説明

有機エレクトロルミネッセンス装置、その製造方法、及び電子機器

【課題】 良好な封止性を備えるとともに、封止部材に起因する発光特性への影響を抑えることができ、さらには装置全体のコンパクト化をも実現できる有機エレクトロルミネッセンス装置を提供する。
【解決手段】 本発明の有機EL装置は、基板1上に、発光素子3と、前記発光素子3を覆って形成された保護層11と、前記発光素子3を覆って前記保護層11上に形成された第1の封止材12と、前記第1の封止材12を取り囲んで設けられた乾燥剤9と、前記乾燥剤9を取り囲んで設けられた第2の封止材20と、前記第1の封止材12、乾燥剤9、及び第2の封止材20を挟持して前記基板1に対向配置された封止基板13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置、その製造方法、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光層を含む発光素子を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)が知られている。このような有機EL装置は、無機陽極と無機陰極との間に発光層等の有機機能層を備えた構成が一般的であるが、有機機能層のうちには水分と反応して劣化する材料が含まれており、水分や酸素等に対する耐久性向上が課題となっている。そこでこのような課題を解決するために、表示装置の基板にガラスや金属の蓋を取り付けて水分等を封止する方法が一般的に採用されている。
【特許文献1】特開2000−40585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の有機EL装置では、内部封止体と外部封止体とで発光素子を封止しているが、発光素子と内部封止体との間に空間が形成され、内部封止体と外部封止体との間にも空間が形成されているため、トップエミッション型の構造を採用する場合には空気/封止体界面での光の屈折や反射が表示に影響し、また装置全体が大型になるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、良好な封止性を備えるとともに、封止部材に起因する発光特性への影響を抑えることができ、さらには装置全体のコンパクト化をも実現できる有機エレクトロルミネッセンス装置を提供することを目的としている。
また本発明は、気密性に優れ、発光素子を良好に保護することができる封止構造を具備した有機エレクトロルミネッセンス装置を簡便な工程で高歩留まりに製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、基板上に、発光素子と、前記発光素子を覆って形成された保護層と、前記発光素子を覆って前記保護層上に形成された第1の封止材と、前記第1の封止材を取り囲んで設けられた乾燥剤と、前記乾燥剤を取り囲んで設けられた第2の封止材と、前記第1の封止材、乾燥剤、及び第2の封止材を挟持して前記基板に対向配置された封止部材とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、発光素子上に空間を設けることなく保護層と第1の封止材と封止基板とを積層配置したことで、有機エレクトロルミネッセンス装置の厚さを低減するとともに、封止基板側への光取り出しへの影響を低減して光取り出し効率を高めることができる。また、第1の封止材を乾燥剤と第2の封止材とで二重に取り囲んでいるので、二重封止構造による封止性能の向上に加え、乾燥剤による吸湿性能を高めたものとなっており、極めて良好な信頼性を有する、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス装置となる。
【0006】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記第2の封止材と前記乾燥剤とが非接触状態に保持されていることが好ましい。このような構成とすることで、第2の封止材を通過して内部に水分等が進入した場合にも、乾燥剤と第2の封止材との間の間隙にて前記水分等が拡散され、乾燥剤に対する水分等による負荷を分散させることができる。これにより、乾燥剤が局所的に劣化して乾燥剤の内側に水分等が進入するのを効果的に防止することができ、高信頼性、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス装置とすることができる。
【0007】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記乾燥剤が、前記第1の封止材の周囲に渡って前記基板及び封止部材の双方に当接していることが好ましい。すなわち、内側に配置される第1の封止材を、基板と、乾燥剤と、封止部材とによって封止した構造とすることが好ましい。このような構成とすることで、外周側に配置される第2の封止材を通過して装置内部に水分等が進入した場合にも、当該水分等は必ず乾燥剤に接触し吸収されるので、水分等の内部進入を効果的に防止でき、信頼性に優れた長寿命の有機エレクトロルミネッセンス装置とすることができる。
