最適化されたソレノイド巻線
本発明による誘導マイクロデバイスは、複数の分離された長方形の折り返し部(14)を備え、直線的に伸びている、ソレノイド巻線(13)を備え、折り返し部の各々は、所定の寸法を有している。折り返し部(14)の寸法のうちの少なくとも1つは、可変であり、且つ、巻線(13)に沿った折り返し部の位置と、巻線(13)の所定の磁気特性(特に、均一な磁界及び/又は最適な品質ファクター)とに応じて、各折り返し部(14)について個別に決定される。折り返し部(14)の上記可変な寸法は、幅、長さ、厚さ(EBOB)、折り返し部の高さ(ISOL)、及び2つの隣接する折り返し部(14)間のギャップ(INT)の値から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分離された長方形の折り返し部(disjointed rectangular turns)を備え、直線的に伸びている(rectilinear)、ソレノイド巻線を備え、折り返し部の各々が、所定の寸法を有する誘導マイクロデバイスに関する。
【0002】
本発明は特に、低損失又は非常に均一な磁束密度を必要とするインダクタ、変圧器、磁気記録ヘッド、アクチュエータ、センサ等を含むタイプの、一体化された又は一体化されていない全ての誘導システムに適用される。本発明は、より詳細には、一体化されたマイクロインダクタに適用される。
【背景技術】
【0003】
様々なタイプ(例えば、ソレノイドタイプ又はらせんタイプ等)の巻線を有する一体化されたマイクロインダクタが、今や長年にわたって存在している。らせん巻線では、巻線の中心に位置する折り返し部が、一般に、他の折り返し部よりも、高周波数損失に、より多く寄与する。当該損失は、一般に、折り返し部の厚さに比例すると共に、折り返し部の幅の3乗に比例する。新しいらせん形状が設計され提案されてきているが、それららせん形状のゲインは、制限されることが判明している。
【0004】
従来のソレノイド巻線は、周期的な構造を有するという利点を示し、この周期的な構造は、当然のことながら近接効果を制限する。しかしながら、ソレノイドの端部では、近接効果は、依然として非常に高いままである。更に、ソレノイドの内部では、磁束はかなり不均一になることもあり、これは、磁性材料が存在する場合には、問題を引き起こすこともある。
【0005】
例示のために、図1は、巻線2a上に配置された(例えば台形の形状の)4つの磁気エレメント2bを備えるらせんの形状の巻線2aを有する一体化されたインダクタ1を示している。これは特に、B.Viala等による論文「Bidirectional ferromagnetic spiral inductors using single deposition」(IEEE Trans. Magnetics, vol.41, no 10, pp. 3544-3549, October 2005)中や、K.H. Kim等による論文「Dual spiral sandwiched magnetic thin film inductor using Fe-Hf-N soft magnetic films as a magnetic core」(Journal of Magnetism and Magnetic Materials 239, 2002, 579-581)中で説明されている。このタイプのインダクタ1、即ち、複数の磁気面を有する平面らせん巻線を有するインダクタは、一体化が特に非常に容易であることから、マイクロエレクトロニクスでは最も一般的に使用される。
【0006】
しかしながら、巻線内の近接効果、特に、内部の折り返し部のレベルにおける近接効果は、非常に高い。当該効果は、特にB.Viala等による論文「Investigation of anomalous losses in thick Cu ferromagnetic spiral inductors」(IEEE Trans. Magnetics, vol.41, no 10, pp. 3583-3585, October 2005)中や、W.B. Kuhn等による論文「Analysis of current crowding effects in multiturn spiral inductors」(IEEE Trans. Microwave Theory and Techniques, vol.49, no 1, pp. 31-38, January 2001)中で説明されているように、高透磁率磁性材料の存在により、更にその上に増大される可能性がある。
【0007】
上述の損失の影響を低減させるために、図2に示すように、幅が可変な折り返し部を有する平面らせん(planar spiral)4の形状のインダクタンス3が提案されている。上記の幅、特に、らせん4の内部の折り返し部の幅を低減させることは、損失に対する折り返し部の寄与を制限することをもたらす。しかしながら、これはまた、特にA-S. Royet等による論文「Investigation of Proximity Effects in Ferromagnetic Inductors with Different Topologies: modeling and solutions」(Trans. Of the Magnetic Society of Japan, vol. 5, no 4, November 2005)中で説明されているように、近似的に同じDC抵抗(直流(DC))を保持するために、外側の折り返し部の幅の増大をもたらす。しかしながら、磁界は、依然として不均一のままであり、これは、インダクタの品質ファクターを制限する。
【0008】
図3a及び3bでは、平面らせん6aの形状を有し、誘導電流ループを制限するために、複数のブレード6b(例えば図3bの3つのブレード6b)により形成されたらせん6aを有する、別の形状のインダクタ5が提案されている。これは特に、A-S. Royet等による論文「Investigation of Proximity Effects in Ferromagnetic Inductors with Different Topologies: modeling and solutions」(Trans. Of the Magnetic Society of Japan, vol. 5, no 4, November 2005)中で説明されている。しかしながら、巻線の伝導度が高いので、電流ループは非常にわずかしか減衰されず、品質ファクターゲインも比較的小さいものとなる。
【0009】
図4では、直線的に伸びており、互いに並行に配置されている複数のソレノイド巻線8を有する別のタイプのインダクタ7が示されている。これは特に、Chong H. Ahn等による論文「A Fully Integrated Planar Toroidal Inductor with a Micromachined Nickel-Iron Magnetic Bar」(IEEE Trans. Components, Packaging and Manufacturing Technology - part A, vol. 17, no 3, September 1994)中で説明されている。この種のもともと周期的な幾何学形状においては、近接効果はより小さくなる。なぜならば、ソレノイド8の中心にある折り返し部9では、隣接する折り返し部により生成される磁界は、大部分が打ち消されるからである。
【0010】
しかしながら、ソレノイド8の端部にある折り返し部9では、この打ち消しは存在しない。更に、折り返し部9の内部では、近接効果は、当該折り返し部の底部と上部との間に存在しており、これらの効果は、磁性材料が存在する場合には更に増大される可能性がある。磁界は、ソレノイド8の内部では更に不均一であり、これは、磁心(magnetic core)が使用される際の電流強度に関して問題を引き起こすこともある。
【0011】
磁心の領域が、他の領域よりも強い磁界を受ける場合、磁心の領域は、実際、容易に飽和させられることになり、インダクタ7は、巻線8を通して流れる電流のレベルに対し非常に敏感に反応することになる。また、非常に弱い磁界を受ける磁心の部分は、ほとんど応答しないことになり、インダクタンスに小さな程度しか関与しないことになる。その結果、インダクタンスと電流強度との間のトレードオフは、最適からほど遠いものとなる。
【0012】
オープンに直線的に伸びているソレノイド巻線10をそれぞれ縦断面図(longitudinal cross-section)、平面図(top view)、及び横断面図(transverse cross-section)の形で示す図5aから5cに示すように、一般に、ソレノイド巻線10は、複数の分離された長方形の折り返し部11(図5c)、即ち、図5aにて破線で示すように、互いに隣接していないが1つの同じコイルを形成している複数の折り返し部11を備えている。折り返し部11の各々は、次の幾何学的パラメータにより規定される。即ち、幅WBOB(図5b)、長さLBOB(図5b)、厚さEBOB(図5a)、及び折り返し部の高さ(height of turn)ISOL(図5c)である。折り返し部の高さは、それが特に、巻線の絶縁を規定する巻線の上部と底部との間の距離に対応するので、ISOLと呼ばれる。
【0013】
巻線10はまた、2つの隣接する折り返し部11間のギャップINT(図5a)により規定されると共に、巻線10の折り返し部の数Nにより規定される。巻線10が磁心12に関連づけられる場合には、次の幾何学的パラメータも考慮する必要がある。即ち、磁心12の厚さEMAG(図5a)、長さLMAG、及び幅WMAG(図5b)である。
