説明

有害物質除去材の製造方法

【課題】抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法であって、製造工程での抗体活性の損失が少ない製造方法の提供。
【解決手段】繊維からなる担体に抗体を含有する液を付着させること、前記担体の含水率を300%以下に調整すること、及び前記担体を70℃以下の雰囲気で乾燥させて含水率を1%以下にすることをこの順に含む抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質除去材の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法であって、製造工程での抗体活性の損失が少ない製造方法、及び該製造方法により得られた有害物質除去材に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体担持フィルターは、液相や気相中のウイルスや雑菌の除去を行う材料として有用である。抗体は生理活性物質であるため製造工程での完全な活性の保持は困難であるが、フィルター機能の向上のために、製造工程条件の最適化が望まれる。
特許文献1においては、気相雰囲気下で有害物質を除去する抗体を担持した有害物質除去材につき、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸積させる製造方法について開示されている。
特許文献2には、抗体物質を用いた空気浄化フィルターの作製につき、不織布を浸積させるための抗体を含む脱脂卵黄粉末を懸濁した液を濾過して濾液を回収し、不織布を浸積したものを乾燥する製造方法例が開示されている。しかし、乾燥条件等については詳細に検討されていない。
【特許文献1】特開2004-313755号公報
【特許文献2】特開2003-210558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法であって、製造工程での抗体活性の損失が少ない製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、抗体を含む液を付着させた担体を乾燥させる際に抗体の活性が失われやすいことを見出した。この知見のもとさらに抗体の活性に影響を与え難い乾燥条件を検討して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]〜[5]を提供するものである。
【0005】
[1]繊維からなる担体に抗体を含有する液を付着させること、
前記担体の含水率を300%以下に調整すること、及び
前記担体を70℃以下の雰囲気で乾燥させて含水率を1%以下にすることをこの順に含む
抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。
[2]前記乾燥が100Pa以下の減圧雰囲気下で行われる[1]に記載の有害物質除去材の製造方法。
[3]前記乾燥が前記抗体を担持した担体を圧縮しながら行われる[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記抗体が鶏卵抗体である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の製造方法により得られる有害物質除去材。
【発明の効果】
【0006】
本発明により抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法であって、製造工程での抗体活性の損失が少ない製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
抗体を担持させるための担体としては、繊維からなる担体が用いられる。担体は織布、不織布などの形態で構成されていればよい。繊維としては、特に限定されないが、合成繊維であるポリエステル、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ビニロン、アクリル系、ポリウレタン、ポリアミド、天然繊維である綿、絹、ウール、再生繊維であるレーヨンなどを挙げることができる。これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
強度や寸度安定性を向上させる目的で、担体を金属・高分子材料・セラミックス等の他の適切な構造材料により補強してもよい。これらの補強材は、有害物質除去材料を供給する側面の実質的な最表面以外の部分(例えば、該側面の反対面や芯材に用いる等)に用いることが望ましい。
【0008】
本発明において担体として用いられる繊維の作製法としては、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、湿乾式紡糸など一般的な製造法や、物理的処理(例えば超高圧ホモジナイザーによる強力な機械的せん断処理)によって繊維を微細化する方法などが挙げられるが、安定な品質を確保するためには、乾式紡糸もしくは湿乾式紡糸法を用いることが好ましい。平均繊維径が100nm以下で均一な繊維を作製するためには、さらに加工技術、2005年、40巻、No.2、101頁、および167頁;Polymer International誌、1995年、36巻、195〜201頁;Polymer Preprints誌、2000年、41(2)号、1193頁;Journal of Macromolecular Science : Physics誌、1997年、B36、169頁などに開示されている電界紡糸法を採用することが好ましい。
