説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

陰極(17),(18)と陽極(12)との間に、少なくとも発光層(15)と電子輸送層(16)とを含む積層構成を有する有機EL素子(100)であって、発光層(15)を形成するホスト材料の3重項エネルギーギャップ値(Eg)は2.52eV以上3.7eV以下であり、電子輸送層(16)を形成する電子輸送材料は、ホスト材料と異なる材料で、正孔輸送能を保有し、発光層(15)には、燐光性発光性かつ重金属を有する金属錯体化合物をさらに含むことを特徴する有機EL素子(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)に関し、さらに詳しくは、高効率な有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物質を使用した有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般にEL素子は、発光層及び該層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。
EL素子における発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入され、さらに、この電子が発光層において正孔と再結合し、励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
【0003】
従来の有機EL素子の構成としては、様々なものが知られている。例えば、ITO(インジウムチンオキシド)/正孔輸送層/発光層/陰極の素子構成の有機EL素子において、正孔輸送層の材料として、芳香族第三級アミンを用いることが開示されており(特開昭63−295695号公報参照)、この素子構成により、20V以下の印加電圧で数百cd/mの高輝度が可能となった。
【0004】
また、燐光性発光ドーパントであるイリジウム錯体を発光層にドーパントとして用いることにより、輝度数百cd/m以下では、発光効率が約40ルーメン/W以上となることが報告されている(筒井ら、「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・フィジックス」,1999年,第38巻,P.1502−1504参照)。
しかし、このような燐光型有機EL素子の多くは、緑色EL発光であり、青色化、さらには、該燐光型有機EL素子の高効率化が問題とされている。
【0005】
有機EL素子をフラットパネルディスプレイ等へ応用する場合、発光効率を改善し、低消費電力化することが求められているが、上記素子構成では、発光輝度向上とともに、発光効率が著しく低下するという欠点を有しており、そのためフラットパネルディスプレイの消費電力が低下しないという問題がある。
【0006】
一方、有機EL素子の層構成の一つである正孔障壁層についての技術が公開されている(米国特許第6097147号明細書及び特開2002−203683号公報参照)。これらの技術は、イオン化ポテンシャルの大きな有機化合物を正孔障壁層へ用いることで電流効率を向上させるものである。しかし、正孔の蓄積を利用することにより、駆動電圧の上昇が問題となっている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低電圧かつ高電流効率の燐光発光性の有機EL素子を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0008】
本発明によれば、以下の有機EL素子が提供される。
1.陰極と陽極との間に、少なくとも発光層と電子輸送層とを含む積層構成を有する有機EL素子であって、発光層を形成するホスト材料の3重項エネルギーギャップ値(Eg)は2.52eV以上3.7eV以下であり、電子輸送層を形成する電子輸送材料は、ホスト材料と異なる材料で、正孔輸送能を保有し、発光層には、燐光性発光性かつ重金属を有する金属錯体化合物をさらに含むことを特徴する有機EL素子。
2.電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャル(Ip)が5.6eV以上6.0eV未満であることを特徴とする1に記載の有機EL素子。
3.電子輸送層を形成する電子輸送材料が、少なくとも電子欠乏性の含窒素五員環誘導体又は含窒素六員環誘導体であることを特徴とする1又は2に記載の有機EL素子。
4.電子輸送材料が、下記(1)〜(3)のいずれか一つ以上の構造を有することを特徴とする1〜3のいずれかに記載の有機EL素子。
=N−骨格を含有する五員環又は六員環 (1)
【化1】

[Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZは、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。]
【化2】

