説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法

【課題】画素内への過電流の流入を抑止しつつ画素間の輝度バラツキを大幅に低減し、製造プロセスが容易な有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の発光画素95Aが配置されている有機EL表示装置100であって、基板10と、基板10上に形成された第1電極20と、第1電極20と電気絶縁されて形成された補助配線30と、第1電極20上に形成された発光部95と、少なくとも発光部95の上面に形成された第2電極90と、第2電極90と補助配線30の上面の少なくとも一部とを電気的に接続する接続部とを備え、発光部95は発光物質を含む発光層70と正孔輸送層60とを有する多層構造であり、接続部は正孔輸送層60と、正孔輸送層60に接して形成され仕事関数が正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値と同程度かそれより小さい金属からなる金属層80とを有する多層構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いた表示装置及びその製造方法に関し、特に、有機EL素子の輝度ばらつきを低減した表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のCRTディスプレイに対して、薄型、軽量、低消費電力などの特徴を有する液晶ディスプレイなどの平面型の表示装置の需要が急速に伸びている。しかし、液晶ディスプレイは、視野角や応答性などに課題を有している。
【0003】
その課題を改善するために、最近では、自発光、高視野角、高速応答性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と記す)を用いた、単純マトリクス方式やアクティブマトリクス方式などの表示装置が注目されている。特に、高精細や大画面化に有利なアクティブマトリクス方式の表示装置の開発が活発に行われている。
【0004】
有機EL素子を用いた表示装置は、有機EL素子を用いた表示パネルと、有機EL素子を駆動する駆動回路から構成されている。そして、表示パネルは、ガラスなどの基板上に、Alなどの第1電極とそれに対向するITO(Indium Tin Oxide)などの第2電極と、それらの間に発光層を設けた有機EL素子を、マトリクス状に配置して構成されている。また、駆動回路は、有機EL素子を個別に駆動する薄膜トランジスタ(TFT)などで構成されている。
【0005】
また、表示装置として、有機EL素子の発光した光を、基板を介して外部に取り出す下面発光方式と、基板と対向する第2電極側から取り出す上面発光方式が検討されている。しかし、アクティブマトリクス方式の下面発光方式の表示装置では、駆動回路の薄膜トランジスタが基板に形成されるため、十分な開口率を確保することが困難となっている。
【0006】
一方、上面発光方式は、薄膜トランジスタなどにより開口率が制限されないため、下面発光方式に比べて発光した光の利用効率を高めることができる。この場合、上面発光方式は、発光層の上面に形成した第2電極を介して光が外部に取り出されるため、第2電極に高い導電性とともに高い光透過性が要求される。しかし、一般に第2電極に用いられる透明導電性材料は、ITOなどの金属酸化物が用いられるが、金属酸化物は金属材料に比べて抵抗率が高い。そのため、表示パネルが大面積化されるほど、発光画素間で第2電極の配線長に差異が生じ、電源供給部の端とパネルの中央の間で大きな電圧降下が発生し、それに応じて輝度に差が出るため、中央が暗くなる。つまり、表示パネル面の有機EL素子の配置位置によって電圧がばらつき、表示品質の低下を生じるという問題がある。
【0007】
これを避けるためには、画素ごとに下部の低抵抗配線から上部透明電極に給電する構造が有効である。
【0008】
例えば、特許文献1には、図16に示されるような表示装置が開示されている。
【0009】
図16は、特許文献1に記載された従来の表示装置の有する発光画素の構造断面図である。以下に、図16を用いて特許文献1の表示装置700について簡単に説明する。同図のように、表示装置700は、基板710の同一面に、抵抗率の低い導電材料からなる第1電極720と補助配線730とが、例えば、フォトリソグラフィ法などを用いて分離して設けられている。そして、第1電極720上に発光層である光変調層750が設けられ、その上に透明導電性材料からなる第2電極760が設けられている。さらに、隔壁740に部分的に設けられた開口部745を介して、補助配線730と第2電極760とが接続されている。
【0010】
また、同様に、特許文献2では、第1電極と第2電流供給線とがガラス基板の異なる層に設けられ、コンタクトホールを介して、第2電極と第2電流供給線とが接続された有機発光表示装置が開示されている。これにより、第2電極による配線抵抗を小さくして、表示面内の輝度ばらつきを低減できるとしている。
【0011】
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された従来の表示装置では、第2電極と補助配線とが直接接続されるため、過電流が流れた場合に、駆動回路部などの表示装置に影響を与えることがある。また、発光部にも過電流が流れるので、発光部の信頼性、寿命にも影響を与える可能性がある。ここで、過電流とは、通常1サブ画素当りの発光部を発光するのに必要な電流が3μA〜5μAであるのに対して、例えば数10〜数100倍以上のパルス状の電流である。そして、過電流は、例えば表示パネル製造中での静電気、または完成した表示装置に何らかの外部からのノイズなどによる電流、または他の画素が短絡した場合に発生する。
【0012】
また、特許文献1および特許文献2で開示された従来の表示装置では、第2電極と補助配線が接続部を介して直接接続されている。そのためには、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層および発光層などの発光動作に関与する全ての層が、接続部を被覆しないように形成する必要がある。例えば真空蒸着法を用いてこれを実現するには、高精細マスクを使用する必要がある。しかし、高精細マスクの使用は、生産性よく、大画面や高精細の表示装置を製造する上で、位置合わせなどに課題がある。
【0013】
また、特許文献3では、上述した高精細マスクの使用をせず、かつ、過電流が抑止された接続部を実現する構造が提案されている。
【0014】
図17は、特許文献3に記載された従来の発光装置の有する発光画素の構造断面図である。同図に記載された発光装置800は、隔壁840を介して第1電極820と分離形成され、基板810上に形成された補助配線830と第2電極880との間に、発光層860を含む発光部の構成層である第1のバッファー層850及び第2のバッファー層870のうち少なくとも一方が配置されている。
【0015】
第1のバッファー層850は、金属化合物と有機材料とが組み合わされた層であり、発光部及び接続部を含む全体にわたってpドープされた層である。また、第2のバッファー層870は、電子輸送性物質と電子供与性を示す物質とが組み合わされた層であり、発光部及び接続部を含む全体にわたってnドープされた層である。
【0016】
この構造により、発光装置800は、各発光画素の近傍に補助配線を形成することができ、しかも、第1のバッファー層850及び第2のバッファー層870にドープされたキャリアにより接続部が適度の導電性を有する。よって、第2電極880の電圧降下に起因する発光素子間の輝度バラツキの低減が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−318556号公報
【特許文献2】特開2003−303687号公報
【特許文献3】特開2007−73499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図17に記載された従来の発光装置800の有する第1のバッファー層850及び第2のバッファー層870には、それぞれ、予めpドープ及びnドープがされている。これらのバッファー層が、pドープ及びnドープされた状態を実現するには、いずれも層形成の時点でドーパントと輸送材料との混合物である必要がある。上記混合物からなるバッファー層を形成する工程として、共蒸着法による製造工程が挙げられる。
【0019】
しかしながら、共蒸着法に代表される上記混合物の形成工程には、混合される2つの材料の蒸着速度を安定させるための複雑な工程が必要であり、製造工数が増加してしまう。また、この蒸着速度を安定させるプロセスなどの仕様を満足させるための成膜装置コストが増加してしまう。
【0020】
上述したように、特許文献3に記載された発光装置を実現するには、複雑なバッファー層の形成工程が必要であり、結果的には製造工程及び形成装置コストを増加させてしまうこととなる。
【0021】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、画素内への過電流の流入を抑止するとともに画素間の輝度バラツキを大幅に低減し、製造プロセスが容易な有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、基板と、前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、前記基板上または前記基板内に前記第1電極と電気絶縁されて形成された補助配線と、前記第1電極の上方に形成された発光物質を含む発光層と、前記発光層と前記第1電極との間に介在し、絶縁性の有機材料により形成された有機層と、前記発光層の上方に形成された第2電極と、を具備し、前記有機層及び前記第2電極は、前記第1電極の上方から前記補助配線の上方に延設され、前記補助配線の上方の前記有機層と前記第2電極との間には、前記有機層に接して金属層が設けられ、前記第2電極と前記補助配線とは、前記有機層及び前記金属層を介して電気接続され、前記補助配線の上方における前記有機層は、前記金属層の金属原子が拡散して導電性を帯びている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画素内への過電流の流入を抑止するとともに、配線抵抗の低減により、大型パネルでも電位降下による画素間の輝度バラツキを大幅に低減した表示品質の高い有機EL表示装置を実現できる。また、製造プロセスを簡略化できるので生産性に優れた有機EL表示装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】図1Aは、本発明の実施の形態1における有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。
