説明

更新制御プログラム、更新制御方法および更新制御装置

【課題】運用中にアップデートすることを課題とする。
【解決手段】更新制御装置10は、機器制御プログラム「HCP」の更新制御を行う更新制御プログラム「SVP」、診断プログラム「POST」並びにシステムボード「SB」の組合せに関する整合性情報を取得し、取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラム「HCP」が適用可能であるか否かを判定し、更新対象の機器制御プログラム「HCP」が適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラム「HCP」の更新制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、更新制御方法および更新制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大規模・高性能な計算機システムを実現するために、複数のOS(Operating System)を複数のパーティションで同時に動作させる構成が採用されている(例えば、特許文献1参照)。かかる計算機システムにおいて、ファームウェアのアップデートを行う場合には、コストパフォーマンスの向上、並びに保守作業時間の短縮化の観点から、所定の媒体(例えば、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスクなどの媒体)またはネットワーク上に存在するサーバ装置から改版のファームウェアをダウンロードし、該ダウンロードした改版のファームウェアを適用するというようなソフトウェア的手法によるアップデートが一般的に行われている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−213178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術(特許文献1)では、運用中にアップデートを行うことができないという問題点があった。具体的には、パーティション単位で動作するファームウェアとシステム単位で動作するファームウェアが共存する以上、上記の従来技術では、計算機システム全体の機器制御プログラム(すなわち、ハードウェアコントロールプログラム:Hardware Control Program)の整合性を維持しつつ、他のパーティションの運用に影響を与えることなくパーティション単位のアップデートを行うことは、不可能である。
【0005】
すなわち、かかる大規模・高性能な計算機システムでは、24時間365日途絶えることなく運用できることが要求されるが、上記の従来技術では、計算機システム内に複数のOS(パーティション)で動作する構成を採用しているため、パーティション単位にそれぞれ別の版数のファームウェアのアップデートを行うとパーティション間の整合性をチェックできないため、複数のパーティション構成を同じ版数でアップデートすることとなり、システム停止状態でなければ改版することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術による課題(問題点)を解消するためになされたものであり、運用中にアップデートすることができる更新制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る更新制御プログラムは、パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラムであって、前記機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、診断プログラム並びにシステムボードの組合せに関する整合性情報を取得する整合性情報取得手順と、前記整合性情報取得手順によって取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラムが適用可能であるか否かを判定する適用可否判定手順と、前記適用可否判定手順によって更新対象の機器制御プログラムが適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る更新制御プログラムは、上記の発明において、前記整合性情報取得手順は、更新対象の機器制御プログラムに内包された整合性情報を取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る更新制御プログラムは、上記の発明において、前記更新制御手順は、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る更新制御方法は、パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御方法であって、前記機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、診断プログラム並びにシステムボードの組合せに関する整合性情報を取得する整合性情報取得工程と、前記整合性情報取得工程によって取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラムが適用可能であるか否かを判定する適用可否判定工程と、前記適用可否判定工程によって更新対象の機器制御プログラムが適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御工程と、を含んだことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る更新制御方法は、上記の発明において、前記整合性情報取得工程は、更新対象の機器制御プログラムに内包された整合性情報を取得することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る更新制御方法は、上記の発明において、前記更新制御工程は、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る更新制御装置は、パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御装置であって、前記機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、診断プログラム並びにシステムボードの組合せに関する整合性情報を取