説明

曲面加工成形品の製造方法、曲面加工成形品の製造装置及び天然木柔軟シート

【課題】天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる曲面加工成形品において、表面に生じる裂けや割れを低減することができる曲面加工成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】天然木突板11を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造方法であって、天然木突板11に1種類のみの合成樹脂14を含浸させて天然木柔軟シート10を生成する天然木柔軟シート生成工程(S102)と、生成された天然木柔軟シート10を射出成形により曲面形状に加工して曲面加工成形品40を製造する射出工程(S104)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造方法、曲面加工成形品の製造装置、及び当該製造に使用される天然木柔軟シートに関する。
【背景技術】
【0002】
外観に曲面形状の天然木目柄を有する曲面加工成形品については、自動車の内装や家具、電気製品などにニーズが増えてきている。しかし、削り出し方式やプレス方式は原木を使用するため捨てる部分が多く、安価で量産性がある生産方法は柔軟加工を施した天然木シートを用いてインジェクション成形や真空成形を行なう方法しか存在しえない。
【0003】
ここで、従来、この天然木シートとして、天然木薄板材の空隙に合成樹脂と常温での蒸気圧が1.3kPa以下である線状高分子化合物との混合物が充填された天然木自在シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この天然木自在シートを射出成形により曲面形状に加工することで、曲面加工成形品を製造することができる。そして、この曲面加工成形品は、天然木突板と合成樹脂とから形成される天然木シートを用いて、射出成形により成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3536048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の天然木シートを用いて曲面加工成形品を製造する場合、当該曲面加工成形品の表面に裂けや割れが生じることが多い。つまり、極めて薄い天然木突板を曲面状に合成樹脂に貼り合せても、わずかな引張応力で裂けたり割れたりする。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる曲面加工成形品において、表面に生じる裂けや割れを低減することができる曲面加工成形品の製造方法、曲面加工成形品の製造装置、及び当該製造に使用される天然木柔軟シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る曲面加工成形品の製造方法は、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造方法であって、前記天然木突板に1種類のみの合成樹脂を含浸させて天然木柔軟シートを生成する天然木柔軟シート生成工程と、生成された前記天然木柔軟シートを射出成形により曲面形状に加工して前記曲面加工成形品を製造する射出工程とを含む。
【0008】
これによれば、曲面加工成形品の製造方法において、天然木突板に1種類のみの合成樹脂を含浸させて天然木柔軟シートを生成し、生成した天然木柔軟シートを射出成形により曲面形状に加工して曲面加工成形品を製造する。ここで、本願発明者は、上記特許文献1における天然木自在シートを用いて曲面加工成形品を製造した結果、表面に裂けや割れが生じることを見出した。また、本願発明者は、鋭意研究の結果、天然木突板に1種類のみの合成樹脂を含浸させて生成した天然木柔軟シートを用いて曲面加工成形品を製造した場合に、当該天然木自在シートを用いた場合よりも表面に生じる裂けや割れを低減することができ、平面から曲面に形状が連続して変化しても木目に不自然な乱れが生じないことを見出した。そして、天然木自在シートには2種類の合成樹脂の混合物が充填されているが、天然木柔軟シートには1種類のみの合成樹脂しか使用されていないため、容易に天然木柔軟シートを生成することができる。このため、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる曲面加工成形品において、容易に生成できる天然木柔軟シートを用いて、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品を製造することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記天然木柔軟シート生成工程は、前記天然木突板に裏打ちシートを貼り合せる裏打ちシート貼り合せ工程と、前記裏打ちシートを貼り合せたのち、前記裏打ちシートに前記1種類のみの合成樹脂を塗布することで、前記天然木突板に当該合成樹脂を含浸させる合成樹脂密着工程とを含む。
【0010】
これによれば、天然木柔軟シート生成工程において、天然木突板に裏打ちシートを貼り合せたのち、当該裏打ちシートに、1種類のみの合成樹脂を塗布する。つまり、裏打ちシートに合成樹脂を塗布することで、天然木柔軟シートを容易に生成することができる。このため、容易に生成できる天然木柔軟シートを用いて、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品を製造することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記裏打ちシート貼り合せ工程では、前記天然木突板に前記裏打ちシートを貼り合せる前に、前記天然木突板にプライマー処理、イトロ処理、T−LOCプロセス処理及びSTURS処理のうち少なくとも1つの表面改質処理を施す。
