説明

有害成分の固定化薬剤および固定化方法

【課題】重金属や砒素等の有害成分を含有する水溶液および/または泥状物を固定化した後の固定化処理物が酸性雨等の酸性液体に接触しても有害成分が簡単に溶出しないようにすることが可能な有害成分の固定化薬剤、およびこの固定化薬剤を用いた重金属や砒素等の有害成分を含有する水溶液および/または泥状物の安価な固定化方法を提供すること。
【解決手段】本発明の固定化薬剤は、シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなり、また有害成分の固定化方法は、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に、有害成分に応じた前処理を行った後、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物のpHが4〜12の範囲になるように、シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなる有害成分の固定化薬剤を添加すること、またはこの固定化薬剤を添加し、次いでpH調整剤を添加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害成分の固定化薬剤および固定化方法に関するものである。詳しくは、排水、廃液等の水溶液および/または汚泥、ケーキ等の泥状物に含有する重金属や砒素等の有害成分を固定化する薬剤、およびこの固定化薬剤を用いて有害成分を含有する水溶液および/または泥状物中の有害成分を固定化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砒素等を含有する廃棄物の固定化方法として、鉄塩またはアルミニウム塩に水酸化カルシウムを添加して行う方法(例えば、非特許文献1参照。)、または脱アルカリシリカを添加して行う方法(例えば、特許文献1参照。)のような化学処理による方法が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの化学処理法では、固定化処理物中への有害成分の固定化が不十分であるため、固定化処理物が酸性雨等に接触してpHが低下したり、酸化還元作用を受けて元素の価数が変化したりすると、一旦は固定化された有害成分が雨水や地下水に溶出するため、重金属や砒素等の有害成分を含有する浸出水の漏出を完全に防止することは困難である。化学処理後の固定化処理物にセメントを添加して固化するセメント固化法は有害成分の溶出を防止する有力な方法であるが、化学処理と固化処理の二段処理であるためおよびセメント固化処理物の発生量が多いため、処理費が高くなるという欠点がある。
【0004】
また、アロフェンまたは火山灰と水酸化カルシウムとを原材料に用いた重金属の吸着作用を有する汚水の浄化材および浄化方法(例えば、特許文献2参照。)も知られている。
【0005】
しかし、吸着作用を有する浄化材のみでは、排水基準(平成16年5月環境省令第16号)を達成することが困難で、固定化処理物の管理が必要であった。
【非特許文献1】日本鉱業会誌 1973年 第89巻、11月号(第1020号)、101〜106頁
【特許文献1】特開2000−204542号公報
【特許文献2】特開平5−137905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、重金属や砒素等の有害成分を含有する水溶液および/または泥状物を固定化して得られる固定化処理物が、酸性雨等の酸性液体に接触しても有害成分が簡単に溶出しないようにすることが可能な有害成分の固定化薬剤、およびこの固定化薬剤を用いた重金属や砒素等の有害成分を含有する水溶液および/または泥状物中の有害成分を容易に固定化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の有害成分の固定化薬剤は、シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなることを特徴とし、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物中の有害成分の固定化方法は、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に、有害成分に応じた前処理を行った後、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物のpHが4〜12の範囲になるように、シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなる有害成分の固定化薬剤を添加すること、またはこの固定化薬剤を添加し、次いでpH調整剤を添加することを特徴とする。
なお、固定化とは、有害成分を捕捉し、有害成分の溶出を抑制することであり、これによって有害成分は無害化される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有害成分の固定化薬剤を使用して、重金属や砒素等の有害成分を含有する水溶液および/または泥状物を固定化して得られる固定化処理物は、酸性雨等の酸性液体に接触しても有害成分が簡単に溶出しない。本発明の有害成分の固定化薬剤を構成する材料は容易に安価に入手できる材料であり、取り扱いも容易で実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の重金属や砒素等の有害成分の固定化薬剤は、シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなる。
【0010】
固定化薬剤の構成成分の一つであるシリカ材料としては、火山灰などの火山噴出物、ガラスカレット、ガラス研磨スラッジ、シリカ質堆積物(けいそう土など)、粘土鉱物(ベントナイト、はくとう土など)、珪砂、石炭灰、シリカゲルおよびシリカヒュームなどが挙げられ、好ましくは火山噴出物、ガラスカレット、珪砂が使用される。これらは単独または組み合わせて使用される。
【0011】
このシリカ材料は、珪素(Si)成分の含有量がシリカ(SiO)換算で50〜99.9重量%、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは70〜85重量%のものである。ここで、シリカ換算の含有量とは、このシリカ材料中のSi成分の全てがSiO2を形成しているとしたときの当該シリカ材料中のSiO2の含有量を意味する。
また、その平均粒子径は、通常0.1〜400μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜20μmであり、その比表面積は、100〜5,000,000cm/g、好ましくは500〜500,000cm/g、より好ましくは1,000〜100,000cm/gである。0.1μm未満では取り扱い難くなり、また400μmを越えると反応性が低下し、好ましくない。
【0012】
このシリカ材料は、そのまま、乾燥および/または分級された加工品(市販品)、更には高温加熱発泡された加工品(市販品)等を用いることができる。
【0013】
固定化薬剤の構成成分のもう一つは、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物である。
マグネシウム化合物としては、マグネシウムの水酸化物、酸化物または炭酸塩等であり、具体的には、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)等であり、好ましくは水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが使用される。これらは単独または組み合わせて使用される。
マグネシウム化合物の平均粒子径は、通常0.1〜200μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜20μmである。0.1μm未満では取り扱い難くなり、また200μmを越えると反応性が低下し、好ましくない。
【0014】
ストロンチウム化合物としては、ストロンチウムの水酸化物、酸化物または炭酸塩等であり、具体的には、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、酸化ストロンチウム(SrO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)等であり、好ましくは炭酸ストロンチウムが使用される。これらは単独または組み合わせて使用される。
ストロンチウム化合物の平均粒子径は、通常0.1〜200μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜20μmである。0.1μm未満では取り扱い難くなり、また200μmを越えると反応性が低下し、好ましくない。
【0015】
固定化薬剤がシリカ材料とマグネシウム化合物とからなる場合、シリカ材料とマグネシウム化合物の割合を、シリカ材料中の珪素成分をシリカ換算した重量とマグネシウム化合物中に含有されるマグネシウム原子の重量との比(SiO:Mg)で表すと、通常100:5〜1,000であり、好ましくは100:10〜800、より好ましくは100:15〜400、更に好ましくは100:20〜200である。
固定化薬剤がシリカ材料とストロンチウム化合物とからなる場合、シリカ材料とストロンチウム化合物の割合を、シリカ材料中の珪素成分をシリカ換算した重量とストロンチウム化合物中に含有されるストロンチウム原子の重量との比(SiO:Sr)で表すと、通常100:20〜1,500であり、好ましくは100:30〜1,000、より好ましくは100:40〜500、更に好ましくは100:50〜200である。
これらの組成範囲から外れると、固定化性能が低下し、好ましくない。
【0016】
該固定化薬剤においては、カルシウム化合物は固定化性能を低下させるので、固定化薬剤、それを構成するシリカ材料、マグネシウム化合物、ストロンチウム化合物のそれぞれについて、カルシウム化合物の含有量がCaO換算で好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下のものを使用するのが好ましい。
【0017】
この固定化薬剤は、粉末状または水スラリー状で使用される。取り扱い易さから、好ましくは水スラリー状で使用される。
水スラリー中の固定化薬剤含有量は、添加とpH調整のし易さから、通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%とする。
この水スラリーは、通常、アルカリ性であり、例えば、50重量%の火山灰(丸中白土(株)製、シルトF)と50重量%の水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)とからなる固定化薬剤(SiO:Mg=100:57)を20重量%含有する水スラリーのpHは9〜11である。
【0018】
