説明

有機へテロ接合点を含むスクアラインを含む有機感光性デバイスおよびその製造方法

有機感光性光電子デバイスは式Iのスクアライン化合物から形成される少なくとも一つのドナー−アクセプターヘテロ接合点を含み;式中、ArおよびArはそれぞれ独立して置換されていてもよい芳香族基から選択される。本明細書に記載される有機光電子デバイスは、少なくとも二つの異なるスクアライン化合物から形成されるドナー−アクセプターヘテロ接合点を含んでいてもよい。開示されているデバイスの製造方法も開示されており、当該方法は、前記スクアライン化合物を蒸着する少なくとも一つの昇華工程を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月15日に出願された、「有機ヘテロ接合点を含むスクアラインを含む有機感光性デバイスおよびその製造方法」と題する、米国仮特許出願第61/097,143号の優先権を主張するものであり、その全体の内容が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
共同研究契約
本発明は以下:ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア、ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァシティ オブ ミシガン、およびグローバル フォトニック エナジー コーポレーションの産学共同研究契約の代表として、および/または連携してなされたものである。この契約は本発明がなされた日およびそれ以前に有効であり、本発明は契約の範疇の活動の結果である。
【背景技術】
【0003】
背景
本開示は一般的にドナー物質としてスクアライン化合物を含む有機感光性光電子デバイスに関係している。そのようなデバイスの製造方法も開示されており、当該方法はスクアライン化合物を蒸着するため少なくとも一の昇華工程を含んでもよい。
【0004】
光電子デバイスは、物質の光学的および電子的性質に基づき、電子的に電磁放射線を生成もしくは検出する、または周囲の電磁放射線から電気を生成する。
【0005】
感光性電子デバイスは電磁放射線を電気に変換する。太陽電池は、光起電(PV)デバイスとも呼ばれ、感光性光電気デバイスの一種であり、特に電力を生み出すために使用される。太陽光以外の光源から電気エネルギーを発生しうるPVデバイスは、例えば、照明、熱または電気回路または計算機、ラジオ、コンピュータもしくは遠隔モニターもしくはコミュニケーション装置のようなデバイスを駆動するため電力消費するものを駆動するために使用されうる。これらの電力発生デバイスも、しばしば充電器または他のエネルギー逐電デバイスを含み、太陽もしくは他の光源からの直接的な照射を利用できないときに、または特に利用する必要のあるPVデバイスの出力のバランスをとるために作業を継続することができる。「負荷抵抗」との語は、本明細書に使用される場合、電力消費または蓄電回路、デバイス、装置もしくはシステムを意味する。
【0006】
他の感光性光電子デバイスは光伝導性電池である。この機構において、信号検出回路は前記デバイスの抵抗を観測し、変化を検出して光を吸収する。
【0007】
他の感光性電子デバイスは光検出器である。光検出器の操作において電流検知回路と接合して使用され、光検出器が電磁放出にさらされたときに発生する電流を測定する、および応用的にバイアス電圧を有していてもよい。通常本願に記載されている検出回路はバイアス電圧を光検出器に供給することができ、光検出器の電子応答を測定し電磁放出する。
【0008】
これらの3つのクラスの感光性光電子デバイスは以下に定義される整流の接合点が存在するか否かの特徴を有し、また前記デバイスがバイアスまたはバイアス電圧としても知られている外部印加電圧で操作されるか否かの特徴を有する。光伝導性電池は整流接合点を有してなく、普通バイアスを用いて操作される。PVデバイスは少なくも一つの整流接合点を有しておりデバイスなしで操作される。特に、太陽電池は回路、デバイスまたは装置に電力を供給する。光検出器または光伝導体は回路、デバイスまたは装置に電力を供給しないが、信号または電流を供給し、検出回路または検出回路からの情報の出力を制御する。
【0009】
伝統的に、感光性光電子デバイスは、例えば、結晶質、多結晶質、および非晶質のシリコン、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウムおよび他のものである、多くの無機半導体から構成される。本明細書において、「半導体」との語は、電荷キャリアが熱または電磁励起により誘導された時、電気を伝導することができる物質を示している。「光伝導」との語は、一般的に、電磁放射線エネルギーが吸収され、それにより電荷キャリアの励起エネルギーに変換され、当該キャリアは物質内で電荷を伝導させうる(すなわち、輸送しうる)工程に関連する。「光伝導体」および「光伝導体物質」との語は、電磁放射線を吸収し、電荷キャリアを発生するのに利用される、その性質により選択される半導体物質に関連する。
【0010】
PVデバイスは入射するソーラーパワーを有用な電力に変換させうるものであると効果的に特徴付けられてもよい。結晶性または非晶系シリコンを利用しているデバイスは商用製品を占めていて、23%以上の効率を達成しているものもある。しかしながら、効率的な結晶を用いたデバイス、特に、表面範囲の大きなものは、主に効率の劣った欠陥のない大きな結晶を製造する点に本質的な問題があるため、製造するのが困難であり、かつ高価である。一方、高効率の非晶系シリコンデバイスは未だ安定性の問題を抱えている。現在購入可能な非晶系シリコン電池は4〜8%の間で安定した効率をもつ。より最近の取り組みは有機太陽電池の使用に焦点を当てており、経済的な製造コストの面で許容されうる光起電力変化効率を達成することである。
【0011】
PVデバイスは標準の照明条件(すなわち、1000W/m、AM1.5のスペクトル光源である標準試験条件)下、最大の光電流×光起電力を発生するため、最大の発電をするように最適化する。標準照明条件下、そのような電池の前記電力変換効率は以下の3つのパラメータによる:アンペアにおいて、(1)ゼロバイアス下での電流、すなわち、短絡回路電流lSC、ボルトにおいて、(2)開路状態での光起電力、すなわち、開路電圧VOCならびに(3)曲線因子ff。
【0012】
PVデバイスは、抵抗に接続され、光にさらされたとき、光発生電流を生成する。無限抵抗の下、光を当てられたとき、PVデバイスは最大限の電圧、V開回路、またはVOC、を発生する。その電気接点を短くして光にさらされたとき、PVデバイスは最大限の電流、I短回路、またはISC、を発生する。実際に電力を発生するために使用されたとき、PVデバイスは有限の負荷抵抗に接続され、電力出力は電流と電圧、I×Vの積によって得られた。PVデバイスによって発生した当該最大全電力は本質的に積ISC×VOC、を超えることはできない。抵抗値は最大の電力抽出をするように最適化されたとき、電流および電圧は、それぞれImaxとVmaxの値を有する。
【0013】
PVデバイスの性能の指数は曲線因子、ff、であり、次のように定義されている:
【0014】
【数1】

【0015】
式中、ffはいつも1未満であり、ISCとVOCは実用的に同時に得られることはない。それにもかかわらず、ffが1に近づくにつれて、前記デバイスはより小さいシリーズまたは内部抵抗となり、ISCとVOCの積のより大きな割合を適当な条件下で負荷となる。式中Pincはデバイスの電力の発生であり、デバイスの電力効率、η、は、
【0016】
【数2】