【0012】
これによれば、裏打ちシート貼り合せ工程において、天然木突板に表面改質処理を施してから、裏打ちシートを貼り合せる。このため、当該表面改質処理を施すことで、天然木突板に裏打ちシートを貼り合せる際の接合強度を高めることができる。
【0013】
また、好ましくは、前記裏打ちシート貼り合せ工程では、前記天然木突板に、前記裏打ちシートとして不織布又はプラスチックシートを貼り合せる。
【0014】
また、好ましくは、前記天然木柔軟シート生成工程は、さらに、前記合成樹脂密着工程の後に、前記天然木突板に貼り合せた前記裏打ちシートに接着剤を塗布する接着剤塗布工程を含む。
【0015】
また、好ましくは、前記接着剤塗布工程では、前記裏打ちシートに前記接着剤を塗布する前に、前記裏打ちシートにプライマー処理、イトロ処理、T−LOCプロセス処理及びSTURS処理のうち少なくとも1つの表面改質処理を施す。
【0016】
これによれば、接着剤塗布工程において、裏打ちシートに表面改質処理を施してから、接着剤を塗布する。このため、当該表面改質処理を施すことで、裏打ちシートに接着剤を塗布する際の接合強度を高めることができる。
【0017】
また、好ましくは、前記接着剤塗布工程では、前記裏打ちシートに、前記接着剤として、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、またはエポキシ系接着剤を塗布する。
【0018】
また、好ましくは、前記射出工程は、前記天然木柔軟シート生成工程で生成された天然木柔軟シートを、金型の内方に配置する天然木柔軟シート配置工程と、前記金型の内方に熱可塑性樹脂を注入する熱可塑性樹脂注入工程と、前記天然木柔軟シートと前記熱可塑性樹脂とで一体成形される前記曲面加工成形品を製造する曲面加工成形品製造工程とを含む。
【0019】
これによれば、曲面加工成形品の製造方法において、生成した天然木柔軟シートを金型の内方に配置し、金型の内方に熱可塑性樹脂を注入し、天然木柔軟シートと熱可塑性樹脂とで一体成形される曲面加工成形品を製造する。これにより、天然木柔軟シートを用いることで、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品を製造することができる。
【0020】
また、好ましくは、前記天然木柔軟シート配置工程では、前記金型の内方の前記天然木柔軟シートを挟み込む領域として他の領域よりも粗い表面加工が施された領域で、前記天然木柔軟シートを挟み込むように、前記金型の内方に前記天然木柔軟シートを配置する。
【0021】
これによれば、天然木柔軟シート配置工程において、金型の内方の表面粗加工が施された領域で、天然木柔軟シートを挟み込む。これにより、天然木柔軟シートに貼り合わされている裏打ちシートが金型にへばりつくのを抑制することができ、曲面加工成形品の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。
【0022】
また、好ましくは、前記熱可塑性樹脂注入工程では、前記金型に満遍なく設けられた複数の注入孔から前記熱可塑性樹脂を注入する。
【0023】
これによれば、熱可塑性樹脂注入工程において、複数の注入孔から熱可塑性樹脂を金型内方に注入する。これにより、熱可塑性樹脂が満遍なく金型内方に注入されるので、曲面加工成形品の表面に、皺や空気溜まりが生ずるのを抑制することができ、曲面加工成形品の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。
【0024】
また、好ましくは、前記熱可塑性樹脂注入工程では、前記金型の外方に配置された冷却体で前記熱可塑性樹脂を冷却することで、前記金型の内方での前記天然木柔軟シートの移動を規制する。
【0025】
これによれば、熱可塑性樹脂注入工程において、冷却体で熱可塑性樹脂を冷却することで、金型の内方での天然木柔軟シートの移動を規制する。つまり、熱可塑性樹脂が冷却により天然木柔軟シートと密着して、金型の内方で天然木柔軟シートの動きが規制される。これにより、天然木柔軟シートが金型内で固定されるので、天然木柔軟シートが金型内で特定の方向に動いて木目柄が傾くようなことを防止したり、天然木柔軟シートが動くことにより曲面加工成形品の表面に裂けや割れが生じることを低減することができる。
【0026】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る天然木柔軟シートは、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造に使用される天然木柔軟シートであって、前記天然木突板と、前記天然木突板に貼り合せられた裏打ちシートと、前記裏打ちシートに塗布された1種類のみの合成樹脂とを備える。
【0027】
これによれば、天然木柔軟シートは、天然木突板に裏打ちシートを貼り合せて、裏打ちシートに1種類のみの合成樹脂を塗布することで、生成される。ここで、本願発明者は、上記特許文献1における天然木自在シートを用いて曲面加工成形品を製造した結果、表面に裂けや割れが生じることを見出した。また、本願発明者は、鋭意研究の結果、天然木突板に1種類のみの合成樹脂を含浸させて生成した天然木柔軟シートを用いて曲面加工成形品を製造した場合に、当該天然木自在シートを用いた場合よりも表面に生じる裂けや割れを低減することができることを見出した。そして、天然木自在シートには2種類の合成樹脂の混合物が充填されているが、天然木柔軟シートには1種類のみの合成樹脂しか使用されていないため、容易に天然木柔軟シートを生成することができる。このため、容易に生成できる天然木柔軟シートを用いて、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品を製造することができる。
