説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 長寿命の有機EL素子を提供する
【解決手段】 陽極および陰極からなる電極間に正孔注入層と発光層とを有し、該正孔注入層が、酸基を有する導電性高分子(A)と下記一般式(1)等で示される酸基を有する高分子(B)とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。

−(−Ar1−X1−)m− (1)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar1は2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基等で置換されていてもよく、複数のAr1は、同一であっても異なっていてもよく、Ar1の少なくとも1つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X1は、−O−、−S−等を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正孔注入層と発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、発光材料として低分子または高分子の有機化合物を用いる素子である。
【0003】
有機EL素子は、電極間に、発光層を有するが、素子の特性や寿命の向上のために、陽極に隣接して正孔注入層を用いることが一般的である。
【0004】
正孔注入層として、酸基を有する導電性高分子(スルホン酸基を有するポリアニリン)と、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸等の主鎖に芳香環を含まない非導電性高分子とを含有する層を有する素子が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】WO01/18888A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の素子の寿命は未だ十分ではなく、さらに長寿命の有機EL素子が望まれていた。
本発明の目的は、長寿命の有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、正孔注入層として、酸基を有する導電性高分子と、酸基を有し主鎖に芳香環を含む非導電性高分子とを含有した層を用いると、長寿命の有機EL素子を与えることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、 陽極および陰極からなる電極間に正孔注入層と発光層とを有し、該正孔注入層が、酸基を有する導電性高分子(A)と下記一般式(1)、(2)および(3)から選ばれる、酸基を有する高分子(B)とを含有すること特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供するものである。

−(−Ar1−X1−)m− (1)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar1は2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr1は、同一であっても異なっていてもよく、Ar1の少なくとも1つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X1は、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX1は、同一であっても異なっていてもよい。〕

−(−Ar2−X2−Ar3−X3−)m− (2)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar2およびAr3はそれぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr2およびAr3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Ar2およびAr3の少なくとも1つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X2およびX3は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX2およびX3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕


−(−Ar4−X4−Ar5−X5−Ar6−X6−)m− (3)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar4、Ar5およびAr6はそれぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr4、Ar5およびAr6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Ar4、Ar5およびAr6の少なくとも一つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X4、5およびX6は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX4、5およびX6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
【発明の効果】
【0008】
本発明により、長寿命の有機EL素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、正孔注入層とは陽極に接して設けた層であって、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。
【0010】
本発明の素子は、該正孔注入層が、酸基を有する導電性高分子(A)と下記一般式(1)、(2)および(3)から選ばれる、酸基を有する高分子(B)とを含有することを特徴とする。
【0011】
まず、有機EL素子に用いる酸基を有する導電性高分子(A)について説明する。
【0012】
導電性高分子とは金属的または半導体的な導電性を示す高分子物質の総称である(岩波理化学辞典第5版:1998年発行)。
導電性高分子の具体的な例は「導電性ポリマー」(吉村進一著、共立出版)、「導電性高分子の最新応用技術」(小林征男監修、シーエムシー出版)に記載されている。
代表的な導電性高分子としてはポリアセチレン、パラ位もしくはメタ位で結合したポリフェニレン、2価の基を介してフェニル基が繋がった高分子(例えば-CH=CH-を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンビニレン、-S-を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンサルファイド、-O-を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンオキサイドが挙げられる)、五員環を構成する元素がCとH以外の元素を一つ含み2,5位で繋がった高分子(例えばNHを含む五員環が2,5位で繋がったポリピロール、Sを含む五員環が2,5位で繋がったポリチオフェン、Oを含む五員環が2,5位で繋がったポリフラン、Seを含む五員環が2,5位で繋がったポリセレノフェン、Teを含む五員環が2,5位で繋がったポリテルロフェンが挙げられる)、芳香族アミン類を重合して得られる高分子(例えばポリアニリン、ポリアミノピレンが挙げられる)が挙げられる。これらのなかで好ましくは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールであり、より好ましくは、ポリアニリン、ポリチオフェンがあげられる。
【0013】
酸基を有する導電性高分子(A)としては、例えば、上に例示した導電性高分子に酸基が導入されたものがあげられ、具体的には、酸基を有するポリアセチレン、酸基を有するポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、酸基を有するポリフェニレンサルファイド、酸基を有するポリフェニレンオキサイド、酸基を有するポリピロール、酸基を有するポリチオフェン、(例えば酸基を有するポリ(3,4-ジオキシチオフェン)、酸基を有するポリフラン、酸基を有するポリセレノフェン、酸基を有するポリテルロフェン、酸基を有するポリアニリンまたは酸基を有するポリアミノピレン等が挙げられる。
【0014】
ここに、酸基としては、例えばカルボキシル基やホスホ基等の弱酸基、スルホ基、スルホニルイミド等の強酸基、パーフルオロアルキレンスルホ基、パーフルオロフェニレンスルホ基、パーフルオロアルキレンスルホニルイミド等の超強酸基などが挙げられる。中でも、強酸の基、超強酸の基が好ましく、例えばスルホ基、パーフルオロアルキレンスルホ基、パーフルオロフェニレンスルホ基などが挙げられる。
【0015】
上記の酸基は導電性高分子に直接結合しているか、もしくは、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数1〜10で-O-を含んでいるアルキレン、炭素数1〜10のオキシアルキレン、炭素数6〜10のアリーレン又は炭素数6〜10のオキシアリーレン等の連結基を介して、高分子に結合していても良い。炭素数1〜10のアルキレンとしては、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、sec-ブチレン、tert-ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、2,2-ジメチルプロピレン、シクロペンチレン、n-ヘキシレン、シクロヘキシレン、2-メチルペンチレン、2-エチルヘキシレン等の炭素数1〜10のアルキレン、これらのアルキレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアルキレン等が挙げられる。
【0016】
炭素数1〜10で-O-を含んでいるアルキレンとしては、例えば、メチレンオキシメチレン、メチレンオキシエチレン、メチレンオキシプロピレン、メチレンオキシブチレン、メチレンオキシペンチレン、メチレンオキシヘキシレン、メチレンオキシヘプチレン、メチレンオキシオクチレン、メチレンオキシノニレン、エチレンオキシメチレン、エチレンオキシエチレン、エチレンオキシプロピレン、エチレンオキシブチレン、エチレンオキシペンチレン、エチレンオキシヘキシレン、エチレンオキシヘプチレン、エチレンオキシオクチレン、プロピレンオキシメチレン、プロピレンオキシエチレン、プロピレンオキシプロピレン、プロピレンオキシブチレン、プロピレンオキシペンチレン、プロピレンオキシヘキシレン、プロピレンオキシヘプチレン、ブチレンオキシメチレン、ブチレンオキシエチレン、ブチレンオキシプロピレン、ブチレンオキシブチレン、ブチレンオキシペンチレン、ブチレンオキシヘキシレン、ペンチレンオキシメチレン、ペンチレンオキシエチレン、ペンチレンオキシプロピレン、ペンチレンオキシブチレン、ペンチレンオキシペンチレン、ヘキシレンオキシメチレン、ヘキシレンオキシエチレン、ヘキシレンオキシプロピレン、ヘキシレンオキシブチレン、へプチレンオキシメチレン、ヘプチレンオキシエチレン、ヘプチレンオキシプロピレン、オクチレンオキシメチレン、オクチレンオキシエチレン、ノナチルオキシメチレン等の-O-を含んでいるアルキレン、これらのアルキレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換した-O-を含んでいるアルキレン等が挙げられる。
【0017】
炭素数1〜10のオキシアルキレンとしては、例えば、メチレンオキシ、エチレンオキシ、n-プロピレンオキシ、イソプロピレンオキシ、n-ブチレンオキシ、sec-ブチレンオキシ、tert-ブチレンオキシ、イソブチレンオキシ、n-ペンチレンオキシ、2,2-ジメチルプロピレンオキシ、シクロペンチレンオキシ、n-ヘキシレンオキシ、シクロヘキシレンオキシ、2-メチルペンチレンオキシ、2-エチルヘキシレンオキシ等の炭素数1〜10のオキシアルキレン、これらのオキシアルキレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したオキシアルキレン等が挙げられる。
【0018】
炭素数6〜10のアリーレンとしては、例えばフェニレン、ナフチレン等の炭素数6〜10のアリーレン、これらのアリーレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアリーレン等が挙げられる。
【0019】
炭素数6〜10のオキシアリーレンとしては、例えばフェニレンオキシ、ナフチレンオキシ等の炭素数6〜10のオキシアリーレン、これらのオキシアリーレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したオキシアリーレン等が挙げられる。
【0020】
酸基の数は導電性高分子(A)が芳香環を含む場合、芳香環の数に対して10%〜100%が好ましく、さらに好ましくは30%〜100%である。
【0021】
また、導電性高分子(A)は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0022】
ここに炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、2-エチルヘキシル等の炭素数1〜10のアルキル基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアルキル基等が挙げられる。
【0023】
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、2,2-ジメチルプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、2-メチルペンチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアルコキシ基等が挙げられる。
【0024】
炭素数6〜10のアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル等の炭素数6〜10のアリール基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアリール基等が挙げられる。
【0025】
炭素数6〜10のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜10のアリールオキシ基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアリールオキシ基等が挙げられる。
【0026】
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0027】
酸基を有する導電性高分子(A)の具体的な例としては下記のものが挙げられる。
(ここで酸基の導入率は合成方法等により異なるが、ここでは芳香環の数に対して酸基の導入率が100%である導電性高分子を例示した)
【0028】