【図1B】図1Bは、図1AのA−A’線に沿って切断した要部断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1における有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1における有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1に係る第1の変形例を示す有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1に係る第2の変形例を示す有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1に係る第3の変形例を示す有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2における有機EL表示装置の要部を説明する部分断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2における有機EL表示装置の主要な回路構成図である。
【図9A】図9Aは、本発明の実施の形態3に係る有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。
【図9B】図9Bは、図9AのA−A’線に沿って切断した要部断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態3における有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態3における有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態3における有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態4における有機EL表示装置の要部を説明する部分断面図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態1に係る第4の変形例を示す有機EL表示装置の要部断面図である。
【図15】図15は、本発明の表示装置を内蔵した薄型フラットTVの外観図である。
【図16】図16は、特許文献1に記載された従来の表示装置の有する発光画素の構造断面図である。
【図17】図17は、特許文献3に記載された従来の発光装置の有する発光画素の構造断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、基板と、前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、前記基板上または前記基板内に前記第1電極と電気絶縁されて形成された補助配線と、前記第1電極の上方に形成された発光物質を含む発光層と、前記発光層と前記第1電極との間に介在し前記発光層への正孔輸送を行う正孔輸送層と、前記発光層の上方に形成された第2電極と、を具備し、前記正孔輸送層及び前記第2電極は、前記第1電極の上方から前記補助配線の上方に延設され、前記補助配線の上方の前記正孔輸送層と前記第2電極との間には、金属層が設けられ、前記第2電極と前記補助配線とは、前記正孔輸送層及び前記金属層を介して電気接続され、前記金属層は、仕事関数が前記正孔輸送層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値と同程度またはそれより小さい金属を含むものである。
【0026】
本態様によると、金属層の有する金属原子の仕事関数を、正孔輸送層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値と同程度かそれより小さくする。これにより、補助配線と第2電極との電気的な接続部では、上記金属原子から正孔輸送層へ電子を供与することが容易となる。そのため、発光部ではnドープされていない正孔輸送層が、接続部ではnドープされるので、第2電極の電圧降下に起因する発光素子間の輝度バラツキの低減が図られる。
【0027】
また、上記接続部に設けられた層は、補助配線の金属や第2電極に使用されるITOに比べると電気抵抗が高く設定できるので、過電流に対する電気的な緩衝層として機能することにより、過電流を効果的に抑制できる。さらに、第1電極と第2電極との間に形成された発光部の形成工程では、正孔輸送層にnドープするための工程を要しないので、製造工程の簡略化が図られる。ここで、上記発光部は、前記第1電極、前記第1電極の上方に形成された発光物質を含む発光層、及び前記発光層の上方に形成された第2電極を含む。前記接続部は、前記補助配線、前記補助配線の上方の前記正孔輸送層及び前記第2電極、前記正孔輸送層及び前記第2電極の間に介在する金属層を含む。
【0028】
また、前記第1電極の上方および前記補助配線の上方における前記正孔輸送層は、nドープされていない有機材料により形成された層である。
【0029】
前記第1電極の上方における前記正孔輸送層がnドープされると、前記正孔輸送層上に積層された発光層に含まれる発光物質が、ドープされた金属原子と反応して、前記発光層に含まれる発光物質が劣化してしまう。
【0030】
本態様によると、前記正孔輸送層の形成時には、前記正孔輸送層はnドープされていない有機材料により形成される。よって、nドープされていない正孔輸送層により、前記発光層の輝度劣化を防止して前記発光層の長寿命化を図ることができる。
【0031】
また、前記金属層に含まれる前記金属は、当該金属の仕事関数値から前記正孔輸送層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた値が、0.5eV以下である。
【0032】
正孔輸送層を構成する正孔輸送性の有機物質は、一般的に、1.7〜2.5eV程度のエネルギー準位の範囲に最低非占有分子軌道を有する。一方、電子輸送性材料は、一般的に、2.5〜3.5eV程度のエネルギー準位の範囲に最低非占有分子軌道を有する。また、正孔輸送性の有機物質に電子を供与する金属は、電子輸送性の有機物質に電子を供与する金属に比べ、電子エネルギー準位、つまり仕事関数が小さいことが要求される。
【0033】
本態様によると、上記正孔輸送層へ電子を十分に供給する金属の仕事関数としては、上記正孔輸送性の有機物質の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値との差が0.5eV以内か、上記正孔輸送性の有機物質の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値よりも小さいことが要求される。これにより、上記接続部における正孔輸送層へのnドープが十分になされる。
【0034】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記第2電極と前記補助配線との間に介在する前記正孔輸送層は、前記第2電極と前記正孔輸送層との間に介在する前記金属層との接触によりnドープされるものである。
【0035】
本態様によると、前記第2電極と前記補助配線との間に介在する前記正孔輸送層は、前記第2電極と前記正孔輸送層との間に介在する前記金属層との接触により自然にnドープされる。これにより、前記正孔輸送層にnドープするための工程を要することなく、絶縁材料である前記正孔輸送層が導電性を帯びるので、前記第2電極と前記補助配線との間の抵抗を下げることができる。その結果、前記発光層の輝度劣化を防止して前記発光層の長寿命化を図りつつ、前記第2電極の電圧降下に起因する発光素子間の輝度バラツキを低減できる。
【0036】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記金属層に含まれる前記金属は、当該金属の仕事関数値から前記正孔輸送層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた値が、−0.5eV以上である。
【0037】
本態様によると、上記正孔輸送層へ電子を十分に供給する金属の仕事関数値から上記正孔輸送性の有機物質の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた差が−0.5eV以上である。これにより、上記接続部における正孔輸送層へのnドープが十分になされる。
【0038】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記補助配線の上方における前記正孔輸送層のnドープ濃度は、前記第1電極の上方における前記正孔輸送層のnドープ濃度より高い。
【0039】
本態様によると、上記発光部における正孔輸送層が発光層と接している構造でも、発光部の発光効率を低下させずに、第2電極の電圧降下に起因する発光素子間の輝度バラツキの低減が図られる。ここで、発光部における正孔輸送層とは、前記第1電極の上方における前記正孔輸送層をいう。
【0040】
また、前記第1電極の上方における前記正孔輸送層が、前記正孔輸送層が周辺の層からの影響によりnドープされたとしても、前記第1電極の上方における前記正孔輸送層のnドープ濃度は、前記補助配線の上方における前記正孔輸送層のnドープ濃度より低い。そのため、前記発光層に含まれる発光物質が前記正孔輸送層にnドープされた金属原子と反応しても、前記発光層に含まれる発光物質が劣化するのを抑制できる。その結果、前記発光層の輝度劣化を防止して前記発光層の長寿命化を図ることができる。
【0041】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記金属層は、前記第1電極上から前記補助配線上にわたり連続して形成されているものである。
【0042】
本態様によると、前記接続部に設けられた金属層の形成にあたり、高精細マスクを用いたパターニング工程が不要となるので、製造プロセスが容易となる。また、大画面化、高精細化に対して有利となる。
【0043】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記金属層は、前記第1電極の上方において前記発光層へ電子を注入する電子注入層である。
【0044】
本態様によると、前記金属層は、前記第1電極の上方において、電子の生成を補助して前記発光層へ電子を注入する電子注入層であってもよい。
【0045】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記金属層の金属原子は、前記補助配線上において、前記金属層と前記正孔輸送層との界面である第1主面と反対側に位置する前記正孔輸送層の第2主面の近傍まで拡散している。
【0046】
本態様によると、前記金属層の金属原子は、前記補助配線上において、前記金属層と前記正孔輸送層との界面である第1主面と反対側に位置する前記正孔輸送層の第2主面の近傍まで拡散していることが好ましい。
【0047】
また、別の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記金属層の金属原子は、前記第2主面から5nm以内まで到達している。
【0048】