【0014】
しかしながら、直線的に伸びるソレノイド巻線10のこの一般的な構成は、実施することは容易であるものの、磁界は不均一のままとなる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、上述の全ての欠点を改善することであり、実施することが容易で、任意のタイプの応用に使用することが可能で、近接効果を低減すること、高周波数損失を低減すること、及び均一な磁束がソレノイド巻線に沿って全ての部分で得られることを可能にするソレノイドタイプの巻線を有する誘導マイクロデバイスを提供することである。
【0016】
本発明によれば、この目的は、添付の特許請求の範囲により達成され、より詳細には、折り返し部の寸法のうちの1つが、可変であり、且つ、巻線に沿った折り返し部の位置と、巻線の所定の磁気特性とに応じて、各折り返し部について個別に決定されることにより達成される。
【0017】
その他の利点及び特徴は、専ら非限定的な例示のために与えられ、且つ、添付の図面に示されている、本発明の個々の実施形態についての以下の説明から、より明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】先行技術による、平面らせん巻線を有し、複数の磁気面を有するインダクタの特定の実施形態を概略的に表す図である。
【図2】先行技術による、平面らせん巻線を有するその他のタイプのインダクタを概略的に表す図である。
【図3a】先行技術による、平面らせん巻線を有するその他のタイプのインダクタを概略的に表す図である。
【図3b】先行技術による、平面らせん巻線を有するその他のタイプのインダクタを概略的に表す図である。
【図4】先行技術による、直線的に伸びたソレノイド巻線を有するインダクタの特定の実施形態を概略的に表す図である。
【図5a】先行技術による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の縦断面正面図である。
【図5b】先行技術による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の平面図である。
【図5c】先行技術による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の横断面側面図である。
【図6a】本発明による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の縦断面正面図である。
【図6b】本発明による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の平面図である。
【図7a】図6a及び図6bのソレノイド巻線の代替実施形態を非常に概略的に表す図である。
【図7b】図6a及び図6bのソレノイド巻線の代替実施形態を非常に概略的に表す図である。
【図7c】図6a及び図6bのソレノイド巻線の代替実施形態を非常に概略的に表す図である。
【図8】折り返し部の幅が幾何級数に応じて変化するソレノイド巻線の縦軸(longitudial axis)に沿った磁界の標準偏差を、この幾何級数の比に応じて与えたグラフである。
【図9a】図8のグラフのあるポイントの巻線の形状を示す平面図である。
【図9b】図8のグラフのあるポイントの巻線の形状を示す平面図である。
【図10】折り返し部の幅と折り返し部の長さとが共にQWとQLのそれぞれの比の幾何級数に応じて変化する巻線の標準化された品質ファクターを、QLの様々な値についてQWに応じて表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図6aから図10を参照するに、誘導マイクロデバイスは、ソレノイド巻線、より正確には、ソレノイドマイクロ巻線(solenoid micro-winding)を備えている。本発明による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線13(図6a)は、好ましくは、複数の分離された長方形の折り返し部14を備える。巻線13の折り返し部14は、長方形である。即ち、各折り返し部は、側面から見て、2つの上部水平ブランチ及び底部水平ブランチと、これら上部ブランチと底部ブランチとをつなぎ合わせる2つの側面ブランチとを定めるほぼ長方形の形状を示している(図5c)。2つの連続する折り返し部14は、隣接してはおらず、巻線13の全ての折り返し部14は、図6aにて破線で示されているように、1つの同じコイルを形成している。各折り返し部14は、より詳細には、長方形の横断面(図6a)を示しており、巻線13の各折り返し部14は、この場合、所定の寸法、即ち、幅WBOB、長さLBOB、厚さEBOB、及び折り返し部の高さISOLにより、上記のように規定される。
【0020】
本発明の一般的な原理は、図6a及び図6bに示されている。図6a及び図6bにおいて、直線的に伸びるソレノイド巻線13は、5つの長方形の分離された折り返し部14を備えており、これらの折り返し部14はそれぞれ、幅WBOB1からWBOB5(図6b)と、長さLBOB1からLBOB5(図6b)と、厚さEBOB1からEBOB5(図6a)と、折り返し部の高さISOL1からISOL5(図6a)とを有しており、全てが異なる値となっている。巻線13はまた、2つの隣接する折り返し部14間のギャップINTについても、連続する折り返し部14において様々なギャップを示す(即ち、INT1からINT4)。巻線13は、ソレノイド巻線13の各折り返し部14に関連づけられた、様々な断面を有する棒(bar)の形状の磁心15に関連づけられている。
【0021】
図6a及び図6bにおいて、各折り返し部14の寸法は、ソレノイド巻線13に沿った折り返し部14の位置に応じて変化する。また、各折り返し部14の寸法は、例えば、均一な磁界が必要とされる場合、又は最適な品質ファクターを得る必要がある場合には、特に巻線13の所定の磁気特性に応じて、各折り返し部14について個別に決定される。
【0022】
図6a及び図6bにおいて、幅WBOB1からWBOB5は、全て互いに異なっており、第5の折り返し部の幅WBOB5が、第1の折り返し部の幅WBOB1よりも大きく、第1の折り返し部の幅WBOB1が、第3の折り返し部の幅WBOB3よりも大きく、第3の折り返し部の幅WBOB3が、第2の折り返し部の幅WBOB2よりも大きく、第2の折り返し部の幅WBOB2が、第4の折り返し部の幅WBOB4よりも大きくなっている。長さも、互いに異なっており、LBOB3がLBOB4よりも大きく、LBOB4がLBOB1よりも大きく、LBOB1がLBOB2よりも大きく、LBOB2がLBOB5よりも大きくなっている。厚さも、互いに異なっており、EBOB5がEBOB2よりも大きく、EBOB2がEBOB3よりも大きく、EBOB3がEBOB1よりも大きく、EBOB1がEBOB4よりも大きくなっている。最後に、折り返し部の高さも、折り返し部ごとに異なっており、ISOL3がISOL1よりも大きく、ISOL1がISOL2よりも大きく、ISOL2がISOL4よりも大きく、ISOL4がISOL5よりも大きくなっている。
【0023】
従って、磁心15も同様に、各断面が巻線13の折り返し部14に関連づけられた5つの異なる断面を備えている。これらの断面は、これらの幅WMAGと、これらの長さLMAGと、これらの厚さEMAGにより規定される。これらの断面は、例えばほぼ平坦であり、且つ、これらの断面は、例えばほぼ台形の断面遷移ゾーン(section transition zones)によりつなぎ合わされている。図6a及び図6bにおいて、磁心15の断面の寸法は、巻線13に沿って変化し、例えば、第3の断面の厚さEMAG3が、第4の断面の厚さEMAG4よりも大きく、第4の断面の厚さEMAG4が、第5の断面の厚さEMAG5よりも大きく、第5の断面の厚さEMAG5が、第2の断面の厚さEMAG2よりも大きく、第2の断面の厚さEMAG2が、第1の断面の厚さEMAG1よりも大きくなっている(図6a)。同様に(図6b)、第3の断面の幅WMAG3は、第4の断面の幅WMAG4よりも大きく、第4の断面の幅WMAG4は、第1の断面の幅WMAG1よりも大きく、第1の断面の幅WMAG1は、第2の断面の幅WMAG2よりも大きく、第2の断面の幅WMAG2は、第5の断面の幅WMAG5よりも大きくなっている。
【0024】
ソレノイド巻線13に関連する磁心15の寸法の変化は、関連する折り返し部14の寸法に応じて、又はソレノイド巻線13に沿った磁心15の断面の位置に応じて独立に、且つソレノイド巻線13について必要とされる磁気特性に応じて決定される。
【0025】
従って、巻線13の各折り返し部14の寸法と、関連する磁心15の各断面の寸法の最適化は、ソレノイド巻線13自体の動作を改善するだけでなく、そのようなソレノイド巻線13を組み込んでいる種々の誘導システムの性能をも改善するという目的を有する。
【0026】
これにより、本発明のソレノイド巻線13では、(特に近接効果の低減により、)最大品質ファクター又はほぼ均一な磁界を得ることが可能となり、これにより、磁心を有する又は有しない任意のタイプの誘導コンポーネントについて、包括的な設計ソリューションが提供される。
【0027】
図7aから図7cに示す代替実施形態では、ソレノイド巻線は、非常に概略的に表されている。ソレノイド巻線13は、例えば徐々に変化する寸法を有し、好ましくは、巻線13に沿って対称的な5つの分離された長方形の折り返し部14を備えている。図7aから図7cにおいて、折り返し部は、巻線13の縦方向基準軸AAに対して垂直に方向づけられており、折り返し部14の寸法は、巻線13の中央の折り返し部に対して対称的に変化する。そのような構成は特に、磁界が、巻線13の端部のレベルにおいてより均一であることを可能にする。