【0029】
酸基を有する導電性高分子(A)の平均分子量としては、ポリスチレン換算の数平均分子量で表して3000〜1000000が好ましく、さらに好ましくは10000〜300000である。
【0030】
また、酸基を有する導電性高分子(A)の電気伝導度は通常1×10-5S/cm以上である。
【0031】
本発明の素子が有する正孔注入層は、酸基を有する導電性高分子(A)に加えて、下記一般式(1)、(2)および(3)から選ばれる酸基を有する高分子(B)を含有する。

−(−Ar1−X1−)m− (1)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar1は2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr1は、同一であっても異なっていてもよく、Ar1の少なくとも1つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X1は、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX1は、同一であっても異なっていてもよい。〕

−(−Ar2−X2−Ar3−X3−)m− (2)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar2およびAr3はそれぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr2およびAr3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Ar2およびAr3の少なくとも1つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X2およびX3は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX2およびX3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕


−(−Ar4−X4−Ar5−X5−Ar6−X6−)m− (3)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar4、Ar5およびAr6はそれぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr4、Ar5およびAr6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Ar4、Ar5およびAr6の少なくとも一つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X4、5およびX6は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX4、5およびX6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
【0032】
式(1)、式(2)、式(3)におけるAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に2価の芳香族基を表すが、2価の芳香族基としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニリレン、フルオレンジイルなどの炭化水素系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロ芳香族基などが挙げられる。好ましくは2価の炭化水素系芳香族基である。ここで、2価の芳香族は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていても良い。
【0033】
ここに、炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、アリル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、2-エチルヘキシル等の炭素数1〜10のアルキル基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアルキル基等が挙げられる。
【0034】
また置換されていても良い炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、2,2-ジメチルプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、2-メチルペンチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアルコキシ基等が挙げられる。
【0035】
また置換されていても良い炭素数6〜10のアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル等の炭素数6〜10のアリール基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアリール基等が挙げられる。
【0036】
また置換されていても良い炭素数6〜10のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜10のアリールオキシ基、これらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアリールオキシ基等が挙げられる。
【0037】
一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)におけるAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は上記のような置換基で置換されても良い2価の芳香族基を表すが、なかでもAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6としてはフェニレン、ビフェニリレンがより好ましく、さらに好ましくはフェニレンである。
【0038】
また、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)における、酸基としては、例えばカルボキシル基やホスホ基等の弱酸基、スルホ基、スルホニルイミド等の強酸基、パーフルオロアルキレンスルホ基、パーフルオロフェニレンスルホ基、パーフルオロアルキレンスルホニルイミド等の超強酸基などが挙げられる。中でも、強酸の基、超強酸の基が好ましく、例えばスルホ基、パーフルオロアルキレンスルホ基、パーフルオロフェニレンスルホ基などが挙げられる。酸基の数は芳香環の数に対して10%〜100%が好ましく、さらに好ましくは30%〜100%である。
【0039】
上記の酸基は一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)におけるAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6に直接結合しているか、もしくは、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数1〜10で-O-を含んでいるアルキレン、炭素数1〜10のオキシアルキレン、炭素数6〜10のアリーレン又は炭素数6〜10のオキシアリーレン等の連結基を介して、高分子に結合していても良い。炭素数1〜10のアルキレンとしては、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、sec-ブチレン、tert-ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、2,2-ジメチルプロピレン、シクロペンチレン、n-ヘキシレン、シクロヘキシレン、2-メチルペンチレン、2-エチルヘキシレン等の炭素数1〜10のアルキレン、これらのアルキレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアルキレン等が挙げられる。
【0040】
炭素数1〜10で-O-を含んでいるアルキレンとしては、例えば、メチレンオキシメチレン、メチレンオキシエチレン、メチレンオキシプロピレン、メチレンオキシブチレン、メチレンオキシペンチレン、メチレンオキシヘキシレン、メチレンオキシヘプチレン、メチレンオキシオクチレン、メチレンオキシノニレン、エチレンオキシメチレン、エチレンオキシエチレン、エチレンオキシプロピレン、エチレンオキシブチレン、エチレンオキシペンチレン、エチレンオキシヘキシレン、エチレンオキシヘプチレン、エチレンオキシオクチレン、プロピレンオキシメチレン、プロピレンオキシエチレン、プロピレンオキシプロピレン、プロピレンオキシブチレン、プロピレンオキシペンチレン、プロピレンオキシヘキシレン、プロピレンオキシヘプチレン、ブチレンオキシメチレン、ブチレンオキシエチレン、ブチレンオキシプロピレン、ブチレンオキシブチレン、ブチレンオキシペンチレン、ブチレンオキシヘキシレン、ペンチレンオキシメチレン、ペンチレンオキシエチレン、ペンチレンオキシプロピレン、ペンチレンオキシブチレン、ペンチレンオキシペンチレン、ヘキシレンオキシメチレン、ヘキシレンオキシエチレン、ヘキシレンオキシプロピレン、ヘキシレンオキシブチレン、へプチレンオキシメチレン、ヘプチレンオキシエチレン、ヘプチレンオキシプロピレン、オクチレンオキシメチレン、オクチレンオキシエチレン、ノナチルオキシメチレン等の-O-を含んでいるアルキレン、これらのアルキレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換した-O-を含んでいるアルキレン等が挙げられる。
【0041】
炭素数1〜10のオキシアルキレンとしては、例えば、メチレンオキシ、エチレンオキシ、n-プロピレンオキシ、イソプロピレンオキシ、n-ブチレンオキシ、sec-ブチレンオキシ、tert-ブチレンオキシ、イソブチレンオキシ、n-ペンチレンオキシ、2,2-ジメチルプロピレンオキシ、シクロペンチレンオキシ、n-ヘキシレンオキシ、シクロヘキシレンオキシ、2-メチルペンチレンオキシ、2-エチルヘキシレンオキシ等の炭素数1〜10のオキシアルキレン、これらのオキシアルキレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したオキシアルキレン等が挙げられる。
【0042】
炭素数6〜10のアリーレンとしては、例えばフェニレン、ナフチレン等の炭素数6〜10のアリーレン、これらのアリーレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したアリーレン等が挙げられる。
【0043】
炭素数6〜10のオキシアリーレンとしては、例えばフェニレンオキシ、ナフチレンオキシ等の炭素数6〜10のオキシアリーレン、これらのオキシアリーレンにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフチルオキシなどが置換したオキシアリーレン等が挙げられる。
【0044】
式(1)、(2)、(3)で表される酸基を有する高分子(B)の平均分子量としては、ポリスチレン換算の数平均分子量で表して3000〜1000000が好ましく、さらに好ましくは10000〜300000である。
【0045】
下に酸基を有する高分子(B)の具体例を示す。(下記式中tは0又は1を表す。
複数のtは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも1つは1である。)
【0046】