【0008】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記乾燥剤が、無機物の吸湿材料と、有機物のバインダとを混合してなるものであることが好ましい。このような構成とすることで、第1の封止材を取り囲む乾燥剤を容易に形成可能になり、また封止基板と基板の双方に密着した乾燥剤を容易に形成することができる。
【0009】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、前記第2の封止材の水分透過率が、前記第1の封止材の水分透過率より低いことが好ましい。このような構成とすることで、発光素子に水分が到達するまでの時間を延ばし、長寿命の発光素子を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置とすることができる。
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、前記第1の封止材の弾性率が、前記第2の封止材の弾性率より小さいことが好ましい。このような構成とすることで、発光素子と封止部材との間に隙間無く充填される第1の封止材による発光素子への応力を低減することができ、製造時、動作時における発光素子の破損を効果的に防止して優れた信頼性を得ることができる。
【0011】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、基板上に発光素子を形成する工程と、前記発光素子を覆う保護層を形成する工程と、前記発光素子を取り囲む第1の樹脂材料を前記基板上に配置する工程と、前記発光素子と前記第1の樹脂材料との間に、前記発光素子及び保護層を取り囲む乾燥剤を配置する工程と、前記乾燥剤に囲まれた領域に、前記発光素子及び保護層を覆う第2の樹脂材料を配置する工程と、前記第1の樹脂材料、乾燥剤、及び第2の樹脂材料を覆う封止部材を配置する工程と、前記第1の樹脂材料と第2の樹脂材料とを硬化する工程とを有することを特徴とする。
この製造方法によれば、発光素子上に保護層を設けた後に樹脂材料や乾燥剤の配置を行うようになっているので、封止工程中に樹脂材料や乾燥剤に含まれる溶剤等が発光素子と接触して発光素子を劣化させるのを防止でき、高歩留まりに有機エレクトロルミネッセンス装置を製造することができる。また、第1の樹脂材料と第2の樹脂材料との間に乾燥剤が配置されているので、第2の樹脂材料を配置した際に当該第2の樹脂材料が濡れ広がって第1の樹脂材料と接触し、両者が混合されて所望の強度、光学特性を得られなくなるといった問題を回避できる。
【0012】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、前記第2の樹脂材料を配置する工程において、前記基板上に配置された乾燥剤により前記第2の樹脂材料の輪郭を規定することが好ましい。すなわち、第2の樹脂材料を基板上に配置する際に、基板上に既設の乾燥剤により第2の樹脂材料が過度に濡れ広がるのを堰き止めるようにすることが好ましい。このような製造方法とすることで、第2の樹脂材料に低粘度のものを用いることができ、容易に均一な厚さに濡れ広がらせることができるようになる。
【0013】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記基板上に配置した前記第1の樹脂材料を、前記乾燥剤を配置するに先立って仮硬化することもできる。この製造方法によれば、基板上に配置した第1の樹脂材料の形状を良好に保持できるようになり、第1の樹脂材料を硬化して得られる第2の封止材の形状不良による歩留まり低下を生じないようにすることができる。
【0014】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記乾燥剤を、前記第2の樹脂材料より高い粘度を有する材料を用いて形成することが好ましい。このような構成とすることで第2の樹脂材料を乾燥剤により良好に堰き止めることができ、第2の樹脂材料により形成される第1の封止材を所定の位置に所定の厚さで形成することが容易になる。
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記乾燥剤を、前記第1の樹脂材料から離間して配置することが好ましい。このように第1の樹脂材料と離間して乾燥剤を配置しておくことで、乾燥剤の内側に第2の樹脂材料を配置し、その上から封止部材を被着したときに、第2の樹脂材料の供給量が多すぎたとしても、第2の樹脂材料により乾燥剤が外側に押し出されて、基板と封止部材との間における第2の樹脂材料の層厚を所定の厚さに保持できるようになる。従って、第1の封止材の膜厚ばらつきによる歩留まり低下を防止でき、高歩留まりに有機エレクトロルミネッセンス装置を製造することができる。
