説明

書画カメラ、書画カメラの制御方法およびプログラム

【課題】表示装置側に特段の機構を必要とすることなく、複数の撮像対象を比較したり表示内容を切り替えたりする場合の利便性を向上させ得る。
【解決手段】2個のカメラ2、3と、2個のカメラ2、3のうち、m個(1≦m≦2)のカメラ2、3により撮像されたm個の画像データを一時的に記憶するフレームメモリー11と、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データに対し、画像データの数mに応じた所定の画像処理を施す画像処理部14と、所定の画像処理によって生成された出力用の1の画像データである出力画像データを、表示装置に対して出力するビデオ出力部15と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した画像データを表示装置に対して出力する書画カメラ、書画カメラの制御方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の書画カメラとして、カメラスタンドと、カメラスタンドに角度変更可能に装着された1個のデジタルカメラと、デジタルカメラによって撮像した画像データを表示装置に出力するコネクターと、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。撮像された画像データは、コネクターを介して表示装置に出力され、表示装置によって表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−318023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような書画カメラでは、複数の撮像対象を同時に撮像・表示することができないため、複数の撮像対象を比較したり表示内容を切り替えたりする場合、その都度、撮像対象を入れ替える必要があり、煩わしいという問題があった。例えば、学校などで、模範解答と生徒の回答とを比較して表示したい場合や、先に問題を表示して次に回答を表示する場合などである。これに対し、複数のデジタルカメラ(撮像手段)を備え、それぞれのデジタルカメラで個々に撮像された複数の画像データを、1個の表示装置に出力する構成も考えられる。しかしながら、当該構成では、表示装置側に、複数の画像データに対し画像処理(例えば、画像データの合成処理)を施す画像処理部を搭載する必要がある。かかる場合、当該画像処理部を搭載した表示装置にしか、本書画カメラを用いることができないため、書画カメラの汎用性が低くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、表示装置側に特段の機構を必要とすることなく、複数の撮像対象を比較したり表示内容を切り替えたりする場合の利便性を向上させ得る書画カメラ、書画カメラの制御方法およびプログラムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の書画カメラは、n個(n≧2)の撮像手段と、n個の撮像手段のうち、m個(1≦m≦n)の撮像手段により撮像されたm個の画像データを一時的に記憶する一時記憶手段と、一時記憶手段に記憶されたm個の画像データに対し、画像データの数mに応じた所定の画像処理を施す画像処理手段と、所定の画像処理によって生成された出力用の1の画像データである出力画像データを、表示装置に対して出力する出力画像データ出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の書画カメラの制御方法は、n個(n≧2)の撮像手段と、一時記憶手段と、を有する書画カメラの制御方法であって、n個の撮像手段のうち、m個(1≦m≦n)の撮像手段により、m個の画像データを撮像する撮像工程と、一時記憶手段により、撮像したm個の画像データを一時的に記憶する記憶工程と、一時記憶手段に記憶されたm個の画像データに対し、画像データの数mに応じた所定の画像処理を施す画像処理工程と、所定の画像処理によって生成された出力用の1の画像データである出力画像データを、表示装置に対して出力する出力画像データ出力工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、n個の撮像手段を備えているため、最大でn個の撮像対象を同時に撮像することができ、ひいてはn個の撮像対象を同時に表示させることができる。ゆえに、複数の撮像対象を比較したり表示内容を切り替えたりする場合の利便性を向上させることができる。また、画像処理手段により、m個(1≦m≦n)の画像データに対し画像処理を施し、出力画像データ出力手段により、画像処理によって生成された1個の出力用画像データを出力するため、表示装置側に特段の機構を必要とすることなく、m個(1≦m≦n)の画像データの画像処理結果を表示させることができる。