【0028】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る曲面加工成形品の製造装置は、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造装置であって、前記天然木突板に1種類のみの合成樹脂を密着させて生成される天然木柔軟シートを挟み込む領域であって、他の領域よりも粗い表面加工が施された領域を有し、熱可塑性樹脂を注入するための複数の注入孔が満遍なく設けられた金型と、前記金型の内方での前記天然木柔軟シートの移動を規制するために前記金型の外方に配置された、前記熱可塑性樹脂を冷却する冷却体とを備える。
【0029】
これによれば、曲面加工成形品の製造装置は、天然木柔軟シートを挟み込む表面粗加工が施された領域を有し、複数の熱可塑性樹脂の注入孔が設けられた金型と、熱可塑性樹脂を冷却する冷却体とを備えている。つまり、金型の内方の表面粗加工が施された領域で、天然木柔軟シートを挟み込む。これにより、天然木柔軟シートに貼り合わされている裏打ちシートが金型にへばりつくのを抑制することができ、曲面加工成形品の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。また、複数の注入孔から熱可塑性樹脂を金型内方に注入する。これにより、熱可塑性樹脂が満遍なく金型内方に注入されるので、曲面加工成形品の表面に、皺や空気溜まりが生ずるのを抑制することができ、曲面加工成形品の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。また、冷却体で熱可塑性樹脂を冷却することで、金型の内方での天然木柔軟シートの移動を規制する。つまり、熱可塑性樹脂が冷却により天然木柔軟シートと密着して、金型の内方で天然木柔軟シートの動きが規制される。これにより、天然木柔軟シートが金型内で固定されるので、天然木柔軟シートが金型内で特定の方向に動いて木目柄が傾くようなことを防止したり、天然木柔軟シートが動くことにより曲面加工成形品の表面に裂けや割れが生じることを低減することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る曲面加工成形品の製造方法によれば、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる曲面加工成形品において、表面に生じる裂けや割れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造装置の外観を示す外観図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る天然木柔軟シートの構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る第一金型の構造を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る天然木柔軟シート生成工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る射出工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造装置で製造された曲面加工成形品を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態の実施例1に係る曲面加工成形品と比較対照工法による成形品との外観を評価するための図である。
【図9】本発明の実施の形態の実施例1に係る曲面加工成形品と比較対照工法による成形品との外観を評価するための図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例2に係る曲面加工成形品と比較対照工法による成形品との外観を評価するための図である。
【図11】本発明の実施の形態の実施例2に係る曲面加工成形品と比較対照工法による成形品との外観を評価するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造装置、当該製造に使用される天然木柔軟シート、及び曲面加工成形品の製造方法について、説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造装置1の外観を示す外観図である。
【0034】
曲面加工成形品の製造装置1は、天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造装置である。同図に示すように、曲面加工成形品の製造装置1は、天然木柔軟シート10を挟み込んで射出成形を行う第一金型20と第二金型30とを備えている。ここで、天然木柔軟シート10の詳細な説明については、後述する。
【0035】
第一金型20は、天然木柔軟シート10を上方から挟み込むための下方凸形状の金型である。第一金型20の詳細な説明については、後述する。
【0036】
第二金型30は、天然木柔軟シート10を下方から挟み込むための金型である。第二金型30の天然木柔軟シート10が配置される位置には、第一金型20の凸形状に対応した凹部が形成されている。また、当該凹部の下方には、冷却管31が配置されている。
【0037】
冷却管31は、第一金型20と第二金型30とで形成される金型の内方での天然木柔軟シート10の移動を規制するために当該金型の外方に配置された、当該金型の内方に注入される熱可塑性樹脂を冷却する冷却体である。なお、冷却管31の内方に冷却液が流入し流出することで、当該熱可塑性樹脂を冷却する。
