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有機エレクトロルミネッセンス素子
説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】ホール輸送層の改良によって、より長寿命化を達成するようにした、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】対向する2つの電極1,2間に、ホスト材料中に発光性のドーパントを含有して形成される有機発光層3とホール輸送層4とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。ホール輸送層4の少なくとも有機発光層3に接する部分に、ホール輸送層4を構成する主成分と、有機発光層3のホスト材料と、ホール輸送層4を構成する主成分の電子親和力以上の電子親和力を有しかつ有機発光層3のホスト材料とは異なる有機半導体材料とを混合した混合層6を備える。また混合層6に混合した上記有機半導体材料は発光への寄与率が5%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイ等に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものであり、詳しくは、改良された電子輸送層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイなどとして用いられる発光体は、高効率照明器具の実現、照明器具形状の自由化、液晶表示機を備える電子機器の小型化、長時間駆動化、フラットパネルディスプレイの薄型化等のために、高効率であり、かつ薄く軽量であるものが近年強く要求されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、以前より、上記の要求を満たす可能性を有する発光体として注目を集めており、盛んに研究開発が行なわれている。特に近年、電流−光変換効率100%を原理的に有するリン光発光材料の登場に伴ない、有機エレクトロルミネッセンス素子の効率は飛躍的に増大し、有機エレクトロルミネッセンス素子の実用化可能領域は大きく広がってきた。既に、緑、赤などの単色発光素子に関しては、実デバイスとして電流−光変換効率100%に相当すると考えられる高効率発光素子が実際に実現されている。また青色発光素子に関しては、青色発光のエネルギーが大きいためにそれに適した発光材料、周辺材料の開発が進まず、他の発光色を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に対して開発が遅れていたが、最近になって青色発光素子に適した発光材料や周辺材料が開発され、青色発光素子の効率も他色と同等以上に向上している。また、白色発光素子においても、60lm/W、外部量子効率30%といった高性能のものが報告されている。
【0004】
上記のように、有機エレクトロルミネッセンス素子において、効率はいわゆる理論値に近づきつつあるため、最近はむしろ、素子の長寿命化の観点での研究が盛んになっている。例えば新規材料を用いることによる長寿命化は、材料の熱安定性の向上、電気的安定性の向上などによって実現されていると考えられるが、初期輝度1000cd/mの場合に半減寿命10万時間、といった値も報告されるようになっている。
【0005】
また、デバイス構造の観点から長寿命化を達成する場合には、例えば特許文献1には、キャリア輸送層にキャリア輸送用のドーパントをドープする方法によって、また特許文献2には、キャリア輸送層に特定のエネルギー準位を有するドーパントをドープする方法によって、さらに特許文献3には、ホール輸送層にそのホール輸送材料よりも還元電位が小さい電子トラップ材料を含有させる方法によって、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命が向上することが記載されている。
【特許文献1】特開2000−164362号公報
【特許文献2】特許3332491号公報
【特許文献3】特開2005−310741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子を照明に応用する場合、現状の蛍光灯の輝度、すなわち数千〜一万cd/mで使用することが必要となり、その際の寿命は上記の寿命より短くなり、例えば数千時間程度にまで低下する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子をディスプレイに応用する場合には、焼き付きの発生、すなわち5%程度の輝度劣化が寿命であると考えられるが、この場合にも寿命は数千時間程度に留まることになる。
【0007】
従って、材料の改良は勿論のこと、さらにデバイス構造の観点からも、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化をさらに検討する必要があるのが現状である。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ホール輸送層の改良によって、より長寿命化を達成するようにした、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホスト材料中に発光性のドーパントを含有して形成される有機発光層3とホール輸送層4とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子に於いて、ホール輸送層4の少なくとも有機発光層3に接する部分に、ホール輸送層4を構成する主成分と、有機発光層3のホスト材料と、ホール輸送層4を構成する主成分の電子親和力以上の電子親和力を有しかつ有機発光層3のホスト材料とは異なる有機半導体材料とを混合した混合層6を備え、混合層6に混合した上記有機半導体材料は発光への寄与率が5%以下であることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、ホール輸送層4に上記のような混合層6を形成することによって、有機発光層3とホール輸送層4の間のキャリア注入障壁の存在に由来する劣化や、ホール輸送層4への電子侵入によるホール輸送材料の還元劣化を低減することができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命を向上させることができるものである。特に、ホール輸送層4を構成する主成分の電子親和力以上の電子親和力を有しかつ有機発光層3のホスト材料とは異なる有機半導体材料を混合することによって、混合層6内で電子をトラップすることができ、ホール輸送層4の劣化をより効率よく抑制することができると共に、混合層6の形成に伴って生じることがある効率特性への悪影響を回避することが可能になるものである。