【0009】
上記の書画カメラにおいて、m≧2の場合に、画像処理モードを選択するための画像処理モード選択手段をさらに備え、所定の画像処理は、画像処理モード選択手段の選択結果に基づく処理であることが好ましい。
【0010】
上記の書画カメラの制御方法において、書画カメラは、画像処理モードを選択するための画像処理モード選択手段をさらに有し、m≧2の場合に、画像処理モード選択手段による選択結果を取得する選択結果取得工程をさらに備え、画像処理工程では、画像処理モード選択手段の選択結果に基づいて、所定の画像処理を施すことが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、画像処理モード選択手段により、複数種の画像処理モードから1の画像処理モードを選択すると、この選択結果に基づく処理によって、m個の画像データが画像処理される。そのため、ユーザーは、所望の画像処理モードを選択することによって、所望の画像処理を施すことができる。すなわち、m個の撮像対象を、所望の表示形態で表示させることができる。なお、画像処理モードとは、画像処理の方法や様式、形態を示すものである。
【0012】
上記の書画カメラにおいて、画像処理モードには、所定の画像処理として、m個の画像データのうち(m−1)個の画像データに対して透過処理を行い、透過処理済みの画像データを、透過処理していない画像データに重畳するように、m個の画像データを合成して、1個の出力画像データを生成する比較モードが含まれることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、画像処理モード選択手段により、「比較モード」を選択することで、m個の画像データを重畳させて表示させることができるため、m個の画像データを容易に比較することができる。これにより、例えば、2つの図形の相違点を見る場合や、間違い探しのような絵の比較をする場合等に利用することができる。なお、(m−1)個の画像データを透過処理する際、(m−1)個の画像データが、文章や線図等の、背景と画線とで構成されたものである場合には、背景のみを透過処理することが好ましい。
【0014】
この場合、画像処理モードには、所定の画像処理として、m個の画像データが隣接して表示されるように、m個の画像データを合成して、1個の出力画像データを生成する同時表示モードが含まれることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、画像処理モード選択手段により、「同時表示モード」を選択することで、m個の画像データを隣接させて表示させることができるため、m個の画像データを容易に比較することができる。これにより、例えば、学校などで、模範解答と生徒の回答とを比較して表示したい場合等に利用することができる。
【0016】
この場合、画像処理モードには、所定の画像処理として、m個の画像データのそれぞれを個別に表示するm個の出力画像データを生成する個別切替モードが含まれ、出力画像データ出力手段は、個別切替モードが選択された場合、m個の出力画像データのうち、いずれか1個の出力画像データを出力することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、画像処理モード選択手段により、「個別切替モード」を選択することで、m個の画像データうちの、いずれかの画像データを適宜表示させることができる。これにより、例えば、学校などで、先に問題を表示して次に回答を表示する場合等に利用することができる。なお、m個の出力データのうち、いずれかを出力する構成であれば、ユーザーが指定した1の画像データを表示させる構成であっても良いし、m個の出力画像データを、スライドショーのように1個ずつ順次表示させる構成であっても良い。
【0018】
この場合、画像処理モードには、所定の画像処理として、m個の画像データが隣接するように、m個の画像データを合成した第1の出力画像データと、m個の画像データのそれぞれを個別に表示するm個の第2の出力画像データと、を生成する複合切替モードが含まれ、出力画像データ出力手段は、複合切替モードが選択された場合、第1の出力画像データおよびm個の第2の出力画像データのうち、いずれか1個の出力画像データを出力することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、画像処理モード選択手段により、「複合切替モード」を選択することで、m個の画像データと、これらを合成して得られた1の画像データとの(m+1)個の画像データのうち、いずれかの画像データを適宜表示させることができる。これにより、例えば、複数の絵を隣接して表示させた合成画像を表示し、その中から詳細を見たい絵を選択して表示する場合等に利用することができる。