【0009】
紡糸に用いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水など、合成樹脂繊維に用いられる樹脂を溶解するものであれば何でも用いることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数種混合して用いてもよい。
【0010】
電界紡糸法を採用する場合には樹脂溶液に、さらに塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩を添加してもよい。
【0011】
担体を構成する繊維同士は部分的に接着することにより三次元ネットワークを形成している構造をもつことが望ましい。かような構造をとることにより、加工ならびに実用上の機械的耐性の向上、ひいては有害物質除去材の信頼性をあげることができる。また抗体の保持特性を上げることができる。繊維同士の接着はSEM等の方法で観察することができる。繊維同士の接着点の密度は、該有害物質除去材の投影表面積に対して1mm角辺り10箇所以上存在することが好ましく、100箇所以上であることがより好ましい。
【0012】
接着点を形成する方法としては、乾式紡糸法で形成される癒着や溶融紡糸法で形成される融着点で形成してもよいし、紡糸後に加熱や、接着剤・可塑化溶剤等の添加による接着点形成処理を行ってもよい。製造コストの観点では適切な溶液処方により乾式紡糸法で癒着点を形成させることが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法に用いられる抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、分子サイズが7〜8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状分子構造のうち、一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
【0014】
前記抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、カビ、ウイルス、アレルゲン及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス菌、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌などを挙げることができる。カビとしては、例えば、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムなどを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスなどを挙げることができる。アレルゲンとしては、花粉、ダニアレルゲン、ネコアレルゲンなどを挙げることができる。
【0015】
前記抗体の製造方法としては、例えば、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等の動物に抗原を投与し、その血液からポリクローナル抗体を精製する方法、抗原を投与した動物の脾臓細胞と培養癌細胞とを細胞融合し、その培養液または融合細胞を植え込んだ動物の体液(腹水等)からモノクローナル抗体を精製する方法、抗体産生遺伝子を導入した遺伝子組み換え細菌、植物細胞、動物細胞の培養液から抗体を精製する方法、ニワトリに抗原を投与して免疫卵を産ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から鶏卵抗体を精製する方法を挙げることができる。これらのうちでも、鶏卵から抗体を得る方法は、容易にかつ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。
【0016】
抗体フィルターに用いられる抗体は鶏卵抗体であることが好ましい。
【0017】
前記担体に抗体を担持する(固定化する)方法としては、前記担体に抗体を物理的に吸着させる方法のほか、担体をγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の溶液又は懸濁液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定化する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングした後にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法をあげることができる。
【0018】
ここで、前記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C65NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
【0019】
また、前記担体表面の官能基を、BMPA(N-β-Maleimidopropionic acid)などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
【0020】
更に、前記抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、有害物質を捕捉するFabが担体に対して外向きになり、Fabへの有害物質の接触確率が高くなるので、効率よく有害物質を捕捉することができる。
【0021】
