説明

有害動物の撃退装置

【課題】号砲用の火薬を打撃・爆裂させて大きな爆音と火薬の硝煙を発生させることで有害動物を効果的に撃退できる合理的な構造の有害動物の撃退装置を提供すること。
【解決手段】下端部が突き刺し部11aとして設けられている長尺の基体11と、一端部によって火薬を打撃する棒状のプッシュロッド20と、プッシュロッド20を移動可能に案内するガイド部30と、プッシュロッド20による火薬10への打撃を受ける打撃受部40と、プッシュロッド20に付勢力を与えるスプリング50と、一方側にプッシュロッド20の被係止部25に係止する係止部61が設けられ、中途部62で回動可能に軸着されていると共に、他方側に糸状材の装着部63が設けられているリリースレバー60と、リリースレバー60を係止部61が被係止部25に係止する方向へ付勢するセットスプリング70と、少なくとも火薬10が装填される部分を覆う外装部材80とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、号砲用の火薬を打撃・爆裂させて生じる爆発音によって有害動物を撃退させる有害動物の撃退装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有害動物の撃退装置としては、例えば、圧縮空気を利用して定期的に爆裂音を発生させて、鳥獣を威嚇する装置が利用されている。
この装置の場合は、鳥獣の行動とは因果関係がなく爆裂音が発生するもので、鳥獣が慣れてしまい、持続的な効果に乏しかった。また、定期的に爆音が繰り返されることから、騒音の問題もあった。
【0003】
これに対して、上下方向に移動可能な落下部材である重りと、落下部材を確実に衝突面に落下衝突させるための移動をガイドするガイド部材と、該ガイド部材の下方側に衝突面を配設すると共に、該ガイド部材の上方側に、該落下部材を上方に保持する保持手段と、該保持手段の保持機能を解除するための解除手段を設け、解除手段の解除操作に起因して、前記落下部材を落下させて該衝突面に衝突させることにより、直接あるいは間接的に、音や匂いを発生させ、又衝突面あるいはガイド部材に音声発生装置を作動させるスイッチ部材を配置し、スイッチ入力により音声発生装置から音を発生させ効果的に有害獣出没の阻止撃退を図るものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−151828号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有害動物の撃退装置に関して解決しようとする問題点は、先行技術のような有害動物の撃退装置のように落下部材を衝突する方法では、発生する音を十分に大きくすることが難しく、音声発生装置を利用する場合では装置が複雑化して高価になることにある。さらに、従来は、号砲用の火薬の爆発音を利用した合理的な構造の有害動物の撃退装置が開発されておらず、より効果的に有害動物を撃退できない点にある。
そこで、本発明の目的は、号砲用の火薬を打撃・爆裂させて大きな爆音と火薬の硝煙を発生させることで有害動物を効果的に撃退できる合理的な構造の有害動物の撃退装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる有害動物の撃退装置の一形態によれば、号砲用の火薬を打撃・爆裂させて生じる爆発音によって有害動物を撃退させる有害動物の撃退装置であって、地面に突き刺して設置できるように下端部が突き刺し部として設けられている長尺の基体と、一端部によって前記火薬を打撃するように軸方向へ移動する棒状のプッシュロッドと、該プッシュロッドを軸方向へ移動可能に案内するように前記基体に設けられたガイド部と、前記基体に設けられて前記火薬が装填されると共に前記プッシュロッドによる前記火薬への打撃を受ける打撃受部と、前記プッシュロッドに付勢力を与えて前記打撃受部へ打ち付けるように配されたスプリングと、一方側に、前記プッシュロッドに設けられた被係止部に係止したときには前記スプリングを圧縮した状態で該プッシュロッドを保持し、前記被係止部への係止が解除されたときには前記スプリングによる前記プッシュロッドの打撃動作を許容するように係止部が設けられ、中途部で回動可能に前記基体に軸着されていると共に、他方側に有害動物が引っ掛かるように配される糸状材の装着部が設けられているリリースレバーと、該リリースレバーを前記係止部が前記被係止部に係止する方向へ付勢するように配されると共に前記糸状材が引っ張られた際には該リリースレバーの回動を許容して前記係止部の前記被係止部への係止を解除できるように設けられたセットスプリングと、少なくとも前記火薬が装填される部分を覆う外装部材とを具備する。
【0007】