【0017】
によって計算されうる。
【0018】
適当なエネルギーの電磁放射線が半導体有機材料(例えば有機分子結晶(OMC)材料、または高分子)上で発生したとき、光子は吸収されて励起した分子状態を生み出す。これは、S+hvΨSのように象徴的に示される。ここで、SとSは、それぞれ基底および励起分子状態を示す。このエネルギー吸収はHOMOエネルギー順位(B−結合)の束縛状態から電子をLUMOエネルギー順位(B結合)への移動、または同等に、正孔をLUMOエネルギー順位からHOMOエネルギー順位へ移動することに関連している。有機薄膜光伝導体において、生成した分子状態は一般的に励起子、すなわち疑似粒子として輸送される束縛状態における電子−正孔対であると考えられている。当該励起子は再結合(つまり、他の対からの正孔または電子と再結合することに対して、初期の電子および正孔のそれぞれ他のものとの再結合の過程を意味する)をする前に適当な寿命を有している。光電流を生み出すため、電子−正孔の対は分離され、特に二つの異なるものの間のドナー−アクセプターの接触面で有機薄膜に接触している。もし、電荷が分離しないと、それらは入射光よりもより低いエネルギーの光を放出することにより放射的に、または非放射的に、発熱することにより対再結合過程で再結合でき、またクエンチするとして知られている。つまり。これらの出力は感光性光電子デバイスにおいて望ましくない。
【0019】
電界または接触においての不均等性は励起子がドナー−アクセプター接合点で解離するよりもクエンチする原因となり、結果的に電流への正味の貢献はない。したがって、光生成励起子を接触させないようにするのが好ましい。これは励起子の接合点の近くへの拡散を限定することの効果を有し、関係した電界は、接合点近くの励起子の解離によって遊離した電荷キャリアを分離する機会を増加する。
【0020】
実質的な体積を占める内部で発生した電界を作り、通常の方法は適当に選択される導電性、特に分子量子エネルギー状態の分配を並置する。これらの二つの接合部分は光起電接合点と呼ばれる。伝統的な半導体理論において、光起電接合点を形成する材料は一般的にnまたはp型であることを意味する。ここで、n型は主なキャリアの型が電子であり、このことは比較的自由なエネルギー状態にある電子を多く有している材料であると見られている。p型は、主なキャリアが正孔である。そのような材料は比較的自由なエネルギー状態において多くの正孔を持っている。バックグラウンドのタイプの、すなわち、光生成されたものではない、主なキャリアの濃度は主に欠陥または不純物による意図的でないドープによる。その型および不純物の濃度は、最高被占分子軌道(HOMO)エネルギー準位と最低空分子軌道(LUMO)エネルギー準位の間のギャップ、いわゆるHOMO−LUMOギャップ内にフェルミエネルギーまたは準位を決定する。前記フェルミエネルギーは、占有確率が1/2に等価であるエネルギーとされる分子量子エネルギー状態の統計的な占有と見なされている。HOMOエネルギー準位に近いフェルミエネルギーは正孔が重要なキャリアであることを示す。したがって、フェルミエネルギーは伝統的な半導体の主に特徴付けている性質であり、原型的な光起電接合点は伝統的にp−n接触面であった。
【0021】
「整流」との語は、とりわけ、接合点が非対称の導電性の特徴を有していること、すなわち、接合点は好ましくは一つの方向に電荷輸送されるのを補助することを意味する。整流は通常、適当に選択された材料間のヘテロ接合点で発生する内蔵された電場に関係している。
【0022】
本明細書に使用される場合、および当業者に一般的に理解されるように、第1エネルギー準位が真空エネルギー準位に近い場合、第1「最高非占分子軌道」(HOMO)または「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第2HOMOまたはLUMOエネルギー準位「より大きい」または「より高い」。イオン化ポテンシャル(IP)が真空準位と比較して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位はより小さい絶対値(より負であるIP)を有しているIPに対応している。同様に、より高いLUMOエネルギー準位はより小さい絶対値(より負であるEA)を有している電子親和力(EA)に対応している。従来のエネルギー準位図(最上位に真空準位がある)において物質のLUMOエネルギー準位は同じ物質のHOMOエネルギー準位より高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位より、そのような図の最上位に近いところにある。
【0023】
有機物質との関係において、「ドナー」および「アクセプター」との語は二つの接してはいるが異なる有機物質の正のHOMOおよびLUMOエネルギー準位の相対的な位置を意味する。無機系におけるこれらの言語の使用と対照すると、無機n−およびp−型層をそれぞれ形成するために使用されうるドーパントの型を意味しうる。有機系において、仮に、他の物質と接している一つの物質のLUMOエネルギー準位が低ければ、その物質はアクセプターである。そうでなければ、その物質はドナーである。エネルギー的に好ましいが、外部バイアスが無い場合、ドナー−アクセプター接合点において電子はアクセプター物質に移動し、正孔はドナー物質に移動する。
【0024】
有機半導体において重要な性質はキャリア移動度である。移動度は、電荷キャリアが電場に応じて伝導性物質を通って移動する容易さを評価する。有機感光性デバイスにおいて、高い電子移動度の結果、電子をより優先的に伝導する物質を含む層は電子輸送層(または、ELT)と言われる。高い正孔移動度により正孔をより優先的に伝導する物質を含む層は正孔輸送層(または、HTL)と言われる。一実施形態において、アクセプター物質はETLであり、ドナー物質はHTLである。
【0025】
従来の無機半導体PV電池はp−n接合を採用し、内部場を構築する。Tang, Appl. Phys Lett.48,183(1986)により報告されているような初期の有機薄膜電池はヘテロ接合点類似体を含み、従来の無機PV電池に採用されている。しかしながら、p−n型接合点の構築に加えて、ヘテロ接合点のエネルギー準位の補正はまた、重要である。
【0026】
有機D−Aヘテロ接合点におけるエネルギー準位の補正は有機物質において光生成工程の基本的な性質のため有機PV電池の操作に重要であると考えられている。有機物質の光学的励起において、局所的なFrenkelまたは電荷移動励起子が生成される。電流検知または電流発生のため、束縛励起子はそれらの構成電子および正孔に分離される。そのような工程は固有の電場で誘起され、有機デバイス(F〜10V/cm)に通常見出される電場での確率は低い。有機物質においてドナー−アクセプター(D−A)接合部分で起こる励起子分離の確率は最も高い。そのような接合において、低いイオン化ポテンシャルを有するドナー物質は高い電子親和力を有するアクセプター物質を伴ったヘテロ接合点を形成する。ドナーおよびアクセプター物質のエネルギー準位の配列次第で、励起子の解離はそのような接合部分でエネルギー的に好ましくなり、アクセプター物質内における自由電子ポラロンおよびドナー物質内における自由正孔ポラロンに導入される。
【0027】
伝統的なシリコン基板デバイスと比べたとき、有機PV電池は多くの潜在的な利点を有している。有機PV電池は軽量であり、物質の利用において経済的であり、柔らかいプラスチック箔のような低価格の基板に蒸着することができる。しかしながら、有機PVデバイスは通常、相対的に低外部量子効率(電磁放射線の電気変換効率)を有しており、1%またはそれ以下である。これは、部分的に、本質的な光伝導性処理の二次の性質のためであると考えられている。つまり、キャリア発生は励起子生成、拡散およびイオン化または収集を必要とする。これらの工程それぞれに関連した効率ηがある。下付き文字は以下のように使用され:電力効率にPを、外部量子効率にEXTを、光子吸収励起子発生にAを、拡散にEDを、収集にCCを、および内部量子効率にINTを用いる。この表記を用いると:
【0028】
【数3】

【0029】
である。
【0030】
励起子の拡散距離(L)は、通常、光吸収長(〜500Δ)より小さく(L〜50Δ)、厚さの使用とそれによる抵抗、複数または高保持される接合点を伴う電池、または低光吸収効率を伴った薄い電池との間の補正を必要とする。
【0031】
通常、有機薄膜に光が吸収され励起子を形成するとき、一重項励起子が形成される。システム間の妨害のメカニズムにより、一重項励起子は三重項励起子に低下しうる。前記エネルギー損失がシステム間の妨害によるのであれば、三重項励起子は、一般的に、一重項励起子より、より長寿命を有し、したがって、拡散距離がより長いので、三重項励起子を発生する物質を使用するのが望ましい。
【0032】
感光性領域において、有機金属化合物の使用を通して、本発明のデバイスは効果的に三重項励起子を利用することができる。一重項−三重項を混合すれば、有機金属化合物を強固にし、前記吸収が一重項基底状態から三重項励起状態への励起を伴い、一重項励起状態から三重項励起状態への変化を伴うことに関する損失を相殺する。三重項励起子は、デバイス効率を犠牲にすることなく、より長距離拡散し前記ドナー−アクセプターへテロ接合点に到達できるので、一重項励起子に比べてより長寿命であり、拡散距離が大きい三重項励起子はより活発な光活性領域の使用を可能としうる。
【発明の概要】
【0033】
発明の概要
本明細書に記載されているものは、スクアライン化合物から形成された少なくとも一つの有機へテロ接合点を含む有機感光性電子デバイスおよびその形成方法である。具体的には、前記有機感光性光電子デバイスは式Iのスクアライン化合物を含む:
【0034】
【化1】

