説明

有価証券類を検査するためのスペクトルセンサ

発明は有価証券類を検査するためのスペクトルセンサに関し、センサは、有価証券類を照明するための照明ユニット、結像光学系及び検出ユニットを備える。照明ユニットは相異なる発光スペクトルを有する複数の光源を有し、相異なる発光スペクトルを有する光パルスからなる照明シーケンスによって有価証券類の一領域を照明するため、光源のオン/オフが次々に切り換えられる。検出光のスペクトル強度分布を記録するため、光パルスのそれぞれに対して1つの測定値が検出される。複数の光源は近赤外スペクトル範囲の一区間及び/または可視スペクトル範囲の一区間を、スペクトルセンサが近赤外スペクトル範囲の区間内及び/または可視スペクトル範囲の区間内のスペクトル強度分布を記録することができるような態様で、カバーする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有価証券類を検査するためのスペクトルセンサ及びスペクトルセンサを用いて有価証券類を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券類を検査するため、有価証券類のタイプがそれを用いて決定される、及び/または有価証券類が正統性及び/または状態についてそれを用いて検査される、センサが通常用いられる。そのようなセンサは、例えば、銀行券、小切手、身分証明書、クレジットカード、デビットカード、乗車券/入場券、バウチャー等のような、有価証券類を検査するために用いられる。有価証券類の検査は、検査されるべき有価証券類の特性に応じて、1つないしいくつかの相異なるセンサが収められている、有価証券類精査のための装置で実施される。検査時に、有価証券類は通常、センサによってスキャンされ、センサ及び有価証券類は互いに対して移動される。
【0003】
複数のセンサにより、有価証券類はいくつかの色の光源で、これらの色に対する有価証券類の反射光から有価証券の可視色を確認するために、照明される。人間の眼の3つの相異なる色受容器に対応して、これらのセンサは、例えば、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード及び青色発光ダイオードによって実現される3つの色チャネルしか有していない(RGBセンサ)。しかし、そのような3つの色チャネルしか有していない光センサでは、有価証券類から発する光のスペクトル強度分布は全く記録することができない。
【0004】
スペクトル強度分布を記録するため、有価証券類を白色光で照明し、有価証券類で反射される光をスペクトル分解態様で検出する、スペクトルセンサが知られている。そのようなスペクトルセンサでは、有価証券類から反射される光のスペクトル分解のため、回折格子が用いられている。しかし、スペクトル分解には回折格子から検出線まで比較的長い光路が必要であり、よってそのようなスペクトルセンサには大きな設置スペースが必要である。さらに、そのようなスペクトルセンサで捕捉され得るスペクトル範囲は比較的狭く、よってそのようなスペクトルセンサで広いスペクトル範囲にわたるスペクトル強度を記録することはできない。回折格子はある波長に対して、その波長の光に対する回折の反射係数が可能か限り大きくなるように、最適化される。しかし、その波長から外れる波長に対しては回折格子の反射係数に大きな低下が生じ、よってそのような波長については非常に低強度の光しか検出に利用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、可視スペクトル範囲及び/または近赤外スペクトル範囲におけるスペクトル強度分布を有価証券類の1つないしさらに多くの領域から記録することができる、有価証券類を検査するための改善されたスペクトルセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は独立特許請求項の主題によって達成される。独立請求項に従属する請求項には本発明の有利な発展形態及び実施形態が述べられている。
【0007】
スペクトルセンサは、スペクトルセンサによって検査されるべき有価証券類を照明するための照明ユニット、結像光学系及び検出ユニットを備える。照明ユニットは、それぞれの発光スペクトルが相異なる、複数の光源を有する。これらの光源の発光スペクトルは可視スペクトル範囲及び/または近赤外スペクトル範囲にある。結像光学系は照明ユニットによって放射される光を検査されるべき有価証券類の一領域上に結像させる。結像光学系により、検査されるべき有価証券類の明瞭に定められ、空間的に限定された領域の照明を達成することができる。検出ユニットは、スペクトルセンサの動作時に、有価証券類が照明ユニットによって照明されたときに照明された領域から発する光を検出するために構成される。
【0008】
スペクトルセンサの照明ユニットは、それぞれの発光スペクトルが互いに異なる、複数の相異なる光源を有する。照明ユニット内で、光源は、詳しくは光源に共通の光源支持手段上に、並行して、例えば二次元格子に配置することができる。光源は環状に、例えば検出ユニットの周りに、配置することもできる。結像光学系は光源のそれぞれの発光光を検査されるべき有価証券類上に結像させるように構成される。照明ユニットにより放射される光は定められた光路を介して有価証券類の照明領域上に結像光学系により結像される。結像光学系は、この目的のため、光源により放射される光を有価証券類上に結像させる、例えば、1つないしいくつかの屈折光学素子(例えばレンズ)及び/または回折光学素子及び/または反射光学素子を有する。結像光学系は結像レンズとして構成されることが好ましい。有価証券類上への照明光の結像を実施することで、有価証券類の照明領域が明瞭に定められ、空間的に限定される。これは、光源による有価証券類の(それらの間に光学系が全く無い)直接照明と比較したとき、及び、光が結像されず、光ガイドから有価証券類上への定められた光路無しに送られる、簡単な(結像光学系無しの)光ガイド光学系に比較したときの、利点を表す。
【0009】