また、本発明にかかる有害動物の撃退装置の一形態によれば、前記打撃受部が前記基体の上端部に設けられ、前記プッシュロッドによって下方から前記火薬を打撃することを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる有害動物の撃退装置の一形態によれば、前記打撃受部が、上部の被打撃部分と、該被打撃部分の下方に前記プッシュロッドの一端部の通過可能な透孔が設けられていると共に前記火薬が保持されるように設けられた受棚部分とを備えることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明にかかる有害動物の撃退装置の一形態によれば、前記火薬が、前記打撃受部に対して火薬皿に載せられて前記受棚部分に受けられて保持された状態で装填され、前記火薬皿を介して前記プッシュロッドによって打撃・爆裂されることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる有害動物の撃退装置の一形態によれば、前記基体が断面L字状の長尺部材で設けられて先端が尖った形状に形成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有害動物の撃退装置によれば、合理的な構成によって号砲用の火薬を打撃・爆裂させて大きな爆音と火薬の硝煙を発生させることができ、有害動物を効果的に撃退できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る有害動物の撃退装置の形態例を示す内部構造を透視して記載した斜視図である。
【図2】図1の形態例の外観を示す斜視図である。
【図3】図1の形態例において火薬をセットした状態を示す内部構造を透視して記載した斜視図である。
【図4】本発明に係る有害動物の撃退装置の作用効果を説明する説明図である。
【図5】本発明に係る有害動物の撃退装置の他の形態例を示す内部構造を透視して記載した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る有害動物の撃退装置の形態例を、添付図面(図1〜4)に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る有害動物の撃退装置は、号砲用の火薬10を打撃・爆裂させて生じる爆発音によって有害動物を撃退させるものである。なお、号砲用の火薬10とは、スタートピストルに利用されるものや、おもちゃの火薬ピストルに利用されるもの、或いはそれに類似するものが含まれる。
【0012】
11は基体であり、地面に突き刺して設置できるように下端部が突き刺し部11aとして設けられ、全体的には長尺に形成されている。この基体11は、対象となる有害動物が糸状材15に接触しやすい高さとなるように、その長さを適宜設定すればよい。例えば、たぬきのような小動物では35cm程度として、鹿のような比較的大きな動物では70cm程度とすればよい。
【0013】
本形態例の基体11は、断面L字状の長尺部材で設けられており、先端(突き刺し部11a)が尖った形状にカットされて形成されている。これによれば、地面に突き刺し易く、倒れにくく、しかも抜き易い利点があり、その設置と撤去を容易に行うことができる。また、形状がシンプルであり、製造コストを低減できると共に、筒状の外装部材の中に好適に挿入でき、以下に説明するような号砲用の火薬を打撃・爆裂させる機構を好適に内蔵できる。
【0014】
20はプッシュロッドであり、一端部21によって火薬10を打撃するように基体11に沿って軸方向へ移動する棒状に設けられている。
本形態例のプッシュロッド20では、現場に設置された状態で、一端部21が上端部となるように設けられ、下端部にセットレバー22が軸方向に直交する方向に延設された形状に設けられている。このセットレバー22を図3に示すように下方へ下げることで、後述する被係止部25に係止部61が係止されて、プッシュロッド20がセットされる。
【0015】
30はガイド部であり、プッシュロッド20を軸方向へ移動可能に案内するように基体11に設けられている。
本形態例のガイド部30では、コの字状の板部材の両端板面33、33にプッシュロッド20が挿通されて案内される貫通ガイド孔31、31が設けられている。このガイド部30は、基体11にスポット溶接などで容易且つ精度よく固定でき、安価に製造できる。なお、ガイド部30の形態はこれに限定されず、図5に示す形態のように基体11に形成されたスリットに板材を差し込んで固定した板面に貫通ガイド孔31を設けて形成してもよいし、基体11を構成する板部を折り曲げて形成した板面に貫通ガイド孔31を設けて形成してもよい。
【0016】
40は打撃受部であり、基体11に設けられて火薬10が装填されると共にプッシュロッド20による火薬10への打撃を受けるように設けられている。
本形態例では、打撃受部40が基体11の上端部に設けられ、プッシュロッド20によって下方から火薬10を打撃するように設けられている。これによれば、水の浸入を防止する構造にしやすい利点がある。なお、打撃受部40を本形態例より基体11の下方側に設け、上方から火薬10を重力の力を加えて打撃するように設けても火薬を好適に打撃・爆裂することができるなど、火薬10を打撃する方向については使用条件等によって適切に設定すればよい。