【0047】
一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)の高分子の中で、最も好ましくはTgが200℃以上のスーパーエンジニアリングプラスチックに酸基が導入されたポリマーである。例えば、特表平11-502249号公報で例示されているスルホン化ポリエーテルケトン系高分子や特開平10-45913号公報や特開平10-21943号公報で例示されているスルホン化ポリエーテルスルホン系高分子があげられる。
【0048】
酸基を有する高分子(B)の中では、電気伝導度が1×10-7S/cm以下であるものが好ましい。
【0049】
本発明の素子が有する正孔注入層は酸基を有する導電性高分子(A)と酸基を有する高分子(B)の他に、さらに低分子系の正孔注入材料および高分子系の正孔注入材料、導電性高分子等他の材料などを含んでいてもよい。
【0050】
ここに、低分子系の正孔注入材料としてはピラリゾン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体が例示される。特開昭63-70257号公報、同63-175860号公報、特開平2-135359号公報、同2-135361号公報、同2-209988号公報、同3-37992号公報、同3-152184号公報に記載されている正孔輸送材料等が好適に利用される。
【0051】
高分子系の正孔注入材料としては、カルバゾール基を有する高分子、芳香族アミン基を有する高分子、導電性高分子等が例示される。
カルバゾール基を有する高分子、芳香族アミン基を有する高分子として、具体的にはポリビニルカルバゾール及びその誘導体、芳香族アミン基を主鎖もしくは側鎖に有する高分子化合物などであり、特開平6−95537号公報、特開平11−35687号公報、特開2000−80167号公報に記載されているものが好適に用いられる。
【0052】
導電性高分子としてはポリアセチレン及びその誘導体、パラ位もしくはメタ位で結合したポリフェニレン及びその誘導体、2価の基を介してフェニル基が繋がった高分子(例えば-CH=CH-を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンビニレン及びその誘導体、-S-を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンサルファイド及びその誘導体、-O-を介してフェニル基が繋がったポリフェニレンオキサイド及びその誘導体が挙げられる)、五員環を構成する元素がCとH以外の元素を一つ含み2,5位で繋がった高分子(例えばNHを含む五員環が2,5位で繋がったポリピロール及びその誘導体、Sを含む五員環が2,5位で繋がったポリチオフェン及びその誘導体、Oを含む五員環が2,5位で繋がったポリフラン及びその誘導体、Seを含む五員環が2,5位で繋がったポリセレノフェン及びその誘導体、Teを含む五員環が2,5位で繋がったポリテルロフェン及びその誘導体が挙げられる)、芳香族アミン類を重合して得られる高分子(例えばポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノピレン及びその誘導体が挙げられる)が挙げられる。これらのなかで好ましくは、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体であり、より好ましくは、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体があげられる。
【0053】
本発明の有機EL素子は、正孔注入層の他に発光層を有する。
発光層に用いる発光材料としては低分子発光体、高分子発光体が使用できるが、高分子発光体が、製造プロセスが容易であるので好ましい。
【0054】
ここに低分子発光体としては、例えば、ナフタレンもしくはその誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体などを用いることができる。具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されている。
【0055】
高分子発光体としては、蛍光または燐光を示す高分子であれば制限はないが、下記一般式(4)および/または下記一般式(5)で示される繰り返し単位を有する高分子発光体が好適に使用される。
これらの高分子発光体の分子量はポリスチレン換算の数平均分子量が1×103〜1×107であり、好ましくは5×103〜1×107であり、さらに好ましくは1×104〜5×106である。
【0056】

−Ar7−(Y1k− (4)
〔式中、Ar7は、アリーレン基、2価の複素環基または金属錯体構造を有する2価の基を表し、Y1は−CR1=CR2−または−C≡C−を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはシアノ基を示す。kは0〜2の整数である。Y1が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。〕
【0057】
一般式(4)中のkは好ましくは0または1である。
【0058】


(5)


〔ここで、Ar8およびAr9はそれぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基を示す。またR3は、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、下記式(6)で示される基または下記式(7)で示される基を示す。zは1〜4の整数である。
3がアリール基または1価の複素環基の場合、該アリール基、該1価の複素環基はアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換シリル基、置換アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基等の置換基を有していてもよい。〕
【0059】
―Ar10−(−Y2−)p−R4 (6)
(ここで、Ar10はアリーレン基または2価の複素環基である。R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、または下記式(4)で示される基を示す。Y2は、 −CR5=CR6−または−C≡C−を表す。R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはシアノ基を示す。pは0〜2の整数を示す。またR4、R5およびR6がアリール基または1価の複素環基の場合、該アリール基、該1価の複素環基はアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換シリル基、置換アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基等の置換基を有していてもよい。)
【0060】


(7)

(ここで、Ar11およびAr12はそれぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基である。また、R7はアルキル基、アリール基または1価の複素環基を示す。R8は水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を示す。qは1〜4の整数である。
7およびR8がアリール基または1価の複素環基の場合、該アリール基、該1価の複素環基はアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換シリル基、置換アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基等の置換基を有していてもよい。)
【0061】
さらに、R1、R2、R4、R5、R6、R8は、化合物の安定性や製造の容易さによるが、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換シリル基、置換アミノ基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基であってもよい。
【0062】
上記Ar7〜Ar12は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換シリル基、置換アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基等の置換基を有していてもよい。
【0063】
一般式(5)で示される繰り返し単位のzは好ましくは1または2であり、一般式(6)中のpは好ましくは0または1である。一般式(7)中のqは好ましくは1または2である。
【0064】
上記式(4)、(5)、(6)および(7)において、アリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団である。ここに芳香族炭化水素としては縮合芳香族多環をもつもの、独立したベンゼン環または縮合多環2個以上が直接またはビニレン等の基を介して結合したものが含まれる。
【0065】
縮合芳香族多環をもつものとしては、環に含まれる炭素原子数が通常6〜60程度であり、ベンゼン環が2個から5個縮合した芳香族化合物が好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ペリレン、ナフタセン、ペンタセン、クリセン、コロネンなどであり、ナフタレン、アントラセンが好ましい。溶解性の観点からは、少なくとも1つの置換基を有していることが好ましい。
【0066】
独立したベンゼン環または縮合芳香族多環2個以上が直接またはビニレン等の基を介して結合したものの例としてはスチルベン基やジスチルベン基がある。さらにベンゼン環上に、アルコキシ基、アルコキシ基で置換されたアリール基、アリールオキシ基、およびアリールアルコキシ基からなる群から選ばれる基を1個または2個有してもよい。ジスチルベン基は、中央にアリーレン基または2価の複素環基を有し、2個のフェニレン基との間に、ビニレン基を有する基である。
【0067】
アリーレン基として具体的には、フェニレン基(例えば、下図の式1〜3)、ナフタレンジイル基(下図の式4〜13)、アントラセニレン基(下図の式14〜19)、ビフェニル−ジイル基(下図の式20〜25)、ターフェニル−ジイル基(下図の式26〜28)、縮合環化合物基(下図の式29〜38)などが例示される。中でもフェニレン基、ビフェニル−ジイル基、フルオレンージイル基(下図の式36〜38)が好ましい。
【0068】