【0020】
本発明のプログラムは、コンピューターに、上記の書画カメラの制御方法における各工程を実行させることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、コンピューターに本プログラムを搭載することで、上記の書画カメラの制御方法における各工程を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る書画カメラの斜視図である。
【図2】書画カメラの制御ブロック図である。
【図3】(a)は「通常モード」における表示例を示す図、(b)は「比較モード」における表示例を示す図、(c)は「同時表示モード」における表示例を示す図、(d)は「個別切替モード」における表示例を示す図、(e)は「複合切替モード」における表示例を示す図である。
【図4】書画カメラの画像出力処理を示すフローチャートである。
【図5】書画カメラの変形例の、(a)は「通常モード」における表示例を示す図、(b)は「比較モード」における表示例を示す図、(c)は「同時表示モード」における表示例を示す図、(d)は「個別切替モード」における表示例を示す図、(e)は「複合切替モード」における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照し、本発明の書画カメラについて説明する。図1および図2に示すように、書画カメラ1は、2個の撮像対象A1、A2をそれぞれ撮像する第1カメラ2および第2カメラ3(撮像手段)と、第1カメラ2および第2カメラ3をそれぞれ支持するカメラスタンド4と、カメラスタンド4が立設された支持台5と、支持台5上に配設された操作部6と、を備えている。さらに、書画カメラ1は、その内部に、フレームメモリー(一時記憶手段)11と、制御信号出力部12と、制御部13と、画像処理部(画像処理手段)14と、ビデオ出力部(出力画像データ出力手段)15と、を備えている。
【0024】
書画カメラ1は、第1カメラ2および第2カメラ3により2個の撮像対象A1、A2をそれぞれ撮像して、2個の画像データを得る。本実施例では、第1カメラ2によって、第1撮像対象A1を撮像し、第2カメラ3によって、第2撮像対象A2を撮像するものとする。なお、1個の撮像対象を別の角度で撮像するものや、1個の撮像対象の異なる領域を、第1撮像対象A1および第2撮像対象A2として撮像しても良い。例えば、本を開いた際の右側のページを第1撮像対象A1とし、左側のページを第2撮像対象A2としても良い。
【0025】
カメラスタンド4は、第1カメラ2および第2カメラ3を、位置変更可能且つ角度変更可能に支持するものであって、支持台5に立設されると共に鉛直方向に延在する鉛直支持軸21と、接合部24を介して鉛直支持軸21の先端部に支持されると共に、水平方向に延在する一対の水平支持軸22、22と、各係合部25、25を介して各水平支持軸22、22の先端部に対し水平面内で回動自在に支持されると共に、その先端部に各カメラ2、3を取り付けた一対の支持フレーム23、23と、を備えている。鉛直支持軸21および一対の水平支持軸22、22は、基端側の円筒形の太軸と、先端側の円柱形の細軸とから成る入り子構造を有しており、先端方向に伸縮自在且つ先端側を回転自在に構成している。一対の支持フレーム23、23は、水平方向に延在し、その先端部の鉛直方向下部に各カメラ2、3を配設している。鉛直支持軸21および各水平支持軸22、22の伸縮、鉛直支持軸21および各水平支持軸22の先端側の回転、並びに各支持フレーム23、23の回動によって、各カメラ2、3のXYZ位置および角度を変更可能に構成している。これにより、各カメラ2、3の撮像範囲を適宜変更可能となっている。
【0026】
操作部6は、第1電源スイッチ29と、第2電源スイッチ30と、モード切替スイッチ(画像処理モード選択手段)31と、表示切替スイッチ32と、を有している。第1電源スイッチ29は、第1カメラ2のON/OFFを切り替えるためのスイッチである。第2電源スイッチ30は、第2カメラ3のON/OFFを切り替えるためのスイッチである。モード切替スイッチ31は、後述の表示モードを切り替えるためのスイッチである。表示切替スイッチ32は、表示する画像を切り替えるためのスイッチである。
【0027】
フレームメモリー11は、各カメラ2、3によって撮像した画像データを一時的に記憶する記憶手段である。具体的には、2個のカメラ2、3のうち、一方または両方のカメラ2、3により撮像されたm個(1≦m≦2)の画像データを一時的に記憶する。フレームメモリー11は、各カメラ2、3に対しそれぞれ専用のデータ記憶領域を有し、各データ記憶領域に、撮像された画像データを格納する。すなわち、フレームメモリー11は、ON状態のカメラ2、3の数に応じた数の画像データを記憶する。