【0017】
また、本形態例の打撃受部40は、上部の被打撃部分41と、その被打撃部分の下方にプッシュロッド20の一端部21の通過可能な透孔42aが設けられていると共に火薬10が保持されるように設けられた受棚部分42とを備える。上部の被打撃部分41は、基体11を構成する板材を折り曲げて形成されている。また、受棚部分42は、L字に折り曲げられた部品がスポット溶接などで固定されて設けられている。
これによれば、火薬10を好適にセットして適切に爆裂させることができる。
また、上部の被打撃部分41の中央には下方に突起した凸部41aが設けられている。この凸部41aによれば、プッシュロッド20による打撃の力を集中して受けることができ、火薬10を適切に爆裂させることができる形状になっている。
【0018】
50はスプリングであり、プッシュロッド20に付勢力を与えて打撃受部40へ打ち付けるように配されている。本形態例のスプリング50は、つる巻きバネであり、その内部でプッシュロッド20が軸方向(設置された状態では上下方向)に移動可能に挿通された状態に配されている。また、本形態例のスプリング50は、上端がプッシュロッド20にCリングで固定されたワッシャー状の受部23に受けられ、下端が基体11に固定されているガイド部30と兼用の受部(端板面33)に受けられて、基体11の長尺方向に沿って伸縮できるように配置されている。これによれば、長尺のスペース内に火薬10を打撃する機構をコンパクト且つ好適に収納することができる。
なお、つる巻きバネに限定されず、例えばトーションバネなどの他の弾性手段を利用することも可能である。
【0019】
60はリリースレバーであり、一方側に、プッシュロッド20に設けられた被係止部25に係止したときにはスプリング50を圧縮した状態でそのプッシュロッド20を保持し、被係止部25への係止が解除されたときにはスプリング50によるプッシュロッド20の打撃動作を許容するように係止部61が設けられ、中途部62で回動可能に基体11に軸着されていると共に、他方側に有害動物が引っ掛かるように配される糸状材の装着部63が設けられている。
なお、装着部63では、糸状材15を結び付けるなどして装着できればよく、図に示すように孔を設けてもよいし、フック状などに設けてもよい。
【0020】
本形態例のプッシュロッド20に設けられた被係止部25は、プッシュロッド20の中途部に溝状に形成されている。また、本形態例のリリースレバー60は、略L字状に形成されている。これらの形態はこれに限定されるものではなく、例えば被係止部25は、プッシュロッド20の側周面から突起する形状など、係止関係が成立する形態であればよい。しかし、本形態例のように被係止部25が溝状に形成されていることで、リリースレバー60の係止部61の回動範囲を本体のより中心付近に限定でき、そのリリースレバー60をコンパクトに内蔵することができる。
【0021】
70はセットスプリングであり(図1又は図3に点線で記載)、リリースレバー60を係止部61が被係止部25に係止する方向へ付勢するように配されると共に糸状材15が引っ張られた際にはリリースレバー60の回動を許容して係止部61の被係止部25への係止を解除できるように設けられている。
本形態例のセットスプリング70は、トーションバネによって構成されており、一端が基体11に係止・固定され、他端がリリースレバー60の他方側に係止・固定されている。これによれば、セットスプリング70が、コンパクト且つ適切に収納されている。
なお、セットスプリングは、これに限定されず、他の弾性手段を用いてもよい。
【0022】
以上の構成によれば、リリースレバー60が中途部62を中心に回動されることによって作動する好適な引き金機構に設けられている。これによれば、糸状材15に比較的弱い力が作用して引っ張られた場合でも、敏感且つ確実に作動して、プッシュロッド20によって火薬を打撃して爆発させることができる。このため、有害動物の撃退について極めて効果的に利用できる。
【0023】
80は外装部材であり、少なくとも火薬10が装填される部分を覆うように設けられている。これによれば、火薬10の爆発する部分に水が浸入することを防止できる。
本形態例の外装部材80は、外装筒81とキャップ82によって構成されている。そして、外装筒81には、火薬10を装填用の開口81aと、爆発音が透過するための多数の透孔81bと、リリースレバー60の動作のためのスリット開口81cと、セットレバー22の動作のためのスリット開口81dとが設けられている。このような外装部材80によれば、内部機構を適切に保護することができる。
【0024】
また、本形態例では、火薬10が、打撃受部40に対して火薬皿90に載せられて受棚部分42に受けられて保持された状態で装填され、火薬皿90を介してプッシュロッド20によって打撃・爆裂されるように設けられている。