【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】
また、2価の複素環基は、複素環化合物から、水素原子2個を除いた原子団である。ここに複素環化合物とは、5員環や6員環などの単独の環構造を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。さらに、複素環化合物には、単独の環構造を有する化合物以外に、縮合多環をもつもの、独立した単独の複素環化合物または縮合多環が直接またはビニレン等の基を介して結合したものが含まれる。ここで、縮合多環複素環化合物は、2つ以上の環が縮合した環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。環に含まれる炭素原子数は、6〜60程度が好ましく、より好ましくは6〜30である。具体的には、キノリン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾールなどであり、キノリン、ベンゾキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、カルバゾールが好ましい。溶解性の観点からは、少なくとも1つの置換基を有していることが好ましい。
【0074】
ここで、2価の複素環基としては、以下のものが例示される。
ヘテロ原子として、窒素を含む2価の複素環基;ピリジンージイル基(下図の式39〜44)、ジアザフェニレン基(下図の式45〜48)、キノリンジイル基(下図の式49〜63)、キノキサリンジイル基(下図の式64〜68)、アクリジンジイル基(下図の式69〜72)、ビピリジルジイル基(下図の式73〜75)、フェナントロリンジイル基(下図の式76〜78)、など。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含みフルオレン構造を有する基(下図の式79〜93)。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基:(下図の式94〜98)が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環縮合複素環基:(下図の式99〜108)が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2両体やオリゴマーになっている基:(下図の式109〜110)が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基:(下図の式111〜117)が挙げられる。
ヘテロ原子として窒素、硫黄、などを含むベンゼン環と5員環複素環が縮合した化合物基がその他のアリール基に結合している基:(下図の式118〜121)が挙げられる。
【0075】


【0076】

【0077】


【0078】


【0079】












【0080】


【0081】


【0082】



【0083】




【0084】
また上記式(4)において、金属錯体構造を有する2価の基とは、有機配位子を有する金属錯体の有機配位子から水素原子を2個除いた残りの2価の基をいう。
有機配位子を有する金属錯体の有機配位子の炭素数は、通常4〜60程度である。有機配位子としては、例えば、8−キノリノールおよびその誘導体、ベンゾキノリノールおよびその誘導体、2−フェニル−ピリジンおよびその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾールおよびその誘導体、2−フェニル−ベンゾキサゾールおよびその誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体などが挙げられる。
有機配位子を有する金属錯体の中心金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ベリリウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウムなどが挙げられる。
有機配位子を有する金属錯体としては、低分子の蛍光材料、燐光材料として公知のもの、いわゆる三重項発光錯体などが挙げられる。
【0085】
金属錯体構造を有する2価の基としては、例えば、以下の(122〜128)が例示される。
【0086】













【0087】
上記の式1〜128において、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、シアノ基等を表す。
【0088】
また上記の例において、1つの構造式中に複数のRを有しているが、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。溶媒への溶解性を高めるためには、1つの構造式中の複数のRのうち少なくとも一つが水素原子以外であることが好ましく、また置換基を含めた繰り返し単位の形状の対称性が少ないことが好ましい。また、1つの構造式中のRの1つ以上が環状または分岐のあるアルキル基を含む基であることが好ましい。複数のRが連結して環を形成していてもよい。
また、上記式においてRがアルキル基を含む置換基においては、該アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよく、直鎖でない場合、例えば、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、4−C1〜C12アルキルシクロヘキシル基などが例示される。
さらに、アルキル基を含む基のアルキル基のメチル基やメチレン基がヘテロ原子や一つ以上のフッ素で置換されたメチル基やメチレン基で置き換えられていてもよい。それらのヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが例示される。
さらに、Rがアリール基や複素環基をその一部に含む場合は、それらがさらに1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0089】
ここに、アルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20程度であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、 i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基などが挙げられ、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0090】
アルコキシ基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20程度であり、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、 i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、 i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0091】
アルキルチオ基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20程度であり、その具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、 i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、 i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基が好ましい。
【0092】
置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基は置換基から選ばれる1、2または3個の基で置換されたシリル基があげられ、炭素数が通常1〜60程度である。
置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピリシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロピルオキシシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピリシリル基、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、などが例示される。
置換アミノ基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基から選ばれる1個または2個の基で置換されたアミノ基をいい、炭素数は通常1〜60程度である。具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、カルバゾイル基などが例示される。
【0093】
アリール基は、炭素数が通常6〜60程度であり、その具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示され、 C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0094】
アリールオキシ基は、炭素数が通常6〜60程度であり、具体的には、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが例示され、 C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0095】
アリールアルキル基は、炭素数が通常7〜60程度であり、その具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基などが例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基が好ましい。
【0096】
アリールアルコキシ基は、炭素数が通常7〜60程度であり、その具体例としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基などが例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0097】
アリールアミノ基は、炭素数が通常6〜60程度であり、その具体例としてはフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基などが例示され、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基が好ましい。
【0098】
アリールアルケニル基は、炭素数が通常8〜60程度であり、その具体例としては、フェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基などが例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0099】
アリールアルキニル基は、炭素数が通常8〜60程度であり、その具体例としては、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基などが例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0100】
1価の複素環基は、炭素数が通常4〜60程度であり、その具体例としては、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基などが例示され、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。1価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。
【0101】
高分子発光体の溶媒への溶解性を高めるためには、置換基を少なくとも1つ有していることが好ましく、また置換基を含めた繰り返し単位の形状の対称性が少ないことが好ましい。
【0102】
これまで述べてきた置換基の例のうち、アルキル鎖を含む置換基においては、それらは直鎖、分岐または環状のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよく、直鎖でない場合、例えば、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、4−C1〜C12アルキルシクロヘキシル基などが例示される。高分子発光体の溶媒への溶解性を高めるためには、式(1)または式(2)で示される繰り返し単位の置換基のうちの1つ以上に環状または分岐のあるアルキル鎖が含まれることが好ましい。また、2つのアルキル鎖の先端が連結されて環を形成していてもよい。さらに、アルキル鎖の一部の炭素原子がヘテロ原子を含む基で置き換えられていてもよく、それらのヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが例示される。
さらに、置換基の例のうち、アリール基や複素環化合物基をその一部に含む場合は、それらがさらに1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0103】
一般式(5)で示される繰り返し単位のなかでは以下のものが好ましい。