本発明の固定化方法は、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に、有害成分に応じた前処理を行った後、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物のpHが4〜12の範囲になるように、シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなる有害成分の固定化薬剤を添加すること、またはこの固定化薬剤を添加し、次いでpH調整剤を添加することを特徴とし、このことによって水溶液および/または泥状物中の有害成分を容易に固定化するものである。
【0019】
本発明の処理対象とする水溶液としては、有害成分を含有する排水、廃液、地下水、河川水等が挙げられ、例えば、工場排水や鉱山廃液、土壌を洗浄した排水がある。また泥状物としては、有害成分を含有する廃液処理によって発生したケーキ、建設汚泥、下水汚泥、鉱さい、燃殻、土壌等が挙げられる。
有害成分としては、砒素、水銀、クロム、セレン、カドミウム、鉛、アンチモン、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、スズ、燐などの元素またはこれらの化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の方法において、重金属や砒素等の有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に前記固定化薬剤を添加する前に、有害成分を固定化し易い形態にしたり、より毒性の少ない形態にして取り扱いを容易にしたりするために、有害成分に応じた前処理を行う。
前処理としては、有害成分に応じて、酸化剤、還元剤、共沈剤からなる群より選ばれた少なくとも一種の薬剤を、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に添加し、pHを1〜4に調整する方法などが挙げられる。
【0021】
前記酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸塩、第二鉄塩、第二銅塩、マンガン化合物等が挙げられ、なかでも次亜塩素酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二銅、塩化第二銅、二酸化マンガンが好ましい。酸化剤の添加量は、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物中に含有される還元態の有害成分を酸化態にするのに必要な化学量論量以上であり、例えば、第二鉄塩を使用して亜砒酸を砒酸塩にする時、第二鉄塩の量は、亜砒酸を基準に2モル倍以上である。
通常、水溶液および/または泥状物中の有害成分が、第一鉄塩のような溶解度の高いもの、亜砒酸塩のような共沈し難いもの、または亜砒酸塩のような有害ガスを発生し易いものであるとき、前記の酸化剤を添加し、これらを酸化することによって、各々、第二鉄塩のような難溶性のもの、砒酸塩のような共沈し易いもの、または有害ガスを発生し難いものにすることができる。
【0022】
前記還元剤としては、例えば、チオ硫酸塩、第一鉄塩、第一銅塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、硫黄化合物等が挙げられ、なかでもチオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一銅、塩化第一銅、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫化鉄が好ましい。還元剤の添加量は、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物中に含有される酸化態の有害成分を還元態にするのに必要な化学量論量以上であり、例えば、第一鉄塩を使用して6価クロムを3価クロムにする時、第一鉄塩の量は、6価クロムを基準に3モル倍以上である。
通常、水溶液および/または泥状物中の有害成分が、6価クロムや6価セレンのような溶解度の高いものであるとき、前記の還元剤を添加し、これらを還元することによって、3価クロムや4価セレンのような難溶性のものにすることができる。
【0023】
前記共沈剤としては、例えば、第二鉄塩、アルミニウム塩、第二銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、金属リン酸塩等が挙げられ、なかでも硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、第一リン酸塩(例えば、第一リン酸カルシウム、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第一リン酸マグネシウムなど)が好ましい。共沈剤の添加量は、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物中に含有される有害成分を基準に、通常2モル倍以上である。
【0024】
前記前処理においては、酸化剤、還元剤、共沈剤からなる群より選ばれた少なくとも一種の薬剤を、有害成分に応じて、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に添加し、pHを1〜4の範囲に調整する。
使用する薬剤またはその量によって、薬剤を添加した水溶液および/または泥状物のpHは1〜4の範囲になる場合もあるし、範囲外になる場合もある。pHを1〜4の範囲内にするため、または範囲内でpHを変更する場合に、酸またはアルカリであるpH調整剤を添加してpHを調整する。すなわち、前処理において、必要によりpH調整剤を添加してpHを調整する。
【0025】
この場合のpH調整剤としては、硫酸、塩酸、燐酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよび硫酸鉄等の酸性硫酸塩等が挙げられる。これらは水溶液または水スラリーで添加される。
また、酸化カルシウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウム等のカルシウム化合物は、この場合、固定化性能を低下させるので好ましくない。
【0026】
前処理を行った後、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に、水溶液および/または泥状物のpHが4〜12の範囲になるように前記固定化薬剤を添加し、または前記固定化薬剤を添加し、次いでpH調整剤を添加し、有害成分を固定化する。
前処理を行った後、固定化薬剤を添加する際に、固定化薬剤の構成成分であるシリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とを別々に添加しても良い。
【0027】
前記したとおり、本発明の固定化薬剤は、通常、アルカリ性を呈しており、この固定化薬剤を、前処理して得た水溶液および/または泥状物に、pHが4〜12の範囲になるように添加する。本発明の固定化薬剤を添加した後に目的とするpHの範囲にならない時には、固定化薬剤を添加し、次いでpH調整剤を添加する。
pHが4〜12の範囲内で有害成分のそれぞれにとって最適なpH範囲が存在し、そのpHとなるように添加するのが好ましい。例えば、下記するように、有害成分が砒素の場合にはpH5〜9、有害成分が6価クロムの場合にはpH7〜9とするのが好ましい。
また、pHが最適pHから外れたり、pH4〜12の範囲内でpHを変更したりする場合等、必要によりpH調整剤を添加して行う。
pH調整剤としては、硫酸、塩酸、燐酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸鉄等の酸性硫酸塩等が挙げられる。これらは水溶液または水スラリーで添加される。
固定化薬剤の添加で目的とするpHの範囲にならない時には、pH調整剤として、通常、上記pH調整剤のうちのアルカリ化合物である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムが添加される。
pH調整剤として、酸化カルシウム、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムを使用する場合は、前記固定化薬剤を添加した後に添加する。固定化薬剤の添加よりも前に添加することは、固定化性能が低下するので好ましくない。
【0028】
前処理と固定化の具体的な例について説明する。
(1)砒素含有廃液の場合
前処理として砒素含有廃液に硫酸第二鉄水溶液を添加してpHを1.5〜2.5にし、次にこの廃液のpHが5〜9になるように、前記固定化薬剤を添加する。このことにより、有害成分である砒素と酸化/共沈剤である硫酸第二鉄と固定化薬剤とが反応して、水に不溶性のもの(シリカ化合物など)が生成し、有害成分が固定化される。
(2)6価クロム含有廃液の場合
前処理として6価クロム含有廃液に硫酸第一鉄と硫酸第二鉄の混合水溶液を添加し、さらに硫酸を添加してpHを2〜2.5にし、次にこの廃液のpHが7〜9になるように前記固定化薬剤を添加する。このことにより、有害成分である6価クロムと還元/共沈剤である混合硫酸鉄(硫酸第一鉄と硫酸第二鉄)と固定化薬剤とが反応して、水に不溶性のもの(シリカ化合物など)が生成し、有害成分が固定化される。
(3)鉛含有廃液の場合
前処理として鉛含有廃液に硫酸第一鉄と硫酸第二鉄の混合水溶液を添加し、さらに第一リン酸マグネシウムの水スラリーを添加する。必要に応じて硫酸を添加し、pHを2〜3にする。次にこの廃液のpHが5〜7になるように前記固定化薬剤を添加し、次いでこの廃液のpHが9〜10になるように水酸化カルシウムを添加する。このことにより、有害成分である鉛と還元/共沈剤である混合硫酸鉄(硫酸第一鉄と硫酸第二鉄)と共沈剤である第一リン酸マグネシウムと固定化薬剤とが反応して、水に不溶性のもの(シリカ化合物など)が生成し、有害成分が固定化される。
【0029】
本発明の固定化方法では、シアン化水素(HCN)、アルシン(AsH)等の発生が予想される場合、前処理の際に酸化還元電位を調整することによって、これらのガス等の発生を抑制するのが好ましい。
【0030】
具体的には、例えば下記の(1)〜(6)の方法が挙げられる。
(1)シアン化合物と砒素を含有する水溶液および/または泥状物の場合、水溶液および/または泥状物に、pH10以上の条件下で次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の次亜塩素酸塩の水溶液を酸化還元電位が300〜350mVになるまで添加し、0〜10分間保持し、次いでpHを7〜8に調整し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の次亜塩素酸塩の水溶液を酸化還元電位が600〜650mVになるまで添加し、0〜30分間保持し、シアン化合物を事前に酸化分解し有害なシアン化水素の発生を抑制した後、硫酸第二鉄水溶液等の第二鉄塩の水溶液を、Fe3+/Asモル比が2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上となる量を添加し、砒素の固定化処理中の有害なアルシンの発生を抑制する。
【0031】
