説明

有機−無機ハイブリッド材料とその製造方法

【課題】有機電子デバイス、特に電子写真用感光体に有用な、耐摩耗性などの機械的強度や表面硬度、撥水性等の特性に優れる電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体(例えば、ハイブリッド重合体No.1)と、金属アルコキシド化合物とをゾル−ゲル法により加水分解及び重縮合させて3次元構造に架橋し、一体化することにより有機−無機ハイブリッド材料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子デバイス、特に電子写真用感光体に有用な有機−無機ハイブリッド材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、プラスチック系複合材料において、無機成分をナノスケールで有機高分子マトリックス中に分散させた有機−無機ハイブリッド材料が注目され盛んに研究が行われており、無機成分の優れた特徴を引き出したり、相乗効果的な特性を発現させるべく検討が行われている。一方、電子写真用感光体でも、無機材料の特徴を生かした機能化有機−無機ハイブリッド材料が同様に注目されている。
例えば、電子写真方式により画像形成を行う場合、画像形成の主要部材である有機感光体の寿命は、繰り返し使用による静電的な劣化要因と、感光体面に接触する紙、クリーニングブレード、分離爪などによって引き起こされる表面の傷や感光層の摩耗に代表される機械的強度により左右されていた。そのため、感光体の長寿命化、すなわち耐久性向上のための努力が長年に亘り続けられてきた。近年では感光体材料の改良により静電的な耐久性は改善されてきているが、機械的強度については表面層のバインダーとして用いられているポリカーボネートを凌ぐ素材が見いだされず、未だ有効な技術手段はほとんど提案されていないのが現状である。
【0003】
これまで有機感光体の耐久性を向上させるためのアプローチとして感光体の表面層にシリカ粒子を含有せしめて機械的強度を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照。)また、前記シリカ粒子をシランカップリング剤等で処理してなる疎水性シリカ粒子を感光体の最表面層に含有せしめ、感光体の機械的強度を大ならしめると共に潤滑性を付与することによって高耐久性の感光体を得る方法が提案されている(例えば、特許文献4、5、6参照。)。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、シリカ粒子とバインダーとの接着性を持たせるためにシリカ粒子の粒径を一定の大きさ以上に保つ必要があるため、必然的に粒径が大きくなる。粒径が大きくなると表面の粗さが増大し、例えば、クリーニングブレードのエッジ部の損傷によるクリーニング不良が発生し、十分な耐久性が得られなくなるといった問題があった。
【0005】
また、耐摩耗性と耐傷性を改良するため、ポリカーボネート樹脂の存在下で、アルコキシシランなどの加水分解、重縮合を行う方法が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。この方法によれば、生成物中のシリカ成分のサイズを小さくすることはできるが、シリカ成分の含有率が少ないため、無機材料のメリットを十分に引き出すまでに至っていない。
【0006】
さらに、末端シリル変性ポリカーボネートにより有機−無機ハイブリッド高分子材料を得る方法が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。また、主骨格としてポリカーボネート及び/又はポリアリレート部分を有し、官能基として金属アルコキシド基を有する重合体を、加水分解及び重縮合することによって有機―無機ハイブリッド材料を得る方法が提案されている(例えば、特許文献9、10参照。)。
【0007】
しかし、これらの有機−無機ハイブリッド高分子材料を有機感光体に使用する場合には、さらに低分子電荷輸送材料を添加する必要があり、有機−無機ハイブリッド材料の特性が損なわれ、有機−無機ハイブリッド材料としての相乗的な特性の発現が乏しいものとなる欠点がある。
【0008】
【特許文献1】特開昭56−117245号公報
【特許文献2】特開昭63−91666号公報
【特許文献3】特開平1−205171号公報
【特許文献4】特開昭57−176057号公報
【特許文献5】特開昭61−117558号公報
【特許文献6】特開平3−155558号公報
【特許文献7】特開2000−105474号公報
【特許文献8】特開2002−241483号公報
【特許文献9】特開平11−209596号公報
【特許文献10】特開平11−255883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、有機電子デバイス、特に電子写真用感光体に有用な、耐摩耗性などの機械的強度や表面硬度、撥水性等の特性に優れる電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記問題に対処すべく検討した結果、電荷輸送機能を有する構成単位からなる有機成分に金属アルコキシド基を結合したハイブリッド重合体を用い、加水分解後、重縮合して得られる有機−無機ハイブリッド材料は、例えば有機感光体に用いた場合、耐摩耗性等の改善に非常に有効であることを見い出しているが、無機含有率をさらに高める必要があった。
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、電荷輸送性の構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とを加水分解及び重縮合することにより、互いに架橋して一体的に結合した(以降、「互いに結合されて一体化した」と表現することがある。)分子構造を有する有機−無機ハイブリッド材料が得られ、これによって無機含有率がさらに高められることを見出して本発明を成すに至った。
すなわち、以下の構成要件を満足することにより、耐摩耗性などの機械的強度や表面硬度、撥水性等の特性に優れる電荷輸送性を有する有機−無機ハイブリッド材料及びその製造法を提供することができる。以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
本発明は、下記一般式(I)で表される構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とが互いに結合されて一体化したことを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料である。
【0013】
【化13】

【0014】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Ar1はアリール基を表し、 Ar2、Ar3はアリレン基を表す。)
【0015】
また、本発明は、前記一般式(I)で表される構成単位が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする。
【0016】
【化14】

【0017】
(式中、 Ar2、Ar3、Ar4はアリレン基を表す。R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【0018】
さらに、本発明は、上記有機−無機ハイブリッド材料において、前記一般式(II)で表される構成単位が、下記一般式(III)で表されることを特徴とする。
【0019】
【化15】