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法では、前記乾燥剤を配置する工程において、前記基板上に粘性を有する乾燥剤形成材料を配置し、前記封止部材を配設する工程において、前記乾燥剤形成材料に対して前記封止部材を押圧して密着させることが好ましい。このような製造方法とすることで、乾燥剤が基板と封止部材の双方に密着した構造とすることができ、信頼性に優れた長寿命の有機エレクトロルミネッセンス装置を製造することができる。
【0017】
次に、本発明の電子機器は、先に記載の本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴とする。発光素子を良好に封止して、コンパクトで所望の性能を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(有機EL装置)
図1(a)は、本発明に係る有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)50の一実施形態を示す平面構成図であり、図1(b)は、(a)図のA−A’線に沿う断面構成図である。
図1(a)、(b)に示すように、有機EL装置50は、基板1と、基板1上に設けられた発光素子3と、発光素子3を挟持して基板1と対向する封止基板(封止部材)13とを主体としてなる。基板1と封止基板13との間には、発光素子3を覆う保護層11と、保護層11を覆う第1の封止材12と、第1の封止材12を取り囲んで設けられた乾燥剤9と、乾燥剤9を取り囲んで設けられた第2の封止材20とが形成されている。なお、図1(a)では図面を見易くするために封止基板13の図示を省略している。
【0019】
発光素子3は、基板1上に有機発光層を含む有機機能層を2枚の電極膜により挟持した有機EL素子であり、例えば図2(b)に示すように、陽極4と、正孔輸送層5と、発光層6と、陰極7とを積層した構造を備えている。発光素子3は当該有機EL装置50の用途に応じて種々の態様に構成され、例えば、照明用途であれば発光素子3は平面形状に形成される。また、電子機器の表示手段としての用途であれば複数の発光素子3が平面視略マトリクス状に配列される。さらに、プリンタの露光手段としての用途であれば、複数の発光素子3が一列又は複数列に配列された形態となる。
【0020】
保護層11は、無機絶縁材料の薄膜であり、発光素子3に対して水分等が浸入するのを抑制する機能を有する。保護層11を形成するための形成材料としては、酸窒化珪素(SiON)、二酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)などを挙げることができる。
【0021】
第1の封止材12は、保護層11の表面に直接的に被覆された樹脂層であり、封止基板13と保護層11とを接着している。第1の封止材12は、保護層11の表面全体に被覆されており、その下端部は保護層11の外側において基板1(基板1上に設けられた駆動回路31を含む)に接着されている。第1の封止材12を形成するための材料としては、安定した接着強度を維持することができ、気密性が良好なものであれば特に限定されないが、例えば熱硬化性樹脂材料を用いることができる。第1の封止材12を形成する材料としては、紫外光(UV)の照射により硬化する光硬化性エポキシ樹脂などを用いることもできる。
【0022】
また第1の封止材12は、弾性率の小さい材料を用いて形成することが好ましく、後述する第2の封止材20より弾性率の小さい材料を用いて形成することが好ましい。第1の封止材12は、発光素子3と封止基板13との間に封入されるものであるため、発光素子3に対して相応の応力を作用させる。そこで、発光素子3に掛かる応力を低減し、発光素子3の破損等を防止するためには、第1の封止材12の弾性率は小さい方が好ましい。また、第2の封止材20より小さい弾性率としておくことで、封止基板13が第2の封止材20により支持される構造とすることができるので、第1の封止材12を介して発光素子3に作用する応力を低減することができる。
【0023】
平面視略矩形状に形成された第1の封止材12を取り囲む平面視矩形枠状に乾燥剤9が設けられている。本実施形態の場合、乾燥剤9はその内側に設けられた第1の封止材12と内周側で当接し、さらに当該乾燥剤9を挟持する基板1及び封止基板13の双方に当接して配置されている。すなわち、乾燥剤9は所定の平面形状と断面形状とを保持し得るものであることが好ましく、例えば、所望の吸湿作用を奏する吸湿材を、樹脂やワックス、油脂等のバインダ中に分散させたものを用いることで、乾燥剤に良好な成形性を付与することができる。