得する整合性情報取得手段と、前記整合性情報取得手段によって取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラムが適用可能であるか否かを判定する適用可否判定手段と、前記適用可否判定手段によって更新対象の機器制御プログラムが適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る更新制御装置は、上記の発明において、前記整合性情報取得手段は、更新対象の機器制御プログラムに内包された整合性情報を取得することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る更新制御装置は、上記の発明において、前記更新制御手段は、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、診断プログラム並びにシステムボードの組合せに関する整合性情報を取得し、取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラムが適用可能であるか否かを判定し、更新対象の機器制御プログラムが適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラムの更新制御を行うこととしたので、計算機システム全体が機器制御プログラムの最新版数に統一されていない状態でも、機能内に互換性が担保されたもの同士であれば共存を許容することができ、運用中にアップデートすることが可能になるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明によれば、更新対象の機器制御プログラムに内包された整合性情報を取得することとしたので、最新の整合性情報を常時取得することが可能になるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明によれば、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることとしたので、更新制御処理(アップデート処理)中に異常が発生した場合でも、更新前のファームウェアによる動作を保証することができ、運用に影響を及ぼさずに復旧することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る更新制御装置(更新制御方法)の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本実施例で用いる用語の概念を最初に説明してから、本発明に係る更新制御装置の概要および特徴を説明し、その後、本実施例1に係る更新制御装置を説明し、最後に、他の実施例として種々の変形例(実施例2)を説明することとする。
【0020】
(用語の説明)
以下に、本実施例で用いる用語の概念を簡単に説明する。本実施例で用いる「アップデート」とは、外部からサービスプロセッサのバッファに展開してFMEMに書き込む「ダウンロード」と、FMEMに書き込んだデータを展開して実際に使用する「適用」とを含む「更新制御処理」を指す。
【0021】
また、本実施例で用いる「個別ファームウェア」とは、パーティション単位で動作するファームウェア、並びに複数のパーティション群(システム単位)で動作するファームウェアを指す。また、かかる個別ファームウェアの集合体を機器制御プログラムと呼ぶこととし、以下では、適宜、HCP(すなわち、ハードウェアコントロールプログラム:Hardware Control Program)と記すこととする。
【0022】
また、本実施例では、機器制御プログラム(すなわち、ハードウェアコントロールプログラム:Hardware Control Program)の更新制御を行う更新制御プログラムをサービスプロセッサプログラム(以下、適宜、SVPと言う。)と呼ぶこととする。
【0023】
(概要および特徴)
まず最初に、本発明に係る更新制御装置の概要および特徴を説明する。図1は、本実施例1に係る更新制御装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この更新制御装置10は、複数のOS(Operating System)を複数のパーティション(すなわち、システムボード30−1〜30−n(以下、適宜、SB30と言う。))で同時に動作させる計算機システム100に搭載されるものであり、パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体であるHCP(すなわち、ハードウェアコントロールプログラム:Hardware Control Program)の更新制御を行うものである。
【0024】
ここで、本発明に係る更新制御装置10は、機器制御プログラム「HCP」の更新制御を行う更新制御プログラム「SVP」、診断プログラム「POST(Power On Self Test)」並びにシステムボード「SB」の組合せに関する整合性情報を取得し、取得された整合性情報に基づいて更新対象の「HCP」が適用可能であるか否かを判定し、更新対象の「HCP」が適用可能であると判定された場合に、該「HCP」の更新制御を行う更新制御処理(アップデート処理)に主たる特徴があり、かかる「更新制御処理」によって、運用中にアップデートすることができるようにしている。
【0025】
これを具体的に説明すると、この更新制御装置10は、「SVP」、「POST」並びに「SB」の組合せに関する整合性情報(図4参照)に基づいて更新対象の「HCP」が適用可能であるか否かを判定し、更新対象の「HCP」が適用可能であると判定された場合に、この「HCP」の更新制御を行うこととしたので、計算機システム100全体が「HCP」の最新版数に統一されていない状態でも、機能内に互換性が担保されたもの同士であれば共存を許容することができる。
【0026】
したがって、本発明に係る更新制御装置によれば、計算機システム100全体が「HCP」の最新版数に統一されていない状態でも、機能内に互換性が担保されたもの同士であれば共存を許容することとしたので、同種異版のファームウェアを共存させることができ、パーティション単位にそれぞれ別の版数のファームウェアのアップデートを行うとパーティション間の整合性をチェックできないという上記の従来技術におけるボトルネックを解消し、上記した主たる特徴のように、運用中にアップデートすることが可能になる。
【実施例1】
【0027】