【0028】
制御信号出力部12は、書画カメラ1の製品情報や設定情報等を制御信号として、表示装置(例えば、プロジェクター等)に出力する。
【0029】
制御部13は、フレームメモリー11に記憶された画像データの数やモード切替スイッチの操作信号に基づいて、複数種の表示モード(画像処理モード)の中から、1の表示モードを決定し、決定した表示モードを示すモード設定信号を、画像処理部14およびビデオ出力部15に出力する。また、表示切替スイッチ32の操作信号に基づいて、表示切替指令となる表示切替信号をビデオ出力部15に出力する。
【0030】
画像処理部14は、制御部13の指令(モード設定信号)に基づき、フレームメモリー11に記憶された画像データに基づいて、出力用の画像データである出力画像データを生成する。詳細は後述するが、特定の表示モードでは、切替対象として複数の出力画像データを生成する。
【0031】
ビデオ出力部15は、モード切替信号および表示切替信号に基づいて、生成された出力画像データを表示装置に対して出力する。なお、制御信号出力部12およびビデオ出力部15は、映像出力端子やUSB端子等を有する共通の端子部17(図1参照)によって構成されており、ケーブル18を介して、表示装置に接続されている。
【0032】
ここで図3を参照して表示モードについて説明する。表示モードは、フレームメモリー11に記憶された画像データの数mに応じて限定されるものであり、m=1の場合に決定される「通常モード」と、m=2の場合に、選択可能な「比較モード」、「同時表示モード」、「個別切替モード」および「複合切替モード」と、を含んでいる。
【0033】
図3(a)に示すように、「通常モード」は、フレームメモリー11に記憶された1個の画像データのみを表示するモードである。「通常モード」では、画像処理部14により、フレームメモリー11に記憶された1個の画像データに対し、表示装置の画面全体に表示するためのサイズ調整処理を施す。その他、データ形式の変換等の標準の画像処理を行って、1個の出力画像データを生成する。なお、図3(a)の表示例では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)とのいずれか一方を表示している。
【0034】
図3(b)に示すように、「比較モード」は、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データを重畳させて表示するモードである。「比較モード」では、画像処理部14により、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データのうち1個の画像データに対して透過処理すると共に、透過処理済みの画像データを、透過処理していない画像データの上に重ね合わせる(重畳する)合成処理を施す。その後、上記のサイズ調整処理および標準の画像処理を施して、1個の出力画像データを生成する。なお、図3(b)の表示例では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)を透過処理して、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)の上に重ね合わせたものを表示している。
【0035】
図3(c)に示すように、「同時表示モード」は、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データを隣接させて表示するモードである。「同時表示モード」では、画像処理部14により、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データが隣接して表示されるように、当該2個の画像データに対し縮小処理および合成処理を施す。その後、上記標準の画像処理を施して、1の出力画像データを生成する。なお、図3(c)の表示例では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)とを、それぞれ横方向に縮小しつつ隣接させたものを表示している。その結果、正方形の図形は、縦長の長方形になり、円形の図形は、縦長の楕円形になっている。
【0036】