【0011】
また請求項2の発明は、請求項1において、混合層6に混合した上記有機半導体材料の電子親和力が、有機発光層3のホスト材料の電子親和力以上であることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、混合層6内での上記有機半導体材料による電子のトラップの効率が向上するものであり、ホール輸送層4の劣化をより良好に抑制することができ、さらなる長寿命化が可能となるものである。
【0013】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、混合層6に混合した上記有機半導体材料が、有機発光層3中に含有される発光性のドーパントと同じ物質であることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、有機発光層3から混合層6へ進行してきた電子がより効率よく上記有機半導体材料でトラップされるものであり、素子の一層の長寿命化が可能となるものである。加えて、混合層6への電子進入が多い場合に、上記有機半導体材料からの発光が、有機発光層3からの発光に与える影響を低減することも可能になるものである。
【0015】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、混合層6内での、有機発光層3のホスト材料と上記有機半導体材料の少なくとも一方の濃度が、有機発光層3の側が陽極の側よりも高いことを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、混合層6のうち、電子によってより劣化を受け易い部位を有機発光層3のホスト材料や上記有機半導体材料で積極的に保護することができると共に、電子によるダメージを受け難い部分は最小限度の保護となるものであり、発光特性など他の特性とのトレードオフを回避することができ、高効率・長寿命な有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることが可能になるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対向する2つの電極1,2間に、ホスト材料中に発光性のドーパントを含有して形成される有機発光層3とホール輸送層4とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子に於いて、長寿命かつ高効率を呈する有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0019】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、2つの電極1,2、すなわち陽極(アノード)と陰極(カソード)の間に有機発光層3を備えて形成されるものである。図1はこのような有機エレクトロルミネッセンス素子の構造の一例を示すものであり、陽極となる電極1と陰極となる電極2の間に形成される有機発光層3と、有機発光層3と電極1との間に形成されるホール輸送層4と、有機発光層3と電極2との間に形成される電子輸送層5とを備え、さらにホール輸送層4の有機発光層3の側の、少なくとも有機発光層3に接する一部分に本発明の特徴構成である混合層6を形成し、これらを基板7の表面に積層したものである。図1の実施の形態では、電極1は光透過性の電極として透明な基板7の表面に形成してあり、電極2は光反射性の電極として形成してある。また、ホール輸送層4や電子輸送層5の電極1,2側には、ホール注入層や電子注入層などを設けるようにしてもよいが、図1ではこれらの図示は省略してある。
【0020】
本発明において、ホール輸送層4の有機発光層3と接する部分の少なくとも一部に形成される混合層6は、ホール輸送層4を構成する主成分と、有機発光層3のホスト材料と、さらにホール輸送層4を構成する主成分の電子親和力以上の電子親和力を有しかつ有機発光層3のホスト材料とは異なる有機半導体材料を混合したものである。ここで、ホール輸送層4を構成する主成分とは、ホール輸送層4中の含有比率が25質量%を超えるホール輸送材料をいうものであり、25質量%を超える材料が複数種ある場合には、いずれの材料であってもよい。尚、電子親和力とは、各材料の吸収スペクトルの長波長端から見積もられる化学的エネルギーギャップの値を、イオン化ポテンシャルの値から差し引くことによって見積もられる値であり、イオン化ポテンシャルは、光電子分光測定によって算出される値である。
【0021】
混合層6において上記の各成分の混合比率は特に限定されるものではないが、ホール輸送層4を構成する主成分と有機発光層3のホスト材料とは、99:1〜1:99の質量比率の範囲で混合することが好ましい。
【0022】
ここで、ホール輸送層4の主成分と有機発光層3のホスト材料の混合濃度は、混合層6の厚み方向に一定になるようにしてもよいが、混合層6を複数の層で形成して、有機発光層3の側の層において有機発光層3のホスト材料の濃度が高く、陽極となる電極1の側の層において有機発光層3のホスト材料の濃度が低くなるようにしてもよく、あるいは混合層6を単層で形成して、有機発光層3に近い側は有機発光層3のホスト材料の濃度が高く、電極1に近い側は有機発光層3のホスト材料の濃度が低くなるように、混合濃度を傾斜させるようにしてもよい。このように、混合層6内での有機発光層3のホスト材料の濃度が、有機発光層3の側で高く陽極の電極1の側で低くなるようにすることによって、混合層6のうち、電子によってより劣化を受け易い有機発光層3の側の部位を、有機発光層3のホスト材料による電子のトラップによって保護することができるものであり、また電子によるダメージを受け難い部分は有機発光層3のホスト材料の濃度を低くして、混合層6の全体での有機発光層3のホスト材料の比率が高くなり過ぎないようにし、混合層6中のホスト材料が有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性に悪影響を及ぼすことを防ぐことができるものである。