照明ユニットによって放射される様々な光源の光の大部分を有価証券類の同じ照明領域上に結像させるため、結像光学系は有価証券類の照明領域が正確にまたはほぼ結像光学系の焦点にあるように配置されることが好ましい。よって、並行して配置された相異なる光源を用いる有価証券類の照明にもかかわらず、検査されるべき有価証券類の実質的に同じ領域を照明することができ、検出ユニットで検出することができる。結像光学系は有価証券類上のパッチ領域、特に円形照明パッチを照明するように構成することができる。しかし、結像光学系は有価証券類上のストライプ形状領域を照明するように構成することもできる。結像光学系として、第1の場合には、例えば放射形対称結像光学系を、第2の場合には円柱形光学系を、用いることができる。
【0010】
光源によって放射された光は集光光学系を用いて集光することができ、集光光学系は、集光した光を適する態様で結像光学系上に向けることができ、照明ユニットのコンポーネントとすることができる。この場合、光源、集光光学系及び結像光学系は、光源のそれぞれの発光光が、スペクトルセンサの動作時にスペクトルセンサによって検査されるべき、有価証券類上に集光光学系及び結像光学系によって結像され得るように、相互に配置される。集光光学系は、光源によって放射される光を集光するため、光源と結像光学系の間に配置される。集光光学系は、それぞれが光源の内の1つの発光光を集光する、複数の、例えば並行して配置された、屈折レンズまたは回折レンズによって実現することができる。ここで、結像光学系及び集束光学系のレンズは、好ましくは有価証券類の照明領域上にぼけ態様で光源が結像されるように、配置され、構成される。さらに、照明ユニットのそれぞれの光源は、それぞれに割り当てられたレンズからそのレンズの焦点距離より近くにあることが好ましい。集光光学系のレンズは単レンズとしてまたはマイクロレンズアレイのマイクロレンズとして構成することができる。
【0011】
他の実施形態において、集光光学系は1本ないし数本の光ガイドとして形成され、光ガイドは光源と結像光学系の間に配置される。ここで、全光源に対して1本の共通光ガイドを設けることができ、あるいはそれぞれの光源に対して個別に1本の光ガイドを設けることができる。光源の発光光は1本または複数本の光ガイドに結合され、光ガイドは光源の発光光を結像光学系に向ける。光ガイドから出た光は結像光学系によって有価証券類上に結像される。光ガイドとして、例えば、ガラスファイバまたは、光出射領域が円形またはストライプ形の光ガイド体を用いることができる。
【0012】
照明ユニットは、それぞれの発光スペクトルが可視スペクトル範囲及び/または近赤外スペクトル範囲にあり、互いに異なる、複数の相異なる光源を有する。すなわち、複数の光源は、それぞれの強度ピークが相異なる波長にある、複数の相異なる発光スペクトルを与える。例えば、照明ユニットのそれぞれの光源は、それぞれのスペクトル位置が照明ユニットの他の全ての光源の輝線とは異なる、ある波長の輝線を放射するために構成される。しかし、あるいは、照明ユニットは、例えばあるスペクトル範囲において低光度光源を用いても十分な照明強度を得るため、いくつかの同等の光源を有することもできる。複数の光源は近赤外スペクトル領域の一区間を、スペクトルセンサが、測定値の検出により、近赤外スペクトル領域のその区間におけるスペクトル強度分布を記録できるように、カバーすることが好ましい。照明ユニットの光源は、例えば、可視スペクトル範囲から近赤外スペクトル範囲まで、例えば可視スペクトル範囲から少なくとも1000nmの波長まで、好ましくは少なくとも1200nmの波長まで、拡がる近赤外スペクトル範囲におけるスペクトル強度分布を記録できるように、選ばれる。あるいはまたはさらに、複数の光源は可視スペクトル範囲の一区間も、スペクトルセンサが可視スペクトル範囲のその区間における検出光のスペクトル強度分布を記録できるように、カバーする。照明ユニットは、それぞれの発光スペクトルが紫外スペクトル領域にある、1つないしいくつかの光源も有することができる。光源として、光放射ダイオード、例えば、発光ダイオード(LED)、特に半導体発光ダイオードまたは有機発光ダイオード(OLED)、及び/またはレーザダイオード、特に縦型共振器表面発光レーザ(VCSEL)が用いられることが好ましい。
【0013】
スペクトルセンサの動作時に、発光スペクトルが相異なる光パルスの照明シーケンスによって有価証券類の一領域を照射するため、光源のオン/オフが次々に切り換えられる。検出ユニットは、スペクトルセンサの動作時に、照明シーケンスで照明される有価証券類の領域から発する光を検出するために構成される。そのようにする場合、検出光のスペクトル強度分布を記録するため、照明シーケンスの光パルスのそれぞれに対して測定値が検出される。検出される測定値はそれぞれ、照明シーケンスの光パルスの内の1つによる照明時に検出される光強度に対応する。検出光の光強度分布は検出された測定値から得られる。
【0014】
有価証券類を検査するため、照明シーケンスは周期的に反復される。少なくとも検査されるべき有価証券類の部分領域にかけて、有価証券類は同じ照明シーケンスによって照明される。他の部分領域においては、有価証券類を異なる照明シーケンスによって照明することができる。ここで、照明シーケンスは検査されるべき有価証券類に応じて選ぶことができる。単一照明シーケンス中に検出された測定値からでも、有価証券類から発する光のスペクトル強度分布を確認することができる。しかし、あるいは、異なる照明シーケンスの測定値、好ましくは2つの連続する照明シーケンスの測定値を組み合わせることも可能である。例えば、連続する照明シーケンスにおいて同じ光源を用いる照明時に検出された少なくとも2つの測定値が組み合わされて1つの測定値にまとめられる。
【0015】
スペクトルセンサの動作時に、検査されるべき有価証券類は搬送速度でスペクトルセンサ下を搬送される。照明シーケンスの継続時間は、照明シーケンス中に光源によって放射される光パルスの全てが有価証券類のほとんど同じ領域を照射するように、検査されるべき有価証券類の搬送速度に対して調節されることが好ましい。詳しくは、照明シーケンスの最初の光パルスによって照明される有価証券類の領域と照明シーケンスの最後の光パルスによって照明される有価証券類の領域が少なくとも75%は重なり合う。これは、同じ照明シーケンスの光パルスの全てに対して、これらの光パルスによって次々に照明される照明領域の面積が、照明シーケンス中の有価証券類の移動にかかわらず、少なくとも75%は同等であることを意味する。
【0016】
