説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】発光効率が高く、寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、有機EL素子用材料に使用可能な新規化合物及び有機素子用材料を高活性で製造する方法を提供する。
【解決手段】例えば下式で示される新規化合物が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁掛テレビの平面発光体やディスプレイのバックライト等の光源として使用され、発光効率が高く、寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子、有機素子用材料の製造方法及び新規化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機物質を使用した有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般にEL素子は、発光層および該層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。さらに、この電子が発光層において正孔と再結合し、励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。従来の有機EL素子は、無機発光ダイオードに比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しく実用化には至っていなかった。最近の有機EL素子は徐々に改良されているものの、未だ充分な発光効率、耐熱性、寿命を有していなかった。例えば、特許文献1にはEL素子に使用できるフェニルアントラセン誘導体が開示されているが、この化合物を利用した有機EL素子は発光効率が2〜4cd/A程度しかなく、より高い効率が求められていた。特許文献2には、発光層にアミンまたはジアミン誘導体からなる蛍光性ドーパントを含有するEL素子が開示されている。しかしながら、このEL素子は発光効率が4〜6cd/Aであるものの、寿命が初期輝度300cd/m2で700時間しかなく、より長寿命が求められていた。特許文献3にはフェニルアントラセン基を有するEL素子用材料が開示されているが、この材料をホスト材料とし、他の化合物をドーピング材料として使用すると長寿命が得られなかった。実用的には初期輝度10000cd/m2 以上が求められているが得られていない。特許文献4には、ビナフタレン構造を有する有機EL素子用材料を、Al錯体等の電子輸送性の発光層に添加した例が開示されている。しかしながら、この例では、Al錯体等の発光層のエネルギーギャップが有機EL素子用材料のエネルギーギャップより小さいため、Al錯体等が発光して該有機EL素子用材料は発光中心として機能しなかった。一方、有機EL素子用材料となるアリールアミン類の合成は、従来、アミンとヨウ化ベンゼン類を用いウルマン(Ullmann)反応により行われてきた。例えば、非特許文献1、特許文献5、特許文献6等には、1当量以上の銅粉及び水酸化カリウムに代表される塩基の存在下でデカリン等の不活性炭化水素溶媒中150℃以上で対応するヨウ化ベンゼン類とジアリールアミンとを反応させトリアリールアミンを製造することが記載されている。しかしながら、ウルマン反応による方法では、反応剤として高価なヨウ化物を用いなければならず、応用性も乏しく、反応収率も充分ではなかった。また150℃以上の高温と長い反応時間を要し、銅粉を大量に使用するため、大量の銅を含む廃液が生じ、環境上の問題もあった。
【0003】
【特許文献1】特開平8−12600号公報
【特許文献2】特開平8−199162号公報
【特許文献3】特開平9−268284号公報
【特許文献4】特開平11−152253号公報
【特許文献5】米国特許第4,764,625号明細書
【特許文献6】特開平8−48974号公報
【非特許文献1】Chem.Lett.,pp.1145〜1148,1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、発光効率が高く、寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に使用可能な新規化合物及び有機素子用材料を高活性で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料(以下、有機EL素子用材料)を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式〔1〕又は〔1'〕で示される化合物をドーピング材料又は発光中心として利用することによりその目的を達成し得ることを見出した。さらに、本発明者らは、ホスフィン化合物とパラジウム化合物からなる触媒及び塩基の存在下で、アミンとアリールハライドを反応させることにより、3級アリールアミン類の有機EL素子用材料を高活性に合成できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明の有機EL素子は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機EL素子において、該発光層が下記一般式〔1〕で示される化合物からなる有機EL素子用材料を発光中心として0.1〜20重量%含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
一般式〔1〕
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、Aは置換もしくは未置換の炭素原子数6〜21のアリーレン基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基を表し、X1とX2、X3とX4は互いに連結していてもよい。Y1〜Y4は、それぞれ独立に、下記一般式〔2〕で示される有機基を表す。a〜dは0〜2の整数を表す。ただし、a+b+c+d>0である。
一般式〔2〕
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基、シアノ基を表すか、R1とR2またはR3とR4が結合した三重結合を表す。Zは置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基を表す。nは0もしくは1を表す。)〕
【0011】
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、正孔注入材料、正孔輸送材料又は電子輸送材料の中から選ばれる少なくとも一種類の材料に、上記一般式〔1〕で示される有機EL素子用材料を、それぞれ独立に0.1〜20重量%含有する有機EL素子であっても良く、該発光層がスチルベン誘導体及び上記一般式〔1〕で示される有機EL素子用材料を含有する層である有機EL素子であっても良い。
【0012】
本発明の有機EL素子は、芳香族三級アミン誘導体および/またはフタロシアニン誘導体を含有する層を、発光層と陽極との間に形成してなる有機EL素子であっても良い。
【0013】
前記一般式〔1〕の式中Aは、下記一般式〔3〕、〔4〕又は〔5〕で示される基であることが好ましい。
一般式〔3〕
【0014】
【化3】

【0015】
一般式〔4〕
【化4】

【0016】
一般式〔5〕
【化5】

【0017】
(式中、R5〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基又はシアノ基を表し、隣接するものが互いに結合し、飽和又は不飽和の炭素環を形成していても良い。)
【0018】
前記一般式〔1〕で示される有機EL素子用材料のエネルギーギャップが、ホスト材料のエネルギーギャップより0.07eV以上小さいことが好ましく、0.15eV以上小さいとさらに好ましい。
【0019】
また、本発明は下記一般式〔1'〕の式中Aが、上記一般式〔5〕である新規化合物を提供するものである。
一般式〔1'〕
【0020】
【化6】