【0023】
また混合層6において、有機発光層3のホスト材料の電子親和力とホール輸送層を構成する主成分の電子親和力は、有機発光層3のホスト材料の電子親和力≧ホール輸送層4を構成する主成分の電子親和力の関係になるように設定するのが好ましい。特に両者の電子親和力の差が小さい場合には、有機発光層3のホスト材料とホール輸送層4を構成する主成分の混合質量比は1:99〜20:80程度のように、有機発光層3のホスト材料の含有量を小さくすることが好ましい。
【0024】
このように、有機発光層3のホスト材料の電子親和力がホール輸送層4を構成する主成分の電子親和力以上であることによって、混合層6内での有機発光層3のホスト材料による電子のトラップの効率が向上するものである。
【0025】
さらに、混合層6に混合される、ホール輸送層4を構成する主成分の電子親和力以上の電子親和力を有しかつ有機発光層3のホスト材料とは異なる有機半導体材料(以下単に有機半導体材料という)の混合比率は、上記の2成分(ホール輸送層4を構成する主成分と有機発光層3のホスト材料)の合計量に対して、0.1/100倍〜2倍の質量比が好ましい。また後述のようにこの有機半導体材料の発光への寄与率が5%以下となるような量の範囲に調整することが好ましく、一般的には1/100倍〜1倍の質量比が特に好ましい。
【0026】
ここで、有機半導体材料の混合濃度は上記と同様に、混合層6の厚み方向に一定になるようにしてもよいが、混合層6を複数の層で形成して、有機発光層3の側の層は有機半導体材料の濃度が高く、陽極となる電極1の側の層は有機半導体材料の濃度が低くなるようにしてもよく、あるいは混合層6を単層で形成して、有機発光層3に近い側は有機半導体材料の濃度が高く、電極1に近い側は有機半導体材料の濃度が低くなるように、混合濃度を傾斜させるようにしてもよい。このように、混合層6内での有機半導体材料の濃度が、有機発光層3の側で高く陽極の電極1の側で低くなるようにすることによって、混合層6のうち、電子によってより劣化を受け易い有機発光層3の側の部位を、有機半導体材料による電子のトラップによって保護することができるものであり、また電子によるダメージを受け難い部分は有機半導体材料の濃度を低くして、混合層6の全体での有機半導体材料の比率が高くなり過ぎないようにし、混合層6中の有機半導体材料が有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性に悪影響を及ぼすことを防ぐことができるものである。
【0027】
本発明においてこの有機半導体材料としては、上記の条件を満たしている限り特に限定されるものではないが、芳香族炭化水素化合物、アリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アルミニウム−有機錯体、キナクリドン誘導体、アントラキノン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、有機−金属錯体など任意のものを用いることができる。例えば、ターシャリーブチル基を4つ備えたペリレン、ルブレン、フェニル基を4つ備えたペンタセン、ビスナフチルアントラセンなどが例としてあげられるが、この限りではない。また、有機半導体材料は、可逆な還元−酸化特性を示すものであることが好ましい。素子内と同一の還元酸化条件ではないが、例えばサイクリックボルタンメトリー測定により、複数回の還元−酸化過程において、再現性のある還元酸化プロファイルを示す材料の中から、好ましい有機半導体材料を選定することができる。
【0028】
また本発明において、混合層6に混合される上記の有機半導体材料の発光への寄与率が5%以下になるようにすることが必要である。有機半導体材料の発光への寄与率とは、有機エレクトロルミネッセンス素子の全体の発光量に対する、混合層6中の有機半導体材料による発光量の比率をいうものである。有機エレクトロルミネッセンス素子において発光は、主として有機発光層3において行われるが、混合層6中の有機半導体材料が発光するということは有機発光層3から混合層6への過剰の電子が存在するということであり、有機エレクトロルミネッセンス素子の全体の発光に対する混合層6中の有機半導体材料による発光の寄与率が5%を超えて大きくなると、過剰の電子の存在によって混合層6が劣化し易くなるものである。有機半導体材料による発光の寄与率は小さいほど好ましく、寄与率1%以下がより好ましい。
【0029】
有機半導体材料の発光への寄与率を5%以下にするための方法としては、公知の有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法を任意に用いることができるが、例えばホール輸送性の高いホール輸送材料を用いてホール輸送層4を形成したり、より良好なホール注入の可能なホール注入層もしくは陽極を用いたり、あるいは、有機発光層3もしくは電子輸送層5の膜厚を厚くすることなど、ホール量を増大させる方法と、電子輸送量を低減する方法のうち、少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0030】
ここで、有機半導体材料の発光への寄与率の算出について説明する。混合層6中の有機半導体材料からも発光がみられる場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルは、有機発光層3によるものと、有機半導体材料によるものが合成されたものである。そして、混合層6に有機半導体材料を含有しない有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを、また有機半導体材料の発光スペクトルを、それぞれ予め測定しておき、この2つの発光スペクトルと、上記の混合層6に有機半導体材料を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルとを比較して解析し、この素子の発光スペクトルが2つの発光スペクトルを何%ずつもっているか、つまりこの2つの発光スペクトルが何%ずつ混合されたものであるかを算出することによって、有機半導体材料の発光への寄与率を求めることができるものである。また、混合層6中の有機半導体材料が有機発光層3中に含有される発光性のドーパントと同じ物質である場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光層3の位置から発光したスペクトルと、それより位置のずれている混合層6から発光したスペクトルには若干の相違が生じるので、モデルデバイスとして混合層6には発光性のドーパントを含有しない素子を作製し、あとはこのモデルデバイスの発光スペクトルと比較してスペクトル解析を行なうことによって、寄与率を求めることができる。