【0028】
図7aに示す特定の実施形態では、ソレノイド巻線13は、特に関連する技術的制約条件を考慮して、同じ長さLBOB、好ましくは更に同じ厚さEBOBを有する5つの折り返し部14を備えている。従って、基準軸AAに沿うソレノイド巻線13に沿って変化するのは、折り返し部14の幅WBOBであり、中央の折り返し部14の幅WBOB3は、他の折り返し部14の幅よりも大きく、幅WBOBは特に、折り返し部14の位置に応じて、且つソレノイド巻線13について必要とされる磁気特性に応じて変化する。
【0029】
図7bにおいては、ソレノイド巻線13の代替実施形態は、折り返し部14の可変な所定の寸法だけ、図7aに示すソレノイド巻線13と異なっている。図7bにおいて、可変で、好ましくは対称的であるのは、折り返し部14の厚さEBOBであり、中央の折り返し部14の厚さEBOB3は、他の折り返し部14の厚さよりも大きく、厚さEBOBは特に、折り返し部14の位置に対し、且つ巻線13について必要とされる磁気特性に対し可変となり、好ましくは更に対称的となる。折り返し部14の長さLBOB及び幅WBOBは、その場合、巻線13の全ての折り返し部14について同一であることが好ましい。
【0030】
図7cにおいては、ソレノイド巻線13の代替実施形態は、巻線に沿って変化する所定の寸法だけ、図7a及び図7bに示すソレノイド巻線13と異なっている。図7cにおいて、変化し、好ましくは対称的であるのは、折り返し部14の長さLBOBであり、中央の折り返し部14の長さLBOB3は、他の折り返し部14の長さよりも大きく、長さLBOBは特に、折り返し部14の位置と、巻線13について必要とされる磁気特性とに応じて変化し、好ましくは更に、これら位置と磁気特性とに対し対称的となる。折り返し部14の幅WBOB及び厚さEBOBは、その場合、巻線13の全ての折り返し部14について同一であることが好ましい。
【0031】
更に、図7aから図7cに示す代替実施形態では、巻線13の2つの隣接した折り返し部14間のギャップINTの値は一定であり(図7a)、折り返し部の高さISOLもまた、巻線13の全ての折り返し部14について一定である(図7b)。図6a及び図6bに示す代替実施形態では、ギャップINTの値と、折り返し部の高さISOLの値は、折り返し部14の位置と、巻線13について必要とされる磁気特性とに応じて、ソレノイド巻線13に沿って独立に変化することが可能である。
【0032】
更に、図7aから図7cに示す代替実施形態では、巻線13は、場合によっては、上述のように(望ましくは対称的に)変化することも可能な所定の寸法を有する磁心(図示せず)に関連づけることが可能である。
【0033】
巻線の各折り返し部の寸法設定(dimensioning)と、それらの寸法の計算については、図8から図10を参照して更に詳細に説明する。一般的な方法では、計算において考慮に入れるべき幾何学的パラメータの数は、非常に大きい。iで示されるN個の折り返し部の各々について、更には関連する磁心について、WBOBi、LBOBi、EBOBi、ISOLi、EMAGi、及びWMAGiを考慮に入れる必要があり、これらに対し、折り返し部間のN−1個のギャップINTと、磁心の長さLMAGとを追加する必要があり、これらは、合計して全部で6N+(N−1)+2=7N+1個のパラメータになる(図6a及び図6b)。
【0034】
一般的な方法では、計算を簡単にするために、EMAG、WMAG(巻線が磁心に関連づけられている場合)、ISOL、INT、及びEBOBは、一定と考えられる。折り返し部の形状を決定するための最適なトレードオフは、複雑な現象に依存し、特に、誘導電流や、容量効果や、適用可能な場合には磁心を形成する磁性材料の非線形性及び不均一性や、ターゲットとされる作業周波数に依存する。従って、場合によっては、解析的設計モデル又は数値設計モデルと結合された最適化アルゴリズムを用いることが必要である。
【0035】
本発明によるソレノイド巻線の2次元寸法設定の第1の例では、特にインダクタンスと飽和電流との間のトレードオフを最適化するために、5つの折り返し部を有し、磁心がなく、プレーナ技術を使用して製造される対称的なソレノイド巻線を仮定し、以下の幾何学的パラメータを考慮に入れる。
【0036】
− i={1,2,3}のWBOBi、対称性によりWBOB1=WBOB5及びWBOB2=WBOB4となっている。
【0037】
− INT、EBOB、及びISOLは、技術的制約条件により、例えば、それぞれ10μm、5μm、及び40μmに固定される。
【0038】
− 折り返し部の長さLBOBは、2次元寸法設定において、どのような役割も果たしていない。
【0039】
従って、全部で3つの独立な幾何学的パラメータ、即ち、WBOB1、WBOB2、及びWBOB3が存在する。これらの幾何学的パラメータは更に、巻線の寸法に関連づけられた制約条件の影響を受ける。この第1の特定の計算例では、幅WBOBiが、中央の折り返し部の幅と比(ratio)Qとに対応する第1項の幾何級数WBOB3に従うこと(即ち、WBOB2=Q×WBOB3、及びWBOB1=Q2×WBOB3)を考慮すると、WBOB3は、巻線の予め規定された最大の長さLMAX=100μmに応じて決定されるので、Qだけが、次の式を用いて決定すべきものとして残る。
【数1】
【0040】
高さEMAG=5μm、長さLMAXの空間(磁心が存在する場合には、磁心により占有された空間に相当する)内部のソレノイドの中心における磁界の標準偏差σは、例えば、ビオサバールの法則(Biot and Savart's law)から、以下の式により計算される。
【数2】
【0041】
この場合、上記計算により、磁束の均一性に対する比Qの影響を強調することが可能となる。ソレノイド巻線の軸に沿った磁界成分の平均標準偏差σを、比Qに対して示した図8のグラフに示すように、磁界は、Q=0.6(図9bに概略的に示す巻線13により示されており、折り返し部14の可変幅を有している)では、Q=1(図9aに概略的に示す巻線13により示されており、巻線13に沿って全て同一の折り返し部14を有している)の場合に比べて、2倍均一であることが明らかである。曲線プロットは実際、約0.26の標準偏差値を有するQ=0.6においてその最小値に到達しているのに対し、Q=1では、標準偏差σは、約0.52である。図8のグラフからは、可変幅を有する巻線(図9a及び9b)を使用することが有利であること、より詳細には、対称的で直線的に伸びており、折り返し部の幅が直線的に伸びる巻線の端部から中心に向かって増大しており、例えば比0.6の幾何級数を有している巻線を使用することが有利であることが結論付けられる。
【0042】
本発明によるソレノイド巻線の寸法設定の第2の特定の例では、品質ファクターの最適化のための3次元寸法設定を行うことが可能である。依然、5つの折り返し部を有し、磁心がなく、プレーナ技術を使用して作製され、所定のサイズLMAX=200μmの正方形に適合する必要のある対称的なソレノイド巻線を考慮すると、次の幾何学的パラメータが考慮に入れられる。
【0043】
− i={1,2,3}のWBOBi、対称性によりWBOB1=WBOB5及びWBOB2=WBOB4となっている。
【0044】
− 幅WBOBiは、比QW及び第1項WBOB3の幾何級数に従う(上述の例のように計算することが好ましい)。
【0045】
− i={1,2,3}のLBOBi、対称性によりLBOB1=LBOB5及びLBOB2=LBOB4となっている。
【0046】
− 長さLBOBiは、比QL及び第1項LBOB3=LMAXの幾何級数に従う。
【0047】
− INTは、10μmに固定される。
【0048】
− EBOBは、表皮効果を制限するために5μmに固定される。
【0049】
− ISOLは、40μmに固定される。
【0050】
従って、2つのパラメータ(即ちQW及びQL)の組合せは、この場合、最適化する必要がある。好ましくは、品質ファクターを計算するための迅速な方法を使用する。特にカーンの方法(Kuhn's method)は、W. B. Kuhn等による論文「Analysis of current crowding effects in multiturn spiral inductors」(IEEE Trans. Microwave Theory and Techniques, vol. 49, no 1, pp. 31-38, January 2001)中で説明されているように、近接効果による損失を計算することを可能にする。誘導フィールドは、ビオサバールの法則により計算することが可能である。表皮効果による損失は、プレスの2次元アプローチ(Press's two-dimensional approach)を使用して、特に彼の論文「Resistance and reactance of massed rectangular conductor」(Phys. Review, vol. VIII, no 4, p. 417, 1916)中で説明されているようにして計算することが可能であり、容量効果は無視され、インダクタンスは、磁束の数値計算により計算される。
【0051】