次に、本実施例1に係る更新制御装置について説明する。なお、ここでは、本実施例1に係る更新制御装置の構成を説明した後に、この更新制御装置の各種処理の手順を説明することとする。
【0028】
(更新制御装置の構成)
図1は、本実施例1に係る更新制御装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この更新制御装置10は、FMEM11および12、NVRAM13、コントローラ14、NAND FMEM15、主記憶メモリ16並びにSVP CPU17とを備える。
【0029】
このうち、FMEM11およびFMEM12は、主記憶メモリ16に展開する「HCP」を記憶するフラッシュメモリある。本実施例1では、FMEMには、改版後の復旧処理を考慮して「HCP」を2世代格納することとし、この2世代のブロックを「Currentバンク」と「Reservedバンク」と呼ぶ。
【0030】
なお、「Currentバンク」は、現在動作中のバンク(例えば、FMEM11とする。)を指し、「Reservedバンク」は、旧バンク(例えば、FMEM12)を指す。また、更新対象の「HCP」のダウンロードが実行された場合には、更新対象の「HCP」は、「Reservedバンク」(すなわち、FMEM12)に書き込まれることとなる。
【0031】
NVRAM13は、現在動作中の「HCP」に関する情報を記憶する不揮発性RAMであり、管理ファイル1−1および現HCP情報1−1を記憶している。コントローラ14は、システムボード(SB)30および更新制御装置10間を相互に通信可能に接続する通信制御インターフェースである。また、NAND FMEM15は、HCP(すなわち、ハードウェアコントロールプログラム:Hardware Control Program)およびOBPバックアップ(例えば、n世代)を記憶するコンパクトフラッシュ(登録商標)である。
【0032】
SVP CPU(Service Processor CPU)17は、パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行うサービスプロセッサプログラム(SVP)を動作させる処理部である。
【0033】
これを具体的に説明すると、SVP CPU17は、アップデート要求を受け付けた場合に、HCP CD20からドライブ(図示せず)を介して更新対象の「HCP」の管理ファイル2−1を取得する。なお、この管理ファイル2−1には、本発明に係る「整合性情報」が含まれている。このように、更新対象の「HCP」に内包された整合性情報を取得することで、最新の整合性情報を常時取得することが可能になる。
【0034】
かかる管理ファイル2−1は、更新対象の「HCP2−1」のシステム共通情報および各個別ファームの情報などの管理情報である。具体的には、図2に示すように、システム共通情報として、「HCP管理ファイル版数」、「HCP名」、「HCP版数」、「HCP作成日」、「HCP内登録ファーム数」、「HCP適用可能版数」および「関連ソフトウェア適用可能版数」などを記憶している。
【0035】
また、管理ファイル2−1は、各個別ファームの情報として、各個別ファームごとに、「適用可能ファーム個別版数」および「適用可能条件」を対応付けて記憶している(図3参照)。なお、「適用可能ファーム個別版数」は、現在適用されている各個別のファーム版数に対してこのファーム版数にアップデート可能な版数を指し、また、「適用可能条件」は、個別ファーム単位のダウンロード可能条件(例えば、1:システム停止(5VSB状態中)で可能、2:システムオフライン状態から可能、3:システム動作中から可能などの条件)を指す。
【0036】
また、管理ファイル2−1に内包された「整合性情報」は、HCPの更新制御を行う「SVP」、「POST」並びに「SB」の組合せに関する整合性情報であり、例えば、図4に示すように、「SVP」が「D版」である場合、POST「A版」では、SB「A版」と整合性があり、SB「B版」以降とは整合性がないという整合性情報を示している。
【0037】
図1の説明に戻り、SVP CPU17は、更新対象の「HCP」の管理ファイル2−1を取得した後、アップデートを行うパーティション番号の指定を受け付け、更新制御装置10における「SVP」がアップデートを行うパーティションのSB30をサポート可能か否かを管理ファイル2−1を参照して照査する。
【0038】
そして、SVP CPU17は、「SVP」がアップデートを行うパーティションのSB30をサポート可能である場合に、現HCP情報およびインストールした管理ファイルに含まれる整合性情報に基づいてアップデート対象のHCPの適用可否を判定する。具体的には、アップデートを行う「OBP」版数が計算機システム100内で整合性が保たれているか否かを判定する。
【0039】
より詳細には、管理ファイル2−1における適用可能「OBP」版数を照査して、計算機システム100における「OBP」が全てサポートされているか否かを照査する。例えば、管理ファイル2−1における適用可能「OBP」版数が「B版」、「C版」、「D版」であった場合、計算機システム100における「OBP」版数が全て「B版」以降であればサポートされていると判定し、「A版」が含まれていればサポートされていないと判定する。
【0040】
そして、アップデート対象の「HCP」が適用可能であった場合(すなわち、計算機システム100における「OBP」が全てサポートされている場合)、NAND FMEM15におけるOBPバックアップ領域に空きがあるか否かを判定する。具体的には、OBPバックアップ領域に空き領域が存在しない、または上書き不可能である場合には、アップデート処理を中止する。
【0041】
続いて、OBPバックアップ領域に空き領域が存在する場合、SVP CPU17は、出力インターフェースを介して、現在の「HCP」版数と、アップデート対象の「HCP」版数とを確認表示し、その際に、アップデート指示を受け付けたならば、アップデート対象の「HCP」のダウンロードを実行する。このとき、アップデート対象の「HCP」は、FMEM12(すなわち、「Reservedバンク」)に書き込まれることとなる。
【0042】
また、SVP CPU17は、更新対象の「HCP」が正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の「HCP」が動作しなかった場合に、更新前の「HCP」を動作させる。具体的には、ダウンロード時に書き込み異常(サムチェック異常)を検出した場合、並びにSCF起動時にFMEM故障で起動できない場合に、更新前の「HCP」を動作させる。