本態様によると、前記金属層の金属原子は、前記第2主面から5nm以内まで到達していることが好ましい。これにより、接続部における正孔輸送層の積層方向にわたって均一にnドープされるので、ドープされない状態では電気抵抗の高い正孔輸送層の抵抗値を低減することが可能となる。
【0049】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記正孔輸送層の膜厚は、前記補助配線上では、0nm超50nm以下である。
【0050】
本態様によると、前記正孔輸送層の膜厚は、前記補助配線上において、0nm超50nm以下であることが好ましい。接続部における正孔輸送層の膜厚が50nmより大きくなると、金属層の金属原子が正孔輸送層の積層方向にわたって均一に拡散することが困難となる。よって、接続部における正孔輸送層の膜厚が0nm超50nm以下であることにより、ドープされない状態では電気抵抗の高い正孔輸送層の抵抗値を低減することが可能となる。
【0051】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記基板は、少なくとも第1層及び当該第1層と異なる第2層とを有し、前記第1電極は、前記第1層上に形成され、前記補助配線は、前記第2層上に形成されている。
【0052】
本態様によると、前記基板は、少なくとも第1層及び当該第1層と異なる第2層とを有し、前記第1電極は、前記第1層上に形成され、前記補助配線は、前記第2層上に形成されていてもよい。
【0053】
これにより、補助配線の配置位置や面積などが、第1電極の配置により制限を受けにくいので、設計自由度の高い有機EL表示装置を実現できる。例えば、補助配線と第1電極とを、それぞれ、基板の異なる層に設けることにより、補助配線と第1電極とが重なるように形成することもできるため、補助配線の面積を大幅に拡大できる。そして、それに対応して補助配線と接合部との接続面積を拡大できる。その結果、過電流を効果的に抑制できる。さらに、第1電極と補助配線とを立体的に配置できるため、配線電極の形状や大きさに対する制限を大幅に緩和できる。また、第1電極と補助配線とを異なる材料で構成できるため、補助配線では必要な抵抗率に応じて、また第1電極では発光部の構成に応じて最適な材料など、選択の範囲が拡大する。例えば、下面発光方式の場合、第1電極を透明性の導電材料で形成し、補助配線を金属材料で形成することができる。
【0054】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記有機EL表示装置は、前記第1電極、前記発光層及び前記第2電極を含む発光画素が複数、マトリクス状に配置されており、前記第1電極及び前記発光層は、少なくとも前記発光画素ごとに離間して設けられ、前記補助配線は、少なくとも前記発光画素の列ごと及び前記発光画素の行ごとのいずれかに配置されている。
【0055】
本態様によると、第2電極と補助配線間の距離に依存する配線抵抗を低減して、駆動電圧の変動を抑制し、表示品質の高いカラー有機EL表示装置を実現でき、また、第2電極と補助配線との耐過電流特性を向上できる。
【0056】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記複数の発光画素のそれぞれは、少なくとも3つのサブ画素で構成され、前記第1電極及び前記発光層は、前記サブ画素ごとに離間して設けられ、前記補助配線は、少なくとも前記サブ画素の列ごと及び前記サブ画素の行ごとのいずれかに配置されている。
【0057】
本態様によると、第2電極と補助配線間の距離に依存する配線抵抗を大幅に低減して、駆動電圧の変動をさらに抑制し、表示品質の高いカラー有機EL表示装置を実現できる。
【0058】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記複数の発光画素のそれぞれは、少なくとも3つのサブ画素で構成され、前記第1電極及び前記発光層は、前記サブ画素ごとに離間して設けられ、前記補助配線は、少なくとも前記発光画素の列ごと及び前記発光画素の行ごとのいずれかに配置されている。
【0059】
本態様によると、補助配線と第2電極は、1サブ画素ごとに補助配線が設けられる場合と比較して、補助配線の本数や接合ポイント数を低減できるので、より広い接合開口部の面積を介して接続することが可能となる。その結果、第2電極の電圧変動をさらに抑制し、表示パネルの表示の均一性を向上することができる。
【0060】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記基板は、さらに、前記第1電極の下に配置された層間絶縁層と、前記層間絶縁層の下に配置され、前記第1電極、前記発光層及び前記第2電極を含む発光画素を駆動する駆動素子を有する駆動回路層とを備え、前記層間絶縁層に設けられた導電ビアを介し、前記第1電極と前記駆動素子とが接続されている。
【0061】
本態様によると、画素部内に駆動回路を一体化したアクティブマトリクス型の有機EL表示装置を実現できる。
【0062】
また、別の態様の有機EL表示装置は、前記有機EL表示装置において、前記駆動素子は、薄膜トランジスタからなり、前記第1電極は、前記導電ビアを介し前記駆動素子のソース端子又はドレイン端子と接続されている。
【0063】
本態様によると、第2電極と補助配線との接続抵抗が変動しても、発光部に印加される電圧の変動を抑制できる。その結果、表示品質に優れる有機EL表示装置を実現できる。
【0064】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、複数の発光画素が配置されている有機EL表示装置の製造方法であって、基板上または基板内に、第1電極と当該第1電極と電気絶縁された補助配線とを形成する第1形成工程と、前記第1電極の上方に、発光物質を含む発光層と、nドープされていない有機材料により形成され当該発光層への正孔輸送を行う正孔輸送層とを含む発光部を形成し、前記補助配線の上方に、前記正孔輸送層と、当該正孔輸送層に接し仕事関数値から前記正孔輸送層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた値が0.5eV以下である金属からなる金属層を含む接続部を形成する第2形成工程と、前記第2形成工程の後、少なくとも前記発光部及び前記接続部の上に、第2電極を形成する第3形成工程とを含み、前記補助配線の上方における前記正孔輸送層には、前記第2形成工程により、前記金属層と接触し、nドープされている。
【0065】
本態様によると、このような特徴的な手段を備える有機EL表示装置として実現することができるだけでなく、有機EL表示装置に含まれる特徴的な手段をステップとする有機EL表示装置の製造方法として実現することができる。
【0066】
また、別の態様の有機EL表示装置の製造方法は、前記有機EL表示装置の製造方法において、前記第2形成工程では、前記発光部は、前記金属層を含み、前記金属層と前記正孔輸送層とを、前記発光部及び前記接続部にわたり連続して形成するものである。
【0067】
また、別の態様の有機EL表示装置の製造方法は、前記有機EL表示装置の製造方法において、前記基板は、少なくとも第1層及び当該第1層と異なる第2層を有し、前記第1形成工程では、前記第1層の上に前記第1電極を形成し、前記第2層の上に前記補助配線を形成するものである。
【0068】
また、別の態様の有機EL表示装置の製造方法は、前記有機EL表示装置の製造方法において、前記第2形成工程における、前記補助配線上に形成された前記金属層と、前記第3形成工程における前記第2電極とは、連続したドライプロセスにより形成されているものである。
【0069】
また、別の態様の有機EL表示装置の製造方法は、前記有機EL表示装置の製造方法において、前記第1形成工程の前に、前記基板の構成層として、前記発光画素を駆動する駆動素子を有する駆動回路層を形成する駆動層形成工程と、前記駆動回路層の上に、前記基板の最上層として、前記駆動素子と前記第1電極とを導通させる導電ビアを有する層間絶縁層を形成する絶縁層形成工程とを含むものである。
【0070】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態および各図面において、同じ構成要素には同じ符号を付し説明する。また、以下では、上面発光方式の陽極(アノード)を第1電極、陰極(カソード)を第2電極とする有機EL素子からなる表示装置を例に説明するが、これに限られない。
【0071】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置と記す)について、図面を用いて説明する。
【0072】
図1Aは、本発明の実施の形態1における有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。また、図1Bは、図1AのA−A’線に沿って切断した要部断面図である。
【0073】
図1Bに記載された本実施の形態に係る有機EL表示装置100は、基板10と、基板10上に設けられた第1電極20及び補助配線30と、第1電極20上に設けられた正孔注入層40と、画素開口部45及び接続開口部35を形成する隔壁50と、それらの上面に設けられた正孔輸送層60と、画素開口部45に設けられた発光層70と、それらの上面に設けられた金属層80と、金属層80上に設けられた第2電極90とから構成されている。
【0074】
また、図1Aに記載されたように、有機EL表示装置100は、発光部95を備える発光画素95Aがマトリクス状に配置され、補助配線30は、各発光部95に沿って発光画素列ごとに配置して設けられている。なお、図1Bに記載された正孔輸送層60、金属層80及び第2電極90は、図1Aに記載された部分平面図の全面にわたって形成されている。そして、補助配線30と第2電極90は、補助配線30に沿って設けられた接続開口部35において、正孔輸送層60及び金属層80からなる接続部を介して電気的に接続されている。
【0075】
なお、接続開口部35の第2電極90と補助配線30との間の層構成として、正孔輸送層60及び金属層80以外の層が含まれており、電流の流れる方向に対して、電流の流れを阻止しない層構成であれば、上記構造に限定されない。このような多層構造を有する有機EL表示装置も本発明に含まれ、図1A及び図1Bに記載された実施の形態1に係る有機EL表示装置100と同様の効果を有する。
【0076】
また、発光部95は、画素開口部45に設けられた、少なくとも発光層70、正孔輸送層60及び金属層80から構成され、発光層70に注入された電子と正孔の再結合により発生する光を第2電極90面側から放出する。なお、第1電極20は、発光部95に対応して画素ごとに離間して設けられている。すなわち、発光部が、少なくとも3つのRGBなどのサブ画素から構成されている場合には、各サブ画素に対応した発光部95及び第1電極20がサブ画素ごとに離間して設けられている。
【0077】