図3(d)に示すように、「切替表示モード」は、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データを切り替えて表示するモードである。「切替表示モード」では、画像処理部14により、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データのそれぞれに対し、個別に「通常モード」と同様の画像処理を施して、2個の出力画像データを生成する。つまり、「通常モード」と同様の画像処理を2回繰り返す。これによって、切替対象となるカメラ2、3別の2個の出力画像データが生成される。図3(d)の表示例では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)とを切り替えて表示している。
【0037】
図3(e)に示すように、「複合切替モード」は、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データと、これらを合成した画像データとを切り替えて表示するモードである。「複合表示モード」では、画像処理部14により、フレームメモリー11に記憶された2個の画像データに対し、当該2個の画像データが隣接して表示されるように、縮小処理および合成処理を施して、1個の出力画像データ(第1の出力画像データ)を生成すると共に、2個の画像データのそれぞれに対し、個別に「通常モード」と同様の画像処理を施して、2個の出力画像データ(第2の出力画像データ)を生成する。これにより、切替対象となる、合成した出力画像データとカメラ別の出力画像データと、の合計3個の画像データが生成される。図3(e)の表示例では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)と、それらを縮小して隣接させた画像データと、を切り替えて表示している。
【0038】
次に、図4のフローチャートを参照し、書画カメラ1の画像出力処理について説明する。図4に示すように画像出力処理では、まず、カメラ2、3によって撮像対象A1、A2を撮像する(S1)(撮像工程)。すなわち、2個のカメラ2、3のうち、ON状態のm個(1≦m≦2)(mは整数)のカメラ2、3により、撮像対象A1、A2を撮像し、各1個(計m個)の画像データを生成する。その後、フレームメモリー11により、撮像したm個の画像データを一時的に記憶する(S2)(記憶工程)。
【0039】
続いて、制御部13により、フレームメモリー11に記憶された画像データの数mと、モード切替スイッチ31の操作信号とに基づいて、表示モードを決定する(S3)。具体的には、フレームメモリー11に記憶された画像データの数mを判定し、m=1である場合には、表示モードを「通常モード」に決定する。したがって、この場合、モード切替スイッチ31が操作されても、これを無効とする。一方、m=2である場合には、モード切替スイッチ31の押下ごとに、「比較モード」、「同時表示モード」、「個別切替モード」、「複合切替モード」を順に切り替えて表示モードを決定する。すなわち、m=2の場合には、モード切替スイッチ31の操作信号(選択結果)を受けて(選択結果取得工程)、表示モードを決定する。
【0040】
次に、画像処理部14により、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データに対し、決定した表示モードに応じた上記の所定の画像処理を施して、出力画像データを生成する(画像処理工程)(S4)。上記したように、「通常モード」「比較モード」および「同時表示モード」では、1個の出力画像データを生成する。また、「個別切替モード」では、2個の出力画像データを生成する。さらに、「複合切替モード」では、3個の出力画像データを生成する。なお、上記のとおり、表示モードは、フレームメモリー11に記憶した画像データの数mに応じて制限されるため、m=1の場合は、「通常モード」に対応する画像処理を施す。また、m=2の場合は、モード切替スイッチ31の選択結果に基づき、「比較モード」、「同時表示モード」、「個別切替モード」および「複合切替モード」のうち、いずれかのモードに対応する画像処理を施すことになる。すなわち、画像処理部14は、記憶した画像データの数mに応じた画像処理を施すこととなる。
【0041】
ビデオ出力部15は、画像処理部14により1個の出力画像データが生成された場合(「通常モード」、「比較モード」および「同時表示モード」の場合)は、それを出力し、複数の出力画像データが生成された場合(「個別切替モード」および「複合切替モード」の場合)は、表示切替信号の取得に伴って、出力対象となる出力画像データを切り替えて出力する(S5)。すなわち、表示切替スイッチ32の操作により、「個別切替モード」では、生成した2個の出力画像データの中から1個の出力画像データを選択的に出力する。また、「複合切替モード」では、生成した3個の出力画像データの中から1個の出力画像データを選択的に出力する。
【0042】