【0020】
(式中、R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【0021】
そして、本発明は、上記いずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料において、前記ハイブリッド重合体が、前記一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位と共に、下記一般式(IV)で表される構成単位を含み、且つ該一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位の組成比をk、下記一般式(IV)で表される構成単位の組成比をjとしたとき、全組成比(k+j)に対する組成比kの割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする。
【0022】
【化16】

【0023】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は下記式(1)もしくは(2)、
【0024】
【化17】

【0025】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立してアルキル基、アリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、SO2−、−CO−、あるいは下記式(3)〜(11)、
【0026】
【化18】

【0027】
から選ばれ、Z1 、Z2は脂肪族の2価基又はアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
【0028】
また、本発明は、上記いずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料において、前記有機−無機ハイブリッド材料が、ハイブリッド重合体の金属アルコキシド基と、金属アルコキシド化合物との加水分解及び重縮合により架橋して一体化したことを特徴とする。
【0029】
さらに、本発明は、上記いずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料において、前記ハイブリッド重合体の金属アルコキシド基及び金属アルコキシド化合物における各金属元素が、Si、Ti及びZrから選択される少なくとも一種の元素であることを特徴とする。
【0030】
ここで、上記有機−無機ハイブリッド材料において、前記少なくとも一種の元素が、Siであることを特徴とする。
【0031】
さらに、本発明は、下記一般式(I)で表される構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とを加水分解及び重縮合することにより架橋させて一体化することを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料の製造方法に係るものである。
【0032】
【化19】

【0033】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Ar1はアリール基を表し、 Ar2、Ar3はアリレン基を表す。)
【0034】
また、本発明は、上記有機−無機ハイブリッド材料の製造方法において、前記一般式(I)で表される構成単位が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする。
【0035】
【化20】

【0036】
(式中、 Ar2、Ar3、Ar4はアリレン基を表す。R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【0037】
さらに、本発明は、上記有機−無機ハイブリッド材料の製造方法において、前記一般式(II)で表される構成単位が、下記一般式(III)で表されることを特徴とする。
【0038】
【化21】

【0039】
(式中、R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【0040】
そして、本発明は、上記いずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法において、前記ハイブリッド重合体が、前記一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位と共に、下記一般式(IV)で表される構成単位を含み、且つ該一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位の組成比をk、下記一般式(IV)で表される構成単位の組成比をjとしたとき、全組成比(k+j)に対する組成比kの割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする。
【0041】
【化22】

【0042】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は下記式(1)もしくは(2)、
【0043】
【化23】

【0044】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立してアルキル基、アリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、SO2−、−CO−、あるいは下記式(3)〜(11)、
【0045】
【化24】

【0046】
から選ばれ、Z1 、Z2は脂肪族の2価基又はアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
【0047】
また、本発明は、上記いずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法において、前記ハイブリッド重合体の金属アルコキシド基及び金属アルコキシド化合物における各金属元素が、Si、Ti及びZrから選択される少なくとも一種の元素であることを特徴とする。
【0048】
さらに、本発明は、上記有機−無機ハイブリッド材料の製造方法において、前記少なくとも一種の元素が、Siであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0049】
本発明における前記構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とを加水分解及び重縮合することにより、耐摩耗性、剛性などの機械的強度や、表面硬度、撥水性、あるいは耐熱性、耐候性、耐薬品性、耐汚染性等の特性に優れた電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料を提供することができる。
上記特性を有する本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、電子デバイス用の材料として有用であり、例えば電子写真用感光体として用いた場合、従来高耐久化を阻害する要因となっていた機械的耐久のレベルを、大幅に向上することができ、耐傷性、耐摩耗性に優れ、且つ長期間の使用においても終始高濃度、高画質の画像が安定して得られる電子写真用感光体が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明について詳細に説明する。
前述のように本発明は、前記一般式(I)で表される構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とが互いに結合されて一体化した有機−無機ハイブリッド材料に係るものであり、この有機−無機ハイブリッド材料は、ハイブリッド重合体の金属アルコキシド基と金属アルコキシド化合物を加水分解及び重縮合することにより得られる。
【0051】
本発明の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法について説明する。
〔有機−無機ハイブリッド材料〕
先ず、前記一般式(I)で表される電荷輸送性構成単位、すなわち少なくとも電荷輸送機能を有するポリカーボネート構造を有し、且つ少なくとも1個の官能基を分子内に有する重合体有機成分を、金属アルコキシド化合物(以下、「金属アルコキシド(a)」と略称することがある。)と反応させて、前記一般式(I)で表される構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体を得る。ここで、上記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(II)、あるいは前記一般式(III)で表されるものが好ましい。
次いで、得られた金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、この重合体と反応性を有する官能基を持った金属アルコキシド化合物(以下、「金属アルコキシド(b)」と略称することがある。)を、ゾル−ゲル法により加水分解及び重縮合させて3次元構造に架橋し、一体化することにより目的とする有機−無機ハイブリッド材料が得られる。
すなわち、前記一般式(I)、(II)、(III)で表される構成単位を含有すれば、得られた有機−無機ハイブリッド材料は優れた電荷輸送性を持つことができ、その構成単位がポリカーボネート構造であるため靭性の向上に寄与し、さらに金属アルコキシド化合物を反応成分として用いるため、有機−無機ハイブリッド材料中の無機成分を大幅に増量することができる。これによって、耐摩耗性や剛性などの機械的強度、表面硬度、撥水性等に優れ、電子デバイス用の材料として有用な有機−無機ハイブリッド材料が提供される。
【0052】
上記のように、ハイブリッド重合体を構成する重合体有機成分は、金属アルコキシド(a)と反応させるために、分子内に少なくとも1個、好ましくは2個以上の官能基を有する必要がある。このような官能基としては、金属アルコキシドの官能基と反応し得るものであれば特に限定されない。
具体的には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルケニル基、アルキニル基、酸ハロゲン基、酸エステル基、ホルミル基、ハロゲン基、エポキシ基、及びイソシアネート基等が例示できる。好ましいものは、水酸基、アミノ基、カルボキシル基のような活性水素を有する官能基である。最も好ましいものは水酸基である。
【0053】
上記少なくとも電荷輸送機能を有するポリカーボネート構造を含む重合体有機成分は、従来から公知のビスフェノール類と炭酸誘導体との反応により得ることができる。例えば、ジオールとビスアリールカーボネートとのエステル交換法や、ホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物との溶液又は界面重合法、あるいはジオールから誘導されるビスクロロホルメート等のクロロホルメートを用いる方法等により製造される。以下、具体的に説明する。
【0054】
前記ハロゲン化カルボニル化合物を用いる方法の場合、ハロゲン化カルボニル化合物として、ホスゲンの代りにホスゲンの2量体であるトリクロロメチルクロロホルメートやホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートも有用であり、塩素以外のハロゲンから誘導されるハロゲン化カルボニル化合物、例えば、臭化カルボニル、ヨウ化カルボニルも有用である。これら公知の製造方法については、例えば、ポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者;本間信一、発行;日刊工業新聞社)等に記載されている。
上記公知方法により電荷輸送機能を有するポリカーボネート構造を含む重合体有機成分(「ポリカーボネート樹脂」と略称する。)を製造する場合、下記一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオール1種以上と併用して下記一般式(VIII)で表されるジオールを使用し、機械的特性等の改良された共重合体とすることができる。
【0055】
【化25】