【0024】
上記構成のもと、図1(b)に示すように、乾燥剤9が基板1と封止基板13の双方に接して設けられていることで、最外周の第2の封止材20を通過して装置内部に水分が進入した場合であっても、かかる水分は必ず乾燥剤9に接触して吸収されるので、水分が乾燥剤9を通過してさらに内部に進入するのを効果的に防止することができる。
【0025】
上記吸湿材としては、バインダを構成する有機化合物と反応しにくいものが用いられ、例えば水素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウム、水素化アルミニウムリチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
バインダとしては、樹脂、ワックス、油脂等を用いることができ、具体例を挙げるならば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料、パラフィンワックス、マイクロリスタリンワックス等の石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪族アミン等を挙げることができる。
【0026】
なお、乾燥剤9についてバインダと吸湿材との混合材料を用いない場合には、基板1と封止基板13との間の封止空間において所望の乾燥機能(吸湿機能)を有していれば、吸湿材に上記のような限定は無く種々のものを用いることが可能である。例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、酸化カルシウム、酸化ゲルマニウム、五酸化リン、塩化カルシウムなどを単独又は複数で用いることができる。
【0027】
封止基板13は、第1の封止材12及び保護層11を覆って配設される基板であり、第1の封止材12に隙間無く接着されている。封止基板13としては、第1の封止材12及び保護層11を良好に保護できる機能を有していればよく、例えばガラスや石英、合成樹脂、あるいは金属など水分透過率の小さい材料を用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラスなどを用いることができる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などを用いることができる。金属としては、アルミニウムやステンレス等を用いることができる。
封止基板13としてガラス基板を用い、第1の封止材12の表面全体を覆うことにより、発光素子3への水分等の浸入を良好に防止することができる。
【0028】
なお、図1では、発光素子3と封止基板13との間には保護層11及び第1の封止材12がそれぞれ一層ずつ設けられている構成が示されているが、発光素子3と封止基板13との間に、保護層11と合成樹脂等の接着機能を有する有機膜とを交互に複数積層してもよい。保護層11と有機膜とを複数積層することによりクラックの発生を防止することができる。また、保護層11を多層構造とすれば、発光素子3に対する封止性能をより高めることができる。無機膜を多層に設ける場合には、例えばシリコン酸化窒化膜を多層に設けるなど、1種類の材料からなる膜を多層に設けてもよいし、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜とを積層するなど、異なる材料からなる膜を多層に設けてもよい。
【0029】
このように、保護層11、第1の封止材12、及び封止基板13は、発光素子3との間に空間を形成すること無く、発光素子3上に積層されている。また、保護層11、第1の封止材12、及び封止基板13は、発光素子3の表面全体を覆い、かつ上層側のものほど平面積が大きくなるように設けられており、発光素子3に対して良好な封止性能を発揮するものとなっている。
【0030】
第2の封止材20は、乾燥剤9の外周を取り囲む平面視矩形枠状に形成され、基板1と封止基板13との間に挟持されている。本実施形態の場合、第2の封止材20は、基板1と封止基板13とを接着する接着剤としても機能する。第2の封止材20の形成材料としては、安定した接着強度を維持することができ、気密性が良好なものであれば特に限定されず用いることができる。例えば、紫外光(UV)の照射により硬化する光硬化性エポキシ樹脂が用いられ、エポキシ、ビニルエーテル等のカチオン系材料の他にも、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート等のアクリレート、ウレタンポリエステル等のラジカル系材料を用いることができる。
【0031】