(2)pH10において酸化還元電位(以下、換算酸化還元電位という)が300mV未満で、砒素を含有する水溶液および/または泥状物の場合、水溶液および/または泥状物に、アルカリ条件下で次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の次亜塩素酸塩の水溶液を換算酸化還元電位が300〜500mVになるまで添加した後、硫酸第二鉄水溶液等の第二鉄塩の水溶液を、Fe3+/Asモル比が2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上となる量を添加し、砒素の固定化処理中の有害なアルシンの発生を抑制する。
【0032】
(3)換算酸化還元電位が300〜800mVで、砒素を含有する水溶液および/または泥状物の場合、水溶液および/または泥状物に、硫酸第二鉄水溶液等の第二鉄塩の水溶液を、Fe3+/Asモル比が2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上となる量を添加し、砒素の固定化処理中の有害なアルシンの発生を抑制する。なお、この場合、既にアルシンが発生し難い状態になっているので、敢えて次亜塩素酸塩の水溶液等を添加して酸化還元電位を調整しなくても良い。
【0033】
(4)換算酸化還元電位が800mVを越え、砒素を含有する水溶液および/または泥状物の場合、水溶液および/または泥状物に、アルカリ条件下でチオ硫酸ナトリウム水溶液等のチオ硫酸塩の水溶液を換算酸化還元電位が500〜800mVになるまで添加した後、硫酸第二鉄水溶液等の第二鉄塩の水溶液を、Fe3+/Asモル比が2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上となる量を添加し、砒素の固定化処理中の有害なアルシンの発生を抑制する。なお、このように換算酸化還元電位が800mVを越える場合、水溶液および/または泥状物中に次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の次亜塩素酸塩が含有している可能性がある為、同時に固定化処理中の有害な塩素の発生を抑制している。
【0034】
(5)換算酸化還元電位が50mV未満で、セレンを含有する水溶液および/または泥状物の場合、水溶液および/または泥状物に、アルカリ条件下で硫酸第ニ鉄水溶液等の第ニ鉄塩の水溶液を、Fe3+/Seモル比が4倍以上となる量、かつ換算酸化還元電位が50〜250mVになるまで添加し、セレンの固定化処理中の有害なセレン化水素の発生を抑制する。
【0035】
(6)換算酸化還元電位が250mVを越え、セレンを含有する水溶液および/または泥状物の場合、水溶液および/または泥状物に、アルカリ条件下で硫酸第一鉄水溶液等の第一鉄塩の水溶液を、Fe2+/Seモル比が2倍以上となる量、かつ換算酸化還元電位が50〜250mVになるまで添加し、セレンの固定化処理中の有害なセレン化水素の発生を抑制する。
【0036】
本発明の固定化方法は、キレート剤、吸着剤(活性アルミナ、活性炭など)または凝集剤等を用いる処理方法を施した水溶液および/または泥状物に適用しても良いし、また本発明の固定化方法を施した水溶液および/または泥状物に対してキレート剤、吸着剤(活性アルミナ、活性炭など)または凝集剤等を用いる処理方法を適用しても良い。
【0037】
本発明では、有害ガスが発生する可能性があることから、固定化に使用する反応槽、攪拌装置、送液装置、水溶液および/または泥状物と接する部分等は、ガラス(強化ガラス、耐熱ガラスなど)、ガラス繊維、繊維強化プラスチック、セラミック、または耐酸モルタル等の材料からなるものが好ましい。また同様の理由から、金属粉粒子を含有する水溶液を処理する場合、事前に水溶液中の金属微粒子を濾過または沈降分離等により除去した後、処理することが好ましい。
【0038】
本発明では、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物を固定化して得られる固定化処理物を放置熟成することによって、有害成分の溶出抑制効果が高くなる。水溶液処理の場合、固定化後の固定化処理物と上澄み液を固液分離し熟成することが好ましい。熟成時間は長いほど溶出抑制効果が強化されるため、固定化処理物を20時間以上放置、熟成することが好ましい。熟成は、例えば、静置条件下、0〜40℃の空気中で行われる。
また熟成が完了するまでは、固定化処理物を酸性液体に接触させるのは好ましくない。
【0039】
本発明の前記固定化薬剤に代えて、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いる固定化では、有害成分の固定化が不十分であるため、固定化後の固定化処理物が酸性雨等に接触してpHが低下したりすると、一旦は固定化された有害成分が液中に溶出する。この場合、液中に溶出する有害成分が排水基準(例えば、砒素の場合、0.1mg/l以下)を達成することができない。従って、固定化処理物を埋立て処分した場合、浸出水の恒久対策が必要となる。
溶出の有無は、固定化処理物を酸性水溶液を用いて洗浄し、液中に溶出する有害成分(砒素など)を定量すること(酸洗浄溶出試験)により調べることができる。
例えば、砒素の排水基準は0.1mg/l以下であるが、固定化条件の変動、固定化処理物の処分環境の変動等もあるので、実用的には、この酸洗浄溶出試験で約0.05mg/l以下を奏する固定化方法が好ましく採用される。
【0040】
本発明においては、有害成分の固定化薬剤の原料として、日本全国に分布する火山灰などの火山噴出物および粘土鉱物などの有効利用や、ガラスカレットおよびガラス研磨スラッジなどの廃棄物利用を図ることができ、マグネシウム化合物を含め、容易に安価に入手できる材料を用いて、重金属や砒素等の有害成分を含有する水溶液および/または泥状物中の有害成分を容易に固定化することができ、固定化処理物が酸性雨等の酸性液体と接触しても有害成分の漏洩を防止することが可能である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、成分濃度や物性の測定は次の方法で行った。
(1)砒素濃度:JIS K 0102 61.2水素化物発生原子吸光法 備考3に基づいて行った。
(2)鉛濃度:濃度が高い場合はJIS K 0102 54.2フレーム原子吸光法に基づき、濃度が低い場合はJIS K 0102 65.1.3電気加熱原子吸光法に基づいて行った。
(3)燐濃度:JIS K 0102 46.3.1またはJIS K 0102 46.3.3の前処理を行った後にJIS K 0102 46.1.1モリブデン青・アスコルビン酸還元吸光光度法に基づいて行った。
(4)平均粒子径:マイクロトラック粒度分布測定装置9320HRA(X−100)(日機装(株)製)を用いて求めた。
(5)比表面積:流動法BET一点法比表面積測定装置MONOSORB(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて求めた。
(6)結晶性:X線回折装置RAD−RB RU−200((株)リガク製)を用いて求めた。
(7)アルシン濃度:ガス検知器(新コスモス電機(株)製:商品名“XD−303AH”)を用いて測定した。
(8)pH:ハンディータイプpHメーター(堀場(株)製:商品名“D−22”、pH電極9621−10D付き)を用いて測定した。
(9)酸化還元電位:ポータブルORP計(東亜ディーケーケー(株)製:商品名“RM−20P”、複合センサーPST−2739C付き)を用いて測定し、水素電極基準値で表した。
【0042】
実施例1
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料として火山灰のシルトF(丸中白土(株)製)を用いた。
該シルトFは、Si、Al、Fe、Ca、Mg、KおよびNa成分のそれぞれを、SiOに換算して71.1重量%、Alに換算して12〜14重量%、Feに換算して1〜2重量%、CaOに換算して1.2重量%、MgOに換算して0.05〜0.12重量%、KOに換算して1.5〜3.5重量%、NaOに換算して1.8〜3.2重量%含有し、更に鉛を0.6ppm以下、砒素を0.05ppm以下、リンを20ppm以下、水分を2.2重量%含有し、平均粒子径が8.1μm、比表面積が169,000cm/gで非晶質のものである。
マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)を用いた。
該水酸化マグネシウムは、Mg原子を40.5重量%(Mg(OH)に換算すると97.1重量%)、Ca成分をCaOに換算して0.29重量%、水分を0.53重量%含有し、平均粒子径が4.2μmのものである。
該シルトF50重量部と、該水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%の火山灰と50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤A(SiO:Mg=100:57)を調製した。
【0043】
(砒素含有廃液の固定化)
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度430mg/l、pH9.98、酸化還元電位+408mV(換算酸化還元電位:+407mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が9.3倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.75であった。
【0044】
次に、前処理した砒素含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように前記固定化薬剤Aを添加した。具体的には、固定化薬剤A20gと水80gを混合して得られた水スラリーを96.0g(固定化薬剤Aとして19.20g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤A添加後の砒素含有廃液のpHは6.17であった。固定化薬剤A添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に93時間保持して熟成し、含水率40重量%の固定化処理物35gを得た。濾液の砒素濃度は0.01mg/l未満であった。
【0045】
(酸洗浄溶出試験1)
次に、得られた含水率40重量%の固定化処理物20gをフッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に入れ、次いでpH2.5に調整した塩酸溶液を固定化処理物の30倍量を加えてスラリー化した後、室温雰囲気で攪拌しながら、スラリーのpHが常に2.5〜2.6となるように0.5mol/l塩酸溶液でpH調整しながら、6時間攪拌した。次に、このスラリーを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙で濾過し、この濾液の砒素濃度を測定した。濾液の砒素濃度は0.02mg/lであった。
【0046】
(アルシン発生濃度)