【0021】
〔式中、Aは上記一般式〔5〕で示される基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基を表し、X1とX2、X3とX4は互いに連結していてもよい。Y1〜Y4は、それぞれ独立に、上記一般式〔2〕で示される有機基を表す。a〜dは0〜2の整数を表す。ただし、a+b+c+d>0である。〕
【0022】
さらに、本発明の有機EL素子用材料の製造方法は、ホスフィン化合物とパラジウム化合物からなる触媒及び塩基の存在下で、下記一般式〔6〕
R(NR'H)k 〔6〕
(式中、kは1〜3の整数を表し、kが1のときR及びR'は水素原子、アルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、kが2以上のときRはアルキレン基又は置換もしくは無置換のアリーレン基、R'は水素原子、アルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で示される1級又は2級アミンと、下記一般式〔7〕
Ar(X)m 〔7〕
(式中、Arは置換又は無置換のアリール基を表し、XはF、Cl、Br又はIを表し、mは1〜3の整数を表す。ただし、R、R'及びArのうち少なくとも一種類はスチリル基を含有し、kが2のときはNに置換するR'は異なっていても良い。)で示されるアリールハライドとを反応させ、アリールアミン化合物からなる有機素子用材料を製造する方法である。
【0023】
前記アリールアミン化合物は、下記式〔8〕で示される化合物であることが好ましい。
一般式〔8〕
【0024】
【化7】

