説明

有害鳥獣脅し装置

【課題】全体をもっと簡単な構成のものとすることができて、駆動のための電源等のエネルギーをそれ程要することのない有害鳥獣脅し装置を提供すること。
【解決手段】レール10を、上昇レール11と、この上昇レール11の上端から下端に掛けて、前記区域上を滑らかに下降する下降レール12とにより構成するとともに、威嚇体30が、この威嚇体30側の駆動装置、または上昇レール11側の駆動レールによって、上昇レール11の下端から上端に向けて上昇するようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズメやカラス、あるいはサルやイノシシ等の田畑を荒らす有害鳥獣を脅すための装置に関し、特に、自然落下を利用することによって、有害鳥獣を脅すための「威嚇体」が田畑の上方の広い範囲を定期的に移動して、有害鳥獣を田畑から追い出すことのできる有害鳥獣脅し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
田畑の農作物を荒らすスズメやイノシシ等の有害鳥獣を追い払うために、人々は古来より苦労を重ねてきている。最も一般的な「案山子」は、固定的なものであるため、有害鳥獣が慣れてしまい、長期的な効果が期待できないものであった。
【0003】
近年では、「反射テープ」やひもで吊った「光る目玉」が風に揺られるようにして、有害鳥獣が慣れにくくするようにした脅し具も提案されてきてはいるが、十分な効果は発揮されていないのが実情である。また、特許文献1に示されているような装置も提案されてきている。
【特許文献1】特開平6−113706号公報、要約、図1、図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に示されている「鳥類おどし装置」は、「回動可能に張設された線状体のスリップを防止すると共に、線状体に取り付けられたおどし部材が破損することなく線状体と一緒に移動回動可能とされた鳥類おどし装置を提供すること」を目的としてなされたものである。
【0005】
この「鳥類おどし装置」は、図4及び図5に示すように、「無端の線状体を回動可能に張設すると共に駆動回動可能とし、かつ線状体には単数もしくは複数のおどし部材を取付けるようにした鳥類おどし装置において、前記線状体は駆動可能とされた駆動ドラムに螺旋状に複数回巻付けられ、かつ駆動ドラム付近には線状体の前記螺旋状の部分のピッチを所定ピッチに保持するように案内するためのガイド滑車を線状体の巻取上流側と下流側とに配置すると共に前記おどし部材はシート状部材、線状部材、紐状部材もしくはこれらを組合せた部材からなり、しかも前記おどし部材の吊下げ時の長さは前記螺旋状の部分のピッチと略同じかもしくは短くされ、さらに前記おどし部材は前記線状体をくわえ込んで固定され得る環状の取付部材上に接着もしくは前記取付部材の内側に噛合わせて締付けて固定し、あるいはおどし部材を針金、糸もしくは紐で線状体に巻付けて取付けられてなり、おどし部材は前記線状体を滑動可能に支持する滑動支持部材上および駆動ドラム上を通過可能とされたこと」といった構成を有するものであって、鳥類のおどしを行えるものとは考えられるが、非常に複雑なものである。
【0006】
すなわち、この特許文献1に示されている「鳥類おどし装置」は、図4にも示したように、「無端の線状体を回動可能に張設する」必要があり、「線状体は駆動可能とされた駆動ドラムに螺旋状に複数回巻付け」ておかなければならない。従って、広い田畑に配置された線状体は、全体では相当重いものとなり、この重い線状体を「駆動ドラム」によって回転させなければならないから、駆動ドラムの駆動モータは相当強力なものが必要であると考えられる。
【0007】
そこで、本発明者は、全体をもっと簡単な構成のものとすることができて、駆動のための電源等のエネルギーをそれ程要することのない有害鳥獣脅し装置とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきたのである。
【0008】
その結果、本発明者は、例えばスズメのような有害鳥類は、タカやワシ等の大型鳥類が飛来してくると、その姿や飛来する際の風を切る音などに驚いて逃げること、イノシシのような有害獣は動くものに敏感で、特に人が近づいてくると逃げること、また、飛来したり動いたりするものが「音」を発するとより警戒感を増すことに気づいたのである。そして、本発明者は、飛来させたり動かしたりするには、人工の力を利用するよりも自然落下を利用することの方が良い結果を生むことに気付き、本発明を完成したのである。
【0009】
