説明

有害生物防除

本発明は、げっ歯動物で発現されるタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片、特にげっ歯動物の消化管(GI)で発現されるタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む新規げっ歯動物防除剤、ならびにかかる新規げっ歯動物防除剤の製造方法に関する。本発明はさらに、げっ歯動物防除に使用される新規抗体および抗原結合断片、ならびにかかる抗体、抗原結合断片および新規げっ歯動物防除剤の使用によりげっ歯動物を防除する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、げっ歯動物で発現されるタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片、特にげっ歯動物の消化管(GI)で発現されるタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む新規げっ歯動物防除剤(rodent control agent)、ならびにかかる新規げっ歯動物防除剤の製造方法に関する。本発明はさらに、げっ歯動物防除に使用される新規抗体および抗原結合断片、ならびにかかる抗体、抗原結合断片および新規げっ歯動物防除剤の使用によりげっ歯動物を防除する方法に関する。
【0002】
げっ歯動物は昔から、有害生物であり種々の問題を引き起こすと考えられている。それらはしばしば、ヒトや家畜動物が消費するはずの食物をあさり、成長している穀物のみでなく保存食料にも害を与え汚染(尿、糞、および疾病)させる。げっ歯動物はまた、広範囲の種々の疾患のキャリアーであることが知られており、例えば旋毛虫病、レプトスピラ症、コレラ、腺ペスト、チフス、赤痢、ハンタウイルス症、サルモネラ症、パスツレラ症、トキソプラズマ症、および鼠咬症があり、これらは直接(例えば咬むこと)または間接(例えば、便、尿、および/または唾液から発生するほこり、および/またはげっ歯動物に頼って生きているかまたはこれらから食料を得る昆虫を介して)にヒトおよび/または他の哺乳動物に接触することにより広まる。さらにげっ歯動物はしばしば、かじったり掘ったりすることにより、土地、建物、設備に物理的損傷を与える。
【0003】
げっ歯動物を防除する方法は年月とともに進化してきたが、これらは一般に3つに分類される:i)捕獲;ii)化学物質への暴露による屠殺;およびiii)げっ歯動物の繁殖能力をなくすかまたは低下させる。これらのすべての3つの方法は、1つまたはそれ以上の欠点がある。
【0004】
例えばげっ歯動物を捕獲したり殺したりするための機械的わなは、本質的に処理できる動物の数によりその使用が限定され、すなわちヒトが介入して再度設定するまでは1匹の動物しか扱うことができない。げっ歯動物が繁殖できる速い速度(一回に生む子供の数が6〜8匹で、年に10〜12回生まれるため、一つがいのラットは年に15,000匹の子孫を生む)を考えると、この大発生にはわなは適当ではない。さらにわなは比較的手間がかかり、ヒトの介入が必要であり、このため有害生物防除にコストが上昇するのみでなく、わなの標的であるげっ歯動物が怖がって近づかない。
【0005】
化学的殺鼠剤は現在、近郊の農業地区の実用的げっ歯動物防除計画の主要な方法である。一般に化学的殺鼠剤はその作用が急性または慢性であり、すなわち化学物質は、げっ歯動物により有効量が摂取された後、急速またはゆっくり毒性を引き起こす。急性の殺鼠剤には、亜リン酸亜鉛、亜リン酸3亜鉛、海葱(red squill)(活性成分シリロシド)、(モノ)フルオロ酢酸ナトリウム、フルオロアセトアミド、アルファクロラロース、および硫酸タリウムがある。いくつかの殺鼠剤化学物質(例えばカリシフェロール(caliciferol)、ブロメタリン、およびフルプロパジン)は、致死量が最初の24時間で摂取されるが、繰り返し摂取が置きて、死亡は数日間遅れるため亜急性殺鼠剤とされるが、急性と亜急性殺鼠剤の区別は必ずしも明確ではない。急性殺鼠剤は、作用が迅速である点で有用であるが、一般に毒性が強い化学物質であり、その使用について安全性および環境への心配が有る。さらに急性中毒を生き延びた動物はえさを恐がり、従ってこのげっ歯動物防除方法の全体的な有効性は低下する。
【0006】
慢性の殺鼠剤は、抗凝固剤として作用してその活性を示し、その例には、第1世代抗凝固剤であるヒドロキシクマリン類(例えば、ワーファリン、クマクロル、クマフリル、クマテトラリル)およびインダンジオン類(例えば、ピンドン、ジファシノン、クロルファシノン);および第2世代抗凝固剤であるブロマジオロン、ブロジファクム、ジフェナクム、フロクマフェン、およびジフェチアロンがある。第2世代殺鼠剤の使用は最近20〜30年間で広まっており、第1世代抗凝固剤についてはさらに長い(30〜50年間)。すなわちげっ歯動物群は、この防除方法に対する耐性を獲得するのに充分な時間が有り、上記活性成分のそれぞれに対する耐性/寛容が種々のげっ歯動物群および/または種で報告されている(Kerrinsら、2001、「英国での抗凝固剤殺鼠剤に対する耐性の分布、1995〜98年」、149〜159頁、議事録、脊椎動物の有害生物管理の進歩(Advances in Vertebrate Pest Management)II、第2回ヨーロッパ脊椎動物有害生物管理会議(Second European Vertebrate Pest Management Conference)、ブラウンシュベイク(Braunschweig)、ドイツを参照)。
【0007】
第2世代抗凝固剤のさらなる欠点は、その使用の普及とあいまった非種特異的作用に起因する。長年の間、抗凝固剤の残留物を持っているげっ歯動物を食べる捕食性の腐肉食性の哺乳動物や鳥の二次中毒に対する心配がある。ブロジファクムやフロクマフェンは屋外で使用すると二次中毒の危険性が極めて高いため、英国では屋内での使用に限定されている。しかしより広く使用されているジフェナクムやブロマジオロンに対する耐性の広がりは、使用が屋内に限定されているより強力な抗凝固剤の誤使用を促進するかも知れない。さらに低レベルの残渣およびかかる残渣の致死的作用が、保存の重要性のある広範囲の非標的種で観察されている[例えば、メンフクロウ(Barn Owl)、オコジョ(Stoat)、イタチ(Weasel)、ケナガイタチ(Polecat)、およびチョウゲンボウ(Kestrel)]。
【0008】
提唱されてはいるがまだ商業的に成功していないげっ歯動物防除の第3の方法は、げっ歯動物の出生率を低下させることに依存する。繁殖阻害物質(例えば避妊薬や生殖体撲滅薬)の使用ならびに生物学的および化学的滅菌剤の使用が、研究されている。しかし各アプローチは何らかの欠点を有する。例えば化合物またはステロイド化合物の避妊薬としての使用は捕獲動物で成功しているが、自由に動いている有害生物で使用することは困難である。これらの化合物はまずく、げっ歯動物が充分な量を摂取することは困難であろう。生殖体撲滅薬であるアルファクロロヒドリンは有毒殺菌剤として販売されているが、異なる種により作用が異なり、高用量では毒性である(最大50%の死亡率)。さらに最近の研究では、げっ歯動物防除方法として免疫避妊が研究されている(例えば、米国特許出願第2005/0009188号;MooreとWong、1997、Reproduction Fertility & Development 9:125−9;Smithら、1997,Reproduction Fertility & Development 9:85−9を参照)。しかし投与経路が経口の場合は経口寛容の問題のため効力に問題があり、補助剤が必要な場合がある。
【0009】
従って現在のげっ歯動物防除方法の欠点のいくつかを克服する新規げっ歯動物防除剤(すなわち、例えばげっ歯動物を死亡させるかまたはげっ歯動物が繁殖する能力を制御することにより、げっ歯動物の数を抑制できる物質)に対するニーズがある。本発明は、げっ歯動物で発現されるタンパク質(かかるタンパク質はここで標的タンパク質と呼ぶ)の細胞外エピトープに結合する抗体成分を含む新規げっ歯動物防除剤を提供することにより、このニーズに取り組む。すなわち本発明の第1の態様において、げっ歯動物で発現されるタンパク質の細胞外エピトープに結合する抗体成分を含むげっ歯動物防除剤が提供される。
【0010】
げっ歯動物防除剤をげっ歯動物の特定のタンパク質および/または特定の組織、例えばげっ歯動物の内蔵組織/消化管で発現されるタンパク質、に標的化することにより、新規げっ歯動物防除剤がげっ歯動物の内蔵に接触している時間が、内蔵中を通過するのみで特異的結合により遅延することがない非特異的げっ歯動物防除剤と比較して長くなる。これは次に、新規げっ歯動物防除剤の効力を有効に上昇させ、こうして抗凝固剤殺鼠剤のような従来の非特異的殺鼠剤より低濃度で使用することが可能になる。
【0011】
好ましくは抗体成分は、非標的動物(例えば、ヒト、鳥、ペット動物、農場動物、および有害生物ではない野生動物)よりげっ歯動物に対する選択性を、新規げっ歯動物防除剤に付与する。非標的種よりげっ歯動物組織/げっ歯動物タンパク質への選択性は、抗体に対する必要性を低下させ、非標的種への新規げっ歯動物防除剤の環境的影響を小さくする能力を有するため、さらに有利である。
【0012】
抗体成分が、げっ歯動物中で必須ではない機能を果たす標的タンパク質を認識する場合、げっ歯動物防除剤が毒性成分または避妊成分をさらに含むことが必要であろう。
【0013】
すなわちある実施態様において本発明は、毒性成分または避妊成分に結合した抗体成分を含むげっ歯動物防除剤を提供する。かかる新規げっ歯動物防除剤は融合タンパク質(この場合毒性成分または避妊成分は、直接またはペプチド結合を介して間接に抗体成分に結合したタンパク質もしくはペプチド成分である)の形であるか、またはタンパク質結合体[この場合毒性成分または避妊成分は、抗体成分に直接化学的に結合した小分子(すなわち、非タンパク質性、化学的物質)であるかまたはタンパク質もしくはペプチド成分である]の形でもよい。
【0014】
抗体成分がげっ歯動物の必須機能を果たす標的タンパク質(例えば、げっ歯動物の消化管中の必須機能を果たすタンパク質)を認識する場合、抗体成分は唯一の機能性物質としてげっ歯動物防除機能を果たすことがある。かかるげっ歯動物防除剤は、必須標的タンパク質への抗体成分の結合によりその作用を仲介し、こうして必須タンパク質の機能を阻止または阻害する。すなわちさらなる実施態様において本発明は、げっ歯動物で発現されるタンパク質の細胞外エピトープに結合する抗体成分を含むげっ歯動物防除剤であって、タンパク質はげっ歯動物で必須機能を果たすことを特徴とするげっ歯動物防除剤を提供する。本発明のこの態様の抗体成分が結合する適当な標的タンパク質の例(従って本発明のこの態様に従って抗体成分を産生するのに使用される)には、げっ歯動物Sox10遺伝子産物、げっ歯動物エンドセリン_B受容体(EDNRB)、げっ歯動物エンドセリン−3リガンド(EDN3)、げっ歯動物CFTR(下記表1参照、さらなる詳細については実施例参照)、げっ歯動物IL−2、げっ歯動物IL−10、げっ歯動物T細胞受容体アルファおよび/またはベータ鎖、クラスII主要組織適合遺伝子複合体のげっ歯動物成分がある。当業者は、上記遺伝子産物/タンパク質のいくつかはげっ歯動物の上皮表面にはなく、その活性を仲介できる前にインターナリゼーションが必要な場合があることを理解できるであろう。かかる場合に、上記タンパク質の1つに対する抗体成分をさらなるターゲティング抗体成分と組合せて、インターナリゼーションの確率を増強させることが好ましい。すなわち2つまたはそれ以上の抗体成分(1つは上記タンパク質の1つに対するものであり、第2のものは抗体を適当な上皮標的へのターゲティング抗体として作用してインターナリゼーションを増強する)が、結合体形成によりまたは後述される融合タンパク質により、結合してもよい。
【0015】
本明細書において用語「抗体成分」は、げっ歯動物で発現されるタンパク質の細胞外エピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片を意味する。好ましくは抗体成分が結合するエピトープは、げっ歯動物タンパク質でのみ見つかるアミノ酸配列を有し、すなわち抗体はげっ歯動物特異的エピトープ(rodent specific epitope)すなわちRSEに結合する。本発明のげっ歯動物防除剤で使用される抗体成分の作成に使用され、本発明のげっ歯動物防除剤が結合するげっ歯動物特異的エピトープ(RSE)は、本明細書に記載の本発明の第2の態様を形成する。RSEに結合する抗体成分は、本明細書に記載の本発明の第3の態様と見なされる。
【0016】
RSEは細胞外にあり、その結合部位への抗体(またはその抗原結合断片)の接近を容易にする。好ましくはRSEを提供する標的タンパク質は、げっ歯動物の上皮表面(例えば、鼻、口、目、消化管、尿生殖器および表皮)中またはその上で発現される。最も好ましくはタンパク質は、げっ歯動物の消化管上皮中(上)で発現される。
【0017】
ある実施態様においてRSEは、連続的(すなわち続きの)ペプチド配列により提供される(すなわち、エピトープの第1のアミノ酸残基はペプチド結合を介してエピトープの第2のアミノ酸残基に直接結合し、エピトープの第2のアミノ酸残基はペプチド結合を介してエピトープの第3のアミノ酸残基に直接結合しているなど)。かかる連続的ペプチドエピトープは、本明細書においてげっ歯動物特異的ペプチドエピトープ(rodent−specific peptide epitope)またはRSPEと呼ぶ。本発明の抗体が結合し、本発明の抗体成分(およびげっ歯動物防除剤)を作成するのに使用されるRSPEは、文献やデータベース情報により示される所望の標的組織/細胞層中で発現されるタンパク質の比較バイオインフォマティクス分析と、次に確認免疫学的分析により決定される。RSEと同様にRSPEは、天然にはげっ歯動物タンパク質中にのみ見つかる。本明細書においてRSPEは標的タンパク質のオリゴペプチド断片として定義され、ここでオリゴペプチド配列は、非標的(すなわち、非げっ歯動物、例えばヒト)動物の同種のタンパク質からの対応する線状ペプチド配列とは60%以下の同一性を有する細胞外連続的ペプチドエピトープである。
【0018】
本明細書において用語「オリゴペプチド断片」は標的タンパク質の断片を意味し、該断片は少なくとも約4で最大約50アミノ酸からなる。好ましくは該オリゴペプチド断片は、9〜45アミノ酸の長さであり、さらに好ましくは該オリゴペプチド断片は9〜30アミノ酸の長さである。具体的な実施態様において該オリゴペプチド断片は、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、24または44アミノ酸の長さである。
【0019】
好ましくはRSPEと非標的タンパク質との同一性パーセントは、本発明の抗体成分がRSPEに対して高い特異性と親和性とを有し、そこからRSPEが得られる同じクラス/ファミリーの非げっ歯動物タンパク質と交差反応しないものである。好適な実施態様においてRSPEと非標的タンパク質との同一性、特にRSPEと非標的動物からの同種のタンパク質の対応する線状(すなわち連続的または続きの)ペプチド配列との同一性パーセントは、50%、45%、40%、35%、30%、または25%未満であるかまたは等しい。
【0020】
好ましくはRSPEは、すべての標的げっ歯動物種間で高度に保存され、特にラットとマウス、特にクマネズミ(Rattus rattus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、およびハツカネズミ(Mus musculus)/マウス(Mus domesticus)の2つまたはそれ以上の間で高度に保存されている。高度に保存されているとは、あるげっ歯動物種からのRSPEと第2のげっ歯動物種からのRSPEとの同一性パーセントが高いことを意味する。好ましくは2つのげっ歯動物RSPE間の同一性パーセントは少なくとも75%である。さらに好ましくは同一性パーセントは80%、85%、90%、または95%、96%、97%、98%、または99%より大きいかまたは等しい。最も好ましくはRSPEは2つまたはそれ以上のげっ歯動物種間で100%同一である。
【0021】
RSPE間の同一性パーセントは上記の2つまたはそれ以上の種の間で高度に保存されていることが好ましいが、所望の高レベルの保存が観察されない場合は、2つまたはそれ以上のげっ歯動物種のタンパク質(同種または異種)からの異なるRSPEを使用して異なる抗体成分を作成し、次にこれを後述のげっ歯動物防除剤と一緒にする(例えば、各抗体成分は毒性成分/避妊成分に結合し、従ってげっ歯動物防除剤は複数の異なる抗体−毒素/避妊分子を含むか、またはげっ歯動物防除剤は、2つまたはそれ以上の異なる抗体成分に結合した毒性成分/避妊成分を含み、2つまたはそれ以上の抗体成分のそれぞれは異なるげっ歯動物種からのタンパク質のRSPEを認識する)。具体的な実施態様において、本発明のげっ歯動物防除剤において、MDR1(配列番号8)を認識する抗体成分がラットMDR1(配列番号9)を認識する抗体成分と一緒にされる。
【0022】
本発明の抗体成分が結合し本発明の抗体成分を産生または同定するのに使用される標的タンパク質の例を、表1に示す。この表はまた、例示したタンパク質から得られる特異的RSPEの例を示す。表1に示したタンパク質のリストもそこから得られるRSPEのリストも包括的でないことを当業者は理解するであろう。さらにあるタンパク質(そのすべては消化管中に発現される)内で適当なRSPEが同定され、さらなるタンパク質(例えば、他のげっ歯動物の標的組織、例えば鼻上皮、頬上皮、表皮、尿生殖器の上皮、および目の上皮)は、本発明の抗体成分を産生するのに使用される。
【0023】
【表1】