スペクトルセンサは、有価証券類の全域検査のためではなく、有価証券類上の1本ないし数本のトラックにおける有価証券類の検査のために構成されることが好ましい。数本のトラックにおける検査の場合、トラック間にそれぞれスペクトルセンサによって検査されない有価証券類の領域が配置される。有価証券類の検査の目的のために照明される領域は、相互に平行に延び、有価証券類の搬送方向に沿う、トラックを形成する。これらのトラックは有価証券類上に離散的に分布する。トラックのそれぞれに対して、上述した、照明ユニット、結像光学系及び検出ユニットが少なくとも1つずつ備えられる。照明シーケンスは、有価証券類がトラックのそれぞれに沿って準連続態様で検査されるように迅速に、相互に連続することが好ましい。
【0017】
光源がカバーする近赤外スペクトル領域の区間は、例えば少なくとも750nmから1000nmの波長及び/または1000nmから1600nmの波長を含み、必要に応じて1600nmをこえる波長を含む。1000nmをこえるスペクトル領域をカバーする光源がスペクトルセンサに装備されることが好ましい。したがってスペクトルセンサは、有利なことにこの長波長スペクトル範囲におけるスペクトル強度分布も記録できるから、シリコンベース検出器を用いる従来のスペクトルセンサは適していない。光源がカバーする可視スペクトル範囲の区間は例えばある色に属するスペクトル範囲、例えば人間の眼で赤色として知覚されるスペクトル範囲とすることができる。しかし、光源は2つないしいくつかの色もカバーすることができ、よってスペクトル強度分布は2つないしいくつかの色にわたって、例えば緑色スペクトル範囲及び赤色スペクトル範囲にわたって、拡がる。照明ユニットの光源の発光スペクトルは、例えば可視スペクトル範囲内の少なくとも5つの相異なる発光スペクトルを含む。しかし、光源がカバーする可視スペクトル範囲の区間は全可視スペクトル範囲とすることもできる。
【0018】
眼のスペクトル感度は3つの色チャネルだけに基づいている。したがって、相互に違っている色が存在しても、人間の眼においてそれらの色は同じ色覚を刺激する。異なるスペクトル特性を有しているが、同じ照明の下で人間には同じに見える、そのような色は目視同色と称される。従来の−人間の眼と同様に−3つの色チャネルだけを有するセンサ、例えばRGBセンサは、目視同色を相互に弁別することはできない。しかし、本発明にしたがうスペクトルセンサは目視同色を弁別するように構成される。スペクトルセンサにおいて、光源の発光スペクトルはスペクトルセンサによって記録されるスペクトル強度分布に基づいて目視同色が相互に弁別され得るように選ばれる。例えば、同じ有価証券類上にまたは相異なる有価証券類上に含まれる2つの目視同色に対して、スペクトルセンサはそれぞれに1つのスペクトル強度分布を記録することができ、よってそれらのスペクトル強度分布を比較することができ、それらの違いを決定することができる。
【0019】
スペクトルセンサにおいて、光源の発光スペクトルは、有価証券類の照明領域に含まれ得る目視同色が、スペクトルセンサが目視同色から発する光の検出時に記録することができるそれぞれのスペクトル強度分布に基づいて相互に弁別され得るように、スペクトル上に配置されることが好ましい。例えば、目視同色から発する光の検出時にスペクトルセンサが記録するスペクトル強度分布に基づいて、照明領域内に含まれ得る目視同色をスペクトルセンサによって相互に弁別することができるように、複数の光源は赤色スペクトル範囲及び/または緑色スペクトル範囲及び/または青色スペクトル範囲及び/または750nmから1000nmの近赤外スペクトル範囲をカバーする。ある色チャネル(例えば赤色)内で光特性が異なる目視同色を弁別するため、この色チャネルのスペクトル範囲内に少なくとも2つの相異なる光源の発光スペクトルがあるように光源を選ぶことが有利である。スペクトルセンサによる多くの相異なる目視同色相互の弁別を可能にするため、さらに、それぞれ少なくとも2つの相異なる発光スペクトルにより、別の色チャネル(例えば、緑色、青色)をカバーすることも好ましい。近赤外スペクトル領域において光特性が異なる色の弁別についても同様である。したがって、複数の光源が、それぞれのスペクトル範囲に少なくとも2つの相異なる光源の発光スペクトルがあるような態様で、赤色スペクトル範囲及び/または緑色スペクトル範囲及び/または青色スペクトル範囲をカバーすることが好ましい。近赤外スペクトル範囲に関しては、複数の光源が、それぞれのスペクトル範囲に少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの、相異なる光源の発光スペクトルがあるような態様で、750nmから1000nmの近赤外スペクトル範囲及び/または1000nmから1600nmの近赤外スペクトル範囲をカバーすることが好ましい。
【0020】
さらに、スペクトル上隣接する、少なくとも3つ、特には少なくとも5つの、光源の発光スペクトルが、スペクトル上で重なり合う、及び/またはそれぞれのスペクトル間隔が60nm以下の相異なる発光ピークを有する、ことが好ましい。例えば、照明ユニットの光源の発光スペクトルのそれぞれは、照明ユニットのスペクトル上で隣接する他の光源の内の1つの発光スペクトルの内の少なくとも1つと重なる。
【0021】
検出ユニットは、照明ユニットの光源のそれぞれの発光光が検出ユニットによって検出され得るようにスペクトルが広帯域である、スペクトル感度を有する。詳しくは、検出ユニットは少なくとも、可視スペクトル範囲の光の検出のため及び可視スペクトル範囲に隣接する少なくとも1000nmまでの近赤外スペクトル範囲の光の検出のために、構成される。通常用いられるシリコンベース検出ユニットは可視スペクトル範囲には適するが、1000nmをこえるスペクトル範囲には適していない。したがって、可視スペクトル範囲の光の検出及び1000nmまで及びさらに長波長の近赤外スペクトルの光の検出のいずれのためにも構成された検出ユニットをスペクトルセンサに装備することが特に有利である。詳しくは、スペクトルセンサはこの目的のため、検出ユニットとして、近赤外スペクトル範囲の光の検出、特に1000nmをこえる波長の検出、及び可視スペクトル範囲の光の検出のいずれのためにも構成された、InGaAs光検出器を有する。
【0022】