【0035】
式中、ArおよびArはそれぞれ置換されていてもよい芳香族基である。本明細書に使用される場合、「芳香族基」との語は、一般的に電子に安定性を与える共役2重結合を有する環部分を意味すると解釈されるべきである。芳香族化合物はM., Jr., Organic Chemistry, 1997 Norton: New Yorkに詳細に記載されている。「置換されていてもよい」との語は、前記一般式におけるコア構造が完全である限り、「置換されていてもよい」の部分における水素結合が、それぞれ異なる化学基(例えば、アルカン、ハライド、ヒドロキシ、アルコキシ、アミン、アルキルアミノ、ジアルキアルアミノ、など)で置換されていてもよいことを意味する。
【0036】
一実施形態において、式Iのスクアライン化合物は2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル;2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル;およびそれらの塩である。
【0037】
一実施形態において、前記有機感光性光電子は太陽電池または光検出器である。他の実施形態において、前記太陽電池または光検出器は有機ヘテロ接合点を含む。他の実施形態において有機ヘテロ接合点はドナー−アクセプターへテロ接合点であり、式Iのスクアライン化合物を含むドナー物質とアクセプター物質の接合点において形成される。
【0038】
前記有機感光性光電子デバイスは任意にC60を含んでいてもよい。例えば、C60はスクアライン化合物に接触するようにされてもよい。本明細書において、「C60」はバックミンスターフラーレンを示し、IUPAC名(C60−I)フラーレンで記載される。
【0039】
一実施形態において、上記式Iで記載されたスクアライン化合物の置換されていてもよい芳香族基(ArとAr)はそれぞれ独立して以下の式IIの基から選択される:
【0040】
【化2】

【0041】
式中、Xはそれぞれ独立してH、アルキル、アルコキシ、ハライド、およびヒドロキシから選択され;ならびにYはHまたは置換されていてもよいアミノ基から選択される。他の一実施形態において、上記式IIのX基はそれぞれヒドロキシである。本明細書において、「からそれぞれ独立して選択された」とは、それぞれの「X」が他のものと独立して変更されてもよいことを意味する。もちろん、それらは同じものであってもよい。他の一実施形態において、上記式IIにおいてY基はそれぞれ独立して式NRによって表される基から選択され、ここで、RおよびRはそれぞれ独立してHまたは置換されていてもよいアルキルまたはアリール基から選択される。他の一実施形態において、上記式NR中のRおよびRの少なくとも一つは任意にアルキル基で置換されている。
【0042】
本明細書において、アミノ基はそれらの酸付加塩のようないかなる塩を含むことも意味している。例えば、アミンとは無関係にアンモニウム塩を意味し、NR基のいかなるものも、酸付加塩のような類似物の塩などを含むもの考えられるべきである。
【0043】
一実施形態において、有機感光性光電子デバイスは式IIIのスクアライン化合物を含む:
【0044】
【化3】

【0045】
式中、Xはそれぞれ独立してH,アルキル、アルコキシ、ハライド、およびヒドロキシから選択され;ならびにRおよびRはそれぞれ独立して置換されていてもよいアルキルまたはアリール基から選択される。他の一実施形態において、上記式IIIの化合物の少なくとも一つのX基はヒドロキシである。前述したように、「から独立して選択される」とは、「X」がそれぞれ他と独立して変えられていてもよいことを意味する。もちろん、それらは同じであってもよい。
【0046】
一実施形態において、有機感光性光電子デバイスは上記式Iのスクアライン化合物を含み、式中、ArおよびArはそれぞれ独立して以下の式Vで表される基から選択される:
【0047】
【化4】

【0048】
式中、環AおよびBは置換されていてもよいC4−C8の環であり、6−14の炭素原子を含む飽和または不飽和の二環を形成するように縮合されている。例えば、一の実施例において、二つのベンゼン環(それぞれC6)が式Vのナフタレン分子(C10)を形成するように縮合していてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、式Iのスクアライン化合物は2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル;2,4−ジ−3−グアイアズレニル−1,3−ジヒドロキシシクロブテンジイリウムジヒドロキシド;2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル,およびそれらの塩から選択される。
【0050】
一実施形態において、式Iの化合物における基ArおよびArの一または両方が、独立して式VIで表される基である:
【0051】
【化5】

【0052】
式中、nは0、1、2、3、4、5、および6から選択され;およびZは結合基をあらわす。本明細書において、「結合基」との語は、式VIで表される基において4位のアミノ基の窒素原子とそのメタ位に連結している化学基を意味する。例えば、結合基はアルキル基、アルケニル基、アミノ基、芳香族基、エーテル基、などである。
【0053】
当然、式Iのスクアライン化合物は対称であってもよく、そうでなくてもよい。本明細書において、「対称」との語はC対称群より高い次数の点群対称性を有する化合物を含む。
【0054】
一実施形態において、有機感光性光電子デバイスを形成する方法であって、基板上に式Iのスクアライン化合物を蒸着することで有機へテロ接合点を形成することを含む。
【0055】
【化6】