【0025】
〔式中、Aは置換もしくは未置換の炭素原子数6〜60のアリーレン基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基を表し、X1とX2、X3とX4は互いに連結していてもよい。Y1〜Y4は、それぞれ独立に、上記一般式〔2〕で示される有機基を表す。a〜dは0〜2の整数を表す。ただし、a+b+c+d>0である。〕
前記ホスフィン化合物が、トリアルキルホスフィン化合物、トリアリルホスフィン化合物又はジホスフィン化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の上記一般式〔1〕で表される化合物からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は〔1'〕で表される新規化合物をドーパント又は発光中心として使用した有機エレクトロルミネッセンス素子は、低い印加電圧で実用上充分な発光輝度が得られ、発光効率が高く、長時間使用しても性能が劣化しずらく寿命が長い。また、本発明の方法により有機素子用材料を製造すると、発光効率が高く、寿命が長く、高活性な有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を、不純物が少なく高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の有機EL素子で使用する材料及び新規化合物における一般式〔1〕及び〔1'〕で示される化合物のAは、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜21のアリーレン基を表し、具体例としてビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、フルオレン、チオフェン、フルオランテンなどから形成されるか又は2価の基などが挙げられる。また一般式〔1〕で示される化合物のX1〜X4は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基を表し、具体例としてフェニレン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、フルオレン、チオフェン、コロネン、クリセン骨格を含有する1価又は2価の基が挙げられる。また、X1とX2、X3とX4は互いに連結していてもよい。一般式〔1〕及び〔1'〕において、a〜dは0〜2の整数を表す。ただし、a+b+c+d>0である。
【0028】
本発明における一般式〔2〕で示される有機基のR1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基もしくはシアノ基を表す。R1〜R4の具体例は、置換もしくは未置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、2−フェニルイソプロピル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、α−フェノキシベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−メチルフェニルベンジル基、α,α−ジトリフルオロメチルベンジル基、トリフェニルメチル基、α−ベンジルオキシベンジル基等がある。置換もしくは未置換のアリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、ビフェニル基、4−メチルビフェニル基、4−エチルビフェニル基、4−シクロヘキシルビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、ナフチル基、5−メチルナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0029】
本発明における一般式〔2〕で示される有機基のZは、それぞれ独立に置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基を表す。Zの具体例は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、チオフェン基、フェニルエテニル基、ジフェニルエテニル基、トリフェニルエテニル基等のアリール基であり、上記アリール基は置換基を有していても良い。置換基の具体例は、R1〜R4で記述したアルキル基およびアリール基に加えて、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、水酸基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基等がある。一般式〔2〕のnは0もしくは1を表す。このように、本発明における一般式〔1〕及び〔1'〕で示される化合物は、中心にジアミン構造を有し末端にスチリルアミン構造を有することにより、イオン化エネルギーが5.6eV以下となり、発光層中に添加されることにより発光層への正孔注入性を向上させると共に、正孔捕捉することによで発光層での電子と正孔のバランス(量比)を改善し、発光効率及び寿命が改善される。単一の有機EL素子用材料として上記化合物〔1〕又は〔1'〕を単独で発光層として用いた場合に比べ、発光効率及び寿命が改善される。尚、X1とX2、X3とX4が単結合又は炭素環結合などで連結した化合物は、ガラス転移温度が向上し耐熱性が優れる。
【0030】
本発明における一般式〔3〕〜〔5〕で示される基におけるR5〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基又はシアノ基を表し、隣接するものが互いに結合し、飽和又は不飽和の炭素環を形成していても良い。R5〜R34の具体例は、置換もしくは未置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、2−フェニルイソプロピル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、α−フェノキシベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−メチルフェニルベンジル基、α,α−ジトリフルオロメチルベンジル基、トリフェニルメチル基、α−ベンジルオキシベンジル基等がある。置換もしくは未置換のアリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、ビフェニル基、4−メチルビフェニル基、4−エチルビフェニル基、4−シクロヘキシルビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、ナフチル基、5−メチルナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0031】
以下に、本発明の一般式〔1〕及び〔1'〕の化合物の代表例(1)〜(15)を例示するが、本発明はこの代表例に限定されるものではない。
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機薄膜を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔、もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために、正孔注入材料もしくは電子注入材料を含有しても良い。しかしながら、発光材料は、極めて高い蛍光量子効率、高い正孔輸送能力および電子輸送能力を併せ持ち、均一な薄膜を形成することが好ましい。多層型の有機EL素子は、(陽極/正孔注入層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入層/陰極)、(陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極)の多層構成で積層したものがある。一般式〔1〕、〔1'〕及び〔8〕の化合物は、高い発光特性を持ち、優れた正孔注入性、正孔捕捉性を有しているので、発光中心として0.1〜20重量%添加して発光層に使用することができる。
【0037】
発光層には、必要に応じて、本発明の一般式〔1〕又は〔1'〕の化合物に加えてさらなる公知の発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を使用することもできる。有機EL素子は、多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、他のドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を組み合わせて使用することができる。また、他のドーピング材料により、発光輝度や発光効率の向上、赤色や白色の発光を得ることもできる。また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。その際には、正孔注入層の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子注入層の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機層もしくは金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0038】
一般式〔1〕又は〔1'〕の化合物と共に発光層に使用できる発光材料またはホスト材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体及び蛍光色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。尚、発光層におけるホスト材料の含有量は、一般式〔1〕又は〔1'〕の化合物より多いことが必須であり、好ましくは80〜99.9重量%である。
【0039】
正孔注入材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の有機EL素子において使用できる正孔注入材料の中で、さらに効果的な正孔注入材料は、芳香族三級アミン誘導体もしくはフタロシアニン誘導体である。芳香族三級アミン誘導体の具体例は、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−N,N'−(3−メチルフェニル)−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジアミン、N,N,N',N'−(4−メチルフェニル)−1,1'−フェニル−4,4'−ジアミン、N,N,N',N'−(4−メチルフェニル)−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジアミン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジアミン、N,N'−(メチルフェニル)−N,N'−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、もしくはこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。フタロシアニン(Pc)誘導体の具体例は、H2Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体でがあるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
電子注入材料としては、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより電子注入性を向上させることもできる。
【0042】
本発明の有機EL素子において、さらに効果的な電子注入材料は、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体である。金属錯体化合物の具体例は、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
また、含窒素五員誘導体は、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、ジメチルPOPOP、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4'−tert−ブチルフェニル)−5−(4"−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4'−tert−ブチルフェニル)−5−(4"−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4'−tert−ブチルフェニル)−5−(4"−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の有機EL素子においては、発光層中に、一般式〔1〕又は〔1'〕の化合物の他に、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料および電子注入材料の少なくとも1種が同一層に含有されてもよい。また、本発明により得られた有機EL素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護することも可能である。
【0045】
有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0046】
有機EL素子では、効率良く発光させるために、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。また、基板も透明であることが望ましい。透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば限定されるものではないが、ガラス基板および透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0047】
本発明に係わる有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nmから10μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0048】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解または分散させて薄膜を形成するが、その溶媒はいずれであっても良い。また、いずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用しても良い。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂およびそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を挙げられる。
【0049】
以上のように、有機EL素子の発光層に本発明の化合物を用いることにより、低い印加電圧で実用上充分な発光輝度が得られるため、発光効率が高く、劣化しずらいため寿命も長く、さらには耐熱性にも優れた有機EL素子を得ることができる。
【0050】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビのフラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯等に利用できる。本発明の材料は、有機EL素子だけでなく、電子写真感光体、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の分野においても使用できる。
【0051】
本発明の有機素子用材料の製造方法で使用する一般式〔6〕で示される1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−アミルアミン、イソアミルアミン、tert−アミルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、2−アミノヘプタン、3−アミノヘプタン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、1−テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、1−ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等の1級アルキルアミン類;エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン等の1級アルキルジアミン類;アニリン、o−フルオロアニリン、m−フルオロアニリン、p−フルオロアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、2−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、9−アミノフェナントレン、2−トリフルオロメチルトルイジン、3−トリフルオロメチルトルイジン、4−トリフルオロメチルトルイジン等のアリールアミン類;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、フルオレンジアミン、1,8−ナフタレンジアミン等のアリールジアミン類;
【0052】
【化12】

