説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用の材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、および、その製造方法

【課題】 発光層の発光機能が低下するのを抑えつつ、高い生産性で有機EL素子を得る。
【解決手段】 有機EL装置11は、基板12と、陽極層14・正孔輸送層20・発光層22・陰極層18を含む有機EL素子10と、封止キャップ19とを備える。陰極層18は、導電性の粉体と、熱可塑性樹脂のバインダと、溶剤とを有する導電性材料を、発光部16の上にスクリーン印刷し、その後、加熱によって硬化、乾燥させて形成する。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが使用できる。これらの樹脂は、発光層22とほとんど反応しないため、発光層22の発光機能にほとんど影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用の材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(electro luminescence:以下、「EL」ということがある。)素子は、低電圧で駆動できること、消費電力が低いこと、応答性が速いこと、および、高輝度の自発光であることなどの理由から、各種表示装置に使用されている。
【0003】
一般に、有機EL素子は、陽極層と、有機材料を用いた発光層を含む発光部と、陰極層とが積層されて構成されている。有機EL素子は、以下のメカニズムによって発光する。すなわち、有機EL素子の陽極層と陰極層との間に直流電圧を印加すると、陽極層から正孔が発光層に進入する。一方、陰極層からも、電子が発光層に進入する。
【0004】
発光層内では、正孔と電子が結合しエネルギーを放出する。このエネルギーによって、発光層を構成する発光物質が、励起状態に励起される。励起状態は、直ちに基底状態に戻り、このときに蛍光が放出される。従来、発光部上に陰極層を形成する方法として、金属等を真空蒸着法によって蒸着する方法が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−45074号公報(第43段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空蒸着法によって陰極層を形成する場合、陰極層の形成工程を真空容器内で行う必要がある。このため、陰極層形成前の有機EL素子を真空容器内に搬入する際、および、陰極層形成後の有機EL素子を真空容器から搬出する際に、真空容器の給気と排気が必要となり生産性が高くない。また、蒸着源である金属を真空容器中で加熱するため、上面に有機EL素子が形成される基板が樹脂の場合、この樹脂基板が溶融してしまうおそれがある。したがって、発光部上に、スクリーン印刷法、凹版印刷法、ディスペンサ法、転写印刷法、または、インクジェット法などの塗布法により導電性材料を設け、乾燥等させて陰極層を形成するのが望ましい。
【0007】
導電性材料中のバインダとしては、低温で硬化すること、硬化後の物理的安定性が高いこと、乾燥が速いことなどの理由から、エポキシ樹脂が多用されている。しかしながら、エポキシ樹脂をバインダとする導電性材料を発光部上に塗布して陰極層を形成する場合、エポキシ樹脂が硬化する際に生成する成分と発光層とが化学反応を起こし、発光層の発光機能が低下、または、消滅するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、有機EL素子の発光層の発光機能が低下するのを抑えつつ、高い生産性で有機EL素子を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用の材料は、陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる陰極用の材料であって、導電性の粉体と、熱可塑性樹脂のバインダと、溶剤とを有するものである。
【0010】
この構成によれば、陰極の材料を発光部上に形成しても、発光層とほとんど反応しないため、発光層の発光機能が低下するのをほぼ抑えることができる。
【0011】
熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、または、これらの樹脂の2以上のブレンド樹脂の中から選択されてもよい。
【0012】
第2の態様の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用の材料は、陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる陰極用の材料であって、導電性の粉体と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤とを有し、樹脂硬化剤は、実質的にアミンを含まないものである。
【0013】
また、第3の態様の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極用の材料は、陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる陰極用の材料であって、導電性の粉体と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤とを有し、樹脂原料と樹脂硬化剤とが反応する際に、実質的に過酸化物を発生しないものである。
【0014】
これらの構成によれば、陰極の材料を発光部上に形成しても、発光層とほとんど反応しないため、発光層の発光機能が低下するのをほぼ抑えることができる。また、第1から第3の態様で用いられる溶剤は、芳香族以外であって沸点が130℃以上330℃以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の第4の態様の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、陰極層は、塗布によって形成されると共に、導電体の粉体が熱可塑性樹脂によって互いに接触した状態で結合された導電層である。