上記の各工程におけるアルシン発生濃度を測定した。この結果を表1に示す。
また、このときの廃液のpHおよび酸化還元電位をあわせて表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例2
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料として火山灰の前記シルトF(丸中白土(株)製)を用いた。
ストロンチウム化合物として炭酸ストロンチウム(和光純薬工業(株)製、SrCO純度:95重量%以上)を用いた。
該炭酸ストロンチウムは、Sr原子を56.7重量%(SrCOに換算すると95.5重量%)、Ca成分をCaOに換算して0.09重量%、水分を0.1重量%含有し、平均粒子径が3.3μmのものである。
該シルトF50重量部と、該炭酸ストロンチウム50重量部を混合し、50重量%の火山灰と50重量%の炭酸ストロンチウムとからなる固定化薬剤B(SiO:Sr=100:80)を調製した。
【0049】
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに前記固定化薬剤Bを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度370mg/l、pH9.80、酸化還元電位+407mV(換算酸化還元電位:+395mV)の砒素含有廃液1Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.34)を用いて調製した41重量%水溶液を26.0g(Fe3+/Asモル比が10.8倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.81であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤B30gと水120gを混合して得られた水スラリーを134.3g(固定化薬剤Bとして26.86g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Bを添加後の砒素含有廃液のpHは5.97であった。固定化薬剤B添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約1Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に65時間保持して熟成し、含水率19重量%の固定化処理物43gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率19重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0050】
実施例3
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料としてガラスカレットを用いた。
該ガラスカレットは、Si成分をSiOに換算して67.2重量%、Ca成分をCaOに換算して9.8重量%、水分を1.1重量%含有し、平均粒子径が111μm、比表面積が3,900cm/gで非晶質のものである。
マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)を用いた。
該ガラスカレット50重量部と、該水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%のガラスカレットと50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤C(SiO:Mg=100:60)を調製した。
【0051】
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに前記固定化薬剤Cを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度380mg/l、pH9.95、酸化還元電位+375mV(換算酸化還元電位:+372mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が10.5倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.82であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤C30gと水120gを混合して得られた水スラリーを93.4g(固定化薬剤Cとして18.68g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Cを添加後の砒素含有廃液のpHは6.03であった。固定化薬剤C添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に94時間保持して熟成し、含水率13重量%の固定化処理物25gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率13重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0052】
実施例4
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料として、けいそう土(和光純薬工業(株)製)を用いた。
該けいそう土は、Si成分をSiOに換算して71.9重量%、Ca成分をCaOに換算して1.0重量%、水分を5.2重量%含有し、平均粒子径が14.7μm、比表面積が400,000cm/gで非晶質のものである。
マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)を用いた。
該けいそう土50重量部と、該水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%のけいそう土と50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤D(SiO:Mg=100:56)を調製した。
【0053】
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに前記固定化薬剤Dを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度450mg/l、pH10.02、酸化還元電位+399mV(換算酸化還元電位:+400mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が8.9倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.80であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤D30gと水120gを混合して得られた水スラリーを92.5g(固定化薬剤Dとして18.50g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Dを添加後の砒素含有廃液のpHは6.23であった。固定化薬剤D添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に89時間保持して熟成し、含水率34重量%の固定化処理物32gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率34重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0054】
実施例5
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料としてベントナイト(和光純薬工業(株)製)を用いた。
該ベントナイトは、Si成分をSiOに換算して59.5重量%、Ca成分をCaOに換算して2.9重量%、水分を6.7重量%含有し、平均粒子径が7.6μm、比表面積が358,000cm/gで結晶質のものである。
マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)を用いた。
該ベントナイト50重量部と、該水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%のベントナイトと50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤E(SiO:Mg=100:68)を調製した。
【0055】
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに前記固定化薬剤Eを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度380mg/l、pH9.63、酸化還元電位+414mV(換算酸化還元電位:+392mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が10.5倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.80であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤E30gと水120gを混合して得られた水スラリーを95.1g(固定化薬剤Eとして19.02g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Eを添加後の砒素含有廃液のpHは6.33であった。固定化薬剤E添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に93時間保持して熟成し、含水率43重量%の固定化処理物37gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率43重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0056】
実施例6
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料として、はくとう土(和光純薬工業(株)製)を用いた。
該はくとう土は、Si成分をSiOに換算して76.2重量%、Ca成分をCaOに換算して0.06重量%、水分を1.7重量%含有し、平均粒子径が4.4μm、比表面積が76,000cm/gで結晶質のものである。
マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)を用いた。
該はくとう土50重量部と、該水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%のはくとう土と50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤F(SiO:Mg=100:53)を調製した。
【0057】