5.電子輸送材料が、五員環又は六員環からなる含窒素芳香多環族基を有し、窒素原子が複数個の場合は、隣接しない結合位に窒素原子を有する骨格を有する有機化合物であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の有機EL素子。
6.前記電子輸送性材料又は前記ホスト材料が、カルバゾリル基又はテトラヒドロカルバゾリル基を1個有する化合物であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子
7.前記電子輸送性材料又は前記ホスト材料が、カルバゾリル基又はテトラヒドロカルバゾリル基を2個有する化合物であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子
8.前記電子輸送性材料又は前記ホスト材料が、カルバゾリル基又はテトラヒドロカルバゾリル基、及び含窒素ヘテロ環基を有する化合物であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
9.発光層を形成するホスト材料のイオン化ポテンシャルと、発光層と界面を成す電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャルの差(ΔIp=Ip(電子輸送材料)−Ip(ホスト材料))が−0.2eV<ΔIp<0.4eVであることを特徴とする1〜8のいずれかに記載の有機EL素子。
10.複数の電子輸送層を有することを特徴とする1〜9のいずれかに記載の有機EL素子。
11.複数の電子輸送層において、下記式で表される、各層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャルの差(ΔIp’)が−0.2eV<ΔIp’<0.4eVであることを特徴とする10に記載の有機EL素子。
ΔIp’=Ip(i)−Ip(i+1)
Ip(i):発光層から見て第i層目(iは1以上(N−1)以下の整数であり、Nは電子輸送層の数である。)の電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャル
12.複数の電子輸送層の各層を形成する電子輸送材料の光学エネルギーギャップ値(Eg)が、発光層と界面を成す電子輸送層から陰極に向かって同等又は小さくなっていることを特徴とする10又は11に記載の有機EL素子。
13.複数の電子輸送層の各層を形成する電子輸送材料の3重項エネルギーギャップ値が、発光層と界面を成す電子輸送層から陰極に向かって同等又は小さくなっていることを特徴とする10〜12のいずれかに記載の有機EL素子。
14.発光層と界面を成す電子輸送層を形成する電子輸送材料の3重項エネルギーギャップ値が、発光層の金属錯体化合物の3重項エネルギーギャップ値より大きいことを特徴とする1〜13のいずれかに記載の有機EL素子。
【0009】
本発明の有機EL素子において、発光層を形成するホスト材料は、発光層の主材料であり、燐光性発光性かつ重金属を有する金属錯体化合物は、発光性ドーパントとして機能する。
また、陰極と陽極の間にあって、電子輸送層は陰極側に位置する。
上記1の有機EL素子は、少なくとも1つの電子輸送層を有するので、本発明では、電子輸送層が一層の場合は、ΔIpに関する条件式を満足することが好ましい。また、電子輸送層が複数層の場合は、少なくともΔIpに関する条件を満足することが好ましく、少なくとも一つの隣接する2つの電子輸送層間でΔIp’に関する条件式を満足することがより好ましく、全ての隣接する2つの電子輸送層間でΔIp’に関する条件式を満足することがさらに好ましい。また、発光層が複数の場合も同様である。
【0010】
本発明によれば、低電圧かつ高電流効率の燐光発光性の有機EL素子、特に青色発光領域の有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1〜6の有機EL素子の図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極との間に、少なくとも発光層と電子輸送層とを含む積層構成を有する有機EL素子である。ここで、発光層及び電子輸送層は、一層でもよく、また、複数層でもよい。
【0013】
本発明の有機EL素子は、発光層を形成するホスト材料の3重項エネルギーギャップ値(Eg)が2.52eV以上3.7eV以下、好ましくは2.75eV以上3.7eV以下、より好ましくは2.80eV以上3.7eV以下、特に好ましくは2.9eV以上3.7eV以下、さらに好ましくは3.3eV以上3.7eV以下である。このような領域のホスト材料を用いることで、本発明で用い得るあらゆる発光色(青〜赤)の発光性ドーパント(後述)を効率よく発光させることができる。
【0014】
本発明の有機EL素子は、電子輸送層を形成する電子輸送材料が、ホスト材料と異なる材料で、正孔輸送能を保有している。
これにより、電子輸送層内での正孔移動性が容易になり、発光層と電子輸送層のイオン化ポテンシャルの差による正孔の蓄積を回避し、ひいては、高電圧化を抑制することができる。
【0015】
ここで、「電子輸送材料が正孔輸送能を保有している」とは、その電子輸送材料について、正孔移動度が測定可能であることをいう。