第2の封止材20は、第1の封止材12に比して水分透過率の低い材料を用いて形成することが好ましい。このように装置の最外周部で水分等を遮断する構成とすることで、内側に配された乾燥剤9、第1の封止材12への水分等の到達量を低減することができ、発光素子3に達する水分量を低減するとともに、水分等が発光素子3に達するまでの時間を延ばすことができ、発光素子3の長寿命化を実現することができる。
【0032】
本実施形態では、図1(a)に示すように、第2の封止材20と乾燥剤9との間に間隙29が設けられている。このような間隙29が設けられていれば、第2の封止材20を通過して水や酸素等が間隙29に進入した場合にも、間隙29に水や酸素等が拡散し、乾燥剤9への負荷をその周面で均一化することができる。したがってかかる構成によれば、良好な吸湿効果を長期間に渡り得ることができ、有機EL装置の信頼性、耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、第2の封止材20は、その内部に基板1と封止基板13とを所定間隔に離間する粒状物(スペーサ)が混入された構成とすることもでき、このような構成とすることで、封止基板13を被着する際の押圧力により発光素子3が破損するのを防止することができる。また、発光素子3上における第1の封止材12の層厚を一定に保つ機能を奏する。
【0034】
本実施形態の有機EL装置50は、発光素子3からの発光を基板1側から装置外部に取り出す形態(ボトムエミッション型)、封止基板13側から取り出す形態(トップエミッション型)のいずれも採用することができる。ボトムエミッション型とする場合には、基板1は、光を透過可能な透明あるいは半透明材料、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などを用いて形成される。トップエミッション型の場合には、保護層11、第1の封止材12、及び封止基板13について透明ないし透光性の材質が用いられる。
【0035】
以上説明したように、発光素子3と第1の封止材12との間に空間を形成することなく接着し、さらに第1の封止材12を取り囲む乾燥剤9、乾燥剤9を取り囲む第2の封止材20を設けたことで、本実施形態の有機EL装置50は、第1の封止材12と第2の封止材20との二重封止構造によって、発光素子3に対する良好な封止性能を実現することができる。また本実施形態においては、保護層11が形成された発光素子3と封止基板13との間に第1の封止材12を充填しているので、従来のような封止部材を二重に設ける構成に比べて、有機EL装置50の厚さ及び幅を十分に小さくすることができ、かつ装置全体のコンパクト化を実現できるものとなっている。
【0036】
また、発光素子3と封止基板13との間に、保護層11と第1の封止材12とが配されて空間が形成されないため、トップエミッション型とした場合にも封止基板13表面での反射等が生じ難く、良好な光射出性を得ることができる。
なお、以上に説明した有機EL装置50の構成は、基板1が大型の基板である場合にもそのまま適用できる構成であり、さらには、大型の基板を用いて複数個の有機EL装置を製造する場合にも好ましく用いることができる構成である。
【0037】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上述した構成を有する有機EL装置50を製造する方法について、図2から図6に示す模式図を参照しながら説明する。図2から図6において、(a)図は各工程における平面構成図、(b)図は(a)図のA−A’線に沿う位置に対応する断面構成図である。
【0038】
まず、図2に示すように、基板1上に発光素子3を形成する。図2には示していないが、発光素子3が形成される基板1上には、既に発光素子3を駆動制御する駆動回路等が形成されているものとする。
発光素子3は、基板1上の所定領域に、陽極4と、正孔輸送層5と、発光層6と、陰極7とを順次積層することで形成できる。このような積層構造を具備した発光素子3は、駆動回路から駆動信号を供給されると、陽極4と陰極7との間に電流が流れて発光層6が発光し、ボトムエミッション型の場合には、透明な基板1の外面側に光が射出される。
【0039】
図2に示す積層構造において、陽極4は図示略の駆動回路に接続され、駆動回路から印加された電圧によって正孔を正孔輸送層5に注入するものであり、その形成材料には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)などの透明導電材料、あるいはアルミニウムや銀などの金属材料を用いることができる。
【0040】
正孔輸送層5は、陽極4の正孔を発光層6に輸送・注入するためのものであり、公知の材料を用いることができる。例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどを用いることができる。更に具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)などを用いることができる。