前記抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよい。この場合、担体上での抗体の自由度が高くなり、有害物質への接近が容易となるので、高い除去性能を得ることができる。リンカーとしては、二価以上のクロスリンク試薬を挙げることができ、具体的にはマレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl)エステル、イミドエステル、EDC(1-Ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimido)、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanate)があり、標的官能基(SH基、NH2基、COOH基、OH基)に選択的なものと非選択的なものとがある。また、クロスリンク間の距離(スペースアーム)もクロスリンク試薬ごとに異なっており、目的の抗体に応じて0.1nm〜3.5nm程度の範囲で選択することができる。有害物質を効率的に捕捉するという観点からは、リンカーとして抗体のFcに結合するものが好ましい。
【0022】
リンカーを導入する方法としては、抗体にリンカーを結合させておき、それを更に抗体に結合する方法、担体にリンカーを結合させておき、担体上のリンカーに抗体を結合させる方法のいずれも可能である。
【0023】
本発明の製造方法においては、抗体を含む液(溶液又は懸濁液など)を担体に付着させることにより、抗体を担体に担持させる。抗体液(鶏卵抗体液など)を担体に付着させる方法は、特に限定されないが、担体を抗体液に浸漬させる方法、スプレー塗布、インクジェット塗布、カーテン塗布が挙げられる。
抗体を含む液は、上記のように得られる抗体を生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水などに溶解して作製すればよい。該液において抗体の濃度は、0.001質量%〜10質量%であればよく、0.005質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。該液は、安定化剤や、抗菌剤、抗カビ剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
発明の製造方法においては、抗体を含む液を担体に付着させた後、含水率を300%以下に調整する。
本明細書において含水率とは、
(担体に保持された液の質量)/(乾燥担体の質量)×100
で表される値を意味する。
(担体に保持された液の質量)は通常(抗体を含む液を付着させた担体の質量)から(乾燥担体の質量)を差し引いた値とすればよい。
含水率が300%より大きいと、水分を除去する時間がかかる為に抗体の活性の低下を引き起こしやすい。また、水分除去のために必要とされるエネルギーが増加し、コストアップする問題がある。また含水率は100%以上であればよい。含水率が100%より低いと、鶏卵抗体の担持量が減少してしまうため、好ましくない。
【0025】
抗体液を担体に付着させる方法は、特に限定されないが、担体を抗体液に浸漬させた後ローラーで圧縮する方法(ディップアンドスクィーズ法)、スプレー塗布、インクジェット塗布、カーテン塗布が挙げられる。含水率を300%以下に調整する手段としては特に限定されず、通常予め含水率が300%以下となる量の抗体液を担体に付着させればよいが、含水率が300%より大きくなる量の抗体液を担体に付着させ、その後ローラーで圧縮することなどによって、含水率が300%以下となるように水分(液)を除去してもよい。
【0026】
本発明の製造方法においては、上記のように含水率を300%以下に調整した担体を70℃以下の雰囲気で乾燥させる。70℃より高温の雰囲気では、抗体の活性の劣化が起こりやすくなる。乾燥雰囲気の温度は60℃以下がより好ましく、50℃以下が特に好ましい。また乾燥雰囲気の温度は乾燥効率の観点からは、15℃以上であることが好ましい。 乾燥雰囲気の湿度は、絶対湿度が0.014kg/kg以下であることが好ましく、0.012kg/kg以下であることがさらに好ましい。
【0027】
乾燥は、乾燥効率を上げるために減圧下で行うことも好ましい。真空度は100 Pa以下が好ましく、10Pa以下が更に好ましい。また、担体の強度低下を防止するため、0.1Pa以上であることが好ましい。
乾燥中に、抗体液付着担体を圧縮することも好ましく行われる。圧縮することで水分が担体の表面に移動しやすくなり、乾燥の効率を向上させることができる。圧縮する方法は特に限定されないが、具体例として、ローラーで圧縮する方法が挙げられる(図1参照)。不織布の表面を覆ってしまうような圧縮は、乾燥効率が低下する為、好ましくない。
【0028】
担体は含水率が1%以下となるまで乾燥させる。抗体は水分によってその活性が低下するので、活性を長期間維持するためには、ドライ状態での保管が必要である。乾燥後の含水率を1%以下とすることによって、長期間の維持が可能になる。
【0029】
本発明の製造方法により得られる有害物質除去材によって、気相中又は液相中の有害物質の除去が可能である。この有害物質除去材は抗体が気相に面しているドライな環境においても安定に使用可能であり、空気清浄機用フィルター、マスク、拭き取りシートなどに用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
<抗体フィルター作製>
<担体の作製>
(担体N−1)