【0038】
次に、天然木柔軟シート10の詳細な構成について、説明する。
【0039】
図2は、本発明の実施の形態に係る天然木柔軟シート10の構成を説明するための図である。
【0040】
天然木柔軟シート10は、曲面加工成形品の製造に使用される天然木突板を柔軟化したシートである。ここで、同図には、天然木柔軟シート10を形成するための天然木突板11が示されている。具体的には、同図の(a)は、天然木突板11の平面図、同図の(b)は、天然木突板11の側面図を示している。
【0041】
天然木突板11は、四角形状の天然木の突板である。なお、天然木突板11の形状は、曲面加工成形品の形状によって変更されるため、四角形状には限定されない。また、天然木突板11の厚さも限定されないが、好ましくは、0.2〜0.3mmである。
【0042】
また、天然木突板11の樹種は、例えば、黒檀、チーク、パドゥク、アンデスチーク、紫檀、ウォールナット、ウエンジュ、ゼブラ、モアビ、ブビンガなどの広葉樹、または、竹、屋久杉などの針葉樹である。
【0043】
そして、天然木突板11の裏面12に、裏打ちシート13(図示せず)が貼り合せられ、裏打ちシート13に1種類のみの合成樹脂14(図示せず)が含浸されることで、天然木柔軟シート10が生成される。なお、裏打ちシート13及び合成樹脂14の詳細な説明については、後述する。
【0044】
次に、第一金型20の詳細な構成について、説明する。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態に係る第一金型20の構造を説明するための図である。具体的には、同図の(a)は、第一金型20の平面図、同図の(b)は、第一金型20の側面図を示している。
【0046】
同図に示すように、第一金型20は、表面粗加工領域21と、シート対向面22とを有している。
【0047】
表面粗加工領域21は、天然木柔軟シート10を挟み込む領域であって、他の領域よりも粗い表面加工が施された領域である。つまり、表面粗加工領域21は、ドーナツ型の領域である。なお、表面粗加工領域21の形状は、天然木突板11の形状に応じた形状であればよく、ドーナツ型には限定されない。
【0048】
シート対向面22は、天然木柔軟シート10の裏面と対向する面である。つまり、シート対向面22は、天然木柔軟シート10の裏面に向いた凸形状の面である。また、シート対向面22には、熱可塑性樹脂を注入するための複数の注入孔23(図示せず)が満遍なく設けられている。
【0049】
次に、曲面加工成形品の製造装置1によって、天然木突板11を射出成形により曲面形状に加工して得られる曲面加工成形品を製造する方法について、説明する。
【0050】
図4は、本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。
【0051】
同図に示すように、まず、天然木柔軟シート生成工程として、天然木突板11に1種類のみの合成樹脂14を密着させて天然木柔軟シート10を生成する(S102)。具体的には、天然木突板11に当該合成樹脂14を塗布することで、天然木突板11に当該合成樹脂14を含浸させる。この天然木柔軟シート生成工程の詳細な説明については、後述する。
【0052】
次に、射出工程として、天然木柔軟シート生成工程で生成された天然木柔軟シート10を射出成形により曲面形状に加工して曲面加工成形品を製造する(S104)。この射出工程の詳細な説明については、後述する。
【0053】
次に、天然木柔軟シート生成工程(図4のS102)の詳細について、説明する。
【0054】
図5は、本発明の実施の形態に係る天然木柔軟シート生成工程を示すフローチャートである。
【0055】
同図に示すように、まず、天然木突板11に表面改質処理を施す(S202)。具体的には、天然木突板11に、プライマー処理、イトロ処理、T−LOCプロセス処理及びSTURS処理のうち少なくとも1つの表面改質処理を施す。
【0056】
そして、裏打ちシート貼り合せ工程として、天然木突板11に裏打ちシート13を貼り合せる(S204)。具体的には、天然木突板11に、裏打ちシート13として不織布又はプラスチックシートを貼り合せる。
【0057】
そして、合成樹脂密着工程として、天然木突板11に裏打ちシート13を貼り合せたのち、裏打ちシート13に、1種類のみの合成樹脂14を塗布することで、天然木突板11に当該合成樹脂14を含浸させる(S206)。
【0058】
具体的には、天然木突板11に裏打ちシート13を貼り合せて乾燥させた後、裏打ちシート13に1種類のみの熱可塑性樹脂を塗布することで、天然木突板11に当該熱可塑性樹脂を含浸させる。ここで、天然木突板11に含浸させる熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル系樹脂溶液を用いることにより、柔軟な天然木柔軟シート10を得ることができる。
【0059】
ここで、アクリル系樹脂溶液には、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸やそのエステル、ポリメタクリル酸やそのエステルなどの単量体が使用されてもよいし、当該単量体と酢酸ビニルなど他の化合物との共重合体が使用されてもよい。また、その濃度としては、10〜60重量%が好ましく、特に作業面から40重量%以下がさらに好ましい。
【0060】
このように、天然木突板11に当該熱可塑性樹脂を含浸させるために、複雑な作業は必要とせず、裏打ちシート13に1種類の熱可塑性樹脂を塗布するだけでよい。
【0061】