すなわち、本発明の目的とするところは、全体をもっと簡単な構成のものとすることができて、駆動のための電源等のエネルギーをそれ程要することのない有害鳥獣脅し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段は、後述する最良の形態の説明中において使用する符号を付して説明すると、
「有害鳥獣40によって荒らされるおそれのある区域上に閉曲線状に配置されるレール10に対して、有害鳥獣40を追い払うための威嚇体30が移動できるようにした有害鳥獣脅し装置100であって、
レール10を、上昇レール11と、この上昇レール11の上端から下端に掛けて、前記区域上を滑らかに下降する下降レール12とにより構成するとともに、
威嚇体30が、この威嚇体30側の駆動装置、または上昇レール11側の駆動レールによって、上昇レール11の下端から上端に向けて上昇するようにしたことを特徴とする有害鳥獣脅し装置100」
である。
【0011】
すなわち、本発明に係る有害鳥獣脅し装置100は、有害鳥獣40によって荒らされるおそれのある田畑上に閉曲線状に配置されるレール10に対して、有害鳥獣40を追い払うための威嚇体30を移動でするようにしたもので、有害鳥獣40を脅すための威嚇体30を、レール10に対して、丁度ジェットコースターのように、威嚇体30の重力を利用して自然落下させるようにしたものである。
【0012】
レール10は、図1及び図2に示すように、適宜な箇所において支柱20によって支持するようにしたものであり、威嚇体30を所定の高さまで上げるための上昇レール11と、この上昇レール11の上端から下端に向けて滑らかに連なりかつ下降する下降レール12とからなっている。このレール10に対しては、威嚇体30が、図2に示すように、移動自在に吊下してある。
【0013】
レール10を支持するための支柱20は、図2に示すように、そのオーバーハング部21によって上記レール10を支持するものであり、レール10の高さは、当該支柱20の図示しない高さ調整部分によって適宜調整できるようにしてある。
【0014】
威嚇体30は、図1及び図2に示すように、有害鳥獣40がスズメである場合に適したカラスあるいはトンビの形状にしてあり、移動方向に顔を向けている。この威嚇体30は、図2に示すように、その駆動部31に設けてある転動ローラ32をレール10内に係合させることによってレール10に対して吊下したものであり、このレール10が閉曲線であって順次降下する形状にしてあることから、上昇レール11の上端にまで持ち上げられてから下降レール12に沿って上昇レール11の下端にまで自然落下によって至るものである。
【0015】
なお、この威嚇体30の形状や色等は、田畑等の区域を荒らす有害鳥獣40の種類によって適宜決定すればよいものであり、さらには、レール10に対して移動する際に風を切る音が出るようにしたり、録音した犬のほえ声を流すようにしたり、あるいは駆動部31内に警報音発生装置を内蔵するように実施してもよい。
【0016】
さて、最良形態で示した威嚇体30は、上昇レール11の下端に配置すると、そのアクチュエータ34が上昇レール11側のリミット端子13によって作動される。そうすると、駆動部31内に内蔵したモータによってピニオン33が回転し始め、このピニオン33の回転によって威嚇体30は上昇レール11上を上昇していくのである。何故なら、図3に示すように、上昇レール11には威嚇体30側のピニオン33に係合するラック11bが形成してあって、このラック11b及びこれに係合しているピニオン33によって、駆動部31の駆動力が威嚇体30の上昇力に変換されるからでる。
【0017】
威嚇体30が上昇レール11の上昇端に至ると、ここにはラック11bが存在していないだけでなく、下降レール12の上端が位置しているから、威嚇体30は上昇レール11から自動的に離れるとともに、下降レール12上を自然落下(駆動部31側の転動ローラ32のレール10に対する転動)していくのである。
【0018】
このとき、レール10は、有害鳥獣40によって荒らされるおそれのある区域上に閉曲線状に配置されているから、威嚇体30は、有害鳥獣40によって荒らされるおそれのある区域上を旋回するような状態で移動することになる。つまり、有害鳥獣40が図1に示すようなスズメであったとすると、このスズメの天敵であるカラスやトンビが上空を旋回するように、当該威嚇体30が移動することになるのである。
【0019】
勿論、この威嚇体30の移動中は、ピニオン33の駆動は無駄だからなされないようにしてある。例えば、上昇レール11を登り切ったときにアクチュエータ34が再び作動されるようにしておいて、これによってピニオン33の駆動を停止するようにしてある。また、威嚇体30自体に、風を切って進む時に音が出るような工夫をしておけば、この威嚇体30は、音を出しながら下降レール12を降下することになって、有害鳥獣40の脅しをより効果的に行える。