この場合には、品質ファクターの近似値を計算することが可能であり、この近似値は、その後、巻線折り返し部の最適化された寸法を決定するのに使用することが可能である。標準化された品質ファクターを、比QWに対して示した図10のグラフに示すように、4つの異なる比の値QL、即ち、QL=1(長いダッシュ記号を有する線)、QL=0.9(連続した点を有する線)、QL=0.8(短いダッシュ記号を有する線)、及びQL=0.7(切れ目のない線)については、かなりのゲインが、QW=1及びQL=1の初期構造(即ち、ソレノイドに沿って全ての部分で同じサイズの折り返し部を有し、巻線13を構成する電気めっきされた銅に相当する2μΩ.cmの典型的な抵抗の巻線)と比べて観察される。
【0052】
実際、図10を読み取ると、最良の品質ファクター(別言すると、1に対して最も近いもの)が、比の値QLが0.7について、且つ比の値QWが0.6について得られる。即ち、最良の品質ファクターが、比0.6の幾何級数に応じた幅で、且つ比0.7の幾何級数に応じた長さで、端部から中心に向かって進む折り返し部を有する対称的で直線的に伸びたソレノイド巻線に相当するものとして得られる。
【0053】
本発明によるソレノイド巻線13の寸法設定の別の例では、等差級数(arithmetic progression)が、折り返し部の寸法の変化を特徴づけるために使用されてもよい。
【0054】
従って、上記計算により最適化された形状及び寸法を有する折り返し部を備えるソレノイド巻線では、必要とされる結果に応じて巻線の各断面を個別に最適化することで、可能な磁束分布の中で最良の磁束分布を得ることが可能となる。そのようなソレノイド巻線はまた、最大品質ファクター及び/又は均一な磁界を得ることを可能にし、且つ、当該ソレノイド巻線を使用した誘導システムの性能を、著しく改善することを可能にする。
【0055】
本発明によるソレノイド巻線は、より詳細には、磁心を有する又は有しないソレノイド巻線が装備された全ての誘導システムに対し、周波数制限又はパワー制限なしに適用される。それは即ち、次の通りである。
【0056】
− インダクタ及び変圧器、
− データストレージ用の磁気記録ヘッド、
− 「フラックスゲート」や「透磁率計」等の誘導センサ、
− 誘導モータ及びアクチュエータ、
− フィールドを生成するコイル。
【0057】
例えば、透磁率計を製造するのに、上記のようなソレノイド巻線は、より均一なフィールドを生成し、且つ、近接効果に対してより影響を受けないようにするという、2重の利点を示す。従って、上記のような巻線では、外乱法(disturbance method)による周波数及び磁界により、磁性材料の応答をより高精度に測定することが可能となる。
【0058】
折り返し部の厚さEBOBと、折り返し部の高さISOLが、巻線に沿って一定である場合には、上記のようなソレノイド巻線を実現するのに、マイクロシステム製造用に使用される技術を使用することが可能である。例えば、一体化された磁気記録ヘッドを製造するための技術に基づいた数多くの製造方法が、使用可能である。厚さEBOBと、折り返し部の高さISOLが、可変である場合には、いささかより複雑な技術を実施してもよい。
【0059】
「マイクロシステム」技術を使用してソレノイド巻線を製造する方法の一例は、以下のステップを含み得る。導電材料の第1の堆積が、例えば、ダマシン電気分解の方法により行われ、巻線の底部が形成される。次に、第1の絶縁材料が堆積される。
【0060】
次に、1回以上の磁性材料の堆積(薄層化された磁心を製造する場合には、1回以上の磁性材料及び非磁性材料の堆積)が、磁心の形成のために行われる。次に、1回以上の磁心のリソグラフィ及びエッチングステップが行われる。
【0061】
次に、絶縁材料の第2の堆積が行われ、更に、2層の絶縁層におけるビアのリソグラフィ及びエッチングステップが、巻線折り返し部に近付けることが可能なように行われる。最後に、導電材料の第2の堆積が行われ、巻線の上部が形成される。
【0062】
このような「マイクロシステム」タイプの製造方法は特に、ソレノイド巻線を、折り返し部の寸法(特に、長さLBOB、幅WBOB、及び折り返し部間の間隔INT)の選択に関し大きな自由度を伴って迅速且つ簡単に得ることを可能にする。これは、マイクロメカニクスの方法、即ち、ワイヤを巻きつけることに基づいた方法によって実現するのは、よりずっと難しい。
【0063】
本発明は、上述の種々の実施形態のみに限定されるものではない。本発明によるソレノイド巻線は、折り返し部が、巻線に沿った折り返し部の位置と、巻線について必要とされる磁性制約条件とに応じて、巻線に沿った少なくとも1つの可変な寸法を提供すると仮定すると、任意の数の折り返し部を備えることが可能である。
【0064】
一般的な方法では、折り返し部の寸法の変化がどのようなものであったとしても、最大の寸法を有する折り返し部は、有利には、巻線の中心に配置されるべきである。
【0065】
ソレノイド巻線の最適な形状の寸法設定及び計算のその他の例では、追加の製造制約条件を考慮に入れることが可能である。ソレノイド巻線の底部は例えば、ソレノイド巻線の上部と同じ厚さを有しない可能性があり、ソレノイド巻線は例えば、対称的でない可能性がある。これらの場合には、考慮に入れるべきパラメータの数が、多数になる。ソレノイドの芯部(heart)にある磁心がソレノイドに対し中心にないことについても、同じことが成り立つことになる。
【0066】
第1の寸法設定の例(図8、9a、9b)に関し、一方の折り返し部から他方の折り返し部へのDC抵抗(直流(DC))の変化は、例えば、最大抵抗が超過されないよう最大抵抗を固定することにより、又は、標準偏差と直流(低周波数)との積を最小にすることで構造を最適化することにより、考慮に入れてもよい。
【0067】
他の寸法設定の例(図示せず)では、最適化は、より少ない一定の予め設定された寸法を用いて行ってもよい。そして、遺伝的アルゴリズム等のより複雑な最適化アルゴリズムが、例えば、Matlab(登録商標)又はOptimetrics(登録商標)といったモデリング及びシミュレーションソフトウェアを利用して使用されてもよく、これらのアルゴリズムは、制約のある又は制約のない広範囲な最適化方法を提供する。
【0068】
より一般的な場合には、より正確に最適化すべきパラメータを計算するために、例えば、有限要素法を使用した数値計算ソフトウェアを使用することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分離された長方形の折り返し部(disjointed rectangular turns)を備え、直線的に伸びている(rectilinear)、ソレノイド巻線を備え、折り返し部の各々が、所定の寸法を有する誘導マイクロデバイスに関する。
【0002】
本発明は特に、低損失又は非常に均一な磁束密度を必要とするインダクタ、変圧器、磁気記録ヘッド、アクチュエータ、センサ等を含むタイプの、一体化された又は一体化されていない全ての誘導システムに適用される。本発明は、より詳細には、一体化されたマイクロインダクタに適用される。
【背景技術】
【0003】
様々なタイプ(例えば、ソレノイドタイプ又はらせんタイプ等)の巻線を有する一体化されたマイクロインダクタが、今や長年にわたって存在している。らせん巻線では、巻線の中心に位置する折り返し部が、一般に、他の折り返し部よりも、高周波数損失に、より多く寄与する。当該損失は、一般に、折り返し部の厚さに比例すると共に、折り返し部の幅の3乗に比例する。新しいらせん形状が設計され提案されてきているが、それららせん形状のゲインは、制限されることが判明している。
【0004】
従来のソレノイド巻線は、周期的な構造を有するという利点を示し、この周期的な構造は、当然のことながら近接効果を制限する。しかしながら、ソレノイドの端部では、近接効果は、依然として非常に高いままである。更に、ソレノイドの内部では、磁束はかなり不均一になることもあり、これは、磁性材料が存在する場合には、問題を引き起こすこともある。
【0005】
例示のために、図1は、巻線2a上に配置された(例えば台形の形状の)4つの磁気エレメント2bを備えるらせんの形状の巻線2aを有する一体化されたインダクタ1を示している。これは特に、B.Viala等による論文「Bidirectional ferromagnetic spiral inductors using single deposition」(IEEE Trans. Magnetics, vol.41, no 10, pp. 3544-3549, October 2005)中や、K.H. Kim等による論文「Dual spiral sandwiched magnetic thin film inductor using Fe-Hf-N soft magnetic films as a magnetic core」(Journal of Magnetism and Magnetic Materials 239, 2002, 579-581)中で説明されている。このタイプのインダクタ1、即ち、複数の磁気面を有する平面らせん巻線を有するインダクタは、一体化が特に非常に容易であることから、マイクロエレクトロニクスでは最も一般的に使用される。
【0006】
しかしながら、巻線内の近接効果、特に、内部の折り返し部のレベルにおける近接効果は、非常に高い。当該効果は、特にB.Viala等による論文「Investigation of anomalous losses in thick Cu ferromagnetic spiral inductors」(IEEE Trans. Magnetics, vol.41, no 10, pp. 3583-3585, October 2005)中や、W.B. Kuhn等による論文「Analysis of current crowding effects in multiturn spiral inductors」(IEEE Trans. Microwave Theory and Techniques, vol.49, no 1, pp. 31-38, January 2001)中で説明されているように、高透磁率磁性材料の存在により、更にその上に増大される可能性がある。