【0041】
発光層6は、正孔輸送層5から注入される正孔と、陰極7から注入される電子との再結合により発光する層である。発光層6を形成する材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。例えば、ポリフルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などを用いることができる。
【0042】
また、発光層6と陰極7との間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層を設けることで陰極7から発光層6への電子の注入効率を向上させることができる。電子輸送層の形成材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体などを用いることができる。
【0043】
陰極7は、発光層6へ効率的に電子注入を行うことができる仕事関数の低い金属、例えばアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)又はカルシウム(Ca)等の金属材料から形成され、かかる金属膜にITO等の透明導電膜を積層した構造であってもよい。
【0044】
発光素子3を構成する上記各層を設けるに際しては、例えばフォトリソグラフィ法や液滴吐出法等、公知のパターニング手法を用いることができ、これにより基板1上の所定領域に各層を積層してなる構造の発光素子3を設けることができる。
金属材料や透明導電材料からなる陽極4、陰極7の形成には、スパッタ法や真空蒸着法と、フォトリソグラフィ法を好適に用いることができ、また、高分子材料からなる正孔輸送層5及び発光層6の形成には、液滴吐出法を好適に用いることができる。
【0045】
液滴吐出法とは、形成しようとする機能層の形成材料を液状体にし、その液状体をディスペンサやインクジェット装置などの液滴吐出装置を用いて定量的に吐出することによって、所望領域に前記形成材料を塗布する方法である。具体的には、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)に設けられたノズルと基板1とを対向させた状態でノズルと基板1とを相対移動させつつ、ノズルから1滴あたりの液量が制御された液状体の液滴を吐出することによって、基板1上に液状体による所望形状の膜パターンを形成する技術である。
【0046】
正孔輸送層5や発光層6を液滴吐出法を用いて成膜することにより、製造コストを低減することができる。すなわち、液滴吐出法では、基板1上の所望の局所領域に材料を配置することが可能であるから、フォトリソグラフィ法等に比べて膜形成のプロセスが簡素であるとともに使用材料に無駄が少ない。
【0047】
発光素子3を基板1上に形成したならば、次に、図3に示すように、所定の手法によって、発光素子3に保護層11を被覆する。本実施形態においては、保護層11は、イオンプレーティング法、あるいはスパッタ法等の成膜法を用いて発光素子3の表面に被覆される。これにより、発光素子3を覆うように、発光素子3の表面に保護層11が接続される。発光素子3の表面に所定の厚さを有する保護層11が被覆されることにより、有機EL装置50の製造工程中においても、発光素子3と水分等との接触を防止でき、発光素子3は良好に封止される。
【0048】
次に、図4に示すように、発光素子3が配設された側の基板面周縁に沿って平面視矩形枠状の第2の封止材20を形成する。例えば、ディスペンサやインクジェット装置を用いて、エポキシ樹脂等の樹脂材料(第1の樹脂材料)を図示の平面形状に塗布する。このとき、前記樹脂材料は、基板1と封止基板13との間隔を調整するためのスペーサを混入されたものを用いることができ、スペーサとしてはガラスビーズ、樹脂ビーズ等を用いることができる。
なお、図4及び図5を参照して説明する各製造工程は、発光素子3の劣化を防ぐために窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0049】
基板1上に配置した樹脂材料は、後段の工程で封止基板13を配置したとき、封止基板13に密着して封止性を得られるものであることが好ましい。そのため、以降の工程では封止基板13に対し接着可能な状態に保持されるが、基板1上に配置した後、接着性を損なわない程度の硬化(仮硬化)を行ってもよい。仮硬化を行うことで第2の封止材20を構成する樹脂材料の粘度を高め、基板1上にて形状を良好に保持することができるので、第2の封止材20の形状不良による歩留まり低下を防止でき、また後続の工程における基板のハンドリング性も向上させることができる。
【0050】