そして、接着剤塗布工程として、裏打ちシート13に接着剤を塗布する前に、裏打ちシート13にプライマー処理、イトロ処理、T−LOCプロセス処理及びSTURS処理のうち少なくとも1つの表面改質処理を施す(S208)。
【0062】
そして、当該接着剤塗布工程において、天然木突板11に貼り合せた裏打ちシート13に、接着剤を塗布する(S210)。そして、当該接着剤を塗工後に、乾燥させる。
【0063】
なお、当該接着剤としては、アクリル樹脂系接着剤、α−オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、スチレンブタジエンゴム溶液系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリウレタン系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤など、どのような接着剤であってもよい。なお、当該接着剤として、好ましくは、アクリル樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤が良い。
【0064】
以上により、天然木柔軟シート生成工程(図4のS102)は、終了する。
【0065】
なお、上記の天然木柔軟シート生成工程(図4のS102)において、天然木突板11の表面改質処理(図5のS202)、及び裏打ちシート13の表面改質処理(図5のS208)については、省略することができる。
【0066】
次に、射出工程(図4のS104)の詳細について、説明する。
【0067】
図6は、本発明の実施の形態に係る射出工程を示すフローチャートである。
【0068】
同図に示すように、まず、天然木柔軟シート配置工程として、天然木柔軟シート生成工程で生成された天然木柔軟シート10を、金型の内方に配置する(S302)。つまり、天然木柔軟シート10を、第一金型20と第二金型30とで挟み込むように配置する。
【0069】
具体的には、金型の内方の天然木柔軟シート10を挟み込む領域として他の領域よりも粗い表面加工が施された領域で、天然木柔軟シート10を挟み込むように、金型の内方に天然木柔軟シート10を配置する。つまり、第一金型20の表面粗加工領域21と第二金型30の表面粗加工領域とで、天然木柔軟シート10を挟み込むように、天然木柔軟シート10を配置する。
【0070】
そして、熱可塑性樹脂注入工程として、当該金型の内方に熱可塑性樹脂を注入する(S304)。
【0071】
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂などの汎用プラスチックや、ABS/ポリカーボネートアロイ、更にはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド類、変性ポリフェニレンエーテルの如きエンジニアリングプラスチック、或いはポリフェニレンサルファイド、PES等々の如きスーパーエンジニアリングプラスチックなどが使用される。この熱可塑性樹脂として、好ましくはポリスチレン、ABS樹脂やPC−ABS樹脂、ポリカーボネートが適している。また、当該熱可塑性樹脂は、成形温度が180〜300度のものが好ましい。
【0072】
また、具体的には、第一金型20に設けられた複数の注入孔23から熱可塑性樹脂を注入する。また、この熱可塑性樹脂注入工程において、金型の外方に配置された冷却管31で当該熱可塑性樹脂を冷却することで、金型の内方での天然木柔軟シート10の移動を規制する。
【0073】
そして、曲面加工成形品製造工程として、天然木柔軟シート10と熱可塑性樹脂とで一体成形される曲面加工成形品を製造する(S306)。
【0074】
以上により、射出工程(図4のS104)は、終了する。
【0075】
図7は、本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造装置1で製造された曲面加工成形品40を示す図である。具体的には、同図の(a)は、曲面加工成形品40の平面図、同図の(b)は、曲面加工成形品40を右側から見た側面図、同図の(c)は、曲面加工成形品40を下側から見た側面図を示している。
【0076】
同図に示すように、曲面加工成形品40は、天然木柔軟シート10によって形成された天然木部41と、熱可塑性樹脂によって形成された樹脂部42とで構成されている。そして、曲面加工成形品40の角部(例えば、同図に示すA部)は、表面の裂けや割れの発生が低減されている。
【0077】
なお、曲面加工成形品40の形状は、同図に示された形状には限定されない。つまり、曲面加工成形品の製造装置1において、金型の形状を変更することで、曲面形状を有する任意の形状の曲面加工成形品を製造することができる。
【0078】
以下、この曲面加工成形品40の表面の裂けや割れの発生が低減されていることについて、詳細に説明する。
【実施例】
【0079】
図7のような形状の曲面加工成形品40を作成し、成形後の曲面状の部位(部位イ、部位ロ、部位ハ、部位ニとする)での裂けや割れの発生の状況や割合を調査した。
【0080】
ここで、比較対照として、上記特許文献1における天然木自在シート(天然木薄板材の空隙に合成樹脂と常温での蒸気圧が1.3kPa以下である線状高分子化合物との混合物が充填された天然木自在シート)に同様の処理を施した曲面加工成形品を用いた。
【0081】
なお、評価に用いた天然木突板は、同一ロットのものを使用した。
【実施例1】
【0082】
黒檀の天然木突板(900mm×900mm×0.22mm厚)に接着剤を用いて不織布を貼り、その後、アクリル樹脂系重合液を含浸した。乾燥後、不織布側にアクリル系接着剤を塗工乾燥し、天然木柔軟シート10を得た。本天然木柔軟シート10を目的の形状に打ち抜き、金型内に配し、射出成形を行った。
【0083】