【0007】
上述の損失の影響を低減させるために、図2に示すように、幅が可変な折り返し部を有する平面らせん(planar spiral)4の形状のインダクタンス3が提案されている。上記の幅、特に、らせん4の内部の折り返し部の幅を低減させることは、損失に対する折り返し部の寄与を制限することをもたらす。しかしながら、これはまた、特にA-S. Royet等による論文「Investigation of Proximity Effects in Ferromagnetic Inductors with Different Topologies: modeling and solutions」(Trans. Of the Magnetic Society of Japan, vol. 5, no 4, November 2005)中で説明されているように、近似的に同じDC抵抗(直流(DC))を保持するために、外側の折り返し部の幅の増大をもたらす。しかしながら、磁界は、依然として不均一のままであり、これは、インダクタの品質ファクターを制限する。
【0008】
図3a及び3bでは、平面らせん6aの形状を有し、誘導電流ループを制限するために、複数のブレード6b(例えば図3bの3つのブレード6b)により形成されたらせん6aを有する、別の形状のインダクタ5が提案されている。これは特に、A-S. Royet等による論文「Investigation of Proximity Effects in Ferromagnetic Inductors with Different Topologies: modeling and solutions」(Trans. Of the Magnetic Society of Japan, vol. 5, no 4, November 2005)中で説明されている。しかしながら、巻線の伝導度が高いので、電流ループは非常にわずかしか減衰されず、品質ファクターゲインも比較的小さいものとなる。
【0009】
図4では、直線的に伸びており、互いに並行に配置されている複数のソレノイド巻線8を有する別のタイプのインダクタ7が示されている。これは特に、Chong H. Ahn等による論文「A Fully Integrated Planar Toroidal Inductor with a Micromachined Nickel-Iron Magnetic Bar」(IEEE Trans. Components, Packaging and Manufacturing Technology - part A, vol. 17, no 3, September 1994)中で説明されている。この種のもともと周期的な幾何学形状においては、近接効果はより小さくなる。なぜならば、ソレノイド8の中心にある折り返し部9では、隣接する折り返し部により生成される磁界は、大部分が打ち消されるからである。
【0010】
しかしながら、ソレノイド8の端部にある折り返し部9では、この打ち消しは存在しない。更に、折り返し部9の内部では、近接効果は、当該折り返し部の底部と上部との間に存在しており、これらの効果は、磁性材料が存在する場合には更に増大される可能性がある。磁界は、ソレノイド8の内部では更に不均一であり、これは、磁心(magnetic core)が使用される際の電流強度に関して問題を引き起こすこともある。
【0011】
磁心の領域が、他の領域よりも強い磁界を受ける場合、磁心の領域は、実際、容易に飽和させられることになり、インダクタ7は、巻線8を通して流れる電流のレベルに対し非常に敏感に反応することになる。また、非常に弱い磁界を受ける磁心の部分は、ほとんど応答しないことになり、インダクタンスに小さな程度しか関与しないことになる。その結果、インダクタンスと電流強度との間のトレードオフは、最適からほど遠いものとなる。
【0012】
オープンに直線的に伸びているソレノイド巻線10をそれぞれ縦断面図(longitudinal cross-section)、平面図(top view)、及び横断面図(transverse cross-section)の形で示す図5aから5cに示すように、一般に、ソレノイド巻線10は、複数の分離された長方形の折り返し部11(図5c)、即ち、図5aにて破線で示すように、互いに隣接していないが1つの同じコイルを形成している複数の折り返し部11を備えている。折り返し部11の各々は、次の幾何学的パラメータにより規定される。即ち、幅WBOB(図5b)、長さLBOB(図5b)、厚さEBOB(図5a)、及び折り返し部の高さ(height of turn)ISOL(図5c)である。折り返し部の高さは、それが特に、巻線の絶縁を規定する巻線の上部と底部との間の距離に対応するので、ISOLと呼ばれる。
【0013】
巻線10はまた、2つの隣接する折り返し部11間のギャップINT(図5a)により規定されると共に、巻線10の折り返し部の数Nにより規定される。巻線10が磁心12に関連づけられる場合には、次の幾何学的パラメータも考慮する必要がある。即ち、磁心12の厚さEMAG(図5a)、長さLMAG、及び幅WMAG(図5b)である。
【0014】
しかしながら、直線的に伸びるソレノイド巻線10のこの一般的な構成は、実施することは容易であるものの、磁界は不均一のままとなる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、上述の全ての欠点を改善することであり、実施することが容易で、任意のタイプの応用に使用することが可能で、近接効果を低減すること、高周波数損失を低減すること、及び均一な磁束がソレノイド巻線に沿って全ての部分で得られることを可能にするソレノイドタイプの巻線を有する誘導マイクロデバイスを提供することである。
【0016】
本発明によれば、この目的は、添付の特許請求の範囲により達成され、より詳細には、折り返し部の寸法のうちの1つが、可変であり、且つ、巻線に沿った折り返し部の位置と、巻線の所定の磁気特性とに応じて、各折り返し部について個別に決定されることにより達成される。
【0017】
その他の利点及び特徴は、専ら非限定的な例示のために与えられ、且つ、添付の図面に示されている、本発明の個々の実施形態についての以下の説明から、より明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】先行技術による、平面らせん巻線を有し、複数の磁気面を有するインダクタの特定の実施形態を概略的に表す図である。
【図2】先行技術による、平面らせん巻線を有するその他のタイプのインダクタを概略的に表す図である。
【図3a】先行技術による、平面らせん巻線を有するその他のタイプのインダクタを概略的に表す図である。
【図3b】先行技術による、平面らせん巻線を有するその他のタイプのインダクタを概略的に表す図である。
【図4】先行技術による、直線的に伸びたソレノイド巻線を有するインダクタの特定の実施形態を概略的に表す図である。
【図5a】先行技術による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の縦断面正面図である。
【図5b】先行技術による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の平面図である。
【図5c】先行技術による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の横断面側面図である。
【図6a】本発明による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の縦断面正面図である。
【図6b】本発明による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線の特定の実施形態の平面図である。
【図7a】図6a及び図6bのソレノイド巻線の代替実施形態を非常に概略的に表す図である。
【図7b】図6a及び図6bのソレノイド巻線の代替実施形態を非常に概略的に表す図である。
【図7c】図6a及び図6bのソレノイド巻線の代替実施形態を非常に概略的に表す図である。
【図8】折り返し部の幅が幾何級数に応じて変化するソレノイド巻線の縦軸(longitudial axis)に沿った磁界の標準偏差を、この幾何級数の比に応じて与えたグラフである。
【図9a】図8のグラフのあるポイントの巻線の形状を示す平面図である。
【図9b】図8のグラフのあるポイントの巻線の形状を示す平面図である。