【表2】

【0024】
本発明で使用される好適な標的タンパク質の例は、ラットオリゴペプチドトランスポーターPepT1、ラットCD155、ラットGTR2、ラットCFTR、ラットCNT2、ラットCATB(0)+、ラットMDR1、マウスMDR1、ラットスクラーゼ−イソマルターゼ、マウスGLUT7、ラットOATP−B、ラットENT1、ラットGCC、ラットPLB、ラットLPH、ラットAMPN、ラットMCDL、およびラットSCABである。
本発明の好適なRSPEは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、26、27、28、29、31、32および34を有する。
【0025】
本発明での使用に特に好適な標的タンパク質は、ラットオリゴペプチドトランスポーターPepT1、ラットCD155、ラットCFTR、ラットCNT2、マウスGLUT7、ラットGCC、ラットPLB、およびラットLPHである。
【0026】
本発明の特に好適なRSPEは、配列番号1、3、5、6、11および27、28および29を有する。
【0027】
抗体は3次タンパク質構造を認識し、エピトープは互いに構造が近接したタンパク質の一次アミノ酸配列に分布しているアミノ酸残基を含むことを当業者は理解するであろう。すなわちさらなる実施態様において本発明の抗体成分は(および従ってげっ歯動物防除剤も)、不連続な細胞外RSEを認識してもよい。
【0028】
本発明で使用される抗体はポリクローナルまたはモノクローナルでもよい。かかる抗体は、動物を上記のようなRSPEで免疫するか、または動物を無傷のげっ歯動物標的タンパク質で免疫することにより得られる。本発明のポリクローナル抗体は、かかる免疫動物の血清から得られる(例えば実施例2を参照)。RSPEまたはげっ歯動物標的タンパク質を認識するが非標的動物からの同種のタンパク質は認識しないポリクローナル抗体は、標準的免疫学的方法(例えば、ELISA、および/または適切な組織源に対する免疫組織化学試験)を使用して同定される。
【0029】
本発明で使用されるモノクローナル抗体は、RSPEまたはげっ歯動物標的タンパク質で免疫した動物の脾臓からBリンパ球を単離し、かかるリンパ球を用いてハイブリドーマ細胞株を作成することにより得られる。ハイブリドーマ細胞株は次に、RSPEまたはげっ歯動物標的タンパク質を認識するが非標的動物からの同種のタンパク質は認識しない抗体を分泌するものについてスクリーニングされる(例えば実施例を参照)。
【0030】
本発明で使用される好適なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、実施例に記載される。
【0031】
本発明で使用される抗体および抗原結合断片はまた、抗体または抗原結合断片のバクテリオファージ表示ライブラリー(投薬経験無し、または免疫)から、または抗体または抗原結合断片の同様の酵母もしくは細菌表示ライブラリーから、または抗体または抗原結合断片のリボゾーム表示ライブラリーから単離される。典型的にはかかる表示ライブラリーは、RSPEまたはげっ歯動物標的タンパク質に結合する表示されたタンパク質を同定するためにスクリーニングされる。当業者は、かかるライブラリーをスクリーニングし、ライブラリー中の結合パートナーを同定し、次にかかるメンバーを単離する方法を周知しているであろう。抗体および抗原結合断片は、スクリーニングに使用されるライブラリーを表示し、その構築は当該分野で記載されている(例えば、国際特許公報WO01/90190号およびWO93/19172号;米国特許第5,759,808号および6,517,829号;Hoogenboomの総説、1997、Trends in Biotechnology 15(2):62−70;Dooleyら、2003 Molecular Immunology 40:25−33;Nutallら、2001 Molecular Immunology 2001、38:313−326;およびHanesら、1998、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 95:14130−14135を参照)。こうして同定される抗体または抗原結合断片は、再度非標的動物からの同種のタンパク質に結合しないことを確認するためにチェックされる。
【0032】
本発明で使用される抗体は任意の免疫グロブリンクラスでもよく、例えばIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM抗体でもよい。好ましくは本発明の抗体はIgG抗体である。本発明の抗体は、重鎖と軽鎖とを含む免疫グロブリン分子であるか、または1本鎖抗体でもよい。本明細書において用語「1本鎖抗体」は、軽鎖が無い単一の型の鎖(例えばカメリッド(Camelid)またはコンドリクチエス(Chondricthyes)(サメ)由来抗体)からなる天然に存在する抗体も、単一のポリペプチド鎖のみからなる工学作成した抗体も含む。かかる工学作成した抗体の例には、1本鎖抗体または「ミノボディ(minibodhies)」(国際特許公報WO94/09817号に記載されている)および1本鎖可変断片(scFv)がある。本発明の抗体は好ましくは1本鎖抗体である。ある好適な実施態様において抗体はscFvである。別の好適な実施態様において抗体は、軽鎖の無い1本鎖抗体、最も好ましくはカメリッド(Camelid)由来抗体である(例えば、国際特許公報WO94/04678号に記載されている)。
【0033】
本発明で使用される抗原結合断片には、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、VHドメイン、VLドメイン、Fv、Fab、ジ−Fab、Fab’、F(ab’)2、VHHドメイン、IgNAR VドメインおよびCDRがある。当業者は、免疫グロブリン軽鎖と重鎖、VHとVLドメイン、Fv、Fab、ジ−Fab、Fab’、F(ab’)2、およびCDR、ならびにこれらの調製は周知しているであろう。VHHドメインとその単離は当該分野で記載されており、例えば国際特許公報WO94/04678号、国際特許公報WO01/90190号、およびそこに含まれる文献を参照されたい。IgNAR抗体はサメから得られる1本鎖抗体であり、これはカメリッド(Camelid)抗体と同様に軽鎖が欠如している(Greenbergら、1995、Nature 374:168−173を参照)。これらの抗体の抗原結合領域であるIgNAR可変ドメイン(IgNAR Vドメイン)はまた、当該分野で記載されている。例えばDooleyら、2003(Molecular Immunology 40:25−33)およびそこに引用されている文献を参照されたい。ある実施態様において本発明で使用される抗体成分は、上記した好適な標的タンパク質の1つを認識するカメリッド(Camelid)抗体またはVHHドメインであろう。特に配列番号1、3、5、6、11または27のいずれかに結合するカメリッド(Camelid)抗体またはVHHドメインが好適であり、配列番号5、6、11または27のいずれかに結合するVHHドメインが特に好適である。
【0034】
本発明で使用される抗体および抗原結合断片はまた、その安定性を上昇させるように作成され、例えばジスルフィド結合により安定化される(例えば、Reiterら、1996、Nature Biotechnology 14(10):1239−1245参照)。
【0035】
上記したように抗体成分は、無傷のげっ歯動物タンパク質またはRSE(この用語はRSPEを含む)を抗原として使用するか、または非標的(すなわち、非げっ歯動物、例えばヒト)動物からの同種のタンパク質との同一性パーセントの低いものとして選択された適当な抗体/抗原結合断片をスクリーニングすることにより得られる。こうして本発明の抗体成分が非標的種からの同種のタンパク質と交差反応する確率が低下される。すなわち本発明の好適な実施態様において、抗体成分(および本発明のげっ歯動物防除剤も)は、非標的動物からの同種のタンパク質上の対応するエピトープよりげっ歯動物標的タンパク質上のエピトープに対する選択性を示す。すなわち本発明の好適な抗体成分は、非標的動物からの同種のタンパク質(または、同種のタンパク質)上の対応するエピトープに対するより大きな親和性でそこに(またはそこからRSEが得られるげっ歯動物タンパク質に)結合することによりRSEに対する選択性を示す。非標的動物には、ヒト、鳥、農場動物、および有害生物ではない野生動物を含む。
【0036】
好ましくは本発明の抗体成分は、ヒトの同種のタンパク質に対する結合の低下を示し、さらに好ましくは結合しない。さらに好ましくは本発明の抗体成分は、ヒトの同種のタンパク質に対する結合の低下を示さない(または結合しない)のみでなく、少なくとも1つの他の非標的動物の同種のタンパク質に対する結合の低下を示す(結合しない)。
【0037】
不明確さを避けるために本明細書において用語「結合する」は、本発明の抗体成分とエピトープまたはタンパク質との定性的または定量的相互作用を示す。
【0038】
この用語が定性的に使用される場合、標的タンパク質、RSEまたはRSPEへの結合の特異性は、抗体成分の標的タンパク質、RSEまたはRSPEに置換可能な方法で結合する能力を示しており、ここで抗体結合の置換は、それに対して抗体が作成されたかまたはスクリーニングされた抗原(以後「特異抗原」と呼ぶ)の存在により生じる。かかる標的−タンパク質/RSE/RSPE特異的抗体成分の非標的タンパク質(または非標的タンパク質からの対応するエピトープ)の結合が観察されないなら、または特異抗原により置換されない非標的タンパク質(または非標的タンパク質からの対応するエピトープ)への何らかの結合が観察されるなら、抗体成分は、非標的タンパク質または非標的タンパク質からの対応するエピトープへの結合より大きい親和性で標的タンパク質/RSE/RSPEに結合するという点で、抗体成分は標的タンパク質、RSEまたはRSPE(適宜)に対する選択性を示すと見なされる。従って特異性と選択性は、適当な組織試料の免疫組織化学的解析および/または適切な試料を用いるELISAにより測定される。
【0039】
用語「結合する」が定量的に使用される場合、これは、相互作用するエピトープまたはタンパク質に対して抗体成分が少なくとも10-6Mの親和性を有することを意味する。好ましくは親和性は、少なくとも10-7M、さらに好ましくは10-8M、さらに好ましくは10-9M、さらに好ましくは10-10M、および最も好ましくは10-11M、またはそれ以上である。すなわち抗体成分がRSEまたはRSPE(またはRSEもしくはRSPEが得られるタンパク質)に結合する場合、これは少なくとも10-6Mの親和性を有し、さらなる実施態様においてこれは、10-7M、少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、および少なくとも10-10Mの親和性を有する。好適な実施態様において抗体成分は、1つまたはそれ以上の非標的種(好ましくはヒト)からの同種のタンパク質上の対応するエピトープに結合しない(すなわち、非標的種からの同種のタンパク質への抗体成分の親和性は10-6M未満である)か、またはその結合が低下している(すなわち、非標的種からの同種のタンパク質に対する抗体成分の親和性は、標的げっ歯動物タンパク質に対するより少なくとも10倍小さい)。すなわち好適な実施態様において本発明の抗体成分がRSEまたはRSPE(またはRSEもしくはRSPEが得られるタンパク質)に対して少なくとも10-6Mの親和性を有する場合、非標的種からの同種のタンパク質に対する抗体成分の親和性は10-6M未満、好ましくは10-5M未満またはそれ以下である;本発明の抗体成分がRSEまたはRSPE(またはRSEもしくはRSPEが得られるタンパク質)に対して少なくとも10-7Mの親和性を有する場合、非標的種からの同種のタンパク質に対する抗体成分の親和性は10-6Mまたはそれ以下である;本発明の抗体成分がRSEまたはRSPE(またはRSEもしくはRSPEが得られるタンパク質)に対して少なくとも10-8Mの親和性を有する場合、非標的種からの同種のタンパク質に対する抗体成分の親和性は10-7Mまたはそれ以下、好ましくは10-6Mまたはそれ以下である;本発明の抗体成分がRSEまたはRSPE(またはRSEもしくはRSPEが得られるタンパク質)に対して少なくとも10-9Mの親和性を有する場合、非標的種からの同種のタンパク質に対する抗体成分の親和性は10-8Mまたはそれ以下、好ましくは10-6M未満またはそれ以下である。
【0040】
標的および非標的タンパク質(ならびにそこからのエピトープ)への抗体成分の親和性は、適切な方法、例えば表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標)を用いる)を使用して測定される。
【0041】
本発明のある実施態様においてげっ歯動物防除剤は融合タンパク質の形であり、ここで融合タンパク質は第1のタンパク質成分と第2のタンパク質成分とを含み、該第1のタンパク質成分は上記した抗体成分であり、該第2のタンパク質成分は、毒素、免疫原およびホルモンよりなる群から選択される。
【0042】
第1のタンパク質成分は直接第2のタンパク質成分に結合してもよいが、2つの成分はリンカーペプチドにより間接的に結合されることが好ましい。リンカーペプチドは一般に、第1の成分と第2の成分が、1つの成分が他の成分の機能に悪影響を与える(例えば立体障害)ことなく必要に応じて機能するのに充分な長さである。本発明での使用に適した通常使用されるリンカーペプチドの例は(Gly4Ser)nであり、ここで「n」は1より大きい整数かまたは1である。典型的にはnは3より大きいかまたは等しい。好ましくはリンカーペプチドの一次配列は、厳しい加水分解環境および熱環境で安定であるように設計される。これは、例えばタンパク質分解機構を介するリンカーのプロセシングのための認識部位として作用するリンカー中の残基を除去または変異させることにより行われる。適当なリンカーペプチドのさらなる例は、Gustavssonら、2001(Protein Engineering 14:711−715)、Henneckら、1998(Protein Engineering 11:405−410)、およびHustonら、1991(Methods in Enzymology 203:46−88)に記載されているものである。
【0043】
さらなる実施態様において、融合タンパク質が適切な場所に置かれた時に2つのタンパク質成分の制御分離/第2のタンパク質成分放出が行われるように、例えば融合タンパク質がいったんインターナリゼーションされると第2のタンパク質成分が細胞内に放出されるように、リンカーペプチド中に特異的不安定性を作成することが好ましい。記載された分離の制御は、いくつかの融合タンパク質の活性を増強するのに有用である。
【0044】
上記したように融合タンパク質のある実施態様において、第2のタンパク質成分は毒素である。毒素は融合タンパク質に殺鼠活性を付与する:これは、外部性または内部性作用モードを介して、標的となるげっ歯動物細胞に対する毒性を示す。本発明のこの態様で使用するのに適した毒素には、特に膜を破壊するタンパク質であるリボシルトランスフェラーゼ、セリンプロテアーゼ、グアニリルシクラーゼアクチベーター、ATPase介在イオン輸送に関与するタンパク質、カルモジュリン依存性アデニリルシクラーゼ、RNAグリコシダーゼ、およびリボヌクレアーゼがある。適当な毒素の具体例を以下の表2に示す。表2に記載の毒素のいくつかは毒素分子ファミリーの代表であり、この場合、これらのメンバーの任意の1つが本発明で使用できることを当業者は理解するであろう。
【0045】
【表3】