【0031】
ここで、本発明において有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光層3のホスト材料は、そのホール輸送性が電子輸送性よりも高いものから選択していることが好ましい。このようにホール輸送性が電子輸送性よりホスト材料を用いる場合、発光領域が有機発光層3−電子輸送層5界面近傍に位置するため、ホール輸送層4に添加した有機半導体材料の発光をより低減することが可能になるものである。勿論、有機半導体材料が発光しないようなエネルギーの関係にある場合には、その限りではない。
【0032】
ホール輸送層4の有機発光層3側の少なくとも一部に、上記のような組成を有する混合層6を設けることにより、長寿命かつ高効率を呈する有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができるものである。すなわちまず、混合層6の構成成分として有機発光層3のホスト材料とホール輸送層4を構成する主成分が含有されているため、有機発光層3とホール輸送層4の界面におけるエネルギー障壁の形成を低減することができ、界面に蓄積されるキャリアの総数を減少させ、界面に蓄積されるキャリアによるホール輸送層4の劣化を低減することができることが考えられる。またホール輸送材料の電子による劣化を有機発光層3のホスト材料が抑制することも長寿命化の理由の一つとして考えられる。また、有機発光層3のホスト材料にトラップされた電子により局所的な電界が生じ、ホールがより効率よく注入され、結果として駆動電圧の低減や電子の消失によって寿命特性の向上を実現することができることも考えられる。
【0033】
しかし、混合層6が単に有機発光層3のホスト材料と電子輸送層5を構成する主成分を混合したのみであると、場合によっては素子寿命が変化しないかまたはより短くなることもあり得る。これは、有機発光層3とホール輸送層4の界面に明確なキャリア注入障壁が形成されないために、電子がより深くホール輸送層4側に進入し、かつ有機発光層3のホスト材料が上記のような効果を十分に発現できないことにより、ホール輸送層4のホール輸送材料の劣化が低減されないかもしくは逆に促進されることによるものである。
【0034】
このような問題に対処するために、本発明では混合層6にさらにホール輸送層4の主成分材料の電子親和力以上の電子親和力を有する有機半導体材料を混合することにより、上記のようなキャリアのホール輸送層4への到達を制限し、あるいはホール輸送層4のホール輸送材料の還元劣化を抑制するようにしてあり、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化が可能となるものである。これは、有機発光層3内で再結合することなくホール輸送層4側に進行してきた電子を、混合層6内で、有機発光層3のホスト材料がトラップする他に、有機半導体材料もトラップすることにより、電子のホール輸送層4への進行をより強く制限することができること、混合層6の電子移動度が低下して電子のホール輸送層4への進行を制限することができること、有機半導体材料の存在により混合層6中に進入した電子が混合層6およびホール輸送層4に悪影響を与えることなく光もしくは熱に変換されて消失すること、などが理由として考えられるものであり、そして結果としてホール輸送層4及び混合層6の電子による劣化を抑制して有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化を達成することができるものである。
【0035】
ここで、混合層6に混合される上記の有機半導体材料は、その電子親和力が有機発光層3のホスト材料の電子親和力に対しても大きい値であることがより好ましい。ホール輸送層4を構成する主成分のみならず、有機発光層3のホスト材料の電子親和力よりも大きい電子親和力を有することで、有機半導体材料によって混合層6中の有機発光層3のホスト材料の劣化も抑制することができるものであり、あるいは、混合層6に進入した電子のホール輸送層4への進行をより強く制限することができるものであり、有機エレクトロルミネッセンス素子を長寿命化することができるものである。
【0036】
さらに、上記の有機半導体材料として、有機発光層3中に含有される発光性のドーパントと同じ物質を用いることも好ましい。この場合、有機発光層3から混合層6へ進行してきた電子が同様に有機半導体材料にトラップされることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子をより長寿命化することが可能となるものである。加えて、混合層6へのキャリア進入が多く、混合層6中の有機半導体材料が発光する場合、発光色は有機発光層3からの発光色と同色になるので、有機発光層3からの発光に与える影響を低減することが可能になるものである。
【0037】
尚、本発明において、ホール輸送層4の全体が混合層6で形成されるようにしてもよく、ホール輸送層4の有機発光層3の側の一部分にだけ混合層6が形成されるようにしてもよい。混合層6がホール輸送層4の一部分である場合には、0.2nm以上の厚みであることが好ましい。この厚み以下であると、混合層6を形成することによる効果を十分に得ることができない。特に好ましくは、0.5nm以上の範囲の厚みである。混合層6の厚みやホール輸送層4に占める混合層6の厚みの分率は、所望の素子特性に応じて適宜設定されるものである。
【0038】
