説明

有機エレクトロルミネッセンス素子および高分子発光体組成物

【課題】素子寿命の長い有機EL素子、およびこの有機EL素子に用いられる高分子発光体組成物を提供する。
【解決手段】陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。
)、この有機EL素子に用いられる高分子発光体組成物、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える発光素子である。この有機EL素子の電極間に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されるとともに、陰極から電子が注入され、発光層においてこれら正孔と電子とが結合することによって発光する。
【0003】
有機EL素子は発光層に含まれる発光体に有機物を用いている。高分子発光体(高分子量の発光材料)は比較的溶媒に溶け易いため、発光層を形成する方法として塗布法を用いることができる。塗布法は、大面積の発光層を形成することが可能な成膜方法であり、また工程が簡易なので、素子の大面積化および工程の簡易化の要求に合致している。このため近年種々の高分子発光体が提案されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Advanced Materials Vol.12 1737-1750 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL素子には、駆動による輝度の経時的な低下の度合が少ないこと、換言すると素子寿命が長いことが望まれている。しかしながら高分子発光体を用いた有機EL素子の寿命は未だ十分なものではなく、素子寿命のさらなる向上が求められているところである。
【0006】
従って本発明の目的は、素子寿命の長い有機EL素子、およびこの有機EL素子に用いられる高分子発光体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体と、
フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0008】
また本発明は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する高分子発光体組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、素子寿命の向上した有機EL素子を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有機EL素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える。
【0011】
前記発光層は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する。フラーレン及びフラーレンの誘導体はそれぞれ2種以上含有されていてもよい。
【0012】
発光層に含まれるフラーレンとしては、C60、C70、カーボンナノチューブがあげられる。フラーレンの誘導体の例としては、メタノフラーレン誘導体、PCBM(フェニル酪酸メチルエステル)誘導体、ThCBM(チエニル酪酸メチルエステル)誘導体、プラトー誘導体、ビンゲル誘導体、ジアゾリン誘導体、アザフレロイド誘導体、ケトラクタム誘導体、およびディールス・アルダー誘導体等があげられる(例えば、特表2009-542725参照)。
【0013】
メタノフラーレン誘導体:

ここで、Aは、フラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し、−C(X)(Y)−基はメタノ架橋を介してフラーレン骨格と結合する。XおよびYは、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、または他の基(例えば炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルキル基)を表す。nは1又は2を表す。
【0014】
具体例として、Xが非置換アリール基であり、Yが酪酸メチルエステル基である化合物(PCBM)等が挙げられる。
【0015】
PCBM誘導体:





ここで、nは、1〜20の整数を表す。
【0016】
ThCBM誘導体:

ここで、Cnは、フラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表す。
【0017】
プラトー誘導体:


ここで、Aは−C(R)−N(R)−C(R)−に結合したフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)であり;Rは置換されていてもよい炭素数6〜60のアリール基または炭素数7〜60のアラルキル基であり;R、R、R、およびRは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3〜60のシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜20のヘテロアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜60のヘテロシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数7〜60のアラルキル基であり、nは1から40である。
【0018】
これらの中でも、下記式で表される化合物が好ましい。


ここで、Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表す。
【0019】
ビンゲル誘導体:

ここでCnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表す。zは1から40であり;Xは、炭素数1〜20のエステル基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のケトン基、炭素数2〜20のジアルキルホスフェート、(置換)ピリジン、C≡C−R、(別名アセチレン)等の電子求引基(EWG)であり、RはSi−(R)、または三置換シリル基(同一または異なる)であり、YはH、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換アルキル基である。
【0020】
アザフレロイド誘導体:

ここでCnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し、xは1から40であり、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60の置換アリール基、SO−R'である。R'は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60の置換アリール基である。
【0021】
ジアゾリン誘導体:

ここで、Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し、RおよびR'は独立して炭素数6〜60のアリール基であり、xは1から40である。
【0022】
ケトラクタム誘導体:

ここでRはアルキル基または置換アルキル基であり、nは1から40である。
【0023】
ディールス・アルダー誘導体:

ここでxは1から40であり;Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数6〜60のヘテロアリール基、または炭素数6〜60の置換ヘテロアリール基であり;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数6〜60のヘテロアリール基、または炭素数6〜60の置換ヘテロアリール基であり;XはO、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20の置換アルキレン基、炭素数6〜60のアリーレン基、炭素数6〜60の置換アリーレン基、炭素数5〜60のヘテロアリーレン基、または炭素数5〜60の置換ヘテロアリーレン基であり;Yは炭素数6〜60のアリーレン基、炭素数6〜60の置換アリーレン基、炭素数5〜60のヘテロアリーレン基、炭素数5〜60の置換ヘテロアリーレン基、ビニレン基、または炭素数2〜20の置換ビニレン基を表す。

ここでxは1から40であり;Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数5〜60のヘテロアリール基、または炭素数5〜60の置換ヘテロアリール基であり;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数5〜60のヘテロアリール基、または炭素数5〜60の置換ヘテロアリール基であり;Yは炭素数6〜60のアリーレン基、炭素数6〜60の置換アリーレン基、炭素数5〜60のヘテロアリーレン基、炭素数5〜60の置換ヘテロアリーレン基、ビニレン基、または炭素数2〜20の置換ビニレン基である。
C60フラーレンの誘導体の具体的構造としては、以下のようなものがあげられる。

【0024】
次に本発明に用いる高分子発光体について説明する。本発明に用いる高分子発光体は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する。
【0025】
非置換又は置換のフルオレンジイル基の繰り返し単位はたとえば下記式(1)で表される。

(1)
(式(1)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または1価の芳香族複素環基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0026】
非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基の繰り返し単位は下記式(2)で表される。

(2)
(式(2)中、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または1価の芳香族複素環基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0027】
式(1)、(2)中のR〜R18で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基でもよい。アルキル基の炭素数は通常1〜20程度である。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、3−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ラウリル基等があげられる。前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、その例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等があげられる。
【0028】
式(1)、(2)中のR〜R18で表されるアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の炭素数は通常1〜20程度である。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基等があげられる。前記アルコキシ基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、その例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等があげられる。
【0029】
式(1)、(2)中のR〜R18で表されるアリール基としては、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団である。アリール基には縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。アリール基は、炭素数が通常6〜60程度であり、好ましくは6〜48である。前記アリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基、下記式(3)で表される基、下記式(4)で表される基があげられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。C1〜C12アルコキシフェニル基として具体的には、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、n−ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、n−ペンチルオキシフェニル基、n−ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、n−ヘプチルオキシフェニル基、n−オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、n−ノニルオキシフェニル基、n−デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、n−ラウリルオキシフェニル基等があげられる。C1〜C12アルキルフェニル基として具体的にはメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、s−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、n−ヘプチルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−ノニルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基等があげられる。前記アリール基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。

(3)
(式(3)中、gは1〜6の整数を表し、hは0〜5の整数を表す。)

