説明

時間遅延積分イメージングを使用した微小な動く対象物の光学的断層撮影法

一定速度で動く目的の対象物(1)の3次元再構成。目的の対象物(1)は中心に配置される。目的の対象物(1)は、目的の対象物(1)の周囲に多数の投影角で配置された光学的点光源(27)によって、画像化中に目的の対象物(1)内に焦面が存在しないように目的の対象物(1)からある距離を置いて配置された対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ(25)と協働して、画像化される。各TDIセンサ(25)では、行移動速度は目的の対象物(1)の一定速度に同期される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年8月10日に出願された同時係属のAlan C.Nelsonの米国特許出願第09/927,151号、現在は「APPARATUS AND METHOD FOR IMAGING SMALL OBJECTS IN A FLOW STREAM USING OPTICAL TOMOGRAPHY」という名称の2003年7月8日に発行された米国特許第6,522,775号の一部継続出願である。 本発明は、一般に光学的断層撮影イメージング・システムに関し、より詳細には、光学的断層撮影法、および時間遅延積分を使用して対象物を画像化する光学的断層撮影法に関する。
【背景技術】
【0002】
2002年4月19日に出願された「VARIABLE−MOTION OPTICAL TOMOGRAPHY OF SMALL OBJECTS」という名称のAlan Nelsonの米国特許出願第10/126,026号を参照によって援用する。Nelsonの出願では、シャドウグラムの投影画像を従来のCCDまたはCMOS画像検出器によって、デジタル方式で捕捉する。動く対象物を画像化する際、このようなイメージ・センサでは、動きによるブレを低減する目的で「動きを止める」ための短時間の露光が必要となる。短時間の露光では、動く対象物を画像化するときに得られる信号対雑音比は限られたものになる。
【0003】
光学的断層撮影法(OT)は、ハイ・スループット分析を得るために、流動流中のまたは剛性媒体に閉じ込めた、動く対象物を画像化するのに有利である。さらに、対象物が剛性媒体に閉じ込められている場合、急激なストップ・アンド・ゴー動作よりも一定速度での動作のほうが、提示ステージまたはサンプル・ポジショナーの設計がより単純になる。さらにこのようなシステムにおいて、一定速度の動作ではストップ・アンド・ゴー動作に比べて振動がより低減される。
【0004】
一般に、時間遅延積分(TDI)イメージングは、同一の動く対象物への多数の露光を蓄積し、それによって入射光を集めるのに利用可能な積分時間を効果的に増加させるという概念に基づいている。鮮明な画像を確実に得るために、対象物の動きは露光と同期させなければならない。通常、TDI検出器は行および列に配列した画素を含む。デバイス上に投影される動く画像と同期して、電気信号が行から行に移動する。同期した信号によって、ブレを起こすことなく積分時間の増加がもたらされる。
【0005】
2001年6月19日に発行された「Imaging and Analyzing Parameters of Small Moving Objects Such as Cells」という名称のBasiji他の米国特許第6,249,341号では、イメージング・システムを通過する細胞などの対象物からの光を収集し散乱させて、時間遅延積分(TDI)検出器上で画像化できる装置が開示されている。Basiji他は、TDI検出器を、デバイスに向けられた放射に応じて生成された信号を制御下で移動させることのできる任意の画素処理デバイスとして定義している。Basiji他は、光学的断層撮影法については扱っていないが、この欠陥は本発明によって克服される。
【特許文献1】米国特許出願第09/927,151号
【特許文献2】米国特許第6,522,775号
【特許文献3】米国特許出願第10/126,026号
【特許文献4】米国特許第6,249,341号
【非特許文献1】Blass, M.編「Handbook of Optics: Fiber Optics and Nonlinear Optics」第2版、第4巻、Mcgraw−Hill,2001年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一定速度で動く目的の対象物の3次元(3D)再構成のための装置および方法を提供する。目的の対象物は中心に位置決めされる。目的の対象物は、目的の対象物の周囲に多数の投影角で配置された光学的点光源によって、画像化中に目的の対象物内に焦面が存在しないように目的の対象物からある距離を置いて配置された対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサと協働して画像化される。