【0046】
本発明の実施態様で使用される好適な毒素には、グランザイムB(granzyme B)、cyt2A、β−プロチオニン、VIP2A、ゲロニン(gelonin)、およびグラヌリシンがある。特に好適な毒素は、グランザイムB(granzyme B)、cyt2A、β−プロチオニン、VIP2A、およびゲロニンよりなる群から選択される。
上記のタンパク質毒素は、本発明の融合タンパク質中に完全に取り込んでもよい。あるいはかかる毒素のドメインまたは断片が毒性を付与する場合、そのドメインまたは断片は融合タンパク質中で第2のタンパク質成分として使用される。
【0047】
別の実施態様において本発明の融合タンパク質中の第2のタンパク質成分は免疫原であり、すなわちげっ歯動物で免疫応答を誘発することができるポリ−またはオリゴ−ペプチドである。好適な実施態様において免疫原−本発明の融合タンパク質は免疫避妊薬として作用することができ、生殖を妨害することによりげっ歯動物防除剤として作用するであろう。精子または卵子特異的抗原、例えば乳酸脱水素酵素C、精子抗原PH−20(Primakoffら、1998 Nature 335:543−6)、フェルチリン(PH−30)、および透明帯抗原は、本発明の融合タンパク質中の第2のタンパク質成分として使用するのに適した免疫原である。
【0048】
さらに別の実施態様において本発明の融合タンパク質中の第2のタンパク質成分は、ホルモンまたはタンパク質性ホルモン模倣物である。この実施態様において第2のタンパク質成分はげっ歯動物の生殖を妨害し防止し、従って融合タンパク質は繁殖の妨害によりげっ歯動物防除剤として作用する。本発明のこの実施態様で使用されるホルモンの例には、ゴナドトロピン放出ホルモンがある。
【0049】
さらなる実施態様において上記融合タンパク質は、少なくとも1つの追加のタンパク質成分を含む。この追加のタンパク質成分(または複数の成分)は、上記の毒素、免疫原、ホルモン、またはタンパク質性ホルモン模倣物でもよい。従って抗体成分と少なくとも2つの追加のタンパク質成分とを含む融合タンパク質が構築され、ここで追加のタンパク質成分のそれぞれは融合タンパク質にげっ歯動物防除(すなわち、毒性もしくは避妊、または両方)機能を与える。第2のタンパク質成分および追加のタンパク質成分は、それぞれ同じかまたは異なるげっ歯動物防除機能を有し(すなわち、これらはそれぞれ独立に毒性であるかまたは避妊性である)、ここでこれらは同じ機能を有し、これらは同じかまたは独立に異なる作用モードを有する。追加のタンパク質成分が同じげっ歯動物防除機能を有し、少なくとも1つの追加のタンパク質成分が第2のタンパク質成分に対して異なる作用モードを有する場合、げっ歯動物防除剤の効力が増強される(げっ歯動物防除活性を付与する単一のタンパク質成分を含むげっ歯動物防除剤に対して)。例えば第2のタンパク質成分により付与される膜破壊活性は、げっ歯動物細胞の内部への第1のタンパク質成分の接近を容易にすることにより追加のタンパク質成分の機能活性を補助するため、融合タンパク質[ここで第2のタンパク質成分は細胞破壊性毒素(例えば、ペルフリンゴリシンO、アルファヘモリジン、スフィンゴメリナーゼ、デルタヘモリジン、アルファ毒素、cyt毒素、グラヌリジン、メリチン、ペルフォリン、エキナトキシン、リステリオリジン、エアロリジン、ヘモリシンA、アメーバポア、E1 Torヘモリジン、ビブリオ・ダムセラ(Vibrio damsela)ヘモリジン、ニューモリジン、ストレプトリジンO、カナガワ毒素、レプトスピラヘモリジン、cry毒素、VIP3、チオニン、およびβ−プロチオニン)であり、追加のタンパク質成分は活性であるために細胞内でのインターナリゼーションを必要とする毒素(グランザイムB、ジフテリア毒素、コレラ内毒素、VIP2、付属エンテロトキシン、コリシンE1、CTX IV、2型リボゾーム不活性化タンパク質、例えばリシン、炭疽毒素、シュードモナス外毒素A、バルナーゼ、1型リボゾーム不活性化タンパク質、例えばゲロニン、よりなる群から選択される)でもよい]は、特に有効なげっ歯動物防除剤である。好適な実施態様において融合タンパク質は、cyt2A、β−プロチオニン、およびグラヌリジンよりなる群から選択される少なくとも1つの毒素成分;およびグランザイムB、VIP2A、およびゲロニンよりなる群から選択される少なくとも1つの毒素成分を含む。
【0050】
本発明の融合タンパク質は、第1のタンパク質成分(抗体成分)が第2のタンパク質成分のN末端側であるように構築されるか、または第2のタンパク質成分が第1のタンパク質成分のN末端側にあるように構築される。上記したようにある実施態様において、2つのタンパク質成分をリンカーペプチドを介して間接的に結合することが好ましい。すなわち本発明の融合タンパク質はNからC末端に、第1のタンパク質成分がペプチド結合を介してリンカーペプチドに結合し、これは次にペプチド結合を介して第2のタンパク質成分に結合するか、またはNからC末端に、第2のタンパク質成分がペプチド結合を介してリンカーペプチドに結合し、これは次にペプチド結合を介して第1のタンパク質成分に結合している。
【0051】
融合タンパク質が追加のタンパク質成分を含む場合、これは第1の成分のN末端側であり、すなわち追加のタンパク質成分はペプチド結合によりC末端残基を介して第1のタンパク質成分のN末端に直接結合するか、またはペプチドリンカー(または追加のタンパク質成分)を介して間接的に第1のタンパク質成分のN末端残基に結合する。さらなる実施態様において追加のタンパク質成分は第2のタンパク質成分のN末端側であり、すなわち追加のタンパク質成分はペプチド結合によりC末端残基を介して第2のタンパク質成分のN末端に直接結合するか、またはペプチドリンカー(または追加のタンパク質成分)を介して間接的に第2のタンパク質成分のN末端残基に結合する。さらなる実施態様において追加のタンパク質成分は、i)第1の成分のC末端側であり、すなわち追加のタンパク質成分はN末端残基を介してペプチド結合により第1のタンパク質成分のC末端残基に直接結合するか、またはペプチドリンカー(または第1のタンパク質成分)を介して間接的に第1のタンパク質成分のC末端残基に結合する;またはii)第2のタンパク質成分のC末端側であり、すなわち追加のタンパク質成分はN末端残基を介してペプチド結合により第2のタンパク質成分のC末端残基に直接結合するか、またはペプチドリンカー(または第1の追加のタンパク質成分)を介して間接的に第2のタンパク質成分のC末端残基に結合する。
【0052】
本発明の抗体成分および/または融合タンパク質は、これらをコードする核酸を任意の適当なタンパク質発現系で発現させることにより産生される。すなわちさらなる態様において本発明は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸を提供する。本発明の融合タンパク質をコードする核酸は、第1のタンパク質成分をコードする核酸を第2のタンパク質成分をコードする核酸とフレーム内でクローニングすることにより得られる。第1のタンパク質成分と第2のタンパク質成分がペプチドリンカーを介して間接的に結合している時、リンカーをコードする核酸は分離され、融合タンパク質の2つのタンパク質成分とフレーム内である。
【0053】
抗体成分をコードする核酸は、本発明の抗体を発現するハイブリドーマ細胞から標準的分子生物学的方法を使用して単離される。あるいは抗体成分をコードする核酸は、再度標準的分子生物学的方法を使用して、本発明の抗体または抗原結合断片をコードするファージ表示または他のライブラリークローンから得られる。
【0054】
第2のタンパク質成分(毒性または避妊成分)の例をコードする核酸配列は当該分野で利用可能であり、例えば表2に示すEMBLデータベース文献を参照されたい。
【0055】
リンカーペプチドをコードする核酸は例えばリンカーペプチド配列をコードするオリゴヌクレオチドから新規合成される。
【0056】
抗体成分または融合タンパク質が適当なタンパク質発現系で発現されるためには、融合タンパク質をコードする核酸は適当なプロモーター、および随時適当な転写ターミネーターに機能できる形で結合している。一般に融合タンパク質をコードする核酸が機能できる形で結合したプロモーターは、核酸が導入される宿主細胞中で融合タンパク質の発現を指令することができる任意のプロモーターである。すなわち融合タンパク質の抗体成分を細菌細胞中で発現したい場合、プロモーターは細菌細胞中で機能できるであろう。同様に抗体成分または融合タンパク質を真菌発現系で発現したい場合、プロモーターは真菌細胞中で機能でき、構築体を哺乳動物細胞培養物発現系または植物発現系中に導入したい場合は同じ理論が適用される。抗体成分または融合タンパク質が植物細胞および/または植物中で発現される場合は、種子特異的プロモーターの使用が特に好ましい。本発明の核酸が適当な転写ターミネーター領域に機能できる形で結合される場合、これは、本発明の抗体成分または融合タンパク質が発現される宿主細胞中で転写の停止を仲介するものである。この目的に適した転写ターミネーター領域は当該分野で記載されている。
【0057】
本発明の抗体成分および/または融合タンパク質の発現のための適当な発現系には、微生物発現系、例えば細菌発現系(例えば、大腸菌(E.coli)、バシラス発現系)、および真菌系、例えば酵母(例えば、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア(Pichia)属の種、ハンゼヌラ(Hansenula)属の種、および他の真菌発現系(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属の種、トリコデルマ・ラエセイ(Trichoderma reesei)、およびノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)由来の糸状菌発現系);哺乳動物発現系、例えばCHO細胞、および植物発現系がある。本発明の融合タンパク質の発現に使用される好適な植物および植物細胞には、小麦、大麦、トウモロコシ、モロコシ、オート麦、イネ、およびキビがある。当業者はこれらの発現系を周知しており、これらは当該分野で充分に記載されている。
【0058】
本明細書に記載の新規げっ歯動物防除剤はまた、タンパク質結合体の形でもよい。すなわち本発明のさらなる態様は、毒性成分または避妊成分に化学的に結合した本明細書に記載の本発明の抗体成分を含むタンパク質結合体を提供する。ある実施態様において毒性成分または避妊成分は小さい化学物質であり、さらなる実施態様において毒性成分または避妊成分は、本発明の融合タンパク質に関し上記したタンパク質またはペプチドである。毒性成分が小さい化学物質である場合、本発明のこの態様で使用される適当な毒性成分の例は、コルヒチン;ドキソルビシン;カリケアミシン;非ステロイド抗炎症剤(NSAID)クラスの分子;サイトカラシン;抗凝固剤、例えばブロジフィクム、ジフェナクム、ブロマジオロン、フロクマフェン、ジフェチアロン、ヒドロキシクマリン類、インダン−ジオン類;カルシフェロール;ブロメタリン;フルプロパジン;亜リン酸亜鉛;シリロシド;(モノ)フルオロ酢酸ナトリウム;フルオロアセトアミド;アルファクロラロース;硫酸タリウムがある。
【0059】
避妊成分が小さい化学物質である場合、本発明のこの態様で使用される適当なホルモンおよびホルモン様化合物には、例えばプロゲステロンおよびエストロゲン(いずれも合成および天然)およびジアザコン(すなわち、20,25ジアザコレステロール)がある。
【0060】
タンパク質結合体の抗体成分は上記したように得られ、毒性成分または避妊成分に直接化学的に結合してもよい。典型的にはこの結合にはヘテロ2官能性物質の使用が関与し、これは当該分野で記載されているようにジスルフィドまたはチオエステル結合を与える(例えば、架橋試薬の使用に関する標準的方法については、Hermanson,G.T.「バイオ結合体法(Bioconjugate Techniques)」、アカデミックプレス(Academic Press)、ロンドン、1996を参照)。
【0061】
毒性成分または避妊成分が小さい化学物質であるさらなる実施態様において、毒性成分、ホルモンまたはホルモン様化合物はカプセル化され、カプセルは本発明の抗体または抗原結合断片に結合される。具体的な実施態様においてカプセルは、上記したように化学的結合を介して結合される。別の具体的な実施態様において本発明の抗体または抗原結合断片は、カプセルに結合する第2の結合成分に化学的に結合されるかまたはペプチド結合を介して融合される。例えば本発明の抗原結合断片は、二重特異的または多重特異的結合分子に1つの特異性を提供するのに使用され、ここで第2の(または追加の)特異性はカプセルのためであり、この第2の(または追加の特異性)は、カプセルに特異的に結合する分子(例えば抗原結合断片)により提供される。
【0062】
さらなる態様においてタンパク質結合体の抗体成分は、2つまたはそれ以上の毒性成分もしくは避妊成分に化学的に結合される。さらなる毒性成分または避妊成分は、タンパク質もしくはペプチド成分または小さい化学物質の形でもよい。少なくとも1つの毒性成分または避妊成分がタンパク質もしくはペプチド成分である場合、追加の成分は上記した毒素、免疫原、ホルモン、またはタンパク質性ホルモン模倣物でもよい。少なくとも1つのさらなる毒性成分または避妊成分が小さい化学物質である場合、これは上記した毒性成分またはホルモンまたはホルモン様化合物でもよい。
【0063】
本発明のこの態様のある実施態様において、それぞれがタンパク質結合体にげっ歯動物防除(すなわち、毒性または避妊性、または両方)機能を付与する少なくとも2つの追加の成分に化学的に結合した、上記した抗体成分を含むタンパク質結合体が作成される。第2の追加の成分(および追加の成分)は(それぞれ)、第1の追加の成分に対して同じかまたは異なるげっ歯動物防除機能を有し、ここでこれ(ら)が同じ機能を有する場合、これ(ら)は、本発明の融合タンパク質について上記したように、同じかまたは異なる(独立に異なる)作用モードを有する。ある具体的な実施形態においてタンパク質結合体は、第2の毒性成分または避妊成分の1つまたはそれ以上の分子に化学的に結合した上記抗体成分を含む。結合部位は、結合反応で使用される化学に依存する。2つの異なる追加の成分を第1の(抗体)成分に結合することが好ましい場合、異なる追加の成分が、第1の成分上の同じ部位への結合について互いに競合しないことを確実にするために、各追加の成分についての異なる化学的結合法を使用することが好ましい。
【0064】
本発明のさらなる態様において、上記した融合タンパク質またはタンパク質結合体を含むげっ歯動物防除剤が提供され、ここで融合タンパク質またはタンパク質結合体は少なくとも2つの抗体成分を含む。ある実施態様において各抗体成分は同じ標的タンパク質に結合し、こうしてその標的組織へのげっ歯動物防除剤の結合の確率を上昇させ、またげっ歯動物防除剤の結合活性を上昇させる可能性もある。かかる実施態様において抗体成分は同じかまたは異なるってよい。抗体成分が異なる場合、これは標的タンパク質中の同じRSEまたはRSPEに結合する異なる抗体成分を包含するか、またはさらに好ましくは各抗体成分が同じ標的タンパク質内の異なるRSEまたはRSPEに結合する異なる抗体成分を包含する。さらなる実施態様においてげっ歯動物防除剤は、少なくとも2つの異なる標的タンパク質に結合する抗体成分を含む。単一の標的タンパク質内の異なるRSEまたはRSPEに結合する抗体成分、および/または異なる標的タンパク質に結合する抗体成分を含む実施態様は、げっ歯動物防除剤に対して起きる耐性の発生を遅延させるのに、または可能な標的部位の1つの耐性を妨害するのに特に有用である。
【0065】
本発明の抗体、抗原結合断片、融合タンパク質、およびタンパク質結合体はげっ歯動物を防除するのに有用であり、例えばこれらは、げっ歯動物を死亡させる方法で、またはげっ歯動物の繁殖を防ぐ方法で使用される。すなわちさらなる態様において、本明細書に記載の抗体、抗原結合断片、融合タンパク質、またはタンパク質結合体を含むかこれらからなるげっ歯動物防除剤が提供される。
【0066】
第2のタンパク質成分が毒素であるかまたは抗体もしくは抗原結合断片が毒性成分もしくはタンパク質/ペプチド毒素に結合している本発明の融合タンパク質とタンパク質結合体は、げっ歯動物を死亡させることによりげっ歯動物防除を達成する(すなわち、かかる融合タンパク質とタンパク質結合体はその作用モードが殺鼠性である)。抗体または抗原結合断片成分がげっ歯動物の消化管の上皮で発現されるタンパク質を認識する場合、融合タンパク質またはタンパク質結合体は上皮に結合するであろう。融合タンパク質/タンパク質結合体中に存在する毒素または毒性成分の種類に依存して、毒素または毒性成分は細胞膜を破壊することがある。消化管の上皮の完全性が傷害され、消化管中に発生する病変がげっ歯動物を死亡させる。あるいは毒素または毒性成分が細胞内作用モードにより中毒を示す場合、結合した融合タンパク質またはタンパク質結合体はエンドサイトーシスを介するインターナリゼーションに依存する。融合タンパク質またはタンパク質結合体がいったん細胞に入ると、毒素/毒性成分は中毒を引き起こすことができ、これは最終的にげっ歯動物を死亡させる。
【0067】
第2のタンパク質成分が免疫原である融合タンパク質はまた、げっ歯動物細胞への摂取を必要とする。げっ歯動物細胞内にいったん存在すると、免疫原に対する免疫応答が始まる。すなわち免疫原が卵子または精子特異的抗原である場合、これは生殖の発生を防止する免疫応答を開始させる。融合タンパク質の抗体および抗原結合断片は、げっ歯動物に吸収される(エンドサイトーシスにより)免疫原の量を有利に増加させ、また補助剤として作用して、適当な免疫応答が始まる確率を上昇させる。
【0068】
第2のタンパク質成分または結合成分がホルモンまたはホルモン様化合物である本発明の融合タンパク質とタンパク質結合体は、同様にげっ歯動物細胞への摂取を必要とする。げっ歯動物細胞内にいったん存在すると、ホルモン/ホルモン様化合物は生殖のホルモン調節を妨害し、こうして繁殖を防ぐことによりげっ歯動物を防除する。
【0069】
本明細書に記載の融合タンパク質とタンパク質結合体の抗体/抗原結合部分のげっ歯動物特異性は、本発明のげっ歯動物防除剤にいくつかの利点を与える。げっ歯動物組織に対する高い特異性は、げっ歯動物防除剤がげっ歯動物組織に特異的に標的化することを意味し、こうして毒性/免疫学的/ホルモン成分の摂取/活性を促進する。次にこの特異的標的化は、有効な防除により必要なげっ歯動物防除剤がより少なく、環境に存在するげっ歯動物防除剤がより少なく、環境に存在するものが、非標的種には特異的ではなく、従って非標的種より吸収され損傷を引き起こす可能性が小さいことを意味する。
【0070】
本発明のげっ歯動物防除剤は、活性成分として本発明の融合タンパク質またはタンパク質結合体を少なくとも1つの添加剤、希釈剤、および/または担体とともに含む組成物として調製される。特定の添加剤には、例えばげっ歯動物の誘引物質として作用する化合物、げっ歯動物にとって組成物をおいしくする化合物、追加のげっ歯動物防除剤、およびげっ歯動物防除剤を安定化または防御するのに作用する化合物がある。適当な誘引物質には、小麦、大麦、トウモロコシ、モロコシ、オート麦、イネ、およびキビなどの食料がある。本発明で使用される美味増強化合物には、甘味剤(例えば、アセスルフェーム−K、アリテーム、アスパルテーム、ブラゼイン、シクラメート、サッカリン、スクラロース、ショ糖、グルコース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、タウマチン、モネリン、イソマルト、およびイソマルツロース)、植物油または動物油(例えば、トウモロコシ、大豆、およびピーナツ油、魚油)、および乾燥酵母がある。適当な安定性増強/防御性化合物には、げっ歯動物に摂取されるとタンパク質分解または加水分解からげっ歯動物防除剤を防御するかまたは防ぐもの、例えば制酸剤およびpH放出カプセルの生成で使用される化合物がある。
【0071】
本発明の組成物で使用される適当な希釈剤および担体には、既知のげっ歯動物防除剤とともに希釈剤および/または担体として使用されるもの、例えば蝋、および結合剤、例えばセルロースエーテル、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グアールガム、カラゲニン、ゼラチン、カラヤゴム、キサンタンゴム、アラビアゴム、ローカストビーンガム、トラガカントゴム、ペクチン、およびポリアクリレートがある。
【0072】
本発明の組成物は、上記添加剤、希釈剤または担体の任意の1つ以外におよび/またはその代わりに、例えば本発明の導入で記載したような追加のげっ歯動物防除剤を含む。特に本発明はまた、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の新規げっ歯動物防除剤と、少なくとも1つの第1世代抗凝固剤および/または少なくとも1つの第2世代抗凝固剤との混合物を含む。本発明のこの態様で使用される好適な第1世代抗凝固剤には、ヒドロキシクマリン類およびインダン−ジオン類があり、ワーファリン、クマコール、クマフリル、およびクマテトラリルが特に好適なヒドロキシクマリン類であり、プリンドン、ジファシノン、およびクロルファシノンが特に好適なインダン−ジオン類である。本発明のこの態様で使用される好適な第2世代抗凝固剤には、ブロマジオロン、ブロジファクム、ジフェナクム、フロクマフェン、およびジフェチアロンがある。
【0073】
本発明はまた、前記した少なくとも2つの新規げっ歯動物防除剤の混合物ならびにかかる混合物を含む組成物(前記)を包含する。例えばげっ歯動物防除剤がげっ歯動物で発現されるタンパク質の細胞外エピトープに結合する抗体成分である(すなわち抗体成分自体が機能性げっ歯動物防除剤である)場合、これは1つまたはそれ以上の追加のげっ歯動物防除剤と一緒にされ、ここで追加のげっ歯動物防除剤は抗体成分と1つまたはそれ以上の毒性成分または避妊成分を含む(すなわち1つまたはそれ以上の追加のげっ歯動物防除剤は本明細書に記載の融合タンパク質またはタンパク質結合体である)。さらなる態様において混合物は、本明細書に記載の2つまたはそれ以上の融合タンパク質および/またはタンパク質結合体を含む。
【0074】
ある実施態様において本発明の融合タンパク質は植物で産生され、発現される融合タンパク質を含有する植物物質はげっ歯動物防除の餌として使用される。好ましくは融合タンパク質を産生する植物は、げっ歯動物の食物源として作用することができるものであり、例えば小麦、大麦、トウモロコシ、モロコシ、オート麦、イネ、およびキビはすべて、本発明のこの態様に従って本発明の融合タンパク質の発現のために適した植物である。ある実施態様において、融合タンパク質は植物の種子中で発現されることが特に好適である。こうして本発明の融合タンパク質を発現する植物からの穀物は直接餌として使用される。
【0075】
本発明の上記した組成物ならびに本発明の融合タンパク質を含有する植物および/または穀物は、げっ歯動物防除剤として使用される。従ってさらなる態様において本発明は、げっ歯動物が常に出入りする場所にげっ歯動物防除剤を置き、該げっ歯動物の該げっ歯動物防除剤の摂取により該げっ歯動物が死亡するようにすることを含んでなる、げっ歯動物を死亡させる方法を提供する。当業者はまた本発明が、げっ歯動物が常に出入りする場所にげっ歯動物防除剤を置き、該げっ歯動物の該げっ歯動物防除剤の摂取により生殖能力が阻止されるようにすることを含んでなる、げっ歯動物の繁殖を防ぐ方法も提供することを理解するであろう。
【0076】
本発明のげっ歯動物防除剤の効力を試験するために、種々のインビトロおよびインビボ試験が行われる。適当なインビトロ試験の例は、Heylings 1991(Toxicol.Appl.Pharmacol.107:482−293)と実施例9に記載される消化管ループアッセイ(gut loop assay)である。
【0077】
本発明のげっ歯動物防除剤の殺鼠性のインビボ評価の典型的な方策は以下の要件に基づく:1)試験に使用される動物の数を最小にする、2)コストを低く維持する、3)有用な情報を迅速に得る、4)有望な活性物質を排除しない。
【0078】
試験条件が注意深く管理できるように、最初の試験は通常実験室で行われる。一連の試験操作が使用される。この一連の操作は、連続的決定プロセスを使用して活性物質を容認または拒絶することを可能にする。通常の被験体はノルウェー(Norway)ラット、ドブネズミ(Rattus norvegicus)およびハウスマウス(House mouse)、マウス(Mus domesticus)である。クマネズミ(Roof rat)は別の重要な被験体であるが、実験室系統としては利用可能ではなく、これは評価プログラムの後半の段階でのみ試験される。抗凝固剤に耐性であるげっ歯動物の系統もまた、これらの動物に対して効力を試験するために、実験室プログラムの後半の段階で使用される。
【0079】
実験室試験で活性があり有望な本発明のげっ歯動物防除剤は次に野外で評価される。野外試験はすべての重要な有害げっ歯動物種について種々の自然の条件で行われる。
【0080】
当業者は、容易に入手でき実験室(EPPO/OEPP.1999、殺鼠剤および殺鼠剤調製物の毒性と許容性の評価のための実験室試験;OEEP/EPPO PP1/113(2):89−101)と野外(EPPO/OEPP.1999、植物防御製品の効力評価のためのガイドライン:共ヒト生のげっ歯動物ハツカネズミ(Mus musculus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、クマネズミ(R. rattus)に対する野外試験;OEEP/EPPO PP1/114(2):102−113)での殺鼠剤の論理的な試験法を示すガイドライン文書を参照されたい。英国(著者名無し、2005、非農薬殺虫剤製品である殺鼠剤の認可のための効力データ要件についてのガイドライン、Health and Safety Executive、ブートル(Bootle)、英国、30頁)、ヨーロッパ連合(著者名無し、2002、殺生物剤製品の販売についてのヨーロッパ議会と協議会の支持98/8/ECの添付書類VIを支持する手引きの技術メモ。製品の許可と登録の一般的原理と実際的方法。欧州委員会、2002年7月、215頁)およびアメリカ合衆国における規制要件を満足する試験方法についての、勧告が入手できる。
【0081】
本発明のげっ歯動物防除剤の効力を評価するために実験室で行われる典型的な一連の試験には、経口挿管試験、無選択食餌試験、および選択食餌試験がある。これらの試験のさらなる詳細を以下に概説する。
【0082】
経口挿管:活性物質の力価を確立するための最初の試験は活性物質の送達であり、ポリエチレングリコールのような不活性液体で輸送されて、胃管栄養法を使用して被験体の胃に直接送達される。こうして致死用量パーセンタイル統計量を決定するために正確な用量が送達される。試験は、被験体種の消化管中の条件下で活性物質が活性を維持する能力および消化管膜の通過に関する情報を提供する。試験はまた活性物質の固有の毒性についての情報も提供する。
【0083】
無選択食餌試験:ほとんどすべての市販の殺鼠剤製品は調製された餌として提供されている。一連の試験の次の段階は、活性物質(この場合、本発明のげっ歯動物防除剤)を含有する餌の調製である。食用の餌として提供された時活性物質が活性があるかどうかを確立するために、「無選択食餌試験」(ここで個々にケージに入れられた被験体は提供された実験用餌のみを食べる)をまず行う。試験用餌は通常自由に利用できる。経口挿管試験で得られたような情報以外に、無選択食餌試験は、被験体種の消化過程で餌から取り出される活性物質の能力についての情報を提供する。
【0084】
選択食餌試験:調製餌中の活性物質により管理できるためには、げっ歯動物は代替自然食物の存在下で致死量を摂取するために充分量の餌を消費しなければならない。従って活性物質(すなわち本発明のげっ歯動物防除剤)のおいしさは評価のための重要な側面である。計量された濃度の餌基剤に活性物質を加える選択試験が行われる。個々にケージに入れた被験体に、活性物質を含有する試験餌と活性物質を含有しない同じ餌のいずれかを選択させる。被験体により検出される活性物質の濃度を確立するために、このような一連の試験を行う。通常このような検出は、活性物質を含有する餌を嫌うことで証明される。評価の重要な点は、被験体により検出され顕著な嫌悪感を示す濃度が、試験餌中の致死用量を与えるのに必要な濃度より低いことである。
【0085】
市販調製物の開発中に製造される実験的餌についてさらなる選択試験を行う。これらの選択試験は、実験的調製物と「抗原刺激食餌」の提供を含む。抗原刺激食餌は、実験的調製物の適度においしい代替物を提供するように構成される。かかる試験で使用される典型的な「抗原刺激食餌」は「EPA食餌」である。これは、一定量のオート麦、ひき割りトウモロコシ、糖および油を含む調製物である。その消費量が、被験体により消費される抗原刺激食餌と実験的調製物の合計の最小の30%を含む実験的調製物は、野外試験の候補と見なされるのが一般的である。
【0086】
実験室での試験後、野外環境で効力を試験する。げっ歯動物は、自然の条件下でのみ充分示される複雑で高度に適応性の行動を有する。従って野外条件下で殺鼠剤活性物質と調製品の有効性を評価するために野外試験が行われる。通常野外試験は、ある範囲の標的種に対して、実際的げっ歯動物防除処理が行われる環境に典型的な種々の自然環境で行われる。
【0087】
活性物質を含有する典型的な餌とともに提供された時、標的げっ歯動物種における自然の挙動を調べるために、野外試験は製品開発の早い段階で、市販化を目的とする実験的調製物を使用して行われる。
【0088】
次に野外試験はまた、実際的条件下でその効力を証明するために、市販の餌製品について行われる。
【0089】
本発明の種々の態様および実施態様を例により詳細に説明する。本発明の範囲を逸脱することなく、詳細部分の修飾が可能であることを理解されたい。
【0090】
不明確さを避けるために、本出願の本文内に文献、特許出願、または特許が引用されるが、該引用の全文は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0091】
実施例1 RSPEの作成と調製
1.1 ペプチドの選択と合成
げっ歯動物の消化管上皮上に存在するタンパク質標的候補は、文献とバイオインフォマティクスアプローチにより同定される。げっ歯動物特異的ペプチドエピトープ(RSPE)はこれらのタンパク質中で以下の基準に従って同定される:BLAST整列を使用してマウスとラット配列間の高配列同一性(好ましくは80〜100%同一性)と、げっ歯動物とヒト配列間の低配列同一性(好ましくは0〜40%同一性)、および他の種との有意なヒットが無い;その親水性プロフィール(表面確率の指標);柔軟性と2次構造の予測。親水性、柔軟性、および2次構造を予測するのに使用されるアルゴリズムは、DNAstarとVectorNTIスイートのプログラムにより提供される。
【0092】
いったん適当なRSPEが同定されると、ペプチドはFmoc固相合成を使用して合成され、約90%の純度まで精製される。以下の表3に示すペプチドが合成されている。
【0093】
該当する場合、キャリアータンパク質への指令結合を可能にするためにN末端システインが配列に付加される。あるいはおよび該当する場合、キャリアータンパク質への指令結合を可能にするためにN末端アミノ酸はブロックしないまま配列が合成される。結合の必要が無い時、N末端アミノ酸はアセチル化によりブロックされる。さらにC末端アミノ酸はアミド基によりブロックされる。
【0094】
【表4】