(4)
〔式中、Ar2及びAr3はそれぞれ独立に、アリーレン基、又は同一若しくは異なる2個以上のアリーレン基が単結合で結合した2価の基を表す。Ar4、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。Ar3、Ar6及びAr7で表される基から選ばれる基は、該基と同一の窒素原子に結合するAr2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7で表される基から選ばれる基と、互いに単結合で、又は−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(R19)−、−C(=O)−N(R19)−若しくは−C(R19)(R19)−で結合して、5〜7員環を形成していてもよい。R19は、水素原子、アルキル基、アリール基、又は1価の芳香族複素環基を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7及びR19で表される基は、各々、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換カルボニル基、置換カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アラルキル基、1価の芳香族複素環基、フッ素原子又はシアノ基で置換されていてもよい。k及びkkはそれぞれ独立に、0〜3の整数であるが、k及びkkの少なくとも一方は1〜3の整数である。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7及びR19のうち複数存在するものは、同一であっても異なっていてもよい。〕
【0030】
式(1)、(2)、(4)中の1価の芳香族複素環基は、炭素数が通常3〜60程度であり、好ましくは3〜20である。該炭素数には置換基の炭素数は含まれない。前記1価の芳香族複素環基としては、2−オキサジアゾール基、2−チアジアゾール基、2−チアゾール基、2−オキサゾール基、2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジル基、2−ピリミジル基、2−トリアジル基、3−ピリダジル基、キノリル基、イソキノリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基等が挙げられる。
【0031】
前述したようにR〜R18で表されるアリール基は置換基を有していてもよく、EL発光の色純度の観点、特に青色の色純度の向上の観点からは、当該アリール基は、式(4)で表される置換基を有することが好ましい。
【0032】
アリール基が式(4)で表される置換基を有する場合、該アリール基は、式(4)中のAr2、Ar3、Ar4、Ar5で表される基から選ばれる基と、互いに単結合で、又は−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(R19)−、−C(=O)−N(R19)−若しくは−C(R19)(R19)−で結合して、5〜7員環を形成していてもよい。なおR19は前記と同じ意味をあらわす。
前記式(4)で表される置換基を有するアリール基の具体例としては、以下の式で表されるもの、およびこれらが、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換カルボニル基、置換カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アラルキル基、1価の芳香族複素環基、フッ素原子及びシアノ基からなる群から選ばれた基で置換されたもの等が挙げられる。
【0033】



















(式中、芳香環から出た結合手は、そのまま結合手を表すか、アリーレン基を介しての結合手を表す。)
【0034】
有機溶媒への溶解性の観点からは、式(1)、(2)中のR、R2、RおよびR10は、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基であることが好ましく、アルキル基またはアリール基であることがより好ましい。
【0035】
式(1)で表されるジイル基としては、例えば下記のジイル基があげられる。