【0056】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Ar1はアリール基を表し、 Ar2、Ar3はアリレン基を表す。)
【0057】
【化26】

【0058】
(式中、 Ar2、Ar3、Ar4はアリレン基を表す。R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【0059】
【化27】

【0060】
(式中、R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【0061】
【化28】

【0062】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、下記式(1)もしくは(2)、
【0063】
【化29】

【0064】
(ここで、R2、 R3、 R4、 R5は独立してアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、あるいは下記式(3)〜(11)、
【0065】
【化30】

【0066】
から選ばれ、Z1、Z2は脂肪族の2価基又はアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
【0067】
上記一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送機能を有するジオールと(VIII)で表されるジオールとの割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。
なお、以降に述べる有機−無機ハイブリッド材料とした場合に、前記一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位(重合体有機成分)の組成比をkとし、前記一般式(IV)で表される構成単位(重合体有機成分)の組成比をjとしたとき、全組成比(k+j)に対するkの割合が、0<k/(k+j)≦1であることが好適である。
また、重合体有機成分の数平均分子量は、400〜40000、好ましくは1000〜10000である。数平均分子量が400未満であると、得られたハイブリッド材料は重合体としての特性が欠如し、一方、40000を超えると重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基が少なくなり、得られたハイブリッド材料は無機材料の特性を十分に引き出すことができない。
【0068】
また、適当な重合操作を選択することによって、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム交互共重合体、ランダムブロック共重合体等の各種共重合体を得ることができる。
例えば、上記一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオールと一般式(VIII)で表されるジオールを初めから均一に混合して、ホスゲンと縮合反応を行えば、一般式前記(I)、あるいは(II)、もしくは(III)で表される構成単位と、前記一般式(IV)で表される構成単位とからなるランダム共重合体が得られる。
【0069】
あるいは、反応の途中で、幾種類かのジオールを加えることにより、ランダムブロック共重合体が得られる。また、前記一般式(VIII)で表されるジオールから誘導されるビスクロロホルメートと、前記一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオールとの縮合反応を行えば、下記一般式(IX)、(X)、(XI)で表される繰り返し単位からなる交互共重合体が得られる。
【0070】
【化31】