比較対照として、上記特許文献1における天然木自在シートに上記のアクリル系接着剤を同一ロットの天然木突板に塗工したものを、同様の形状に打ち抜き、射出成形を行った。
【0084】
天然木柔軟シート10、上記特許文献1における天然木自在シートともに、900mm×900mmのシートから成形品を平面に展開した形状のシートを66枚切り出し成形に供した。
【0085】
図8及び図9は、本発明の実施の形態の実施例1に係る曲面加工成形品40と比較対照工法による成形品との外観を評価するための図である。具体的には、図8の(a)は、実施例1における曲面加工成形品40の外観の評価結果を示し、図8の(b)は、実施例1における比較対照工法による成形品の外観の評価結果を示し、図9は、実施例1における曲面加工成形品40と比較対照工法による成形品との外観の写真を示している。
【0086】
図8に示すように、外観の評価結果としては、部位イ、部位ロ、部位ハ、部位ニの同一曲面において、曲面加工成形品40の裂けや割れの発生率は3%(不良品2/試作数66)であったのに対し、比較対照工法による成形品では59%(不良品39/試作数66)であった。なお、表中の良品とは、外観全体に裂けや割れのない状態を示している。また、同図の(a)における不良品の数である2(試作数66−良品64)の中に、部位イ〜部位ニが重複して存在するため、当該不良品の数は、部位イ〜部位ニにおける不良品の数の合計値とは一致しない。同図の(b)においても、同様である。
【0087】
また、図9に示すように、曲面加工成形品40に比べて、比較対照工法による成形品では、表面に裂けや割れが多く発生している。
【実施例2】
【0088】
アンデスチークの天然木突板を、実施例1と同様の方法で、加工し成形した。比較対照工法も同様である。
【0089】
図10及び図11は、本発明の実施の形態の実施例2に係る曲面加工成形品40と比較対照工法による成形品との外観を評価するための図である。具体的には、図10の(a)は、実施例2における曲面加工成形品40の外観の評価結果を示し、図10の(b)は、実施例2における比較対照工法による成形品の外観の評価結果を示し、図11は、実施例2における曲面加工成形品40と比較対照工法による成形品との外観の写真を示している。
【0090】
図10に示すように、外観の評価結果としては、部位イ、部位ロ、部位ハ、部位ニの同一曲面において、曲面加工成形品40の裂けや割れの発生率は4.5%(不良品3/試作数66)であったのに対し、比較対照工法による成形品では62%(不良品41/試作数66)であった。なお、表中の良品とは、外観全体に裂けや割れのない状態を示している。また、同図の(a)における不良品の数である3(試作数66−良品63)の中に、部位イ〜部位ニが重複して存在するため、当該不良品の数は、部位イ〜部位ニにおける不良品の数の合計値とは一致しない。同図の(b)においても、同様である。
【0091】
また、図11に示すように、曲面加工成形品40に比べて、比較対照工法による成形品では、表面に裂けや割れが多く発生している。
【0092】
以上のように、上記実施例1、2で部位イ、部位ロ、部位ハ、部位ニで比較対照工法による成形品では微細な割れが多く発現したが、本工法による成形品では良好な追従性で滑らかな折り曲げ性を示した。よって工業製品に外観に天然木を有する成形品を用いるに当たり、曲面や折り曲げで上記特許文献1における天然木自在シートと同等以上の加工性の高い柔軟な天然木柔軟シート10が本製造方法で得られたと考えられる。
【0093】
なお、天然木突板11として黒檀やアンデスチークなどの広葉樹だけではなく、針葉樹を用いて天然木柔軟シート10を生成することができる。ここで、一般的に針葉樹は木が硬く曲面加工には適さないが、本発明に係る曲面加工成形品の製造装置1を用いれば、表面に裂けや割れが生じるのを低減した曲面加工成形品を製造することができる。
【0094】
以上のように、本発明に係る曲面加工成形品の製造方法によれば、天然木突板11に1種類のみの合成樹脂14を含浸させて天然木柔軟シート10を生成し、生成した天然木柔軟シート10を射出成形により曲面形状に加工して曲面加工成形品40を製造する。ここで、本願発明者は、上記特許文献1における天然木自在シートを用いて曲面加工成形品40を製造した結果、表面に裂けや割れが生じることを見出した。また、本願発明者は、鋭意研究の結果、天然木突板11に1種類のみの合成樹脂14を含浸させて生成した天然木柔軟シート10を用いて曲面加工成形品40を製造した場合に、当該天然木自在シートを用いた場合よりも表面に生じる裂けや割れを低減することができ、平面から曲面に形状が連続して変化しても木目に不自然な乱れが生じないことを見出した。そして、天然木自在シートには2種類の合成樹脂の混合物が充填されているが、天然木柔軟シート10には1種類のみの合成樹脂14しか使用されていないため、容易に天然木柔軟シート10を生成することができる。このため、天然木突板11を射出成形により曲面形状に加工して得られる曲面加工成形品40において、容易に生成できる天然木柔軟シート10を用いて、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品40を製造することができる。
【0095】
また、天然木柔軟シート生成工程(図4のS102)において、天然木突板11に裏打ちシート13を貼り合せたのち、当該裏打ちシート13に、1種類のみの合成樹脂14を塗布する。つまり、裏打ちシート13に合成樹脂14を塗布することで、天然木柔軟シート10を容易に生成することができる。このため、容易に生成できる天然木柔軟シート10を用いて、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品40を製造することができる。
【0096】