【0036】
式(2)で表されるジイル基としては、例えば下記のジイル基があげられる。

【0037】
本発明に用いる高分子発光体は、単独重合体であっても共重合体でもよい。本発明に用いる高分子発光体の数平均分子量は、膜形成能、溶剤への溶解性の観点から、ポリスチレン換算で103〜108程度であることが好ましく、ポリスチレン換算で103〜106程度であることがより好ましい。発明に用いる高分子発光体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で103〜1×10であることが好ましく、ポリスチレン換算で1×10〜1×106であることがより好ましい。
本発明の高分子発光体中の非置換又は置換のフルオレンジイル基及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基の合計量は、該高分子発光体が有する全繰り返し単位の量に対して通常10mol %以上、好ましくは20mol %以上である。
また本発明に用いる高分子発光体は、共役系高分子でも非共役系高分子でもよく、共役系高分子であるものが好ましい。
【0038】
前記共役系高分子は、(1)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造から実質的になる高分子、(2)二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子、(3)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造及び二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子等を意味し、本明細書においては具体的には、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を少なくとも繰り返し単位として有し、該繰り返し単位同士が直接又は連結基を介して結合した高分子である。なお共役系高分子は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上に加えて、例えばジベンゾフランジイル基、非置換又は置換のジベンゾチオフェンジイル基、非置換又は置換のカルバゾールジイル基、非置換又は置換のチオフェンジイル基、非置換又は置換のフランジイル基、非置換又は置換のピロールジイル基、非置換又は置換のベンゾチアジアゾールジイル基、非置換又は置換のフェニレンビニレンジイル基、非置換又は置換のチエニレンビニレンジイル基、及び非置換又は置換のトリフェニルアミンジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基からなる群から選ばれる一種又は二種以上を繰り返し単位として有していてもよく、前述の非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基に加えて、これらの繰り返し単位同士が直接又は連結基を介して結合した高分子でもよい。
【0039】
前記共役系高分子において、前記繰り返し単位同士が連結基を介して結合している場合、該連結基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル等があげられる。
【0040】
前記共役系高分子の数平均分子量は、膜形成能、溶剤への溶解性の観点から、ポリスチレン換算で103〜108程度であることが好ましく、ポリスチレン換算で103〜106程度であることがより好ましい。また前記共役系高分子の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で103〜1×10であることが好ましく、ポリスチレン換算で1×10〜1×106であることがより好ましい。
【0041】
前記共役系高分子を構成する、非置換又は置換のフルオレンジイル基と、非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基との合計分子量の、共役系高分子における割合は、共役系高分子の分子量を1とすると、通常0.3以上であり、好ましくは0.5以上である。
【0042】
前記共役系高分子は、用いる重合反応に適した官能基を有する単量体を合成した後に、必要に応じて、有機溶媒に溶解し、例えば、アルカリや適当な触媒、配位子を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法により重合することにより合成することができる。
【0043】
アリールカップリングによる重合方法は、特に限定されない。前記重合反応に適した官能基としては、例えば、ホウ酸基又はホウ酸エステル基を有するモノマーと、官能基として臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、又はトリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基の存在下、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のPd若しくはNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒を用いたSuzukiカップリング反応により重合する方法;ハロゲン原子又はトリフルオロメタンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマー同士をビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のニッケルゼロ価錯体とビピリジル等の配位子からなる触媒を用い、若しくは[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子とからなる触媒と亜鉛、マグネシウム等の還元剤を用い、必要に応じて脱水条件で反応させる、Yamamotoカップリング反応により重合する方法;ハロゲン化マグネシウム基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とを[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のNi触媒を用い、脱水条件で反応させる、アリールカップリング反応により重合するKumada−Tamaoカップリング反応により重合する方法、水素原子を官能基として、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法等があげられる。
【0044】
反応溶媒は、用いる重合反応、モノマー及びポリマーの溶解性等を考慮して選択される。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が例示される。
【0045】
Suzukiカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒、又はそれらと水との二相系が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0046】
Yamamotoカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒等の有機溶媒が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0047】
前記アリールカップリング反応の中でも、反応性の観点から、Suzukiカップリング反応、Yamamotoカップリング反応が好ましく、Suzukiカップリング反応とニッケルゼロ価錯体を用いたYamamotoカップリング反応がより好ましい。Suzukiカップリングによる重合に関してより詳細には、例えば、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,1533−1556(2001)に記載されている公知の方法を参考にできる。Yamamotoカップリングによる重合に関しては、例えば、Macromolecules 1992,25,1214−1223に記載されている公知の方法を参考にできる。
【0048】
これらの反応における反応温度は、反応溶液が液状を保つ温度範囲であれば、特に限定されるものではないが、その下限は、反応性の観点から、好ましくは−100℃、より好ましくは−20℃、特に好ましくは0℃であり、その上限は、前記共役系高分子及び前記式(1)または式(2)で表される化合物の安定性の観点から、好ましくは200℃、より好ましくは150℃、特に好ましくは120℃である。
【0049】
前記共役系高分子の取り出しは公知の方法に準じて行うことができる。例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加えて析出させた沈殿をろ過、乾燥することにより、前記共役系高分子を得ることができる。得られた共役系高分子の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0050】
また本発明の高分子発光体組成物は、前記高分子発光体とフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とに加えて溶媒または分散媒をさらに含有していてもよい。換言すると本発明の高分子発光体組成物は、前記高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とが、溶媒に溶解した、または分散媒に分散した液体状の組成物であってもよい。
【0051】