【0020】
下降レール12を滑り落ち切った威嚇体30は、再び上昇レール11の下端に至る。そうすると、威嚇体30側のアクチュエータ34が上昇レール11側のリミット端子13によって作動されることになるから、当該威嚇体30はこの上昇レール11上を再び上昇していくことになる。以下は、上述したことの繰り返しである。
【0021】
以上の結果、本発明の有害鳥獣脅し装置100では、威嚇体30が上昇レール11上を上昇する際に電気等のエネルギーは必要であるが、レール10の大部分を占める下降レール12を移動する際には、自然落下を利用していることから、エネルギーは全く不要である。つまり、常に電気ネネルギーが必要な特許文献1のような技術に比較すれば、この有害鳥獣脅し装置100では、そのエネルギー消費は微々たるものとなっているのである。
【0022】
従って、本発明に係る有害鳥獣脅し装置100は、全体を簡単な構成のものとすることができて、駆動のための電源等のエネルギーをそれ程要することがなく、有害鳥獣40の脅しを確実に行うことができるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0023】
以上、詳述した通り、本発明においては、
「有害鳥獣40によって荒らされるおそれのある区域上に閉曲線状に配置されるレール10に対して、有害鳥獣40を追い払うための威嚇体30が移動できるようにした有害鳥獣脅し装置100であって、
レール10を、上昇レール11と、この上昇レール11の上端から下端に掛けて、前記区域上を滑らかに下降する下降レール12とにより構成するとともに、
威嚇体30が、この威嚇体30側の駆動装置、または上昇レール11側の駆動レールによって、上昇レール11の下端から上端に向けて上昇するようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、全体を簡単な構成のものとすることができて、駆動のための電源等のエネルギーをそれ程要することがなく、有害鳥獣40の脅しを確実に行うことができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、以上のようにした本発明を、図面に示した最良の形態である有害鳥獣脅し装置100について説明すると、この有害鳥獣脅し装置100は、図1に示したように、有害鳥獣40によって荒らされるおそれのある区域、つまり田畑上に閉曲線状に配置されるレール10と、このレール10を支持する複数の支柱20と、有害鳥獣40を追い払うための威嚇体30とを備えているものである。
【0025】
レール10は、図3にも示した上昇レール11と、この上昇レール11の上端から下端に掛けて、田畑の上を滑らかに下降する下降レール12とにより構成したものであり、これらの上昇レール11及び下降レール12は、互いに滑らかに連なるものとしてあるとともに、図1に示したように、一つの閉曲線(ループ)を構成しているものである。
【0026】
上昇レール11は、図3に示したように、その下端の両側に案内アーム11aをそれぞれ形成したものであり、ここに至った威嚇体30を確実に中央に案内するようになっている。また、この上昇レール11内にはラック11bが形成してあり、このラック11bに係合した威嚇体30側のピニオン33の回転によって、威嚇体30が当該ラック11bに対して上昇し得るようにしてある。そして、この上昇レール11には、威嚇体30側のアクチュエータ34を作動させるためのリミット端子13が適宜位置に取り付けてある。
【0027】
なお、この最良形態のラック11bは、これ自体固定的で動かないものであるが、このラック11bを無端ベルト状にして回転駆動させ、この回転駆動するラック11bに威嚇体30側の固定的なピニオン33を係合させて、威嚇体30の上昇レール11に対する上昇を可能にするように実施してもよい。
【0028】
下降レール12は、図2に示したように、威嚇体30側の両転動ローラ32を上方から包み込む形状のものとしたもので、下面に威嚇体30が通過し得る開口を形成したものである。これにより、威嚇体30を吊下できるようにしているとともに、威嚇体30の駆動部31等の部分を直射日光や雨から保護しているのである。そして、威嚇体30側の各転動ローラ32は、当該下降レール12の開口を形成してる二つの腕部上を転動することになるものである。
【0029】
この下降レール12は、上昇レール11の上端から下端に掛けて傾斜していなければならないが、そのようにするのが複数の支柱20である。各支柱20は、図2にも示したように、その上端にオーバーハング部21を有するものであり、このオーバーハング部21の先端に上記のレール10が固定してある。このオーバーハング部21は、図2に示したように、レール10に吊下された威嚇体30と支柱20とが干渉しないようにするものでもある。