正孔移動度の測定方法はいかなる方法でもよいが、例えば、Time of flight法(有機膜内の電荷の走行時間の測定から算出する方法)を用いることができる。Time of flight法では、電極/有機層(電子輸送層を形成する有機材料からなる層)/電極構成から、該有機層の吸収波長域の波長の光照射により、その過渡電流の時間特性(過渡特性時間)を測定し、下記式から正孔移動度を算出する。尚、この方法では、電子移動度の測定も可能である。
移動度=(有機膜厚)/(過渡特性時間・印加電圧)
電界強度=(素子への印可電圧)/(有機層膜厚)
【0016】
本発明では、電界強度10〜10V/cmの領域でTime of flight法により測定した電子輸送材料の正孔移動度(μ(h))が1.0×10−7cm/(V・s)<μ(h)を示すことが好ましい。特に好ましくは、1.0×10−5 cm/(V・s)より大きい値を示すことである。
【0017】
本発明の有機EL素子は、発光層に、燐光性発光性かつ重金属を有する金属錯体化合物(発光性ドーパント)をさらに含む。
本発明は、この発光性ドーパントが、有機EL素子内において、3重項エネルギーギャップ起因の発光を有することを特徴とする。
これにより、有機EL素子内での正孔−電子の再結合エネルギーがより効率良く発光性ドーパントに移動し、かつ発光に繋がる。
【0018】
電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャルは、好ましくは5.6eV以上6.0eV未満である。
【0019】
発光層を形成するホスト材料のイオン化ポテンシャルと、発光層と界面を成す電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャルの差(ΔIp=Ip(電子輸送材料)−Ip(ホスト材料))は、好ましくは−0.2eV<ΔIp<0.4eV、より好ましくは−0.2eV<ΔIp<0.2eVである。
ΔIpをこの範囲にすれば、発光層と電子輸送層のイオン化ポテンシャルの差による正孔の蓄積を回避し、ひいては、高電圧化を抑制することができる。
【0020】
本発明の有機EL素子が、複数(N層)の電子輸送層を有している場合、下記式で表される、各層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャルの差(ΔIp’)は、好ましくは−0.2eV<ΔIp’<0.4eV、より好ましくは−0.2eV<ΔIp’<0.2eVである。
ΔIp’=Ip(i)−Ip(i+1)
Ip(i):発光層から見て第i層目(iは1以上(N−1)以下の整数である)の電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャル
ΔIp’をこの範囲にすれば、電荷が蓄積し易い正孔障壁が小さく、駆動電圧の低下、ひいては、高発光効率を得ることができる。
【0021】
本発明の有機EL素子が、複数の電子輸送層を有している場合、電子輸送層の各層を形成する電子輸送材料の光学エネルギーギャップ値(Eg)は、発光層と界面を成す電子輸送層から陰極に向かって同等又は小さくなっていること、即ち、N層構成の電子輸送層において、以下の関係を満たしていることが好ましい。
Eg(N)≦Eg(N−1)≦・・≦Eg(2)≦Eg(1) (i)
Eg(x):発光層から見て第x層目(xは1以上N以下の整数である)の電子輸送層の光学エネルギーギャップ値
【0022】
また、本発明の有機EL素子が、複数の電子輸送層を有している場合、電子輸送層の各層を形成する電子輸送材料の3重項エネルギーギャップ値(Eg)は、発光層と界面を成す電子輸送層から陰極に向かって同等又は小さくなっていること、即ち、N層構成の電子輸送層において、以下の関係を満たしていることが好ましい。
Eg(N)≦Eg(N−1)≦・・≦Eg(2)≦Eg(1) (ii)
Eg(x):発光層から見て第x層目(xは1以上N以下の整数である)の電子輸送層の3重項エネルギーギャップ値
【0023】
本発明の有機EL素子では、発光層の発光性ドーパントの3重項エネルギーギャップ値を、Eg(dopant)としたとき、以下の関係を満たすことが好ましい。
Eg(1)>Eg(dopant) (iii)
Eg(1):発光層と界面を成す電子輸送層の3重項エネルギーギャップ値
これら(i)〜(iii)の関係を満たすことにより、発光層内の再結合エネルギーが電子輸送層へ拡散することを防ぐことができ、ホスト材料のエネルギーが効率よく発光性ドーパントへ移動し、その結果、高電流効率が実現できる。
【0024】
本発明の有機EL素子に用いるホスト材料、発光性ドーパント及び電子輸送材料は、上記条件を満たすように選択すれば、特に限定されるものではない。
好ましいホスト材料としては、例えば、アミン誘導体、カルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系及びベンゾイミダゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキサノイド化合物、スチリル系化合物等の薄膜形成性のよい化合物が挙げられる。また、本発明では、後述する電子輸送材料をホスト材料として用いてもよい。
【0025】
発光性ドーパントは、室温で3重項からの発光を有する発光性ドーパントとして機能することが好ましい。ドーパントに含まれる重金属としては、Ir、Pt、Pd、Ru、Rh、Mo又はReが好適例として挙げられる。また、重金属の配位子としては、例えば、C、Nが金属に配位又は結合する配位子(CN配位子)があり、より具体的には、
【化3】