【0056】
式中、ArおよびArはそれぞれ置換されていてもよい芳香族基である。他の一実施形態において、前記基板は少なくとも一つの電極または十分透明な集電体を含む電荷輸送層を含む。そのような透明集電体の具体例は限定されないが、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、および亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)のような透明導電酸化物を含む。
【0057】
一実施形態において、前記スクアライン化合物は昇華して蒸着される。本明細書において、昇華は真空蒸着を含むが、限定されない。したがって、昇華は物質に蒸着するため適当な温度および圧力で行われてもよい。
【0058】
昇華によってスクアライン化合物を蒸着するのに加えて、スクアライン化合物の昇華は精製の点においても確実な利益を与える。一回以上昇華されたスクアラインは非晶系膜を与え、昇華されていない膜よりよい性質を与える。いかなる理論によっても制約されるものではないが、数回の昇華工程は精製工程として働き、例えば、他に存在する捕捉されている不純物を除去し、得られた膜は非晶系または結晶となる。
【0059】
一実施形態において、前記式Iのスクアライン化合物は0.1〜1.5Å/secの速度、例えば0.2〜1.0Å/sec、特に0.2〜0.6Å/secで蒸着される。
【0060】
一実施形態において、前記蒸着された式Iのスクアライン化合物の厚さは100Å以下であり、例えば65Å以下、さらには50Å以下である。本明細書において、「厚さ」とは層の厚さ(例えば、スクアライン化合物の層の厚さ)を意味し、層を形成する物質の分子特性(例えば、結合距離)とは異なる。
【0061】
この物質はデバイス構造においてよいドナーであるとされる。スクアライン物質は、限定されないが、構造上の配列において平面、バルクへテロ接合部、混成した平面の混合物、ナノ結晶バルクへテロ接合部などから選択される。いかなるデバイス構造においても良いドナーとしてC60が使用されている。
【0062】
他の一実施形態において、本明細書に記載されている前記スクアラインは他のアクセプターにとってもよいドナーでありうる。さらに、仮にエネルギーが正確に選択され電子を輸送する場合、開示されているスクアラインは、以前に述べられているようなデバイス構造においても、ドナーを与えるアクセプターでもありうる。
【0063】
本明細書の開示によれば、ドナー−アクセプターへテロ接合部は、本明細書に記載されている少なくとも二つの異なるスクアライン化合物を、例えば二つの異なるスクアライン化合物の混合物として含んでもよい。よって、二つ以上のスクアラインの混合物を含むデバイスを製造する方法も記載されている。
【0064】
一実施形態において、蒸着されたスクアライン化合物は非連続の層を形成する。本明細書において、非連続層との語は、層のいたるところにおいても均一な厚さを有していない層(例えば、スクアライン化合物の層)を意味する。一実施形態において、本発明の非連続層は蒸着されている層(または基板)のすべての部分を完全には覆っていない層であり、非連続の層を蒸着した後に露出している層の幾つかの部分になる。
【0065】
他の一実施形態において、蒸着されたスクアライン化合物は単離されたナノスケールの領域を形成する。本明細書において、「単離されたナノスケールの領域」とは、均一の薄層と対照的に使用されており、1−50nmの領域として存在し、非連続の薄膜を形成する蒸着されたスクアライン化合物の部分を意味する。
【0066】
一実施形態において、C60は有機感光性光電子デバイスにおけるスクアライン化合物と接触するように蒸着される。他の一実施形態において、前記スクアライン層は、C60が基板と接しているようにきわめて薄い。
【0067】
一実施形態において、前記C60化合物は真空蒸着、蒸着、または昇華によって蒸着される。
【0068】
他の一実施形態において、前記C60化合物は溶液処理沈着により蒸着される。
【0069】
一実施形態において、前記C60化合物は約2〜約6Å/sの範囲内、例えば4Å/sの速度で蒸着される。
【0070】
一実施形態において、有機感光性光電子デバイスを形成する方法は前記スクアライン化合物を蒸着する前に前記基板にCuPcを蒸着することを含む。他の一実施形態において、有機感光性光電子デバイスを形成する方法は性能を高めるためにスクアライン化合物を蒸着する前に基板上に有機化合物(例えば、NPD)の層を蒸着することを含む。いかなる理論によっても限定されることなく、この有機化合物は前記スクアラインとITO陽極間のより接触したものを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、陽極、陽極平滑化層、ドナー層、アクセプター層、阻止層、および陰極を含む有機PVデバイスの図である。
【図2】図2は、実施例のSQデバイスにおける電荷キャリア分離、SQ層における限界励起子(白)およびC60層における限界励起子(黒)の提案モデルの図である。
【図3】図3は、ドナー層として(a)CuPcまたは(b)SQを備えたデバイスの模式的なエネルギー準位図である。当該HOMOエネルギーはUPSに基づく。LUMOエネルギーは逆光電子分光法(IPES)測定に基づくものであり、LUMOおよびHOMOエネルギーが電気化学的に決定されるSQを除いたものである。
【図4】図4は、波長の係数として、石英上でのSQ膜の吸光係数および塩化メチレン溶液中におけるSQを示すグラフである。
【図5】図5は、100Åのスクアライン膜の原子間力顕微鏡(AFM)イメージである。
【図6】図6は、1SUNにおけるAM 1.5Gの模擬太陽光(実線)の下、および暗所(点線)におけるITO/CuPc(400Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(黒)、ITO/SQ(74Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(三角形)およびITO/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(円)のJ−V特性を示すグラフである。
【図7】図7は、1SUNにおけるAM 1.5Gの模擬太陽光(実線)の下、および暗所(点線)におけるITO/CuPc(400Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(黒)、ITO/SQ(74Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(三角形)およびITO/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(円)の試験1時間後のJ−V特性を示すグラフである。
【図8】図8は、1SUNにおけるAM 1.5Gの模擬太陽光(実線)の下、および暗所(点線)におけるITO/CuPc(400Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)[SQ速度<1Å/s、暗い部分]、ITO/SQ(74Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)[SQ速度〜3Å/s、正方形]のJ−V特性を示すグラフである。
【図9】図9は、二つのSQデバイス(それぞれ異なるC60蒸着速度:a)C60蒸着速度4Å/s(黒);b)C60蒸着速度2Å/s(正方形))の外部量子効率曲線を比較するグラフである。
【図10】図10は、1SUNにおけるAM 1.5Gの模擬太陽光(実線)の下、および暗所(点線)におけるITO/SQ(xÅ)/C60(400Å)/BCP(100Å)/A1の構造を有する様々なSQの厚さを伴ったSQデバイスのJ−V特性曲線を示すグラフである:1)x=50(黒);2)x=65(正方形);3)x=75(三角形)および4)x=100(円)。
【図11】図11は、以下の構造を有するSQデバイスの外部量子効率曲線のグラフである:ITO/SQ(65Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/A1(1000Å);およびITO/SQ(65Å)/CuPC60(400Å)/BCP(100Å)/A1(1000Å)。
【図12】図12は、銅フタロシアニン(CuPc)の化学構造の図である。
【図13】図13は、ITO/CuPc(xÅ)/SQ(65Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å):a)x=50(黒);b)x=100(正方形);c)x=200(円)、ITO/SQ(65Å)/CuPc(200Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(三角形)の外部量子効率曲線の図である。
【図14】図14は、1SUNにおけるAM 1.5Gの模擬太陽光(実線)の下、および暗所(点線)におけるITO/CuPc(50Å)/SQ(xÅ)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al:1)x=65(黒);2)x=130(正方形);3)x=180(三角形)および4)x=0(円)の構造を有するSQデバイスのJ−V特性曲線を示すグラフである。
【図15】図15は、NPD、SQ、C60およびBCPの模式的なエネルギー準位図である。HOMOエネルギーはUPSに基づき、およびLUMOエネルギーはIPES測定に基づき、LUMOおよびHOMOが電気化学で決定されたSQおよびNPDを除く。
【図16】図16は、遊離塩基型であるN,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(NPD)の化学構造の図である。
【図17】図17は、(a)ITO/NPD(50Å)/SQ(65Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(黒);(b)ITO/NPD(50Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(正方形);(c)ITO/CuPc(50Å)SQ(65Å)//C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)(円)の外部量子効率曲線のグラフである。
【図18】図18は、本願で開示されているSQ含有デバイスの可能な構造の模式図である。
【図19】図19は、本願で開示されているように製造されたスピンキャストSQデバイスの電位の関数としての電流密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
詳細な説明