ここで、基板10としては、特に限定されないが、例えば、ガラス基板、石英基板などが用いられる。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホンなどのプラスチック基板を用いて、有機EL表示装置に曲げ性を付与することもできる。特に本実施の形態のように、上面発光方式の場合、不透明プラスチック基板やセラミック基板を用いることができる。
【0078】
また、第1電極20および補助配線30としては、特に限定されないが、電気抵抗率が小さい材料を用いることが好ましく、例えば銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、鉄、白金、タングステン、鉛、錫、アンチモン、ストロンチウム、チタン、マンガン、インジウム、亜鉛、バナジウム、タンタル、ニオブ、ランタン、セリウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、パラジウム、銅、コバルト、のうちのいずれかの金属、これらの金属の合金、またはそれらを積層したものを用いることができる。
【0079】
また、発光部を構成する正孔注入層40は、正孔注入性の材料を主成分とする層である。正孔注入性の材料とは、第1電極20側から注入された正孔を安定的に、又は正孔の生成を補助して発光層へ注入する機能を有する材料である。正孔注入層40としては、例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)などを用いることができる。
【0080】
正孔輸送層60は、正孔注入層40、隔壁50及び補助配線30の上に全面形成されており、正孔注入層40から注入された正孔を発光層70内へ輸送する機能を有する。正孔輸送層60としては、正孔輸送性の有機材料を用いることができる。正孔輸送性の有機材料とは、生じた正孔を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を有する有機物質である。これは、p−型の有機半導体と呼ばれることもある。
【0081】
正孔輸送層60は、高分子材料でも低分子材料であってもよいが、湿式印刷法で製膜できることが好ましく、上層である発光層70を形成する際に、これに溶出しにくいよう、架橋剤を含むことが好ましい。正孔輸送性の材料の例としては、特に限定されるものではないが、芳香族アミンを用いることができ、好ましくはトリフェニルアミンの誘導体及びトリアリールアミン誘導体が用いられる。架橋剤の例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを用いることができる。
【0082】
正孔輸送層60を形成する製膜法としては、特に限定されるものではないが、インクジェット法に代表されるノズルジェット法や、ディスペンサー法を用いることができる。この場合、インクジェット法は、インク化した有機成膜材料をノズルから噴射して、正孔輸送層60を形成する方法である。
【0083】
また、発光部を形成する発光層70としては、低分子系または高分子系の有機発光材料を用いることができる。高分子系の発光材料としては、例えばポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレンなどのポリマー発光材料などを用いることができる。また、低分子系の発光材料としては、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeBq2)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4’−ビス(5,7−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4’−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフィン、2,5−ビス(〔5−α,α−ジメチルベンジル〕−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾオキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾールなどのベンゾオキサゾール系、2,2’−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール系、2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系などの蛍光増白剤や、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕などの8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオンなどの金属キレート化オキシノイド化合物や、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼンなどのスチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニル)ビニル〕ピラジンなどのジスチルピラジン誘導体や、ナフタルイミド誘導体や、ペリレン誘導体や、オキサジアゾール誘導体や、アルダジン誘導体や、シクロペンタジエン誘導体や、スチリルアミン誘導体や、クマリン系誘導体や、芳香族ジメチリディン誘導体などが用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネンなども用いられる。あるいは、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光発光材料を用いることもできる。
【0084】
金属層80は、電子の生成を補助して発光層70へ電子を注入する機能を有する。また、金属層80は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする金属の層であり、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を2種類以上含有していてもよい。これには、アルカリ金属とアルカリ土類金属の双方を含有する場合を含む。
【0085】
さらに、金属層80は、接続開口部35において正孔輸送層60と接し接続部を構成している。この接続部における正孔輸送層60の抵抗値を低減させるため、金属層80は、接続部の正孔輸送層60に対し、電子を供給する機能を有する。このため、金属層80は、仕事関数が正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値と同程度またはそれより小さい金属で構成される。この接続部における積層構造により、接続部における正孔輸送層60には0.1〜30%程度の金属原子が拡散する。つまり、補助配線30の上方における正孔輸送層60のnドープ濃度は、第1電極20の上方における正孔輸送層60のnドープ濃度より高い。この金属層80の有する金属元素の要件について、以下、説明を行う。
【0086】
電子供与性の金属から有機物質へ電子を供与するためには、当該金属の電子エネルギー準位と有機物質の最低非占有分子軌道のエネルギー準位とのギャップが小さいことが好ましい。ここで、真空準位に対し、正孔輸送性の有機物質は、一般的に、1.7〜2.5eV程度のエネルギー準位の範囲に最低非占有分子軌道を有している(例えば、Chem. Rev.vol. 107, p953-1010 (2007))。一方、電子輸送性材料は、一般的に、2.5〜3.5eV程度のエネルギー準位の範囲に最低非占有分子軌道を有している(例えば、Chem. Rev. vol. 107, p953-1010 (2007))。正孔輸送性の有機物質に電子を供与する金属は、電子輸送性の有機物質に電子を供与する金属に比べ、電子エネルギー準位、つまり仕事関数が小さいことが好ましい。以上より、正孔輸送性の有機物質に電子を供与する金属の仕事関数としては、当該金属の仕事関数値から正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた値が、0.5eV以下であることが好ましい。アルカリ金属またはアルカリ土類金属であって、この条件を満たす金属としては、例えば、リチウム(仕事関数:2.9eV)、カリウム(仕事関数:2.3eV)、ルビジウム(仕事関数:2.3eV)、セシウム(仕事関数:2.1eV)、カルシウム(仕事関数:2.9eV)、ストロンチウム(仕事関数:2.6eV)、バリウム(仕事関数:2.5eV)、ナトリウム(仕事関数:2.4eV)、セリウム(仕事関数:2.9eV)、ユーロピウム(仕事関数:2.5eV)などが挙げられる。上記例示したこれらの金属の仕事関数は、3.0eV以下であり、上述した正孔輸送性の有機物質に電子を供与する金属としての好適な条件を満たす。
【0087】
さらに、正孔輸送性の有機物質に電子を供与する金属は、当該金属の仕事関数値から正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた差分値が、−0.5eV以上であることが好ましい。正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値よりも、仕事関数値の大きい金属は、上述したように、両者の差分値が小さいことが好ましい。一方、正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値よりも、仕事関数値の小さい金属は、原理的には両者の差分値に関係なく、正孔輸送性の有機物質に電子を供与することが可能である。例えば、正孔輸送層60の有する正孔輸送性の有機物質が、2.5eVの最低非占有分子軌道のエネルギー準位である場合、仕事関数値が2.1eVであるセシウムは、正孔輸送層60の有機物質に電子を供与する金属として好適である。この場合には、上記差分値が、−0.4eVとなる。現有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属を鑑み、当該差分値が−0.5eV以上であることが導出される。
【0088】
金属層80の膜厚としては、好ましくは1〜20nm、より好ましくは3〜7nmである。金属層80が薄すぎると、金属層80の上層の蒸着時、元来潜在している、あるいは外部から侵入する水や酸素によって容易に劣化してしまい、低電圧、高効率の特性を得ることが困難となる。これら水や酸素は、上記上層の蒸着時、あるいは膜内の吸着などの潜在、あるいは外部から侵入してくる経路が考えられ、一般に完全に取り除くことはできない。一方、この層が厚すぎると、これらは基本的に光を透過しない金属膜であるため、有機層で生成した発光を吸収あるいは素子内部に閉じ込めてしまうために、高い発光効率を得ることが困難となる。
【0089】
これらは、特に限定されるものではないが、好ましくは、抵抗加熱蒸着法又は電子ビーム蒸着法により形成される。
【0090】