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに前記固定化薬剤Fを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度450mg/l、pH9.84、酸化還元電位+434mV(換算酸化還元電位:+425mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が8.9倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.83であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤F30gと水120gを混合して得られた水スラリーを92.3g(固定化薬剤Fとして18.46g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Fを添加後の砒素含有廃液のpHは6.13であった。固定化薬剤F添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に89時間保持して熟成し、含水率42重量%の固定化処理物37gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率42重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0058】
実施例7
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料として珪砂(オーストラリア産)を用いた。
該珪砂は、Si成分をSiOに換算して98.4重量%、Ca成分をCaOに換算して0.01重量%未満、水分を0.01重量%未満含有し、平均粒子径が334μm、比表面積が400cm/gで結晶質のものである。
マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)を用いた。
該珪砂50重量部と、該水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%の珪砂と50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤G(SiO:Mg=100:41)を調製した。
【0059】
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに前記固定化薬剤Gを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度380mg/l、pH9.88、酸化還元電位+338mV(換算酸化還元電位:+331mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が10.5倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.81であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤G30gと水120gを混合して得られた水スラリーを94.9g(固定化薬剤Gとして18.98g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Gを添加後の砒素含有廃液のpHは6.01であった。固定化薬剤G添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に69時間保持して熟成し、含水率26重量%の固定化処理物33gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率26重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0060】
実施例8
(有害成分の固定化薬剤の調製)
シリカ材料としてシリカゲル(ALDRICH製)を用いた。
該シリカゲルは、Si成分をSiOに換算して88.8重量%、Ca成分をCaOに換算して0.08重量%、水分を6.1重量%含有し、平均粒子径が59.9μm、比表面積が4,628,000cm/gで非晶質のものである。
マグネシウム化合物として水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)純度:95重量%以上)を用いた。
該シリカゲル50重量部と、該水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%のシリカゲルと50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤H(SiO:Mg=100:46)を調製した。
【0061】
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに前記固定化薬剤Hを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度450mg/l、pH9.72、酸化還元電位+425mV(換算酸化還元電位:+408mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が8.9倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.82であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤H30gと水120gを混合して得られた水スラリーを94.1g(固定化薬剤Hとして18.82g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Hを添加後の砒素含有廃液のpHは6.25であった。固定化薬剤H添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に89時間保持して熟成し、含水率49重量%の固定化処理物43gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率49重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0062】
比較例1
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Iとして水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、Ca(OH)2純度:95重量%以上)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度430mg/l、pH9.70、酸化還元電位+358mV(換算酸化還元電位:+340mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が9.3倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.83であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤I20gと水80gを混合して得られた水スラリーを57.7g(固定化薬剤Iとして11.54g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Iを添加後の砒素含有廃液のpHは6.04であった。固定化薬剤I添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に88時間保持して熟成し、含水率47重量%の固定化処理物51gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率47重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0063】
比較例2
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Jとして水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)2純度:95重量%以上)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度410mg/l、pH9.38、酸化還元電位+384mV(換算酸化還元電位:+347mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=5.98)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が9.8倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.83であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤J20gと水80gを混合して得られた水スラリーを49.8g(固定化薬剤Jとして9.96g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Jを添加後の砒素含有廃液のpHは6.50であった。固定化薬剤J添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に89時間保持して熟成し、含水率31重量%の固定化処理物18gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率31重量%の固定化処理物15gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0064】
比較例3
(有害成分の固定化薬剤の調製)
火山灰である前記シルトF50重量部と水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、Ca(OH)2純度:95%以上)50重量部を混合し、50重量%の火山灰と50重量%の水酸化カルシウムとからなる固定化薬剤Kを調製した。
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Kを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度360mg/l、pH9.90、酸化還元電位+426mV(換算酸化還元電位:+420mV)の砒素含有廃液1Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を26.1g(Fe3+/Asモル比が11.1倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.82であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤K20gと水80gを混合して得られた水スラリーを56.5g(固定化薬剤Kとして11.30g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Kを添加後の砒素含有廃液のpHは6.05であった。固定化薬剤K添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約1Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に89時間保持して熟成し、含水率44重量%の固定化処理物33gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率44重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0065】