ここに、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、シアノ基等を表す。
【0104】
高分子発光体は、一般式(4)や一般式(5)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。式(4)および/または式(5)で示される繰り返し単位の合計は通常全繰り返し単位の50モル%以上である。
【0105】
高分子発光体の具体例としては、例えば、WO99/13692号公開明細書、WO99/48160公開明細書、GB2340304A、WO00/53656公開明細書、WO01/19834公開明細書、WO00/55927公開明細書、GB2348316、WO00/46321公開明細書、WO00/06665公開明細書、WO99/54943公開明細書、WO99/54385公開明細書、US5777070、WO98/06773公開明細書、WO97/05184公開明細書、WO00/35987公開明細書、WO00/53655公開明細書、WO01/34722公開明細書、WO99/24526公開明細書、WO00/22027公開明細書、WO00/22026公開明細書、WO98/27136公開明細書、US573636、WO98/21262公開明細書、US5741921、WO97/09394公開明細書、WO96/29356公開明細書、WO96/10617公開明細書、EP0707020、WO95/07955公開明細書、特開2001−181618号公報、特開2001−123156号公報、特開2001−3045号公報、特開2000−351967号公報、特開2000−303066号公報、特開2000−299189号公報、特開2000−252065号公報、特開2000−136379号公報、特開2000−104057号公報、特開2000−80167号公報、特開平10−324870号公報、特開平10−114891号公報、特開平9−111233号公報、特開平9−45478号公報等に開示されているポリフルオレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体および共重合体、芳香族アミンおよびその誘導体の(共)重合体が例示される。
【0106】
本発明の有機EL素子の、発光層が、さらに正孔輸送性材料、電子輸送性材料、高分子発光体以外の発光材料、(例えば低分子発光体)から選ばれる材料を一種類以上含んでいてもよい。
【0107】
次に、上記一般式(4)および/または(5)で示される繰り返し単位を含む高分子発光体等の製造方法について説明する。
該高分子発光体が主鎖にビニレン基を有する場合には、例えば特開平5−202355号公報に記載の方法が挙げられる。すなわち、アルデヒド基を有する化合物とホスホニウム塩基を有する化合物との、もしくはアルデヒド基とホスホニウム塩基とを有する化合物のWittig反応による重合、ビニル基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物との、もしくはビニル基とハロゲン原子とを有する化合物のHeck反応による重合、アルデヒド基を有する化合物とアルキルホスホネート基を有する化合物との、もしくはアルデヒド基とアルキルホスホネート基とを有する化合物のHorner−Wadsworth−Emmons法による重合、ハロゲン化メチル基を2つあるいは2つ以上有する化合物の脱ハロゲン化水素法による重縮合、スルホニウム塩基を2つあるいは2つ以上有する化合物のスルホニウム塩分解法による重縮合、アルデヒド基を有する化合物とアセトニトリル基を有する化合物との、もしくはアルデヒド基とアセトニトリル基とを有する化合物のKnoevenagel反応による重合などの方法、アルデヒド基を2つあるいは2つ以上有する化合物のMcMurry反応による重合などの方法が例示される。
該高分子発光体が主鎖に三重結合を有する場合には、例えば、Heck反応が利用できる。
【0108】
また、該高分子発光体が主鎖にビニレン基や三重結合を有しない場合には、例えば該当するモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法などが例示される。
【0109】
これらのうち、 Wittig反応による重合、Heck反応による重合、Horner−Wadsworth−Emmons法による重合、Knoevenagel反応による重合、およびSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が、構造制御がしやすいので好ましい。
【0110】
具体的には、モノマーとなる、反応性置換基を複数有する化合物を、必要に応じ、有機溶媒に溶解し、例えばアルカリや適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。例えば、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第14巻,270−490頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1965年、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第27巻,345−390頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1982年、“オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)”,コレクティブ第6巻(Collective Volume VI),407−411頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1988年、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)、ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.),第576巻,147頁(1999年)、ジャーナル オブ プラクティカル ケミストリー(J.Prakt.Chem.),第336巻,247頁(1994年)、マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Makromol.Chem.,Macromol.Symp.),第12巻,229頁(1987年)などに記載の公知の方法を用いることができる。
【0111】
有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために、用いる溶媒は十分に脱酸素処理を施し、不活性雰囲気化で反応を進行させることが好ましい。また、同様に脱水処理を行うことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0112】
反応させるために適宜アルカリや適当な触媒を添加する。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。該アルカリまたは触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリまたは触媒を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリまたは触媒の溶液を添加するか、逆にアルカリまたは触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0113】
高分子発光体を有機EL素子に用いる場合、その純度が発光特性等の素子の性能に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに重合することが好ましい。また重合後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0114】
本発明の有機EL素子は、 陽極および陰極からなる電極間に正孔注入層と発光層とを有し、該正孔注入層が、酸基を有する導電性高分子(A)と下記一般式(1)、(2)および(3)から選ばれる酸基を有する高分子(B)とを含有すること特徴とする。
【0115】
本発明の有機EL素子は、正孔注入層、発光層以外に、正孔輸送層や電子輸送層を有していてもよい。ここに、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層をいい、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層をいう。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。ここに正孔輸送層および/または電子輸送層は、2層以上であってもよい。
【0116】
すなわち、本発明の有機EL素子としては、陽極および陰極からなる電極間に、陽極に接して正孔注入層を有し、さらに発光層を有する素子(例えば、下記a))のほかに、例えば、正孔注入層と発光層との間に、該発光層に隣接して正孔輸送層を設けたEL素子(例えば、下記b));陰極と発光層との間に、該発光層に隣接して電子輸送層を設けたEL素子(例えば、下記c));陰極と発光層との間に、該発光層に隣接して電子輸送層を設け、正孔輸送層と発光層との間に、該発光層に隣接して正孔輸送層を設けたEL素子(例えば、下記d));等が挙げられる。
【0117】
a)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0118】
本発明の有機EL素子が有する正孔注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、厚すぎると素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔注入層の膜厚としては、例えば1nm〜300nmであり、2nm〜150nmが好ましく、より好ましくは10nm〜100nmである。
【0119】
正孔注入層を形成する方法としては、前述した酸基を有する導電性高分子(A)、および高分子(B)を含有する溶液や分散液から製膜する方法や、電気化学的な重合を陽極上で行い、正孔注入層を製膜することが例示される。
溶液から、およびエマルジョン状で水やアルコールに分散している液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0120】
また、酸基を有する導電性高分子(A)、および酸基を有する高分子(B)の混合比(重量比)としては、該正孔注入材料に用いる材料や発光層に用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、混合比としては、例えば5:1〜1:20であり、好ましくは3:1〜1:10、さらに好ましくは1:1〜1:5である。
酸基を有する導電性高分子(A)の比率が大きすぎると、発光効率が低下する傾向があり、また、酸基を有する導電性高分子(A)の比率が小さすぎると、発光効率が低下する傾向がある。
【0121】
正孔注入層は透明又は半透明であること、つまり可視領域において可能な限り光を吸収しないことが望ましく、例えば可視領域における吸光度が0.2以下、好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下である。
【0122】
本発明の有機EL素子が有する発光層の膜厚としては、該発光層に用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該発光層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、さらに好ましくは20nm〜150nmである。
【0123】
該発光層は、発光材料として低分子発光体を用いる場合には、例えば、真空蒸着や高分子バインダーとの混合溶液からの製膜により形成することができる。
【0124】
また、発光材料として高分子発光体を用いる場合には、該発光体を含む溶液から製膜することができる。溶液から製膜する場合には、上記の正孔注入層と同様の製膜方法が採用される。
発光材料を溶液から成膜する際に用いる溶媒としては、高分子発光体や高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒やトルエン、キシレン、メシチレン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、n−ブチルベンゼン等の芳香族化合物系溶媒などがより好適に使用される。
【0125】
本発明の有機EL素子が電子輸送層を有する場合、該電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜300nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0126】
本発明の有機EL素子に用いる正孔輸送性材料、電子輸送性材料としては公知の低分子化合物や高分子化合物が使用できるが、高分子化合物を用いることが好ましい。
正孔輸送性材料、および電子輸送性材料の具体例として、高分子化合物としてはWO99/13692号公開明細書、WO99/48160公開明細書、GB2340304A、WO00/53656公開明細書、WO01/19834公開明細書、WO00/55927公開明細書、GB2348316、WO00/46321公開明細書、WO00/06665公開明細書、WO99/54943公開明細書、WO99/54385公開明細書、US5777070、WO98/06773公開明細書、WO97/05184公開明細書、WO00/35987公開明細書、WO00/53655公開明細書、WO01/34722公開明細書、WO99/24526公開明細書、WO00/22027公開明細書、WO00/22026公開明細書、WO98/27136公開明細書、US573636、WO98/21262公開明細書、US5741921、WO97/09394公開明細書、WO96/29356公開明細書、WO96/10617公開明細書、EP0707020、WO95/07955公開明細書、特開2001−181618号公報、特開2001−123156号公報、特開2001−3045号公報、特開2000−351967号公報、特開2000−303066号公報、特開2000−299189号公報、特開2000−252065号公報、特開2000−136379号公報、特開2000−104057号公報、特開2000−80167号公報、特開平10−324870号公報、特開平10−114891号公報、特開平9−111233号公報、特開平9−45478号公報等に開示されているポリフルオレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体および共重合体、芳香族アミンおよびその誘導体の(共)重合体が例示される。
【0127】
高分子化合物の正孔輸送性材料としては、上記に例示した文献に記載のものがより好適に用いられるが、それ以外の高分子化合物、例えば、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体なども利用可能である。
また、低分子化合物の正孔輸送性材料としてはピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体が例示される。
【0128】
高分子化合物の電子輸送性材料としては、上記に例示した文献に記載のもの以外に、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体を使用してもよい。
また、低分子化合物の電子輸送性材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属等が例示される。特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されている正孔輸送性材料や電子輸送材料等が好適に利用できる。
【0129】
上記正孔輸送層や電子輸送層は、それぞれ、正孔輸送性材料や電子輸送性材料を用いて製膜する。正孔輸送性材料や電子輸送性材料が低分子化合物の場合には、真空蒸着や高分子バインダーとの混合溶液からの製膜が例示され、高分子化合物の場合には溶液や溶融状態から製膜することができる。
【0130】
高分子化合物の正孔輸送性材料を溶液から成膜する場合、該溶液に用いる溶媒としては、その材料を溶解させるものであれば特に制限はない。具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒やトルエン、キシレン、メシチレン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、n−ブチルベンゼン等の芳香族化合物系溶媒などが好適に使用される。
正孔輸送層を溶液から成膜する場合に用いる溶媒としては、正孔輸送性材料や、必要により使用される高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0131】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送性材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液、もしくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送性材料では溶液または溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液または溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0132】
正孔輸送性材料や電子輸送性材料に必要に応じ混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリシロキサンなどが例示される。
【0133】
本発明の有機EL素子は、陽極、陰極、発光層、正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送層以外の層を有していてもよい。
このような層としては、例えば、電子注入層、膜厚10nm以下の絶縁層(界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に設ける薄いバッファー層)があげられる。
ここに、陰極に隣接して設けた層であって、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものを電子注入層という。積層する層の順番や数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0134】
電子注入層の具体的な例としては、陰極と発光層または電子輸送層との間に設けられ、陰極材料の仕事関数と発光層に含まれる発光材料の電子親和力または電子輸送層に含まれる電子輸送性材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが好適に使用される。
【0135】
上記電子注入層が導電性高分子を含む層の場合、該層は陰極と発光層との間に該電極に隣接して設けられる。該導電性高分子の電気伝導度は、10-7S/cm以上103S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5S/cm以上102S/cm以下がより好ましく、10-5S/cm以上101S/cm以下がさらに好ましい。通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103S/cm以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。ドープするイオンの種類は、カチオンであり、その例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。
電子注入層の膜厚としては、例えば1nm〜150nmであり、2nm〜100nmが好ましい。
【0136】
電子注入層の成膜方法としては、溶液から成膜することが例示され、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、製造上非常に有利である。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。また電子注入材料は、エマルジョン状で水やアルコールに分散させたものも溶液と同様な方法で、成膜することができる。
【0137】
陰極に接して設ける10nm以下の絶縁層としては、金属フッ化物や金属酸化物、または有機絶縁材料等が挙げられ、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属等の金属フッ化物や金属酸化物が好ましい。
絶縁層に用いる無機化合物の成膜方法には真空蒸着法が例示される。
【0138】
本発明の有機EL素子を形成する基板は、電極や該素子の各層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0139】
次に本発明の有機EL素子が有する陽極および陰極について説明する。
本発明の有機EL素子においては、陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であることが、発光を透過するため、発光の取出し効率がよく好都合である。
【0140】
本発明において、陽極側が透明または半透明であることが好ましいが、該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物、半透明の金属等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラス(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0141】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0142】
陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0143】
本発明の有機EL素子で用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、およびそれらのうち2つ以上の合金、あるいはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0144】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0145】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。
【0146】
陰極作製後、該有機EL素子を保護する保護層を装着していてもよい。該有機EL素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。
【0147】
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属窒酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が破損するのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム、酸化カルシウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子の性能を低下させるのを制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0148】
本発明の有機EL素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト等として用いることができる。
【0149】
本発明の有機EL素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる重合体を塗り分ける方法や、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動でも、アモルファスシリコンや低温ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタなどと組み合わせたアクティブ駆動でもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【0150】
本発明の組成物は、酸基を有する導電性高分子(A)と、上記一般式(1)、(2)および(3)から選ばれる酸基を有する高分子(B)とを含有する。
【0151】
本発明の組成物は、導電性薄膜、帯電防止薄膜、有機半導体薄膜、太陽電池、電荷注入性薄膜(正孔注入層)等の薄膜の材料として有用である。
【0152】
この組成物の導電性高分子(A)と高分子(B)との好ましい混合比は、その用途により異なるが例えば電荷注入性薄膜(正孔注入層)の材料として用いる場合には導電性高分子(A)と高分子(B)との重量の比率が5:1〜1:20の範囲である
【0153】
薄膜の厚みは、その用途により異なるが、通常0.01〜5μmである。
薄膜を例えば正孔注入層として用いる場合には膜厚は通常1nm〜300nmである。また、帯電防止用などの用途で用いる場合、膜厚は0.01μm〜5μm程度である(例えば特開2003-039618)。
【0154】
薄膜として様々な用途で用いられる場合、可視領域に吸収が少ないことが有用である。例えばこれら組成物からなる薄膜を正孔注入材料に用いて有機EL素子を作製する場合、通常ITOから光を取り出すので、薄膜は可視領域(波長400〜800nm)で吸収があると発光効率が小さくなる。したがって、これらの薄膜の吸光度は0.2以下であることが好ましく、より好ましくは0.1以下である。
【0155】
薄膜が導電性薄膜である場合、その電気伝導度は1×10-6S/cm以上である。
【0156】
これらの組成物が様々な用途で用いられる場合、この組成物の特徴として半導体〜伝導体を示す伝導度を有することが挙げられる。
【0157】
これらの組成物は帯電防止層を達成するために十分な伝導度を持ち、基体の被服に適する溶液を提供することができる。
【0158】
薄膜はある程度の電気伝導度を持ち有機半導体薄膜として利用できる。近年、有機半導体薄膜が使用されている分野は多岐にわたり、有機LED、太陽電池に留まらず、二次電池、燃料電池、コンデンサー、センサー、電子部品、有機TFT、生体機能デバイス、有機半導体レーザーなどに展開されている。
【0159】
太陽電池は、太陽や電球などの光エネルギーを受けた物質が電気エネルギーを発生する。この太陽電池は無機化合物の半導体を用いるものが主流であったが、低コストや環境への問題から有機化合物を用いる研究が盛んに行われている。本発明の組成物は、カソード電極、もしくは電荷輸送層の材料として用いることが可能である。
【0160】
本発明の組成物は発光素子用等の電荷注入薄膜として用いることができる。
【0161】
本発明の溶液組成物は、本発明の組成物にさらに極性溶媒を含有させたものである。