また、裏打ちシート貼り合せ工程(図5のS202〜S204)において、天然木突板11に表面改質処理を施してから、裏打ちシート13を貼り合せる。このため、当該表面改質処理を施すことで、天然木突板11に裏打ちシート13を貼り合せる際の接合強度を高めることができる。
【0097】
また、接着剤塗布工程(図5のS208〜S210)において、裏打ちシート13に表面改質処理を施してから、接着剤を塗布する。このため、当該表面改質処理を施すことで、裏打ちシート13に接着剤を塗布する際の接合強度を高めることができる。
【0098】
また、曲面加工成形品の製造方法において、生成した天然木柔軟シート10を金型の内方に配置し、金型の内方に熱可塑性樹脂を注入し、天然木柔軟シート10と熱可塑性樹脂とで一体成形される曲面加工成形品40を製造する。これにより、天然木柔軟シート10を用いることで、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品40を製造することができる。
【0099】
また、天然木柔軟シート配置工程(図6のS302)において、金型の内方の他の領域よりも粗い表面加工が施された表面粗加工領域21で、天然木柔軟シート10を挟み込む。これにより、天然木柔軟シート10に貼り合わされている裏打ちシート13が金型にへばりつくのを抑制することができ、曲面加工成形品40の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。
【0100】
また、熱可塑性樹脂注入工程(図6のS304)において、複数の注入孔23から熱可塑性樹脂を金型内方に注入する。これにより、熱可塑性樹脂が満遍なく金型内方に注入されるので、曲面加工成形品40の表面に、皺や空気溜まりが生ずるのを抑制することができ、曲面加工成形品40の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。
【0101】
また、熱可塑性樹脂注入工程(図6のS304)において、冷却管31を用いて熱可塑性樹脂を冷却することで、金型の内方での天然木柔軟シート10の移動を規制する。つまり、熱可塑性樹脂が冷却により天然木柔軟シート10と密着して、金型の内方で天然木柔軟シート10の動きが規制される。これにより、天然木柔軟シート10が金型内で固定されるので、天然木柔軟シート10が金型内で特定の方向に動いて木目柄が傾くようなことを防止したり、天然木柔軟シート10が動くことにより曲面加工成形品40の表面に裂けや割れが生じることを低減することができる。
【0102】
また、本発明に係る天然木柔軟シート10によれば、天然木突板11に裏打ちシート13を貼り合せて、裏打ちシート13に1種類のみの合成樹脂14を塗布することで、生成される。ここで、本願発明者は、上記特許文献1における天然木自在シートを用いて曲面加工成形品40を製造した結果、表面に裂けや割れが生じることを見出した。また、本願発明者は、鋭意研究の結果、天然木突板11に1種類のみの合成樹脂14を含浸させて生成した天然木柔軟シート10を用いて曲面加工成形品40を製造した場合に、当該天然木自在シートを用いた場合よりも表面に生じる裂けや割れを低減することができることを見出した。そして、天然木自在シートには2種類の合成樹脂14の混合物が充填されているが、天然木柔軟シート10には1種類のみの合成樹脂14しか使用されていないため、容易に天然木柔軟シート10を生成することができる。このため、容易に生成できる天然木柔軟シート10を用いて、表面に生じる裂けや割れを低減した曲面加工成形品40を製造することができる。
【0103】
また、本発明に係る曲面加工成形品の製造装置1によれば、複数の熱可塑性樹脂の注入孔23が満遍なく設けられた第一金型20と、熱可塑性樹脂を冷却する冷却管31が配置された第二金型30とを備えている。また、第一金型20及び第二金型30には、天然木柔軟シート10を挟み込む領域に他の領域よりも粗い表面加工が施されている。
【0104】
つまり、第一金型20及び第二金型30の当該表面粗加工が施された領域で、天然木柔軟シート10を挟み込む。これにより、天然木柔軟シート10に貼り合わされている裏打ちシート13が、第一金型20及び第二金型30にへばりつくのを抑制することができ、曲面加工成形品40の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。
【0105】
また、複数の注入孔23から熱可塑性樹脂を、第一金型20と天然木柔軟シート10との間に注入する。これにより、熱可塑性樹脂が満遍なく注入されるので、曲面加工成形品40の表面に、皺や空気溜まりが生ずるのを抑制することができ、曲面加工成形品40の表面に生じる裂けや割れを低減することができる。
【0106】
また、冷却管31で熱可塑性樹脂を冷却することで、第一金型20と第二金型30との間で天然木柔軟シート10が移動するのを規制する。これにより、天然木柔軟シート10が金型内で固定されるので、天然木柔軟シート10が金型内で特定の方向に動いて木目柄が傾くようなことを防止したり、天然木柔軟シート10が動くことにより曲面加工成形品40の表面に裂けや割れが生じることを低減することができる。
【0107】
以上、本発明の実施の形態に係る曲面加工成形品の製造方法、曲面加工成形品の製造装置1、及び当該製造に使用される天然木柔軟シート10について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0108】
つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、自動車の内装部品、携帯電話、家電製品のケースカバーなど、外観に曲面形状の天然木目柄を有する曲面加工成形品の製造方法等に適用できる。