及びこれらの置換誘導体が好適例として挙げられる。置換誘導体の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ポリフェニル基又はナフチル基、フルオロ(F)基、トリフルオロメチル基(CF)基等が挙げられる。
特に、青色発光性の配位子としては、
【化4】

等が好適例として挙げられる。
【0026】
電子輸送材料に用いる材料は、好ましくは、少なくとも電子欠乏性の含窒素五員環誘導体又は含窒素六員環誘導体がよい。ここで、「電子欠乏性」とは、例えば、6π芳香族環の炭素を1つ以上窒素に変えたものを意味する。
また、好ましい電子輸送材料としては、下記(1)〜(3)のいずれか一つ以上の構造を有するものが挙げられる。
=N−骨格を含有する五員環又は六員環 (1)
【化5】

[Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZは、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。]
【化6】

【0027】
より好ましい電子輸送材料としては、上記(1)〜(3)のいずれか一つ以上の構造が、五員環〜八員環、好ましくは五員環又は六員環からなる含窒素芳香多環族基を形成しており、窒素原子が複数個の場合は、隣接しない結合位に窒素原子を有する骨格を有する有機化合物が挙げられる。
【0028】
具体的には、カルバゾリル基又はピリジル基又はピリミジニル基又はピラジニル基又はトリアジニル基又はキノキサリル基又はキノリル基又はイミダゾリル基又はトリアゾリル基又はテトラゾリル基オキサジアゾリル基又はチアジアゾリル基又はオキサトリアゾリル基(いずれの基も置換基を有してもよい)を有する化合物が好ましい。
より具体的には、例えば、下記式(4)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【化7】

[式中、R〜Rは、基が結合している結合位置を示しており、RとR、RとR、RとRは、環を巻いてもよい。Y及びYは炭素又は窒素(但し、両者は同時に窒素をとらない)である。Y又はYが窒素のとき、それぞれR又はRは無い。]
【0029】
また、上記式(4)のR、R、Rの少なくとも一つが窒素又は芳香環であり、この少なくとも一つの窒素又は芳香環を介して、少なくとももう一つの上記式(4)で表される骨格に連結した化合物や、R、R、Rの少なくとも一つが窒素又は芳香環であり、この少なくとも一つの窒素又は芳香環を介し、かつ脂環式化合物を介して、少なくとももう一つの上記式(4)で表される骨格に連結した化合物も好適である。
【0030】
上記式(4)で表される構造を有する化合物の具体例を以下に例示する。
尚、本発明では、下記式で表される骨格基をテトラヒドロカルバゾリル基という。
【化8】

[式中、Yは、置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数3〜40の複素環基、直鎖又は分岐の置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数5〜40のシクロアルキル基、
Lは、置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリーレン基、2価の置換若しくは無置換の炭素数3〜40の複素環基、直鎖又は分岐の置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキレン基、又は置換若しくは無置換の炭素数5〜40のシクロアルキレン基、
L’は、3価の置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリール基、3価の置換若しくは無置換の炭素数3〜40の複素環基、3価の直鎖又は分岐の置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、3価の置換若しくは無置換の炭素数5〜40のシクロアルキル基である。
〜Xは、それぞれ独立に、水素、Y−、Y−L−又はY−L’(−Y)−と表され、Y,L,L’の定義は上記の通りである。
〜R13は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン原子、シアノ基、シリル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数6〜40のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数3〜40の複素環基、直鎖又は分岐の置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数5〜40のシクロアルキル基である。]
【0031】
Yの置換若しくは無置換のアリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、フルオレニル基、パーフルオロアリール基、1,1’;3’,1”−ターフェニル−5’−イル基、1,1’;3’,1”−ターフェニル−2’−イル基、1,1’;3’,1”−ターフェニル−4’−イル基等が挙げられる。
【0032】
Yの置換若しくは無置換の複素環基の例としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、アジリジン、アザインドリジン、インドリジン、イミダゾール、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、プテリジン、β−カルボリン等が挙げられる。
【0033】
Yの置換若しくは無置換のアルキル基の例としては、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロイソプロピル基等が挙げられる。
【0034】
Yの置換若しくは無置換のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
Lの置換若しくは無置換のアリーレン基の例としては、上記置換若しくは無置換のアリール基の例を2価基にしたものが挙げられる。
Lの2価の置換若しくは無置換の炭素数3〜40の複素環基としては、上記置換若しくは無置換の複素環基の例を2価以上の基にしたものが挙げられる。
Lの置換若しくは無置換のアルキレン基としては、上記置換若しくは無置換のアルキル基の例を2価基にしたものが挙げられる。
Lの置換若しくは無置換のシクロアルキレン基としては、上記置換若しくは無置換のシクロアルキル基の例を2価基にしたものが挙げられる。
L’の例としては、上記のYの例示基を三価にしたものを挙げられる。
【0035】
〜R13のハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
〜R13の置換若しくは無置換のアリール基の例としては、上記Yで挙げたものと同様のものが挙げられる。
〜R13の置換若しくは無置換のアリールオキシ基は、−OPと表され、Pの例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基等が挙げられる。
【0036】
〜R13の置換若しくは無置換の複素環基、アルキル基及びシクロアルキル基の例としては、上記Yで挙げたものと同様のものが挙げられる。
〜R13の置換若しくは無置換のアルコキシ基は、−OQで表される基であり、Qの例としては、上記Yで挙げた置換若しくは無置換のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0037】
〜R13の置換若しくは無置換のアラルキル基の例としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基、トリチル基等が挙げられる。
【0038】
電子輸送性材料又はホスト材料は、好ましくは、カルバゾリル基及びテトラヒドロカルバゾリル基から選択される少なくとも1個の基を有する化合物である。より好ましくは、1個又は2個の基を有する化合物である。電子輸送性材料又はホスト材料は、さらに、含窒素ヘテロ環基を有することができる。
尚、上記式(4)で表される化合物のより詳細な具体例は、特願2002−305375号に例示されている。
【0039】
また、この他、以下の構造を有する化合物でもよい。
【化9】