【0016】
この構成によれば、陰極と発光部とがほとんど反応しないため、発光層の発光機能が低下するのをほぼ抑えることができる。
【0017】
熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、または、これらの樹脂の2以上のブレンド樹脂の中から選択されてもよい。
【0018】
本発明の第5の態様の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、導電性材料を塗布して陰極層を形成する工程を有し、導電性材料は、導電性の粉体と、熱可塑性樹脂のバインダと、溶剤とを含むものである。
【0019】
本発明の第6の態様の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、導電性材料を塗布した後に加熱して陰極層を形成する工程を有し、導電性材料は、導電性の粉体と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤とを含むと共に、加熱の際に、実質的にアミンおよび過酸化物を発生しない材料である。
【0020】
これらの方法によれば、簡易な手法によって発光部上に陰極層を形成することができる。また、形成された陰極層と発光部とがほとんど反応しないため、発光層の発光機能が低下するのをほぼ抑えることができる。
【0021】
第5、第6の態様では、陰極層を形成する工程において、印刷によって導電性材料を塗布してもよい。印刷によって塗布すれば、陰極層の形状を高精度に、しかも簡易に形成することができる。
【0022】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本出願によって特許を受ける発明の範囲に含まれ得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、発光層の発光機能が低下するのを抑えつつ、高い生産性で有機EL素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施の形態について説明する。本明細書で、「上」とは、層の形成順序によって決まる概念であり、先に形成された層から見て後から形成される層の方向をいう。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る有機EL素子10を含む有機EL装置11の断面を示す。有機EL装置11は、基板12と、陽極層14と、発光部16と、陰極層18と、封止キャップ19とを備える。
【0026】
基板12は、発光部16で発せられる光を有機EL装置11外部に透過させる場合には、透明の材料、半透明の材料、または、光透過率が高い材料、例えば、可視領域光の透過率が50%以上の材料で構成されている。基板12としては、ガラスが多用されるが、樹脂を使用してもよい。樹脂は、軽量でフレキシブルな、例えば、ポリカーボネート樹脂などが使用できる。
【0027】
陽極層14は、有機EL素子10の陽極層14と陰極層18との間に電圧が印加されると、発光部16に正孔を注入する。発光部16は、正孔と電子が結合する際に、光を発する部分である。発光部16は、正孔輸送層20と、発光層22とを備える。正孔輸送層20は、陽極層14から注入された正孔を発光層22に輸送する。発光層22は、有機材料で構成され、正孔と電子が結合すると発光する発光物質を含む。
【0028】
陰極層18は、有機EL素子10の陽極層14と陰極層18との間に電圧が印加されると、発光部16に電子を注入する。陰極層18は、導電性材料を発光部16上に塗布することによって形成される。この導電性材料は、導電性の粉体と、熱可塑性樹脂のバインダと、溶剤とを備える。導電性の粉体としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Ir、Ni、Mg、Ga、もしくは、これらの合金等の金属の粉体、ポリピロール、ポリフェニレンスルフィド、もしくは、ポリアルキルチオフェン等の導電性高分子の粉体、または、カーボンブラックの粉体などが挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、または、これらの樹脂の2以上のブレンド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、発光層22の発光機能をほとんど低下させない。
【0030】
アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル、または、メタクリル酸エステル等を主骨格とする重合体である。他のビニルモノマーとの共重合体であってもよい。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンが付加重合した樹脂である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、または、ポリアルキルペンテン等が挙げられる。
【0031】
ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、または、ポリブチレンテレフタレート等のエステル結合を有する重合体であり、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合重合により得られる。多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、もしくは、テレフタル酸等の芳香族多価カルボン酸、または、コハク酸、アジピン酸、もしくは、アジピン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。多価アルコールとしては、グリコール類、トリメチロールプロパン、または、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0032】