また、金属層80の金属原子は、金属層80と正孔輸送層60との界面である第1主面と反対側に位置する正孔輸送層60の第2主面の近傍まで拡散していることが好ましい。さらには、金属層80の金属原子は、上記第2主面から5nm以内まで到達していることが好ましい。
【0091】
これにより、接続部における正孔輸送層60の積層方向にわたって均一にnドープがなされるので、ドープされない状態では電気抵抗の高い正孔輸送層60の抵抗値を低減することが可能となる。
【0092】
また、正孔輸送層60の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。接続部における正孔輸送層60の膜厚が50nmより大きくなると、金属層80の金属原子が正孔輸送層60の積層方向にわたって均一に拡散することが困難となる。よって、接続部における正孔輸送層60の膜厚が50nm以下であることにより、ドープされない状態では電気抵抗の高い正孔輸送層60の抵抗値を低減することが可能となる。
【0093】
なお、発光層70の直上に金属層80が積層されることにより、電子輸送機能を有する有機層の積層が省略されるので、材料コストの低減及び成膜工程の簡略化が図られる。この構造は、湿式製法による簡略化で低コスト化に利点のある高分子有機発光層を用いる有機エレクトロルミネッセンス素子において特に効果がある。
【0094】
隔壁50としては、ポリイミド樹脂などの樹脂材料を用いることができる。このとき、発光部で発生する光の隣接する発光部への透過を防止するために、例えばカーボン粒子などを樹脂中に含有させてもよい。
【0095】
第2電極90としては、特に限定されないが、上面発光方式の場合、インジウムスズ酸化物やインジウム亜鉛酸化物を用いることが好ましい。
【0096】
本実施の形態によれば、金属層80の有する金属原子の仕事関数が、正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値と同程度かそれより小さいので、補助配線30の上方である接続部では上記金属原子から正孔輸送層60へ電子を供与することが容易となる。よって、第1電極20の上方である発光部ではnドープされていない正孔輸送層60が、接続部ではnドープされるので、第2電極の電圧降下に起因する発光素子間の輝度バラツキの低減が図られる。接続部に設けられた層は、補助配線の金属や第2電極のITOに比べると電気抵抗が高く設定できるので、過電流に対する電気的な緩衝層として機能することにより、過電流を効果的に抑制できる。また、発光部形成工程では、正孔輸送層にnドープするための工程を要しないので、製造工程の簡略化が図られる。
【0097】
また、接続部に設けられた金属層80及び正孔輸送層60の形成にあたり、発光部の構成層が用いられ、高精細マスクを用いたパターニング工程が不要となるので、製造プロセスが容易となる。また、大画面化、高精細化に対して有利となる。
【0098】
以下に、本発明の実施の形態1における有機EL表示装置の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0099】
図2及び図3は、本発明の実施の形態1における有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。
【0100】
まず、図2(a)に示すように、例えばTFT(Thin Film Transistor)とコンデンサなどで構成された駆動回路(図示せず)を備えた基板10上に、Alを、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて、全面に形成する。そして、フォトリソグラフィ法を用いて、Alをエッチングして、所定の位置に第1電極20と第1電極20と電気絶縁された位置に補助配線30を形成する。このとき、第1電極20は、発光部に対応して個別に形成され、補助配線30は、二次元のマトリクス状に配列された発光画素の、例えば行または列に沿って、一次元的に配置して形成される。なお、基板10には、例えば、駆動回路などによる凹凸を解消するために、必要に応じて、平坦化層を設け、その上に第1電極20と補助配線30とを形成してもよい。
【0101】
次に、図2(b)に示すように、正孔注入層40として、例えば、PEDOTなどを、例えばインクジェット法などを用いて、少なくとも第1電極20上の画素開口部に相当する位置に成膜する。
【0102】
次に、図2(c)に示すように、ネガ型のフォトレジスト50Aを全面に塗布する。
【0103】
次に、図2(d)に示すように、ネガ型のフォトレジスト50Aの上に、発光部と接続部に相当する位置に遮光部を有するマスク51を位置合わせして載置する。そして、このマスク51を介して、フォトリソグラフィ法を用いてフォトレジスト50Aを露光する。
【0104】
次に、図2(e)に示すように、マスク51を取り外し、現像処理をして、画素開口部45と接続開口部35を構成する隔壁50を形成する。
【0105】
次に、図3(a)に示すように、正孔輸送層60として、インク化した正孔輸送性の有機成膜材料をノズルから全面に噴射する。そして、真空乾燥を行い、引き続き、窒素雰囲気中において加熱処理することで架橋反応を行う。ここで、正孔輸送層60は、nドープされていない有機材料により形成された層である。
【0106】
次に、図3(b)に示すように、画素開口部45内に、例えばインクジェット法などを用いて、発光層となるペースト材料を塗布する。このとき、発光層となるペースト材料は、画素開口部45から表面張力により盛り上がった状態で塗布される。
【0107】
次に、図3(c)に示すように、ペースト材料を、例えば、80℃、30分程度乾燥させて、ペースト材料の溶剤成分を揮発させて発光層70を形成する。なお、このとき、発光部が少なくとも3つのRGBなどの異なるサブ画素から構成される場合、サブ画素ごとに、図3(b)と図3(c)とを繰り返すことにより、サブ画素ごとに異なる発光部の発光層が形成される。
【0108】
次に、図3(d)に示すように、少なくとも画素開口部45及び接続開口部35を被覆するように、例えば真空蒸着法を用いて、金属層80を全面に形成する。これにより、正孔輸送層60及び金属層80の積層構造である接続部が形成される。
【0109】
金属層80の有する金属原子の仕事関数は、正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値と同程度かそれより小さいので、補助配線30の上方である接続部では上記金属原子から正孔輸送層60へ電子を供与することが容易となる。よって、第1電極20の上方である発光部ではnドープされていない正孔輸送層60が、接続部ではnドープされる。
【0110】
次に、図3(e)に示すように、金属層80の上に、例えばインジウムスズ酸化物などを、スパッタリング法を用いて成膜し、第2電極90を全面に形成する。これにより、第2電極90と補助配線30とが、正孔輸送層60及び金属層80の積層構造を介して電気的に接続される。
【0111】
その後、例えば樹脂層やガラスなどを設けて保護層を形成して、有機EL表示装置100が製造される。
【0112】
本実施の形態の有機EL表示装置の製造方法によれば、補助配線と第2電極とが接続部の正孔輸送層及び金属層の積層構造を介して接続されるため、過電流による駆動回路や発光部の特性低下を電子輸送層により抑制して、寿命などの信頼性に優れた有機EL表示装置を製造できる。
【0113】
なお、図3(d)に記載された金属層80の成膜工程と、図3(e)に記載された第2電極90の成膜工程とは、連続したドライプロセスであることが好ましい。ここで、連続したドライプロセスとは、スパッタリング法や蒸着法を用いた成膜工程間を、高真空度が保持された状態で仕掛かり品を移行させるプロセスのことである。金属層80の成膜工程から第2電極90の成膜工程への一連のプロセスを、上記連続したドライプロセスとすることにより、製造プロセスが簡略化される。また、金属層80と第2電極90との界面に、不要な酸化物層などが介在することが抑制されるので、高発光効率、低駆動電圧及び長寿命化にも貢献する。
【0114】
また、本実施の形態によれば、少なくとも発光層、正孔輸送層、金属層及び第2電極が基本的に高精細マスクを介在させずに形成できる。その結果、高い生産性で有機EL表示装置を効率よく製造できる。
【0115】
なお、本実施の形態では、発光部の構成として、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/金属層を例に説明したが、これに限られない。例えば、発光層以外に少なくとも正孔輸送層及び金属層を含む構成であればよい。そして、発光部の構成に対応して、第2電極と補助配線との間に介在する接続部として、正孔輸送層及び金属層以外に、少なくとも電子注入層、電子輸送層及び正孔注入層のいずれか一層を設けてもよい。
【0116】
この場合、接続部は、第2電極から補助配線に向かって流れる電流が逆方向のダイオード特性を有しないように構成されることが好ましい。
【0117】
しかし、例えば、接続部として正孔注入層と電子輸送層との積層構造を含む構造とした場合などでは、第2電極から補助配線に向かって流れる電流が逆方向のダイオード特性を有してしまう場合が想定される。この場合であっても、この積層構造の有する逆方向のダイオード特性の逆耐圧が接続部に印加される電圧よりも低い場合には、第2電極から補助配線に向かってなだれ電流が発生する。よって、上記積層構造を有する有機EL表示装置も本発明に含まれ、図1に記載された実施の形態1に係る有機EL表示装置100と同様の効果を有する。
【0118】
一方、この積層構造の有する逆方向のダイオード特性の逆耐圧が接続部に印加される電圧よりも高い場合には、第2電極から補助配線に向かっての電流パスが遮断されてしまい、発光のための電流パスも遮断されてしまう。このような積層構造は、本発明においては不適合である。
【0119】
つまり、正孔輸送層60及び金属層80を含み、発光部を流れる電流に対して、接続部の電流の流れを阻止しない層構成であれば、組み合わせは任意である。
【0120】
ここで、電子注入層とは、電子注入性の材料を主成分とする層である。電子注入性の材料とは、第2電極90側から注入された電子を安定的に、又は電子の生成を補助して発光層70へ注入する機能を有する材料である。
【0121】
また、電子輸送層とは、電子輸送性の材料を主成分とする層である。電子輸送性の材料とは、電子アクセプター性を有し陰イオンになりやすい性質と、発生した電子を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を併せ持ち、第2電極90から発光層70までの電荷輸送に対して適性を有する材料のことである。
【0122】
また、本実施の形態では、隔壁を有する有機EL表示装置を例に説明したが、これに限られない。例えば、図2(e)において、正孔輸送層60の画素開口部45以外の領域に発光層のペースト材料を撥水する層を設けることにより画素開口部のみに発光層を塗布してもよい。これにより、隔壁の形成工程が必要でなくなるため、さらに生産性を向上できる。