以上のように、本実施形態の書画カメラ1によれば、2個のカメラ2、3を備えているため、最大で2個の撮像対象A1、A2を同時に撮像することができ、ひいては2個の撮像対象A1、A2を同時に表示させることができる。ゆえに、複数の撮像対象A1、A2を比較したり表示内容を切り替えたりする場合の利便性を向上させることができる。また、画像処理部14およびビデオ出力部15により、m個の画像データから1の出力用画像データを生成して出力するため、表示装置側に特段の機構を必要とすることなく、m個の画像データの画像処理結果を表示させることができる。
【0043】
また、モード切替スイッチ31により、複数種の表示モードから1の表示モードを選択できるため、所望の画像処理を施すことができる。すなわち、2個の撮像対象A1、A2を、所望の表示形態で表示させることができる。
【0044】
さらに、「比較モード」を選択することで、2個の画像データを重畳させて表示させることができるため、2個の画像データを容易に比較することができる。これにより、例えば、2つの図形の相違点を見る場合や、間違い探しのような絵の比較をする場合等に利用することができる。
【0045】
またさらに、「同時表示モード」を選択することで、2個の画像データを隣接させて表示させることができるため、2個の画像データを容易に比較することができる。これにより、例えば、学校などで、模範解答と生徒の回答とを比較して表示したい場合等に利用することができる。
【0046】
また、「個別切替モード」を選択することで、2個の画像データうちの、いずれかの画像データを適宜表示させることができる。これにより、例えば、学校などで、先に問題を表示して次に回答を表示する場合等に利用することができる。
【0047】
さらに、「複合切替モード」を選択することで、2個の画像データと、これらを合成して得られた1個の画像データとの3個の画像データのうち、いずれかの画像データを適宜表示させることができる。これにより、例えば、複数の絵を隣接して表示させた合成画像を表示し、その中から詳細を見たい絵を選択して表示する場合等に利用することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、2個のカメラ2、3を備え、最大2個の撮像対象A1、A2を撮像し、表示させる構成であったが、n個(n≧2)(nは整数)のカメラであれば、3個以上のカメラを備え、より多くの撮像対象を撮像し、表示させる構成であっても良い。かかる場合、m=1の場合には、表示モードを「通常モード」に決定し、m≧2の場合には、「比較モード」、「同時表示モード」、「個別切替モード」および「複合切替モード」の間で切り替えて表示モードを決定する。
【0049】
例えば、図5に示すように、3個のカメラを備えた場合(n=3)、m=1のときには、「通常モード」とし、フレームメモリー11に記憶された1個の画像データに対し上記サイズ調整処理を施して、1個の出力画像データを生成する。これにより、フレームメモリー11に記憶された1個の画像データのみを表示する(図5(a)参照)。
【0050】
一方、m≧2のとき(図中ではm=3)には、「比較モード」を選択すると、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データのうちの(m−1)個の画像データに対して透過処理すると共に、透過処理済みの画像データを、透過処理していない画像データの上に重ね合わせる合成処理を施して、1個の出力画像データを生成する。これによって、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データを重畳させて表示する(図5(b)参照)。
【0051】
「同時表示モード」を選択すると、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データが隣接して表示されるように、当該m個の画像データに対し縮小処理および合成処理を施して、1個の出力画像データを生成する。これによって、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データを隣接させて表示する(図5(c)参照)。
【0052】
「切替表示モード」を選択すると、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データのそれぞれに対し、個別に「通常モード」と同様の画像処理を施して、m個の出力画像データを生成する。これによって、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データを切り替えて表示する(図5(d)参照)。
【0053】