【0053】
等が挙げられる。
一般式〔6〕で示される2級アミンとしては、
【0054】
【化13】

【0055】
等が挙げられる。
一般式〔7〕で示されるアリールハライドとしては特に限定するものではないが、Arとしては、通常炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜22の置換もしくは無置換のアリール基が用いられ、芳香族環に置換基を有していてもよい。また本発明においてアリール基とは、縮合環式炭化水素を含有するものである。
【0056】
アリールハライドの具体例としては、ブロモベンゼン、o−ブロモアニソール、m−ブロモアニソール、p−ブロモアニソール、o−ブロモトルエン、m−ブロモトルエン、p−ブロモトルエン、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、2−ブロモベンゾトリフロリド、3−ブロモベンゾトリロオリド、4−ブロモベンゾトリフロリド、1−ブロモ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−ブロモ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−ブロモフェネチルアルコール、3−ブロモフェネチルアルコール、4−ブロモフェネチルアルコール、5−ブロモ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−ブロモ−m−キシレン、2−ブロモ−p−キシレン、3−ブロモ−o−キシレン、4−ブロモ−o−キシレン、4−ブロモ−m−キシレン、5−ブロモ−m−キシレン、1−ブロモ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−ブロモ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−ブロモビフェニル、3−ブロモビフェニル、4−ブロモビフェニル、4−ブロモ−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−ブロモ−2−メチルナフタレン、1−ブロモ−4−メチルナフタレン等のアリールブロミド類;クロロベンゼン、o−クロロアニソール、m−クロロアニソール、p−クロロアニソール、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、2−クロロベンゾトリフロリド、3−クロロベンゾトリフロリド、4−クロロベンゾトリフロリド、1−クロロ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−クロロ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−クロロフェネチルアルコール、3−クロロフェネチルアルコール、4−クロロフェネチルアルコール、5−クロロ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−クロロ−m−キシレン、2−クロロ−p−キシレン、3−クロロ−o−キシレン、4−クロロ−o−キシレン、4−クロロ−m−キシレン、5−クロロ−m−キシレン、1−クロロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−クロロビフェニル、3−クロロビフェニル、4−クロロビフェニル、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−クロロ−2−メチルナフタレン、1−クロロ−4−メチルナフタレン等のアリールクロリド類;ヨードベンゼン、o−ヨードアニソール、m−ヨードアニソール、p−ヨードアニソール、o−ヨードトルエン、m−ヨードトルエン、p−ヨードトルエン、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、2−ヨードベンゾトリフロリド、3−ヨードベンゾトリフロリド、4−ヨードベンゾトリフロリド、1−ヨード−2,4−ジメトキシベンゼン、1−ヨード−2,5−ジメトキシベンゼン、2−ヨードフェネチルアルコール、3−ヨードフェネチルアルコール、4−ヨードフェネチルアルコール、5−ヨード−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−ヨード−m−キシレン、2−ヨード−p−キシレン、3−ヨード−o−キシレン、4−ヨード−o−キシレン、4−ヨード−m−キシレン、5−ヨード−m−キシレン、1−ヨード−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−ヨード−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−ヨードビフェニル、3−ヨードビフェニル、4−ヨードビフェニル、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、1−ヨード−2−メチルナフタレン、1−ヨード−4−メチルナフタレン等のアリールアイオダイド類;フルオロベンゼン、o−フルオロアニソール、m−フルオロアニソール、p−フルオロアニソール、o−フルオロトルエン、m−フルオロトルエン、p−フルオロトルエン、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、2−フルオロベンゾトリフロリド、3−フルオロベンゾトリフロリド、4−フルオロベンゾトリフロリド、1−フルオロ−2,4−ジメトキシベンゼン、1−フルオロ−2,5−ジメトキシベンゼン、2−フルオロフェネチルアルコール、3−フルオロフェネチルアルコール、4−フルオロフェネチルアルコール、5−フルオロ−1,2,4−トリメチルベンゼン、2−フルオロ−m−キシレン、2−フルオロ−p−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、4−フルオロ−o−キシレン、4−フルオロ−m−キシレン、5−フルオロ−m−キシレン、1−フルオロ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、1−フルオロ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4−フルオロ−1,2−(メチレンジオキシ)ベンゼン、1−フルオロナフタレン、2−フルオロナフタレン、1−フルオロ−2−メチルナフタレン、1−フルオロ−4−メチルナフタレン等のアリールフロリド類等;
【0057】
【化14】

【0058】
が挙げられる。
また、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、4,4'−ジブロモビフェニル、4,4'−ジクロロジフェニル、4,4'−ジヨードビフェニル、1−ブロモ−2−フルオロベンゼン、1−ブロモ−3−フルオロベンゼン、1−ブロモ−4−フルオロベンゼン、2−ブロモクロロベンゼン、3−ブロモクロロベンゼン、4−ブロモクロロベンゼン、2−ブロモ−5−クロロトルエン、3−ブロモ−4−クロロベンゾトリフロリド、5−ブロモ−2−クロロベンゾトリフロリド、1−ブロモ−2,3−ジクロロベンゼン、1−ブロモ−2,6−ジクロロベンゼン、1−ブロモ−3,5−ジクロロベンゼン、2−ブロモ−4−フルオロトルエン、2−ブロモ−5−フルオロトルエン、3−ブロモ−4−フルオロトルエン、4−ブロモ−2−フルオロトルエン、4−ブロモ−3−フルオロトルエン、トリス(4−ブロモフェニル)アミン、1,3,5−トリブロモベンゼン、
【0059】
【化15】