【0007】
一態様では、本発明は、層流中の目的の対象物の3次元(3D)再構成のための方法を提供する。目的の対象物は、対象物が層流中で中心に位置決めされ一定速度で移動するように、層流内に注入される。目的の対象物は、層流の周囲に配置された少なくとも1つの光学的点光源によって、サンプリング中に目的の対象物内に焦面が存在しないように層流からある距離を置いて少なくとも1つの光学的点光源の反対側に配置された、少なくとも1つの対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサと協働してサンプリングされる。目的の対象物を通る多数の投影角が、少なくとも1つの光学的点光源と少なくとも1つの対向するTDIイメージ・センサの間を通るときにサンプリングされる。少なくとも1つの投影画像が、TDIイメージ・センサによって生成されるが、その行移動速度は目的の対象物の流速と同期している。
【0008】
別の態様では、本発明は、点フォトン源または平行ビーム投影、および時間遅延積分(TDI)イメージ・センサを使用した3次元光学的断層撮影法のための方法およびシステムを提供することによって、従来技術の欠点を克服する。より詳細には、光学的断層撮影法を使用して流動流中のまたは剛性媒体に閉じ込めた生物細胞などの微細対象物を画像化するシステムが提供される。
【0009】
動く対象物を追跡するためにTDIイメージ・センサの機能を利用することによって、動的光学的断層撮影システムにおける投影画像の信号対雑音比を改善することが、本発明の1つの動機である。
【0010】
別の態様では、本発明は、TDIイメージ・センサの機能を利用して、センサ上で電荷移動方向に動きセンサの行移動速度に同期される対象物を追跡する。一実施形態では、本発明は、光学的断層撮影機器において、細胞が層流によってまたはコンピュータ制御で機械的に平行移動されて再構成シリンダに提示されるとき、行移動ベクトルが細胞の移動ベクトルと平行になるような方向に向けた時間遅延積分(TDI)イメージ・センサを使用して、投影画像または陰影像を捕捉またはデジタル化する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を生物細胞に関する特定の例について説明するが、これらの例は本発明の原理を具体的に示すためのものであって、本発明はそれに限定されないことを理解されたい。一例では、微細体積中で光学的密度の3次元的分布を作成することによって、目的物の構造、分子または分子プローブの位置の決定または定量化が可能になる。タグ付きの分子プローブを使用することによって、微細対象物の特異的構造に付着しているプローブの量を測定することができる。例示のために示すと、生物細胞などの対象物が色素またはタグをつけた少なくとも1つの分子プローブで標識され、このプローブの測定量および位置が、それだけには限らないが肺癌、乳癌、前立腺癌、子宮頚癌、および卵巣癌などの様々な癌を含む細胞の疾病状態についての重要な情報をもたらすことができる。
【0012】
図1を参照すると、本発明の一実施形態で企図する流動光学的断層撮影(FOT)システムの具体例が概略的に示されている。本発明は、流動流中のまたは剛性媒体に閉じ込めた微小な対象物を、光学的点光源または平行ビーム投影、時間遅延積分(TDI)イメージ・センサおよび断層撮影画像再構成を使用して、画像化する装置および方法を提供する。光学的断層撮影(OT)システムは、実施形態の一例では、キャピラリ・チューブ(毛細管)2の周囲に配置された再構成シリンダ12を有するフロー・サイトメータ(flow cytometer)を含む。
【0013】
システムは、X、Y、およびZ方向に座標を有する座標系40に関して向きが定められる。操作の際には、細胞1が注入チューブ3内に注入される。キャピラリ・チューブは、注入端5を広くすることができ、圧力キャップ6を含む。キャピラリ・チューブ2内で層流(laminar flow)を生じさせるためにシース流体(sheath fluid)7がチューブ8に導入される。第1フォトン源9aおよび第1光検出器10aが、パルス波高分析器11とともに働いて、トリガ装置として動作する。パルス波高分析器11は、細胞がチューブを通過するとき、ある細胞の開始位置を表す第1信号30aおよびその細胞の終了位置を表す第2信号30bを提供する。信号30a、30b、31a、および31bは、パルス波高分析器11内で光強度「I」対「時間(time)」の関数として表される。パルス波高分析器11は複数の信号14を生成し、その信号がコンピュータ13へと送られる。コンピュータ13は、動く対象物の速度および光検出器と再構成シリンダ12の間の距離に関する遅延の後で、特定の細胞のためのデータ収集を開始または終了するためにトリガ信号15を再構成シリンダ12に送る。