本発明にあっては、上記のような構成の混合層6をホール輸送層4に設けることにより、通電時のホール輸送層4への過剰の電子の注入を抑制することができ、ホール輸送材料の電子による劣化を防止して、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化が可能となるものである。特に、混合層6は有機発光層3のホスト材料とホール輸送層4を構成する主成分からなる層であるために、駆動電圧の低減など特性の向上も同時に可能となるものである。
【0039】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機発光層3がホスト材料中に発光性のドーパントを含有するものであり、有機発光層3の陽極の側にホール輸送層4を備えている構造であればよく、他の部分の構造は特に限定されるものではない。以下、図1に示した基板7/電極(陽極)1/ホール輸送層4/有機発光層3/混合層6/電子輸送層5/電極(陰極)2からなる構造の有機エレクトロルミネッセンス素子について、その材料の例を説明する。
【0040】
上記のホール輸送層4を構成する材料としては、ホールを輸送する能力を有し、陽極からのホール注入効果を有するとともに、有機発光層3に対して優れたホール注入効果を有し、また電子のホール輸送層4への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNB(α−NPDのフェニル基がナフチル基であるもの)、TPBD(α−NPDのフェニル基、ナフチル基がビフェニル基であるものであり、置換結合位置は問わない)などを代表例とするトリアリールアミン系化合物を挙げることができる。特にリン光発光素子の場合には、有機発光層3のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び有機発光層3のホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましく、このような化合物としては、例えばテトラフェニルシラン骨格を持つトリアリールアミン誘導体、シクロヘキサン環等共役環を持たない部位をトリアリールアミン残基間に備えるトリアリールアミン誘導体、メチル基置換ビフェニル骨格、クオーターフェニレン骨格や、ヘキサフェニルベンゼン骨格など広いエネルギーギャップを有する骨格を持つトリアリールアミン誘導体などを挙げることができる。あるいは、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物なども前述の特性に応じて適宜使用される。
【0041】
また、上記の電子輸送層5を構成する材料としては、電子を輸送する能力を有し、陰極からの電子注入効果を有するとともに、有機発光層3に対して優れた電子注入効果を有し、さらにホールの電子輸送層5への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、バソフェナントロリン、バソクプロイン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ピリジン、フラン、フェナントロリンなど、複素環を有する化合物およびそれらの誘導体を挙げることができる。特にリン光発光素子の場合には、有機発光層3のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び有機発光層3のホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、1,3,5−Tris[3,5−bis(3−pyridinyl)phenyl]benzene、1,3,5-tri(4-pyrid-3-yl-phenyl)benzeneなどピリジン環を含有する誘導体、トリメシチルボラン骨格を含有するピリジン誘導体などを挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0042】
また、ホール輸送層4と陽極(電極1)の間にはホール注入層を、電子輸送層5と陰極(電極2)との間には電子注入層を設けてもよい。これらのホール注入層や電子注入層は、上記のホール輸送層4や電子輸送層5を構成する物質やその他の材料で電極1,2からのキャリア注入に優れる材料を単独で用いて構成してもよく、あるいは、有機材料と電荷移動錯体を形成する金属、半導体、有機材料、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物、アクセプタガス等、ルイス酸やルイス塩基としてあるいはブレンステッド酸やブレンステッド塩基として機能する材料を混合または積層して構成してもよい。例えば、ホール注入層は、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、スターバーストアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを、単独で、あるいは、例えば酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、臭素、塩化鉄、塩化チタン、F4TCNQ、DDQ、酸無水物などと混合または積層して形成することができる。また電子注入層は例えば、上記の電子輸送層を構成する材料やフタロシアニン類、ポルフィリン類その他の電子受容が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを単独で、あるいはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、あるいは[化1]のような有機ドナー類を混合もしくは積層した状態で用いて形成することができる。また、金属化合物を成膜時もしくは成膜後に分解や還元することによって金属成分を遊離させることによって混合もしくは積層膜を形成するような構造でもかまわない。例えば、BCP(バソクプロイン)にCsを混合する場合、AlqにLiq([化2])を積層した後にAlを蒸着することによってその還元によるLi金属を界面に発生させる場合、BCPにCsCOを積層または混合する場合、などがその例である。
【0043】
【化1】

【0044】
【化2】

【0045】