反射光を検出するため、スペクトルセンサは、例えば比較的広い角度範囲にわたる反射光を捕捉するために、いくつかの同等な検出ユニットを備えることもできる。スペクトルセンサは、例えば、スペクトルセンサによって捕捉できるスペクトル範囲を拡げるため、いくつかの相異なる検出ユニットを備えることもできる。ここで、相異なる検出ユニットは並行して配置することができ、あるいは縦列で、例えばサンドイッチ構造の形態で配置することができる。
【0023】
検出ユニットで記録された測定値は、スペクトルセンサのコンポーネントとすることができ、あるいは外部評価ユニットとして形成される、評価ユニットによって評価される。少なくとも測定値の前処理が、スペクトルセンサによって、詳しくはスペクトルセンサの内部評価ユニットによって、既に実施されていることが好ましい。さらなる評価は、内部評価ユニットによっても実施することができ、あるいはスペクトルセンサが装備されている装置の中央評価ユニットによって実施することができる。
【0024】
検出ユニットの前に、有価証券類から発生される光を集光して検出ユニットの感光領域に向ける、検出光学系を配置することができる。
【0025】
検出光学系は、例えば、1つないしさらに多くの屈折光学素子または回折光学素子あるいはミラーを含む。検出光学系及び検出ユニットは、スペクトルセンサの動作時に、照射領域から発する光の内の、完全に照射領域内に配置された有価証券類の検出領域の光だけが検出されるように、構成及び配置される。検出領域が完全に照射領域内に配置されることにより、有価証券類の搬送時におこり得る有価証券類のばたつきへの検出光強度の不感性が達成される。したがって、スペクトルセンサは、スペクトルセンサの作製時または組立時におこり得る、照明ユニット、結像光学系、検出ユニットまたは検出光学系のいかなる位置変動も許容できるようになり得る検出領域は完全に照明領域の一様照明区画内に配置されることが好ましい。一様照明区画において、照明の強度は、好ましくは照明シーケンスの全ての光パルスに対して、一様に分布する。
【0026】
相異なる光源の相異なる発光スペクトルで有価証券類を次々に照明するため、照明ユニットの光源のオン/オフを次々に切り換えるように適合された制御ユニットが、スペクトルセンサに備えられることが好ましい。制御ユニットはスペクトルセンサのコンポーネントとして構成することができるが、外部制御ユニットとして、例えばスペクトルセンサが装備されている有価証券類を処理するための装置のコンポーネントとして、構成することもできる。制御ユニットはスペクトルセンサの照明ユニット、詳しくは光源、及びスペクトルセンサの検出ユニットを駆動するように適合される。スペクトルセンサの動作時に、制御ユニットは、例えばいずれの時点においても光源の内の正確に1つがオンに切り換えられるように、光源のオン/オフを次々に切り換える。しかし、1つまたはいくつかの時点において、光源の内のいくつかを、例えばいくつかの発光スペクトルが同じ光源を、同時にオンに切り換えることもできる。さらに、制御ユニットは、光源のオン切換え段階中、有価証券類から発する光の強度に対応する測定値のそれぞれの検出ユニットによる捕捉を開始させる。検出ユニットは光源による照明に同期して1つの測定値をそれぞれ記録するから、有価証券類から発する光の強度はそれぞれの光源の発光スペクトルによってあらかじめ定められた波長に対して検出される。
【0027】
スペクトルセンサの構成時に、有価証券類の検査に用いられる照明シーケンス、詳しくは有価証券類の照明のために光源のオン/オフが切り換えられるシーケンスが指定される。スペクトルセンサに備えられた制御ユニットは、スペクトルセンサの製造時にあらかじめ設定しておくことができる。しかし、スペクトルセンサの仕上後にのみ制御ユニットの設定がなされる態様も提供され得る。さらに、スペクトルセンサの供用開始後であっても制御ユニットの設定が変更可能である態様も提供され得る。そのような供用開始後の再設定は、例えばスペクトルセンサの製造業者によるか、あるいはスペクトルセンサまたはスペクトルセンサが装備された装置の操作担当者によって、実施することができる。再設定時には、例えば測定のためにオン/オフが切り換えられる光源の数が変更される場合、検出ユニットの駆動を照明ユニットの駆動に合わせて調節することも必要になり得る。再設定時には、検出された測定値を評価するために装備される評価ユニットも、例えば有価証券類の検査に他の光源が用いられることになった場合に、変更された制御ユニットに設定に合わせて調節されることになる。
【0028】
スペクトルセンサは、照明ユニット、結像光学系及び検出ユニットが内部に配置され、必要に応じて制御ユニット及び検出光学系も内部に配置される、ハウジングも備えることが好ましい。
【0029】
本発明の別の態様は、上述したスペクトルセンサを用いて実施することができる、有価証券類を検査する方法である。有価証券類を検査するため、有価証券類がスペクトルセンサ下を搬送速度で搬送される。発光スペクトルが相互に異なる複数の光源を備える照明ユニットによって有価証券類が照明される。発光スペクトルが相異なる光パルスの照明シーケンスによって有価証券類の一領域を照明するため、有価証券類の照明時に複数の光源のオン/オフが次々に切り換えられる。結像光学系を用いて有価証券類の照明領域上に照明ユニットから放射される光が結像される。光源から放射される光は光源と結像光学系の間に配置された集光光学系を用いて集光されることが好ましい。有価証券類の照明領域から発する光が検出される。そのようにする場合、照明領域から発する光のスペクトル強度分布を記録するため、照明シーケンスの光パルスのそれぞれに対して測定値が検出される。複数の光源は少なくとも、可視スペクトル範囲及び/または近赤外スペクトル範囲の一区間を、測定値の検出によって可視スペクトル範囲及び/または近赤外スペクトル範囲のその区間内のスペクトル強度分布が記録されるように、カバーする。
【0030】
一実施形態において、照明ユニットは、それぞれが光源を支持するために構成された、複数の光源座がその上に設けられた光源支持手段を備える。光源座は、光源支持手段上に並行して配置され、それぞれがチップ形光源を支持することができる複数の個別の凹所によって定められる。しかし、光源座は、光源支持手段が有することができ、チップ形光源を支持するために構成された、凸所及び/または電気コンタクト領域によって定めることもできる。