ウレタン系樹脂は、ウレタン結合を有する重合体であり、例えば、多価アルコールとポリイソシアネートを組み合わせて得られる。ポリビニル系樹脂は、ビニル基を有するモノマーの重合体である。ポリビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、または、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0033】
ポリブタジエン系樹脂は、ブタジエン、または、ブタジエン誘導体の重合体である。ポリスチレン系樹脂は、スチレン、または、スチレン誘導体の重合体である。なお、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、およびポリスチレン系樹脂には、これらの樹脂の2以上の共重合体も含まれる。
【0034】
溶剤としては、芳香族を除く沸点130℃以上の溶媒、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィン、エステル、または、これらの混合物等の有機溶剤など、より具体的には、ケロシン(沸点が175から325℃)、n-デカン(沸点が174.1℃)、ブチルセロソルブ(沸点が171.2℃)、ブチルセロソルブアセテート(沸点が191.5℃)、フェニルセロソルブ(沸点が244.7℃)、ブチルカルビトール(沸点が220.4℃)、または、フェニルセロソルブアセテート(沸点が259.7℃)等が挙げられる。
【0035】
溶剤の沸点を130℃以上とすることで、(1)オフセット印刷において、版またはブランケット上に作製した陰極用の材料を含む薄膜から溶剤が蒸発して、ガラス等に転写不能になること、(2)スクリーン印刷において、紗に残った陰極用の材料の残渣から溶剤が蒸発し、残渣が紗に固着することによって印刷不能になること、を防ぐことができる。なお、溶剤の沸点は330℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が330℃を超えると、長い乾燥時間や高温での乾燥が必要となるからである。また、導電性材料は、界面活性剤等の分散剤、または、粘度調整剤などの添加剤を含んでもよい。
【0036】
導電性材料の組成は、例えば、導電性の粉体が40〜60wt%、熱可塑性樹脂のバインダが10〜20wt%、溶剤が20〜30wt%、分散剤が5〜15wt%とすることができる。導電性材料は、以下のようにして製造される。すなわち、まず、導電性の粉体と、溶剤の半分量と、必要に応じた添加剤とを、粉砕ボールと共にポットに投入する。次に、ポットを一定の速度、例えば、100rpmで、所定の時間、例えば、12時間回転させる。この結果、スラリー状の混合物が得られる。
【0037】
次に、このスラリー状の混合物が入っているポットに、粒状の熱可塑性樹脂のバインダと、残りの溶剤を添加し、更に、ポットを一定の速度、例えば、120rpmで、所定の時間、例えば、10時間回転させる。この結果、導電性材料の全成分を含んだスラリー状の混合物が得られる。次に、必要に応じて、このスラリー状の混合物を加圧濾過して、塊状物質を除去する。こうして、導電性材料が得られる。
【0038】
封止キャップ19は、金属、ガラス、ポリカーボネート等の樹脂で構成され、接着剤26、例えば、UV硬化樹脂を介して陽極層14に接合される。封止キャップ19を設けることによって、空気中の水分による発光物質の劣化、および、発光部16と陰極層18との界面の剥離を、ほぼ防ぐことができる。
【0039】
次に、有機EL装置11の製造方法について説明する。
【0040】
まず、洗浄した基板12上に、陽極層14を形成する。次に、陽極層14の上に、正孔輸送層20を、例えばスピンコート法で形成する。次に、正孔輸送層20の上に、発光層22を、例えばスピンコート法で形成する。次に、発光層22の上に、陰極層18を塗布する。塗布としては、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写印刷、もしくは、グラビア印刷等の印刷法、インクジェット法、スプレーコート法、または、ロールコート法などが挙げられる。これらのうち、陰極層18の形状の精度の高さ、および、塗布装置の簡易さ等の理由により、印刷法、特にスクリーン印刷法が好ましい。
【0041】
次に、塗布された導電性材料を加熱し、樹脂を硬化させると共に、溶剤を蒸発させて乾燥させる。こうして、発光部16の上に陰極層18が形成される。この陰極層18は、導電体の粉体が熱可塑性樹脂によって互いに接触した状態で結合された導電層である。次に、窒素雰囲気下で、発光部16と陰極層18を囲むように、封止キャップ19と陽極層14とを接着剤26で接合する。
【0042】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、陰極層18の材料である導電性材料が第1の実施の形態と異なる。本実施の形態に係る導電性材料は、導電性の粉体と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤とを有する。このうち導電性の粉体および溶剤は、第1の実施の形態と同じ物が使用できるため、説明を省略する。導電性材料は、添加剤を含んでいてもよく、添加剤としては、第1の実施の形態で挙げた物以外に、反応促進剤が挙げられる。
【0043】
樹脂原料は、架橋反応、縮合反応、または、付加反応等の化学反応によって樹脂となったときの主骨格を形成する。樹脂硬化剤は、樹脂原料と共に樹脂の構成要素となる物質、または、樹脂原料の架橋反応、縮合反応、もしくは、付加反応等の化学反応を進行させる物質である。なお、樹脂原料と樹脂硬化剤とを混合しただけでは樹脂が生成されない場合もあり、この場合には、周囲からエネルギー、例えば、熱エネルギーを与える。