【0043】
より詳細には、SVP CPU17は、ダウンロード後に書き込み異常(サムチェック異常)が発生した場合、ダウンロードのリトライを再度行い、それでも異常が検出される場合には、異常側のバンクへの切り替えを禁止する。このとき、現在動作中のFMEM11(すなわち、「Currentバンク」)は、正常であるため、運用は継続可能となる。また、新たにアップデートを行おうとした場合においても、バンク切替できない状態に制御しているため、異常側のFMEM12に切り替わることがなく、異常状態に陥らない。なお、故障したバンクは、FMEM素子故障で、保守の都合の良いタイミングでSVPボード交換が行われることとなる。
【0044】
また、SVP CPU17は、SVPのハードウェアでSVPファームウェアを監視する機能を有する。すなわち、SVP CPU RESETから一定時間経過後に、ファームウェアからの反応がない場合、ハードウェアで強制的にバンクを切り替えて、旧動作側の版数で動作するようにする。これにより、異常状態のまま起動しないことを防止することが可能になる。また、ハードウェアで強制的にバンク切替されたバンクは、ファームウェアでバンク切替できない状態にしておくことで、新たな異常発生を防止する。
【0045】
このように、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることで、更新制御処理(アップデート処理)中に異常が発生した場合でも、更新前のファームウェアによる動作を保証することができ、運用に影響を及ぼさずに復旧することが可能になる。
【0046】
(各種処理の手順)
次に、本実施例1に係る更新制御装置10の各種処理の手順を説明する。なお、ここでは、主たる特徴である更新制御処理(アップデート処理)を説明した後に、アップデート中に異常が発生した場合の復旧処理について説明することとする。
【0047】
(アップデート処理)
本実施例1に係るアップデート処理について説明する。図5は、本実施例1に係るアップデート処理の手順を示すフローチャートである。同図に示すように、SVP CPU17は、アップデート要求を受け付けた場合(ステップS501肯定)に、HCP CD20からドライブ(図示せず)を介して更新対象の「HCP」の管理ファイル2−1を取得する(ステップS502)。
【0048】
続いて、SVP CPU17は、アップデートを行うパーティション番号の指定を受け付け(ステップS503)、更新制御装置10における「SVP」がアップデートを行うパーティションのSB30をサポート可能か否かを管理ファイル2−1を参照して照査し、「SVP」がアップデートを行うパーティションのSB30をサポート不可能である場合(ステップS504否定)には、アップデート処理を中止し(ステップS505)、処理を終了する。
【0049】
ここで、「SVP」がアップデートを行うパーティションのSB30をサポート可能である場合(ステップS504肯定)に、SVP CPU17は、現HCP情報およびインストールした管理ファイルに含まれる整合性情報に基づいてアップデート対象のHCPの適用可否を判定する(ステップS506)。具体的には、アップデートを行う「OBP」版数が計算機システム100内で整合性が保たれているか否かを判定する。
【0050】
より詳細には、管理ファイル2−1における適用可能「OBP」版数を照査して、計算機システム100における「OBP」が全てサポートされているか否かを照査する。例えば、管理ファイル2−1における適用可能「OBP」版数が「B版」、「C版」、「D版」であった場合、計算機システム100における「OBP」版数が全て「B版」以降であればサポートされていると判定し、「A版」が含まれていればサポートされていないと判定する。
【0051】
そして、アップデート対象の「HCP」が適用可能であった場合(ステップS507肯定)、かつOBPバックアップ領域に空き領域が存在する場合(ステップS508肯定)に、SVP CPU17は、出力インターフェースを介して、現在の「HCP」版数と、アップデート対象の「HCP」版数とを確認表示し(ステップS509)、その際に、アップデート指示を受け付けたならば(ステップS510肯定)、アップデート対象の「HCP」のダウンロードを実行し(ステップS511)、処理を終了する。このとき、アップデート対象の「HCP」は、FMEM12(すなわち、「Reservedバンク」)に書き込まれることとなる。
【0052】
一方、アップデート対象の「HCP」が適用不可能であった場合(ステップS507否定)、OBPバックアップ領域に空き領域が存在しない場合(ステップS508否定)、或いはアップデート中止指示を受け付けた場合(ステップS510否定)に、SVP CPU17は、アップデート処理を中止し(ステップS505)、処理を終了する。
【0053】
(復旧処理)
本実施例1に係る復旧処理について説明する。図6は、本実施例1に係る復旧処理の手順を示すフローチャートである。この復旧処理は、更新対象の「HCP」をダウンロードした後にSCF(パーティション側のサービスプロセッサ)がリセットされたならば、開始されることとなる。
【0054】
まず最初に、更新制御装置10において、コントローラ14は、SCFwatchdogタイマをスタートし(ステップS601)、アップデート対象の「HCP」が格納されたFMEM12(すなわち、「旧Reservedバンク」)でシステムを起動する(ステップS602)。
【0055】
そして、SVP CPU17は、SCFファームから「Ready通知」を受信したならば(ステップS603肯定)、FMEM12から主記憶メモリ16にアップデート対象の「HCP」をコピーして動作する(ステップS604)。
【0056】
また、SCFファームから「Ready通知」を受信せず(ステップS603否定)、かつSCFタイムアウトになった場合(ステップS605肯定)に、SVP CPU17は、アップデート前の「HCP」が格納されたFMEM11(すなわち、「旧Currentバンク」)にバンクを切り替えて計算機システム100を動作させる(ステップS606)。
【0057】
上述してきたように、本実施例1に係る更新制御装置10によれば、計算機システム100全体が「HCP」の最新版数に統一されていない状態でも、機能内に互換性が担保されたもの同士であれば共存を許容することとしたので、同種異版のファームウェアを共存させることができ、運用中にアップデートすることが可能になる。