【0071】
(式中、R1、Ar1、Ar2、Ar3、Xは前記定義と同一であり、nは重合度を表し2〜5000の整数を示す。)
【0072】
【化32】

【0073】
(式中、Ar2、Ar3、Ar4、R17、R18、Xは前記定義と同一であり、nは重合度を表し2〜5000の整数を示す。)
【0074】
【化33】

【0075】
(式中、R17、R18、Xは前記定義と同一であり、nは重合度を表し2〜5000の整数を示す。)
【0076】
この場合、逆に前記一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオールから誘導されるビスクロロホルメートと一般式(VIII)で表されるジオールとの縮合反応によっても同様に上記一般式(IX)、(X)、(XI)で表される繰り返し単位からなる交互共重合体が得られる。
また、これらビスクロロホルメートとジオールとの縮合反応の際、ビスクロロホルメート及びジオールを複数使用することによりランダム交互共重合体が得られる。
【0077】
また、ハロゲン化カルボニル化合物や、クロロホルメートを用い、界面重合法を適用する場合には、ジオールのアルカリ水溶液と、水に対して実質的に不溶性で、かつポリカーボネート樹脂を溶解する溶液との2相間で炭酸誘導体及び触媒の存在下で反応が行われる。この際、高速撹拌や乳化物質の添加によって反応触媒を乳化させて行うことによって短時間で分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0078】
上記アルカリ水溶液に用いる塩基としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化や炭酸塩が用いられ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩が使用できる。これらの塩基は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。また、使用される水は蒸留水、イオン交換水が好ましい。
【0079】
また、ポリカーボネート樹脂を溶解する溶液として用いられる有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、又は、それらの混合物が挙げられる。さらに、これら溶媒にトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素を混合した有機溶媒でもよい。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素であり、より好ましくは、ジクロロメタン又はクロロベンゼンである。
【0080】
ポリカーボネート樹脂の製造時に使用されるポリカーボネート生成触媒としては、例えば、3級アミン、4級アンモニウム塩、3級ホスフィン、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテル及びその塩、アミド基を有する化合物がある。
このようなポリカーボネート生成触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−テトラメチレンジアミン、4−ピロリジノピリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−エチルピペリジン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、テトラ(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロライド、ベンジルトリエチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−メチルピリジン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−メチルピリダジン、4,6−ジメチルピリミジン、1−シクロヘキシル−3,5−ジメチルピラゾール、2,3,5,6−テトラメチルピラジン等が挙げられる。
【0081】
ポリカーボネート生成触媒は、好ましくは、3級アミンであり、より好ましくは、総炭素数3〜30の3級アミンであり、特に好ましくは、トリエチルアミンである。これらのポリカーボネート生成触媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。これらの触媒は、ホスゲンやビスクロロホルメート体等の炭酸誘導体を反応系に加える前、及び/又は、加えた後に添加することができる。
【0082】
また、アルカリ水溶液中でのジオールの酸化を防ぐためにハイドロサルファイト等の酸化防止剤を加えてもよい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間であり、反応中のpHは通常10以上に保つことが好ましい。
【0083】
一方、溶液重合法を適用する場合には、ジオールを溶媒に溶解し、脱酸剤を添加し、これにビスクロロホルメート、又はホスゲンの多量体を添加することによりポリカーボネート樹脂が得られる。
この場合の脱酸剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンのような3級アミン及びピリジンが使用される。
また、反応に使用される溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素及びテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系の溶媒及びピリジンが好ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間である。
【0084】
また、エステル交換法によってもポリカーボネート樹脂が製造できる。この場合、不活性ガスの存在下にジオールとビスアリルカーボネートを混合し、通常、減圧下120〜350℃で反応させる。段階的に減圧度を変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成するフェノール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
また、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。ビスアリルカーボネートとしてはジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
【0085】
上記各種方法によって得られる分子内に少なくとも1個、好ましくは2個以上の官能基を有するポリカーボネート樹脂からなる重合体有機成分と、重合体有機成分中の官能基と反応性を有する官能基を持った金属アルコキシドを反応させ結合させることによって、重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体が得られる。以下に、官能基を持った金属アルコキシドを具体的に示す。
【0086】
本発明における金属アルコキシドとして好ましいものは、下記一般式(a)で示す化合物である。
lmM(R’X)n … (a)
[式中、Rは炭素数1〜12、好ましくは1〜5のアルキル基、Aは炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルコキシ基、MはSi、Ti、Zr、Fe、Cu、Sn、B、Al、Ge、Ce、及びTaからなる群、好ましくはSi、Ti、及びZrからなる群から選択される金属元素、R’は炭素数1〜4、好ましくは2〜4のアルキレン基又はアルキリデン基、Xはイソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、及び酸無水物基からなる群から選択される官能基、そしてlは0〜3の整数であり、m及びnは独立して1〜3の整数である。]
【0087】
上記のように酸化金属結合を有する構成単位における金属元素がSi、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。特に、金属元素がSiであることが好適である。すなわち、このような金属を選択した場合に、前記本発明におけるハイブリッド材料用重合体の合成が容易であり、得られる重合体の化学的な安定性もある。また、ハイブリッド材料用重合体は、適当な反応性(温度、時間等)を有し、例えば、容易に重合体を加水分解、重縮合(ゾル−ゲル反応)させることによって有機−無機ハイブリッド材料が得られ、硬化した重合体の電気的、機械的、物理的等の特性を有機電子デバイス、特に電子写真用感光体に有用なものとすることができる。また、金属アルコキシドの原料を下記例のように広く選択することができ、目的に応じて使い分けすることもできる。
【0088】
上記一般式(a)で表される金属アルコキシドとしては、モノイソシアネートトリアルコキシメタル類、モノイソシアネートジアルコキシメタル類、モノイソシアネートモノアルコキシメタル類、ジイソシアネートアルコキシメタル類、トリイソシアネートアルコキシメタル類、エポキシ基を官能基とする金属アルコキシド類、エポキシ基を官能基とするアルキルアルコキシシラン類、酸ハロゲン化物を官能基とする金属アルコキシド、あるいはアミノ基やメルカプト基を官能基とするアルコキシシラン類等が挙げられる。以下、このような金属アルコキシドを具体的に例示する。
【0089】
モノイソシアネートトリアルコキシメタル類としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリプロポキシジルコニウム、2−イソシアネートエチルトリブトキシスズ等が挙げられる。
【0090】
モノイソシアネートジアルコキシメタル類としては、3−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルエチルジイソプロポキシチタン、2−イソシアネートエチルエチルジプロポキシジルコニウム、2−イソシアネートエチルメチルジブトキシスズ、イソシアネートメチルジメトキシアルミニウム等が挙げられる。
【0091】
モノイソシアネートモノアルコキシメタル類としては、3−イソシアネートプロピルジエチルエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルイソプロポキシチタン、2−イソシアネートエチルジエチルプロポキシジルコニウム、2−イソシアネートエチルジメチルブトキシスズ、イソシアネートメチルメチルメトキシアルミニウム等が挙げられる。
【0092】
ジイソシアネートアルコキシメタル類としては、ジ(3−イソシアネートプロピル)ジエトキシシラン、ジ(3−イソシアネートプロピル)メチルイソプロポキシチタン等が挙げられる。
また、トリイソシアネートアルコキシメタル類としては、エトキシシラントリイソシアネート等が挙げられる。
【0093】
エポキシ基を官能基とする金属アルコキシドとしては、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシチタン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロポキシチタン、γ−グリシドキシプロピルジメチルイソプロポキシチタン、3,4−エポキシブチルトリプロポキシジルコニウム、3,4−エポキシブチルメチルジプロポキシジルコニウム、3,4−エポキシブチルジメチルプロポキシジルコニウム、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシスズ等が挙げられる。
【0094】
アルコキシ基を官能基とするアルキルアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリイソプロピルイソプロポキシシラン等が挙げられる。
【0095】
酸無水物化物を官能基とする金属アルコキシドとしては、3−(トリエトキシシリル)−2−メチルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0096】
酸ハロゲン化物を官能基とする金属アルコキシドとしては、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0097】
その他、アミノ基やメルカプト基を官能基とするアルコキシシラン類として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0098】
さらに、本発明における金属アルコキシドとして下記一般式(b)で示される化合物を挙げることができる。
oM …(b)
(式中、Aは炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルコキシ基、MはSi、Ti、Zr、Fe、Cu、Sn、B、Al、Ge、Ce、Ta及びWからなる群、好ましくはSi、Ti、及びZrからなる群から選択される金属元素を示す。oは2〜6の整数である。)
【0099】
上記のように酸化金属結合を有する構成単位における金属元素がSi、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。特に、金属元素がSiであることが好適である。この理由は前記と同様である。
【0100】
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、トリイソプロポキシアルミニウム等の金属アルコキシド類が挙げられる。