「複合切替モード」を選択すると、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データに対し、当該m個の画像データが隣接して表示されるように、縮小処理および合成処理を施して、1個の出力画像データ(第1の出力画像データ)を生成すると共に、m個の画像データのそれぞれに対し、個別に「通常モード」と同様の画像処理を施して、m個の画像データ(第2の出力画像データ)を生成する。これによって、フレームメモリー11に記憶されたm個の画像データと、これらを合成した画像データとの(m+1)個の画像データを切り替えて表示する(図5(e)参照)。
【0054】
また、本実施形態においては、「比較モード」が選択された場合、(m−1)個の画像データに対し、その全域を透過処理する構成であったが、(m−1)個の画像データが、文章や線図等の、背景と線や点とで構成されたものである場合には、背景のみを透過処理する構成であっても良い。すなわち、当該条件の画像データであるか否かを判定し、条件を満たしている場合には、背景のみを透過処理し、条件を満たしていない場合には、全域を透過処理する構成としても良い。
【0055】
さらに、本実施形態において、「個別表示モード」や「複合切替モード」では、表示切替スイッチ32によって、表示する画像を切り替える(選択する)構成であったが、m個の出力画像データもしくは(m+1)個の画像データの中から、スライドショーのように1個ずつ順次表示させる構成であっても良い。
【0056】
また、本実施形態において、「同時表示モード」では、m個の画像データを横方向に隣接して表示する構成であったが、縦方向に隣接して表示する構成であっても良いし、隣接方向(縦・横)を選択可能とする構成としても良い。また、m≧4の場合には、縦横にマトリクス状に配列して表示する構成であっても良い。
【0057】
なお、本実施形態においては、m≧2の場合、モード選択を行う構成であったが、モード選択を不要としても良い。この場合は、フレームメモリー11に記憶した画像データの数mに応じて、一義的に画像処理の内容を決定する。例えば、画像データが1個の場合は、上記の「通常モード」に対応する画像処理、画像データが2個の場合は、上記の「比較モード」のm=2に対応する画像処理、画像データが3個の場合は、上記の「比較モード」のm=3に対応する画像処理、をそれぞれ施すことが考えられる。もちろん、画像データが2個の場合は、上記の「比較モード」のm=2に対応する画像処理で、画像データが3個の場合は、上記の「同時表示モード」のm=3に対応する画像処理、をそれぞれ施すなど、画像データの数に応じて画像処理の処理内容を可変しても良い。
【0058】
なお、本実施形態においては、書画カメラ1が、ケーブル18を介した有線接続によって、表示装置に接続して、出力画像データを出力する構成であったが、無線接続によって、表示装置に接続して、出力画像データを出力する構成であっても良い。かかる場合、書画カメラ1にはバッテリーを内蔵する。また、PC(Personal Computer)を経由して、表示装置に接続する構成であっても良い。すなわち、USB端子によって書画カメラ1とPCとを接続すると共に、PCと表示装置とを接続する構成とし、PCを介して表示装置に出力画像データを出力する構成とする。かかる場合、例えば、学校などで、大画面の表示装置(大型のディスプレイやプロジェクター等)によって、多数の人間に出力画像データを同時に見せるときのように、発表者(ユーザー)にとって、表示装置の表示画像が確認し難い場合でも、PCの表示画面に出力画像データを表示することで、表示装置に表示している出力画像データを容易に確認することができる。また、表示モードの切替えや出力画像データの切替えを、確認しながら行うことができる。
【0059】
なお、本実施形態においては記載を省略したが、出力画像データは、静止画データでも良いし、動画データでも良い。
【0060】
また、本実施形態においては、生成した出力画像データを、ビデオ出力部15によって随時出力する構成であったが、これと共に、生成した出力画像データを記録媒体(USBメモリーやSDメモリーカード)に保存する構成としても良い。かかる場合、出力画像データを保存することができるため、出力画像データを別のタイミングで使うことができると共に、出力画像データの移動や保管を行うことができる。なお、出力画像データを保存する際、静止画データとして出力画像データを保存しても良いし、連続する複数の出力画像データを動画データとして保存する構成であっても良い。
【0061】
なお、本実施形態においては、選択可能な表示モードとして、「比較モード」、「同時表示モード」、「個別切替モード」および「複合切替モード」を含む構成であったが、必ずしも全てのモードを含む必要はなく、いずれか少なくとも1つを含む構成であれば良い。例えば、これらのうち1つの表示モードのみを含み、これらとは別の表示モードを加える構成としても良い。