【0095】
1.2 BSAへのペプチドの結合
N末端システイン残基を含有するペプチドは、ヘテロ2官能性架橋剤m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステルを使用してBSAに結合される。BSA中の病変残基上の1級アミンとペプチド中のシステイン残基上のスルフヒドリル基を介して、KitagowaとAikawa、J.Biochemistry 79:233−236(1976)に記載のように結合が行われる。
【0096】
BSA(シグマ(Sigma)、プール(Poole)、ドルセット(Dorset)の25mg/ml溶液を0.2Mリン酸ナトリウム(pH7.0)中で調製し、MBS(ペルビオ(Perbio)、チェシャー(Cheshire))の25mg/ml溶液をジメチルホルムアミド(シグマ(Sigma))中で作成する。30μlのMBS溶液を1mlのBSA溶液を攪拌しながら滴下して加え、暗所で室温で45分インキュベートする。活性化BSA溶液を次に、あらかじめ0.2Mリン酸ナトリウム(pH7.0)で平衡化させておいたPD10ゲルろ過カラム(ジーイーヘルスケア(GE Healthcare)、バッキンガムシャー(Buckinghamshire))に通過させる。BSA含有画分を280mmの吸収で同定しプールする。2mgのペプチドを1mlの50mMリン酸ナトリウム(pH7.5)に溶解させる。充分な活性化BSA溶液をペプチドに加えて、30:1モル比のペプチド:BSAを得る。これは室温で4時間インキュベートし、次に4℃で暗所で混合しながら一晩インキュベートする。結合したペプチドを−20℃で保存する。
【0097】
N末端にリジン残基または1級アミンを含有するペプチドを、2工程グルタルアルデヒド法を使用してBSAに結合する。結合は、BSAとペプチド中の1級アミン基との間であり、これは「バイオ結合体法(Bio−conjugate Techniques)」、アカデミックプレス(Academic Press)、1996、583〜584頁の方法に基づく。
【0098】
BSAの10mg/ml溶液を0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム(pH6.8)中で作成する。グルタルアルデヒド(シグマ(Sigma))を最終濃度1.25%になるように加え、混合物を室温で攪拌しながら12時間インキュベートする。活性化BSA溶液をあらかじめPBSで平衡化させておいたPD10ゲルろ過カラムに通過させる。BSA含有画分を280mmの吸収で同定しプールする。2mgのペプチドを1mlの0.5M炭酸ナトリウム(pH9.5)に溶解させ、充分な活性化BSA溶液をペプチドに加えて、10:1モル比のペプチド:BSAを得る。混合物を室温で4時間インキュベートする。過剰の反応部位を40μlの1Mエタノールアミン(シグマ(Sigma))を加えてブロックする。結合したペプチドを−20℃で保存する。
【0099】
実施例2 抗体成分の作成
上記実施例1に記載されているように合成しBSAに結合したペプチドを使用して、げっ歯動物で発現されるタンパク質の細胞外エピトープに結合する抗体を作成する。
【0100】
2.1 ウサギ免疫プロトコール
ニュージーランド白色ウサギをポリクローナル抗体産生のために使用する。最初の投与でフロインド完全アジュバント(シグマ(Sigma))を使用してウサギに100μgのタンパク質を皮下投与して免疫する。次に28日、56日、および84日目に、フロインド不完全アジュバント(シグマ(Sigma))中の100μgのタンパク質を皮下投与して3回の追加免疫を行う。最初の免疫の前に前血液を採取し、第3回目の投与後の10〜14日目に試験血液を採取し、第4回目の投与後10〜14日目にハーベスト(harvest)血液を採取する。
【0101】
以下のRSPEのそれぞれについて、2羽のウサギを免疫し、ポリクローナル抗体血清を作成した:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号15。
【0102】
以下のRSPEのそれぞれについて1羽のウサギを免疫した:配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、配列番号32、配列番号34。
【0103】
2.2 マウス/ハムスター免疫プロトコール
モノクローナル抗体産生のためにマウスとハムスターを使用し、最初の投与でフロインド完全アジュバント中の20μgのタンパク質を皮下投与して免疫する。次に、28日と56日目に20μgのタンパク質を2回皮下投与する。用量は28日目にフロインド不完全アジュバント中で投与し、56日目はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で投与した。投与3後の7日目に試験血液を採取した。3回目の投与後少なくとも6週間後に、マウスをPBS中の20μgのタンパク質を静脈内投与して追加免疫する。4日後、融合のために脾臓を採取する。
【0104】
以下のRSPEのそれぞれでマウスを免疫し、ポリクローナル抗体血清を作成した:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号27、配列番号28、配列番号29。
【0105】
2.3 モノクローナル抗体の産生
Kohler G.とMilstein C.(Nature 256:495−497(1975))に基づく方法を使用して、モノクローナル抗体を作成する。採取した脾臓から、ダルベッコー改変イーグル培地(DMEM、インビトロゲン(Invitrogen)、ペイズリー(Paisley))を用いて20ゲージ針付きシリンジでリンパ球を洗浄する。NS0ミエローマ細胞(ヨーロッパ細胞培養物コレクション(European Collection of Cell Cultures)、ポートンダウン(Porton Down)、ソールズベリー(Salisbury))を、10%(v/v)胎児牛血清(ピーエーエー(PAA)、イエオビル(Yeovil)、サマーセット(Somerset))、2mM L−グルタミン、1×HTサプリメント、および50単位/mlペニシリンと50μg/mlストレプトマイシン(すべてインビトロゲン(Invitrogen)より)を含有するDMEM中で37℃で5%CO2で、5×105/mlの密度まで培養する。単一の脾臓からのリンパ球(約2×108)を2×107のNS0ミエローマ細胞と混合する。2000×gで4分間遠心分離後、細胞ペレットを静かに再懸濁し、75mMヘペス緩衝液(pH8)(ロッシュ(Roche)、ルイス(Lewes)、イーストサセックス(East Sussex))中の50%(w/w) ポリエチレングリコール(1500)の1mlを滴下して加えて融合させる。H1クローニングサプリメント(ロシュ(Roche))を補足した完全培養培地(前述)を最終容量50mlになるまでゆっくり数分間かけて加える。得られた融合溶液を5つの無菌マイクロタイター細胞培養プレート(ヌンクロン(Nunclon)、フィッシャー(Fisher)、ローボロー(Loughborough)、レイチェスタシャー(Leicestershire))で100μl/ウェルで4時間37℃で5%CO2で培養した後、4%(v/v)1×HAT選択培地(インビトロゲン(Invitrogen))を含有する完全培養培地100μl/ウェルを加える。融合の14日後、抗体捕捉酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して、Engvall E.とPerlmann P.、Immunochemistry 8:871−874(1971);Harlow E.ら、「抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1988,182〜183頁に記載の方法に基づいて、培養上清をペプチド特異的抗体について測定する。限界希釈と次の再測定により少なくとも2回のクローニングして選択ハイブリドーマ細胞を採取し、ハイブリドーマのクローン性と安定性を確認する。胎児牛血清中10%(v/v)のDMSO(シグマ(Sigma)、プール(Poole)、ドルセット(Dorset))からなる凍結培地中で、凍結速度1℃/分で80分間、次に液体窒素中で保存して、凍結ハイブリドーマのバンクを調製する。選択されたモノクローナル抗体をスケールアップ組織培養により産生する。
【0106】
配列番号1、配列番号5、配列番号11、配列番号6および配列番号27で免疫したマウスの脾臓からのリンパ球を使用して、ハイブリドーマ融合体が得られた。マウスGLUT7(配列番号11)からのRSPEに対する抗体を産生する4つの安定なモノクローナル細胞株を単離し、増殖させ、凍結する。ラットCFTR(配列番号5)からのRSPEに対する抗体を産生する4つの安定なモノクローナル細胞株が単離された。ラットPepT1(配列番号1)からのRSPEに対する抗体を産生する7つの陽性モノクローナル細胞株を単離し、増殖させ、凍結した。
【0107】
2.4 ファージ表示ライブラリーからの抗体成分の同定と単離
2.4.1 ナイーブなカメリド(Camelid)VHHファージ表示ライブラリーのスクリーニング
上記実施例1.2に記載のように化学合成と以後のBSAへの結合により、ナイーブなラーマ・グラーマ(Llama glama)VHHM13糸状ファージ表示レパートリーのスクリーニングのためのRSPEを調製する。ファージ表示免疫結合ドメインのスクリーニングは、McCaffertyとJohnson(「ペプチドとタンパク質のファージ表示(Phage Display of Peptides and Proteins)」、98〜100頁、Kay、WnterとMcCafferty編、1996、アカデミックプレスインク(Academic Press,Inc.))に記載されたような確立された方法に従う。RSPE::BSA結合体を、50mM炭酸水素ナトリウム(pH9.6)緩衝液で100μg/mlの濃度で適用して一晩インキュベートして、マキシソルブイムノチューブ(Maxisorb Immunotubes)(ヌンク(Nunc))の内表面に接着させる。PBSで3回洗浄して遊離のRSPE::BSA結合体を取り出し、次にPBS/2%スキムミルクタンパク質(PBSM)を添加し37℃で2日間インキュベートして表面をブロックする。イムノチューブを必要なRSPEで感作後、4mlのPBSM中1012〜1013のファージを添加し室温で2時間インキュベートして「パニング」を行う。この工程の後、チューブの内容物を吸引し、チューブをPBS/0.1%ツイーン20で20回洗浄し、次にPBSでさらに20回洗浄する。次にイムノチューブ結合ファージ(大部分のRSPE::BSA特異的VHH結合物である)を1mlの100mMグリシン(pH3.0)を10分間添加して溶出させる。溶液を0.5mlの1Mトリス−塩酸(pH7.4)を含有する新鮮なチューブに移して中和する。次に溶出したファージを使用して、混合し37℃で30分インキュベートして対数期のTG1大腸菌(E.coli)細胞を感染させて、次に24×24cmの2×Y/2%グルコース/100μg/mlアンピシリンプレート(ヌンクバイオアッセイディッシュ(Nunc BioAssay Dish))に蒔いて37℃で一晩インキュベートする。翌日プレートを引っ掻いて、RSPE::BSAに結合体に対する結合特異性を有する配列を含有する細胞(これは、ファジミッドクローンの濃縮され増加した集団である)を取り出す。RSPEに対する高親和性を示すこの集団からクローンをさらにスクリーニング/選択するために、ヘルパーファージ(例えばM13−KO7またはVCS−M13)を添加してファージ粒子を「レスキュー」する。簡単に説明すると、最後の工程からの細胞を250mlの円錐フラスコ中の50mlの2×YT/2%グルコース/100μg/mlアンピシリン中に接種し、OD600が約0.5になるまで30℃でインキュベートする。次にヘルパーファージを加えて、1:1比のヘルパーファージ対細菌(典型的には2×1010pfu/50ml)を得て、次に37℃で1時間インキュベートする。次に細胞を3000gで10分間遠心分離して沈降させ、上清を捨て、細胞ペレットを再懸濁し、これを使用して2リットルのフラスコ中の新鮮な培地[500mlの2×YT/100μg/mlアンピシリン/50μg/mlカナマイシン(グルコース無し)]に接種する。この培養物を激しく攪拌しながら30℃で一晩インキュベートし、次に100mlの20%PEG/2.5M NaClを4℃で30分添加してファージ−VHH粒子を採取する。次に沈降したファージを4000gで10分間遠心分離して集め、5mlのPBSに再懸濁し、次のスクリーニングの準備ができる。各ラウンドのパニングでイムノチューブを感作するのに使用されるRSPE::BSA結合体の量を減らすことにより、選択プロセスの効率が改良される。さらにいくつかの物理化学的特性(例えばタンパク質分解安定性)を示すファージ−VHH粒子の選択に偏らせる工程を含むように、選択プロセスを調整することができる。例えばM13ファージ粒子はいくつかのタンパク質分解酵素(例えばトリプシンおよびキモトリプシン)によるタンパク質分解に対して耐性(Schwindら、1992、Eur.J.Biochem.210:431−436)であり、この性質は構造的に安定な変種の選択のためにファージ表示で利用することができる(KristensenとWinter、1998、Folding & Design 3:321−328)ことが知られている。
【0108】
RSPEに対する所望の親和性と選択性を示す個々のクローンを選択するために、2×YT/2%グルコース/100μg/mlアンピシリンプレート(パニング工程後に溶出ファージにより感染させたTG1大腸菌(E.coli)の連続希釈試料から得られる)上のユニークなコロニーを取り上げ、ウェル当たり150μlの2×YT/2%グルコース/100μg/mlアンピシリンを含有する96ウェル培養ブロックに並べ、OD600が約0.5に達するまで30℃で振盪してインキュベートする。次に各ウェルにヘルパーファージを加えて、1:1比のヘルパーファージ:細菌を得て、次に37℃で1時間振盪してインキュベートする。次に細胞を3000gで遠心分離して沈降させて培地を除去し、1.5mlの2×YT/100μg/mlアンピシリン/50μg/mlカナマイシン(グルコース無し)と交換し、激しく振盪しながら30℃で一晩インキュベートを続ける。次に20%PEG/2.5M NaClを4℃で30分添加し4000gで遠心分離して各ウェルからファージ粒子を採取し、PBSに再懸濁する。これらのクローンファージ試料は、抗ファージ抗体−HRP複合体を使用して固定化RSPEに対する相対的結合親和性を測定するELISAで使用するか、または非アンバーサプレッサー大腸菌(E.coli)宿主(HB2151株)をファージで感染させて可溶性VHHが発現させるのに使用される。IPTG誘導を使用して96ウェル培養物と可溶性の分泌されたVHHの発現が可能になり、粗培養培地(可溶性VHHを含有する)またはIMAC精製VHH(内部ヘキサヒスチジンタグにより)をELISAで使用して、固定化RSPEへの結合を測定する。この場合適当な検出抗体は、可溶性VHHタンパク質上に存在するc−Mycタグを検出する9E10−HRP(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))である。
【0109】
まず、上記したナイーブなカメリド(Camelid)ファージ表示ライブラリーに対して以下のRSPEをRSPE::BSA結合体としてスクリーニングする:配列番号5を有するRSPE、配列番号6を有するRSPE、配列番号11を有するRSPE、配列番号27を有するRSPE。このスクリーニングから同定されるVHHクローンは次に、本明細書に記載の融合タンパク質と抗体結合体の産生に使用される。
【0110】
2.5 組換え抗体結合ドメインのクローニングと発現
1本鎖抗体(さらに具体的にはscFv)の作成プロセスを例示するために、ハイブリドーマHB−8766(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection);Retigら、1989、US4851332)からのSV63マウスモノクローナル抗体(MAb)(いくつかの結腸直腸腫瘍により発現されるヒトアルカリホスファターゼからの細胞表面エピトープを認識する)を、モデル細胞表面抗原結合タンパク質として使用する。このIgG1 MAbからscFv分子を誘導するために、文献[例えば、Dubelら、1994,Jounal of Immunological Methods 175:89−95;McCaffertyとJohnson、「ペプチドとタンパク質のファージ表示(Phage Display of Peptides and Proteins)」、95頁、Kay、WnterとMcCafferty編、1996、アカデミックプレスインク(Academic Press,Inc.)]に記載のように、げっ歯動物Fvおよび定常ドメイン特異的プライマーセットを用いるRT−PCRを使用して、文献に記載された個々のプライマーに対する修飾を使用して、ハイブリドーマからFv配列をクローン化する。この例で使用したプライマーの配列を以下の表4に示す。
【0111】
【表5】