【0031】
スペクトルセンサの照明ユニットは集光光学系を備えることができる。集光光学系は、例えば複数のマイクとレンズを含むマイクロレンズアレイとして、構成される。ここで、マイクロレンズアレイと光源支持手段は、光源支持手段上に配置された光源のそれぞれがマイクロレンズの内の正確に1つに対応付けられるように、相互に配置される。したがって、スペクトルセンサの動作時に、光源のそれぞれの発光光はマイクロレンズアレイの正確に1つのマイクロレンズによって集光される。それぞれの光源に対応付けられたマイクロレンズにより、光源の発光光を高効率で集光することができる。マイクロレンズと光源の間の1対1対応を得るため、マイクロレンズアレイのマイクロレンズの配置と光源支持手段上の光源の配置は同等である。例えば、マイクロレンズアレイと光源は同じ二次元格子に配置される。マイクロレンズアレイは一体構造体として構成され、一体構造体は一体構造体の一体コンポーネントである結合手段を有する。光源支持手段はマイクロレンズアレイの結合手段に整合する対向構造を有する。
【0032】
マイクロレンズアレイの採用の結果、それぞれの光源に対して単レンズが使用される照明ユニットに比較して大きな利点が得られる。この場合には、単レンズのそれぞれに対して個別のマウントを備えなければならず、単レンズの結合時にそれぞれの光源に対する正確な位置合せが保証されなければならないであろう。そのようにする場合、続いて単レンズの正確な位置及び/または方位が調節されなければならない。対照的に、それぞれの光源に対して正確に1つのマイクロレンズを有するマイクロレンズを用いる場合には、ただ1回の正確な位置決めで十分である。位置決めは、光源支持手段の対応する対向構造に連結されるマイクロレンズアレイの結合手段によって行うことができる。したがって、スペクトルセンサの作製をさらに一層簡単に、無調節で、行うことができる。個別にマウントされなければならず、その配置には必ず隙間が残る、単レンズを用いる対応照明ユニットの実現とは対照的に、マイクロレンズアレイでは、個々のマイクロレンズ間に隙間が全く無いかあるいは最小限の隙間しかない。マイクロレンズアレイは一定構造体として構成されるから、マイクロレンズは相互に直接に移行する。したがって、マイクロレンズアレイにより準覆域集光を得ることができる。マイクロレンズアレイにより、光集光効率を有し、小型である、照明ユニットが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はスペクトルセンサ下を搬送される有価証券類を検査するスペクトルセンサを示す。
【図2a】図2aは照明ユニットの光源の(強度が規格化された)発光スペクトルの一例を示す。
【図2b】図2bは、それぞれの複数の光源からの、いくつかの照明シーケンスによる照明の時間シーケンスを示す。
【図3a】図3aは、照明領域及び検出領域がその上に表されている、有価証券類の詳細を示す。
【図3b】図3bは、照明シーケンス中の照明領域の推移を示し、照明シーケンスの最初の光パルス時点における有価証券類の詳細を示す。
【図3c】図3cは、照明シーケンス中の照明領域の推移を示し、照明シーケンスの最後の光パルス時点における有価証券類の詳細を示す。
【図4】図4aは赤色スペクトルにおいて相互に異なる2つの目視同色の内の一方のスペクトル強度分布及びスペクトルセンサの測定値の一例を示す。図4bは赤色スペクトルにおいて相互に異なる2つの目視同色のスペクトル強度分布及びスペクトルセンサの測定値の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
例として添付図面を参照して、以下に本発明を説明する。
【0035】
反射光センサを例にして、有価証券類を検査する方法を以下に説明する。しかし、本発明にしたがうスペクトルセンサは透過光センサとして構成することもできる。この目的のため、検出ユニットは照明ユニットに対向して配置され、よって有価証券類を透過した照明光が検出される。
【0036】
図1は有価証券類1を検査するために構成されたスペクトルセンサ100の一例を示し、有価証券類1はスペクトルセンサ100下を搬送される。有価証券類1の照明のため、スペクトルセンサ100は複数の相異なる発光スペクトルを有する複数の光源15が装備された照明ユニット50を備える。照明ユニット50によって放射される照明光は集光光学系20及び結像レンズ25によって有価証券類1上に結像される。本例において集光光学系20はマイクロレンズアレイ20として構成される。しかし、照明ユニット50によって放射される光を有価証券類1上に結像させるため、結像レンズ25の代わりに、結像光学系として、別の光学コンポーネント、例えばレンズシステム、1つないしいくつかの回折光学コンポーネント、例えばフレネルレンズ、または結像ミラーを用いることもできる。有価証券類1により、有価証券類1の光特性に依存して、照明光の一部が反射される。有価証券類1によって反射される光は感光領域31を有する検出ユニット30を用いて検出される。検出ユニット30は、例えばInGaAsフォトダイオードまたはInGaAsフォトトランジスタによって形成することができる。検出ユニット30の前に、有価証券類1によって反射された光を集光して感光領域31上に向ける、検出光学系35が配置される。図示される例において、照明光は有価証券類1上に垂直方向で結像され、検出ユニット30は斜角方向で反射光を捕捉する。あるいは、照明を斜角方向で行うことができ、検出ユニット30は反射光を垂直方向または斜角方向で捕捉することができる。
【0037】
図1の例において、照明ユニット50は、それぞれが光源15を支持するために構成された複数の光源座11がその上に設けられた、光源支持手段10を備える。光源支持手段10は、例えば回路基板として構成され、光源の動作に必要な、個々の光源15のそれぞれの選択的駆動を可能にする、電気配線構造(図示せず)を有する。本例において、光源座11は、それぞれに1つの光源15が装着される、光源支持手段10の凹所によって形成される。照明ユニット50の形成のため、光源座11のいくつかまたは全てのそれぞれに1つの光源15が与えられる。光源15として、例えばLED及び/またはOLED及び/またはVCSELが用いられる。