本発明は有機感光性光電子デバイスに関するものである。本発明の具体的な有機デバイスは、例えば、入射電磁波放出(例えばPVデバイス)から得られる有用な電流を発生するために使用され、または入射電磁波放出の検知に使用されうる。本発明の具体例は陽極、陰極、および前記陽極および陰極の間に光活性な領域を含む。前記光活性な領域は感光性デバイスの部分であり、電磁放射線を吸収し電流を発生するのに関わりがないとされている励起子を発生する。有機感光性光電子デバイスは、少なくとも一つの透明電極を含み、入射放射線が前記デバイスに吸収されるのを可能にする。様々なPVデバイス物質および構成は米国特許第6,657,378号、6,580,027号、および6,352,777号に記載されており、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
図1は有機感光性光電子デバイス100を示す。当該図は必ずしも大きさをそのまま描いたものではない。デバイス100は基板110、陽極115、陽極平滑化(スムージング)層120、ドナー層125、アクセプター層130、阻止(ブロッキング)層135、および陰極140を含みうる。陰極140は第1導電層および第2導電層を有する化合物の陰極である。デバイス100は記載された層を順に蒸着することにより製造されうる。電荷分離はドナー層125およびアクセプター層130の間の有機へテロ接合部で主に起こりうる。当該へテロ接合部における内蔵電位は、前記へテロ接合部を形成するため含んでいる二つの物質間のHOMO−LUMOエネルギー準位差で決定される。当該HOMO−LUMOギャップのオフセットは接合部の励起子拡散距離内で生成する励起子のため電荷分離を促進するドナー/アクセプター接合部での電場を作り出す。
【0074】
図1に図示された特定の層の順序は例示的なものであり、これに限定されない。例えば、いくつかの層(例えば、阻止層のようなもの)は省略されうる。他の層(例えば、反射層または追加のアクセプターおよびドナー層)は加えられうる。層の順序は変更されうる。特に記載されていない順序も使用されうる。
【0075】
前記基板はいかなる適した基板であってもよく、所望の構造的な性質を与えうる。前記基板は柔軟であるまたは強固でもあり、平面または非平面ででもありうる。前記基板は透明、半透明または不透明でありうる。プラスチックおよびガラスは強固な基板物質の例であり、本明細書で使用されうる。プラスチックおよび金属箔はフレキシブル基板物質の例であり、本明細書に開示されているものに使用されうる。前記基板の物質および厚さは所望の構造および光学特性を得るために選択されうる。
【0076】
米国特許第6,352,777号は、参照により本明細書に組み込まれているが、電極または接点の例を与えまたは感光性光電子デバイスに使用されうる。本明細書において、「電極」および「接点」との語は光発生電流を外部回路に流す、または前記デバイスにバイアス電圧を供給する媒体となる層を意味する。つまり、電極または接点は有機感光性光電子デバイスの活性な部分と金属線、リード線、配線または他の意味で電荷キャリアを外部回路にまたは外部回路から輸送する手段との間の接合点を与える。
【0077】
感光性光電子デバイスにおいて、外部デバイスから最大量の周囲電磁放射線を出すことが望まれ、内部領域に光伝導的に活性な内部領域が認められることが望まれている、つまり、電磁放射線は光伝導層に届き、光伝導吸収により電気に変えられうる。このことはしばしば少なくとも一つの電気接点がわずかに吸収し、入射電磁放射線をわずかに反射することを示唆している。つまり、そのような接点は実質的に透明である。反対電極は反射物質でもありえ、そのため吸収されることなくセルを透過した光は、当該セルを透過して反射される。
【0078】
本明細書において、物質の層または異なる物質のいくつかの連続層は「透明」であり、当該層または連続層は関連する波長の周囲の電磁放射線の少なくとも50%を前記層または連続層を通じて送る。同様に、少しは通すが、関連する波長が周囲の電磁放射線の少なくとも50%以下である層は「半透明」である。
【0079】
本明細書において、「最上部」とは前記基板からもっとも離れた部分を意味し、一方「底」とは前記基板にもっとも近い部分を意味する。例えば、二つの電極を伴うデバイスにおいて、底の電極は基板に最も近い電極であり、一般的に最初に形成される電極である。当該底の電極は二つの表面、すなわち基板に最も近い底面、および基板からより離れた上面を有している。第一の層が第二の層「の上に配置されている」と記載されている場合、第一の層は基板から離れた所に配置されている。第一の層が第二の層に物理的に接触していると特定されていない場合は、第一および第二の層との間に他の層が存在しうる。例えば、間に様々な有機層がある場合であっても、陰極は陽極「の上に配置されている」と記載される。
【0080】
一実施形態において、電極は金属または「金属置換体」からなる。ここで、「金属」との語は、本質的に純粋な金属(例えば、Mg)および二つ以上の本質的に純粋な金属からなる物質である金属合金(例えば、MgとAg(Mg:Agと記す))を意味して使用されている。ここで、「金属置換体」との語は普通の定義における金属ではなく、ある適当な利用をする際に望まれる金属のような性質を有する物質を意味する。電極および電荷輸送層に共通して使用されている金属置換体はバンドギャップの広いドープされた半導体、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)および亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)のような透明の導電性の酸化物を含む。
【0081】
ITOは約3.2eVの光学バンドギャップを有する高度にドープされた縮退n+半導体であり、約390nmよりも大きい波長に透過するようにする。他の適当な金属置換は透明な導電性ポリマーポリアナリン(PANI)およびその化学的関連のあるものである。金属置換は広範な非金属からさらに選択されうる(ここで、「非金属」との語は、化学的に結合していない遊離金属である広範囲の物質を意味する)。金属が、独特のまたは合金のように一またはそれ以上の他の金属とも化学的に結合していない形態にあるとき、前記金属は金属形態または「遊離金属」として存在していると言われる。このように、本発明の金属置換電極は「金属フリー」と言われる。ここで、「金属フリー」との語は化学的に結合していない形態にある金属を含まない物質を明示的に包含している。
【0082】
遊離金属は、通常、金属格子内の導電性のバンドを自由に移動する大量の価電子から得られる金属結合の形態を有する。一方、金属置換は、様々な塩基上で「非金属性」である金属成分を含みうる。それらは純粋な遊離金属でも遊離金属の合金でもない。金属が金属形態にあるとき、その電子伝導バンドは、他の金属特性の中でも、光学的放射の高反射性を与えるのと同様、高い電気伝導性を与える。
【0083】
本発明の実施形態は、一またはそれ以上の感光性光電子デバイスの透明電極として、例えば、Parthasarathyらの米国特許第6,420,031号(“Parthasarathy‘031”)に開示される、高い透明性、非金属性、低抵抗の陰極を含み、または、例えば、Forrestらの米国特許第5,703,436号(“Forrest‘436”)に開示される、高効率、低抵抗の金属性または非金属性化合物の陰極を含み、それらの内容は、全て参照により本明細書に組み込まれる。陰極は、それぞれ、銅フタロシアニン(CuPc)のような有機物質(高い透明性、非金属性、低抵抗陰極を形成するため)または、薄いMg:Ag層(高効率、低抵抗金属性/非金属性化合物陰極を形成するため)上にITO層をスパッタリング蒸着を含む製造工程において製造されうる。Parthasarathy‘031は、その上にITO層が蒸着された有機層に代えて、その上に有機層が蒸着されたITO層は効果的な陰極として機能しない、ということを開示している。PVsにとって、当該層が反対向きに蒸着されない限り、ITOは基板上に蒸着される。
【0084】
CuPcに加えて、(例えば、NPDのような)結晶性または非晶性の膜の形成を容易にする有機化合物は、陽極(例えば、ITO)と前記SQ間の正孔輸送物質として利用される。当該有機膜製造用化合物は光子の吸収に寄与せず、SQとの適当なエネルギー論を有する。C60と合わせて使用したとき、有機膜製造用化合物の層の存在は、C60がITOと接しておらず、そのため、C60特有の光電流の損失を防ぐことを保証する。さらに、有機膜製造用化合物は、その既知のよい正孔移動度により、電荷を細くしない。本発明の一実施形態において、以下のデバイスの構造が製造される:ITO/NPD(xÅ)/SQ(65Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)。当該NPD層の厚さは前記SQデバイス性能を変更するため変更されうる。例えば、前記NPD層は200Å以下、100Å以下、または75Å以下でありうる。一実施形態において、NPD層は50Åである。
【0085】
NPDの化学構造は図16に示されている。本出願の文脈において、NPDは遊離塩基形態のみに限定されるものではなく、したがって、例えば、モノおよび/またはジ酸付加生成物を含むNPDのいかなる塩をも含みうる。
【0086】
本明細書において、「陰極」との語は以下のように使用される。通常の放射状態で非積層PVデバイスまたは積層PVデバイスの一単位において、負荷抵抗および外部印加電圧のないもの(例えば、PVデバイス)と接続される場合、電子は感光性物質から陰極に移動する。同様に、本明細書において、「陽極」との語は、照射しているPVデバイスにおいて、正孔が感光性物質から陽極に移動すると言うように使用され、電子の移動と反対の意味で等価である。本明細書において使用される場合、陽極および陰極は電極または電荷輸送層であることを示す。
【0087】
有機感光性デバイスは、光が吸収されて励起状態、または実質的に電子と正孔に解離する「励起子」を形成する、少なくとも一つの光活性な領域を含む。当該励起子の解離は、通常、アクセプター層とドナー層を並列して形成されるヘテロ接合点において起こる。例えば、図1のデバイスにおいて、「光活性領域」はドナー層125およびアクセプター層130を含みうる。
【0088】
前記アクセプター物質は、例えば、ペリレン、ナフタレン、フラーレン、またはナノチューブを含む。アクセプター物質の具体例は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール(PTCBI)である。また、前記アクセプター層は米国特許第6,580,027号に記載されているフラーレン物質を含みうる(本明細書に、その全体が参照により組み込まれる)。有機ドナー型物質の層は、当該アクセプター層に隣接している。前記アクセプター層と前記ドナー層の境界は、内部に発生する電場を作り出すヘテロ接合点を形成する。前記ドナー層の物質はフタロシアニンもしくはポルフフィリン、もしくはそれらの誘導体または銅フタロシアニン(CuPc)のような、それらの遷移金属錯体でありうる。他の適当なアクセプターおよびドナー物質も使用されうる。本明細書に記載されるように、本発明に特に重要であるドナー物質のひとつは以下の式Iのスクアライン化合物である:
【0089】
【化7】