【0112】
2.5.1 ハイブリドーマRNAの単離とcDNA合成
ハイブリドーマ細胞(107)を遠心分離し、1mlのトリゾール(Trizol)(登録商標)と200μlのクロロホルムに再懸濁した。試料を室温で15分間激しく混合し、次に12000gで4℃で15分間遠心分離した。水層を除去し、等量のイソプロパノールを加える。試料を12000rpmで4℃で15分間遠心分離してRNAを沈降させ、これを70%エタノールで洗浄し、次にRNaseを含まない水に再懸濁する。
【0113】
5μlのRNA、0.1UのRNase不含DNaseI(アンビオン(Ambion))および1UのRNasinを含有する10μlの反応物中でRNase不含DNaseで処理して、RNAから微量のゲノムDNAを除去した。混合物を37℃に30分間入れ、次に80℃で5分間インキュベートした。
【0114】
次にDNaseI処理RNAを製造業者の標準条件(1.5μl RNA、50μl総反応容量、オリゴdTプライマー)下でアクスクリプト(Accuscript)(ストラタジーン(Stratagene))反応で使用して、第1鎖cDNAを産生する。
【0115】
2.5.2 SV63VH領域の単離とクローニング
SV63RNAから得られた鋳型としての1μlのオリゴdTプライムした第1鎖cDNA、オリゴヌクレオチドRoPro−9(配列番号37)およびRoPro−28(配列番号38)を使用して、PCRを行った。
反応容量25μlで0.5MのGH−RICH分解緩衝液を用いて、ロシュ(Roche)GC−RICH PCRシステムを使用した。
【0116】
反応は以下のサイクリング条件を用いてストラタジーンロボサイクラー(Stratagene Robocycler)で行った。
サイクル1〜5 サイクル6〜35 最終伸長
94℃ 30秒 94℃ 30秒
54℃ 30秒 60℃ 30秒
72℃ 60秒 72℃ 60秒 72℃ 300秒
【0117】
この反応からのPCR産物の収率は非常に低かった。従って産生された分子をさらに増幅するために第2のPCRを行った。
【0118】
上記反応からの2μlのPCR産物を鋳型として使用して、以下のオリゴヌクレオチドプライマー対を使用して2つの反応を設定した:i)RoPro−6(配列番号39、RoPro−9(配列番号37)やRoPro−25(配列番号30、3’ネステッド)より特異性は低い)、およびii)RoPro−9(配列番号37)とRoPro−28(配列番号38)。PCRは上記したように行った。
【0119】
上記反応の試料を1%アガロース/TBEゲル上に流し臭化エチジウムで染色すると、両方のPCRが約400bpのDNA断片を含有した。上記反応2からのPCR産物を単離し、ゲネクリーンスピン(Geneclean Spin)キットを使用して精製し、pCRTOPOBluntII(インビトロゲン(Invitrogen))にクローン化した。
【0120】
8つのTOPOクローンをDNA配列決定により完全に解析すると、これらのクローンの1つは、UniProt/IPIデータベースのBALSTP解析により測定すると典型的(しかしユニーク)なVH配列の特徴を有した。
【0121】
2.5.3 SV63VH領域の単離とクローニング
SV63 RNAから得られた鋳型としての2μlのオリゴdTプライムした第1鎖cDNA、オリゴヌクレオチドRoPro−3(配列番号41)およびRoPro−4(配列番号42)を使用して、PCRを行った。反応容量50μlでストラタジーン(Stratagene)Pfu Ultra DNAポリメラーゼを使用し、MJ Research Dyadサーマルサイクラーで以下のサイクリング条件を使用して反応を行った:95℃、1分、次に[95℃、1分;52℃、1分;68℃、3分]を40サイクル、次に68℃、10分で最後の伸長。
【0122】
上記反応の試料を1%アガロース/TBEゲル上に流し臭化エチジウムで染色すると、約350bpの断片が観察された。このPCR産物を単離し、キアクイック(QiaQuick)(キアゲン(Qiagen))ゲル溶出を使用して精製し、pCRTOPOBluntII(インビトロゲン(Invitrogen))にクローン化した。
【0123】
5つのTOPOクローンをDNA配列決定により完全に解析すると、これらのクローンのうちの4つは同じであり、UniProt/IPIデータベースのBALSTP解析により測定すると典型的(しかしユニーク)なVL配列の特徴を有した。5つのクローンのうちの1つは、ハイブリドーマの作成で使用したミエローマ融合パートナーから増幅された無関係の配列であるMOPC21カッパ軽鎖可変配列(スイスプロット(Swissprot):P01634)と同一の配列を含有した。
【0124】
2.5.4 scFv構築体へのVHとVL配列のアセンブリー
PCR重複伸長(「スプライス重複伸長」(SOE)としても知られている)を使用して、2つの配向のSV63 scFv:(i)VH−[Gly4Ser]3リンカー−VLと(ii)VL−[Gly4Ser]3リンカー−VHを作成し、それぞれは、大腸菌(E.coli)発現ベクターpDGF[NEBベクターpMALc−2から得られる、pDGFは、マルトース結合タンパク質(これは切断されている)をコードする配列以外のpMALc−2のすべての特徴を含む]とpIMS147(HayhurstとHarris、1999、Protein Expression and Purification 15:336−343)中にN末端PelBリーダー配列とC末端FLAG、およびヘキサヒスチジンタグを含有する。以下の表5は、使用したオリゴヌクレオチドプライマーとその目的を示す。
【0125】
【表6】

【0126】
L−[Gly4Ser]3リンカー−VH scFv配列を作成するために、PCRを2工程で行った。第1の工程は2つの反応からなり、i)構築体の5’側の半分を増幅するための鋳型としてscFvオリゴ1と2(それぞれ配列番号43と44)とpCRTOPOBluntII SV63VLクローン;ii)構築体の3’側の半分を増幅するための鋳型としてscFvオリゴ3と4(それぞれ配列番号45と46)とpCRTOPOBluntII SV63VHクローンを含有した。第2の工程はSOEを使用して、相補的3’と5’末端(それぞれ)をアニーリングして(i)と(ii)からの2つの断片を連結し、ポリメラーゼを添加して完全長産物まで伸長し、次にscFvオリゴ1と4(それぞれ配列番号43と46)を使用して増幅した。
【0127】
同様の方法でVH−[Gly4Ser]3リンカー−VL scFv配列を作成した。第1の工程は2つの反応からなり、i)構築体の5’側の半分を増幅するための鋳型としてscFvオリゴ5と6(それぞれ配列番号47と48)とpCRTOPOBluntII SV63VHクローン;ii)構築体の3’側の半分を増幅するための鋳型としてscFvオリゴ7と8(それぞれ配列番号49と50)とpCRTOPOBluntII SV63VLクローンを含有した。第2の工程はSOEを使用して、相補的3’と5’末端(それぞれ)をアニーリングして(i)と(ii)からの2つの断片を連結し、ポリメラーゼを添加して完全長産物まで伸長し、次にscFvオリゴ5と8(それぞれ配列番号47と50)を使用して増幅した。
【0128】
第1工程の反応はRoche GCRICHキットと製造業者の条件(反応容量25μl中の0.5M濃度のGC−RICH分解緩衝液を用いる)を使用して行った。反応はストラタジーンロボサイクラー(Stratagene Robocycler)を用いて以下のサイクリング条件で行った。
サイクル1〜2 サイクル3〜27 最終伸長
94℃ 30秒 94℃ 30秒
54℃ 30秒 65℃ 30秒
72℃ 60秒 72℃ 60秒 72℃ 300秒
【0129】
上記反応の試料を1%アガロース/TBEゲルで分析し、臭化エチジウムで染色すると、これらは、すべての4つの予測されたDNA断片が産生されていたことを明らかにした。
【0130】
第2工程SOE反応は、製造業者の条件(反応容量25μl中の0.5M濃度のGC−RICH分解緩衝液を用いる)を使用して、ロシュ(Roche)GC−RICHキット反応液中で適切な断片対をほぼ等量で混合して行った。
サイクル1〜2
94℃ 30秒
65℃ 30秒
72℃ 60秒
【0131】
この反応はプライマー伸長として作用して完全長融合体を産生する。次にオリゴヌクレオチドプライマーを加えて、以下のサイクリング条件を使用して完全長分子をPCR増幅した。
サイクル3〜15 最終伸長
94℃ 30秒
65℃ 30秒
72℃ 60秒 72℃ 300秒
【0132】
上記SOE反応の試料を1%アガロース/TBEゲルで分析し、臭化エチジウムで染色すると、両方の反応物は約750bp(予測されたサイズ)のDNA断片を含有することが証明された。
【0133】
SOE産物を単離し、ゲネクリーンスピン(Geneclean Spin)キットを使用して精製し、pCRTOPOBluntII(インビトロゲン(Invitrogen))にクローン化した。各SOE産物(VH->VLおよびVL->VH)について、TOPOクローンをDNA配列決定により完全に解析した。次に、NdeIとEcoRIを使用してpCRTOPOBluntIIからscFv配列を切り出してpDGF発現構築体(pDGF−SV63−VHVLとpDGF−SV63−VLVH)を作成し、次に同様に調製したpDGFベクター骨格DNA中に連結した。NcoIとEcoRIを使用してpCRTOPOBluntIIからscFv配列を切り出してpIMS147発現構築体(pIMS−SV63−VHVLとpIMS−SV63−VLVH)を作成し、次に同様に調製したpIMS147ベクター骨格DNA中に連結した。連結反応物を製造業者の説明書と同定された形質転換体とを使用して、大腸菌(E.coli)TOP10細胞(インビトロゲン(Invitrogen))に形質転換した。正しいpIMS147−SV63 scFvとpDGF−SV63 scFvクローンをDNA配列解析により同定して、読みとり枠の維持と配列の正確性を確認した。
【0134】
2.5.5 大腸菌(E.coli)中の組換えscFvタンパク質の発現
Charltonが記載した指針(「抗体の工学作成:方法とプロトコール(Antibody Engineering:methods & protocols)」、245〜254頁、B.K.C.Lo編、フマナプレス(Humana Press)、2004)に従って、pIMSSV63−scFv大腸菌(E.coli)TOP10クローンを可溶性scFvタンパク質の発現について試験した。簡単に説明すると、選択されたクローンの一晩培養物を使用して、500mlの2TY(amp/glu)(1リットル中に16g バクト−ペプトン/5g 酵母エキス/5g NaCl/2%(w/v)グルコース(pH7.5)+100μg/mlアンピシリン)を2.5リットルのフラスコに接種し、これを次に、OD600が約0.8に達するまで37℃で250rpmでインキュベートした。この時点で、3000gで遠心分離して細胞を採取し、2.5リットルフラスコ中の500mlの新鮮な2TY(amp/glu)(1リットル中に16g バクト−ペプトン/5g 酵母エキス/5g NaCl/0.4M ショ糖(pH7.5)+100μg/mlアンピシリン)に移した。次に30℃で250rpmで1時間インキュベーションを開始し、次にIPTGを最終濃度1mMで加えた。次にインキュベーションをさらに16時間行い、この時点で細胞と培地を採取し、SDS−PAGEとウェスタンブロット法を使用して組換えscFvの存在について分析した。抗FLAG M2−HRP抗体(シグマ(Sigma))をBM POD発色基質溶液(ロシュ(Roche))とともに使用するウェスタン解析は、両方の配向のscFvの培地試料について可溶性細胞溶解物と培地試料で、組換えタンパク質(約30kDaの予測されたサイズの分子量)の良好なレベルの発現を示した。
【0135】
IMACカラムクロマトグラフィーを使用して組換えscFvタンパク質を精製し、Caco2Bbe1細胞(CRL−2102、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection))を使用して免疫細胞化学アッセイで抗原結合について親SV63 MAbとの競合により機能を試験した。両方の配向のscFvが、細胞表面への親SV63 MAbの結合を阻害することが観察され、作成されたscFv中の抗原結合表面の維持を示していた。
【0136】
実施例3 抗体精製
3.1 ペプチド親和性カラムの調製
ポリクローナル血清からのペプチド特異的抗体の精製のために、ペプチド親和性カラムを作成する。ペプチドのN末端残基により、カラム調製の2つの方法の1つを使用した。これらは、親和性マトリックスとしてスルホリンク(SulfoLink)またはアミノリンク(AminoLink)結合ゲルを使用した。
【0137】
スルホリンク結合ゲル(ペルビオ(Perbio))は、親和性精製法で使用するためのアガロースゲル支持体へのスルフヒドリル含有ペプチドの共有固定化を可能にする。製造業者により提供され以下に要約されるプロトコールを使用して、RSPEをこのゲルに結合する。
【0138】
10mlのスルホリンクゲルスラリー(5mlのゲルベッド容量)を室温に平衡化させる。ゲルスラリーをカラムに注ぎ、20mlの結合緩衝液(50mMトリス、5mM EDTA、pH8.5)(シグマ(Sigma))で平衡化させる。1mgの合成ペプチドを5mlの結合緩衝液に溶解し、カラムに加える。カラムを密封し、室温で15分間転倒混合してインキュベートし、次にゲルを30分間沈降させる。過剰の緩衝液を排水させ、次にカラムを15mlの結合緩衝液で洗浄する。非特異結合部位を5mlの結合緩衝液中50mM 塩酸L−システイン(シグマ(Sigma))でブロックする。カラムを密封し、上記したように混合有りおよび混合無しでインキュベートする。カラムを30mlの1M塩化ナトリウム(シグマ(Sigma))で洗浄し、0.05%アジ化ナトリウム(シグマ(Sigma))を含有する10mlの脱気したPBS(pH7.2)を加えて保存の準備をする。結合カラムを4℃で保存する。
【0139】
アミノリング結合ゲル(ペルビオ(Perbio))は、親和性精製法で使用するためのアガロースゲル支持体へのペプチドの1級アミンを介する共有固定化を可能にする。製造業者により提供され以下に要約されるプロトコールを使用して、RSPEをこのゲルに結合する。
【0140】
10mlのアミノリンクゲルスラリー(5mlのゲルベッド容量)を室温に平衡化させる。ゲルスラリーをカラムに注ぎ、20mlの結合緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、pH7.5、0.05%アジ化ナトリウム)で平衡化させる。1mgの合成ペプチドを5mlの結合緩衝液に溶解する。次に0.01M水酸化ナトリウム(シグマ(Sigma))で作成した1Mシアノ水素化ホウ素ナトリウム250μlをペプチド溶液に加え、これをカラムに注ぐ。カラムを密封し、室温で6時間転倒混合してインキュベートする。カラムを靜置させ、次に上清を除去する。5mlの1Mトリス−塩酸pH7.4(シグマ(Sigma))と0.01Mの水酸化ナトリウムで作成した1Mのシアノ水素化ホウ素ナトリウム250μlとを加える。カラムを密封し、室温で30分間転倒混合してインキュベートする。カラムを30mlの1M塩化ナトリウムで洗浄し、0.05%アジ化ナトリウムを含有する10mlの脱気したPBSを加えて保存の準備をする。結合カラムを4℃で保存する。
【0141】
3.2 ポリクローナル血清からのペプチド特異的抗体の精製
ポリクローナルウサギ血清を2500×gで10分間遠心分離し、0.45ミクロン膜を使用してろ過し、次にPBSで1:1希釈する。ペプチド親和性カラムを室温にし、次に4カラム容量のPBSで平衡化させる。調製した血清溶液をカラムに加え、フロースルーをカラムに戻す。カラムを6カラム容量のPBSで洗浄する。0.1M グリシン−HCl(pH3.0)(シグマ(Sigma))をカラムに適用してペプチド特異的抗体を溶出し、0.1mlの1Mトリス−塩酸(pH8.0)を含有するチューブ中に1ml画分で集める。次にタンパク質含有画分を280nmの吸光度で同定しプールする。精製した抗体を、10,000分子量カットオフ(ペルビオ(Perbio))を有するスライド−a−ライザー(Slide−a−Lyser)カセットを使用してPBSに透析し、−20℃で保存する。一方カラムを3カラム容量の0.1Mグリシン−HCl(pH2.5)、次に8カラム容量のPBSで再生する。
【0142】
3.2 モノクローナル抗体の精製
タンパク質G親和性クロマトグラフィーによりHiTrapタンパク質GHP1mlカラム(ジーイーヘルスケア(GE Healthcare))を使用して培養上清から、モノクローナルIgGを精製する。培養上清を2500×gで10分間遠心分離し、使用前に0.45ミクロン膜を使用してろ過する。全体を通して最大流速は1ml/分である。カラムを10カラム容量のPBS(pH7)で平衡化し、試料をのせる。カラムを10カラム容量のPBSで洗浄する。0.1Mグリシン−HCl(pH3.0)(シグマ(Sigma))をカラムに適用して抗体を溶出し、0.1mlの1Mトリス−塩酸(pH8.0)を含有するチューブに1ml画分を集める。次にタンパク質を含有する画分を280nmの吸光度で同定し、プールする。精製した抗体を、10,000分子量カットオフ(ペルビオ(Perbio))を有するスライド−a−ライザー(Slide−a−Lyser)カセットを使用してPBSに透析し、−20℃で保存する。一方カラムを10カラム容量の0.1Mグリシン(pH2.5)で再生し、10カラム容量のPBSで洗浄し、20%エタノール中で4℃で保存する。
【0143】
実施例4 抗体の性状解析
4.1 酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)による抗ペプチド抗体の力価測定
ペプチド結合体で免疫したウサギ、マウスまたはハムスターから得られた血清を、Engvall E.とPerlmann P.、Immunochemistry 8:871−874(1971):Harlow E.ら、「抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1988、182〜183頁に記載された方法に基づき、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定して、抗体応答の相対的強さを測定する。
【0144】
35mMの重炭酸ナトリウム、15mM炭酸ナトリウム(pH9.5)中の2μg/mlのペプチド溶液を100μl/ウェルで96ウェルマイクロタイタープレートに加え、少なくとも4時間4℃でインキュベートする。次にプレートをPBS、0.05%ツイーン20(PBST)(シグマ(Sigma))で3回洗浄する。残存する結合部位を1%スキムミルク粉末(マーベル(Marvel)、プレミアフーズ(Premier Foods)、セントアルバンス(St.Albans))を含有する200μl/ウェルのPBSで室温で30分間ブロックする。上記のように洗浄後、PBSTをプレートに100μl/ウェルで加える。血清の最初の希釈物をカラム1の二重でウェルに加え、次にプレートのウェルを通して二倍希釈していき、PBSTのみを含有するカラム12のウェルを残す。プレートを室温で2時間インキュベートする。上記のようにさらに洗浄後、プレートを、PBSTで1/10,000に希釈した適切な抗種結合抗体で室温で1時間インキュベートする。ウサギ血清試料をヤギ抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(シグマ(Sigma))とインキュベートする;ハムスター血清をウサギ抗シリアンハムスターIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体(ストラテク(Stratec)、ソハム(Soham)、ケンブリッジシャー(Cambridgeshire))とインキュベートする;そしてマウス血清試料をウサギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体(シグマ(Sigma))およびヤギ抗マウスIgG Fc断片HRP結合体(シグマ(Sigma))とインキュベートする。10mlの24mMクエン酸、60mMのリン酸ナトリウム(pH5.0)中で1mgの3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン二塩酸塩(シグマ(Sigma))を含有する1つの錠剤を希釈し、2μlの30%過酸化水素溶液(シグマ(Sigma))を加えて、基質溶液を調製する。さらに洗浄後、新鮮な基質溶液を100μl/ウェルでプレートに加え、プレートを暗所で室温で30分間放置する。得られる発色を50μl/ウェルの3M硫酸を加えて停止させる。次にプレートの光学密度を450nmでマイクロプレートリーダーを使用して読む。
【0145】
4.2 ELISAの結果
4.2.1 ウサギからのポリクローナル抗血清
以下の標的タンパク質(上記実施例2.1参照)、ラットオリゴペプチドトランスポーターPepT1、ラットCD155(PVR−ポリオウイルス受容体;Tage4)、ラットGTR2、ラットCFTR、ラットCNT2、ラットMDR1、マウスMDR1、ラットスクラーゼ−イソマルターゼ、マウスGLUT7、ラットGTR5、ラットOATP−B、ラットGCC、ラットPLB、ラットLPH、ラットAMPN、ラットMCDL、およびラットSCABからのRSPEで免疫したウサギからの第3回目の投与後に取った血清を、上記実施例4.1に記載のペプチドELISAにより測定した。各ウサギからの試験血清および免疫前血清を免疫ペプチドに対する力価測定により評価した。50%結合力価値(最大シグナルを50%に下げるのに必要な希釈)を計算することにより、免疫応答を評価した。結果を以下の表6に要約する。
【0146】
【表7】