また有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光層3の形成に使用される発光性のドーパントとしては、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料として知られる任意の材料を用いることができる。例えばアントラセン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール、スチリルアミン誘導体、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素等を初めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。
【0046】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光層3の形成に使用されるホスト材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子用ホスト材料として用いられる任意の材料であれば特に限定はなく用いることができる。例えば、アントラセン誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)、カルバゾール誘導体、スチリルアリーレン誘導体、テトラセン誘導体、フルオレン誘導体、トリアリールアミン誘導体などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0047】
さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成するその他の部材である、積層された素子を保持する基板7、陽極(電極1)、陰極(電極2)等には、従来から使用されているものをそのまま使用することができる。
【0048】
基板7は、有機発光層3で発光した光が基板7を通して出射される場合には、光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ、フッ素系樹脂等の樹脂、有機無機ハイブリッド材料などから任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板7内に基板7の母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。表面形状を付与することによって光の取り出し効果を高くしたものも好ましい。また、基板7を通さずに光を出射させる場合、基板7は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわないものであり、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板7を使用することができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板7を使うことが好ましい。
【0049】
上記陽極は、素子中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、PEDOT、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極は、例えば、これらの電極材料を、基板7の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、有機発光層3における発光を陽極を透過させて外部に照射するためには、陽極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極の膜厚は、陽極の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。尚、前記好適条件は、ホール注入層の使用や、補助電極の使用によって適宜変化してもよい。すなわち、補助電極を適切に用いることにより、補助電極と組み合わせてのシート抵抗を実用に問題のない低い値に抑えることができ、結果として陽極として用いられる導電性光透過性材料単体としてはさほど低くない抵抗値を有するものでも使用可能となる。
【0050】
また上記陰極は、有機発光層3中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。また、Alと他の電極材料を組み合わせて積層構造などとして構成するものであっても良い。このような陰極の電極材料の組み合わせとしては、アルカリ金属とAlとの積層体、アルカリ金属と銀との積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とAlとの積層体、アルカリ金属の酸化物とAlとの積層体、アルカリ土類金属や希土類金属とAlとの積層体、これらの金属種と他の金属との合金などが挙げられ、具体的には、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、などとAlとの積層体、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、LiF/Al混合物/積層体、Al/Al混合物などを例として挙げることができる。また、前記のごとくアルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極の下地として用い、さらに上記の仕事関数が5eV以下である材料(あるいはこれらを含有する合金)を1層以上積層するようにしてもよい。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極側から光を取り出す構成にしても良い。この場合にも、透明電極の下地には、仕事関数が5eV以下の金属を用いることが好ましい。
【0051】
陰極は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。有機発光層3における発光を陽極側に照射するためには、陰極の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、陰極を透明電極として形成して、陰極側から発光を取り出す場合、あるいは、透明電極とした後に何らかの手段で光を反射させ、陽極側に光を取り出す場合には、陰極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極の膜厚は、陰極の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。これらについても陽極と同様、電子注入層や補助電極の使用によって、好適な条件は適宜変化してもよい。