【0060】
等のハロゲン原子を2つ以上、好ましくは2〜3個有するアリールハライドも使用することができる。
本発明の有機素子用材料の製造方法においてアリールハライドの添加方法は、特に限定するものではなく、例えば、反応開始前に1級アミンと同時に2種類の異なるアリールハライドを添加しこれらを反応させてもよいし、まず1級アミンと一方のアリールハライドを反応させた後、生成した2級アミンに他方のアリールハライドを添加しこれらを反応させてもよい。3級アリールアミンをより高選択的に製造できることから、後者の逐次的に異なるアリールハライドを添加する方法が好ましい。
【0061】
アリールハライドの添加量は特に制限されるものではないが、1級アミンと同時に2種類の異なるアリールハライドを添加する場合には、1級アミン1モルに対して、それぞれ0.5モル倍〜10モル倍の範囲が適当であり、経済性及び未反応のアリールハライドの分離等、後処理を簡便とするため、好ましくは1級アミン1モルに対してそれぞれ0.7モル倍〜5モル倍である。また逐次的に異なるアリールハライドを添加する場合は、最初に添加するアリールハライドは、1級アミンのアミノ基1つに対して、0.5〜1.5倍モルの範囲で反応系に添加すればよいが、目的とする3級アリールアミンの選択率を向上させるという観点から、より好ましくは、該1級アミンのアミノ基1つに対して0.9モル〜1.1倍モルの範囲で反応系に添加すればよい。
【0062】
また、2級アミン製造後に添加されるアリールハライドは、原料とした1級アミンのアミノ基1つに対して0.1〜10モル倍添加すればよいが、反応終了後の未反応のアリールハライド及び未反応の2級アミンの分離操作が煩雑となることから好ましくは、1級アミンのアミノ基1つに対して0.9〜5倍モル添加すればよい。
【0063】
本発明で触媒成分として使用するパラジウム化合物としては、パラジウム化合物であれば特に制限するものではなく、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物類;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物類;トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物等が挙げられる。
【0064】
本発明の製造方法において、パラジウム化合物の使用量は、特に限定するものではないが、1級アミン1モルに対し、パラジウム換算で0.00001〜20.0モル%である。パラジウムが上記範囲内であれば、高い選択率で3級アリールアミンが合成できるが、高価なパラジウム化合物を使用することから、より好ましくは、該1級アミン1モルに対し、パラジウム換算で0.001〜5.0モル%である。
【0065】
本発明の製造方法において、触媒成分として使用されるトリアルキルホスフィン化合物としては、特に限定するものではなく、例えばトリエチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−sec−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン等が挙げられ、高い反応活性を有することから好ましくはトリ−tert−ブチルホスフィンである。トリアリールホスフィン化合物としては、特に限定するものではなく、例えばトリフェニルホスフィン、ベンジルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン(P(Tol)3)、トリ−o−トリイルホスフィン、トリ−m−トリイルホスフィン、トリ−p−トリイルホスフィンが挙げられ、好ましくはトリフェニルホスフィン、トリ−o−トリイルホスフィンである。ジホスフィン化合物としては、特に限定するものではなく、例えばビス(ジメチルホスフィノ)メタン、ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)メタン、ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、(R)−2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル((R)−BINAP)、(S)−2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル((S)−BINAP)、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル((±)−BINAP)、2S,3S−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン((S,S)−CHIRAPHOS)、2R,3R−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン((R,R)−CHIRAPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン((±)−CHIRAPHOS)、(R)−2,2'−ビス(ジ−p−トリイルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル((R)−Tol−BINAP)、(S)−2,2'−ビス(ジ−p−トリイルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル((S)−Tol−BINAP)、2,2'−ビス(ジ−p−トリイルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル((±)−Tol−BINAP)、4R,5R−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン((R,R)−DIOP)、4S,5S−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン((S,S)−DIOP)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン((±)−DIOP)、N,N'−ジメチル−(S)−1−〔(R)−1'、2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル〕エチルアミン((S),(R)−BPPFA)、N,N'−ジメチル−(R)−1−〔(S)−1'、2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル〕エチルアミン((R),(S)−BPPFA)、N,N'−ジメチル−1−〔1'、2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル〕エチルアミン((±)−BPPFA)が挙げられ、好ましくはビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、BINAPであり、BINAPは光学活性体でもラセミ体でも良い。
【0066】
トリアルキルホスフィン化合物、トリフェニルホスフィン化合物又はジホスフィン化合物の使用量は、パラジウム化合物に対して0.01〜10000倍モル使用すればよい。使用量がこの範囲であればアリールアミンの選択率に変化はないが、高価なホスフィン化合物を使用することから、より好ましくはパラジウム化合物に対して0.1〜10倍モルである。
【0067】
本発明の製造方法では、触媒成分としてパラジウム化合物とホスフィン化合物が必須であり、両者を組み合わせて触媒として反応系に加える。添加方法は、反応系にそれぞれ単独に加えても、予め錯体の形に調製して添加してもよい。
【0068】
本反応で使用できる塩基は、ナトリウム、カリウムの炭酸塩やアルカリ金属アルコキシド等の無機塩基及び3級アミン等の有機塩基から選択すればよく、特に制限するものではないが、好ましくは、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、セシウムカードネート(Cs2CO3)等のようなアルカリ金属アルコキシドであって、それらは反応場にそのまま加えても、またアルカリ金属、水素化アルカリ金属及び水酸化アルカリ金属とアルコールからその場で調製して反応場に供してもよい。
【0069】
使用する塩基の量は、特に制限されるものではないが、反応に添加する2種類の異なるアリールハライドのハロゲン原子に対して、0.5倍モル以上使用することが好ましい。塩基の量が、0.5倍モル未満では、反応活性が低下しアリールアミンの収率の低下を招くため好ましくない。塩基の量は大過剰に加えてもアリールアミンの収率に変化はないが、反応終了後の後処理操作が煩雑になることから、より好ましくは1.0〜5倍モル以下である。
【0070】
本発明の製造方法における反応は、通常は不活性溶媒下に実施され、そのような不活性溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホトリアミド等を例示することができる。より好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒である。
【0071】
本発明の製造方法は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましいが、たとえ加圧条件であっても実施することができる。本発明の製造方法は、反応温度20℃〜300℃、より好ましくは50℃〜200℃の範囲、反応時間は、数分〜72時間の範囲から選択すればよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を合成例及び実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
合成例1(化合物a)
中間体Aの合成
アルゴン気流下500ミリリットル三口フラスコ中に、p−ブロモベンズアルデヒド 50g(0.27mol)、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル 50g(0.22mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO) 200ミリリットルを仕込んだ。次にt−ブトキシカリウム 30g(0.27mol)を少しずつ添加し、室温で一晩攪拌し反応させた。反応終了後、反応液を、水500ミリリットル中に注入し、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗結晶を酢酸エチル 100ミリリットルで再結晶させ、中間体A 46g(収率81%)を得た。
【0073】
中間体Bの合成
アルゴン気流下、冷却管付き300ミリリットル三口フラスコ中に、中間体A10g(38mmol)、アニリン 14g(150mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.53g(1.5mol%)、トリ−o−トルイルホスフィン 0.35g(3mol%)、t−ブトキシナトリウム 7.4g(77mol)及び乾燥トルエン 100ミリリットルを加えた後、100℃で一晩加熱攪拌し反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾取し、メタノール 100ミリリットルで洗浄した。得られた粗結晶を酢酸エチル 50ミリリットルで再結晶させ、中間体B 7.7g(収率73%)を得た。
【0074】
中間体Cの合成
冷却管付き100ミリリットルナスフラスコ中に、4−ブロモベンジルブロミド 12.5g(50mmol)、亜リン酸トリエチル 12.5(75mmol)を加え、100℃で7時間加熱攪拌し反応させた。反応終了後、過剰な亜リン酸トリエチルを減圧蒸留で留去し、中間体C 15.4gを得た。中間体Cは、これ以上精製せずに次の反応に用いた。
【0075】
中間体Dの合成
アルゴン気流下、300ミリリットル三口フラスコ中に、p−ブロモベンズアルデヒド 9.2g(50mmol)、中間体C 15.4g(50mmol)、DMSO 100ミリリットルを仕込んだ。次にt−ブトキシカリウム 6.7g(60mmol)を少しずつ添加し、室温で一晩攪拌し反応させた。反応終了後、反応液を、水200ミリリットル中に注入し、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗結晶をメタノール 100ミリリットルで洗浄し、中間体D 13g(収率77%)を得た。
【0076】
化合物aの合成
アルゴン気流下、冷却管付き200ミリリットル三口フラスコ中に、中間体B 4g(15mmol)、中間体D 2g(6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.16g(3mol%)、(S)−BINAP 0.22g(6mol%)、t−ブトキシナトリウム 1.4g(15mmol)及び乾燥トルエン 50ミリリットルを加えた後、100℃で一晩加熱攪拌し反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾取してメタノールで洗浄し、60℃で一晩加熱乾燥した。得られた粗結晶をカラムクロマトグラフ(シリカゲル、ヘキサン/トルエン=8/2)で精製し、黄色粉末 1.4gを得た。この粉末は、NMR、IR及びFD−MS(フィールドディソプーションマススペクトル)の測定により、化合物aと同定された(収率32%:1NMR(90MHz)でのδ 7.0〜7.4ppm(42H、m)))。化合物aのNMRチャートを図1に示す。化合物aの反応式を以下に示す。
【0077】
【化16】