【0147】
それぞれの試験血液からの血清を実施例3.2に記載したように親和性精製し、次に上記したELISAにより試験した。結果を以下の表7に要約する。
【0148】
【表8】

【0149】
ラットCNT2ヌクレオシドトランスポーターからのRSPEで免疫したウサギのハーベスト(harvest)血液もまた親和性精製し、ELISAにより試験した。ウサギ1からのハーベスト(harvest)血液を0.86mg/mlの濃度で36.5mlで溶出し、50%結合力価を1対47,000で測定した。ウサギ2からのハーベスト(harvest)血液を0.57mg/mlの濃度で27.5mlで溶出し、50%結合力価を1対44,000で測定した。
【0150】
ウサギ1からの親和性精製したポリクローナル抗体をプロテインAカラム(アマシャム(Amersham))を使用してさらに精製し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して透析し、ELISAにより試験した。これにより、CNT2由来のRSPE(配列番号6)に対して13mlのさらに精製したポリクローナルIgGが得られ、これは1.97mg/mlの濃度と1対90,000の50%結合力価を有した。
【0151】
4.2.2 マウスからのポリクローナル抗血清
以下の標的タンパク質(上記実施例2.2参照)、ラットオリゴペプチドトランスポーターPepT1、ラットCD155(PVR−ポリオウイルス受容体;Tage4)、ラットGTR2、ラットCFTR、ラットCNT2、ラットMDR1、マウスMDR1、ラットスクラーゼ−イソマルターゼ、マウスGLUT7、ラットGCC、ラットPLB、およびラットLPHからのRSPEで免疫したマウスからの第3回目の投与後に取った血清を、上記実施例4.1に記載のペプチドELISAにより測定した。各マウスからの試験血清を免疫ペプチドに対する力価測定により評価した。50%結合力価値(最大シグナルを50%に下げるのに必要な希釈)を計算することにより、免疫応答を評価した。結果を以下の表8に要約する。
【0152】
【表9】

【表10】

【0153】
4.2.3 ラットオリゴペプチドトランスポーターPepT1からのRSPEに対するモノクローナル抗体
配列番号1(上記実施例2.3参照)を有するRSPEに対する抗体を産生する7つの陽性モノクローナル細胞株のそれぞれからの40mlの培養上清を、実施例3.2に記載のように親和性精製し、次に上記実施例4.1に記載のようにELISAにより試験した。精製モノクローナル抗体を免疫ペプチド(配列番号1)に対する力価により測定した。50%結合力価値(最大シグナルを50%に下げるのに必要な希釈)を計算することにより、免疫応答を評価した。結果を以下の表9に要約する。
【0154】
【表11】

【0155】
ハイブリドーマ細胞株1645.142.002、1644.112.040および1647.372.245は、ラットPepT1から得られる配列番号1の配列を有するRSPEを認識するモノクローナル抗体を明らかに産生する。
【0156】
4.2.4 マウスGLUT7トランスポーターからのRSPEに対するモノクローナル抗体
配列番号11(上記実施例2.3参照)を有するRSPEに対する抗体を産生する4つの陽性モノクローナル細胞株のそれぞれからの40mlの培養上清を、実施例3.2に記載のように親和性精製し、次に上記実施例4.1に記載のようにELISAにより試験した。精製モノクローナル抗体を免疫ペプチド(配列番号11)に対する力価により測定した。50%結合力価値(最大シグナルを50%に下げるのに必要な希釈)を計算することにより、免疫応答を評価した。4つの抗GLUT7モノクローナル抗体のうちの2つの結果を以下の表10に要約する。
【0157】
【表12】

【0158】
4.3 げっ歯動物消化管組織切片の免疫組織化学試験
ラットの消化管組織を液体窒素で急速凍結し、使用するまで−80℃で保存した。すべての組織を−20℃のクリオスタットで切片にし、組織を陽性荷電したスライド上に置き、氷冷アセトンで10分間固定し、風乾した。スライドを−20℃で保存し、1ヶ月以内に切片を作成して使用した。免疫組織化学試験を開始する前に、すべてのスライドを室温まで暖めた。次に用手法IHCを行うために、これらをセクエンザ(Sequenza)にのせた。ペルオキシダーゼブロック[ダコエンビジョン(Dako Envision)(登録商標)キット]を室温で6時間適用することにより内因性ペルオキシダーゼについて、すべてのスライドをブロックした。次にスライドをツイーン20(0.1%)(TBST)を有するトリス−緩衝化食塩水(10mM)で5分間洗浄した。室温で30分間5%乳汁タンパク質[マーベル(Marvel)(登録商標)]を添加して非特異タンパク質をブロックした。1次抗体[表に記載した希釈で、1%マーベル(Marvel)(登録商標)を有するTBSTで作成した]を適用し、スライドを室温で1時間インキュベートした。次にスライドをTBSTで洗浄した(2×5分)。エンビジョン(Envision)(登録商標)ウサギポリマーを適用し、スライド上で室温で30分インキュベートした。スライドをTBSTで洗浄した(2×5分)。DABを室温で5分適用した。スライドを蒸留水で洗浄し、段階的アルコールとキシレンで脱水し、次にDPXにマウントした。
【0159】
【表13】

【表14】

【0160】
ブロッキングペプチドを使用して特異的染色を評価した。最適染色を与える希釈率の1次抗体を、1%マーベル(Marvel)(登録商標)を有するTBS中で10倍過剰のペプチドと室温で2時間インキュベートし、次にスライドにのせ、残りのプロトコールは上記したものとした。結果を前述の表11に要約する。
【0161】
実施例5 組換えタンパク質毒素の産生
5.1 組換えゲロニン産生
251アミノ酸のゲロニンタンパク質をコードする遺伝子(Nolanら、1993,Gene 134:223−227)を、pelBリーダー配列とC末端ヘキサヒスチジンタグとともに大腸菌(E.coli)発現についてコドン最適化し、大腸菌(E.coli)発現ベクター[pDGF − NEBベクターpMALc−2から得られる;pDGFはマルトース結合タンパク質(これは切り出されている)をコードする配列を除くpMALc−2のすべての特徴を含む]中にハイブリッドtacプロモーターの制御下でクローン化した。組換えベクターを大腸菌(E.coli)TOP10株に形質転換した。
【0162】
1mM IPTGで28℃で20時間誘導したLB培地中で形質転換したTOP10細胞を増殖させて、ゲロニンの発現を行った。大腸菌(E.coli)細胞を採取後、細胞をフレンチプレッシャセル(コンスタントシステムズ(Constant Systems);20,000psiで破砕)を使用して1×PBS/30mMイミダゾール中で破砕した。可溶性抽出物をグラビトラップ(GraviTrap)カラム(ジーイーヘルスケア(GE Healthcare))に適用し、1×PBS/30mMイミダゾールで15ml洗浄した後、ゲロニンを1×PBS/500mMイミダゾールで溶出した。2回目の精製工程として、溶出液を20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)で脱塩し、リソースエス(Resource S)陽イオン交換カラムに適用し0.1M塩勾配溶出した。
【0163】
組換えゲロニンが活性(機能性)であるかどうかを調べるために、精製ゲロニンタンパク質をT7ルシフェラーゼDNAを基質として使用してタンパク質翻訳阻害アッセイ(TNT T7クイック結合転写/翻訳システム、プロメガ(Promega))で試験した。陽性対照としてシクロヘキシミドを使用した。これは、組換え精製ゲロニンがT7ルシフェラーゼDNAの翻訳を阻害することを証明した。
【0164】
5.2 組換えVIP2A産生
464アミノ酸のVIP2Aタンパク質をコードする遺伝子(US5,849,870号を参照)をC末端ヘキサヒスチジンタグとともに大腸菌(E.coli)発現について最適化し、pET24a発現ベクター(ノバゲン(Novagen))にクローン化した。組換えベクターを大腸菌(E.coli)BL21(DE3)株に形質転換した。
【0165】
1mM IPTGで28℃で20時間誘導したてLB培地で形質転換BL21(DE3)細胞を増殖させて、VIP2Aの発現を行った。採取後、上記実施例5.1に記載のように、細胞をフレンチプレッシャセルを使用して破砕した。可溶性抽出物をヒストラップエィチピー(HisTrapHP)カラム(ジーイーヘルスケア(GE Healthcare))に適用し、5カラム容量のPBS/20mMイミダゾールで洗浄後、VIP2Aタンパク質を500mMイミダゾールまでの勾配で溶出した。
【0166】
精製工程からの可溶性抽出物と試料のSDS−PAGE分析は、組換え産生したヒスチジンタグ付きVIP2Aについて予測されたサイズのバンドを証明した。
【0167】
5.3 組換えグランザイムBの産生のための発現構築体
ラットからの228アミノ酸の成熟グランザイムBタンパク質をコードする遺伝子(配列情報についてはジーンバンク(GenBank)受け入れ番号M34097を参照)を人工的に合成(DNA断片050031)し、pCR−Scriptにクローン化してプラスミドp050031を得た。ネステッド(nested)PCRアプローチにより、グランザイムBコード配列を発現ベクターpET32a(+)(ノバゲン(Novagen))に導入した。
【0168】
p050031からの成熟グランザイムBコード配列を、プライマーRoPro070petEK/rGrzBF1(配列番号51)とRoPro067rGrzB R(配列番号52)を使用してPCR増幅して、pET32a(+)中の融合タグに存在するエンテロキナーゼと相同的な5’テイルを導入した。得られたPCR産物を第2部のネステッドPCRの鋳型として使用して、これはプライマーRoPro076petEK/rGrzBF2(配列番号53)とRoPro067rGrzB R(配列番号52)を使用して5’KpnI部位を導入した。
【0169】
最終的にPCR産物をKpnI/NotIで消化し、同様に消化したpET32a(+)に連結して発現ベクターpET32a(+)::rGrzBを得た。これは宿主ベクターからのN末端発現タグと組換えグランザイムBコード配列とのきれいな融合体を与え、こうして発現後のエンテロキナーゼ処理による組換えグランザイムBの活性化を可能にする。最終発現ベクターpET32a(+)::rGrzBは適当な大腸菌(E.coli)発現ベクター宿主(例えばRosettaGami(DE3))に形質転換される。
【0170】
pET32a(+)::rGrzBの構築に使用されたプライマーの配列は以下の通りである(すべてのプライマー配列は5’から3’で示す):RoPro070petEK/rGrzBF1(配列番号51)GGTACCGACGACGACGACAAGATCATCGGTGGTCACGAAGCTAAGCCAC;RoPro067rGrzB R(配列番号52)AGCTGGCGGCCGCCTAGGAC;RoPro076petEK/rGrzBF2(配列番号53)AGATCTGGGTACCGACGACGACGAC。
【0171】
実施例6 毒素への抗体成分の結合
6.1 ポリクローナル抗ラットCNT2抗体への市販ゲロニンの結合
この操作を実施するのに選択される方策は、チオール化毒素へジスルフィド結合を形成する架橋剤SPDP(N−スクシニミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート;ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.))を用いて抗体を活性化することである。使用した方法は、この結合が毒素ゲロニン(30kDa)の活性を妨害しないと記載したHermanson 1996「バイオ結合体法(Bioconjugate Techniques)」(アカデミックプレス(Academic Press)、509頁)からきている。最も効率的な反応混合物を得るために、5:1および10:1のモル比のゲロニン対抗CNT2ポリクローナル抗体を使用した。
【0172】
6.1.1 CNT2ポリクローナル抗体のSPDP処理
1mlアリコートのプロテインA濃縮したウサギ1ポリクローナルIgG(実施例4.2.1を参照、ウサギ1からのハーベスト血液を親和性精製し、次にプロテインAカラムを使用して精製した)を、10kDaカットオフを有するセントリコンスピン濃縮器を使用して濃縮した。得られた160μlをPBS 10mM EDTA(pH8)中10mg/ml溶液とした。6μlのSPDP(DMF中3mg/ml)を200μlの抗体溶液に加え、室温で30分インキュベートした。反応混合物を、PBS+10mM EDTA(pH8)で平衡化したPD10脱塩カラムに適用した。3.5ml試料容量のすべてを採取し、セントリコン濃縮器を使用して濃縮して、最終濃度3.6mg/mlのSPDP処理抗CNT2抗体を得た。
【0173】
6.1.2 ゲロニンのチオール化
ゲロニンは、ゲロニウム・ムルチフロルム(Gelonium multiflorum)の種子から精製された凍結乾燥タンパク質の5mg試料としてアクゾン(Aczon)SpAから得た。まず試料をPBSに5mg/mlで溶解した。300μlのこの溶液をセントリコン濃縮器で濃縮し、容量を55μlに減少させた。次にこれを50mM トリエタノールアミン 10mM EDTA(pH8)で希釈して10mg/mlのゲロニン溶液を得た。2−イムノチオランを溶解して蒸留水中20mg/ml溶液を得た。10.5μlの2−イムノチオラン溶液を150μlのゲロニン溶液に加えて、混合物を氷上で1時間インキュベートした。活性化したゲロニンを、PBS+10mM EDTA(pH8)で平衡化したPD10脱塩カラムに適用した。3.5ml試料容量のすべてを採取し、セントリコン濃縮器を使用して濃縮して、最終濃度3mg/mlのチオール化ゲロニンを得た。
【0174】
6.1.3 抗CNT2ポリクローナル抗体のゲロニンへの結合
5:1モル比のゲロニン対抗CNT2抗体を得るためには、0.5mgのチオール化ゲロニンを0.5mgの抗CNT2抗体と反応させる必要があった。従って138μlのSPDP処理抗CNT2抗体を167μlのチオール化ゲロニンに加えた。
【0175】
ゲロニン対抗CNT2抗体の10:1モル比でも反応を行った(333μl中の1mgのチオール化ゲロニンを138μl中の0.5mgのSPDP処理抗CNT2抗体に加えた)。各反応は窒素下で密封し、4℃で20時間インキュベートした。この時間後、ヨードアセトアミドを最終濃度2mMになるように加えて、未反応スルフヒドリル残基をブロックした。
【0176】
6.1.4 結合体の分析
各反応混合物をMALDI−TOF質量スペクトル法、SDS−PAGE、およびELISAにより分析した。反応混合物のSDS−PAGE分離と質量スペクトル法から得られたデータ(示していない)は、各結合反応がうまくいき、単一の抗体分子に1、2および3分子のゲロニンが結合した分子種が同定されたことを示した。質量スペクトルデータは、少量の非結合抗体の存在を示したが、この量はクマシー染色SDS−PAGEゲルで観察するには不充分であった。2つの反応比間で結合効率に差は無いようであった。
【0177】
各反応混合物について既に記載されているようにELISAアッセイを行い、抗体の結合活性が結合反応の影響を受けるかどうかを評価した。得られたデータを以下の表12に要約する。
【0178】
【表15】