【0101】
前記金属アルコキシドは、1種類だけでもよく、2種類以上を併用してもよい。また、1分子内に2種類以上の金属元素が含まれているような金属アルコキシドや1分子内に2個以上の繰り返し単位を有するオリゴマータイプの金属アルコキシドを用いてもよい。
【0102】
前述のように電荷輸送機能を有する構成単位を含んだ本発明におけるハイブリッド材料用重合体は、分子内に少なくとも1個、好ましくは2個以上の官能基を有するポリカーボネート樹脂からなる重合体有機成分と、重合体有機成分中の官能基と反応性を有する官能基を持った金属アルコキシドを反応させて得られる。なお、反応に際しては、触媒を使用することもできる。重合体有機成分と金属アルコキシドとの反応の具体例を以下に説明する。
【0103】
水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等の活性水素を有する官能基を持つポリカーボネート樹脂からなる重合体と、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基等の官能基を持った金属アルコキシドとを溶剤中で、好ましくは不活性ガス雰囲気下で反応させる。用いる溶剤は重合体と金属アルコキシドを共に良く溶解させるものであればよい。
【0104】
一般には、重合体溶液中へ金属アルコキシド溶液あるいは金属アルコキシドをそのまま徐々に添加した後、室温下あるいはゆるやかに加温しながら反応させる。重合体中の官能基に対する金属アルコキシド中の官能基量は1/10〜10/1当量比とすることが望ましい。
反応終了後は、反応液をそのまま用いて、以降に示す次ステップのゾル−ゲル反応へ移ってもよいし、反応液を濃縮するか、あるいは多量の貧溶媒へ投入して反応生成物を析出させ、洗浄、精製、乾燥等の処理を行った後、これを用いてゾル−ゲル反応を行ってもよい。
【0105】
<金属アルコキシド化合物>
次に、本発明においてハイブリッド重合体と反応させる金属アルコキシド化合物(金属アルコキシド(b))として好ましいものは、下記一般式(c):
pM …(c)
(式中、Aは炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルコキシ基、MはSi、Ti、Zr、Fe、Cu、Sn、B、Al、Ge、Ce、Ta及びW等からなる群、好ましくはSi、Ti、及びZrからなる群から選択される金属元素、pは2〜6の整数を示す。)で表される化合物を挙げることができる。
【0106】
このような金属アルコキシド化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム類、及びジメトキシ銅、ジエトキシバリウム、トリメトキシホウ素、トリエトキシガリウム、トリブトキシアルミニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラブトキシ鉛、ペンタn−プロポキシタンタル、ヘキサエトキシタングステン等の金属アルコキシド類が挙げられる。
【0107】
上記ハイブリッド重合体と反応させる金属アルコキシド(b)として好ましいものは、一般式(c)においてMがSi、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種の金属アルコキシドであり、特に好ましいものはSiの金属アルコキシドである。Siアルコキシドは最も汎用性があり、応用展開しやすいという特徴がある。
【0108】
更に、金属アルコキシド(b)として特に好ましいものは、下記一般式(d):
klM(R’mX)n …(d)
(式中、Rは水素か炭素数1〜12、好ましくは1〜5のアルキル基又はフェニル基、Aは炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルコキシ基、MはSi、Ti、Zr、Fe、Cu、Sn、B、Al、Ge、Ce、Ta及びW等からなる群、好ましくはSi、Ti、Zrからなる群から選択される金属元素、R’は炭素数1〜4、好ましくは2〜4のアルキレン基又はアルキリデン基、Xはイソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、アミノ基、チオール基、ビニル基、メタクリル基、ハロゲン原子からなる群から選択される官能基、kは0〜5の整数、lは1〜5の整数であり、mは0又は1、nは0〜5の整数を示す。)で表される化合物を挙げることができる。
【0109】
上記MがSiの場合を例とし、具体的に金属アルコキシド化合物を例示すれば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリn−プロポキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジイソプロポキシシラン、モノメトキシシラン、モノエトキシシラン、モノブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジイソプロピルイソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリn−プロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジブチルジブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリn−プロピルn−プロポキシシラン、トリブチルブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等のような(アルキル)アルコキシシラン;
【0110】
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリn−プロポキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、2−イソシアネートエチルエチルジブトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルイソプロポキシシラン、2−イソシアネートエチルジエチルブトキシシラン、ジ(3−イソシアネートプロピル)ジエトキシシラン、ジ(3−イソシアネートプロピル)メチルエトキシシラン、エトキシシラントリイソシアネート等のようなイソシアネート基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0111】
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン等のようなエポキシ基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0112】
カルボキシメチルトリエトキシシラン、カルボキシメチルエチルジエトキシシラン、
カルボキシエチルジメチルメトキシシラン等のようなカルボキシル基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0113】
3−(トリエトキシシリル)−2−メチルプロピルコハク酸無水物等のような酸無水物基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0114】
2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリエトキシシラン等のような酸ハロゲン化物基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0115】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のようなアミノ基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0116】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のようなチオール基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0117】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のようなビニル基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0118】
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメチルシラン等のようなメタクリル基を有する(アルキル)アルコキシシラン;
【0119】
トリエトキシフルオロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン等のようなハロゲン原子を有する(アルキル)アルコキシシラン;等を挙げることができる。
【0120】
勿論、Siだけでなく、Ti、Zr、Fe、Cu、Sn、B、Al、Ge、Ce、Ta及びW等、他の金属においても同様の化合物を例示することができる。
金属アルコキシド(b)として好ましいものは、一般式(d)においてMがSi、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種の金属アルコキシドであり、特に好ましいものはSiの金属アルコキシドである。前記のようにSiアルコキシドは最も汎用性があり、応用展開しやすいという特徴がある。
【0121】
上記金属アルコキシド化合物は、1種類だけでもよく、2種以上を併用してもよい。また、Mg[Al(iso−OC3742、Ba[Zr2(OC2542、(C37O)2Zr[Al(OC3742等の1分子内に2種以上の金属元素が含まれているような金属アルコキシド化合物や、テトラメトキシシランオリゴマーあるいはテトラエトキシシランオリゴマー等の1分子内に2個以上の繰り返し単位を有するオリゴマータイプの金属アルコキシド化合物を用いてもよい。また、アルコキシ基がアセトキシ基であってもよい。
【0122】
電荷輸送性の有機−無機ハイブリッド材料は、ハイブリッド重合体と金属アルコキシド(b)とをゾル−ゲル反応、すなわちハイブリッド重合体の金属アルコキシド基と、金属アルコキシド化合物の加水分解及び重縮合により架橋して一体化することにより得られる。
この反応の際、金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と金属アルコキシド(b)との組成比は自由に変えることができる。金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と金属アルコキシド(b)との重量比は1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10である。
【0123】
上記ゾル−ゲル反応による加水分解、重縮合とは、分子内に金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体及び金属アルコキシド(b)をそれぞれ水と反応させることによりアルコキシド基を水酸基に変換し、次いでこの水酸基を同時進行的に重縮合させることによりヒドロキシ金属基(例えば、−Si(OH)3)を有する重合体とヒドロキシ金属化合物が脱水反応あるいは隣接した分子と脱アルコール反応を生じ、無機的な共有結合を介して三次元的に架橋する反応をいう。
【0124】
加水分解反応に用いられる水は全てのアルコキシ基を水酸基に変換するために必要な量を添加してもよいし、反応系中の水分を利用したり、大気中の水分を吸湿させて行ってもよい。反応条件としては、室温〜100℃で0.5〜24時間程度が望ましい。またその際、塩酸、硫酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ピペリジン等の塩基性触媒を用いてもよい。
さらに縮合反応を進めて架橋をより強固なものとしたい場合には、その後50〜400℃で5分〜48時間程度、熱処理を行うのが好ましい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、「部」は「重量部」を示す。
先ず、下記実施例1〜4の水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体有機成分)を合成し、これを用いてアルコキシシリル化(ハイブリッド重合体)し(実施例5〜8)、このハイブリッド重合体を使用してフィルムを作製(実施例9〜12)し、別途作製した比較例1〜3と比較評価した。
【0126】
(実施例1)
<水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.1>
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコに、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン3.87g(0.008モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.74g(0.012モル)、脱水ピリジン2.5ml、そして脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.48g(5.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.1)を得た。