【0090】
式中、ArおよびArはそれぞれ独立して置換されていてもよい芳香族基から選択される。
【0091】
そのような化合物は単独でまたは他のドナー物質に加えて使用されうる。式Iの化合物の全ての参考例は、例えば、式Iの化合物を含む前記デバイスおよび方法はこれらの化合物の塩または誘導体のいかなるものをも含まれる。例えば、当業者であれば、示されている電荷分離の型よりもケトンまたはアルコール型で存在するということを理解するだろう。
【0092】
本発明の一実施形態において、前記積層された有機層は、米国特許第6,097,147号、Peumans et al, Applied Physics Letters 2000, 76, 2650−52,および共に係属出願番号09/449,801(1999年11月26日出願)と一またはそれ以上の励起子ブロッキング層(EBL)を含む(両方とも本明細書に参照により組み込まれる)。より高い内部および外部量子効率はEBLの含有により達成され、解離表面近傍に光生成励起子を制限し、光活性有機/電極接合部で寄生励起子クエンチを防止する。励起子が拡散しうるより大きい体積を限定するのに加えて、EBLは前記電極の配置の間に誘導される基板への拡散障壁として働く。ある環境において、EBLはピン正孔を満たし、または、一方で有機PVデバイスを機能しないようにする欠陥を小さくのに十分な厚さに作られる。したがって、電極が前記有機物質上に蒸着されたとき、EBLは生み出される衝撃からもろい有機層を保護するのを助ける。EBLはまた光スペーサとして機能し、前記電池の活性領域における光場のピークを収束するようにしうる。
【0093】
前記EBLは、そこからの励起子が遮断されている隣接する有機半導体のLUMO−HOMOエネルギーギャップよりも実質的に大きいLUMO−HOMOエネルギーギャップを有していることから励起子ブロッキング特性を得ていると考えられる。このように、限定された励起子はエネルギー的な考慮からEBL内にあることが妨げられている。励起子を遮断するのは前記EBLにとって望ましいが、全ての電荷を遮断するのは前記EBLにとって望ましくない。しかしながら、前記隣接するエネルギー準位の性質のため、EBLは電荷担体の一つのサインを遮断しうる。設計により、EBLは二つの他の層(通常、有機感光性半導体層と電極または電荷輸送層もしくは電荷再結合層)間に存在する。この隣接する電極または電荷輸送層は陰極または陽極のどちらかの状況にある。したがって、装置の中の所定の位置にある前記EBL用の物質は、前記所望の担体のサインが電極または電荷輸送層へまたは電極または電荷輸送層からの移動を妨げられないように選択される。適当なエネルギー準位配列は電荷移動の障壁が存在しないことを保証し、直列抵抗の増加を妨げる。例えば、陰極側のEBLとして用いられる物質は隣接ETL物質のLUMOエネルギー準位にかなり一致するLUMOエネルギー準位を有しているのが望ましく、いかなる不望の電極も最小化される。
【0094】
物質の励起子遮断の性質はそのHOMO−LUMOエネルギーギャップの固有特性ではない。与えられた物質が励起子ブロッカーとして作用するかどうかは隣接する有機感光性物質の相対的なHOMOおよびLUMOのエネルギー準位次第である。したがって、用いられるデバイスコンテキストに関係なく励起子ブロッカーとして隔離して化合物の分類を区別するのは可能ではない。しかしながら、本明細書における記載により当業者は、与えられた物質が選択された物質の組み合わせによって使用され、有機PVデバイスを構成するとき励起子遮断層として機能するかどうかを区別することができるだろう。
【0095】
本発明の一実施形態において、EBLは前記アクセプター層と陰極の間に位置する。当該EBL用の物質は2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソキュプロインまたはBCPとも呼ばれ、約3.5eVのLUMO−HOMOエネルギー準位を有すると考えられている)、またはビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリノエート)−アルミミウム(III)フェノラート(AlqOPH)を含む。BCPはアクセプター層から陰極に電子を用意に移動する効果的な励起子ブロッカーである。
【0096】
前記EBL層は、限定されないが、3,4,9,10−ペリレントラカルボン酸二無水物(PTCDA)、3,4,9,10−ペリレントラカルボン酸ジイミド(PTCDI)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、およびそれらの誘導体を含む適当なドーパントをドープされうる。本デバイスにおいて蒸着される前記BCPは非晶系である。一見したところ当該非晶系BCP励起子遮断層は膜再結晶を示し、特に高い光度下で速い。その結果の多結晶物質へのモルフォロジー変化は、短い、穴のあるまたは電極物質の進入のような可能な欠陥を有する低品質の膜となる。
【0097】
したがって、BCPのようなEBL物質のドープは、適当な、相対的に大きいおよび安定な分子を伴った効果がEBL構造を安定化し、モルフォロジー変化を悪化する性能を妨げうることを示す。前記EBLのLUMOエネルギー準位に近いLUMOエネルギー準位を有する物質を伴った与えられたデバイスにおいて移動する電子であるEBLのドープは、電子トラップが空間変化集積を作り出し、性能を低下しうるものとして形成されないよう予防することがさらに評価される。さらに、相対的に小さいドープ密度は隔離されたドーパント面で励起子生成を最小化する。そのような励起子が周囲のEBL物質によって拡散される効果的に妨げられるので、そのような吸収はデバイス光変換効率を減少する。
【0098】
代替の実施例は透明な電荷輸送層または電荷再結合層もまた含みうる。
【0099】
本明細書に記載されているように、電荷輸送層は必須ではないが、しばしば電荷輸送層が無機物(しばしば金属)であることによりアクセプターおよびドナー層から区別され、それらは光伝導性の活性でないように変化されうる。本明細書において、「電荷輸送層」との語は、電荷輸送層は、隣接小区分に光電子デバイスの小区分の1つから電荷担体を運搬するのみにおいて電極と異なっているが同様の層を意味する。本明細書において、「電荷再結合層」との語は、電荷再結合層が隣接電荷担体との間で電子と正孔再結合を可能とすることにおいて電極と同様であり異なっていてもよいが、一またはそれ以上の活性層の近くで内部光場強度をも強化しうる層であることを意味する。電荷再結合層は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,657,378号に記載される半透明な金属ナノクラスター、ナノ粒子またはナノロッドから構成されうる。
【0100】
本発明の他の一実施形態において、陽極平滑化層は前記陽極とドナー層との間に位置される。この層に用いる一つの物質は3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を含む。前記陽極(ITO)と前記ドナー層(CuPc)との間のPEDOT:PSS層の導入は大きく改善された製造収率につながる。いかなる理論によっても限定されないが、前記改善された製造収率はスピン塗布されたPEDOT:PSS膜の性能の結果であり、ITOを平面化し、そうしなければ起伏のある表面が薄い分子層になる。
【0101】
本発明における更なる実施形態において、一またはそれ以上の層は次の層を蒸着する前にプラズマ処理される。当該層は、例えば、軽度のアルゴンまたは酸素プラズマで処理される。この処理は直流抵抗を減少するのに有効である。PEDOT:PSS層は、次の層を蒸着する前に軽くプラズマ処理されるのに特に効果がある。
【0102】
図1に示されるシンプルな層構造は、実施例の方法に限定されないが、本発明の実施形態は様々な他の構造に関連して使用されうる。記載されている具体的な物質および構造は、実質的に典型的なものであり、他の物質および構造が使用されうる。機能的な有機感光性光電子デバイスは異なる方法で記載されている様々な層または全体において省略されうる層をデザイン、性能および原価要素に基づいて結びつけることで達することができる。特に記載されていない他の層も含まれる。特に記載されていない物質も使用されうる。本明細書における多くの実施例が一つの物質を含む様々な層を記載しているが、ホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的な混合物のような物質の組み合わせを使用することができると理解できる。また、前記層は様々な補助層を有しうる。本明細書における様々な層に付与されている名前は厳格に限定するものでもない。光活性領域の部分、すなわち、主に光電流に貢献する一般的な光子を吸収しない有機層は「光活性層でない」といわれている。光活性でない層の例は、EBLおよび陽極平滑化層を含む。他の種類の光活性でない層も使用されうる。