【0179】
この結合は、SPDPポリリンカーの添加とゲロニンへの結合により影響を受けることがわかる。しかし結合した抗体反応混合物はまだ顕著な結合を示す。これは反応混合物中の結合抗体と非結合抗体に起因する。結合していない抗体の量は少ないため、観察された結合の良好な比率は結合抗体に起因すると推定される。
【0180】
6.2 ポリクローナル抗ラットCNT2抗体への組換えゲロニンの結合
上記実施例6.1で概説したものと同じ方策を採用して、上記実施例5に記載されたように産生した組換えゲロニンをポリクローナル抗ラットCNT2抗体に結合させた。最も効率的な反応混合物を得るために、5:1のゲロニン対抗CNT2ポリクローナル抗体モル比を使用した。
【0181】
6.2.1 抗CNT2ポリクローナル抗体のSPDP処理
PBS/10mM EDTA(pH8)中の10mg/ml溶液として3.75mgのプロテインA処理ウサギ1ポリクローナル抗体を11.25μlのSPDP(DMF中3mg/ml)と混合し、室温で30分インキュベートした。反応混合物を、PBS/10mM EDTA(pH8)であらかじめ平衡化させたゼバ(Zeba)(ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.))脱塩カラムに通した。
【0182】
6.2.2 組換えゲロニンのチオール化
3.75mgの組換えゲロニンを50mMトリエタノールアミン 10mM EDTA(pH8.2)で10mg/mlにした。2−イミノチオラン(トラウト試薬(Traut’s reagent);シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を、脱気した窒素下でバブリングした脱イオン水で20mg/mlになるように溶解し、これをゲロニン溶液に加え、窒素雰囲気中で氷上で1時間インキュベートした。チオール化ゲロニンをPBS/10mM EDTA(pH8)であらかじめ平衡化させたゼバ(Zeba)(ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.))脱塩カラムに通した。
【0183】
6.2.3 組換えゲロニンへの抗CNT2ポリクローナル抗体の結合
SPDP反応した抗体溶液をチオール化組換えゲロニンと混合して、等量の各タンパク質成分を得て、5:1モル比の組換えゲロニン対抗体を得た。反応物を窒素下で密封し、4℃で20時間インキュベートした。
【0184】
この時間後、未反応のスルフヒドリル基をヨードアセトアミドを最終濃度2mMで加えてブロックし、次に室温で最小の1時間インキュベートした。
【0185】
6.2.4 非結合組換えゲロニンからの結合体の分離
PBSを用いるゲルろ過を使用して、非結合ゲロニン分子を結合体から分離した。アクタ(Akta)FPLC装置(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia))を使用して、10/300スーパーデックス200カラム(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia))を3カラム容量(CV)のPBSで平衡化させた。クロマトグラフィーはユニコーン(Unicorn)ソフトウェア(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia))で動くPCにより制御し、これは試料を注入し、次に0.5ml/分の流速を維持し、0.1CVが溶出した後96ウェルブロック中に0.5ml画分を採取した。溶出は1.4CV進めた。
【0186】
選択された画分を、製造業者が記載したように非還元性SDS−PAGEゲル(MOPS緩衝液中4〜12%ビス−トリスヌページ(NuPage);インビトロゲン(Invitrogen))で分析した。製造業者が記載したようにシンプリーブルー(SimplyBlue)クマシー染色(インビトロゲン(Invitrogen))を使用してゲルを染色した。結合体を含有すると測定された画分をプールし、次の精製工程に提供した。
【0187】
6.2.5 非結合抗CNT2抗体からの結合体の分離
組換えゲロニン分子上のヘキサヒスチジンC末端テイルの存在は、結合体の精製において2回目のクロマトグラフィー工程として固定化金属−キレート親和性クロマトグラフィー(IMAC)の適用を可能にした。非結合抗体(ゲルろ過後にも結合体画分中に存在する)上のヘキサヒスチジンモチーフの欠如は、ヘキサヒスチジン含有結合体からの遊離抗体の除去を可能にする。従って上記6.2.4で得られたプール画分を、ユニコーン(Unicorn)ソフトウェア(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia))で動くPCにより制御されるアクタ(Akta)FPLC装置に連結したHistrapHP 1mlニッケル親和性カラム(5CVのPBS/15mMイミダゾールであらかじめ平衡化させた;アマシャムバイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences))に通した。カラムへの充填と洗浄は、充填/洗浄緩衝液としてPBS/15mMイミダゾールを使用して5CVにわたって行った。ヘキサヒスチジン含有タンパク質の溶出は、15mMイミダゾール(PBS中)の勾配を20CVにわたって適用して行った。画分を0.5ml容量で96ウェルブロックに集めた。
【0188】
選択された画分を、製造業者が記載したように非還元性SDS−PAGEゲル(MOPS緩衝液中4〜12%ビス−トリスヌページ(NuPage);インビトロゲン(Invitrogen))で分析した。製造業者が記載したようにシンプリーブルー(SimplyBlue)(登録商標)クマシー染色(インビトロゲン(Invitrogen))を使用してゲルを染色した。
【0189】
ゲルは、IMAC工程により結合体が遊離抗体から実質的に精製されていることを証明した。結合体を含有する画分をプールし、10kDa分子量カットオフを有するビバスピン(VivaSpin)20mlスピン濃縮器を使用してPBSに脱塩した。
【0190】
6.2.6 結合体の分析
MALDI−TOF質量スペクトルを使用して、プールした結合体試料の組成を非結合抗CNT2抗体と比較して分析した。得られた質量スペクトル(示していない)は、プールした結合体画分(プールB)中の1:1、1:2および1:3比の抗体:ゲロニン結合体種の存在を示した。単一荷電した非結合抗体種は観察されなかったが、非結合抗体の2重荷電種と相関するスペクトル上のピークが同定された。すなわち非結合抗体の大部分は結合抗体から精製された(IMAC精製のSDS−PAGE分析により示される)が、プールされた精製試料中には非常に少量の非結合抗体が残存することが推定される。
【0191】
IMAC精製したプール試料中の結合体の機能活性を、ELISA(抗体結合への結合体形成の影響を調べるために)とインビトロ翻訳阻害アッセイ(ゲロニンの機能活性が結合体形成により影響を受けているかどうかを調べるために)により評価した。
【0192】
ELISA(データは示していない)は、市販ゲロニンへの結合について観察されたものと同様の結果(上記実施例6.1.4)を示した:抗体結合は、SPDPポリリンカーの添加と組換えゲロニンへの結合の両方により影響を受けたが、結合した抗体反応混合物はまだラットCNT2RSPEへの顕著な結合を示した。質量スペクトルは、IMAC精製後もまだある程度の非結合抗体が残存していることを示したが、IMAC精製試料中の非結合抗体の量は、IMAC精製の結果として天然のゲロニン/抗CNT2抗体についての結合反応混合物中より少ないであろう。従って観察された抗体結合は、抗CNT2抗体−組換えゲロニン結合体が主な原因かも知れない。
【0193】
IMAC精製からの試料を含有するプールした結合体中の抗CNT2抗体に結合した組換えゲロニンのリボゾーム阻害能力の保持を、製造業者が記載したようにTNTクイック結合転写/翻訳システム(プロメガ(Promega))を使用して測定した。図2はその結果を示す。IMAC精製したプール試料(プールB)中の結合体により示される翻訳阻害は、元々の組換えゲロニン(rゲロニン)と等しい。このリボゾーム阻害能力は結合後に維持されている。
【0194】
6.3 市販β−プロチオニン(β−purothionin)のポリクローナル抗ラットCNT2抗体への結合
この結合のために選択された方策は、比較的小さな(5kDa)β−プロチオニン分子にできるだけ多くの接触を得るために、大きなスペーサーアームを有するTFCS架橋剤(ピアス(Pierce))を使用することであった。TFCSは一端にNHSエステル基(これは抗体上のアミン基に結合する)を有し、他端に保護されたアミン基(これはpHを8に上げることにより、適切に処理されたβ−プロチオニンへの反応のために暴露される)を有する。プロチオニン上のカルボキシル基はEDCと反応されて、不安定なアミン反応性中間体を生成し、これは次にスルホ−NHSと反応してより安定な結合を与える。次にEDC/スルホ−NHS処理したβ−プロチオニンはTFCSリンカーのアミン端に結合される。
【0195】
6.3.1 CNT2ポリクローナルのTFCS処理
1mlアリコートのプロテインA精製したウサギ1ポリクローナルIgG(実施例4.2.1を参照、ウサギ1からのハーベスト血液を親和性精製し、次にプロテインAカラムを使用して精製した)を、10kDaカットオフを有するセントリコンスピン濃縮器を使用して濃縮した。得られた試料容量を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液 0.15M NaCl(pH7.2)中5mg/ml溶液とした。15μlのTFCS(DMF中3mg/ml)を500μlの抗体溶液に加え、室温で1時間インキュベートした。反応混合物を、0.1Mリン酸緩衝液(pH8)で平衡化したPD10脱塩カラムに適用した。3.5ml試料容量のすべてを採取し、セントリコン濃縮器を使用して濃縮して、最終濃度10mg/mlのTFCS処理抗CNT2抗体を得た。
【0196】
6.3.2 β−プロチオニンのEDCとスルホ−NHS処理
小麦胚乳からの凍結乾燥したβ−プロチオニン(タカラ(Takara))を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液 0.15M NaCl(pH7.2)に溶解して、最終濃度10mg/mlとした。EDCを加えて、最終濃度5mMのスルホ−NHSとともに最終濃度2mMを得て、混合物を室温で15分反応させた。2−メルカプトエタノールを最終濃度20mMになるように加えて反応を停止させた。活性化したβ−プロチオニンを、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液 0.15M NaCl(pH7.2)で平衡化させたポリアクリルアミド脱塩カラム(サイズ排除限界1,800Da;ピアス(Pierce))に適用した。画分を集め、毒素の存在についてOD280nmをチェックした。
【0197】
6.3.3 抗CNT2ポリクローナル抗体の活性化β−プロチオニンへの結合
TFCS処理した抗体とEDC/スルホ−NHS処理したβ−プロチオニンとを混合して、30:1モル比のβ−プロチオニン:抗CNT2抗体を得て、4℃で一晩反応させた。次にヒドロキシアミンを最終濃度10mMになるように加えて反応を停止させた。次に反応混合物をサイズ排除クロマトグラフィーカラムに適用して、β−プロチオニンを抗体−β−プロチオニン結合体から分離した。結合体を含有する画分をプールした。
【0198】
6.3.4 結合体の分析
MALDI−TOF質量スペクトル法を使用して、プールした結合体試料の組成を非結合抗CNT2抗体と比較して分析した。得られた質量スペクトル(示していない)は、プールした結合体画分中の1:1、1:2および1:3比の抗体:β−プロチオニン結合体種の存在を示した。少量の単一荷電された非結合抗体種が観察された。
【0199】
プール試料中の結合体の機能活性を、上記したようにELISAにより評価した。結合体の50%結合力価は、非結合抗CNT2抗体の0.041μg/mlに対して0.067μg/mlと計算された。
【0200】
【表16】