[R14〜R18は、水素原子又は炭素数1〜40の置換基を表し、R14とR15は、互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成してもよい。R’は、アルキル基又はアリール基を表す。]
R’において、好適なアルキル基は、メチル基又はエチル基であり、好適なアリール基はフェニル基である。
【0040】
また、下記式(5)で表される有機化合物が挙げられる。
【化10】

[式中、nは3〜8の整数であり、ZはO、NR20又はSであり、R19及びR20は、個々に、水素;プロピル基、t−ブチル基、ヘプチル基等の1〜24の炭素原子を有するアルキル基;フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリル基及び他の複素環系等の5〜20の炭素原子を有するアリール基又はヘテロ原子置換アリール基;クロロ基、フルオロ基等のハロゲン基;又は縮合芳香環を完成するのに必要な原子であり、Bは、複数のベンザゾールを共役又は非共役して結合するアルキル基、アリール基、置換アルキル基又は置換アリール基からなる結合ユニットである。]
【0041】
また、特願2003−067847記載のベンゾイミダゾール誘導体や米国特許第5141671号明細書記載の金属錯体等が挙げられる。
【0042】
また、好ましい電子輸送材料として、カルバゾリル基を有する化合物が挙げられる。さらに好ましくは、カルバゾリル基、かつ、置換若しくは非置換のピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、トリアジル基、アミノ基又はオキサジアゾール基を有する有機化合物である。
【0043】
このような具体的な化合物として、特願2002−071398号、同2002−081234号、同2002−071397号、同2002−080817号、同2002−305375号、同2002−360134号等に記載の化合物が挙げられる。
カルバゾリル基を有する化合物を以下に例示する。
【化11】


【0044】
また、特願2002−299810に記載のカルバゾリル基を1個有する化合物やカルバゾリル基1個及び含窒素ヘテロ環基を有する化合物が好ましい。カルバゾリル基と含窒素ヘテロ環基はそれぞれ置換されていても置換されていなくてもよい。
かかる化合物として、下記式で表される化合物が挙げられる。
Cz−A
(式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアルキレン基であり、Aは下記式で表される基である。
(M)p−(E)q−(M’)r
(式中、M及びM’は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜40の窒素含有へテロ芳香族環であり、同一でも異なっていてもよい。Eは、単結合、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基、又は二価の置換もしくは無置換の炭素数2〜30のヘテロ芳香族環である。pは0〜2、qは1〜2、rは0〜2の整数である。ただし、p+rは1以上である。))
尚、CzはM,E,M’のいずれかに結合する。
具体的には、後述する実施例記載のETM_No.3、No.4、No5、No.10、No.11や、以下に示される特願2002−299810の13頁〜19頁記載の具体例であるカルバゾリル基と含窒素ヘテロ環基を含む化合物が挙げられる。
【化12】