得られた重合体No.1の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で2200であった。なお、赤外吸収スペクトルを図1に示す。重合体の構成単位と元素分析の結果を下記表1に示す。
【0127】
(実施例2)
<水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.2>
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコに、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン3.87g(0.008モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.74g(0.012モル)、脱水ピリジン2.5ml、そして脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.78g(6.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.2)を得た。
得られた重合体No.2の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で3400であった。なお、重合体の構成単位と元素分析の結果を下記表1に示す。
【0128】
(実施例3)
<水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.3>
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコに、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン9.96g(0.02モル)、脱水ピリジン2.5mlそして脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.48g(5.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.3)を得た。
得られた重合体No.3の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で2500であった。なお、重合体の構成単位と元素分析の結果を下記表1に示す。
【0129】
(実施例4)
<水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.4>
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコに、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン9.96g(0.02モル)、脱水ピリジン2.5mlそして脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.78g(6.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、下記表1に示す水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.4)を得た。
得られた重合体No.4の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で4500であった。なお、重合体の構成単位と元素分析の結果を下記表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
(実施例5)
<重合体No.1へのアルコキシシリル基導入>
上記合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.1にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド重合体No.1)。
水酸基を有する電荷輸送性重合体No.1(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.6gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
得られた生成物のH−NMRによる測定結果を図2に示す。測定の結果、生成物の両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。またGPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は2700であった。
【0132】
(実施例6)
<重合体No.2へのアルコキシシリル基導入>
上記合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.2にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド重合体No.2)。
水酸基を有する電荷輸送性重合体No.2(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.5gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
生成物はH−NMRにより両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。またGPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は4000であった。
【0133】
(実施例7)
<重合体No.3へのアルコキシシリル基導入>
上記合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.3にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド重合体No.3)。
水酸基を有する電荷輸送性重合体No.3(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.6gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
生成物はH−NMRにより両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。またGPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は3000であった。
【0134】
(実施例8)
<重合体No.4へのアルコキシシリル基導入>
上記合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.4にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド重合体No.4)。
水酸基を有する電荷輸送性重合体No.4(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.5gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
生成物はH−NMRにより両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。またGPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は5100であった。
【0135】
(実施例9)
<ハイブリッド重合体No.1のフィルム作製(ゾル−ゲル法)>
実施例5で得られたアルコキシシリル化電荷輸送性重合体(ハイブリッド重合体No.1)1.8gと、三菱化学社製テトラメトキシシランオリゴマーMKCシリケート MS−56(TMOS)0.2gとをテトラヒドロフラン20gに溶解後、1N−塩酸水0.10gを添加し、室温下1時間強攪拌することにより加水分解を行い、溶液を調製した。
上記調製した溶液を用いてスピンコーターにより、ポリアミド基板上にコーティングし溶媒を蒸発させた後、150℃で熱処理して厚さ15μmのフィルム(1A)を形成した。
また、調製した溶液を室温下でバット上にキャストし、溶媒を蒸発させた後、150℃で熱処理してフィルムを得た(1B)。このフィルムの外観を観察したところ、淡い黄緑色の透明で良好なフィルムであった。
<フィルム(1A)、(1B)の評価>
上記ポリアミド基板上のフィルム(1A)を用いて表面硬度測定を、フィルム(1B)を用いて動的粘弾性装置によるガラス転移点測定、及び表面の純水接触角の測定を行った。結果を下記表2に示す。なお、それぞれの評価条件は下記による。
【0136】
(1)表面硬度:鉛筆引っかき試験(JIS K 5400)により評価した。硬度のランクは(軟)6B〜B、HB、F、H〜9H(硬)の順に6Bが最も柔らかく、9Hが最も硬い。
(2)ガラス転移温度:動的粘弾性装置により測定したtanδピークの温度をもって示した。
(3)純水接触角:AUTOMATIC CONTACT ANGLE METER(KYOWA INTERFACE SCIENCE Co.LTD)にて測定した。
【0137】
(実施例10)
<ハイブリッド重合体No.2のフィルム作製(ゾル−ゲル法)>
実施例6で得られたアルコキシシリル化電荷輸送性重合体(ハイブリッド重合体No.2)1.8gと、三菱化学社製テトラメトキシシランオリゴマーMKCシリケート MS−56(TMOS)0.2gとをテトラヒドロフラン20gに溶解後、1N−塩酸水0.10gを添加し、室温下1時間強攪拌することにより加水分解を行い、溶液を調製した。
上記調製した溶液を用いて実施例9と同様の処理を行い、ポリアミド基板上のフィルム(2A)と淡い黄緑色の透明で良好なフィルムフィルム(2B)を得た。
<フィルム(2A)、(2B)の評価>
上記フィルムについて実施例9と同様の条件で表面硬度測定、動的粘弾性装置によるガラス転移点測定、及び表面の純水接触角の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0138】
(実施例11)
<ハイブリッド重合体No.3のフィルム作製(ゾル−ゲル法)>
実施例7で得られたアルコキシシリル化電荷輸送性重合体(ハイブリッド重合体No.3)1.8gと、三菱化学社製テトラメトキシシランオリゴマーMKCシリケート MS−56(TMOS)0.2gとをテトラヒドロフラン20gに溶解後、1N−塩酸水0.10gを添加し、室温下1時間強攪拌することにより加水分解を行い、溶液を調製した。
上記調製した溶液を用いて実施例9と同様の処理を行い、ポリアミド基板上のフィルム(3A)と淡い黄緑色の透明で良好なフィルムフィルム(3B)を得た。
<フィルム(3A)、(3B)の評価>
上記フィルムについて実施例9と同様の条件で表面硬度測定、動的粘弾性装置によるガラス転移点測定、及び表面の純水接触角の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0139】
(実施例12)
<ハイブリッド重合体No.4のフィルム作製(ゾル−ゲル法)>
実施例8で得られたアルコキシシリル化電荷輸送性重合体(ハイブリッド重合体No.4)1.8gと、三菱化学社製テトラメトキシシランオリゴマーMKCシリケート MS−56(TMOS)0.2gとをテトラヒドロフラン20gに溶解後、1N−塩酸水0.10gを添加し、室温下1時間強攪拌することにより加水分解を行い、溶液を調製した。
上記調製した溶液を用いて実施例9と同様の処理を行い、ポリアミド基板上のフィルム(4A)と淡い黄緑色の透明で良好なフィルムフィルム(4B)を得た。
<フィルム(4A)、(4B)の評価>
上記フィルムについて実施例9と同様の条件で表面硬度測定、動的粘弾性装置によるガラス転移点測定、及び表面の純水接触角の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0140】
(比較例1)
<比較例1のフィルム作製>
特許第3368415号公報に記載された方法を参考として合成した実施例1と同様な構成単位を持つ数平均分子量80000の電荷輸送性重合体4.5gをジクロロメタン100gに溶解して溶液を調製した。
上記調製した溶液を用いてスピンコーターにより、ポリアミド基板上にコーティングし溶媒を蒸発させた後、120℃で熱処理して厚さ15μmのフィルムを形成した(比1A)。
また、調製した溶液を室温下でバット上にキャストし、溶媒を蒸発させた後、120℃で熱処理してフィルムを得た(比1B)。このフィルムの外観を観察したところ、淡い黄緑色の透明で良好なフィルムであった。
<フィルム(比1A)、(比1B)の評価>
上記フィルムについて実施例9と同様の条件で表面硬度測定、動的粘弾性装置によるガラス転移点測定、及び表面の純水接触角の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0141】
(比較例2)
<比較例2のフィルム作製>
特開2000−105474号公報に記載された方法を参考として下記組成の溶液を調製した。
【0142】
〔溶液の組成〕
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 6.6g
下記構造式(12)の電荷輸送性化合物 4.2g
テトラエトキシシラン 0.33g
ジクロロメタン 30g
【0143】
【化34】