比較例4
(有害成分の固定化薬剤の調製)
けい酸アルミニウム(和光純薬工業(株)製、Al・3SiO)50重量部と水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)2純度:95重量%以上)50重量部を混合し、50重量%のけい酸アルミニウムと50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤Lを調製した。
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Lを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度370mg/l、pH10.10、酸化還元電位+406mV(換算酸化還元電位:+412mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が10.8倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.81であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤L20gと水81gを混合して得られた水スラリーを98.0g(固定化薬剤Lとして19.37g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Lを添加後の砒素含有廃液のpHは6.00であった。固定化薬剤L添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に113時間保持して熟成し、含水率33重量%の固定化処理物29gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率33重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0066】
比較例5
(有害成分の固定化薬剤の調製)
けい酸カルシウム(和光純薬工業(株)製、CaO含有率:40〜48重量%、SiO含有率:51〜57重量%)50重量部と水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)2純度:95重量%以上)50重量部を混合し、50重量%のけい酸カルシウムと50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤Mを調製した。
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Mを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度360mg/l、pH9.70、酸化還元電位+430mV(換算酸化還元電位:+412mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が11.1倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.81であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤M20gと水80gを混合して得られた水スラリーを67.0g(固定化薬剤Mとして13.40g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Mを添加後の砒素含有廃液のpHは6.01であった。固定化薬剤M添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に89時間保持して熟成し、含水率35重量%の固定化処理物26gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率35重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0067】
比較例6
(有害成分の固定化薬剤の調製)
けい酸マグネシウム五水和物(和光純薬工業(株)製、MgSi・5HO)57.3重量部と水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)2純度:95重量%以上)42.7重量部を混合し、57.3重量%のけい酸マグネシウム五水和物と42.7重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤Nを調製した。
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Nを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度370mg/l、pH10.12、酸化還元電位+422mV(換算酸化還元電位:+429mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が10.8倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.81であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤N23.4gと水76.6gを混合して得られた水スラリーを71.1g(無水物に換算した固定化薬剤Nの量として14.19g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Nを添加後の砒素含有廃液のpHは6.00であった。固定化薬剤N添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に94時間保持して熟成し、含水率37重量%の固定化処理物27gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率37重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0068】
比較例7
(有害成分の固定化薬剤の調製)
けい酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、NaO含有率:17〜23重量%、SiO含有率:51〜61重量%、SiO/NaOモル比:2.0〜3.5)50重量部と水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、Mg(OH)2純度:95重量%以上)50重量部を混合し、50重量%のけい酸ナトリウムと50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤Oを調製した。
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Oを用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度370mg/l、pH10.03、酸化還元電位+422mV(換算酸化還元電位:+424mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が10.8倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.82であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤O20gと水80gを混合して得られた水スラリーを95.3g(固定化薬剤Oとして19.06g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Oを添加後の砒素含有廃液のpHは6.04であった。固定化薬剤O添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に118時間保持して熟成し、含水率51重量%の固定化処理物35gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率51重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0069】
比較例8
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Pとしてけい酸アルミニウム(和光純薬工業(株)製、Al・3SiO)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度500mg/l、pH9.93、酸化還元電位+422mV(換算酸化還元電位:+418mV)の砒素含有廃液1Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を26.0g(Fe3+/Asモル比が8.0倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.79であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤P200gと水500gを混合して得られた水スラリーを700g(固定化薬剤Pとして200g)添加し、更に30分間反応させた。固定化薬剤Pを添加後の砒素含有廃液のpHは3.61であった。固定化薬剤P添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約1Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に112時間保持して熟成し、含水率67重量%の固定化処理物452gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
この濾液の砒素濃度が、排水基準(0.1mg/l以下)を達成していないため、得られた固定化処理物の酸洗浄溶出試験1は行わなかった。
この場合、固定化薬剤PのpH調整機能が不十分であるため、固定化薬剤Pを200g添加しても、pHは3.6であった。これ以上、固定化薬剤Pを添加してもpHの調整は望めず、また、このときの熟成前の固定化処理物の量は590gであり、更に固定化処理物の発生量が多くなる。
【0070】
比較例9