【0103】
感光デバイスの光活性層において使用する有機物質の例は、限定されないが、シクロメタル化有機金属化合物を含む。「有機金属」との語は、本明細書において、一般的に当業者に理解されるものであり、例えば、Gary L. MiesslerおよびDonald A. Tarr, Prentice Hallの「Inorganic Chemistry」(第2版)(1998)に記載されるようなものである。このように、有機金属との語は炭素−金属結合を解して金属に結合した有機基を有する化合物を意味する。この種の化合物は、正確に言えば、アミン、ハロゲン化物、偽ハロゲン化物(CNなど)、などのようなヘテロ原子からドナー結合のみをする基質である、共有化合物を含まない。
【0104】
実際、有機金属化合物は、有機種への一またはそれ以上の炭素−金属結合に加えて、ヘテロ原子から一またはそれ以上のドナー結合を一般的に含む。有機種への当該炭素−金属結合は、フェニル、アルキル、アルケニル、などのような有機基の金属と炭素原子との間の直接の結合を意味するが、CNまたはCOの炭素のような「無機炭素」への金属結合を意味しない。シクロメタル化との語は、二座の有機金属配位子を含み、金属と結合している上に、環構造が一の環員として金属を含んで形成される化合物を意味する。
【0105】
有機層は真空蒸着、溶液処理、有機気相堆積、インクジェット印刷および当該分野でよく知られた他の方法を使用して製造されうる。本明細書に使用されるように、溶液処理はスピン塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、ドクターブレーディング、および当該分野において知られた他の技術を含む。
【0106】
本発明の実施形態の有機感光性光電子デバイスはデバイスまたは太陽電池、光検出器もしくは光伝導体として機能する。本発明の有機感光性光電子デバイスはPVデバイスとして機能し、前記物質は光伝導性有機層において使用され、それらの厚さは、例えば、前記デバイスの外部量子効率を最適化するために選択される。本発明の当該有機感光性光電子デバイスは光検出器または光伝導体として機能し、光伝導性有機層において使用される物質とそれらの厚さは、例えば、前記デバイスの感度を最大化し、所望のスペクトル領域になるように選択される。
【0107】
層の厚さを選択して使用する様々なガイドラインを考えることにより当該結果を達成することができる。ほとんどの励起子の解離は表面で起こると考えられているので、励起子の拡散距離(L)はより大きくなり、層の厚さ(L)に相当する。LがLより小さい場合、多くの励起子が解離する前に再結合している。全体の光伝導性層の厚さは電磁放射線吸収長(1/α(ここで、αは吸収係数))とほぼ同程度であり、前記PVデバイスにおける放射線入射のほとんど全ては吸収され、励起子を生成する。さらに、前記光伝導性の層の厚さを可能な限り薄くし、有機半導体の大きなバルク抵抗率による過度の直流抵抗を回避すべきである。
【0108】
したがって、これらの競合するガイドラインは本質的にトレードオフを必要とし、感光性光電子電池の光伝導性有機層の厚さを選択して作られる。一方、このように、吸収長に相当するまたはより大きい厚さは、入射放射線を最大量吸収するため、(単電池デバイス)に望ましい。一方、前記光伝導性層の厚さが大きくなるにつれて、二つの望ましくない効果が大きくなる。一つは、有機半導体の高い直流抵抗のせいで、大きくなった有機層の厚さがデバイスの抵抗値を増加し、効率を低下させることである。もう一つの望ましくない効果は前記光伝導性層の厚さを増加することにより、励起子が電荷−分離接合点で有効な場所から離れて生成し、その結果、対再結合の可能性が大きくなり、同様に効果を低下する。したがって、デバイスの形態は、デバイス全体にわたって外部量子効率を高めるため、これらの競合する効果間の均衡をとることが望ましい。
【0109】
本発明の有機感光性光電子デバイスは光検出器として機能しうる。当該実施形態において、デバイスは多層有機デバイスであり、例えば、2003年11月26日に出願された米国特許第10/723,953号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この場合において、外部電場は分離電荷の抽出を容易にするのに一般的に利用されうる。
【0110】
濃縮機またはトラップ構造を用いて、有機感光性光電子デバイス(励起子が薄い吸収領域へ多く通り抜ける)の効率を増加することもできる。本明細書に、その全体において参照により組み込まれている米国特許第6,333,458号および第6,440,769号は、この問題は、構造的なデザインを使用することにより対処し、高い吸収のため、および収集効率を高める光濃縮機を共に使用するために光学的形状を調製することで感光性光電子デバイスの光変換効率を高めている。そのような感光デバイス用の形状は、反射性の空洞または導波路構造内において入射放射線をトラップすることにより、そして、それにより、光応答性物質を経て多重反射することにより光を再利用して前記物質を通過する光を実質的に増加する。したがって、米国特許第6,333,458号および第6,440,769号に開示されている形状は、体抵抗における実質的な増加することなく前記デバイスの外部量子効率を高める。最初の反射層;透明な絶縁層(全ての次元において入射光の光コヒーレンス長さより長く、光の微小空洞干渉効果を防止する);透明な絶縁層に隣接する透明な第一電極層;および反射性でもある第二電極はそのようなデバイスの形状に含まれている。
【0111】
一実施形態において、一またはそれ以上の塗膜がデバイスの望ましい範囲に光エネルギーを集めるために使用されうる。特にそのような塗膜に関連している開示が本明細書に参照により組み込まれている、例えば、米国特許第7,196,835号;米国特許出願公開第10/915,410号参照。
【0112】
前述の開示により製造されている様々なデバイスが製造され、試験されている。特に、本発明と同様SQ層の厚さおよび/または正孔輸送層の厚さの変化はAM 1.5Gの模擬太陽光(正確ではない)の下で測定された。以下の表1および2にこれらの試験の結果を示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
示されるように、本発明者らは、スクアライン物質が有機蒸着技術によって製造された電圧デバイスに使用された際に有用であることを見出した。本発明者はまた溶液化学を介したスクアライン基板のPV電池の代替製造方法を発見した。スクアラインがほとんどの塩素化溶媒に溶解しうるよい色素であるという事実を利用することにより、本発明者は蒸着技術により製造されたデバイスのような相対的な性能特性を有するスクアライン基板のPV電池の製造工程において溶液化学を用いている。溶液化学を使用して本発明のデバイスを製造するひとつの利点は、蒸着技術に通常用いられるものとして、昇華による蒸着が存在しないので、より多くのスクアラインを使用することができることである。
【0116】
本明細書に記載されているデバイスおよび方法の他の実施形態は、明細書および実務の判断から当業者に明らかであろう。本明細書および実施例は、単なる例示であり、請求の範囲に記載されているデバイスおよび方法の範囲まで含まれている。
【0117】
実施例:溶液処理されたスクアライン/C60二重層太陽電池
2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(SQ)の分子がこの実施例で利用されている。デバイス構造はITO/スピン塗布SQ(80Å)/C60(400Å)/BCP(100Å)/Al(1000Å)を含む。スピン塗布SQ膜の厚さはSQ溶液(塩化メチレン(DCM)溶液)の濃度により制御される。3mgのSQを2mlのDCM溶液に溶解することにより、1.5mg/mlの濃度であるSQ溶液が得られる。前記80Åスピン塗布SQ薄膜は、空気中40秒間3000rpmのスピン速度で前洗浄されたITO上にSQ溶液にをスピン塗布することにより調製される。次いで、C60、BCPおよびAL陰極を高真空下でスピンキャスト膜上に蒸着する。
【0118】
この実施例に従って製造されたSQデバイスは1SUN AM 1.5Gの模擬太陽光照射下で試験された。当該試験結果は表3に報告されている。
【0119】
【表3】