【0030】
勿論、各支柱20は、田畑中に立てられるものであるが、その上端の高さを自在に調整できるようにしたものである。何故なら、レール10の特に下降レール12は、上昇レール11の上端から下端に掛けて滑らかに傾斜させなければならないから、そのために、下降レール12の支えを行う支柱20については、その支える部分における高さ調整が是非必要になるからである。そのために、各支柱20について、例えばマイクスタンドのような形状にしておいて、手元でオーバーハング部21の位置が分かるような目盛りを付すようにするとよい。
【0031】
威嚇体30は、有害鳥獣40を脅す機能を直接的に発揮するものであるから、最良形態では、有害鳥獣40であるスズメに対して有効なカラスあるいはトンビの形状にしたものである。勿論、対象である有害鳥獣40に応じた形状や色のものに適宜実施できるものである。なお、本最良形態の威嚇体30では、レール10を移動する際に、風によって音が出るような笛が、頭部分や羽部分に設けてある。
【0032】
この威嚇体30は、上昇レール11上を上らなければならない。そのために、この威嚇体30は、モータや電池、これらの作動を制御する回路等を内蔵した駆動部31を有しており、この駆動部31の外側には自由に転動する転動ローラ32が設けてあ。また、この駆動部31の下側には、上昇レール11側のラック11bに係合し得るピニオン33が設けてあり、このピニオン33の回転時を検知するアクチュエータ34が、図2に示したように、威嚇体30の頭部上に設けてある。
【0033】
なお、駆動部31内に内蔵した電池に代えて、威嚇体30の羽部等に太陽電池を組み込んで、その電力によってピニオン33の回転を果たしたり、あるいは転動ローラ32を積極的に回転させるようにしてレール10に対する移動を確実に行えるように実施してもよい。勿論、この太陽電池や内蔵した電池によって、威嚇体30が定期的に鳴き声を発するように実施してもよい。
【0034】
また、図1に示した上昇レール11の傾斜は比較的緩やかであるが、これをもっと垂直に近い状態に立ち上げるように実施しても良い。そうすることによって、自然落下のための位置エネルギーを十分確保することができるからである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように構成した本発明の有害鳥獣脅し装置100は、スズメ等の有害鳥獣40を、効果的かつ持続的に追い払うことができるものであるから、農作物の被害を極力少なくすることができるだけでなく、電力をそれ程必要としないのであるから、自然破壊を極力抑えることもできるのである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る有害鳥獣脅し装置を田畑に設置した状態を示す正面図である。
【図2】図1中の1−1線に沿って見た部分拡大縦断面図である。
【図3】レールを構成している上昇レールの拡大平面図である。
【図4】従来の技術を示す平面図である。
【図5】図4の技術を説明する部分拡大正面図である。
【符号の説明】
【0037】
100 有害鳥獣脅し装置
10 レール
11 上昇レール
11a 案内アーム
11b ラック
12 下降レール
13 リミット端子
20 支柱
21 オーバーハング部
30 威嚇体
31 駆動部
32 転動ローラ
33 ピニオン
34 アクチュエータ
40 有害鳥獣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害鳥獣によって荒らされるおそれのある区域上に閉曲線状に配置されるレールに対して、前記有害鳥獣を追い払うための威嚇体が移動できるようにした有害鳥獣脅し装置であって、
前記レールを、上昇レールと、この上昇レールの上端から下端に掛けて、前記区域上を滑らかに下降する下降レールとにより構成するとともに、
前記威嚇体が、この威嚇体側の駆動装置、または前記上昇レール側の駆動レールによって、前記上昇レールの下端から上端に向けて上昇するようにしたことを特徴とする有害鳥獣脅し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−17799(P2008−17799A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194388(P2006−194388)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(305045324)
【Fターム(参考)】