【0045】
本発明では、ここに列挙した電子輸送材料を、発光層のホスト材料として用いてもよい。
【0046】
本発明の有機EL素子の構成としては、例えば、以下の(ア)〜(ウ)の構成が挙げられる。
(ア)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(イ)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ウ)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
本発明の有機EL素子における発光層は、上述したホスト材料に発光性ドーパントを添加した層である。ここで、発光性ドーパントの添加濃度は特に限定されるものではないが、その電流効率や駆動電圧の調整のため、0.1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましい。
【0047】
本発明の有機EL素子は、基板により支持されることが好ましい。また、基板上には、陽極から順に陰極までの各層を積層してもよく、また、陰極から順に陽極までの各層を積層してもよい。
また、発光層からの発光を効率よく取り出すために、陽極及び陰極の少なくとも一方を、透明又は半透明の物質により形成することが好ましい。
【0048】
本発明で用いる基板の材料については、特に制限はなく、公知の有機EL素子に慣用されているもの、例えば、ガラス、透明プラスチック又は石英等からなるものを用いることができる。
【0049】
本発明で用いる陽極の材料としては、仕事関数が4eV以上と大きい金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物が好ましく用いられる。具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO、SnO、ZnO等の誘電性透明材料が挙げられる。
陽極は、例えば、蒸着法やスパッタリング法等の方法で、上記材料の薄膜を形成することにより作製することができる。
発光層からの発光を陽極より取り出す場合、陽極の透過率は10%より大きいことが好ましい。
陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0050】
本発明で用いる陰極の材料としては、仕事関数が4eV以下と小さい金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物が好ましく用いられる。具体例としては、ナトリウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/銅混合物、Al/Al、インジウム等が挙げられる。
陰極は、例えば、蒸着法やスパッタリング法等の方法で、上記材料の薄膜を形成することにより作製することができる。
発光層からの発光を陰極より取り出す場合、陰極の透過率は10%より大きいことが好ましい。
陰極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
陰極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選択される。
【0051】
本発明の有機EL素子は、さらに電流(又は発光)効率を上げるために、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層等を設けてもよい。これらの層に用いる材料には特に制限はなく、従来の有機EL用材料として公知の有機材料を用いることができる。具体的には、アミン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシランやアニリン共重合体等が挙げられる。
本発明では、正孔注入層、正孔輸送層及び電子注入層に無機材料を添加することが好ましい。無機材料としては、例えば、金属酸化物等が挙げられる。
また、電流(又は発光)効率を上げるために、電子輸送層と金属陰極との間に無機材料を用いてもよい。無機材料の具体例としては、Li、Mg、Cs等のアルカリ金属の弗化物や酸化物が挙げられる。
【0052】
本発明の有機EL素子の製造法については、特に制限はなく、従来の有機EL素子に使用される製造方法を用いて製造することができる。具体的には、各層を真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法等により形成することができる。また、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエステル等の透明ポリマーに、各層の有機材料を分散させた溶液を用いるキャスト法、塗布法、スピンコート法の他、有機材料と透明ポリマーとのの同時蒸着等によっても製造することができる。
[実施例]
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例で用いた化合物については、特開平10−237438号公報、特願2003−042625号、同2002−071398号、同2002−081234号、同2002−299814号、同2002−360134号、同2002−071397号、同2002−080817号、同2002−083866号、同2002−087560号、同2002−305375号に記載の方法で製造した。
【0054】
表中の各種パラメータは、以下の方法で測定した。
(1)イオン化ポテンシャル(Ip)
材料にモノクロメーターで分光した重水素ランプの光(励起光)を照射し、放出された光電子放出をエレクトロメータで測定し、得られた光電子放出の照射光子エネルギー曲線からの光電子放出の閾値を外挿法により求めて測定した。測定機器としては、大気中紫外線光電子分析装置AC−1(理研計器株式会社製)を用いた。
(2)光学エネルギーギャップ(Eg)
各材料のトルエン希薄溶液に波長分解した光を照射し、その吸収スペクトルの最長波長から換算して求めた。測定機器としては、分光光度計(U−3400(商品名)、日立製)を用いた。
(3)3重項エネルギーギャップ値(Eg
三重項エネルギーギャップ(Eg(Doapnt))は、以下の方法により求めた。有機材料を、公知のりん光測定法(例えば、「光化学の世界」(日本化学会編・1993)50頁付近の記載の方法)により測定した。具体的には、有機材料を溶媒に溶解(試料10μmol/リットル、EPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2容積比、各溶媒は分光用グレード)し、りん光測定用試料とした。石英セルへ入れた該試料を77Kに冷却、励起光を照射し、該りん光を波長に対し、測定した。りん光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、該波長値をエネルギー値に換算した値をEgとした。日立製F−4500形分光蛍光光度計本体と低温測定用オプション備品を用いて測定した。尚、測定装置はこの限りではなく、冷却装置及び低温用容器と励起光源、受光装置を組み合わせることにより、測定してもよい。
尚、本実施例においては、以下の式により該波長を換算した。
換算式 Eg(eV)=1239.85/λedge
「λedge」とは、縦軸にりん光強度、横軸に波長をとって、りん光スペクトルを表したときに、りん光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸の交点の波長値を意味する。単位:nm。
【0055】
実施例1〜5
図1に示す有機EL素子を以下のように製造した。
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)12付きガラス基板11(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板11を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に、この透明電極12を覆うようにして膜厚100nmのN,N’−ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル膜(以下「TPD232膜」と略記する)13を抵抗加熱蒸着により成膜した。このTPD232膜13は、正孔注入層(正孔輸送層)として機能する。
【0056】
TPD232膜13の成膜に続けて、この膜上に膜厚10nmの正孔輸送層(下記HTM)14を抵抗加熱蒸着により成膜した。さらに、正孔輸送層14の成膜に続けて、この膜上に膜厚30nmで、ホスト材料(下記Host No.1、Ip=5.6eV、Eg=3.53eV、Eg=2.85eV)と発光性ドーパント(下記FIrpic、Eg=2.8eV、Eg=2.7eV)とからなる層15を抵抗加熱により共蒸着成膜した。FIrpicの濃度は7.5Wt%であった。このHost No1:FIrpic膜15は、発光層として機能する。
【0057】
そして、発光層15の成膜に続けて、この発光層上に、表1に示す電子輸送材料(ETM_No.1(実施例1)、ETM_No.2(実施例2)、ETM_No.3(実施例3)、PC−7(実施例4)、8−ヒドロキシキノリノールアルミニウム錯体(Alq)(実施例5)を用いて、膜厚30nmの電子輸送層16を抵抗加熱蒸着により成膜した。
【0058】
この後、LiFを電子注入性電極(陰極)17として成膜速度1Å/minで膜厚0.1nm形成した。このLiF層17上に、金属Alを蒸着させ、金属陰極18を膜厚130nm形成し、有機EL発光素子100を形成した。
【0059】
【化13】