【0123】
なお、本実施の形態では、補助配線を発光画素列ごとに配置しているが、これに限られない。
【0124】
図4は、本発明の実施の形態1に係る第1の変形例を示す有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。同図に記載された有機EL表示装置200のように、発光部96を備える発光画素96Aがマトリクス状に配置され、発光画素行および発光画素列に沿って二次元状に補助配線30及び31が配置されていてもよい。これにより、補助配線30及び31と、第2電極90との接続面積を拡大して、電流密度を低減し、過電流に対する緩衝効果を向上できる。また、第2電極と補助配線との距離に依存する配線抵抗を小さくできるので、発光部の位置による駆動電圧ばらつきを抑制できる。その結果、さらに表示品質の高い有機EL表示装置を実現できる。
【0125】
また、図5は、本発明の実施の形態1に係る第2の変形例を示す有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。同図に記載された有機EL表示装置230は、発光部97を備える発光画素97AがRGBなどの少なくとも3つのサブ画素で構成されている。この場合のように、3つのサブ画素をまとめた発光画素ごとに、補助配線30が発光画素列ごとに発光画素に沿って一次元に配置されていてもよい。
【0126】
これにより、サブ画素の開口面積を拡大できるため、表示輝度の高い有機EL表示装置を実現できる。さらに、補助配線30の面積を拡大すれば、補助配線に流れ込む電流の密度をさらに低減して信頼性が向上できるとともに、マスクなどの位置合わせ精度を大幅に緩和できるので、生産性をさらに向上できる。
【0127】
また、図6は、本発明の実施の形態1に係る第3の変形例を示す有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。同図に記載された有機EL表示装置260は、発光部98を備える発光画素98AがRGBなどの少なくとも3つのサブ画素で構成されている。この場合のように、3つのサブ画素をまとめた発光画素ごとに、補助配線30が発光画素列ごとに、また、補助配線31が発光画素行ごとに二次元に配置されていてもよい。
【0128】
これにより、例えば、3つのサブ画素のうち中央に配置されたサブ画素における、第2電極と補助配線との距離に依存する配線抵抗を低減できるので、サブ画素間の輝度ばらつきを、さらに抑制することができる。
【0129】
(実施の形態2)
以下に、本発明の実施の形態2における有機EL表示装置について、図面を用いて説明する。
【0130】
図7は、本発明の実施の形態2における有機EL表示装置の要部を説明する部分断面図である。同図のように、有機EL表示装置300は、基板11と表示部100Aとを備える。基板11は、発光部を駆動する駆動素子を形成した駆動回路層111と、駆動回路層111上に形成された層間絶縁層112とを備える。また、表示部100Aは、図1Bに記載された有機EL表示装置100における基板10以外の構成に相当する。本実施の形態に係る有機EL表示装置300は、基板の構成が実施の形態1と異なる。以下、実施の形態1に記載された有機EL表示装置100と同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0131】
駆動回路層111は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)などのFETで構成された駆動素子(図示せず)からなる。また、駆動素子となる薄膜トランジスタは、一般にゲート電極と絶縁膜を挟んで対向するソース電極とドレイン電極とから構成されるが、詳細な説明は省略する。
【0132】
また、層間絶縁層112は、駆動回路層111の上に形成されている。そして、層間絶縁層112に形成された導電ビア113を介して、第1電極20と駆動素子の電極端子(図示せず)とが接続されている。
【0133】
表示部100Aは、層間絶縁層112上に形成されている。
【0134】
以下に、発光部を駆動する駆動回路層111について、図面を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態2における有機EL表示装置の主要な回路構成図である。同図に示されるように、駆動回路層111は、駆動素子としてNch−FETからなるスイッチングトランジスタTr1と、Pch−FETからなる駆動トランジスタTr2と、保持容量Cとを備える。そして、Tr1のドレイン電極はデータ線と、Tr1のゲート電極は走査線と、さらにTr1のソース電極は、保持容量CとTr2のゲート電極とに接続されている。また、Tr2のソース電極は電源Vddと、Tr2のドレイン電極は発光部の第1電極20と接続されている。
【0135】
この構成において、走査線に選択信号が入力され、Tr1を開状態にすると、データ線を介して供給されたデータ信号が電圧値として保持容量Cに書き込まれる。そして、保持容量Cに書き込まれた保持電圧は、1フレーム期間を通じて保持され、この保持電圧により、Tr2のコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した順バイアス電流が第1電極に供給される。さらに、第1電極に供給された順バイアス電流は、発光部、第2電極、例えば正孔輸送層と金属層との積層構造を有する接続部を介して補助配線を経由して流れる。これにより、発光部の発光層が電流に応じて発光することにより画像として表示される。
【0136】
また、本実施の形態によれば、駆動回路の駆動素子のドレイン電極に第1電極を接続して、補助配線に電流を流す構成である。
【0137】
これにより、駆動回路層111と一体化したアクティブマトリクス型の有機EL表示装置300を簡単な構成で実現できるとともに、画素内への過電流の流入を抑止しつつ画素間の輝度バラツキを大幅に低減することが可能となる。
【0138】
なお図8は、有機EL表示装置の主要な回路構成の一例であって、他の回路構成であっても適宜本発明に適応できることは言うまでもない。例えば、駆動素子のソース電極に第1電極が接続された回路構成であっても、同様の効果を奏する。
【0139】
(実施の形態3)
以下に、本発明の実施の形態3における有機EL表示装置について、図面を用いて説明する。
【0140】
図9Aは、本発明の実施の形態3に係る有機EL表示装置の要部を説明する部分平面図である。また、図9Bは、図9AのA−A’線に沿って切断した要部断面図である。
【0141】
図9Bに記載されたように、本実施の形態の有機EL表示装置400は、基板12と、基板12上に設けられた第1電極20と、基板12内に設けられた補助配線33と、第1電極20上に設けられた正孔注入層40と、画素開口部45及び接続開口部35を形成する隔壁50と、それらの上面に設けられた正孔輸送層60と、画素開口部45に設けられた発光層70と、それらの上面に設けられた金属層80と、金属層80上に設けられた第2電極90とから構成されている。
【0142】
基板12は、複数の層から構成され、基板12の最上層である第1層121と、第2層122とを備える。第1電極20は第1層121の上に形成されており、補助配線33は第2層122の上に形成されている。
【0143】
本実施の形態にかかる有機EL表示装置400は、実施の形態1に係る有機EL表示装置100と比較して、基板12が複数の層から構成され、基板の最上層に第1電極20が設けられ、当該最上層と異なる層に補助配線33が形成された点が構成として異なる。
【0144】
また、図9Aに記載されたように、有機EL表示装置400は、発光部99を備える発光画素99Aがマトリクス状に配置され、補助配線33は、各発光部99に沿って発光画素列ごとに配置して設けられている。なお、図9Bに記載された正孔輸送層60、金属層80及び第2電極90は、図9Aに記載された部分平面図の全面にわたって形成されている。そして、補助配線33と第2電極90とは、補助配線33に沿って設けられた接続開口部35において、正孔輸送層60及び金属層80からなる接続部を介して電気的に接続されている。
【0145】
なお、接続開口部35の第2電極90と補助配線30との間の層構成として、正孔輸送層60及び金属層80以外の層が含まれており、電流の流れる方向に対して、電流の流れを阻止しない層構成であれば、上記構造に限定されない。このような多層構造を有する有機EL表示装置も本発明に含まれ、図9A及び図9Bに記載された実施の形態3に係る有機EL表示装置400と同様の効果を有する。
【0146】
また、発光部99は、画素開口部45に設けられた、少なくとも発光層70、正孔輸送層60及び金属層80から構成され、発光層70に注入された電子と正孔の再結合により発生する光を第2電極90面側から放出する。なお、第1電極20は、発光部99に対応して発光画素ごとに離間して設けられている。すなわち、発光部が、少なくとも3つのRGBなどのサブ画素から構成されている場合には、各サブ画素に対応して発光部99及び第1電極20がサブ画素ごとに離間して設けられている。
【0147】
なお、有機EL表示装置400を構成する基板12、発光層70などの各構成要素の材料などは、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0148】
本実施の形態によれば、補助配線と第1電極とを、それぞれ、基板の異なる層に設けることにより、例えば補助配線と第1電極とが重なるように形成することもできるため、補助配線の面積を大幅に拡大できる。そして、それに対応して接続開口部35の面積を拡大できる。その結果、第2電極と正孔輸送層及び金属層からなる接続部との接続面積、及び補助配線と当該接続部との接続面積の拡大により、過電流を効果的に抑制できる。さらに、第1電極と補助配線とを立体的に配置できるため、配線電極の形状や大きさに対する制限を大幅に緩和できる。上記の場合、例えば基板に形成された駆動素子の電極端子に接続される導電ビアと補助配線とが電気的にショートしないのであれば、補助配線を全面に形成してもよい。
【0149】
また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、少なくとも発光画素行ごと及び発光画素列ごとのうちいずれかにより、一次元または二次元に補助配線が設けられてもよい。
【0150】
また、本実施の形態によれば、補助配線と第1電極が立体的に配置できるため、第1電極の面積を大きくできる、それにより、発光部の開口面積を大幅に拡大できる。その結果、低い駆動電圧や少ない駆動電流で発光部を発光できるので、長寿命で信頼性に優れた有機EL表示装置を実現できる。
【0151】
また、本実施の形態によれば、第1電極と補助配線とを異なる材料で構成できるため、補助配線では必要な抵抗率に応じて、また第1電極では発光部の構成に応じて最適な材料など、選択の範囲が拡大する。例えば、下面発光方式の場合、第1電極を透明性の導電材料で形成し、補助配線を金属材料で形成することができる。