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Qとしてけい酸カルシウム(和光純薬工業(株)製、CaO含有率:40〜48重量%、SiO含有率:51〜57重量%)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度500mg/l、pH9.96、酸化還元電位+435mV(換算酸化還元電位:+433mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が8.0倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.79であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤Q30gと水120gを混合して得られた水スラリーを125.3g(固定化薬剤Qとして25.06g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Qを添加後の砒素含有廃液のpHは6.02であった。固定化薬剤Q添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に117時間保持して熟成し、含水率37重量%の固定化処理物66gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率37重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0071】
比較例10
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Rとしてけい酸マグネシウム五水和物(和光純薬工業(株)製、MgSi・5HO)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度370mg/l、pH9.98、酸化還元電位+427mV(換算酸化還元電位:+426mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が10.8倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.78であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤R40gと水160gを混合して得られた水スラリーを187.4g(無水物に換算した固定化薬剤Rの量として27.87g)添加し、更に30分間反応させた。固定化薬剤Rを添加後の砒素含有廃液のpHは6.06であった。固定化薬剤R添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に93時間保持して熟成し、含水率39重量%の固定化処理物52gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
また、得られた含水率39重量%の固定化処理物20gについて、実施例1と同様に酸洗浄溶出試験1を行った。結果を表2に示す。
【0072】
比較例11
(砒素含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに、固定化薬剤Sとしてけい酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、NaO含有率:17〜23重量%、SiO含有率:51〜61重量%、SiO/NaOモル比:2.0〜3.5)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度500mg/l、pH9.86、酸化還元電位+448mV(換算酸化還元電位:+440mV)の砒素含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.19)を用いて調製した41重量%水溶液を52.1g(Fe3+/Asモル比が8.0倍となる量)添加し、30分間反応させて前処理を行った。反応後のpHは1.80であった。
次に、前処理した砒素有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤S60gと水240gを混合して得られた水スラリーを273.7g(固定化薬剤Sとして54.74g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤Sを添加後の砒素含有廃液のpHは6.03であった。
固定化薬剤S添加反応後の砒素含有廃液は、粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙では濾過することが非常に困難であり、一部得られた濾液の砒素濃度を表2に示す。
この濾液の砒素濃度が、砒素の排水基準(0.1mg/l以下)を達成していないため、得られた固定化処理物の酸洗浄溶出試験1は行わなかった。
【0073】
比較例12
(砒素含有廃液の固定化)
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度500mg/l、pH9.89、酸化還元電位+451mV(換算酸化還元電位:+445mV)の砒素含有廃液1Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、前処理を行わず、固定化薬剤A9gと水36gを混合して得られた水スラリーを45.0g(固定化薬剤Aとして9.00g)全量添加し、15分間反応させた。固定化薬剤Aの添加量は、砒素含有廃液1L当りの添加量が実施例1とほぼ同等量になるようにした。固定化薬剤Aを添加後の砒素含有廃液のpHは10.18であった。固定化薬剤A添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約1Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に117時間保持して熟成し、含水率2.3重量%の固定化処理物8.4gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
この濾液の砒素濃度が、排水基準(0.1mg/l以下)を達成していないため、得られた固定化処理物の酸洗浄溶出試験1は行わなかった。
この場合、前処理を行わなかったため、砒素の固定化が不十分である。
【0074】
比較例13
(砒素含有廃液の固定化)
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、As濃度500mg/l、pH9.46、酸化還元電位+447mV(換算酸化還元電位:+415mV)の砒素含有廃液1Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、前処理を行わず、固定化薬剤Tとして火山灰の前記シルトF(丸中白土(株)製)を4.5g添加し、15分間反応させた。固定化薬剤Tの添加量は、砒素含有廃液1L当りの添加量が実施例1の固定化薬剤A添加量中のシルトFとほぼ同等量になるようにした。固定化薬剤Tを添加後の砒素含有廃液のpHは9.20であった。固定化薬剤T添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約1Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に92時間保持して熟成し、含水率3.0重量%の固定化処理物0.9gを得た。このときの濾液の砒素濃度を表2に示す。
この濾液の砒素濃度が、排水基準(0.1mg/l以下)を達成していないため、得られた固定化処理物の酸洗浄溶出試験1は行わなかった。
この場合、前処理を行わなかったため、および固定化薬剤の組成が不十分であるため、砒素の固定化が不十分である。
【0075】
【表2】

【0076】
実施例9
(有害成分の固定化薬剤の調製)
実施例1と同様に、前記シルトF50重量部と、前記水酸化マグネシウム50重量部を混合し、50重量%の火山灰と50重量%の水酸化マグネシウムとからなる固定化薬剤A(SiO:Mg=100:57)を調製した。
【0077】
(鉛含有廃液の固定化)
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、Pb濃度370mg/l、pH5.25、酸化還元電位+577mV(換算酸化還元電位:+297mV)の鉛含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液4.7gと硫酸第一鉄七水和物(和光純薬工業(株)製、FeSO・7HO純度:99重量%以上)を用いて調製した5重量%水溶液29.3gとを混合して得た混合硫酸鉄水溶液を34g(Fe3+/Fe2+モル比が1、且つFe/Pbモル比が5.4倍となる量)添加し、30分間反応させ前処理1を行った。反応後のpHは2.59であった。次に、リン酸二水素マグネシウム(シグマ アルドリッチジャパン(株)製)を用いて調製した10重量%水スラリーを84g(PO3−/Pbモル比が21.6倍となる量)添加し、30分間反応させ前処理2を行った。反応後のpHは3.00であった。
【0078】
次に、前処理した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように前記固定化薬剤Aを添加した。具体的には、固定化薬剤A20gと水80gを混合して得られた水スラリーを24.8g(固定化薬剤Aとして4.96g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤A添加後の鉛含有廃液のpHは6.22であった。次に、固定化薬剤Aを添加した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約9になるようにpH調整剤として水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、Ca(OH)純度:95重量%以上)を添加しpH調整した。具体的には、水酸化カルシウム10gと水40gを混合して得られた水スラリーを14.8g(水酸化カルシウムとして2.96g)添加し、更に15分間反応させた。水酸化カルシウム添加後の鉛含有廃液のpHは9.02であった。水酸化カルシウム添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に90時間保持して熟成し、含水率53重量%の固定化処理物38gを得た。濾液の鉛濃度は0.01mg/l未満であった。又濾液の燐濃度は7.7mg/lであった。
【0079】
(酸洗浄溶出試験2)
次に、得られた含水率53重量%の固定化処理物20gをフッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に入れ、次いでpH3.0に調整した塩酸溶液を固定化処理物の30倍量を加えてスラリー化した後、室温雰囲気で攪拌しながら、スラリーのpHが常に3.0〜3.1となるように5mol/l塩酸溶液および0.5mol/l塩酸溶液でpH調整しながら、6時間攪拌した。次に、このスラリーを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙で濾過し、この濾液の鉛濃度を測定した。濾液の鉛濃度は0.01mg/l未満であった。
なお、以下の比較例では、5mol/l塩酸溶液および/または0.5mol/l塩酸溶液を用いてpH調整を行った。
【0080】
比較例14