【0060】
比較例1
実施例1と同じ素子構成で、下記の化合物を電子輸送材料として、実施例1と同様に有機EL発光素子を作製した。
【化14】

【0061】
(有機EL発光素子の評価)
実施例及び比較例で得られた有機EL発光素子について、輝度、効率、色度を所定直流電圧を印加した条件で測定し、発光輝度100cd/m程度の発光時の電流効率(=(輝度)/(電流密度))を算出した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

比較例は、ΔIpが大きい(ΔIp=1eV)ことにより、L/J効率が実施例と比べて低下していることがわかる。また、比較例で用いた化合物の蒸着膜においてTime of Flight 法での正孔移動の信号測定はできなかった。この結果より、本発明により、同じ発光色で、従来よりも高電流効率の素子を実現できたことがわかる。
【0063】
実施例6、7
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に、この透明電極を覆うようにして膜厚100nmのTPD232膜を抵抗加熱蒸着により成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層(正孔輸送層)として機能する。
【0064】
TPD232膜の成膜に続けて、この膜上に膜厚10nmの正孔輸送層(HTM)を抵抗加熱蒸着により成膜した。さらに、正孔輸送層の成膜に続けて、この膜上に膜厚30nmで、ホスト材料(Host No.1)と発光性ドーパント(FIrpic)を抵抗加熱により共蒸着成膜した。FIrpicの濃度は7.5Wt%であった。このHost No1:FIrpic膜は、発光層として機能する。
【0065】
そして、発光層の成膜に続けて、この発光層上に、表2に示す電子輸送材料ETM_No.1(実施例6)、ETM_No.3(実施例7)を用いて、膜厚20nmの電子輸送層を抵抗加熱蒸着により成膜した。
さらに、Alqを膜厚10nm成膜し、電子輸送層をさらに形成した。
この後、LiFを電子注入性電極(陰極)として成膜速度1Å/minで膜厚0.1nm形成した。このLiF層上に、金属Alを蒸着させ、金属陰極を膜厚130nm形成し、有機EL発光素子を形成し、評価した。結果を表2に示す。
【0066】
実施例8
実施例6において、Alqの代わりに、ETM_No.3を用いた以外は、実施例6と同じ素子構成及び作製工程により有機EL発光素子を作製した。評価結果を表2に示す。
【0067】
実施例9
実施例7において、ETM_No.3成膜までは同等の工程を行い、その後、さらにAlqを膜厚10nm成膜し、電子輸送層を形成した。
この後、LiFを電子注入性電極(陰極)として成膜速度1Å/minで膜厚0.1nm形成した。このLiF層上に、金属Alを蒸着させ、金属陰極を膜厚130nm形成し、有機EL発光素子を作製した。評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