セルロースアセテート(アルドリッチ製、全置換度2.4、数平均分子量3万)のアセトン:水(97:3)溶液(25質量%)を60℃に加温し、直径0.1mmのノズルから、紡速500m/mの速度で空気とともに噴出させ不織布を形成し膜厚4mmの不織布を得た。目付量は100g/m2であった。これを300mm×100mmに裁断し、 担体N−1を得た。紡糸筒はヒーターで100℃に加温した。SEMで平均繊維径を測定したところ、8μmであった。
【0031】
<抗体液の調製>
抗原を投与したニワトリが産んだ免疫卵の卵黄液を、噴霧乾燥して乾燥卵黄粉末を得た。次いで、この乾燥卵黄粉末をエタノールで脱脂して脱脂成分を除去した後、減圧下で乾燥し、抗体物質としての脱脂卵黄粉末を得た。この脱脂卵黄粉末を精製してインフルエンザウイルス抗体(IgY抗体)の純度を測定したところ、3質量%であった。次いで、脱脂卵黄粉末をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させ、抗体濃度100ppmになるように調製した。
【0032】
<抗体の固定化>
(抗体フィルターF−1)
抗体液に担体N−1を室温で16〜24時間浸漬させ、担体表面に抗体を付与した。得られた試料を面圧10MPaのローラーで圧縮し、含水率を測定したところ、190%であった。
(抗体フィルターF−2)
抗体液に担体N−1を室温で16〜24時間浸漬させ、担体表面に抗体を付与させた。得られた試料の水滴の落ちが無くなるまで10分間保持した後、含水率を測定したところ、650%であった。
【0033】
<抗体フィルターの乾燥>
(抗体フィルターF−3)
抗体フィルターF−1を、40℃30%RHの雰囲気下において含水率1%以下になるまで乾燥させたところ、1時間後に含水率1%に到達した。
(抗体フィルターF−4)
抗体フィルターF−2を、40℃30%RHの雰囲気下において含水率1%以下になるまで乾燥させたところ、3時間後に含水率1%に到達した。
【0034】
(抗体フィルターF−5)
抗体フィルターF−1を、80℃10%RHの雰囲気下において含水率1%以下になるまで乾燥させたところ、10分後に含水率1%に到達した。
(抗体フィルターF−6)
抗体フィルターF−1を、40℃、100Paの雰囲気下において含水率1%以下になるまで乾燥させたところ、10分後に含水率1%に到達した。
(抗体フィルターF−7)
抗体フィルターF−1を、40℃30%RHの雰囲気下において、面圧2MPaでローラーが担体上を往復するようにしながら含水率1%以下になるまで乾燥させたところ、30分後に含水率1%に到達した。
【0035】
<ウイルス不活性化効率評価>
抗体フィルターF−3〜F−7について、サンプル作製直後、および25℃60%RHの暗室で1ヶ月間保管後に、ウイルス不活性化効率評価を行った。
供試ウイルス液は精製インフルエンザウイルスをPBSで10倍希釈したもの(ウイルス濃度20万プラーク/mL)を使用した。前記各サンプルを5cm角に切り、ウイルス噴霧試験装置の中央に取り付け固定した。上流側に設置したネブライザーに供試ウイルス液を入れ、下流側にウイルス回収用装置を取り付けた。エアーコンプレッサーから圧縮空気を送り、ネブライザーの噴霧口から供試ウイルスを噴霧した。マスク下流側には、ゼラチンフィルターを設置し、10L/分の吸引流量で5分間試験装置内空気を吸引し、通過ウイルスミストを捕集した。
試験後、ウイルスを捕集したゼラチンフィルターを回収し、MDCK細胞を用いたTCID50法(50%細胞感染量測定法)により、サンプル通過後のウイルス感染価を求めた。サンプル有り無しでのゼラチンフィルターのウイルス感染価の比較から、各サンプルのウイルスの一過性除去率を算出した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から明らかなように、本発明の製造方法により得られた抗体フィルターは、サンプル作製直後のウイルス除去率が高く、保存後も、ウイルス不活性能力を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】抗体液付着担体(繊維)をローラーで圧縮しながら乾燥させる例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1.ローラー
2.担体(繊維)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維からなる担体に抗体を含有する液を付着させること、
前記担体の含水率を300%以下に調整すること、及び
前記担体を70℃以下の雰囲気で乾燥させて含水率を1%以下にすることをこの順に含む
抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥が100Pa以下の減圧雰囲気下で行われる請求項1に記載の有害物質除去材の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥が前記抗体を担持した担体を圧縮しながら行われる請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記抗体が鶏卵抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法により得られる有害物質除去材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−90210(P2009−90210A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263276(P2007−263276)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】