【0044】
樹脂硬化剤が実質的にアミンを含まない場合、樹脂原料と樹脂硬化剤とが反応しても実質的にアミンと過酸化物を発生しないので、発光部16上に導電性材料を塗布し、その後、加熱して陰極層18を形成しても、発光層22の発光機能はほとんど低下しない。
【0045】
ここで、実質的にアミンを含まないとは、赤外線分光分析装置等の分析装置で樹脂硬化剤を分析したときに、アミンの含有量が検出限界値以下であることをいう。また、樹脂原料と樹脂硬化剤とが反応しても実質的にアミンを発生しないとは、樹脂原料と樹脂硬化剤との理論的な化学反応においてアミンを発生しないことをいう。同様に、樹脂原料と樹脂硬化剤とが反応しても実質的に過酸化物を発生しないとは、樹脂原料と樹脂硬化剤との理論的な化学反応において過酸化物を発生しないことをいう。
【0046】
本実施の形態の導電性材料を用いた陰極層18の形成は、以下の手順で行う。まず、導電性材料を調製する。すなわち、導電性の粉体、例えば、銀粉と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤と、反応促進剤とを混合し、撹拌する。次に、この調製した導電性材料を発光部16上に塗布する。塗布の方法は、第1の実施の形態と同様の方法が使用できる。次に、塗布された導電性材料を加熱する。
【0047】
以上、各実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。
【0048】
例えば、発光部16の劣化をさらに抑制するために、封止キャップ19内に乾燥剤を設置してもよい。また、各実施の形態では、基板12側から光を得る構造としたが、これに代えて、陰極層18側、すなわち、封止キャップ19側から光を取り出す構造としてもよい。この場合、封止キャップ19を可視光が透過する材質とし、かつ、陰極層18に開口を設けるか、陰極層18も可視光が透過する材質とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL装置の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 有機EL素子、 11 有機EL装置、 12 基板、 14 陽極層、 16 発光部、 18 陰極層、 19 封止キャップ、 20 正孔輸送層、 22 発光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる陰極用の材料であって、
導電性の粉体と、熱可塑性樹脂のバインダと、溶剤とを有することを特徴とする陰極用の材料。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、または、これらの樹脂の2以上のブレンド樹脂の中から選択されることを特徴とする請求項1記載の陰極用の材料。
【請求項3】
陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる陰極用の材料であって、
導電性の粉体と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤とを有し、
前記樹脂硬化剤は、実質的にアミンを含まないことを特徴とする陰極用の材料。
【請求項4】
陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる陰極用の材料であって、
導電性の粉体と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤とを有し、
前記樹脂原料と前記樹脂硬化剤とが反応する際に、実質的に過酸化物を発生しないことを特徴とする陰極用の材料。
【請求項5】
前記溶剤は、芳香族以外であって沸点が130℃以上330℃以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の陰極用の材料。
【請求項6】
陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記陰極層は、塗布によって形成されると共に、導電体の粉体が熱可塑性樹脂によって互いに接触した状態で結合された導電層であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、または、これらの樹脂の2以上のブレンド樹脂の中から選択されることを特徴とする請求項6記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
導電性材料を塗布して陰極層を形成する工程を有し、
前記導電性材料は、導電性の粉体と、熱可塑性樹脂のバインダと、溶剤とを含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
陽極層と、有機材料を用いた発光層と、陰極層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
導電性材料を塗布した後に加熱して陰極層を形成する工程を有し、
前記導電性材料は、導電性の粉体と、樹脂原料と、樹脂硬化剤と、溶剤とを含むと共に、前記加熱の際に、実質的にアミンおよび過酸化物を発生しない材料であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
前記陰極層を形成する工程において、印刷によって前記導電性材料を塗布することを特徴とする請求項8または9記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−286542(P2006−286542A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107924(P2005−107924)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(592237219)株式会社イーエッチシー (3)
【Fターム(参考)】