本発明の溶液組成物中の組成物の割合は溶液組成物の全重量に対して、通常0.1重量%〜50重量%程度である。
【0162】
極性溶媒としては、双極子モーメントが1.4以上3.0以下のものが好ましく、その例としては、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、スルフォキシド系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。好ましくは炭素数3以下のアルコール系溶媒である。
エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。好ましくは、炭素数6以下のエーテル系溶媒である。
ケトン系溶媒としては、アセトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、5−メチル−3−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが挙げられる。好ましくは、炭素数10以下のケトン系溶媒である。
エステル系溶媒としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。好ましくは、炭素数10以下のエステル系溶媒である。
アミン系溶媒としてはピリジンなどが挙げられる。好ましくは、炭素数10以下のアミン系溶媒である。
スルフォキシド系溶媒としては、ジメチルスルフォキシドなどが挙げられる。好ましくは、炭素数10以下のスルフォキシド系溶媒である。
アミド系溶媒としてはジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。好ましくは炭素数10以下のアミド系溶媒である。
ここで極性溶媒としては、好ましくは水、炭素数3以下のアルコール系溶媒、炭素数4以下のエーテル系溶媒、炭素数5以下のケトン系溶媒、炭素数4以下のスルフォキシド系溶媒である。さらに、好ましくは水である。
【0163】
本発明の組成物は共に極性基を有しているため双極子モーメントが高い溶媒に可溶である。この組成物が溶解した溶液を得られることで各用途での加工が容易になる。
【実施例】
【0164】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、重量平均分子量、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の平均分子量を求めた。
【0165】
合成例1 (化合物Aの合成)