さらに、第2フォトン源9bおよび第2光検出器10bは、有利には、細胞が第3信号31aを開始してから第4信号31bを開始するまでの間隔を、細胞の速度を算出するために、またTDIイメージ・センサの行移動(ライン・トランスファー)速度を同期させるためのタイミング信号として使用するのに有利なように、最初の組から既知の距離だけ下流に配置して利用することができる。タイミング信号は複数の信号14中でコンピュータ13に送信される。コンピュータ13は、どのような有用なパーソナル・コンピュータまたはその等価物であってもよく、再構成シリンダ12に同期信号16を送る。このようにして、フロー軸20に沿った細胞の動きは、後段で図6を参照してより詳細に説明および図示するが、TDIセンサのあるステージから次のステージへの電荷の移動速度と一致する。
【0014】
ここで図2を参照すると、本発明の代替実施形態で企図する可変動作光学的断層撮影(VOT)システムの具体例が概略的に示されている。VOTシステム100は、機械的ポジショナーを利用して、チューブ内で剛性媒体に閉じ込めた細胞を一回に1つづつ提示する。図1を参照して説明したFOTシステムと比較すると、VOTシステム100では、細胞の速度が再構成シリンダ12内でTDIセンサと同期するように精確に制御されるので、フォトン源9および光検出器10を含む1つのトリガ機構しか必要でない。ここでトリガは、パルス波高分析器11およびコンピュータ13によって処理され、データ収集を開始および終了するために使用される。双頭矢印で示すように、本実施形態のキャピラリ・チューブは、コンピュータ制御のモータ17によって駆動されるスクリュー・ドライブ18によって、Z軸に沿って再構成シリンダ12中を通って平行移動される。コンピュータ制御のモータ17は、コンピュータ13から制御信号19を受け取る。本開示の利益を享受する当業者には、スクリュー・ドライブの代わりにキャピラリ・チューブを線形に一定速度で平行移動させることのできる任意の機構を使用できることが理解されよう。
【0015】
再構成シリンダからの信号を直接分析して、またはコンピュータ断層撮影画像の再構成技法を用いて処理して、細胞についての2次元または3次元情報を得ることができる。
【0016】
ここで図3を参照すると、本発明の一実施形態で企図する再構成シリンダ12の具体例が概略的に示されている。再構成シリンダ12は、キャピラリ・チューブ2の周囲にほぼ同軸に配設された、選択可能な波長の複数の点フォトン源(フォトンの点光源)27を含む。複数の点フォトン源27は、光のスペクトルの選択可能な部分に対して感応性を有する対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ25と協働して動作し、その際TDIイメージ・センサ25は、複数の点フォトン源27からの光を、その内で動く細胞など任意の対象物を含むキャピラリ・チューブ2を通過した後で受け取るように配設されている。例えば、米国カリフォルニア州MilpitasのFairchild Imaging, Inc.から発売されている型式番号CCD525および/または型式番号CCD582などの従来のTDIセンサは、既知の原理に従って画像を処理するための利用可能な出力として信号情報を提供するレジスタを組み込んでいることを特徴としている。このようなデバイスは、高速の行転送速度をユーザが制御および同期できることを特徴とする。
【0017】
操作においては、細胞1は再構成シリンダを通過する途中で少なくとも1つの点フォトン源を通過する。本発明の1つの特徴は、選択可能な波長の複数の点フォトン源27がキャピラリ・チューブ2の周囲にほぼ同軸に配設されていることである。複数の点フォトン源27は、光のスペクトルの選択可能な部分に対して感応性を有する対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ25と協働して動作し、これによって細胞1を透過した光の投影21を得ることが可能になる。このようにして1組の投影光線を生成することができ、投影光線は光源点と個々の感知素子を結ぶ直線として表すことができる。例示の目的で、光線の一例が光線53として示されている。光源点から特定の投影光線に沿って送られるフォトン数と特定の感知素子が受け取るフォトン数の差は、投影光線の経路に沿ってキャピラリ・チューブ内の細胞および他の内容物との相互作用によって失われるまたは減衰されるフォトン数に関連している。
【0018】
光の散乱、フォトン・エネルギーの変位、不完全な幾何形状、および不十分なコリメーション(衝突)によって問題(又は混乱)が生じる可能性があり、かつ多数の光源点が同時に付勢されるとき、特定の感知素子に異なる光源からのフォトンが到達する可能性があることに留意されたい。例えば本明細書で述べた、点光源およびそれらに対向する検出器のパターンの幾何形状を使用して再構成シリンダを構成し、多数の点光源の作動およびセンサ・アレイの読出しを適切に時間調整(タイミング)または多重化することによって、これらの問題に起因するフォトンの混入を減らすことができる。