【0144】
上記調製した溶液を用いてスピンコーターにより、ポリアミド基板上にコーティングし溶媒を蒸発させた後、120℃で熱処理して厚さ15μmのフィルムを形成した(比2A)。
また、調製した溶液を室温下でバット上にキャストし、溶媒を蒸発させた後、120℃で熱処理してフィルムを得た(比2B)。このフィルムの外観を観察したところ、黄緑色の不透明なフィルムであった。
<フィルム(比2A)、(比2B)の評価>
上記フィルムについて実施例9と同様の条件で表面硬度測定、動的粘弾性装置によるガラス転移点測定、及び表面の純水接触角の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0145】
(比較例3)
<比較例3のフィルム作製>
実施例8で得られたアルコキシシリル化電荷輸送性重合体2.0gをテトラヒドロフラン20gに溶解後、1N−塩酸水0.10gを添加し室温下1時間強攪拌することにより加水分解を行い、溶液を調製した。
【0146】
上記調製した溶液を用いてスピンコーターにより、ポリアミド基板上にコーティングし溶媒を蒸発させた後、150℃で熱処理して厚さ15μmのフィルムを形成した(比3A)。
また、調製した溶液を室温下でバット上にキャストし、溶媒を蒸発させた後、150℃で熱処理してフィルムを得た(比3B)。このフィルムの外観を観察したところ、淡い黄緑色の透明で良好なフィルムであった。
<フィルム(比3A)、(比3B)の評価>
上記フィルムについて実施例9と同様の条件で表面硬度測定、動的粘弾性装置によるガラス転移点測定、及び表面の純水接触角の測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0147】
【表2】