前記溶媒は、前記高分子発光体及びフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体を均一に溶解乃至分散できる安定なものを公知の溶媒から適宜選択して使用できる。このような溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、有機塩素類(クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素類(ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)等があげられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0052】
前記発光層におけるフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体の含有量は、前記高分子発光体を100重量部としたときに通常、0.001〜10重量部であり、好ましくは0.001〜5重量部であり、さらに好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.05重量部〜1重量部である。
【0053】
本発明の高分子発光体組成物が溶媒を含有する場合、前記高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体との合計量100重量部に対して、高分子発光体組成物における溶媒の量は、通常、1000〜100000重量部程度である。
【0054】
本発明の高分子発光体組成物には、電荷輸送性、電荷注入性を損なわない範囲で、前記高分子発光体、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体に加えて、その他の成分を含有させてもよい。有機EL素子中において、高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体との合計量は、発光層100重量部に対して通常30重量部以上であり、50重量部以上が好ましく、70重量部以上がさらに好ましい。
【0055】
本発明の有機EL素子は、前述したように一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備え、発光層は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する。
【0056】
有機EL素子は、電極間に発光層に加えて所定の層を備えていてもよく、また2層以上の発光層を備えていてもよい。
【0057】
本実施の形態の有機EL素子は、陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に配置される発光層とを必須の構成要件として有し、陽極と発光層との間、及び/又は発光層と陰極との間に、発光層とは異なる他の層を有していてもよい。また陽極と陰極との間には、一層の発光層に限らずに、複数の発光層が配置されてもよい。
【0058】
陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。
【0059】
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する。電子輸送層は陰極側の表面に接する層からの電子注入を改善する機能を有する。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
【0060】
正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0061】
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。陽極と発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という。
【0062】
正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する。正孔輸送層は陽極側の表面に接する層からの正孔注入を改善する機能を有する。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
【0063】
電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0064】
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層ということがあり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層ということがある。
【0065】
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
以下同じ。)
【0066】
本実施の形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜p)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記q)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
q)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
【0067】
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記r)に示す層構成を挙げることができる。
r)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
【0068】
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0069】
有機EL素子は通常、前述した有機EL素子を構成する各層を順次所定の方法で支持基板上に積層することによって作製することができ、例えば前述したa)〜r)の構成において、右側から左側、または左側から右側に順次各層を支持基板上に積層することによって作製することができる。
【0070】
<陽極>
発光層から放射される光が陽極を通って素子の外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
陽極の膜厚は、要求される特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0071】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0072】
陰極の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設計され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0073】
<発光層>
発光層は、塗布法によって形成されることが好ましい。塗布法は、製造プロセスを簡略化できる点、生産性が優れている点で好ましい。塗布法としてはキャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等があげられる。前記塗布法を用いて発光層を形成する場合、まず前記高分子発光体とフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体と溶媒とを含有する溶液状態の組成物を塗布液として調製し、この塗布液を前述した所定の塗布法によって所望の層又は電極上に塗布し、さらにこれを乾燥することにより、所期の膜厚の発光層を形成することができる。
【0074】
<他の層>
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層などの材料は特に制限されず、塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法およびラミネート法などの所定の成膜方法によって形成される。
【0075】
以上説明した有機EL素子は、曲面状や平面状の照明装置、例えばスキャナの光源として用いられる面状光源、および表示装置などの発光装置に好適に用いることができる。
【0076】
有機EL素子を備える表示装置としては、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置などを挙げることができる。ドットマトリックス表示装置には、アクティブマトリックス表示装置およびパッシブマトリックス表示装置などがある。有機EL素子は、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置において、各画素を構成する発光素子として用いられる。また有機EL素子は、セグメント表示装置において、各セグメントを構成する発光素子またはバックライトとして用いられ、液晶表示装置において、バックライトとして用いられる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
−分子量の測定方法−
実施例において、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のものを求めた。具体的には、GPC(東ソー製、商品名:HLC-8220GPC)により、TSKgel SuperHM-H(東ソー製)3本を直列に繋げたカラムを用いて、展開溶媒としてテトラヒドロフランを0.5mL/分の流速で流し、40℃で測定した。検出器には、示差屈折率検出器を用いた。
【0079】
<合成例1>(高分子化合物1の合成)
500mlの4口フラスコにトリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Triscaprylylmethylammoniumchloride、商品名:Aliquat336)1.72g、下記式:

で表される化合物A 6.2171g、下記式:

で表される化合物B 0.5085g、下記式:

で表される化合物C 6.2225g、及び下記式:

で表される化合物D 0.5487gを取り、フラスコ中の雰囲気を窒素置換した。トルエン100mlを加え、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) 7.6mg、炭酸ナトリウム水溶液24mlを加え、環流下で3時間攪拌した後、フェニルホウ酸0.40gを加え、終夜攪拌した。ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート水溶液を加え、さらに環流下で3時間攪拌した。得られた反応液を分液し、有機相を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、メタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、シリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、メタノールに滴下ところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥して、7.72gの高分子化合物1(共役系高分子)を得た。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは2.9×105であった。
【0080】
<合成例2>(高分子化合物2の合成)
5Lセパラブルフラスコにトリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Triscaprylylmethylammoniumchloride、商品名:Aliquat336)40.18g、下記式:

で表される化合物A 234.06g、下記式:

で表される化合物E 172.06g、及び下記式:

で表される化合物F 28.5528gを取り、フラスコ中の雰囲気を窒素置換した。アルゴンバブリングしたトルエン2620gを加え、攪拌しながら更に30分間バブリングした。酢酸パラジウム 99.1mg、トリス(o−トリル)ホスフィン 937.0mgを加えた。なお薬包紙などに付着する酢酸パラジウム、トリス(o−トリル)ホスフィンも、158gのトルエンで洗い流すことによりフラスコ内に加え、95℃に加熱した。17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液855gを滴下後、バス温110℃に昇温し、9.5時間攪拌した後、フェニルホウ酸5.39gをトルエン96mlに溶解して加え、14時間攪拌した。200mlのトルエンを加え、反応液を分液し、有機相を3重量%酢酸水溶液850mlで2回、更に850mlの水とナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート19.89gを加え、4時間攪拌した。分液後、シリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、メタノールで洗浄した。減圧乾燥後、11Lのトルエンに溶解させ、得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥して、278.39gの高分子化合物2を得た。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.7×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.8×105であった。
【0081】
なお上記化合物A〜Fは、例えばWO2005/52027に記載されている方法で合成することができる。
【0082】
下記モノマー化合物M1、M3、および下記に示す合成例3の高分子化合物P9については、特開2009−149850号公報に記載されている方法で合成することができる。



<合成例3>(高分子化合物P9の合成)
2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(1.0675g、2.012mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(0.8873g、1.618mmol)、化合物M1(0.3782g、0.263mmol)、化合物M3(0.1622g、0.101mmol)、N−(4−n−ブチルフェニル)−3,7−ジブロモフェノキサジン(化合物D)(0.0191g、0.040mmol)、及びトリオクチルメチルアンモニウムクロライド(Aldrich社製、商品名:Aliquat336)(0.26g、0.65mmol)をアルゴンガス雰囲気下、トルエン(20ml)に溶解させた。溶液中へアルゴンガスをバブリングした後、80℃まで昇温した後、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(2.8mg、4.0μmol)、及び17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(5.5ml、9.1mmol)を加え、還流下で7時間反応させた。一旦冷却した後に、フェニルホウ酸 (0.02g、0.2mmol)、及びジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(1.4mg、2.0μmol)、を加え、更に還流下で2時間反応させた。トルエン(20ml)を加え希釈した後に、水層を除去し、9重量%N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液(12ml)を加え、90℃で2時間攪拌した後、有機層をイオン交換水(26ml)で2回、3重量%酢酸水溶液(26ml)で2回、イオン交換水(26ml)で2回順次洗浄し、次いでメタノール(300ml)へ滴下し、30分攪拌した後、析出したポリマーをろ取し、メタノール(60ml)で洗浄し、減圧乾燥して粗ポリマーを得た。
この粗ポリマーをトルエン(80ml)に溶解し、カラムに充填したアルミナ(14g)、シリカゲル(31g)に通液し、更にトルエン(50ml)を通液した。得られた溶液をメタノール(300ml)へ滴下し、30分攪拌した後、析出したポリマーをろ取し、メタノール(60ml)で洗浄し、減圧乾燥して、ポリマーである高分子化合物P9を得た(1.38 g、収率72%)。高分子化合物P9のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.3×105であり、ガラス転移温度は109℃であり、薄膜の蛍光ピーク波長は446nm及び462nmであった。
高分子化合物P9は、仕込み原料から、下記繰り返し単位を下記割合(モル比)で含むものであると推測される。