【0019】
フォトンの混入は、例えば細胞が存在しない状態でシステムを較正することによって補償できる。つまり、各光源を順々に照明させ、それぞれのセンサに対する効果を測定することができ、それによって、システムを基準化する際に使用するオフセット・データが得られる。追加の較正段階では、例えば、その光学的特性が知られており細胞の画像化の対象となる密度範囲に及ぶ、ラテックス・ポリマー・ビーズ(latex polymer beads)または他のミクロスフェア(microsphere)もしくは偏球面の画像化を伴うこともある。
【0020】
図3は、点光源およびセンサの特定の幾何形状および配置を簡略化した概略図である。本発明の原理を分かり易く示す目的で図面を簡略化するために、限られた数の点光源および検出器のみを図示する。有利には追加の点光源および検出器はまとめることができ、180までまたは180を超える投影で十分な投影図を得るために、有利には複数のこのようなユニットを所定の径方向の変位量で互いに積み重ねることができることが、本開示の利益を享受する当業者には理解されよう。
【0021】
ここで図4を参照すると、再構成シリンダ12Aの別の例の部分頂面図の具体例を概略的に示す。再構成シリンダ12Aの各部分は、TDIイメージ・センサ25を含む。この例では、複数の投影21、ここでは最大で3つの投影21が、各センサで画像化され、再構成シリンダの180度の角度幅部分にそれぞれ15の投影が収まるようになっている。好ましい実施形態では、2つのこのような180度の角度幅部分を使用する。断層撮影法による再構成を可能にするのに十分な数の径方向投影からの細胞の投影画像が得られるかぎり、点光源およびセンサの多くの異なる幾何形状または配置を使用してほぼ同様の結果を達成できることが本開示の利益を享受する当業者には理解されよう。
【0022】
図5を参照すると、本発明の実施形態で企図する再構成シリンダ12Bの特に有用な設計が示されている。ここで、点光源27のリングがキャピラリ・チューブ2の周囲に配置され、TDIイメージ・センサ25のリングが点光源の下方の平面(プレーン)に配置されている。図では4つの点光源しか示していないが、TDIイメージ・センサ25のリングは、有利には、動く対象物の画像の断層撮影法による再構成を可能にするのに十分な数である、より多くの数の点光源を含み得ることが理解されよう。さらに、TDIイメージ・センサは点光源の平面の上にあっても下にあってもよい。有利には点光源は円錐ビーム35を生成できる。点光源およびTDIイメージ・センサを別々の平面に配置することにより、シリンダの両側の点光源が他の投影円錐ビームと物理的に干渉しなくなる。
【0023】
キャピラリ・チューブ2の曲面は、投影システムでは望ましくないことがある集束効果をもたらす円筒レンズとして作用する。キャピラリ・チューブ2によるフォトンの屈折(曲がり)は、点光源とチューブの間およびチューブと検出器表面の間の空間28をキャピラリ・チューブの屈折率と一致する屈折率を有する材料で満たせば、大幅に低減できることが、本開示の利益を享受する当業者には理解されよう。さらに、チューブは空間を満たす材料と光学的に結合する。このような光学結合は、例えばオイルまたはゲルによって実現することができる。
【0024】
ここで図6を参照すると、TDIイメージ・センサの操作を図示する流れ図50の例が概略的に示されている。細胞の画像要素に対応する電荷が、画像に同期してTDIセンサの画素列51を下向きに移動する。電荷の移動は順次行われ、蓄積された電荷がセンサ26の最下部のレジスタで列から読み出される。
【0025】
本発明で企図する断層撮影システムの一実施形態では、各センサが、Z軸に沿った細胞の動き20と同じである行移動方向19を向くように、複数のTDIセンサ25の向きが定められている。TDIイメージ・センサの行移動速度は、コンピュータ13からのタイミングまたはクロック信号によって細胞の速度と同期される。
【0026】
プロセスの流れは、動く細胞1および時間ライン34に沿った様々な時間におけるTDIセンサ25に対する細胞の位置を示している。time=0では、細胞1はTDIセンサ25のちょうど上にあり画像は感知されない。time=1では、細胞1はTDIセンサ25によって一部が画像化される。細胞1の陰影像51は一度に一行づつ画像化される。各画像行に対応する電荷22が、time=0からtime=5までTDIイメージ・センサを下っていくその画像行の動きに同期してセンサ画素23の次の行に移動する。このように、各画素に対応する電荷がTDI検出器25の各列24を下向きにたどって蓄積され、最下部のレジスタ26でtime=5のときに読み出される。
【0027】