【0078】
合成例2(化合物b)
中間体Eの合成
アルゴン気流下、300ミリリットル三口フラスコ中に、p−トルアルデヒド6g(50mmol)、中間体C 15.4g(50mmol)、DMSO 100ミリリットルを仕込んだ。次にt−ブトキシカリウム 6.7g(60mmol)を少しずつ添加し、室温で一晩攪拌し反応させた。反応終了後、反応液を水200ミリリットル中に注入し、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗結晶をメタノール 100ミミリリットルで洗浄し、中間体E 9.2g(収率67%)を得た。
【0079】
化合物bの合成
アルゴン気流下、冷却管付き200ミリリットル三口フラスコ中に、中間体E 4g(15mmol)、N,N'−ジフェニルベンジジン 2g(6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.16g(3mol%)、(S)−BINAP 0.22g(6mol%)、t−ブトキシナトリウム 1.4g(15mmol)及び乾燥トルエン 50ミリリットルを加えた後、100℃で一晩加熱攪拌し反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾取してメタノールで洗浄し、60℃で一晩加熱乾燥した。得られた粗結晶をカラムクロマトグラフ(シリカゲル、ヘキサン/トルエン=8/2)で精製し、黄色粉末2.5gを得た。この粉末は、NMR、IR及びFD−MSの測定により、化合物bと同定された(収率58%:1NMR(90MHz)でのδ 7.0〜7.4ppm(40H、m)、δ 2.34ppm(6H、s)))。化合物bのNMRチャートを図2に示す。化合物bの反応式を以下に示す。
【0080】
【化17】

【0081】
合成例3(化合物c)
化合物cの合成
アルゴン気流下、冷却管付き200ミリリットル三口フラスコ中に、中間体B 4g(15mmol)、1,4−ジプロモナフタレン 1.7g(6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.16g(3mol%)、(S)−BINAP 0.22g(6mol%)、t−ブトキシナトリウム 1.4g(15mmol)及び乾燥トルエン 50ミリリットルを加えた後、100℃で一晩加熱攪拌し反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾取してメタノールで洗浄し、60℃で一晩加熱乾燥した。得られた粗結晶をカラムクロマトグラフ(シリカゲル、ヘキサン/トルエン=8/2)で精製し、黄色粉末2.0gを得た。この粉末は、NMR、IR及びFD−MSの測定により、化合物cと同定された(収率50%:1NMR(90MHz)でのδ 7.0〜7.4ppm(68H、m))。化合物cの反応式を以下に示す。
【0082】
【化18】