【0052】
さらに、陰極上にAl等の金属をスパッタで積層したり、フッ素系化合物、フッ素系高分子、その他の有機分子、高分子等を蒸着、スパッタ、CVD、プラズマ重合、塗布した後の紫外線硬化、熱硬化その他の方法で薄膜として形成し、保護膜としての機能をもたせるようにすることも可能である。
【0053】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、複数の発光層が中間層である等電位面を形成する層もしくは電荷発生層を介して積層された、いわゆるマルチフォトン型、マルチユニット型、積層型、タンデム型構造を有するものであってもよい。等電位面形成層もしくは電荷発生層の材料としては、例えばAg、Au、Al等の金属薄膜、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン等の金属酸化物、ITO、IZO、AZO、GZO、ATO、SnO等の透明導電膜、いわゆるn型半導体とp型半導体の積層体、金属薄膜もしくは透明導電膜とn型半導体及び/又はp型半導体との積層体、n型半導体とp型半導体の混合物、n型半導体及び/又はp型半導体と金属との混合物、などを挙げることができる。n型半導体やp型半導体としては、無機材料であっても、有機材料であってもよく、あるいは有機材料と金属との混合物や、有機材料と金属酸化物や、有機材料と有機系アクセプタ/ドナー材料や、無機系アクセプタ/ドナー材料等の組合わせによって得られるものであってもよく、特に制限されることなく必要に応じて選定して使用することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、電子親和力は、各材料の厚み50〜200Åの薄膜の吸収スペクトルの長波長端から見積もられる化学的エネルギーギャップの値を、イオン化ポテンシャルの値から差し引くことによって見積もられる値である。各材料のイオン化ポテンシャルは、理研計器製「光電子分光装置AC−3」にて測定した値である。
【0055】
(実施例1)
厚み110nmのITOが陽極として図2のパターンのように成膜された0.7mm厚のガラス基板を用意した。陽極を形成するITOのシート抵抗は、約12Ω/□である。そしてこれを洗剤、イオン交換水、アセトンで各10分間超音波洗浄をした後、IPA(イソプロピルアルコール)で蒸気洗浄して乾燥し、さらにUV/O処理した。次に、株式会社三菱化学科学技術研究センター製のバッファ材料「MCC−PC1020」を20nm厚にスピンコートし、真空雰囲気下230℃で30分間焼成し、真空を保ったまま常温まで冷却してバッファ層を形成した。
【0056】
その後、この基板を真空蒸着装置にセットし、1×10−4Pa以下の減圧雰囲気下で、ホール輸送層として、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)(電子親和力:2.4eV)を膜厚15nmに蒸着した。
【0057】
次にホール輸送層に引き続いて、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のTBADN([化3])(電子親和力:2.67eV)と、有機半導体材料のsty−NPD([化4])(電子親和力:2.75eV)を、48:48:4の質量比で共蒸着して、厚み5nmの混合層を形成した。
【0058】
【化3】

【0059】
【化4】

【0060】
次いで、有機発光層として、TBADNにsty−NPDを4質量%ドープした厚み40nmの層を蒸着した。
【0061】
次に、電子輸送層として、Alqを10nmの膜厚で成膜し、さらにLiFを膜厚0.5nm、アルミニウムを膜厚80nmで成膜してAl陰極を図2のパターンで形成することによって、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。尚、有機エレクトロルミネッセンス素子の形状は図2に示す通りである(図2において有機膜はホール輸送層、有機発光層、混合層、電子輸送層からなる)。
【0062】
(実施例2)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のTBADNと、有機半導体材料のTpPyPhB([化5])(電子親和力:3.04eV)を、48:48:4の質量比で混合して形成したこと以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0063】
【化5】

【0064】
(実施例3)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のTBADNと、有機半導体材料のTmiQPhTAZ([化6])(電子親和力:3.05eV)を、45:45:10の質量比で混合して形成したこと以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0065】
【化6】

【0066】
(比較例1)
ホール輸送層をα−NPDで膜厚20nmに形成し、混合層を形成しないようにした。これ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0067】
(比較例2)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のTBADNを50:50の質量比で混合して形成するようにした以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0068】
(比較例3)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機半導体材料のsty−NPDを96:4の質量比で混合して形成するようした以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0069】