TDIイメージ・センサの行数すなわち段数に応じて(例えば、カナダ、オンタリオ州WaterlooのDALSAから販売されているDALSA IL−E2センサなどの96段TDIセンサでは96倍まで)、信号が増大される。TDIイメージ・センサの行移動速度は53KHzまで利用可能である。これは、フレーム速度53,000フレーム/秒と同等である。
【0028】
光源
各光源は、同じ全般的特性を有することができ、好ましくは、
・小さい円形の点光源に近似させることができる。
・明るく、既知のスペクトル内容を有することができる。
・光源から放射されたフォトンが、5〜10度の小さい円錐角を有する円錐またはすべてのフォトン光線が平行であるペンシル・ビームなど、既知の形状のビームを形成することができる。
【0029】
各光源は、1つの投影角についてデータを生成する。細胞がモジュールを通過するとき、キャピラリ・チューブの中心軸を軸とする螺旋に沿って配列された複数の光源が、多数の投影角からデータを生成する。センサの幾何形状に応じて、いくつかの点光源を、投影がセンサでオーバーラップしないように同じ円周上で同一直線に配列することできる。所望の光源数は、各平面再構成(x−y平面)または容積再構成内で必要な解像度の関数である。さらに光源の波長は、様々なダイオードまたは他のレーザを使用すること、あるいは白色光源または他の広帯域光源、例えば水銀アークランプまたはキセノンアークランプなどをバンドパス・フィルタリングすることのいずれかによって、選択可能である。
【0030】
光学的光源点を作製するためにいくつかの選択肢を使用することができる。例えば、
・レーザまたは他の高輝度フォトン源の前方の開口
・ピンホールの入口側および出口側での表面プラズモンによるフォトンの集束を利用した開口
・微小な断面を備えた光ファイバ
・フォトン源の前方の短焦点距離レンズ
・蛍光面上の点に照射する電子ビーム(CRTの形式)
・上記の様々な組合せ
【0031】
広がる光ビームを利用した形状は、光源に近づく対象物がなす幾何角度が広くなるので、点光源が目的の対象物(細胞)に近づくほど倍率が高くなる。単純投影システムでの倍率は、おおよそM=(A+B)/Aであり、ここでAは点光源と対象物(細胞)の間の距離であり、Bは対象物と検出器の間の距離である。反対に、必要な解像度がシステム設計の前に分かっている場合は、形状をその特定の解像度に合わせて最適化することができる。背景に関しては、当業者には、Blass, M.編「Handbook of Optics: Fiber Optics and Nonlinear Optics」(第2版、第4巻、Mcgraw−Hill,2001年)をお薦めする。
【0032】
以上、特許法令に準拠し、本発明の新規の原理を応用し、必要とされる例示的および専門的部品を作製し使用するのに必要な情報を当業者に提供する目的で、本発明をかなり詳細に説明してきた。しかし、本発明は明確に異なる機器、デバイス、および再構成アルゴリズムによっても実行することができ、本発明の真の精神と範囲から逸脱することなく、機器の細部および操作手順の両方に関して様々な改変が達成できることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態で企図する流動光学的断層撮影(FOT)システムの具体例を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態で企図する可変動作光学的断層撮影(VOT)システムの具体例を概略的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態で企図する再構成シリンダの具体例を概略的に示す図である。
【図4】再構成シリンダの別の例の部分頂面図の具体例を概略的に示す図である。
【図5】点光源およびTDIイメージ・センサを異なる平面上に備える、再構成シリンダの具体例を概略的に示す図である。
【図6】TDIイメージ・センサの操作を具体的に示す流れ図の例を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の対象物(1)の3次元再構成のための方法であって、
(a)前記対象物が層流中で中心に位置決めされ一定速度で動くように、前記目的の対象物(1)を前記層流内に注入する工程と、
(b)前記層流の周囲に配置された少なくとも1つの光学的点光源(27)によって、サンプリング中に前記目的の対象物(1)内に焦面が存在しないように前記層流からある距離を置いて前記少なくとも1つの光学的点光源(27)の反対側に配置された少なくとも1つの対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ(25)と協働して、前記目的の対象物(1)をサンプリングする工程であって、前記目的の対象物(1)が前記少なくとも1つの光学的点光源(27)と前記反対側の少なくとも1つの光学的センサ(25)の間を流れるときに、前記目的の対象物(1)を通る多数の投影角がサンプリングされる工程と、