【0083】
<塗布溶液A1の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液A1を作製した。
【0084】
<塗布溶液Bの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度となるようにキシレンに溶解させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Bを作製した。
【0085】
<塗布溶液A2の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物1:PCBM=100:0.2(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液A2を作製した。
【0086】
<塗布溶液A3の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物1:PCBM=100:0.1(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液A3を作製した。
【0087】
<塗布溶液A4の作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物1:PCBM=100:0.01(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液A4を作製した。
【0088】
<塗布溶液A5の作製>
高分子化合物P9を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液A5を作製した。
【0089】
<塗布溶液A6の作製>
高分子化合物P9を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物1:PCBM=100:0.1(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液A6を作製した。
【0090】
(有機EL素子の作製、評価)
<実施例1>
スパッタ法により陽極としてのITO膜(膜厚:150nm)が表面に形成されたガラス基板上に、正孔注入層形成用溶液(Plextronics社製、商品名:HIL764)をスピンコートし、さらにこれを大気中ホットプレート上で170℃で15分間乾燥することにより正孔注入層(膜厚:50nm)を形成した。次に、塗布溶液Bを正孔注入層上にスピンコートし、グローブボックス中において窒素雰囲気下で、180℃で60分間ベークすることにより正孔輸送層(膜厚:20nm)を形成した。さらに前記塗布溶液A2を正孔輸送層上にスピンコートし、発光層を形成した。発光層の形成ではその膜厚が80nmとなるように調整した。
【0091】
その後、窒素雰囲気下で130℃のホットプレートで10分間ベークし、さらにNaFを4nmの厚さで蒸着し、次いで、Alを100nmの厚さで蒸着し、陰極を形成した。
蒸着のときの真空度は、1×10-4Pa〜9×10-3Paの範囲であった。素子の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた素子を初期輝度5000cd/mで定電流駆動し、寿命試験をおこなった。初期輝度が4000cd/m(初期輝度の80%)に低下するまでの時間(これをLT80と呼ぶ)を測定した。また、輝度が100cd/mのときのEL発光の色度、すなわち色度座標(C.I.E.1931)上での座標値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
<実施例2>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80と色度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0093】
<実施例3>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80と色度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0094】
<実施例4>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A6を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80と色度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0095】
<比較例1>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A1を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80と色度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0096】
<比較例2>
塗布溶液A2の代わりに塗布溶液A5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80と色度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1からわかるように、高分子発光体(高分子化合物1)とフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する発光層を備える有機EL素子は、高分子発光体のみからなる発光層を備える有機EL素子に比べて、初期輝度を同じにした場合のLT80寿命が著しく向上した。従って本発明の高分子発光体組成物を含有する発光層を備える有機EL素子は素子寿命に優れることが認められた。また、式(4)で表される置換基を有する高分子発光体を含有する発光層を形成することにより、色純度の高い青色発光の有機EL素子を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体と、
フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する発光層である、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記高分子発光体が共役系高分子である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記発光層におけるフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体の含有量が、前記高分子発光体を100重量部としたときに0.001〜5重量部である請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記発光層におけるフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体の含有量が、前記高分子発光体を100重量部としたときに0.01〜1重量部である請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える発光装置。
【請求項6】
非置換又は置換のフルオレンジイル基、及び非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基からなる群から選ばれる1種以上のジイル基を繰り返し単位として有する高分子発光体と、フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体とを含有する高分子発光体組成物。

【公開番号】特開2011−171692(P2011−171692A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159413(P2010−159413)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】