【0083】
合成例4(化合物d)
化合物dの合成
アルゴン気流下、冷却管付き200ミリリットル三口フラスコ中に、中間体B 4g(15mmol)、9,10−ジプロモアントラセン 2g(6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.16g(3mol%)、トリ−t−ブチルホスフィン 0.07g(6mol%)、t−ブトキシナトリウム 1.4g(15mmol)及び乾燥トルエン 50ミリリットルを加えた後、100℃で一晩加熱攪拌し反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾取してメタノールで洗浄し、60℃で一晩加熱乾燥した。得られた粗結晶をカラムクロマトグラフ(シリカゲル、ヘキサン/トルエン=8/2)で精製し、黄色粉末 1.9gを得た。この粉末は、NMR、IR及びFD−MSの測定により、化合物dと同定された(収率44%:1NMR(90MHz)でのδ 7.0〜7.4ppm(40H、m)))。化合物dの反応式を以下に示す。
【0084】
【化19】

【0085】
合成例5(化合物e)
中間体Eの合成
アルゴン気流下、300ミリリットル三口フラスコ中に、trans−4−スチルベンアルデヒド 10.4g(50mmol)、中間体C 15.4g(50mmol)、DMSO 100ミリリットルを仕込んだ。次にt−ブトキシカリウム 6.7g(60mmol)を少しずつ添加し、室温で一晩攪拌し反応させた。反応終了後、反応液を水200ミリリットル中に注入し、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗結晶をメタノール 100ミリリットルで洗浄し、中間体F 12.5g(収率69%)を得た。
【0086】
化合物eの合成
アルゴン気流下、冷却管付き200ミリリットル三口フラスコ中に、中間体F 5.4g(15mmol)、N,N'−ジフェニルベンジジン 2g(6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.16g(3mol%)、トリ−o−トルイルホスフィン 0.11g(6mol%)、t−ブトキシナトリウム 1.4g(15mmol)及び乾燥トルエン 50ミリリットルを加えた後、100℃で一晩加熱攪拌し反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾取してメタノールで洗浄し、60℃で一晩加熱乾燥した。得られた粗結晶をカラムクロマトグラフ(シリカゲル、ヘキサン/トルエン=6/4)で精製し、黄色粉末 1.0gを得た。この粉末は、NMR、IR及びFD−MSの測定により、化合物eと同定された(収率19%:1NMR(90MHz)でのδ 7.0〜7.5ppm(52H、m))。化合物eのNMRチャートを図3に示す。化合物eの反応式を以下に示す。
【0087】
【化20】

【0088】
化合物fの合成
アルゴン気流下、冷却管付き200ミリリットル三口フラスコ中に、中間体A 7.8g(30mmol)、4,4'−ジアミノスチルベン 二酸化炭素 1.7g(6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.16g(3mol%)、(S)−BINAP 0.22g(6mol%)、t−ブトキシナトリウム 9.6g(0.1mol)及び乾燥トルエン 50ミリリットルを加えた後、100℃で一晩加熱攪拌し反応させた。反応終了後、析出した結晶を濾取してメタノールで洗浄し、60℃で一晩加熱乾燥した。得られた粗結晶をカラムクロマトグラフ(シリカゲル、ヘキサン/トルエン=6/4)で精製し、黄色粉末 2.0gを得た。この粉末は、NMR、IR及びFD−MSの測定により、化合物fと同定された(収率36%:1NMR (90MHz)でのδ 7.0〜7.5ppm(54H、m))。化合物fの反応式を以下に示す。
【0089】
【化21】

【0090】
実施例1
洗浄したITO電極付きガラス板上に、正孔注入材として下記化合物(TPD74)を膜厚60nmに真空蒸着した。
【0091】
【化22】

【0092】
次に、正孔輸送材として下記化合物(NPD)を膜厚20nmに真空蒸着した。
【0093】
【化23】

【0094】
次に、発光材料としてスチルベン誘導体の4,4'−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)及び上記化合物(a)を、化合物(a)の割合が2重量%、膜厚40nmとなるように同時蒸着した。尚、化合物(a)は蛍光性のドーパント又は発光中心として機能する。次に、電子注入材として下記化合物(Alq)
【0095】
【化24】

【0096】
を膜厚20nmで蒸着し、さらにLiFを膜厚0.5nmで蒸着後アルミニウムを膜厚100nm蒸着し電極を形成して有機EL素子を得た。各層は10-6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子の発光特性は、直流電圧6Vの印加電圧で発光輝度100(cd/m2)、発光効率は2.1(lm/W)であった。色度座標は(0.146,0.140)と純度の高い青色発光が可能となった。また、初期発光輝度200(cd/m2)で、定電流駆動したところ半減寿命は2000時間と長寿命であった。これらの発光特性を表1に示す。尚、化合物aのエネルギーギャップは2.78eV、DPVBiは3.0eVであった。
【0097】
実施例2
ドーパント又は発光中心として、上記化合物bを使用した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。この素子の発光特性は、直流電圧6Vの印加電圧で発光輝度110(cd/m2)、発光効率は1.3(lm/W)であった。色度座標は(0.152,0.163)と純度の高い青色発光が可能となった。また、初期発光輝度200(cd/m2)で、定電流駆動したところ半減寿命は1500時間と長寿命であった。これらの発光特性を表1に示す。尚、化合物bのエネルギーギャップは2.90eV、DPVBiは3.0eVであった。
【0098】
実施例3
ドーパント又は発光中心として、上記化合物cを使用した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。この素子の発光特性は、直流電圧6Vの印加電圧で発光輝度130(cd/m2)、発光効率は2.1(lm/W)であった。色度座標は(0.162,0.181)と純度の高い青色発光が可能となった。また、初期発光輝度200(cd/m2)で、定電流駆動したところ半減寿命は2800時間と長寿命であった。これらの発光特性を表1に示す。尚、化合物cのエネルギーギャップは2.83eV、DPVBiは3.0eVであった。
【0099】
実施例4
ドーパント又は発光中心として、上記化合物dを使用した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。この素子の発光特性は、直流電圧6Vの印加電圧で発光輝度300(cd/m2)、発光効率は4.6(lm/W)で、高効率な緑色発光が可能となった。また、初期発光輝度200(cd/m2)で、定電流駆動したところ半減寿命は3400時間と長寿命であった。これらの発光特性を表1に示す。尚、化合物dのエネルギーギャップは2.78eV、DPVBiは3.0eVであった。
【0100】
比較例1
ドーパント又は発光中心として下記化合物(TPD)を使用したことを除き、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0101】
【化25】