【0152】
以下に、本発明の実施の形態3における有機EL表示装置の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0153】
図10〜図12は、本発明の実施の形態3における有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図である。
【0154】
まず、図10(a)に示すように、複数の層からなる基板12の下層となる第2層122上に、Alを、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて、全面に形成する。そして、フォトリソグラフィ法を用いて、Alをエッチングして、所定の位置に補助配線33を形成する。このとき、補助配線33は、二次元のマトリクス状に配列された発光部の、例えば行または列に沿って、一次元または二次元に配置して形成される。さらに、特に、上面発光方式の場合、各発光部を駆動する駆動回路と短絡などを生じなければ、任意の位置に補助配線を形成してもよい。
【0155】
次に、図10(b)に示すように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング法などを用いて、シリコンなどの酸化膜により基板の最上層である第1層121を形成する。このとき、第1層121の表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法などにより平坦化することが好ましい。
【0156】
次に、図10(c)に示すように、まず、Alを、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて、第1層121上に全面形成する。そして、フォトリソグラフィ法を用いて、Alをエッチングし、所定の位置に第1電極20を形成する。その後、正孔注入層40として、例えば、PEDOTなどを、例えばインクジェット法などを用いて、少なくとも第1電極20上の画素開口部に相当する位置に成膜する。
【0157】
次に、図10(d)に示すように、第1電極20と異なる位置で、補助配線33に沿って形成される接続開口部35となる位置に開口部を形成したレジスト膜125を形成する。
【0158】
次に、図10(e)に示すように、レジスト膜125の開口部を介して、第1層121をエッチングする。これにより、補助配線33が露出する。
【0159】
次に、図11(a)に示すように、ネガ型のフォトレジスト50Aを全面に塗布する。そして、ネガ型のフォトレジスト50Aの上に、画素開口部45と接続開口部35に相当する位置に遮光部を有するマスク51を位置合わせして載置する。そして、このマスク51を介して、フォトリソグラフィ法を用いてフォトレジスト50Aを露光する。
【0160】
次に、図11(b)に示すように、マスク51を取り外し、硬化処理をして、画素開口部45と接続開口部35を構成する隔壁50を形成する。
【0161】
次に、図11(c)に示すように、正孔輸送層60として、インク化した正孔輸送性の有機成膜材料をノズルから全面に噴射する。そして、真空乾燥を行い、引き続き、窒素雰囲気中において加熱処理することで架橋反応を行う。ここで、正孔輸送層60は、nドープされていない有機材料により形成された層である。
【0162】
次に、図11(d)に示すように、画素開口部45内に、例えば、インクジェット法などを用いて、発光層となるペースト材料を塗布する。このとき、発光層となるペースト材料は、画素開口部45から表面張力により盛り上がった状態で塗布される。
【0163】
次に、図11(e)に示すように、ペースト材料を、例えば、80℃、30分程度乾燥させて、ペースト材料の溶剤成分を揮発させて発光部の発光層70を形成する。なお、このとき、発光部が少なくとも3つのRGBなどの異なるサブ画素からなる場合、サブ画素ごとに、図11(d)と図11(e)を繰り返すことにより、サブ画素に異なる発光部の発光層を形成した画素が形成される。
【0164】
次に、図12(a)に示すように、少なくとも画素開口部45および接続開口部35を被覆するように、例えば真空蒸着法を用いて、金属層80を全面に形成する。これにより、正孔輸送層60及び金属層80の積層構造である接続部が形成される。
【0165】
金属層80の有する金属原子の仕事関数は、正孔輸送層60の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値と同程度かそれより小さいので、補助配線33の上方である接続部では上記金属原子から正孔輸送層60へ電子を供与することが容易となる。よって、第1電極20の上方である発光部ではnドープされていない正孔輸送層60が、接続部ではnドープされる。
【0166】
次に、図12(b)に示すように、金属層80の上に、例えばインジウムスズ酸化物などを、スパッタリング法を用いて成膜し、第2電極90を形成する。これにより、第2電極90と補助配線33が正孔輸送層60と金属層80との積層構造を介して電気的に接続される。
【0167】
その後、実施の形態1と同様に、例えば樹脂層やガラスなどを設けて保護層を形成して、有機EL表示装置400が製造される。
【0168】
本実施の形態の有機EL表示装置の製造方法によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0169】
また、本実施の形態の有機EL表示装置の製造方法によれば、補助配線と第1電極とを、基板の有する異なる層に設けることにより、第2電極と補助配線との接続面積をさらに拡大できる。これにより、電流密度を低減し、過電流に対する緩衝効果をさらに向上させ、駆動電圧の変動を抑制し、輝度ばらつきの少ない高い表示品質の有機EL表示装置を生産性よく製造できる。
【0170】
また、本実施の形態の有機EL表示装置の製造方法によれば、補助配線と第1電極が立体的に配置できるため、第1電極の面積を大きくして発光部の開口面積を大幅に拡大できる。その結果、低い駆動電圧や少ない駆動電流で発光できるので、長寿命で信頼性に優れた有機EL表示装置を製造できる。
【0171】
また、本実施の形態の有機EL表示装置の製造方法によれば、第1電極と補助配線とを異なる材料で形成できるため、補助配線では必要な抵抗率に応じて、また第1電極では発光部の構成に応じて、最適な材料を任意に選択することができる。その結果、材料などの選択自由度の高い有機EL表示装置を容易に製造できる。
【0172】
なお、図12(a)に記載された金属層80の成膜工程と、図12(b)に記載された第2電極90の成膜工程とは、連続したドライプロセスであることが好ましい。金属層80の成膜工程から第2電極90の成膜工程への一連のプロセスを、上記連続したドライプロセスとすることにより、製造プロセスが簡略化される。また、金属層80と第2電極90との界面に、不要な酸化物層などが介在することが抑制されるので、有機EL表示装置の高発光効率、低駆動電圧及び長寿命化にも貢献する。
【0173】
なお、本実施の形態では、発光部の構成として、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/金属層を例に説明したが、これに限られない。例えば、発光層以外に少なくとも正孔輸送層及び金属層を含む構成であればよい。そして、発光部の構成に対応して、第2電極と補助配線との間に介在する接続部として、正孔輸送層及び金属層以外に、少なくとも電子注入層、電子輸送層及び正孔注入層のいずれか一層を設けてもよい。
【0174】
この場合、接続部は、第2電極から補助配線に向かって流れる電流が逆方向のダイオード特性を有しないように構成されることが好ましい。
【0175】
しかし、例えば、接続部として正孔注入層と電子輸送層との積層構造を含む構造とした場合などでは、第2電極から補助配線に向かって流れる電流が逆方向のダイオード特性を有してしまう場合が想定される。この場合であっても、この積層構造の有する逆方向のダイオード特性の逆耐圧が接続部に印加される電圧よりも低い場合には、第2電極から補助配線に向かってなだれ電流が発生する。よって、上記積層構造を有する有機EL表示装置も本発明に含まれ、図12に記載された実施の形態3に係る有機EL表示装置400と同様の効果を有する。
【0176】
一方、この積層構造の有する逆方向のダイオード特性の逆耐圧が接続部に印加される電圧よりも高い場合には、第2電極から補助配線に向かっての電流パスが遮断されてしまい、発光のための電流パスも遮断されてしまう。このような積層構造は、本発明においては不適合である。
【0177】
つまり、正孔輸送層及び金属層を含み、発光部を流れる電流に対して、接続部の電流の流れを阻止しない層構成であれば、組み合わせは任意である。
【0178】
また、本実施の形態では、隔壁50を有する有機EL表示装置を例に説明したが、これに限られない。例えば、図11(c)において、正孔輸送層60の画素開口部45以外の領域に発光層のペースト材料を撥水する層を設けることにより画素開口部のみに発光層を塗布してもよい。これにより、隔壁の形成工程が必要でなくなるため、さらに生産性を向上できる。
【0179】
なお、本実施の形態では、補助配線を発光画素列ごとに配置しているが、これに限られない。
【0180】
(実施の形態4)
以下に、本発明の実施の形態4における有機EL表示装置について、図面を用いて説明する。
【0181】
図13は、本発明の実施の形態4における有機EL表示装置の要部を説明する部分断面図である。同図のように、有機EL表示装置500は、基板13と表示部500Aとを備える。基板13は、ベース層130と、発光部を駆動する駆動素子を形成した駆動回路層131と、駆動回路層131上に形成された層間絶縁層132とを備える。また、表示部500Aは、図9Bに記載された有機EL表示装置400における基板12以外の構成に相当する。本実施の形態に係る有機EL表示装置500は、基板の構成が実施の形態3と異なる。以下、実施の形態3に記載された有機EL表示装置400と同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0182】
第1電極20は、層間絶縁層132上に形成されている。
【0183】
補助配線34は、ベース層130上に形成されている。
【0184】
駆動回路層131は、ベース層130上に形成されており、例えば、TFTなどのFETで構成された駆動素子(図示せず)からなる。
【0185】
また、層間絶縁層132は、駆動回路層131の上に形成されている。そして、層間絶縁層132に形成された導電ビア133を介して、第1電極20と駆動素子の電極端子(図示せず)とが接続されている。
【0186】
本構成において、層間絶縁層132に形成した導電ビア133を介して第1電極20と駆動素子の電極端子(図示せず)が接続され、接続開口部35で正孔輸送層60と金属層80との積層構造からなる接続部を介して第2電極90と補助配線34とが接続されている。