【0058】
また、本実施例1に係る更新制御装置10によれば、更新制御処理(アップデート処理)中に異常が発生した場合でも、更新前のファームウェアによる動作を保証することができ、運用に影響を及ぼさずに復旧することが可能になる。
【実施例2】
【0059】
さて、これまで本発明の実施例1について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施例にて実施されてもよいものである。
【0060】
例えば、本実施例では、HCP CD20から改版のファームウェアをダウンロードした場合の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の媒体(例えば、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスクなどの媒体)から改版のファームウェアをダウンロードする場合、並びにネットワーク上に存在するサーバ装置から改版のファームウェアをダウンロードする場合でも同様に適用することができる。
【0061】
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0062】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施例1に係る更新制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】管理ファイルの情報の構成例を示す図である。
【図3】管理ファイルの情報の構成例を示す図である。
【図4】整合性情報の構成例を示す図である。
【図5】本実施例1に係るアップデート処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施例1に係る復旧処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10 更新制御装置
11、12 FMEM
13 NVRAM
14 コントローラ
15 NAND FMEM
16 主記憶メモリ
17 SVP CPU
20 HCP CD
30 SB(システムボード)
100 計算機システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラムであって、
前記機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、診断プログラム並びにシステムボードの組合せに関する整合性情報を取得する整合性情報取得手順と、
前記整合性情報取得手順によって取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラムが適用可能であるか否かを判定する適用可否判定手順と、
前記適用可否判定手順によって更新対象の機器制御プログラムが適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする更新制御プログラム。
【請求項2】
前記整合性情報取得手順は、更新対象の機器制御プログラムに内包された整合性情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の更新制御プログラム。
【請求項3】
前記更新制御手順は、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることを特徴とする請求項1または2に記載の更新制御プログラム。
【請求項4】
パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御方法であって、
前記機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、診断プログラム並びにシステムボードの組合せに関する整合性情報を取得する整合性情報取得工程と、
前記整合性情報取得工程によって取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラムが適用可能であるか否かを判定する適用可否判定工程と、
前記適用可否判定工程によって更新対象の機器制御プログラムが適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御工程と、
を含んだことを特徴とする更新制御方法。
【請求項5】
前記整合性情報取得工程は、更新対象の機器制御プログラムに内包された整合性情報を取得することを特徴とする請求項4に記載の更新制御方法。
【請求項6】
前記更新制御工程は、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることを特徴とする請求項4または5に記載の更新制御方法。
【請求項7】
パーティション単位または複数のパーティション群で動作する個別ファームウェアの集合体である機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御装置であって、
前記機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御プログラム、診断プログラム並びにシステムボードの組合せに関する整合性情報を取得する整合性情報取得手段と、
前記整合性情報取得手段によって取得された整合性情報に基づいて更新対象の機器制御プログラムが適用可能であるか否かを判定する適用可否判定手段と、
前記適用可否判定手段によって更新対象の機器制御プログラムが適用可能であると判定された場合に、該機器制御プログラムの更新制御を行う更新制御手段と、
を備えたことを特徴とする更新制御装置。
【請求項8】
前記整合性情報取得手段は、更新対象の機器制御プログラムに内包された整合性情報を取得することを特徴とする請求項7に記載の更新制御装置。
【請求項9】
前記更新制御手段は、更新対象の機器制御プログラムが正常に書き込まれなかった場合、または更新対象の機器制御プログラムが動作しなかった場合に、更新前の機器制御プログラムを動作させることを特徴とする請求項7または8に記載の更新制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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