【0038】
照明ユニットのマイクロレンズアレイ20は複数のマイクロレンズ21を有する。光源支持手段10とマイクロレンズアレイは、光源座11のそれぞれがマイクロレンズ21に内の正確に1つを光源座11に対応付けるように、相互に調節される。この目的のため、マイクロレンズ21はマイクロレンズアレイ20内で、光源座11が光源支持手段10上に配置される格子と同じ格子に配置される。個々の光源15によって放射される光はそれぞれの光源15の前に配置されたマイクロレンズ21によって集光される。マイクロレンズアレイ20は一体構造体として構成され、例えばガラス体によるかまたは透明プラスチック体によって形成される。個々のマイクロレンズの直径は、例えばμm範囲またはnm範囲にある。マイクロレンズアレイ20を結合するため、マイクロレンズ20の構造体の光源支持手段10に結合ピン22が設けられ、結合ピン22は光源支持手段10の結合ピン22と整合する孔に挿入される。結合ピン22を用いるマイクロレンズアレイ20の結合により、光源15に対するマイクロレンズアレイ20の最適位置が自動的に達成される。したがって、スペクトルセンサ100の作製時に、照明ユニット50の調節は全く必要ではない。
【0039】
スペクトルセンサ100はハウジング90を備え、透明窓101がハウジング90の下側に配置される。照明ユニット50によって放射される光は窓101を通して、スペクトルセンサ100下を搬送方向Tに沿って搬送される、検査されるべき有価証券1上に向けられる。照明ユニット50,詳しくは光源15,及び検出ユニット30は、本例ではハウジング90内に配置されている制御ユニット60によって駆動される。制御ユニット60は、例えばいずれの時点においても次々に正確に1つの光源15に切り換えられているように、光源15のオン/オフを次々に切り換える。光源のオン切換え段階中、検出ユニット30は有価証券類1によって反射された光の強度に対応するそれぞれの測定値を捕捉する。有価証券類1は相異なる光源15に相異なる発光スペクトルによって次々に照明される。検出ユニット30は光源15による照明と同期して1つの測定値をそれぞれ検出するから、光源15の相異なる発光スペクトルに対して、有価証券類1によって反射された光の強度が検出される。
【0040】
光源15は複数の相異なる発光スペクトルを有する。図2aは、それぞれの発光スペクトルの一部が可視スペクトル範囲にあり、一部が近赤外スペクトル範囲にある、12の光源を照明ユニットが有する例について、光源の発光スペクトルE1〜E12を示す。本例において、12の光源15の全ての発光ピークE1〜E12は相異なる波長λ1〜λ12にある。λ4〜λ8について、個々の発光スペクトルピーク間のスペクトル間隔はそれぞれ60nm未満である。λ10,λ11及びλ12に対するスペクトル上で相互に隣接する光源の発光スペクトルE10,E11及びE12はスペクトル上で相互に重なり合う。
【0041】
制御ユニット60は、光源15のオン/オフがそれによって切り換えられる、照明シーケンスB1が周期的に反復されるように光源15を駆動する。図2bは、例として、12の光パルスP1〜P12からなり、周期的に反復される(B2,B3,…)、照明シーケンスB1を示す。例えば、制御ユニット60は、照明シーケンスB1,B2,B3のそれぞれの間、照明ユニット50のそれぞれの光源の正確に1つのオン/オフが切り換えられるようにプログラムすることができる。あるいは、例えば強度が弱い光源15の低強度を複数の測定によって補償するため、同じ光源15を数回駆動することもできる。照明シーケンスは、照明ユニット50に存在する全ての光源の、あるいは存在する光源15のサブセットだけの、駆動を含むことができる。照明シーケンスB1の後、すなわち測定のために与えられた発光スペクトルE1〜E12のそれぞれを含む照明の下で、測定値が記録された後、測定のために与えられた発光スペクトルE1〜E12のそれぞれを含む照明の下で、再び測定値が記録される次の照明シーケンスB2が始まり、以下同様である。照明シーケンスB1,B2,B3の間に照明休止期間をおくことができる。照明シーケンス中に得られた測定値はそれぞれの有価証券類の反射に依存するスペクトルを与える。必要に応じて、同じ光源を用いる照明時に連続する照明シーケンスにおいて検出された、いくつかの測定値を組み合わせて1つの測定値にまとめることができる。すなわち、例えば第1の照明シーケンスB1の最初の光パルスP1による照明時に検出された測定値と第2の照明シーケンスB2の最初の光パルスP1による照明時に検出された測定値を組み合わせて、1つの測定値にまとめることができる。
【0042】
図3aは、照明ユニット50によって照明された領域2がその上に示されている、有価証券類1の部分領域を示す。照明シーケンスB1の光パルスP1〜P12により、照明領域2の区画4が一様な照明強度でそれぞれ照明される。さらに、照明領域2の一様照明区画4内に完全に配置された検出領域3が示されている。
【0043】
照明シーケンスB1,B2,B3,…の継続時間Δtは、照明シーケンスの相異なる測定値によって有価証券類1上の同じ検出領域3の反射光が少なくともほぼ検出されるように、有価証券類1の搬送速度に対して調節される。説明のため、図3b及び図3cは2つの相異なる時点tP1及びtP2における有価証券類1の部分領域を示す。図3b及び図3cには一様照明区画4は示されていない。時点tP1において、有価証券類1は照明シーケンスB1の最初の光パルスP1で照明され、よってここで照明される領域は2P1と称され、対応する検出領域は3P1と称される(図3b参照)。有価証券類を搬送することにより、有価証券類1は時点tP1からtP2まで搬送方向Tに沿って距離dがけ移動する。時点tP2において、有価証券類1は照明シーケンスB1の最後の光パルスP12で照明され、よってここで照明される領域は2P12と称され、対応する検出領域は3P12と称される(図3c参照)。さらに、図3cには、照明領域2P12に対して距離dだけ移動した、最初の光パルスP1で照明された有価証券類1の照明領域2P1の輪郭も再度示されている。しかし、照明領域の長さLに比較して距離dは非常に短い。したがって、有価証券類上の照明領域2P12の位置及び検出領域3P12の位置は有価証券類1上の照明領域2P1の位置及び検出領域3P1の位置に比較してごく僅かしか移動していない。照明領域の長さLに比較して、同じ照明シーケンスの開始から終了までに有価証券類1が移動する距離dは極めて短く、よって照明領域2P1及び2P12は表面積に関して少なくとも75%が重なる。