(c)行移動速度を前記目的の対象物(1)の流速と同期させた前記少なくとも1つのTDIイメージ・センサ(25)によって、少なくとも1つの投影画像(51)を生成する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記目的の対象物(1)が細胞または細胞核を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光学的投影ビームが円錐ビーム(35)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
目的の対象物(1)の3次元再構成のための方法であって、
(a)目的の対象物(1)を線形容器(2)中に挿入する工程と、
(b)前記線形容器(2)の周囲に配置された少なくとも1つの光学的点光源(27)を使用して、サンプリング中に前記目的の対象物(1)内に焦面が存在しないように前記線形容器(2)からある距離を置いて前記少なくとも1つの光学的点光源(27)の反対側に配置された少なくとも1つの対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ(25)と協働して、前記目的の対象物(1)をサンプリングする工程であって、前記目的の対象物(1)が前記少なくとも1つの光学的点光源(27)と前記少なくとも1つの対向する光学的センサ(25)の間を動くときに、前記目的の対象物(1)を通る多数の投影角が、前記少なくとも1つの光学的点光源(27)によって生成された光学的投影ビームによってサンプリングされる工程と、
(c)前記目的の対象物が一度に1つづつ前記光学的投影ビームを通過するように、前記線形容器(2)を一定速度で平行移動させる工程と、
(d)行移動速度を前記対象物の平行移動速度と同期させた前記少なくとも1つの対向するTDIイメージ・センサ(25)によって、少なくとも1つの投影画像(51)を生成する工程とを含む方法。
【請求項5】
前記目的の対象物(1)が細胞または細胞核を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記目的の対象物(1)を前記線形容器(2)中に挿入する工程が、複数の細胞をチューブ内に挿入する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記光学的投影ビームが円錐ビーム(35)である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
目的の対象物(1)の3次元再構成のための方法であって、
(a)目的の対象物(1)を一定速度の層流内に注入する工程と、
(b)少なくとも1つの前記目的の対象物(1)が再構成シリンダ(12)を通過するとき、前記少なくとも1つの目的の対象物(1)に関して複数の角度で1組の投影画像(51)を生成する工程であって、前記再構成シリンダ(12)が第1平面に複数の点光源(27)を、第2平面に複数の時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ(25)を含み、前記第1平面と前記第2平面は異なるが平行であり、前記目的の対象物(1)が前記再構成シリンダ(12)を通過するときにそれを画像化するように、前記複数の点光源(27)および前記複数のTDIセンサ(25)を配列する方法。
【請求項9】
前記再構成シリンダ(12)が点光源(27)の1つ以上の平面を含み、前記点光源(27)の1つ以上の平面がそれぞれ、関連するTDIセンサ(25)の1つ以上の各平面と協働して、前記目的の対象物(1)の複数の画像を生成するように働く、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記点光源(27)の1つ以上の各平面および前記関連するTDIセンサ(25)の1つ以上の各平面が、異なる画像を捕捉するように径方向に互いにずらして配置されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
目的の対象物(1)の3次元再構成のための方法であって、
(a)複数の対象物を、前記目的の対象物(1)を含む線形容器(2)内に挿入する工程と、
(b)必要に応じて前記目的の対象物(1)をセンタリングする工程と、
(c)前記目的の対象物(1)が前記再構成シリンダ(12)内に位置するまで前記線形容器(2)を平行移動させる工程であって、前記再構成シリンダ(12)が第1平面に複数の点光源(27)を、第2平面に複数の時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ(25)を含み、前記第1平面と前記第2平面は異なるが平行である工程と、