この結果より、本発明により、同じ発光色で、従来より高電流効率の素子を実現できたことがわかる。
【0069】
実施例10〜18
実施例6において、ETM_No.1の代わりに、下記ETM_No.4〜ETM_No.12を用いた以外は、実施例6と同じ素子構成及び作製工程により有機EL発光素子を作製した。評価結果を表3に示す。
【0070】
【化15】


【0071】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の有機EL素子は、高輝度でも発光効率が高く、消費電力が低いので、情報表示機器、車載表示機器、照明等の分野において利用可能である。具体的には、壁掛テレビの平面発光体やディスプレイのバックライト等の光源として好適に使用できる。
本明細書に記載された文献又は公報はその内容をここに援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極との間に、少なくとも発光層と電子輸送層とを含む積層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層を形成するホスト材料の3重項エネルギーギャップ値(Eg)は2.52eV以上3.7eV以下であり、
前記電子輸送層を形成する電子輸送材料は、前記ホスト材料と異なる材料で、正孔輸送能を保有し、
前記発光層には、燐光性発光性かつ重金属を有する金属錯体化合物をさらに含むことを特徴する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャル(Ip)が5.6eV以上6.0eV未満であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記電子輸送層を形成する電子輸送材料が、少なくとも電子欠乏性の含窒素五員環誘導体又は含窒素六員環誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記電子輸送材料が、下記(1)〜(3)のいずれか一つ以上の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
=N−骨格を含有する五員環又は六員環 (1)
【化16】

[Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Z及びZは、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。]
【化17】

【請求項5】
前記電子輸送材料が、五員環又は六員環からなる含窒素芳香多環族基を有し、窒素原子が複数個の場合は、隣接しない結合位に窒素原子を有する骨格を有する有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記電子輸送性材料又は前記ホスト材料が、カルバゾリル基又はテトラヒドロカルバゾリル基を1個有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子
【請求項7】
前記電子輸送性材料又は前記ホスト材料が、カルバゾリル基又はテトラヒドロカルバゾリル基を2個有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子
【請求項8】
前記電子輸送性材料又は前記ホスト材料が、カルバゾリル基又はテトラヒドロカルバゾリル基、及び含窒素ヘテロ環基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
発光層を形成するホスト材料のイオン化ポテンシャルと、前記発光層と界面を成す電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャルの差(ΔIp=Ip(電子輸送材料)−Ip(ホスト材料))が−0.2eV<ΔIp<0.4eVであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
複数の電子輸送層を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記複数の電子輸送層において、下記式で表される、各層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャルの差(ΔIp’)が−0.2eV<ΔIp’<0.4eVであることを特徴とする請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
ΔIp’=Ip(i)−Ip(i+1)
Ip(i):発光層から見て第i層目(iは1以上(N−1)以下の整数であり、Nは電子輸送層の数である。)の電子輸送層を形成する電子輸送材料のイオン化ポテンシャル
【請求項12】
前記複数の電子輸送層の各層を形成する電子輸送材料の光学エネルギーギャップ値(Eg)が、発光層と界面を成す電子輸送層から陰極に向かって同等又は小さくなっていることを特徴とする請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記複数の電子輸送層の各層を形成する電子輸送材料の3重項エネルギーギャップ値が、発光層と界面を成す電子輸送層から陰極に向かって同等又は小さくなっていることを特徴とする請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
発光層と界面を成す電子輸送層を形成する電子輸送材料の3重項エネルギーギャップ値が、前記発光層の金属錯体化合物の3重項エネルギーギャップ値より大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/076669
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517777(P2005−517777)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001799
【国際出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】