【0044】
図4aは第1の色C1の反射スペクトル(破線)の一例を示す。×印はスペクトルセンサが第1の色Cのスペクトル強度分布の記録時に検出した測定値を表す。スペクトル強度分布を記録するため、このスペクトルセンサは10の相異なる波長λ1〜λ10の光源を用い、その内の5つ(λ4〜λ8)は赤色スペクトル範囲(RED)にある。図4bには、第1の色C1の反射スペクトルに加えて、第2の色C2の反射スペクトル(実線)も、スペクトルセンサが第2の色C2のスペクトル強度分布の記録時に検出した、○印で表される測定値とともに示されている。第1の色C1と第2の色C2は相互に目視同色であり、したがってそれぞれの反射スペクトルは赤色スペクトル範囲においてのみ相互に異なり、他では同等に拡がる。
【0045】
従来のRGBセンサは赤色スペクトル範囲における反射光を検出することができるが、赤色チャネルRED全体を統合態様で検出する。これは、赤色スペクトル範囲内のスペクトル分布とは無関係に、赤色スペクトル範囲内にある反射光の総合強度が検出されることを意味する。RGBセンサは2つの色を、その2つの色がそれぞれの総合強度が異なっている場合にのみ、相互に弁別することができ、RGBセンサはその色チャネルの内の1つにおいてそれぞれの色を検出する。赤色スペクトル範囲にわたって総合すると色C1及び色C2の2つの反射スペクトルは同じ面積を有するから(図4bを見よ)、赤色スペクトル範囲を総合的に測定するRGBセンサは、赤色において2つの色を同じ総合強度で検出するであろう。したがって、RGBセンサは2つの目視同色C1とC2を弁別することができない。
【0046】
しかし、本発明にしたがうスペクトルセンサは、スペクトルセンサが1つの色チャネル内のそれぞれから記録するスペクトル強度分布に基づいて、目視同色を弁別することができる。図4a及び4bの例において、赤色スペクトル範囲内のスペクトル強度分布を比較することにより、詳しくはスペクトルセンサがλ4〜λ8の波長において検出する5つの測定値(×または○)を比較することにより、スペクトルセンサは2つの色C1及びC2を弁別することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 有価証券類
2 照明領域
3 検出領域
4 一様照明区画
10 光源受け手段
11 光源座
15 光源
20 集光光学系(マイクロレンズアレイ)
21 マイクロレンズ
22 結合ピン
25 結像レンズ
30 光検出素子
31 感光領域
35 検出光学系
50 照明素子
60 制御ユニット
90 ハウジング
100 スペクトルセンサ
101 透明窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトルセンサ(100)であって、前記スペクトルセンサ(100)の動作時に、前記スペクトルセンサ(100)下を搬送速度で搬送される、有価証券類(1)を検査するための前記スペクトルセンサ(100)において、
それぞれの発光スペクトル(E1〜E12)が相互に異なる複数の光源(15)を有する照明ユニット(50)であって、前記スペクトルセンサ(100)の動作時に、前記相異なる発光スペクトル(E1〜E12)を有する光パルス(P1〜P12)の照明シーケンス(B1)によって前記有価証券類(1)の一領域(2)を照明するため、前記複数の光源(15)のオン/オフが次々に切り換えられる、照明ユニット(50)、
前記スペクトルセンサ(100)の動作時に、前記照明ユニット(50)によって放射される光を前記有価証券類(1)の前記照明領域(2)上に結像させる結像光学系(25)、及び
前記スペクトルセンサ(100)の動作時に、前記照明シーケンス(B1)の前記光パルス(P1〜P12)によって照明された前記領域(2)から発する光を検出するための検出ユニット(30)であって、前記照明シーケンス(B1)の前記光パルス(P1〜P12)のそれぞれに対して前記検出された光の強度に対応する測定値が検出される、検出ユニット(30)、
を備え、
前記複数の光源(15)は近赤外スペクトル範囲の一区間及び/または可視スペクトル範囲の一区間を、前記スペクトルセンサ(100)が前記測定値の前記検出により、近赤外スペクトル範囲の前記区間内及び/または可視スペクトル範囲の前記区間内のスペクトル強度分布を記録することができるような態様で、カバーすることを特徴とするスペクトルセンサ(100)。
【請求項2】
前記スペクトルセンサ(100)が、可視スペクトル範囲から近赤外スペクトル範囲内にまで、好ましくは可視スペクトル範囲から少なくとも1000nmの波長まで、特に可視スペクトル範囲から少なくとも1200nmの波長まで、拡がるスペクトル強度分布を記録することができるように、前記光源(15)が選ばれることを特徴とする請求項1に記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項3】
前記照明領域(2)に含まれ得る目視同色(C1,C2)を前記目視同色(C1,C2)から発する光の検出時に前記スペクトルセンサ(100)が記録する前記スペクトル強度分布に基づいて相互に弁別することができるような態様で、前記複数の光源(15)が赤色スペクトル範囲及び/または緑色スペクトル範囲及び/または青色スペクトル範囲及び/または750nmから1000nmの近赤外スペクトル範囲をカバーすることを特徴とする請求項1または2に記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項4】
前記複数の光源(15)が赤色スペクトル範囲及び/または緑色スペクトル範囲及び/または青色スペクトル範囲を、それぞれの前記スペクトル範囲内に前記光源(15)の前記発光スペクトル(E1〜E12)の内の少なくとも2つの相異なる発光スペクトルがあるような態様で、カバーすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項5】
