路10−bの増加率に近づけることが可能となる。最終的には、N回の校正の後に、制御回路がS/Hトリガ信号の出力を停止することによって、校正終了となり、時間振幅変換装置100が校正状態から使用可能状態に移行する。
【0032】
上記のような実施の形態1によれば、差動増幅回路8が時間振幅変換回路10−b,10−cの時刻tにおける電圧差を検出し、電圧差に応じた電流を調整用トランジスタ9からカレントミラー回路の出力に与えて、カレントミラー回路(調整用電流源)の出力電流の電流値を調整することによって、時間振幅変換回路10−cにおける経過時間に対する出力電圧の増加率を校正する。この構成により、複数の時間振幅変換回路10−b,10−cの経過時間に対する出力電圧の増加率がばらついた場合でも、複数の時間振幅変換回路の10−b,10−cそれぞれの出力電圧を近づけることが可能となり、素子の電気的特性のばらつきの影響を小さくすることができる。
【0033】
また、実施の形態1によれば、差動増幅器やトランジスタという比較的小規模の回路要素で実現可能であり、製品の小型化を図ることができる。
【0034】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による時間振幅変換装置を示す構成図である。図3において、実施の形態2の時間振幅変換装置200は、実施の形態1の時間振幅変換装置100の構成に離散積分手段としての離散積分回路14を加えたものである。
【0035】
具体的に、差動増幅回路8の出力端子には、離散積分回路14の入力端子が接続されている。離散積分回路14の出力端子は、調整用トランジスタ9のゲート端子に接続されている。離散積分回路14は、差動増幅回路8の出力電圧を離散積分するという特徴を有する。時間振幅変換装置200の他の構成部分は、実施の形態1の時間振幅変換装置100と同様であり、同一の構成部分については、図1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
次に、実施の形態2の時間振幅変換装置200の動作について説明する。ここで、時間振幅変換装置200の動作は、実施の形態1の時間振幅変換装置100の動作とほぼ同様であるが、調整用トランジスタ9より出力される電流値のみ異なる。ここでは、実施の形態1との違いを中心に説明する。
【0037】
実施の形態2の時間振幅変換装置200では、差動増幅回路8の出力値が離散積分回路14によって、離散積分されるため、1回目の動作時の離散積分回路14の出力電圧は、V11(1)=A(V7-b−V7-c(1))となる。これに対して、2回目以降の動作時の離散積分回路14の出力電圧は、V11(2)=A(V7-b−V7-c(2))+V11(1)となる。ここで、電圧を調整用トランジスタ9から出力される電流I9(n+1)とI9(n)との関係に置き換えると、以下の式で表せる。
【0038】
【数5】

【0039】
この漸化式を解くことによって、N回目の調整用トランジスタ9の出力電流I9(n)と、N→∞を校正終了としたときのS/H回路7−cの出力電圧VOUT7−C(∞)とは、以下のように与えられる。ここでは、|1−Agt/(C+ΔC)|<1としている。
【0040】
【数6】

【0041】
このように、Iout9(n)式の左辺の1−Agt/(C+ΔC)の絶対値が1よりも大きくならない範囲で、A・gの値を設定することによって、VOUT7−C(∞)のばらつきによる影響を示すΔC及びΔIの項を削除することができ、時間振幅変換回路10−cの経過時間に対する出力電圧の増加率を10−bの増加率と等しくすることが可能となる。最終的には、N回の校正の後に、制御回路がS/Hトリガ信号の出力を停止することによって、校正終了となり、時間振幅変換装置200が校正状態から使用可能状態に移行する。
【0042】
上記のような実施の形態2によれば、差動増幅回路8が時間振幅変換回路10−b,10−cの時刻tにおける電圧差を検出し、その検出した電圧差を離散積分回路14が離散積分し、積分値に応じた電流を調整用トランジスタ9がカレントミラー回路の出力に与える。この構成により、複数の時間振幅変換回路10−b,10−cの経過時間に対する出力電圧の増加率がばらついた場合でも、その増加率のばらつきを完全に補正することが可能となり、素子の電気的特性のばらつきの影響をなくすことができる。
【0043】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3による時間振幅変換装置を示す構成図である。図4において、実施の形態3の時間振幅変換装置300は、実施の形態1の時間振幅変換装置100の構成からS/H回路7−b,7−cを省略し、時間振幅変換装置100の構成に保持手段としてのS/H回路15を加えたものである。
【0044】
具体的に、実施の形態3の差動増幅回路8の非反転側の入力端子は、時間振幅変換回路10−bの出力端子4−bに接続されている。また、差動増幅回路8の反転側の入力端子は、時間振幅変換回路10−cの出力端子4−cに接続されている。さらに、差動増幅回路8は、非反転側の入力端子と反転側の入力端子との入力電圧の差分に利得Aを乗算した電圧を出力する。
【0045】
S/H回路15の入力端子は、差動増幅回路8の出力端子に接続されている。S/H回路15の出力端子は、調整用トランジスタ9のゲート端子に接続されている。S/H回路15は、制御信号入力端子13からのS/Hトリガ信号を受けて、S/Hトリガ信号の立ち下がり時刻の差動増幅回路8の出力電圧を保持する。
【0046】
調整用トランジスタ9には、S/H回路15の出力電圧が入力電圧として入力される。調整用トランジスタ9は、入力電圧にトランスコンダクタンスgを乗算した電流を出力する。時間振幅変換装置300の他の構成部分は、実施の形態1の時間振幅変換装置100と同様であり、同一の構成部分については、図1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
次に、図4に示す時間振幅変換装置300の動作について説明する。制御回路は、時間振幅変換装置300の電源ONの後、S/Hトリガ信号をHレベルとすることによって、時間振幅変換装置100を校正状態とする。ここで、実施の形態3では、制御回路が時間振幅変換回路10−b,10−cを1回充電させることによって、校正終了となる。
【0048】
また、制御回路は、校正中に、制御信号入力端子13へのS/Hトリガ信号をHIGHレベルとしておき、S/H回路15は、電圧入力をそのまま出力する。さらに、制御回路は、校正終了とともに、S/Hトリガ信号をHIGHレベルからLOWレベルに立ち下げ、その時刻(即ち校正時刻)での差動増幅回路8の出力をS/H回路15に記憶させる。即ち、S/H回路15からは、S/Hトリガ信号をHIGHレベルからLOWレベルに立ち下がった時刻の電圧差に相当する電圧が調整用トランジスタ9のゲート端子に加わる。なお、各スイッチ3−b,3−c,6−b,6−cの動作等については、実施の形態1と同様である。
【0049】
ここで、調整用トランジスタ9の出力電流IOUT9(t)、及び時間振幅変換回路10−cの出力電圧Vout4−cは、以下のように表わされる。但し、電流源1の電流をIとする。また、トランジスタ2−aとともにカレンミラーを形成するトランジスタ2−b,2−cの電気的特性には、ばらつきがあり、トランジスタ2−bの出力電流をIとし、トランジスタ2−cの出力電流をI+ΔIとする。さらに、容量5−b,5−cの容量値にもばらつきがあり、容量5−bの容量値をCとし、容量5−cの容量値をC+ΔCとする。
【0050】
【数7】