(比較例4)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機半導体材料のm−MTDATA([化7])(電子親和力:1.9eV)を90:10の質量比で混合して形成するようした以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0070】
【化7】

【0071】
(比較例5)
有機半導体材料としてTBP([化8])を用いるようにした他は実施例1と同様にして混合層を形成した。これ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0072】
【化8】

【0073】
(実施例4)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のAlqと、有機半導体材料のTpPyPhBを、50:45:5の質量比で混合して形成し、有機発光層をAlqにルブレン(電子親和力:3.2eV)を7質量%ドープした膜厚40nmの層で形成するようにした。これ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0074】
(実施例5)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のAlqと、有機半導体材料のTpPyPhBを、70:35:5の質量比で混合した膜厚3nmの陽極側の層と、50:40:10の質量比で混合した膜厚2nmの有機発光層側の層とで形成するようにしたこと以外は、実施例4と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0075】
(実施例6)
混合層を、α−NPDと、有機発光層のホスト材料のAlqと、有機半導体材料のsty−NPDを、70:26:4の質量比で混合して形成するようした以外は、実施例4と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0076】
(比較例6)
ホール輸送層をα−NPDで膜厚20nmに形成し、混合層を形成しないようにした。これ以外は実施例4と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0077】
(比較例7)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のAlqを50:50の質量比で混合して形成するようにした以外は、実施例4と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0078】
(比較例8)
混合層を、ホール輸送層の主成分のα−NPDと、有機発光層のホスト材料のAlqと、有機半導体材料のTAPC([化9])(電子親和力:2.1eV)を、40:40:20の質量比で混合して形成するようした以外は、実施例4と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0079】
【化9】

【0080】
上記のように実施例1〜6及び比較例1〜8で得た有機エレクトロルミネッセンス素子に、20mA/cmの定電流を通電し、輝度が80%にまで低下するのに要した時間と、評価初期の駆動電圧とを測定した。結果を表1に示す。また有機半導体材料の発光への寄与率を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1にみられるように、各実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子は、輝度が80%にまで低下するのに要する時間が長く、また駆動電圧を比較的低く抑えることができるものであった。また比較例5の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光は、混合層からの発光が混色することによって、若干深い青色にシフトし、さらに実施例1の素子よりも寿命が短いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】実施例で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 電極
2 電極
3 有機発光層
4 ホール輸送層
5 電子輸送層
6 混合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの電極間に、ホスト材料中に発光性のドーパントを含有して形成される有機発光層とホール輸送層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子に於いて、ホール輸送層の少なくとも有機発光層に接する部分に、ホール輸送層を構成する主成分と、有機発光層のホスト材料と、ホール輸送層を構成する主成分の電子親和力以上の電子親和力を有しかつ有機発光層のホスト材料とは異なる有機半導体材料とを混合した混合層を備え、混合層に混合した上記有機半導体材料は発光への寄与率が5%以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
混合層に混合した上記有機半導体材料の電子親和力が、有機発光層のホスト材料の電子親和力以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
混合層に混合した上記有機半導体材料が、有機発光層中に含有される発光性のドーパントと同じ物質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
混合層内での、有機発光層のホスト材料と上記有機半導体材料の少なくとも一方の濃度が、有機発光層の側が陽極の側よりも高いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−53558(P2008−53558A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229715(P2006−229715)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(501231510)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
【Fターム(参考)】