(鉛含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Iとして水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、Ca(OH)2純度:95重量%以上)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、Pb濃度400mg/l、pH5.20、酸化還元電位+568mV(換算酸化還元電位:+285mV)の鉛含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液を18.8g(Fe3+/Pbモル比が10倍となる量)添加し、30分間反応させ前処理を行った。反応後のpHは2.14であった。
次に、前処理した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約9になるように固定化薬剤I10gと水40gを混合して得られた水スラリーを25.9g(固定化薬剤Iとして5.18g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤I添加後の鉛含有廃液のpHは9.00であった。固定化薬剤I添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に68時間保持して熟成し、含水率20重量%の固定化処理物7.1gを得た。このときの濾液の鉛濃度を表3に示す。
また、得られた含水率20重量%の固定化処理物5gについて、実施例9と同様に酸洗浄溶出試験2を行った。結果を表3に示す。
【0081】
比較例15
(鉛含有廃液の固定化)
固定化薬剤Aの代わりに固定化薬剤Iとして水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、Ca(OH)2純度:95重量%以上)を用いて行った。
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、Pb濃度400mg/l、pH5.19、酸化還元電位+592mV(換算酸化還元電位:+308mV)の鉛含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第一鉄七水和物(和光純薬工業(株)製、FeSO・7HO純度:99重量%以上)を用いて調製した5重量%水溶液を117.3g(Fe2+/Pbモル比が10倍となる量)添加し、30分間反応させ前処理を行った。反応後のpHは4.14であった。
次に、前処理した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約9になるように固定化薬剤I10gと水40gを混合して得られた水スラリーを12.2g(固定化薬剤Iとして2.44g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤I添加後の鉛含有廃液のpHは9.00であった。固定化薬剤I添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に93時間保持して熟成し、含水率7.2重量%の固定化処理物5.4gを得た。このときの濾液の鉛濃度を表3に示す。
この濾液の鉛濃度が、排水基準(0.1mg/l以下)を達成していないため、得られた固定化処理物の酸洗浄溶出試験2は行わなかった。
【0082】
比較例16
(鉛含有廃液の固定化)
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、Pb濃度370mg/l、pH5.23、酸化還元電位+566mV(換算酸化還元電位:+285mV)の鉛含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、硫酸第二鉄n水和物(和光純薬工業(株)製:n=6.22)を用いて調製した41重量%水溶液4.7gと硫酸第一鉄七水和物(和光純薬工業(株)製、FeSO・7HO純度:99重量%以上)を用いて調製した5重量%水溶液29.3gとを混合して得た混合硫酸鉄水溶液を34g(Fe3+/Fe2+モル比が1、且つFe/Pbモル比が5.4倍となる量)添加し、30分間反応させ前処理を行った。反応後のpHは2.58であった。
次に、前処理した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤A20gと水80gを混合して得られた水スラリーを18.9g(固定化薬剤Aとして3.78g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤A添加後の鉛含有廃液のpHは6.48であった。次に、固定化薬剤Aを添加した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約9になるように、pH調整剤として水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、Ca(OH)2純度:95重量%以上)10gと水40gを混合して得られた水スラリーを3.0g(粉末換算0.60g)添加し、更に15分間反応させた。水酸化カルシウム添加後の鉛含有廃液のpHは9.04であった。水酸化カルシウム添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に88時間保持して熟成し、含水率7.5重量%の固定化処理物5.8gを得た。このときの濾液の鉛濃度を表3に示す。
また、得られた含水率7.5重量%の固定化処理物5gについて、実施例9と同様に酸洗浄溶出試験2を行った。結果を表3に示す。
この場合、鉄塩の前処理だけでは鉛を固定化し易い形態にできないため、鉛の固定化が不十分である。
【0083】
比較例17
(鉛含有廃液の固定化)
フッ素樹脂製撹拌羽根を備えたガラス製容器に、Pb濃度400mg/l、pH5.19、酸化還元電位+603mV(換算酸化還元電位:+319mV)の鉛含有廃液2Lを入れ、室温雰囲気で撹拌しながら、リン酸二水素マグネシウム(シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製)を用いて調製した10重量%水スラリーを84g(PO3−/Pbモル比が20倍となる量)添加し、30分間反応させ前処理を行った。反応後のpHは5.17であった。
次に、前処理した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約6になるように固定化薬剤A20gと水80gを混合して得られた水スラリーを5.8g(固定化薬剤Aとして1.16g)添加し、更に15分間反応させた。固定化薬剤A添加後の鉛含有廃液のpHは6.23であった。次に、固定化薬剤Aを添加した鉛含有廃液に、室温雰囲気で撹拌しながら、廃液のpHが約9になるように、pH調整剤として水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、Ca(OH)2純度:95重量%以上)10gと水40gを混合して得られた水スラリーを19.8g(水酸化カルシウムとして3.96g)添加し、更に15分間反応させた。水酸化カルシウム添加後の鉛含有廃液のpHは9.35であった。水酸化カルシウム添加反応後、攪拌を停止し、その後、30分間静置して発生ケーキ(固定化処理物)を沈降させ、これを粒子保持能力1.0μmのガラス繊維製濾紙を用い濾過して濾液約2Lを得た。次いで濾紙上の固定化処理物を室温の空気中に87時間保持して熟成し、含水率42重量%の固定化処理物24gを得た。このときの濾液の鉛濃度を表3に示す。
また、得られた含水率42重量%の固定化処理物20gについて、実施例9と同様に酸洗浄溶出試験2を行った。結果を表3に示す。
この濾液の燐濃度は11mg/lであった。
この場合、リン酸塩の前処理だけでは鉛を固定化し易い形態にできないため、鉛の固定化が不十分である。
【0084】
【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなることを特徴とする有害成分の固定化薬剤。
【請求項2】
シリカ材料が、火山噴出物、ガラスカレット、ガラス研磨スラッジ、けいそう土、粘土鉱物、珪砂、石炭灰、シリカゲルおよびシリカヒュームからなる群より選ばれた少なくとも一種の材料である請求項1記載の有害成分の固定化薬剤。
【請求項3】
シリカ材料が、珪素成分をシリカ(SiO)換算で50〜99.9重量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の有害成分の固定化薬剤。
【請求項4】
マグネシウム化合物がマグネシウムの水酸化物、酸化物または炭酸塩であり、ストロンチウム化合物がストロンチウムの水酸化物、酸化物または炭酸塩である請求項1記載の有害成分の固定化薬剤。
【請求項5】
シリカ材料とマグネシウム化合物とからなり、シリカ材料中の珪素成分をシリカ換算した重量とマグネシウム化合物中に含有されるマグネシウム原子の重量との比(SiO:Mg)が100:5〜1,000である請求項1〜4のいずれかに記載の有害成分の固定化薬剤。
【請求項6】
シリカ材料とストロンチウム化合物とからなり、シリカ材料中の珪素成分をシリカ換算した重量とストロンチウム化合物中に含有されるストロンチウム原子の重量との比(SiO:Sr)が100:20〜1,500である請求項1〜4のいずれかに記載の有害成分の固定化薬剤。
【請求項7】
有害成分が、砒素、水銀、クロム、セレン、カドミウム、鉛、アンチモン、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、スズおよび燐からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素またはそれらの化合物である請求項1記載の有害成分の固定化薬剤。
【請求項8】
有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に、有害成分に応じた前処理を行った後、有害成分を含有する水溶液および/または泥状物のpHが4〜12の範囲になるように、シリカ材料と、マグネシウム化合物またはストロンチウム化合物とからなる有害成分の固定化薬剤を添加すること、または該固定化薬剤を添加し、次いでpH調整剤を添加することを特徴とする水溶液および/または泥状物中の有害成分の固定化方法。
【請求項9】
前処理が、酸化剤、還元剤および共沈剤からなる群より選ばれた少なくとも一種の薬剤を有害成分を含有する水溶液および/または泥状物に添加し、pHを1〜4の範囲に調整することを特徴とする請求項8記載の有害成分の固定化方法。
【請求項10】
pH調整剤が硫酸、塩酸、燐酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムまたは硫酸鉄の酸性硫酸塩である請求項8記載の有害成分の固定化方法。


【公開番号】特開2007−125536(P2007−125536A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20029(P2006−20029)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(599049794)株式会社 イージーエス (5)
【Fターム(参考)】