化合物A
不活性雰囲気下1lの四つ口フラスコに2,8−ジブロモジベンゾチオフェン 7gとTHF 280mlを入れ、室温で撹拌、溶かした後、−78℃まで冷却した。n−ブチルリチウム 29ml(1.6モルヘキサン溶液)を滴下した。滴下終了後、温度を保持したまま2時間撹拌し、トリメトキシボロン酸 13gを滴下した。滴下終了後、ゆっくり室温まで戻した。3時間室温で撹拌後、TLCで原料の消失を確認した。5%硫酸 100mlを加えて反応を終了させ、室温で12時間撹拌した。水を加えて洗浄し、有機層を抽出した。溶媒を酢酸エチルに置換した後、30%過酸化水素水 5mlを加え、40℃で5時間撹拌した。その後有機層を抽出し、10%硫酸アンモニウム鉄(II)水溶液で洗浄後乾燥、溶媒を除去することにより、茶色の固体 4.43gを得た。LC−MS測定からは二量体などの副生成物も生成しており、化合物Aの純度は77%であった(LC面百)。
MS(APCI(−)):(M−H)- 215
【0166】
合成例2 (化合物Bの合成)


化合物B
不活性雰囲気下で200mlの三つ口フラスコに化合物A 4.43gと臭化n−オクチル 25.1g、および炭酸カリウム 12.5g(23.5mmol)を入れ、溶媒としてメチルイソブチルケトン 50mlを加えて125℃で6時間加熱還流した。反応終了後、溶媒を除き、クロロホルムと水で分離、有機層を抽出し、さらに水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラム(展開溶媒:トルエン/シクロヘキサン=1/10)で精製することにより、8.49g(LC面百97%、収率94%)の化合物Bを得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.91(t、6H)、1.31〜1.90(m、24H)、4.08(t、4H)、7.07(dd、2H)、7.55(d、2H)、7.68(d、2H)
【0167】
合成例3 (化合物Cの合成)

化合物C
【0168】
100ml三つ口フラスコに化合物B 6.67gと酢酸 40mlを入れ、オイルバスでバス温度140℃まで昇温した。続いて、30%過酸化水素水 13mlを冷却管から加え、1時間強く撹拌した後、冷水180mlに注いで反応を終了させた。クロロホルムで抽出、乾燥後溶媒を除去することによって、6.96g(LC面百90%、収率97%)の化合物Cを得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.90(t、6H)、1.26〜1.87(m、24H)、4.06(t、4H)、7.19(dd、2H)、7.69(d、2H)、7.84(d、2H)
MS(APCI(+)):(M+H)+ 473
【0169】
合成例4 (化合物Dの合成)



化合物D
不活性雰囲気下200ml四つ口フラスコに化合物C 3.96gと酢酸/クロロホルム=1:1混合液 15mlを加え、70℃で撹拌し、溶解させた。続いて、臭素 6.02gを上記の溶媒 3mlに溶かして加え、3時間撹拌した。チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて未反応の臭素を除き、クロロホルムと水で分離、有機層を抽出、乾燥した。溶媒を除去し、シリカゲルカラム(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=1/4)で精製することにより、4.46g(LC面百98%、収率84%)の化合物Dを得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.95(t、6H)、1.30〜1.99(m、24H)、4.19(t、4H)、7.04(s、2H)、7.89(s、2H)
MS(FD+)M+ 630
【0170】
合成例5(化合物Eの合成)


化合物E
不活性雰囲気下200ml三つ口フラスコに化合物D 3.9gとジエチルエーテル 50mlを入れ、40℃まで昇温、撹拌した。水素化アルミニウムリチウム 1.17gを少量ずつ加え、5時間反応させた。水を少量ずつ加えることによって過剰な水素化アルミニウムリチウムを分解し、36%塩酸 5.7mlで洗浄した。クロロホルム、水で分離、有機層を抽出後乾燥した。シリカゲルカラム(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=1/5)で精製することにより、1.8g(LC面百99%、収率49%)の化合物Eを得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.90(t、6H)、1.26〜1.97(m、24H)、4.15(t、4H)、7.45(s、2H)、7.94(s、2H)
MS(FD+)M+ 598
【0171】
MS(APCI(+))法によれば、615、598にピークが検出された。
【0172】
合成例6
<高分子化合物1の合成>
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(26g、0.047mol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジイソペンチルフルオレン(5.6g、0.012mol)および2,2’−ビピリジル(22g、0.141mol)を脱水したテトラヒドロフラン1600mLに溶解した後、窒素でバブリングして系内を窒素置換した。窒素雰囲気下において、この溶液に、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(40g、0.15mol)加え、60℃まで昇温し、8時間反応させた。反応後、この反応液を室温(約25℃)まで冷却し、25%アンモニア水200mL/メタノール1200mL/イオン交換水1200mL混合溶液中に滴下して30分間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して風乾した。その後、トルエン1100mLに溶解させてからろ過を行い、ろ液をメタノール3300mLに滴下して30分間攪拌した。析出した沈殿をろ過し、メタノール1000mLで洗浄した後、5時間減圧乾燥した。得られた共重合体の収量は20gであった(以後、高分子化合物1と呼ぶ)。高分子化合物1のポリスチレン換算の平均分子量および重量平均分子量は、それぞれMn=4.6×104、Mw=1.1×105であった。
【0173】
合成例7
<高分子化合物2の合成>
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(5.8g、0.0105mol)、上記 N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−n−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(3.1g、0.0045mmol)および2,2’−ビピリジル(6.6g)を脱水したテトラヒドロフラン20mLに溶解した後、窒素でバブリングして系内を窒素置換した。窒素雰囲気下において、この溶液に、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(12.0g)加え、60℃まで昇温し、攪拌しながら3時間反応させた。反応後、この反応液を室温(約25℃)まで冷却し、25%アンモニア水50mL/メタノール約200mL/イオン交換水約300mL混合溶液中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、トルエン約350mLに溶解させた。その後、1N塩酸約200mLを加えて1時間攪拌し、水層の除去して有機層に4%アンモニア水約200mLを加え、1時間攪拌した後に水層を除去した。有機層にイオン交換水約200mLを加え攪拌した後水層を除去した。有機層はメタノール約700mLに滴下して1時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、トルエン約350mLに溶解させた。その後、アルミナカラムを通して精製を行い、回収したトルエン溶液をメタノール約700mlに滴下して1時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させた。得られた共重合体(以後、高分子化合物2と呼ぶ)の収量は3.5gであった。ポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量は、それぞれMn=3.4×104、Mw=5.4×104であった。
【0174】
参考合成例8
<高分子化合物3水溶液の合成>(スルフォン化ポリアニリン水溶液の合成)
スルフォン化ポリアニリン水溶液は、公知文献(Macromoleclues 1996,29,p3950; J.A.C.S. 1990,112,p2800)に記載の方法に従って合成した。
発煙硫酸80mlをフラスコに入れ氷浴で冷却しながら、エメラルジンベースポリアニリン(Aldrich社製)1.0gを固体のまま分割して仕込んだ。仕込み終了後に氷浴を外してそのまま一晩攪拌した。
反応終了後、1リットルのビーカーに400mlのメタノールを入れ氷浴で冷却しながら反応液を、内温を15〜20℃付近になるように30分かけて少しずつ加えた。さらにアセトン200mlを加えて攪拌した後、ガラスフィルターで沈殿をろ過した。100mlのメタノールでリパルプ洗浄しながら洗浄ろ過する作業を4回繰り返した。緑色の固体が約1.1g得られた。
さらに0.1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液50mlに溶解させた。深青色の液体になった。三光純薬株式会社製透析用セルローズチューブ(サイズ 36/32)を用いて透析により過剰の水酸化ナトリウムを除いた後、イオン交換樹脂(Aldrich社製)を通して緑色の水溶液を約50g得た。固形分は約1.7%であった。
得られたスルフォン化ポリアニリンの組成は元素分析で確認した。得られた結果は、スルフォン化率54%および含水10モル%とした場合の計算値とよく一致した。
【0175】
【表1】