【符号の説明】
【0062】
1:書画カメラ、 2:第1カメラ、 3:第2カメラ、 6:モード切替スイッチ、 11:フレームメモリー、 14:画像処理部、 15:ビデオ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個(n≧2)の撮像手段と、
前記n個の撮像手段のうち、m個(1≦m≦n)の撮像手段により撮像されたm個の画像データを一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記一時記憶手段に記憶されたm個の画像データに対し、画像データの数mに応じた所定の画像処理を施す画像処理手段と、
前記所定の画像処理によって生成された出力用の1の画像データである出力画像データを、表示装置に対して出力する出力画像データ出力手段と、を備えたことを特徴とする書画カメラ。
【請求項2】
m≧2の場合に、画像処理モードを選択するための画像処理モード選択手段をさらに備え、
前記所定の画像処理は、前記画像処理モード選択手段の選択結果に基づく処理であることを特徴とする請求項1に記載の書画カメラ。
【請求項3】
前記画像処理モードには、
前記所定の画像処理として、前記m個の画像データのうち(m−1)個の画像データに対して透過処理を行い、透過処理済みの画像データを、透過処理していない画像データに重畳するように、前記m個の画像データを合成して、1個の出力画像データを生成する比較モードが含まれることを特徴とする請求項2に記載の書画カメラ。
【請求項4】
前記画像処理モードには、
前記所定の画像処理として、前記m個の画像データが隣接して表示されるように、前記m個の画像データを合成して、1個の出力画像データを生成する同時表示モードが含まれることを特徴とする請求項2または3に記載の書画カメラ。
【請求項5】
前記画像処理モードには、
前記所定の画像処理として、前記m個の画像データのそれぞれを個別に表示するm個の出力画像データを生成する個別切替モードが含まれ、
前記出力画像データ出力手段は、前記個別切替モードが選択された場合、前記m個の出力画像データのうち、いずれか1個の出力画像データを出力することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の書画カメラ。
【請求項6】
前記画像処理モードには、
前記所定の画像処理として、前記m個の画像データが隣接するように、前記m個の画像データを合成した第1の出力画像データと、前記m個の画像データのそれぞれを個別に表示するm個の第2の出力画像データと、を生成する複合切替モードが含まれ、
前記出力画像データ出力手段は、前記複合切替モードが選択された場合、前記第1の出力画像データおよび前記m個の第2の出力画像データのうち、いずれか1個の出力画像データを出力することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の書画カメラ。
【請求項7】
n個(n≧2)の撮像手段と、一時記憶手段と、を有する書画カメラの制御方法であって、
前記n個の撮像手段のうち、m個(1≦m≦n)の撮像手段により、m個の画像データを撮像する撮像工程と、
前記一時記憶手段により、撮像した前記m個の画像データを一時的に記憶する記憶工程と、
前記一時記憶手段に記憶されたm個の画像データに対し、画像データの数mに応じた所定の画像処理を施す画像処理工程と、
前記所定の画像処理によって生成された出力用の1の画像データである出力画像データを、表示装置に対して出力する出力画像データ出力工程と、を備えたことを特徴とする書画カメラの制御方法。
【請求項8】
前記書画カメラは、画像処理モードを選択するための画像処理モード選択手段をさらに有し、
m≧2の場合に、前記画像処理モード選択手段による選択結果を取得する選択結果取得工程をさらに備え、
前記画像処理工程では、前記画像処理モード選択手段の選択結果に基づいて、前記所定の画像処理を施すことを特徴とする請求項7に記載の書画カメラの制御方法。
【請求項9】
コンピューターに、請求項7または8に記載の書画カメラの制御方法における各工程を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−166475(P2011−166475A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27333(P2010−27333)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】