【図10】折り返し部の幅と折り返し部の長さとが共にQWとQLのそれぞれの比の幾何級数に応じて変化する巻線の標準化された品質ファクターを、QLの様々な値についてQWに応じて表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図6aから図10を参照するに、誘導マイクロデバイスは、ソレノイド巻線、より正確には、ソレノイドマイクロ巻線(solenoid micro-winding)を備えている。本発明による、長方形の横断面を有し、直線的に伸びているソレノイド巻線13(図6a)は、好ましくは、複数の分離された長方形の折り返し部14を備える。巻線13の折り返し部14は、長方形である。即ち、各折り返し部は、側面から見て、2つの上部水平ブランチ及び底部水平ブランチと、これら上部ブランチと底部ブランチとをつなぎ合わせる2つの側面ブランチとを定めるほぼ長方形の形状を示している(図5c)。2つの連続する折り返し部14は、隣接してはおらず、巻線13の全ての折り返し部14は、図6aにて破線で示されているように、1つの同じコイルを形成している。各折り返し部14は、より詳細には、長方形の横断面(図6a)を示しており、巻線13の各折り返し部14は、この場合、所定の寸法、即ち、幅WBOB、長さLBOB、厚さEBOB、及び折り返し部の高さISOLにより、上記のように規定される。
【0020】
本発明の一般的な原理は、図6a及び図6bに示されている。図6a及び図6bにおいて、直線的に伸びるソレノイド巻線13は、5つの長方形の分離された折り返し部14を備えており、これらの折り返し部14はそれぞれ、幅WBOB1からWBOB5(図6b)と、長さLBOB1からLBOB5(図6b)と、厚さEBOB1からEBOB5(図6a)と、折り返し部の高さISOL1からISOL5(図6a)とを有しており、全てが異なる値となっている。巻線13はまた、2つの隣接する折り返し部14間のギャップINTについても、連続する折り返し部14において様々なギャップを示す(即ち、INT1からINT4)。巻線13は、ソレノイド巻線13の各折り返し部14に関連づけられた、様々な断面を有する棒(bar)の形状の磁心15に関連づけられている。
【0021】
図6a及び図6bにおいて、各折り返し部14の寸法は、ソレノイド巻線13に沿った折り返し部14の位置に応じて変化する。また、各折り返し部14の寸法は、例えば、均一な磁界が必要とされる場合、又は最適な品質ファクターを得る必要がある場合には、特に巻線13の所定の磁気特性に応じて、各折り返し部14について個別に決定される。
【0022】
図6a及び図6bにおいて、幅WBOB1からWBOB5は、全て互いに異なっており、第5の折り返し部の幅WBOB5が、第1の折り返し部の幅WBOB1よりも大きく、第1の折り返し部の幅WBOB1が、第3の折り返し部の幅WBOB3よりも大きく、第3の折り返し部の幅WBOB3が、第2の折り返し部の幅WBOB2よりも大きく、第2の折り返し部の幅WBOB2が、第4の折り返し部の幅WBOB4よりも大きくなっている。長さも、互いに異なっており、LBOB3がLBOB4よりも大きく、LBOB4がLBOB1よりも大きく、LBOB1がLBOB2よりも大きく、LBOB2がLBOB5よりも大きくなっている。厚さも、互いに異なっており、EBOB5がEBOB2よりも大きく、EBOB2がEBOB3よりも大きく、EBOB3がEBOB1よりも大きく、EBOB1がEBOB4よりも大きくなっている。最後に、折り返し部の高さも、折り返し部ごとに異なっており、ISOL3がISOL1よりも大きく、ISOL1がISOL2よりも大きく、ISOL2がISOL4よりも大きく、ISOL4がISOL5よりも大きくなっている。
【0023】
従って、磁心15も同様に、各断面が巻線13の折り返し部14に関連づけられた5つの異なる断面を備えている。これらの断面は、これらの幅WMAGと、これらの長さLMAGと、これらの厚さEMAGにより規定される。これらの断面は、例えばほぼ平坦であり、且つ、これらの断面は、例えばほぼ台形の断面遷移ゾーン(section transition zones)によりつなぎ合わされている。図6a及び図6bにおいて、磁心15の断面の寸法は、巻線13に沿って変化し、例えば、第3の断面の厚さEMAG3が、第4の断面の厚さEMAG4よりも大きく、第4の断面の厚さEMAG4が、第5の断面の厚さEMAG5よりも大きく、第5の断面の厚さEMAG5が、第2の断面の厚さEMAG2よりも大きく、第2の断面の厚さEMAG2が、第1の断面の厚さEMAG1よりも大きくなっている(図6a)。同様に(図6b)、第3の断面の幅WMAG3は、第4の断面の幅WMAG4よりも大きく、第4の断面の幅WMAG4は、第1の断面の幅WMAG1よりも大きく、第1の断面の幅WMAG1は、第2の断面の幅WMAG2よりも大きく、第2の断面の幅WMAG2は、第5の断面の幅WMAG5よりも大きくなっている。
【0024】
ソレノイド巻線13に関連する磁心15の寸法の変化は、関連する折り返し部14の寸法に応じて、又はソレノイド巻線13に沿った磁心15の断面の位置に応じて独立に、且つソレノイド巻線13について必要とされる磁気特性に応じて決定される。
【0025】
従って、巻線13の各折り返し部14の寸法と、関連する磁心15の各断面の寸法の最適化は、ソレノイド巻線13自体の動作を改善するだけでなく、そのようなソレノイド巻線13を組み込んでいる種々の誘導システムの性能をも改善するという目的を有する。
【0026】
これにより、本発明のソレノイド巻線13では、(特に近接効果の低減により、)最大品質ファクター又はほぼ均一な磁界を得ることが可能となり、これにより、磁心を有する又は有しない任意のタイプの誘導コンポーネントについて、包括的な設計ソリューションが提供される。
【0027】
図7aから図7cに示す代替実施形態では、ソレノイド巻線は、非常に概略的に表されている。ソレノイド巻線13は、例えば徐々に変化する寸法を有し、好ましくは、巻線13に沿って対称的な5つの分離された長方形の折り返し部14を備えている。図7aから図7cにおいて、折り返し部は、巻線13の縦方向基準軸AAに対して垂直に方向づけられており、折り返し部14の寸法は、巻線13の中央の折り返し部に対して対称的に変化する。そのような構成は特に、磁界が、巻線13の端部のレベルにおいてより均一であることを可能にする。
【0028】
図7aに示す特定の実施形態では、ソレノイド巻線13は、特に関連する技術的制約条件を考慮して、同じ長さLBOB、好ましくは更に同じ厚さEBOBを有する5つの折り返し部14を備えている。従って、基準軸AAに沿うソレノイド巻線13に沿って変化するのは、折り返し部14の幅WBOBであり、中央の折り返し部14の幅WBOB3は、他の折り返し部14の幅よりも大きく、幅WBOBは特に、折り返し部14の位置に応じて、且つソレノイド巻線13について必要とされる磁気特性に応じて変化する。
【0029】
図7bにおいては、ソレノイド巻線13の代替実施形態は、折り返し部14の可変な所定の寸法だけ、図7aに示すソレノイド巻線13と異なっている。図7bにおいて、可変で、好ましくは対称的であるのは、折り返し部14の厚さEBOBであり、中央の折り返し部14の厚さEBOB3は、他の折り返し部14の厚さよりも大きく、厚さEBOBは特に、折り返し部14の位置に対し、且つ巻線13について必要とされる磁気特性に対し可変となり、好ましくは更に対称的となる。折り返し部14の長さLBOB及び幅WBOBは、その場合、巻線13の全ての折り返し部14について同一であることが好ましい。
【0030】
図7cにおいては、ソレノイド巻線13の代替実施形態は、巻線に沿って変化する所定の寸法だけ、図7a及び図7bに示すソレノイド巻線13と異なっている。図7cにおいて、変化し、好ましくは対称的であるのは、折り返し部14の長さLBOBであり、中央の折り返し部14の長さLBOB3は、他の折り返し部14の長さよりも大きく、長さLBOBは特に、折り返し部14の位置と、巻線13について必要とされる磁気特性とに応じて変化し、好ましくは更に、これら位置と磁気特性とに対し対称的となる。折り返し部14の幅WBOB及び厚さEBOBは、その場合、巻線13の全ての折り返し部14について同一であることが好ましい。
【0031】
更に、図7aから図7cに示す代替実施形態では、巻線13の2つの隣接した折り返し部14間のギャップINTの値は一定であり(図7a)、折り返し部の高さISOLもまた、巻線13の全ての折り返し部14について一定である(図7b)。図6a及び図6bに示す代替実施形態では、ギャップINTの値と、折り返し部の高さISOLの値は、折り返し部14の位置と、巻線13について必要とされる磁気特性とに応じて、ソレノイド巻線13に沿って独立に変化することが可能である。
【0032】
更に、図7aから図7cに示す代替実施形態では、巻線13は、場合によっては、上述のように(望ましくは対称的に)変化することも可能な所定の寸法を有する磁心(図示せず)に関連づけることが可能である。
【0033】
巻線の各折り返し部の寸法設定(dimensioning)と、それらの寸法の計算については、図8から図10を参照して更に詳細に説明する。一般的な方法では、計算において考慮に入れるべき幾何学的パラメータの数は、非常に大きい。iで示されるN個の折り返し部の各々について、更には関連する磁心について、WBOBi、LBOBi、EBOBi、ISOLi、EMAGi、及びWMAGiを考慮に入れる必要があり、これらに対し、折り返し部間のN−1個のギャップINTと、磁心の長さLMAGとを追加する必要があり、これらは、合計して全部で6N+(N−1)+2=7N+1個のパラメータになる(図6a及び図6b)。
【0034】
一般的な方法では、計算を簡単にするために、EMAG、WMAG(巻線が磁心に関連づけられている場合)、ISOL、INT、及びEBOBは、一定と考えられる。折り返し部の形状を決定するための最適なトレードオフは、複雑な現象に依存し、特に、誘導電流や、容量効果や、適用可能な場合には磁心を形成する磁性材料の非線形性及び不均一性や、ターゲットとされる作業周波数に依存する。従って、場合によっては、解析的設計モデル又は数値設計モデルと結合された最適化アルゴリズムを用いることが必要である。