【0187】
また、本実施の形態における有機EL表示装置500の主要な回路構成図は、図8に記載された実施の形態2に係る有機EL表示装置300の主要な回路構成図と同様である。
【0188】
本実施の形態によれば、駆動回路層131と一体化したアクティブマトリクス型の有機EL表示装置500を簡単な構成で実現できる。また、画素内への過電流の流入を抑止するとともに、発光部の駆動電圧の変動を抑制し、発光部の輝度ばらつきを低減した高い表示品質を備えた有機EL表示装置を実現できる。
【0189】
以上、本発明の有機EL表示装置及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明に係る有機EL表示装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。実施の形態1〜4及びその変形例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態1〜4及びその変形例に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る有機EL表示装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0190】
例えば、実施の形態3に係る有機EL表示装置400の断面構造を有し、実施の形態1に係る第1、第2及び第3の変形例を示す有機EL表示装置の補助配線30及び31を平面レイアウトとして有する有機EL表示装置も、実施の形態1〜4において得られた効果と同様の効果を奏する。
【0191】
なお、実施の形態1〜4において、接続部を構成する層は、発光部を構成する層の一部として説明してきたが、接続部を構成する層は、発光部を構成する層と連続している必要はない。図14は、本発明の実施の形態1に係る第4の変形例を示す有機EL表示装置の要部断面図である。同図における有機EL表示装置600は、図1Bに記載された有機EL表示装置100と比較して、金属層80が接続部のみに形成されている点が異なる。
【0192】
ここで、上述した本発明の実施の形態1に係る第4の変形例では、金属層80は、発光部の構成層ではなく、接続部の正孔輸送層60に電子を供与する機能のみのために必要な層である。この場合には、金属層80を形成する際に、接続部のみに金属層80を形成するため、あるいは、発光部に金属層80を形成しないようにするため、マスクプロセスが必要となる。この場合、製造プロセスの容易性は実施の形態1〜4の場合に比べて劣るが、接続部として、少なくともnドープされた正孔輸送性の材料を用いることにより、画素内への過電流の流入を抑止しながら輝度バラツキを抑制するという本発明の課題は解決される。
【0193】
また、実施の形態1〜4において、発光部における正孔輸送層60と接続部における正孔輸送層60とが分断された構造を有する場合においても、上述した実施の形態1に係る第4の変形例を示す有機EL表示装置で得られた効果と同様の効果を奏する。
【0194】
また、実施の形態1〜4では、金属層80に接して第2電極90が形成されている構造をとっているが、金属層80と第2電極90との間に、電子輸送性の層が形成されてもよい。例えば、以下のような製造プロセスにより電子輸送性の層が形成される。まず、真空蒸着法により、バリウム5nm(アルドリッチ製、純度99%以上)を金属層80として製膜する。次に、バリウム20%を混合した有機化合物Alq(新日鐵化学製、純度99%以上)の膜20nmを共蒸着法により製膜する。最後に、住友重機械工業株式会社製のプラズマコーティング装置を用いてITO電極を100nm形成して第2電極90とする。
【0195】
また、例えば、本発明に係る有機EL表示装置は、図15に記載されたような薄型フラットTVに内蔵される。過電流防止機能を有し輝度バラツキの抑制された本発明に係る有機EL表示装置により、高い表示品質を備えた薄型フラットTVが実現される。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明にかかる有機EL素子は、低駆動電圧で高効率、長寿命であることから、ディスプレイデバイスの画素発光源、液晶ディスプレイのバックライト、各種照明用光源、光デバイスの光源等として有用であり、特に、TFTと組み合わせたアクティブマトリクス型有機ELディスプレイパネルへの応用に適性がある。
【符号の説明】
【0197】
10、11、12、13、710、810 基板
20、720、820 第1電極
30、31、33、34、730、830 補助配線
35 接続開口部
40 正孔注入層
45 画素開口部
50、740、840 隔壁
50A フォトレジスト
51 マスク
60 正孔輸送層
70、860 発光層
80 金属層
90、760、880 第2電極
95、96、97、98、99 発光部
95A、96A、97A、98A、99A 発光画素
100、200、230、260、300、400、500、600 有機EL表示装置
100A、500A 表示部
111、131 駆動回路層
112、132 層間絶縁層
113、133 導電ビア
121 第1層
122 第2層
125 レジスト膜
130 ベース層
700 表示装置
745 開口部
750 光変調層
800 発光装置
850 第1のバッファー層
870 第2のバッファー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上または前記基板内に形成された第1電極と、
前記基板上または前記基板内に前記第1電極と電気絶縁されて形成された補助配線と、
前記第1電極の上方に形成された発光物質を含む発光層と、
前記発光層と前記第1電極との間に介在し、絶縁性の有機材料により形成された有機層と、
前記発光層の上方に形成された第2電極と、を具備し、
前記有機層及び前記第2電極は、前記第1電極の上方から前記補助配線の上方に延設され、
前記補助配線の上方の前記有機層と前記第2電極との間には、前記有機層に接して金属層が設けられ、
前記第2電極と前記補助配線とは、前記有機層及び前記金属層を介して電気接続され、
前記補助配線の上方における前記有機層は、前記金属層の金属原子が拡散して導電性を帯びている、
有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記金属層は、仕事関数値から前記有機層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた値が0.5eV以下である金属を含み、
前記第1電極の上方および前記補助配線の上方における前記有機層は、nドープされていない有機材料により形成された層であり、前記補助配線の上方における前記有機層は、前記金属層との接触により、nドープされている、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記金属層に含まれる前記金属は、
当該金属の仕事関数値から前記有機層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた値が、−0.5eV以上である、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記補助配線の上方における前記有機層のnドープ濃度は、前記第1電極の上方における前記有機層のnドープ濃度より高い、
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記金属層は、前記第1電極上から前記補助配線上にわたり連続して形成されている、
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記金属層は、前記第1電極の上方において前記発光層へ電子を注入する電子注入層である、
請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記金属層の金属原子は、前記補助配線上において、前記金属層と前記有機層との界面である第1主面と反対側に位置する前記有機層の第2主面の近傍まで拡散している、
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
前記金属層の金属原子は、前記第2主面から5nm以内まで到達している、
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項9】
前記金属層は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする金属を含む、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項10】
前記有機層の膜厚は、前記補助配線上において、0nm超50nm以下である、
請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項11】
前記有機層は、芳香族アミンにより形成される、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項12】
複数の発光画素が配置されている有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、
基板上または基板内に、第1電極と当該第1電極と電気絶縁された補助配線とを形成する第1形成工程と、
前記第1電極の上方に、発光物質を含む発光層と、nドープされていない有機材料により形成された有機層とを含む発光部を形成し、前記補助配線の上方に、前記有機層と、当該有機層に接する金属層とを含む接続部を形成する第2形成工程と、
前記第2形成工程の後、少なくとも前記発光部及び前記接続部の上に、第2電極を形成する第3形成工程とを含み、
前記補助配線の上方における前記有機層には、前記第2形成工程により、前記金属層の金属原子が拡散して、導電性を帯びている、
有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記金属層は、仕事関数値から前記有機層の最低非占有分子軌道のエネルギー準位の絶対値を減じた値が0.5eV以下である金属を含み、
前記補助配線の上方における前記有機層には、前記第2形成工程により、前記金属層と接触し、nドープされている、
請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−18938(P2012−18938A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233395(P2011−233395)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2010−518459(P2010−518459)の分割
【原出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】