(d)前記複数の点光源(27)を使用して複数の光学的投影ビームで前記目的の対象物(1)を照明する工程であって、前記目的の対象物(1)が前記再構成シリンダ(12)を通過するときにそれを画像化するように、前記複数の点光源(27)および前記複数のTDIセンサ(25)を配列する工程と、
(e)前記目的の対象物(1)の1組の投影画像(51)を複数の角度で生成する工程とを含む方法。
【請求項12】
前記複数の点光源(27)が1つ以上の平面に配置され、選択された平面の複数の点光源(27)がそれぞれ、関連するTDIセンサ(25)の各平面と協働して、前記目的の対象物(1)の複数の画像を生成するように働く、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
選択された平面の前記複数の各点光源(27)および前記関連するTDIセンサ(25)の各平面が、前記目的の対象物(1)の異なる画像を捕捉するように、それぞれ少なくとも1つの他の点光源平面およびTDI平面から軸方向にずらして配置されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一定速度で動く目的の対象物(1)の3次元再構成のための方法であって、
(a)前記目的の対象物(1)をセンタリングする工程と、
(b)前記目的の対象物(1)の周囲に多数の投影角で配置された複数の光学的点光源(27)によって、画像化中に前記目的の対象物(1)内に焦面が存在しないように前記目的の対象物(1)からある距離を置いて配置された複数の対向する時間遅延積分(TDI)イメージ・センサ(25)と協働して、前記目的の対象物(1)を画像化する工程であって、前記複数のTDIセンサ(25)がそれぞれ前記目的の対象物(1)の一定速度と同期された行移動速度を有する工程とを含む方法。
【請求項15】
前記複数の光学的点光源(27)が、ほぼ同軸に配設され前記複数の対向するTDIイメージ・センサ(25)と協働して動作する選択可能な波長の複数の点フォトン源(27)を含む、再構成シリンダ(12)内に配置され、前記複数の対向するTDIイメージ・センサ(25)が、光のスペクトルの選択可能な部分に対して感応性を有し、前記複数の対向するTDIイメージ・センサ(25)が、前記複数の点フォトン源(27)からの光を前記目的の対象物(1)を通過した後で受け取るように配設されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の光学的点光源(27)が、点光源(27)のリングとして作製され、前記複数のTDIイメージ・センサ(25)が、前記点光源(27)の前記リングの下方の平面に配置されているTDIイメージ・センサ(25)のリングを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記目的の対象物(1)を画像化する工程が、少なくとも3つの投影を前記複数のTDIセンサ(25)上でそれぞれ画像化する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記目的の対象物(1)をサンプリングする工程が、少なくとも3つの投影を前記複数のTDIセンサ(25)上でそれぞれ画像化する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの光学的点光源(27)が、点光源(27)のリングをさらに含み、前記少なくとも1つのTDIセンサ(25)が、前記点光源(27)の前記リングの下方の平面に配置されているTDIイメージ・センサ(25)のリングを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの光学的点光源(27)が、ほぼ同軸に配設され前記少なくとも1つのTDIセンサ(25)と協働して動作する選択可能な波長の複数の点フォトン源(27)を含む、再構成シリンダ(12)内に配置され、前記少なくとも1つのTDIイメージ・センサ(25)が光のスペクトルの選択可能な部分に対して感応性を有する、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−501474(P2006−501474A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541637(P2004−541637)
【出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/030063
【国際公開番号】WO2004/031809
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503351962)ヴィジョンゲイト,インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】