【0035】
本発明によるソレノイド巻線の2次元寸法設定の第1の例では、特にインダクタンスと飽和電流との間のトレードオフを最適化するために、5つの折り返し部を有し、磁心がなく、プレーナ技術を使用して製造される対称的なソレノイド巻線を仮定し、以下の幾何学的パラメータを考慮に入れる。
【0036】
− i={1,2,3}のWBOBi、対称性によりWBOB1=WBOB5及びWBOB2=WBOB4となっている。
【0037】
− INT、EBOB、及びISOLは、技術的制約条件により、例えば、それぞれ10μm、5μm、及び40μmに固定される。
【0038】
− 折り返し部の長さLBOBは、2次元寸法設定において、どのような役割も果たしていない。
【0039】
従って、全部で3つの独立な幾何学的パラメータ、即ち、WBOB1、WBOB2、及びWBOB3が存在する。これらの幾何学的パラメータは更に、巻線の寸法に関連づけられた制約条件の影響を受ける。この第1の特定の計算例では、幅WBOBiが、中央の折り返し部の幅と比(ratio)Qとに対応する第1項の幾何級数WBOB3に従うこと(即ち、WBOB2=Q×WBOB3、及びWBOB1=Q2×WBOB3)を考慮すると、WBOB3は、巻線の予め規定された最大の長さLMAX=100μmに応じて決定されるので、Qだけが、次の式を用いて決定すべきものとして残る。
【数1】
【0040】
高さEMAG=5μm、長さLMAXの空間(磁心が存在する場合には、磁心により占有された空間に相当する)内部のソレノイドの中心における磁界の標準偏差σは、例えば、ビオサバールの法則(Biot and Savart's law)から、以下の式により計算される。
【数2】
【0041】
この場合、上記計算により、磁束の均一性に対する比Qの影響を強調することが可能となる。ソレノイド巻線の軸に沿った磁界成分の平均標準偏差σを、比Qに対して示した図8のグラフに示すように、磁界は、Q=0.6(図9bに概略的に示す巻線13により示されており、折り返し部14の可変幅を有している)では、Q=1(図9aに概略的に示す巻線13により示されており、巻線13に沿って全て同一の折り返し部14を有している)の場合に比べて、2倍均一であることが明らかである。曲線プロットは実際、約0.26の標準偏差値を有するQ=0.6においてその最小値に到達しているのに対し、Q=1では、標準偏差σは、約0.52である。図8のグラフからは、可変幅を有する巻線(図9a及び9b)を使用することが有利であること、より詳細には、対称的で直線的に伸びており、折り返し部の幅が直線的に伸びる巻線の端部から中心に向かって増大しており、例えば比0.6の幾何級数を有している巻線を使用することが有利であることが結論付けられる。
【0042】
本発明によるソレノイド巻線の寸法設定の第2の特定の例では、品質ファクターの最適化のための3次元寸法設定を行うことが可能である。依然、5つの折り返し部を有し、磁心がなく、プレーナ技術を使用して作製され、所定のサイズLMAX=200μmの正方形に適合する必要のある対称的なソレノイド巻線を考慮すると、次の幾何学的パラメータが考慮に入れられる。
【0043】
− i={1,2,3}のWBOBi、対称性によりWBOB1=WBOB5及びWBOB2=WBOB4となっている。
【0044】
− 幅WBOBiは、比QW及び第1項WBOB3の幾何級数に従う(上述の例のように計算することが好ましい)。
【0045】
− i={1,2,3}のLBOBi、対称性によりLBOB1=LBOB5及びLBOB2=LBOB4となっている。
【0046】
− 長さLBOBiは、比QL及び第1項LBOB3=LMAXの幾何級数に従う。
【0047】
− INTは、10μmに固定される。
【0048】
− EBOBは、表皮効果を制限するために5μmに固定される。
【0049】
− ISOLは、40μmに固定される。
【0050】
従って、2つのパラメータ(即ちQW及びQL)の組合せは、この場合、最適化する必要がある。好ましくは、品質ファクターを計算するための迅速な方法を使用する。特にカーンの方法(Kuhn's method)は、W. B. Kuhn等による論文「Analysis of current crowding effects in multiturn spiral inductors」(IEEE Trans. Microwave Theory and Techniques, vol. 49, no 1, pp. 31-38, January 2001)中で説明されているように、近接効果による損失を計算することを可能にする。誘導フィールドは、ビオサバールの法則により計算することが可能である。表皮効果による損失は、プレスの2次元アプローチ(Press's two-dimensional approach)を使用して、特に彼の論文「Resistance and reactance of massed rectangular conductor」(Phys. Review, vol. VIII, no 4, p. 417, 1916)中で説明されているようにして計算することが可能であり、容量効果は無視され、インダクタンスは、磁束の数値計算により計算される。
【0051】
この場合には、品質ファクターの近似値を計算することが可能であり、この近似値は、その後、巻線折り返し部の最適化された寸法を決定するのに使用することが可能である。標準化された品質ファクターを、比QWに対して示した図10のグラフに示すように、4つの異なる比の値QL、即ち、QL=1(長いダッシュ記号を有する線)、QL=0.9(連続した点を有する線)、QL=0.8(短いダッシュ記号を有する線)、及びQL=0.7(切れ目のない線)については、かなりのゲインが、QW=1及びQL=1の初期構造(即ち、ソレノイドに沿って全ての部分で同じサイズの折り返し部を有し、巻線13を構成する電気めっきされた銅に相当する2μΩ.cmの典型的な抵抗の巻線)と比べて観察される。
【0052】
実際、図10を読み取ると、最良の品質ファクター(別言すると、1に対して最も近いもの)が、比の値QLが0.7について、且つ比の値QWが0.6について得られる。即ち、最良の品質ファクターが、比0.6の幾何級数に応じた幅で、且つ比0.7の幾何級数に応じた長さで、端部から中心に向かって進む折り返し部を有する対称的で直線的に伸びたソレノイド巻線に相当するものとして得られる。
【0053】
本発明によるソレノイド巻線13の寸法設定の別の例では、等差級数(arithmetic progression)が、折り返し部の寸法の変化を特徴づけるために使用されてもよい。
【0054】
従って、上記計算により最適化された形状及び寸法を有する折り返し部を備えるソレノイド巻線では、必要とされる結果に応じて巻線の各断面を個別に最適化することで、可能な磁束分布の中で最良の磁束分布を得ることが可能となる。そのようなソレノイド巻線はまた、最大品質ファクター及び/又は均一な磁界を得ることを可能にし、且つ、当該ソレノイド巻線を使用した誘導システムの性能を、著しく改善することを可能にする。
【0055】
本発明によるソレノイド巻線は、より詳細には、磁心を有する又は有しないソレノイド巻線が装備された全ての誘導システムに対し、周波数制限又はパワー制限なしに適用される。それは即ち、次の通りである。
【0056】
− インダクタ及び変圧器、
− データストレージ用の磁気記録ヘッド、
− 「フラックスゲート」や「透磁率計」等の誘導センサ、
− 誘導モータ及びアクチュエータ、
− フィールドを生成するコイル。
【0057】
例えば、透磁率計を製造するのに、上記のようなソレノイド巻線は、より均一なフィールドを生成し、且つ、近接効果に対してより影響を受けないようにするという、2重の利点を示す。従って、上記のような巻線では、外乱法(disturbance method)による周波数及び磁界により、磁性材料の応答をより高精度に測定することが可能となる。
【0058】
折り返し部の厚さEBOBと、折り返し部の高さISOLが、巻線に沿って一定である場合には、上記のようなソレノイド巻線を実現するのに、マイクロシステム製造用に使用される技術を使用することが可能である。例えば、一体化された磁気記録ヘッドを製造するための技術に基づいた数多くの製造方法が、使用可能である。厚さEBOBと、折り返し部の高さISOLが、可変である場合には、いささかより複雑な技術を実施してもよい。
【0059】
「マイクロシステム」技術を使用してソレノイド巻線を製造する方法の一例は、以下のステップを含み得る。導電材料の第1の堆積が、例えば、ダマシン電気分解の方法により行われ、巻線の底部が形成される。次に、第1の絶縁材料が堆積される。
【0060】
次に、1回以上の磁性材料の堆積(薄層化された磁心を製造する場合には、1回以上の磁性材料及び非磁性材料の堆積)が、磁心の形成のために行われる。次に、1回以上の磁心のリソグラフィ及びエッチングステップが行われる。
【0061】
次に、絶縁材料の第2の堆積が行われ、更に、2層の絶縁層におけるビアのリソグラフィ及びエッチングステップが、巻線折り返し部に近付けることが可能なように行われる。最後に、導電材料の第2の堆積が行われ、巻線の上部が形成される。
【0062】
このような「マイクロシステム」タイプの製造方法は特に、ソレノイド巻線を、折り返し部の寸法(特に、長さLBOB、幅WBOB、及び折り返し部間の間隔INT)の選択に関し大きな自由度を伴って迅速且つ簡単に得ることを可能にする。これは、マイクロメカニクスの方法、即ち、ワイヤを巻きつけることに基づいた方法によって実現するのは、よりずっと難しい。