【符号の説明】
【0110】
1 曲面加工成形品の製造装置
10 天然木柔軟シート
11 天然木突板
12 裏面
13 裏打ちシート
14 合成樹脂
20 第一金型
21 表面粗加工領域
22 シート対向面
23 注入孔
30 第二金型
31 冷却管
40 曲面加工成形品
41 天然木部
42 樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造方法であって、
前記天然木突板に1種類のみの合成樹脂を含浸させて天然木柔軟シートを生成する天然木柔軟シート生成工程と、
生成された前記天然木柔軟シートを射出成形により曲面形状に加工して前記曲面加工成形品を製造する射出工程と
を含む曲面加工成形品の製造方法。
【請求項2】
前記天然木柔軟シート生成工程は、
前記天然木突板に裏打ちシートを貼り合せる裏打ちシート貼り合せ工程と、
前記裏打ちシートを貼り合せたのち、前記裏打ちシートに前記1種類のみの合成樹脂を塗布することで、前記天然木突板に当該合成樹脂を含浸させる合成樹脂密着工程とを含む
請求項1に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項3】
前記裏打ちシート貼り合せ工程では、前記天然木突板に前記裏打ちシートを貼り合せる前に、前記天然木突板にプライマー処理、イトロ処理、T−LOCプロセス処理及びSTURS処理のうち少なくとも1つの表面改質処理を施す
請求項2に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項4】
前記裏打ちシート貼り合せ工程では、前記天然木突板に、前記裏打ちシートとして不織布又はプラスチックシートを貼り合せる
請求項2又は3に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項5】
前記天然木柔軟シート生成工程は、さらに、
前記合成樹脂密着工程の後に、前記天然木突板に貼り合せた前記裏打ちシートに接着剤を塗布する接着剤塗布工程を含む
請求項2〜4のいずれか1項に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤塗布工程では、前記裏打ちシートに前記接着剤を塗布する前に、前記裏打ちシートにプライマー処理、イトロ処理、T−LOCプロセス処理及びSTURS処理のうち少なくとも1つの表面改質処理を施す
請求項5に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤塗布工程では、前記裏打ちシートに、前記接着剤として、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、またはエポキシ系接着剤を塗布する
請求項5又は6に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項8】
前記射出工程は、
前記天然木柔軟シート生成工程で生成された天然木柔軟シートを、金型の内方に配置する天然木柔軟シート配置工程と、
前記金型の内方に熱可塑性樹脂を注入する熱可塑性樹脂注入工程と、
前記天然木柔軟シートと前記熱可塑性樹脂とで一体成形される前記曲面加工成形品を製造する曲面加工成形品製造工程とを含む
請求項1〜7のいずれか1項に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項9】
前記天然木柔軟シート配置工程では、前記金型の内方の前記天然木柔軟シートを挟み込む領域として他の領域よりも粗い表面加工が施された領域で、前記天然木柔軟シートを挟み込むように、前記金型の内方に前記天然木柔軟シートを配置する
請求項8に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂注入工程では、前記金型に満遍なく設けられた複数の注入孔から前記熱可塑性樹脂を注入する
請求項8又は9に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂注入工程では、前記金型の外方に配置された冷却体で前記熱可塑性樹脂を冷却することで、前記金型の内方での前記天然木柔軟シートの移動を規制する
請求項8〜10のいずれか1項に記載の曲面加工成形品の製造方法。
【請求項12】
天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造に使用可能な天然木柔軟シートであって、
前記天然木突板と、
前記天然木突板に貼り合せられた裏打ちシートと、
前記裏打ちシートに塗布された1種類のみの合成樹脂と
を備える天然木柔軟シート。
【請求項13】
天然木突板を射出成形により曲面形状に加工して得られる成形品である曲面加工成形品の製造装置であって、
前記天然木突板に1種類のみの合成樹脂を密着させて生成される天然木柔軟シートを挟み込む領域であって、他の領域よりも粗い表面加工が施された領域を有し、熱可塑性樹脂を注入するための複数の注入孔が満遍なく設けられた金型と、
前記金型の内方での前記天然木柔軟シートの移動を規制するために前記金型の外方に配置された、前記熱可塑性樹脂を冷却する冷却体と
を備える曲面加工成形品の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−18139(P2013−18139A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151295(P2011−151295)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(510226026)
【出願人】(511165935)
【Fターム(参考)】