【0102】
この素子の発光特性は、直流電圧5Vの印加電圧で発光輝度60(cd/m2)、発光効率0.7(lm/W)と充分な性能が得られなかった。TPDは発光中心として機能せず、このためDPVTPからの発光が得られた。また、初期発光輝度200(cd/m2)で、定電流駆動したところ半減寿命は100時間と短かった。これらの発光特性を表1に示す。尚、TPDのエネルギーギャップは3.10eV、DPVBiは3.0eVであった。
【0103】
比較例2
ドーパント又は発光材料として上記化合物aを、発光材料として上記化合物(Alq)を使用したことを除き、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。この素子の発光特性は、直流電圧6Vの印加電圧で発光輝度210(cd/m2)、発光効率1.3(lm/W)であったが、Alqの桃色発光しか得られなかった。また、初期発光輝度200(cd/m2)で定電流駆動したところ半減寿命は200時間と寿命が短かった。これらの発光特性を表1に示す。化合物aは発光中心として機能していなかった。尚、化合物aのエネルギーギャップは2.95eV、Alqは2.7eVであった。
【0104】
比較例3
ドーパント又は発光材料を使用せず、単独の発光材料として上記化合物cを使用したことを除き、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。この素子の発光特性は、直流電圧6Vの印加電圧で発光輝度40(cd/m2)、発光効率0.9(lm/W)と充分な性能が得られなかった。また、初期発光輝度200(cd/m2)で定電流駆動したところ半減寿命は180時間と寿命が短かった。これらの発光特性を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1に示したように、ホスト材料に微量(1〜20重量%)の上記一般式〔1〕で示される化合物をドーパント又は発光中心として添加した実施例1〜3の有機EL素子は、比較例1〜3に比べ発光効率が高く、寿命も大幅に長かった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は壁掛テレビの平面発光体やディスプレイのバックライト等の光源として使用され、発光効率が高く、寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子、有機素子用材料の製造方法及び新規化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の製造方法で合成した化合物aの1NMRチャートである。
【図2】本発明の製造方法で合成した化合物bの1NMRチャートである。
【図3】本発明の製造方法で合成した化合物eの1NMRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式〔1'〕で示される新規化合物。
一般式〔1'〕
【化1】

〔式中、Aは下記一般式〔5〕で示される基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基を表し、X1とX2、X3とX4は互いに連結していてもよい。Y1〜Y4は、それぞれ独立に、下記一般式〔2〕で示される有機基を表す。a〜dは0〜2の整数を表す。ただし、a+b+c+d>0である。
一般式〔5〕
【化2】

(式中、R25〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基、シアノ基を表し、隣接するものが互いに結合し、飽和又は不飽和の炭素環を形成していても良い。)
一般式〔2〕
【化3】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基、シアノ基を表すか、R1とR2またはR3とR4が結合した三重結合を表す。Zは置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基を表す。nは0もしくは1を表す。)〕
【請求項2】
ホスフィン化合物とパラジウム化合物からなる触媒及び塩基の存在下で、下記一般式〔6〕
R(NR'H)k 〔6〕
(式中、kは1〜3の整数を表し、kが1のときR及びR'は水素原子、アルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、kが2以上のときRはアルキレン基又は置換もしくは無置換のアリーレン基、R'は水素原子、アルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で示される1級又は2級アミンと、下記一般式〔7〕
Ar(X)m 〔7〕
(式中、Arは置換又は無置換のアリール基を表し、XはF、Cl、Br又はIを表し、mは1〜3の整数を表す。ただし、R、R'及びArのうち少なくとも一種類はスチリル基を含有し、kが2のときはNに置換するR'は異なっていても良い。)で示されるアリールハライドとを反応させ、アリールアミン化合物からなる有機素子用材料を製造することを特徴とする有機素子用材料の製造方法。
【請求項3】
前記アリールアミン化合物が、下記式〔8〕で示される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の有機素子用材料の製造方法。
一般式〔8〕
【化4】

〔式中、Aは置換もしくは未置換の炭素原子数6〜60のアリーレン基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜30のアリーレン基を表し、X1とX2、X3とX4は互いに連結していてもよい。Y1〜Y4は、それぞれ独立に、下記一般式〔2〕で示される有機基を表す。a〜dは0〜2の整数を表す。ただし、a+b+c+d>0である。
一般式〔2〕
【化5】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基、シアノ基を表すか、R1とR2またはR3とR4が結合した三重結合を表す。Zは置換もしくは未置換の炭素原子数6〜20のアリール基を表す。nは0もしくは1を表す。)〕
【請求項4】
前記ホスフィン化合物が、トリアルキルホスフィン化合物、トリアリールホスフィン化合物又はジホスフィン化合物であることを特徴とする請求項2に記載の有機素子用材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−62377(P2009−62377A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250561(P2008−250561)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願平11−223056の分割
【原出願日】平成11年8月5日(1999.8.5)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】