【0051】
このように、C+ΔC≪A・g・tを満たすように、差動増幅回路8の利得A、調整用トランジスタ9のトランスコンダクタンスg、及び校正時間tを設定することによって、VOUT4−C(t)の式において、ばらつきによる影響を示すΔC及びΔIの項を削除することができ、時間振幅変換回路10−cの経過時間に対する出力電圧の増加率を時間振幅変換回路10−bの増加率と等しくすることが可能となる。最終的に、校正開始から時間tの経過後に、制御回路がS/Hトリガ信号をHIGHレベルからLOWレベルとすることによって、校正終了となり、時間振幅変換装置300が校正状態から使用可能状態に移行する。
【0052】
上記のような実施の形態3によれば、差動増幅回路8が時間振幅変換回路10−b,10−cの時刻tにおける電圧差を検出して、S/H回路15が時間振幅変換回路10−b,10−cの時刻tにおける電圧差を保持し、その保持した電圧差に応じた電流を調整用トランジスタ9がカレントミラー回路の出力に与える。この構成により、複数の時間振幅変換回路10−b,10−cの経過時間に対する出力電圧の増加率がばらついた場合でも、その増加率のばらつきを完全に補正することが可能となり、素子の電気的特性のばらつきの影響をなくすことができる。これに加えて、1回の校正で校正終了となることから、校正時間を短縮させることができる。
【0053】
なお、実施の形態1〜3では、時間振幅変換回路10を2つ用いた回路構成の例を示した。しかしながら、時間振幅変換回路10の数は、2つに限定するものではなく、3つ以上であってもよい。
【0054】
また、実施の形態1〜3では、校正電流源に関して電流を増やす方向のみの校正可能な例を示したが、電流を減らす方向に校正を行うトランジスタを接地に対して挿入してもよくすることで正負のばらつきに対応可能である。
【0055】
さらに、実施の形態1〜3において、時間振幅変換回路内のカレントミラー回路を構成するトランジスタサイズをダイオード接続したトランジスタサイズよりも予め小さくし、また調整用電流源の電流を予め流しておくことで、校正電流を増減両方に対応させることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 電流源、2−a,2−b,2−c トランジスタ、3−b,3−c 第1のスイッチ、4−b,4−c 出力端子、5−b,5−c 容量、6−b,6−c 第2のスイッチ、7−b,7−c S/H回路、8 差動増幅回路(差分検出手段)、9 調整用トランジスタ、10−b,10−c 時間振幅変換回路、11〜13 制御信号入力端子、14 離散積分回路(離散積分手段)、15 S/H回路(保持手段)、100〜300 時間振幅変換装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整用電流源を有し、前記調整用電流源から電流を受け、回路動作を制御するための制御部からの信号に基づく基準時刻からの経過時間に応じて、出力電圧が変化する複数の時間振幅変換回路と、
前記複数の時間振幅変換回路のうちの2つの時間振幅変換回路の出力電圧の差分を検出する差分検出手段を有し、前記差分検出部の出力に応じて、前記調整用電流源の電流値を調整することによって、前記時間振幅変換回路における前記経過時間に対する出力電圧の増加率を校正する校正部と
を備えることを特徴とする時間振幅変換装置。
【請求項2】
前記差分検出手段は、前記制御部からの信号に基づく校正時刻での前記2つの時間振幅変換回路の出力電圧の差分を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の時間振幅変換装置。
【請求項3】
前記校正部は、
前記校正時刻の前記差分検出手段の出力を離散積分する離散積分手段をさらに有し、
前記離散積分手段の出力に応じて、前記調整用電流源の電流値を調整することによって、前記時間振幅変換回路における前記経過時間に対する出力電圧の増加率を校正する
ことを特徴とする請求項2記載の時間振幅変換装置。
【請求項4】
前記校正部は、
前記校正時刻の前記差分検出手段の出力を保持する保持手段をさらに有し、
前記保持手段の出力に応じて、前記調整用電流源の電流値を調整することによって、前記時間振幅変換回路における前記経過時間に対する出力電圧の増加率を校正する
ことを特徴とする請求項2記載の時間振幅変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−88105(P2012−88105A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233572(P2010−233572)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】