【0063】
本発明は、上述の種々の実施形態のみに限定されるものではない。本発明によるソレノイド巻線は、折り返し部が、巻線に沿った折り返し部の位置と、巻線について必要とされる磁性制約条件とに応じて、巻線に沿った少なくとも1つの可変な寸法を提供すると仮定すると、任意の数の折り返し部を備えることが可能である。
【0064】
一般的な方法では、折り返し部の寸法の変化がどのようなものであったとしても、最大の寸法を有する折り返し部は、有利には、巻線の中心に配置されるべきである。
【0065】
ソレノイド巻線の最適な形状の寸法設定及び計算のその他の例では、追加の製造制約条件を考慮に入れることが可能である。ソレノイド巻線の底部は例えば、ソレノイド巻線の上部と同じ厚さを有しない可能性があり、ソレノイド巻線は例えば、対称的でない可能性がある。これらの場合には、考慮に入れるべきパラメータの数が、多数になる。ソレノイドの芯部(heart)にある磁心がソレノイドに対し中心にないことについても、同じことが成り立つことになる。
【0066】
第1の寸法設定の例(図8、9a、9b)に関し、一方の折り返し部から他方の折り返し部へのDC抵抗(直流(DC))の変化は、例えば、最大抵抗が超過されないよう最大抵抗を固定することにより、又は、標準偏差と直流(低周波数)との積を最小にすることで構造を最適化することにより、考慮に入れてもよい。
【0067】
他の寸法設定の例(図示せず)では、最適化は、より少ない一定の予め設定された寸法を用いて行ってもよい。そして、遺伝的アルゴリズム等のより複雑な最適化アルゴリズムが、例えば、Matlab(登録商標)又はOptimetrics(登録商標)といったモデリング及びシミュレーションソフトウェアを利用して使用されてもよく、これらのアルゴリズムは、制約のある又は制約のない広範囲な最適化方法を提供する。
【0068】
より一般的な場合には、より正確に最適化すべきパラメータを計算するために、例えば、有限要素法を使用した数値計算ソフトウェアを使用することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分離された長方形の折り返し部(14)を備え、直線的に伸びている、ソレノイド巻線(13)を備え、前記折り返し部の各々が、所定の寸法(LBOB、WBOB、EBOB、ISOL、INT)を有する誘導マイクロデバイスであって、
前記折り返し部(14)の前記寸法のうちの少なくとも1つは、可変であり、且つ、前記巻線(13)に沿った前記折り返し部の位置と、前記巻線(13)の所定の磁気特性とに応じて、各折り返し部(14)について個別に決定されることを特徴とする誘導マイクロデバイス。
【請求項2】
前記折り返し部(14)の前記可変な寸法は、前記巻線(13)の中心において、前記巻線(13)の端部においてよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のマイクロデバイス。
【請求項3】
前記折り返し部(14)の前記可変な寸法は、前記巻線(13)の中心に対して対称的に変化することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロデバイス。
【請求項4】
前記折り返し部(14)の前記可変な寸法は、幅(WBOB)、長さ(LBOB)、厚さ(EBOB)、折り返し部の高さ(ISOL)、及び2つの折り返し部間のギャップ(INT)から選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項5】
前記巻線(13)の2つの隣接する折り返し部(14)間のギャップ(INT)の値は、一定であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項6】
前記巻線(13)の2つの隣接する折り返し部(14)間のギャップ(INT)の値は、可変であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項7】
前記マイクロデバイスは、前記巻線(13)に沿って少なくとも1つの可変な所定の寸法(LMAG、WMAG、EMAG)を有する棒の形状の磁心(15)を取り囲んでいることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項8】
前記磁心(15)の前記可変な寸法は、前記磁心(15)の幅(WMAG)、長さ(LMAG)、及び厚さ(EMAG)から選択されることを特徴とする請求項7に記載のマイクロデバイス。
【請求項9】
前記磁心(15)の厚さ(EMAG)は、前記巻線(13)に沿って一定であることを特徴とする請求項8に記載のマイクロデバイス。
【請求項10】
前記可変な所定の寸法は、前記ソレノイド巻線(13)に沿って徐々に変化することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項11】
前記可変な所定の寸法は、幾何級数に従うことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項1】
複数の分離された長方形の折り返し部(14)を備え、直線的に伸びている、ソレノイド巻線(13)を備え、前記折り返し部の各々が、所定の寸法(LBOB、WBOB、EBOB、ISOL、INT)を有する誘導マイクロデバイスであって、
前記折り返し部(14)の前記寸法のうちの少なくとも1つは、可変であり、且つ、前記巻線(13)に沿った前記折り返し部の位置と、前記巻線(13)の所定の磁気特性とに応じて、各折り返し部(14)について個別に決定されることを特徴とする誘導マイクロデバイス。
【請求項2】
前記折り返し部(14)の前記可変な寸法は、前記巻線(13)の中心において、前記巻線(13)の端部においてよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のマイクロデバイス。
【請求項3】
前記折り返し部(14)の前記可変な寸法は、前記巻線(13)の中心に対して対称的に変化することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロデバイス。
【請求項4】
前記折り返し部(14)の前記可変な寸法は、幅(WBOB)、長さ(LBOB)、厚さ(EBOB)、折り返し部の高さ(ISOL)、及び2つの折り返し部間のギャップ(INT)から選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項5】
前記巻線(13)の2つの隣接する折り返し部(14)間のギャップ(INT)の値は、一定であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項6】
前記巻線(13)の2つの隣接する折り返し部(14)間のギャップ(INT)の値は、可変であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項7】
前記マイクロデバイスは、前記巻線(13)に沿って少なくとも1つの可変な所定の寸法(LMAG、WMAG、EMAG)を有する棒の形状の磁心(15)を取り囲んでいることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項8】
前記磁心(15)の前記可変な寸法は、前記磁心(15)の幅(WMAG)、長さ(LMAG)、及び厚さ(EMAG)から選択されることを特徴とする請求項7に記載のマイクロデバイス。
【請求項9】
前記磁心(15)の厚さ(EMAG)は、前記巻線(13)に沿って一定であることを特徴とする請求項8に記載のマイクロデバイス。
【請求項10】
前記可変な所定の寸法は、前記ソレノイド巻線(13)に沿って徐々に変化することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項11】
前記可変な所定の寸法は、幾何級数に従うことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【公表番号】特表2010−511301(P2010−511301A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538747(P2009−538747)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001967
【国際公開番号】WO2008/071886
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク−セーエーアー (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【出願人】(591035139)エステーミクロエレクトロニクス ソシエテ アノニム (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001967
【国際公開番号】WO2008/071886
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク−セーエーアー (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【出願人】(591035139)エステーミクロエレクトロニクス ソシエテ アノニム (31)
【Fターム(参考)】
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