これによれば、火薬10を、カートリッジ方式で容易に装填でき、簡単に使用することができる。なお、火薬10は、防湿加工が施されたものを利用するとよい。
【0025】
以上に説明した有害動物の撃退装置によれば、既に記載した効果の他に、以下の効果を奏することができる。
本発明にかかる有害動物の撃退装置では電源や動力の必要がないため、設置場所が限定されず、汎用性に富むものになっている。
また、恒常的な威嚇音を発生させるものと異なり、鳥獣に慣れが生じないため効果的であり、騒音の問題も少ないと共に、動物の動作に起因して威嚇音を発生できることから、鳥獣に限らず泥棒の侵入に対する防犯用としても効果があるものと考えられる。
さらに、火薬の爆発するエネルギーを利用して唐辛子粉などを飛散させることが可能であり、有害動物をより効果的に撃退できる。
【0026】
次に図5に基づいて、有害動物の撃退装置の他の形態例について簡単に説明する。
本形態例は、以上に説明した形態例と同一の機能を有するものであるが、被打撃部分41、受棚部分42、ガイド部30を構成する両端板面33、33のいずれの部分も、基体11に形成されたスリットに板材を差し込んで固定することで形成されている。これによっても、有害動物の撃退装置を合理的に製造することができる。
【0027】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0028】
10 火薬
11 基体
11a 先端
15 糸状材
20 プッシュロッド
21 一端部
22 セットレバー
25 被係止部
30 ガイド部
31 貫通ガイド孔
40 打撃受部
41 被打撃部分
42 受棚部分
42a 透孔
50 スプリング
60 リリースレバー
61 係止部
62 中途部
63 糸状材の装着部
70 セットスプリング
80 外装部材
81 外装筒
82 キャップ
90 火薬皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
号砲用の火薬を打撃・爆裂させて生じる爆発音によって有害動物を撃退させる有害動物の撃退装置であって、
地面に突き刺して設置できるように下端部が突き刺し部として設けられている長尺の基体と、
一端部によって前記火薬を打撃するように軸方向へ移動する棒状のプッシュロッドと、
該プッシュロッドを軸方向へ移動可能に案内するように前記基体に設けられたガイド部と、
前記基体に設けられて前記火薬が装填されると共に前記プッシュロッドによる前記火薬への打撃を受ける打撃受部と、
前記プッシュロッドに付勢力を与えて前記打撃受部へ打ち付けるように配されたスプリングと、
一方側に、前記プッシュロッドに設けられた被係止部に係止したときには前記スプリングを圧縮した状態で該プッシュロッドを保持し、前記被係止部への係止が解除されたときには前記スプリングによる前記プッシュロッドの打撃動作を許容するように係止部が設けられ、中途部で回動可能に前記基体に軸着されていると共に、他方側に有害動物が引っ掛かるように配される糸状材の装着部が設けられているリリースレバーと、
該リリースレバーを前記係止部が前記被係止部に係止する方向へ付勢するように配されると共に前記糸状材が引っ張られた際には該リリースレバーの回動を許容して前記係止部の前記被係止部への係止を解除できるように設けられたセットスプリングと、
少なくとも前記火薬が装填される部分を覆う外装部材とを具備することを特徴とする有害動物の撃退装置。
【請求項2】
前記打撃受部が前記基体の上端部に設けられ、前記プッシュロッドによって下方から前記火薬を打撃することを特徴とする請求項1記載の有害動物の撃退装置。
【請求項3】
前記打撃受部が、上部の被打撃部分と、該被打撃部分の下方に前記プッシュロッドの一端部の通過可能な透孔が設けられていると共に前記火薬が保持されるように設けられた受棚部分とを備えることを特徴とする請求項2記載の有害動物の撃退装置。
【請求項4】
前記火薬が、前記打撃受部に対して火薬皿に載せられて前記受棚部分に受けられて保持された状態で装填され、前記火薬皿を介して前記プッシュロッドによって打撃・爆裂されることを特徴とする請求項3記載の有害動物の撃退装置。
【請求項5】
前記基体が断面L字状の長尺部材で設けられて先端が尖った形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有害動物の撃退装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−217620(P2011−217620A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87138(P2010−87138)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(510094805)
【Fターム(参考)】