【0201】
げっ歯動物消化管組織の免疫組織化学分析のために、抗CNT2::β−プロチオニン結合体の試料を使用した(方法については実施例4.2を参照)。結果を前述の表13に要約する。
【0202】
実施例7 融合タンパク質発現ベクターの構築
細胞表面抗原を認識するscFvと3つの異なるタンパク質毒素(ゲロニン、グランザイムB、およびcyt2A)との間で融合タンパク質発現ベクターを構築した。この例で使用したscFvは上記実施例2.5に記載したSV63scFvである。全体を通してプラスミド調製、制限酵素消化、連結、EcoRI形質転換などについて標準的分子生物学的方法に従った。
【0203】
7.1 ゲロニン−scFv融合構築体
251アミノ酸のゲロニンタンパク質をコードする遺伝子(Nolanら、前述)を、SV63抗体からの配列をコードするVH(人工的遺伝子054014を与える)またはVL(人工的遺伝子054013を与える)のいずれかへのフレーム内融合を可能にするように設計された5’配列を用いて人工的に合成し、pCR−Scriptにサブクローン化して2つの構築体p054013とp054014を得た。
【0204】
プラスミドp054013をSpeIとNotIで消化し、作成されたゲロニンをコードする断片を精製し、同様に消化したpDGF−SV63−VHVLに連結して、ベクターpDGF−SV63−VHVLrGelを得た。これは、単一のGly4Serリンカーを介してSV63scFvのN末端と組換えゲロニンとのフレーム内融合体を作成した。すなわちpDGF−SV63−VHVLrGel中の発現カセットは5’から3’方向に以下の成分を含む:tacプロモーター、pelBリーダー配列、SV63VHコード配列、[Gly4Ser]3リンカー、SV63 VLコード配列、Gly4Serリンカー、組換えゲロニンコード配列。
【0205】
SV63 VHコード配列、[Gly4Ser]3リンカー、SV63 VLコード配列、Gly4Serリンカー、および組換えゲロニンコード配列は、NcoI/EcoRI断片として容易に切り出され、所望であれば代替発現/クローニングベクター、例えばpIMS147またはpET32aに連結することができる。
【0206】
プラスミドp054014をBseRIとNotIで消化し、ゲロニンをコードする作成された断片を精製し、同様に消化したpDGF−SV63−VLVHに連結してベクターpDGF−SV63−VHVLrGelを得た。これは単一のGly4Serリンカーを介してscFvのN末端と組換えゲロニンとのフレーム内融合体を作成した。すなわちpDGF−SV63−VHVLrGel中の発現カセットは5’から3’方向に以下の成分を含む:tacプロモーター、pelBリーダー配列、SV63VLコード配列、[Gly4Ser]3リンカー、SV63 VHコード配列、Gly4Serリンカー、組換えゲロニンコード配列。
【0207】
SV63 VLコード配列、[Gly4Ser]3リンカー、SV63 VHコード配列、Gly4Serリンカー、および組換えゲロニンコード配列は、NcoI/EcoRI断片として容易に切り出さlw、所望であれば代替発現/クローニングベクター、例えばpIMS147またはpET32aに連結することができる。
【0208】
7.2 グランザイムB−scFv融合構築体
それぞれがSV63scFvのN末端に融合したグランザイムBを有する2つの構築体を作成した(pET32a::rGrzB::SV63VHVLとpET32a::rGrzB::SV63VLVH)。
【0209】
pET32a(+)::rGrzB(上記実施例5.3)を鋳型として使用してプライマー重複伸長アプローチを組合せて用いて、プラスミドpET32a::rGrzB::SV63VHVLを作成して、成熟グランザイムBコード配列を単一のGly4Serリンカーを介してVHVL配向(N末端からC末端)でSV63scFvに融合した。
【0210】
(i)pET F(配列番号54)とRoPro071 G4S/rGrzB R1(配列番号55)プライマーを用いて、pET32a(+)::rGrzBをPCRの鋳型として使用して、単一のGly4Serリンカーをコードする3’末端配列を成熟グランザイムBコード配列に付加した。
【0211】
(ii)RoPro074rGrzB/G4S/VHVL F(配列番号56)とRoPro075 pET/VHVL R(配列番号57)プライマーを用いて、pDGF−SV63−VHVLをPCRの鋳型として使用して、単一のGly4Serリンカーをコードする5’末端配列とグランザイムBコード配列の一部をSV63 VHVLコード配列に付加した。
【0212】
上記(i)と(ii)からの生成物を精製し等量混合した後、プライマー不含伸長を行い、次にpET F(配列番号54)とRoPro075 pET/VHVL R(配列番号57)を使用するPCRにより完全長融合産物を増幅し、これをユニークなSfuI部位とNotI部位を使用してpET32a(+)にクローン化した。
【0213】
pET32a(+)::rGrzB(上記実施例5.3)を鋳型として使用してプライマー重複伸長アプローチを組合せて用いてプラスミドpET32a::rGrzB::SV63VLVHを作成して、成熟グランザイムBコード配列を単一のGly4Serリンカーを介してVLVH配向(N末端からC末端)でSV63scFvに融合した。
【0214】
(i)上記(i)に記載のように単一のGly4Serリンカーをコードする3’末端配列をグランザイムBコード配列に付加した。
【0215】
(ii)RoPro072rGrzB/G4S/VLVH F(配列番号58)とRoPro073 VLVH/pET R(配列番号59)プライマーを用いて、pDGF−SV63−VLVHをPCRの鋳型として使用して、単一のGly4Serリンカーをコードする5’末端配列とグランザイムBコード配列の一部をSV63 VLVHコード配列に付加した。
【0216】
上記(i)と(ii)からの生成物を精製し等量混合した後、プライマー不含伸長を行い、次にpET F(配列番号54)とRoPro073 VLVH/pET R(配列番号59)を使用してPCRにより完全長融合産物を増幅し、これをユニークなSfuI部位とNotI部位を使用してpET32a(+)にクローン化した。
【0217】
上記実施例5.3に記載のようにグランザイムB−scFv融合構築体の構築で使用したプライマーの配列は、上記実施例5.3に記載したものと以下のものである(すべてのプライマーを5’から3’で示す):pET F(配列番号54)TCGGTGATGTCGGCGATATAG;RoPro071G4S/rGrzB R1(配列番号55)ACTACCTCCGCCACCGGACTTCTTCATAGTTTTCTTGATCCAGG;RoPro074rGrzB/G4S/VHVL F(配列番号56)GAAGAAGTCCGGTGGCGGAGGTAGTGAGGTCCAGCTGCAGGAGTCTGGCCCTGG;RoPro075pET/VHVL R(配列番号57)TGCTCGAGTGCGGCCGCTTATTACTTGATCTCCAGTTTGGTGCCTCCACCGAACG;RoPro072rGrzB/G4S/VLVH F(配列番号58)GAAGAAGTCCGGTGGCGGAGGTAGTGATATCGTTCTCACTCAATCTCCAGCAATC;RoPro073VLVH/pET R(配列番号59)TGCTCGAGTGCGGCCGCTTATTATGAGGAGACTGTGAGAGTGGTGCCTTGGCC。
【0218】
7.3 Cyt2A−scFv融合構築体
SV63scFvとCyt2A配列のフレーム内融合体を作成するために、GurkanとEllarの方法(2003 Protein Expr.Purif.29(1):103−16)に従った。14アミノ酸のXpressエピトープ(インビトロゲン(Invitrogen))のフレーム内C末端付加を作成するために設計した3’配列を含有するために、Cyt2Aa1(EMBL:BTCYTBG)の最初の237アミノ酸をコードする遺伝子を人工的に合成した。この人工的合成したCyt2A−Xpressエピトープ配列は051072として知られており、pCRScriptにサブクローン化してp051072を得た。プラスミドpDGF−SV63−VHVL(実施例2.5を参照)を2工程で改変した。まずSV63VL配列の3’末端配列の一部、(Gly4Ser)3リンカー、および成熟Cyt2Aa1タンパク質(GurkanとEllar、前述、が記載したように)の5’末端配列の一部を含有させることにより結合断片を作成する、人工的に合成した配列を設計し産生した(p054247と呼ぶ)。この断片をp054247からSpeI(5’)とEcoRI(3’)を使用して切り出し、同様に調製したpDGF−SV63−VHVL(実施例2.5を参照)に連結した。次に得られたプラスミドをSfuIとBamHIで切断し、p051072からの約520bpのSfuI/BamHI断片(成熟Cyt2Aa1配列の3’末端+Xpressエピトープを示す)を導入することにより、さらに修飾した。得られたプラスミド(pDGF−SV63−VHVL::Cyt2A)は、柔軟性リンカーを介して、Xpressエピトープが続くCyt2Aa1(アミノ酸37〜237)の活性(成熟)型へのSV63VHLscFvの完全なフレーム内融合体を含む。
【0219】
同様に、プラスミドpDGF−SV63−VLVHを2工程で改変してCyt2Aa1配列を導入した。まずSV63VH配列の3’末端配列の一部、(Gly4Ser)3リンカー、および成熟Cyt2Aa1タンパク質(GurkanとEllar、前述、が記載したように)の5’末端配列の一部を含有させることにより結合断片を作成する、人工的に合成した配列を設計し産生した(054248と呼ぶ)。この人工的断片をpCRScriptにサブクローン化してプラスミドp05428を得た。この断片をp054248からBseI(5’)とEcoRI(3’)を使用して切り出し、同様に調製したpDGF−SV63−VLVHに連結した。次に得られたプラスミドを、SfuIとBamHIで切断し、p051072からの約520bpのSfuI/BamHI断片(成熟Cyt2Aa1配列の3’末端+Xpressエピトープを示す)を導入することにより修飾した。得られたプラスミド(pDGF−SV63−VLVH::Cyt2A)は、柔軟性リンカーを介して、Xpressエピトープが続くCyt2Aa1(アミノ酸37〜237)の活性(成熟)型へのSV63VLHscFvの完全なフレーム内融合体を含む。
【0220】
実施例8 融合タンパク質の発現
SV63scFv−ゲロニン融合遺伝子(上記実施例7.1を参照)を有するベクターをEcoRI TOP10細胞に形質転換した。形質転換細胞を2×YT/2%グルコース培地中で増殖させ、次に20℃または15℃で1mM IPTG補足2×YT培地で16時間インキュベートして、パイロット発現試験を行った。少量の試料(10ml)を採取し、遠心分離し、各細胞ペレットを1mlの溶解緩衝液(PBS)に再懸濁した。試料を超音波処理し、13,000rpmで室温で5分間再遠心分離を行い、上清(可溶性画分)をデカントした。ペレット(不溶性画分)を1mlの溶解緩衝液に再懸濁した。
【0221】
可溶性画分および不溶性画分を、ヘキサヒスチジンタグに対する抗体を使用してウェスタンブロットにより分析した。この分析は、両方の発現ベクターからscFv−ゲロニン融合タンパク質が産生されていることを証明した(すなわち、scFvがVHL配向であり、かつscFvはVLH配向であった)。しかしscFvのVLH配向は可溶性タンパク質のより高い収率を与えた。
より大きなスケールの増殖と誘導を行い、可溶性画分からグラビトラップ(Gravitrap)カラムで精製してscFv−ゲロニン融合タンパク質を得た。
【0222】
実施例9 タンパク質結合体と融合タンパク質のインビトロ試験
単離されたラット十二指腸の切片を使用して、非吸収性マーカーであるマンニトールに対する粘膜の透過性を測定することにより、本発明のタンパク質結合体と融合タンパク質が上部消化管に傷害を引き起こす能力を評価する。すでに公表された方法(Heylings,1991,Toxicol.Appl.Pharmacol.107:482−493)の改変法を使用して、インビトロで単離された組織をこれらのげっ歯動物防除剤に暴露する。
【0223】
簡単に説明すると、大人の雄のアルダーレイパーク(Alderley Park)系統ラット(Ap:AkfSD)からの消化管の10cm切片(胃の端部)を、安楽死後直ちに取り出す。組織を酸素添加TC199培地に入れ、胃から最も離れた端からTC199培地を使用して消化管から食物破片を注意深く流し去る。十二指腸の2つの切片(各2.5cmの長さ)を準備する(近い切片(胃のすぐ後)と遠い切片(胆管の入り口の直ぐ後))。
【0224】
リザーバーに連結した2つのガラス管の開いた端に切片を、結紮糸を用いてぴんと張って注意深くつなぐ。これは、単離した粘膜の管腔(粘膜)表面と血液側(漿膜)表面を、別々の溶液に浸すことを可能にする。各粘膜チャンバー中のガラス棒の端のギャップは12mmである。装置の略図は、前述のHeylings 1991の上部の図1に示すものと同様である。粘膜をつないだチャンバーを酸素添加TC199培地で数回リンスして、組織の管腔側の過剰の粘液を除去する。管腔(粘膜)側に、20mgのマンニトール/mlを含有するTC199培地(TC199−M)4mlを充填して粘膜の洩れをチェックする。粘膜チャンバーを、95%O2:5%CO2を通気した40mlのTC199培地(漿膜側溶液)を充填したアウターカップ(outer cup)型のガラス容器に浸した。2つの溶液間の水圧勾配を避けるようにチャンバーを置く。両方の溶液は、外部ポンプにつないだ水ジャケットを使用して37±0.1℃に維持する。10分間プレインキュベーション後、粘膜チャンバーを取り出し、TC199培地でフラッシュして粘液の蓄積を取り除き、最後に管腔側に5×105dpm/mlの濃度で14C−マンニトール(消化管によりあまり吸収されない非電解質)を含有する4mlのTC199−Mを充填し、ガラスチャンバーに戻す。
【0225】
マンニトールに対する単離した十二指腸粘膜の透過性を測定するために、漿膜側溶液の二重の150μlのアリコートを10、20、30、60、120、180および240分に取り、粘膜側に加える。吸収されたマンニトールの量を液体シンチレーション計測により測定する。インキュベーション開始後30分に、陽性対照として消化管の既知の局所刺激物質であるパラコート(40mgパラコートイオン/ml)を粘膜チャンバーに加えて、モデルが粘膜傷害を検出できることを証明する。インキュベーション開始後30分に、粘膜チャンバーに少量を直接添加することによりげっ歯動物防除剤(融合タンパク質またはタンパク質結合体、上記実施例6〜8を参照)を加え、マンニトール吸収の経時変化プロフィールを追跡する。これを、平行して流したラット十二指腸の近い部分と遠い部分の両方について陰性対照と比較する。
【0226】
上記方法は十二指腸組織を使用するが、上記と同じ方法を使用して消化管の他の部分を代用して試験してもよい。
【0227】
実施例10 タンパク質結合体と融合タンパク質のインビボ試験
10.1 マウスにおける経口胃管栄養法による効力の試験
マウス(全部で18匹、1群9匹)に経口胃管栄養法により、i)タンパク質結合体または融合タンパク質(詳細は実施例6〜8を参照;群1のマウス)、またはii)不活性ビヒクル(例えば、ポリエチレングリコール;群2のマウス)を投与する。試験中は定期的に臨床的観察を行い、投与の24、48、および72時間後に動物を屠殺する。屠殺後、十二指腸、空腸、回腸、および結腸組織をホルマリン緩衝化食塩水で固定し、処理し、蝋に包埋し、病理解剖的評価のためにH&Eで染色する。
【0228】
融合タンパク質/タンパク質結合体を以下の試験濃度で使用する(体重1kg当たりの化合物のmgで示す):8mg/kg、5mg/kg、および3mg/kg。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】組換えゲロニンによるルシフェラーゼ翻訳の阻害。
【図2】抗CNT2ポリクローナル抗体−組換えゲロニン結合体によるルシフェラーゼ翻訳の阻害。プールA試料は、遊離の抗体を含有することが測定されたIMAC精製からのプール画分に対応する。プールB試料は、抗体−毒素結合体を含有することが測定されたIMAC精製からのプール画分に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
げっ歯動物で発現されるタンパク質の細胞外エピトープに結合する抗体成分を含むげっ歯動物防除剤。
【請求項2】
該げっ歯動物防除剤はげっ歯動物を死亡させるかまたはげっ歯動物の繁殖を防止する、請求項1に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項3】
抗体成分は毒性成分または避妊成分に結合している、請求項1または請求項2に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項4】
融合タンパク質を含む請求項3に記載のげっ歯動物防除剤であって、該融合タンパク質は第1のタンパク質成分と第2のタンパク質成分とを含み、該第1のタンパク質成分は抗体成分であり、該第2のタンパク質成分は毒素、免疫原、およびホルモンよりなる群から選択されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項5】
該第1のタンパク質成分と第2のタンパク質成分はペプチドリンカーを介して互いに結合していることを特徴とする、請求項4に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項6】
該ペプチドリンカーはグリシンとセリン残基を含むことを特徴とする、請求項5に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項7】
該ペプチドリンカーは少なくとも3つの(Gly4Ser)モチーフを含むことを特徴とする、請求項6に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項8】
タンパク質結合体を含む請求項3に記載のげっ歯動物防除剤であって、該タンパク質結合体は、毒性成分または避妊成分に化学的に結合した請求項1に記載の抗体成分を含むことを特徴とするタンパク質結合体。
【請求項9】
毒性成分はタンパク質毒素である、請求項3〜8のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項10】
請求項9に記載のげっ歯動物防除剤であって、該毒素は、a)群1に列記したタンパク質の群から選択される完全長タンパク質であり、ここで群1は膜を破壊するタンパク質である、リボシルトランスフェラーゼ、セリンプロテアーゼ、グアニリルシクラーゼアクチベーター、ATPase介在イオン輸送に関与するタンパク質、カルモジュリン依存性アデニリルシクラーゼ、およびリボヌクレアーゼからなり、またはb)群1から選択されるタンパク質の毒性ドメインであることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項11】
該毒素は、a)完全長RNAグリコシダーゼ、またはb)RNAグリコシダーゼの毒素ドメインであることを特徴とする、請求項9に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項12】
請求項10に記載のげっ歯動物防除剤であって、該毒素は、a)完全長β−プロチオニンまたは群2に列記したタンパク質の群から選択される完全長タンパク質であり、ここで群2はペルフリンゴリシンO、アルファヘモリジン、スフィンゴメリナーゼ、デルタヘモリジン、グランザイムB、アルファ毒素、Cyt毒素、ジフテリア毒素、グラヌリジン、メリチン、ペルフォリン、コレラエンテロトキシン、熱安定性エンテロトキシン、エキナトキシン、リステリオリジン、VIP2、付属エンテロトキシン、エアロリジン、BinA、BinB、コリシンE1、ヘモリシンA、CTX IV、リシン、アメーバポア、E1 Torヘモリジン、ビブリオ・ダムセラ(Vibrio damsela)ヘモリジン、ニューモリジン、ストレプトリジンO、カナガワ毒素、レプトスピラヘモリジン、Cry毒素、炭疽毒素、シュードモナス外毒素A、バルナーゼ、およびVIP3からなり、またはb)b−プロチオニンの毒性部分または群2から選択されるタンパク質の毒性ドメインであることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項13】
毒素はゲロニンである、請求項11に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項14】
避妊成分は、卵子または精子特異的抗原に対する応答を誘発することができる免疫原であることを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項15】
避妊成分は生殖ホルモンであることを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項16】
生殖ホルモンはゴナドトロピン放出ホルモンであることを特徴とする、請求項15に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項17】
請求項8に記載のげっ歯動物防除剤であって、毒性成分は、コルヒチン;ドキソルビシン;カリケアミシン;非ステロイド抗炎症剤(NSAID)化合物;サイトカラシン;抗凝固剤;カルシフェロール;ブロメタリン;フルプロパジン;亜リン酸亜鉛;シリロシド;(モノ)フルオロ酢酸ナトリウム;フルオロアセトアミド;アルファクロラロース;硫酸タリウムよりなる群から選択される毒性化合物であることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項18】
請求項17に記載のげっ歯動物防除剤であって、抗凝固剤は、ブロジフィクム、ジフェナクム、ブロマジオロン、フロクマフェン、ジフェチアロン、ヒドロキシクマリン類、およびインダン−ジオン類よりなる群から選択されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項19】
避妊成分はホルモンまたはホルモン様化合物である、請求項8に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項20】
ホルモン様化合物はジアザコンである、請求項19に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項21】
抗体成分が結合するタンパク質は、げっ歯動物の消化管上皮で発現されるタンパク質であることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項22】
請求項21に記載のげっ歯動物防除剤であって、タンパク質は、ラットPEPT1、ラットCD155、ラットGTR2、ラットCFTR、ラットCNT2、ラットCATB(0+)、ラットMDR1、マウスMDR1、ラットスクラーゼ−イソマルターゼ、マウスGLUT7、ラットGTR5、ラットNpt2A、ラットOAT−B、ラットASBT、ラットCAT1、ラットOATP3、ラットABCG8、ラットGTR8、ラットMRP1、ラットCNT1、ラットUT−B、ラットDRA1、マスENT1、およびラットENT1よりなる群から選択されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項23】
請求項21に記載のげっ歯動物防除剤であって、タンパク質は、ラットCATB(0+)、ラットGCC、ラットPLB、ラットLPH、マウスLPH、ラットAMPN、ラットMCDL、ラットSCAB、ラットKCV2よりなる群から選択されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項24】
請求項22に記載のげっ歯動物防除剤であって、細胞外エピトープは配列番号1〜26よりなる群から選択されるアミノ酸配列により提供されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項25】
請求項24に記載のげっ歯動物防除剤であって、細胞外エピトープは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5よりなる群から選択されるアミノ酸配列により提供されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項26】
請求項23に記載のげっ歯動物防除剤であって、細胞外エピトープは配列番号27〜36よりなる群から選択されるアミノ酸配列により提供されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項27】
抗体成分は抗体またはその抗原結合断片であることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項28】
抗体はポリクローナルであることを特徴とする、請求項27に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項29】
抗体はモノクローナルであることを特徴とする、請求項27に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項30】
請求項27〜29のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤であって、抗体は、a)軽鎖と重鎖とを含む免疫グロブリン、またはb)1本鎖抗体であることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項31】
1本鎖抗体はscFvであることを特徴とする、請求項30に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項32】
1本鎖抗体は軽鎖が欠如していることを特徴とする、請求項30に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項33】
1本鎖抗体は、カメリッド(Camelid)またはコンドリクチエス(Chondricthyes)から得られることを特徴とする、請求項32に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項34】
前記請求項のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤であって、抗体成分は、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、VHドメイン、VLドメイン、Fvs、Fab、ジ−Fab、Fab’、F(ab’)2、VHHドメイン、IgNAR VドメインおよびCDRよりなる群から選択されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項35】
抗体成分はジスルフィド安定化されていることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項36】
前記請求項のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤であって、抗体成分は、少なくとも1つの非標的動物からの同種のタンパク質に対するより大きな親和性でげっ歯動物タンパク質に結合することを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項37】
請求項36に記載のげっ歯動物防除剤であって、非標的動物は、ヒト、鳥、ペット動物、農場動物、および有害生物ではない野生動物よりなる群から選択されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項38】
非標的動物はヒトであることを特徴とする、請求項37に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項39】
請求項36〜38のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤であって、抗体成分は、げっ歯動物タンパク質の細胞外エピトープに対する置換可能な結合を示すが、i)非標的動物からの同種のタンパク質、またはii)非標的動物からの同種のタンパク質の対応するエピトープには置換可能な結合を示さないことを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項40】
げっ歯動物タンパク質の細胞外エピトープは、請求項48で定義したげっ歯動物特異的ペプチドエピトープにより示されることを特徴とする、請求項39に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項41】
げっ歯動物で発現されるタンパク質は必須タンパク質であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項42】
必須タンパク質はげっ歯動物の消化管上皮で発現されることを特徴とする、請求項41に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項43】
抗体成分は、げっ歯動物で発現されるタンパク質の細胞外エピトープに結合し、かつげっ歯動物タンパク質の細胞外エピトープに対する抗体成分の結合の親和性は、非標的動物からの同種のタンパク質に対する抗体成分の結合の親和性より大きいことを特徴とする、タンパク質毒素に結合した抗体成分を含むげっ歯動物防除剤。
【請求項44】
少なくとも1つの添加剤をさらに含む組成物の形の、前記請求項のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項45】
請求項44に記載のげっ歯動物防除剤であって、少なくとも1つの添加剤は、請求項1〜44のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤、第1世代抗凝固剤、および第2世代抗凝固剤よりなる群から選択されることを特徴とするげっ歯動物防除剤。
【請求項46】
少なくとも1つの添加剤は、げっ歯動物にとって組成物をおいしくする機能を有することを特徴とする、請求項44または45に記載のげっ歯動物防除剤。
【請求項47】
げっ歯動物を死亡させる方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤をげっ歯動物が常に出入りする場所に置いて、該げっ歯動物による該げっ歯動物防除剤の摂取により該げっ歯動物を死亡させることを特徴とする方法。
【請求項48】
げっ歯動物の繁殖を防ぐ方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤をげっ歯動物が常に出入りする場所に置いて、該げっ歯動物による該げっ歯動物防除剤の摂取により該げっ歯動物の生殖能力を阻害することを特徴とする方法。
【請求項49】
げっ歯動物中で発現されるタンパク質のオリゴペプチド断片からなるげっ歯動物特異的ペプチドエピトープ(RSPE)であって、オリゴペプチド断片配列は、非標的動物からの同種のタンパク質からの対応する線状ペプチド配列とは60%またはそれ以下の同一性パーセントを有する細胞外連続的ペプチドエピトープであることを特徴とするげっ歯動物特異的ペプチドエピトープ。
【請求項50】
請求項48のRSPEに結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項51】
請求項1〜46のいずれか1項に記載のげっ歯動物防除剤の製造における、請求項50に記載の抗体または抗原結合断片の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−532986(P2008−532986A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500249(P2008−500249)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000562
【国際公開番号】WO2006/095128
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】