※1:含水10モル%で補正した分析値
※2:含水10モル%、スルフォン化率54%の場合の計算値
【0176】
参考合成例9
<高分子化合物4の合成>
スミカエクセルPES5200P(住友化学工業製)1.50gを10%発煙硫酸20gに溶解させ室温で3日間スルホン化した。その後ポリマーの硫酸溶液を氷水に注いで希釈し、ポリマーの希硫酸溶液を透析膜(UC36−32−100、三光純薬株式会社より購入)で純水流水中2日間透析し硫酸を除去した。透析後の水溶液を濃縮、乾燥し、スルホン化PESを得た。
【0177】
実施例1
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、高分子化合物3水溶液と高分子化合物4の水溶液を重量比で1:2の割合になるように加えて、よく混合した後、この混合液をスピンコートにより1000rpmで成膜した。その後、窒素雰囲気下においてホットプレート上で110℃で10分間乾燥した。次に、上記で得た高分子化合物1と高分子化合物2を3:7となるように混合して、トルエンに溶解させた。このとき、固形分の濃度は約1.5wt%となるように調製した。このトルエン溶液を用いてスピンコートにより1400rpmで成膜した。さらに、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、陰極として、フッ化リチウムを約4nm、カルシウムを約5nm、次いでアルミニウムを約70nm蒸着して、有機EL素子を作製した。なお真空度が、1×10-4Pa以下に到達したのち、金属の蒸着を開始した。
得られた素子に電圧を印加したところ、ピーク波長468nmの青色の発光を示し、1cd/cm2となる発光開始電圧は3.1Vであった。
得られた素子に電圧を印加し、電流密度を25mA/cm2に設定すると初期輝度が240cd/m2であった、輝度が60%に減衰するまでの時間は70時間であった。
【0178】
比較例1
実施例1で、高分子化合物2の代わりにポリアクリル酸を用いた以外は、実施例1と同様に素子を作成した。この素子は、464nmの発光ピークで青色の発光を示した。1cd/cm2となる発光開始電圧は4.6Vであった。最高の効率は0.2cd/Aであった。得られた素子に電圧を印加し、電流密度を25mA/cm2に設定すると初期輝度が71cd/m2であった、輝度が60%に減衰するまでの時間は0.4時間であった。
【0179】
比較例2
実施例1で、高分子化合物2の代わりにポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様に素子を作成した。この素子は、464nmの発光ピークで青色の発光を示した。1cd/cm2となる発光開始電圧は2.9Vであった。最高の効率は2.1cd/Aであった。得られた素子に電圧を印加し、電流密度を25mA/cm2に設定すると初期輝度が308cd/m2であった、輝度が60%に減衰するまでの時間は7.2時間であった。
【0180】
比較例3
実施例1で、高分子化合物2の代わりにポリスチレンスルホン酸を用いた以外は、実施例1と同様に素子を作成した。この素子は、464nmの発光ピークで青色の発光を示した。1cd/cm2となる発光開始電圧は3.2Vであった。得られた素子に電圧を印加し、電流密度を25mA/cm2に設定すると初期輝度が305cd/m2であった、輝度が60%に減衰するまでの時間は35時間であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極および陰極からなる電極間に正孔注入層と発光層とを有し、該正孔注入層が、酸基を有する導電性高分子(A)と下記一般式(1)、(2)および(3)から選ばれる、酸基を有する高分子(B)とを含有すること特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

−(−Ar1−X1−)m− (1)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar1は2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr1は、同一であっても異なっていてもよく、Ar1の少なくとも1つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X1は、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX1は、同一であっても異なっていてもよい。〕

−(−Ar2−X2−Ar3−X3−)m− (2)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar2およびAr3はそれぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr2およびAr3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Ar2およびAr3の少なくとも1つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X2およびX3は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX2およびX3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕


−(−Ar4−X4−Ar5−X5−Ar6−X6−)m− (3)
〔式中、mは10以上の整数を表し、Ar4、Ar5およびAr6はそれぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基で置換されていてもよく、複数のAr4、Ar5およびAr6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Ar4、Ar5およびAr6の少なくとも一つに酸基が直接もしくは連結基を介して結合している。X4、5およびX6は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CR'''R''''−または直接結合を表し、R'''およびR''''はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数6〜10のアリールオキシ基を表し、複数のX4、5およびX6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項2】
酸基を有する導電性高分子(A)が酸基を有するポリアセチレン、酸基を有するポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、酸基を有するポリフェニレンサルファイド、酸基を有するポリフェニレンオキサイド、酸基を有するポリピロール、酸基を有するポリチオフェン、酸基を有するポリフラン、酸基を有するポリセレノフェン、酸基を有するポリテルロフェン、酸基を有するポリアニリンまたは酸基を有するポリアミノピレンである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
酸基を有する導電性高分子(A)の酸基がカルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、スルホニルイミド、パーフルオロアルキレンスルホ基、パーフルオロフェニレンスルホ基またはパーフルオロアルキレンスルホニルイミドである請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
発光層が、下記一般式(4)で示される繰り返し単位を少なくとも一種類含み、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×103〜1×107である高分子発光体を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

−Ar7−(Y1k− (4)
〔式中、Ar7は、アリーレン基、2価の複素環基または金属錯体構造を有する2価の基を表し、Y1は−CR1=CR2−または−C≡C−を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはシアノ基を示す。kは0〜2の整数である。Y1が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項5】
発光層が、さらに正孔輸送材料、電子輸送性材料および発光材料から選ばれる材料を一種類以上含むことを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とする面状光源。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とするセグメント表示装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
酸基を有する導電性高分子(A)と、上記一般式(1)、(2)および(3)から選ばれる酸基を有する高分子(B)とを含有する組成物。
【請求項11】
酸基を有する導電性高分子(A)と酸基を有する高分子(B)との重量の比率が5:1〜1:20であることを特徴とする請求項10記載の組成物。
【請求項12】
請求項10または11に記載の組成物がさらに極性溶媒を含有することを特徴とする溶液組成物。
【請求項13】
請求項10または11に記載の組成物を含有し、厚さが0.01〜5μmであることを特徴とする薄膜。
【請求項14】
波長400〜800nmにおける吸光度が0.2以下であることを特徴とする請求項13に記載の薄膜。
【請求項15】
請求項10または11に記載の組成物を含有し、電気伝導度1×10-6S/cm以上の導電性薄膜。
【請求項16】
請求項10または11記載の組成物を含有する帯電防止薄膜。
【請求項17】
請求項10または11に記載の組成物を含有する有機半導体薄膜。
【請求項18】
請求項10または11に記載の組成物を含有する太陽電池。
【請求項19】
請求項10または11に記載の組成物を含有する発光素子の電荷注入性薄膜。

【公開番号】特開2006−19357(P2006−19357A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193261(P2004−193261)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】