【0148】
表2の結果より、本発明の電荷輸送性有機−無機ハイブリッド材料を用いて得られた実施例9〜12のフィルムはいずれも無機成分含有量が多く、その無機成分が有する表面硬度、耐熱性、及び無機成分(Si系成分)が有する撥水性等の特性が存分に発揮され、いずれの特性も良好な値を示している。
これに対して、比較例の場合には無機成分の有する特徴が十分に発揮されず、表面硬度、ガラス転移温度、及び(純水接触角)表面撥水性等の値はいずれも低く、本発明の電荷輸送性有機−無機ハイブリッド材料に及ばなかった。
すなわち、構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とを加水分解及び重縮合することにより得られる有機−無機ハイブリッド材料は、電荷輸送機能を有すると共に、耐摩耗性、剛性などの機械的強度や、表面硬度、撥水性、あるいは耐熱性、耐候性、耐薬品性、耐汚染性等の特性に優れているため、各種電子デバイス用として有用であり、例えば、電子写真用感光体の構成材料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】実施例1における水酸基を有する電荷輸送性重合体の赤外吸収スペクトル図である。
【図2】実施例5におけるハイブリッド重合体No.1のH−NMRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とが互いに結合されて一体化したことを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料。
【化1】


(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Ar1はアリール基を表し、 Ar2、Ar3はアリレン基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表される構成単位が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化2】


(式中、 Ar2、Ar3、Ar4はアリレン基を表す。R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(II)で表される構成単位が、下記一般式(III)で表されることを特徴とする請求項2に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化3】


(式中、R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【請求項4】
前記ハイブリッド重合体が、前記一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位と共に、下記一般式(IV)で表される構成単位を含み、且つ該一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位の組成比をk、下記一般式(IV)で表される構成単位の組成比をjとしたとき、全組成比(k+j)に対する組成比kの割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化4】


[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は下記式(1)もしくは(2)、
【化5】


(ここで、R2、R3、R4、R5は独立してアルキル基、アリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、SO2−、−CO−、あるいは下記式(3)〜(11)、
【化6】


から選ばれ、Z1 、Z2は脂肪族の2価基又はアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
【請求項5】
前記有機−無機ハイブリッド材料が、ハイブリッド重合体の金属アルコキシド基と、金属アルコキシド化合物との加水分解及び重縮合により架橋して一体化したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項6】
前記ハイブリッド重合体の金属アルコキシド基及び金属アルコキシド化合物における各金属元素が、Si、Ti及びZrから選択される少なくとも一種の元素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項7】
前記少なくとも一種の元素が、Siであることを特徴とする請求項6に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項8】
下記一般式(I)で表される構成単位を有すると共に官能基として金属アルコキシド基を有するハイブリッド重合体と、金属アルコキシド化合物とを加水分解及び重縮合することにより架橋させて一体化することを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【化7】


(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Ar1はアリール基を表し、 Ar2、Ar3はアリレン基を表す。)
【請求項9】
前記一般式(I)で表される構成単位が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項8に記載の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【化8】


(式中、 Ar2、Ar3、Ar4はアリレン基を表す。R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【請求項10】
前記一般式(II)で表される構成単位が、下記一般式(III)で表されることを特徴とする請求項9に記載の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【化9】


(式中、R17、R18は同一又は異なるアシル基、アルキル基、アリール基を表す。)
【請求項11】
前記ハイブリッド重合体が、前記一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位と共に、下記一般式(IV)で表される構成単位を含み、且つ該一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される構成単位の組成比をk、下記一般式(IV)で表される構成単位の組成比をjとしたとき、全組成比(k+j)に対する組成比kの割合が0<k/(k+j)≦1であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【化10】


[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は下記式(1)もしくは(2)、
【化11】


(ここで、R2、R3、R4、R5は独立してアルキル基、アリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、SO2−、−CO−、あるいは下記式(3)〜(11)、
【化12】


から選ばれ、Z1 、Z2は脂肪族の2価基又はアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
【請求項12】
前記ハイブリッド重合体の金属アルコキシド基及び金属アルコキシド化合物における各金属元素が、Si、Ti及びZrから選択される少なくとも一種の元素であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【請求項13】
前記少なくとも一種の元素が、Siであることを特徴とする請求項12に記載の有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−328224(P2006−328224A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153847(P2005−153847)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】