前記複数の光源(15)が750nmから1000nmまでの近赤外スペクトル範囲及び/または1000nmから1600nmまでの近赤外スペクトル範囲を、それぞれの前記スペクトル範囲内に前記光源(15)の相異なる発光スペクトルの内少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つがあるような態様で、カバーすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項6】
前記複数の光源(15)の前記発光スペクトル(E1〜E12)が可視スペクトル範囲内に少なくとも5つの相異なる発光スペクトルを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項7】
前記光源(15)の内の少なくとも3つ、好ましくは少なくとも5つの、スペクトル上で相互に隣接する、前記発光スペクトルが、スペクトル上で重なり合う、及び/または、スペクトル間隔が60nm以下の、それぞれ相異なる発光ピークを有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項8】
前記照明ユニット(50)が、前記光源(15)によって放射される光を集光するため、前記光源(15)と前記結像光学系(25)の間に配置された集光光学系を有し、前記集光光学系が特に、前記光源(15)の内の1つによってそれぞれ放射される光を集光することができる、並行して配置された複数のレンズを有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項9】
前記スペクトルセンサ(100)が検出光学系(35)を備え、前記検出光学系(35)と前記検出ユニット(30)が、前記スペクトルセンサ(100)の動作時に、前記照明領域(2)から発する光の内の、前記照明領域(2)内に完全に配置された前記有価証券類(1)の検出領域(3)の光だけが検出されるような態様で構成及び配置され、前記検出領域(3)が好ましくは前記照明領域(2)の一様照明区画(4)内に完全に配置されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項10】
前記照明シーケンス(B1)の継続時間(ΔT)が、前記照明シーケンス(B1)中に前記光源(15)によって放射される光パルス(P1〜P12)の全てが前記有価証券類(1)のほぼ同じ領域(2)を照明するように、前記有価証券類(1)の前記搬送速度に対して調節されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項11】
前記照明シーケンス(B1)の最初の光パルス(P1)によって照明される前記有価証券類(1)上の領域(2P1)と同じ前記照明シーケンス(B1)の最後の光パルス(P12)によって照明される前記有価証券類(1)上の領域(2P12)が少なくとも75%は重なり合うことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項12】
前記検出ユニット(30)が、可視スペクトル範囲の光の検出及び近赤外スペクトル範囲の光の検出のいずれのためにも構成された、InGaAs光検出器であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)。
【請求項13】
有価証券類を検査するための、特に請求項1から12のいずれかに記載のスペクトルセンサ(100)を用いる、方法において、
検査されるべき有価証券類(1)を、前記有価証券類(1)を検査するために構成されたスペクトルセンサ(100)下を搬送速度で、搬送する工程、
それぞれの発光スペクトル(E1〜E12)が相異なる複数の光源(15)を有する照明ユニット(50)によって前記有価証券類(1)を照明する工程であって、前記有価証券類(1)の前記照明時に、前記有価証券類(1)の一領域(2)を相異なる発光スペクトルを有する光パルス(P1〜P12)の照明シーケンス(B1)によって照明するため、前記複数の光源(15)のオン/オフが次々に切り換えられる工程、
前記照明ユニット(50)によって放射される光を前記有価証券類(1)の前記領域(2)上に結像光学系を用いて結像させる工程、及び
前記有価証券類(1)の前記領域(2)から発する光を検出する工程であって、前記照明シーケンス(B1)の前記光パルス(P1〜P12)のそれぞれに対して、前記検出光の強度に対応する測定値が検出される工程、
を有し、
前記複数の光源(15)が近赤外スペクトル範囲の一区間及び/または可視スペクトル範囲の一区間を、前記スペクトルセンサ(100)が、前記測定値を検出することにより、近赤外スペクトル範囲の前記区間内及び/または可視スペクトル範囲の前記区間内のスペクトル強度分布を記録することができるような態様で、カバーすることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記領域(2)を照明する前記照明シーケンス(B1)が周期的に反復されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
相異なる、特に、連続する照明シーケンス(B1,B2)において、同じ前記光源(15)のそれぞれ1つの光パルスによる前記照明時に検出される、少なくとも2つの測定値が組み合わされて1つの測定値にまとめられることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b−3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−514567(P2013−514567A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543527(P2012−543527)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007704
【国際公開番号】WO2011/072863
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(596007511)ギーゼッケ ウント デフリエント ゲーエムベーハー (47)
【氏名又は名称原語表記】Giesecke & Devrient GmbH
【Fターム(参考)】