【0120】
他に指定の無い限り、構成要素の量、反応条件および本明細書および特許請求の範囲において用いられているその他のものは「約」の語によって全ての場合に変更されることがわかる。したがって、反対に示されていない限り、以下の明細書および添付されている特許請求の範囲における数値パラメータその他のものは、本発明により得られるように所望の性質に従って変更してもよい見積もりである。
【0121】
本発明の他の実施例は、本明細書に開示されている発明の明細書および実務の結果から当業者に明らかであろう。前記明細書および実施例は単に例示としてのみ考えられ、本発明の真実の範囲および思想は以下の請求項により示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのスクアライン化合物から形成されるドナー−アクセプターヘテロ接合点を少なくとも一つ含む有機感光性光電子デバイス:
【化1】

式中、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換されていてもよい芳香族基から選択される。
【請求項2】
前記ArおよびArが、それぞれ独立して、式IIからなる基から選択される、請求項1に記載の有機感光性電子デバイス:
【化2】

式中、Xは、それぞれ独立して、H、アルキル、アルコキシ、ハライド、およびヒドロキシから選択され;ならびに、
YはHまたは置換されていてもよいアミノ基から選択される。
【請求項3】
前記式IIの少なくとも一つのX基がヒドロキシである、請求項2に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項4】
前記Y基が、それぞれ独立して、式NR(ここで、RおよびRはそれぞれ独立してHまたは置換されていてもよいアルキルまたはアリール基から選択される)によって表される基から選択される、請求項2に記載の有機感光性電子デバイス。
【請求項5】
前記RおよびRの少なくとも一つが、置換されたアルキル基である、請求項4に記載の有機感光性電子デバイス。
【請求項6】
前記スクアライン化合物が、式IIIで表される、請求項1に記載の有機感光性電子デバイス:
【化3】

式中、Xは、それぞれ独立して、H,アルキル、アルコキシ、ハライド、およびヒドロキシから選択され;ならびにRおよびRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキルまたはアリール基から選択される。
【請求項7】
前記式IIIの化合物の少なくとも一つのX基がヒドロキシである、請求項6に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項8】
太陽電池または光検出器である、請求項1に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項9】
太陽電池であり、少なくとも一つのドナー−アクセプターへテロ接合点が、前記式Iのスクアライン化合物を含む物質とドナーあるいはアクセプターから選択される物質との界面に形成される、請求項8に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項10】
さらに、電極または透明な集電体を含む電荷移動層を少なくとも一つ含む、請求項1に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項11】
前記透明な導電性酸化物とスクアライン化合物との間にさらにバッファー層を含む、請求項10に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項12】
前記バッファー層が、銅フタロシアニン(CuPc)およびN,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(NPD)の少なくとも一つを含む、請求項11に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項13】
前記スクアライン化合物に隣接するC60の層をさらに含む、請求項12に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項14】
前記ArおよびArが、それぞれ独立して、以下の式Vによって表される基から選択される、請求項1に記載の有機感光性光電子デバイス:
【化4】

式中、環AおよびBは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC−Cの環であり、6〜14の炭素原子を含む二環の飽和または不飽和の環システムを形成するように縮合されている。
【請求項15】
前記式Iのスクアライン化合物が、2,4−ジ−3−グアイアズレニル−1,3−ジヒドロキシシクロブテンジイリウムジヒドロキサイドおよびその塩から選択される、請求項14に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項16】
前記式Iのスクアライン化合物が、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル;2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル;およびそれらの塩から選択される、請求項1に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項17】
前記ArおよびArが、それぞれ独立して、式VIによって表される基から選択される、請求項1に記載の有機感光性電子デバイス:
【化5】

式中、nは0、1、2、3、4、5、および6から選択され;ならびにZは結合基を示す。
【請求項18】
前記式Iのスクアライン化合物が対称ではない、請求項1に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項19】
前記式Iのスクアライン化合物が非晶質である、請求項1に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項20】
前記ドナー−アクセプターへテロ接合点が、少なくとも二つの異なるスクアライン化合物から形成される、請求項19に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項21】
前記ドナー−アクセプターへテロ接合点が、混合されたまたはバルクのヘテロ接合点である、請求項1に記載の有機光電子デバイス。
【請求項22】
前記式Iのスクアライン化合物から形成される、少なくとも一つのドナー−アクセプターへテロ接合点を形成することを含む、有機感光性光電子デバイスの形成方法:
【化6】

式中、ArおよびArは、それぞれ独立して置換されていてもよい芳香族基から選択される。
【請求項23】
基板が、さらに電極または透明な集電体を含む電荷移動層を少なくとも一つ含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記スクアライン化合物が、真空蒸着および溶液処理から選択される1またはそれ以上の処理によって蒸着される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記溶液処理が、スピン塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、またはドクターブレード法から選択される1またはそれ以上の技術を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記スクアライン化合物が、真空蒸着される間、1回以上昇華される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記式1のスクアライン化合物が、0.1〜1.5Å/secの範囲内の速度で蒸着される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記式Iのスクアライン化合物が、100Åまたはそれ以下の厚さで蒸着される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記スクアライン化合物上に、C60を、真空蒸着または蒸気蒸着により蒸着することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記ドナー−アクセプターへテロ接合点が、混合されたまたはバルクのヘテロ接合点である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記C60が少なくとも1点で基板と直接接している、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記C60が2〜6Å/sの速度で蒸着される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記スクアライン化合物を蒸着する前に、基板上にCuPcまたはNPDの少なくとも一つを蒸着することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記CuPcおよびスクアライン化合物が、スクアライン化合物とCuPcの混合物を含む層を形成するように共に蒸着される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記スクアライン化合物の蒸着が、非連続層を形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記ドナー−アクセプターへテロ接合点を形成するために二つ以上の異なるスクアライン化合物の膜を蒸着することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも二つの異なるスクアライン化合物の混合物から形成されるドナー−アクセプターヘテロ接合点を少なくとも一つ含み、前記スクアライン化合物が式Iの化合物である有機感光性光電子デバイス:
【化7】

式中、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換されていてもよい芳香族基から選択される。
【請求項38】
少なくとも二つのスクアライン化合物の混合物が、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル;2,4−ジ−3−グアイアズレニル−1,3−ジヒドロキシシクロブテンジイリウムジヒドロキシド;2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル;およびそれらの塩から選択される少なくとも一つのスクアライン化合物を含む、請求項37に記載の有機感光性光電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−503315(P2012−503315A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527039(P2011−527039)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/056954
【国際公開番号】WO2010/031042
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(508230226)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (8)
【出願人】(509009692)
【Fターム(参考)】