次に、図5に示すように、発光素子3と第2の封止材20との間の基板1上に、発光素子3を取り囲む平面視矩形枠状に乾燥剤形成材料を配置して、乾燥剤9を形成する。乾燥剤形成材料としては、先の記載のように、吸湿材とバインダとを混合してなるものを用いることが好ましい。このような乾燥剤形成材料を、ディスペンサやインクジェット装置を用いて塗布することで、図5に示すような平面形状の乾燥剤9を容易に形成することができる。
【0051】
上記乾燥剤形成材料は、基板1上に配置する際の粘度を20Pa・s以上とすることが好ましい。このような比較的高粘度の材料を配置することで、基板1上に配置した後の乾燥剤形成材料の形状を良好に保持することができる。また、乾燥剤形成材料は、後段の工程で乾燥剤9に囲まれる領域に配置される、第1の封止材12を形成するための第2の樹脂材料より大きい粘度を有するものであることが好ましい。
【0052】
また、乾燥剤形成材料を基板1上に塗布した後、先の第2の封止材20を形成する工程と同様に乾燥剤形成材料の仮硬化を行ってもよい。仮硬化を行うことで、乾燥剤形成材料が経時的に基板1上で過度に濡れ広がってしまい、発光素子3や第2の封止材20(第1の樹脂材料)と接触、干渉するのを効果的に防止することができ、有機EL装置の歩留まり向上、基板のハンドリング性の向上に寄与する。
【0053】
本実施形態において、乾燥剤9は、第2の封止材20との間に間隙29を有する位置に配置されるようになっている。このような間隙29を形成しておくことで、封止基板13を基板1上に被着した際の緩衝領域として間隙29を利用することができ、また封止基板13の非着後にも間隙29が保持されるようにしておけば、第2の封止材20を通過して装置内部に進入した水分や酸素等を保持する領域としても機能させることができ、乾燥剤9より内側への水分等の進入を緩和することができる。
【0054】
次に、図6に示すように、乾燥剤9に囲まれた保護層11の表面を含む基板1上の領域に第1の封止材12を形成する。保護層11の表面に第1の封止材12を形成するに際しては、例えば液滴吐出法を用いることができる。すなわち、第1の封止材12を形成するための樹脂材料(第2の樹脂材料)を液状体にし、その液状体をディスペンサやインクジェット装置などの液滴吐出装置を用いて定量的に吐出することによって、所望領域に前記樹脂材料を塗布する。
【0055】
上記第1の封止材12を形成するための樹脂材料には、前記乾燥剤形成材料より低粘度のものを用いることが好ましい。かかる樹脂材料は比較的広範囲に均一に濡れ広がらせる必要があり、低粘度のものを用いることで迅速に均一な層厚の第1の封止材12を形成でき、また塗布した膜からの気泡の除去も容易になるからである。また、比較的高粘度の乾燥剤形成材料を用いることで、基板1上に形成した乾燥剤9の内側に上記第2の樹脂材料を良好に保持することができるようになる。
【0056】
そして、保護層11上に上記樹脂材料が塗布された後、基板1上に封止基板13が被着される(図1参照)。本実施形態の有機EL装置50の製造工程では、この封止基板13を配置する工程は、封止基板13と第1の封止材12との間に気泡等が混入するのを防止するため、減圧環境下で実施され、封止基板13を被着した後に大気圧下に戻すことで、大気圧により封止基板13を発光素子3側へ押しつけるようになっている。その後、上記第1の封止材12を形成するための樹脂材料として熱硬化性樹脂材料が用いられている場合には、所定の熱が基板1上の樹脂材料に付与される。
以上の工程により、樹脂材料を硬化させて第1の封止材12を形成し、第1の封止材12を介して封止基板13が接着された有機EL装置50を製造することができる。
【0057】
本実施形態では、上記第2の樹脂材料を基板1上に配置した際、基板1上に既設の乾燥剤9が、基板1上で第2の樹脂材料が広がる領域を規定するようになっており、第2の樹脂材料が必要以上に広がることで第1の封止材12の層厚が設計値よりも薄くなってしまうのを防止することができ、また封止基板13と第1の封止材12との間に空隙が生じるのを防止することができる。
【0058】
さらに、乾燥剤9の外側には間隙29が設けられているため、第1の封止材12を形成するための樹脂材料が多過ぎるときにも、封止基板13を被着する際に封止基板13に押圧された樹脂材料が乾燥剤9を外側に押し出し、乾燥剤9の内側に封入された第1の封止材12を形成できるようになっている。その結果、第1の封止材12のはみ出しにより吸湿機能が低下するのを防止でき、また第1の封止材12を容易に所定の層厚とすることができるので、高歩留まりに有機EL装置を製造することができる。
【0059】
なお、上記乾燥剤9が外側に押し出されることで、間隙29の幅が狭くなったり、場合によっては乾燥剤9と第2の封止材20とが当接することもあるが、本発明に係る有機EL装置では、第1の封止材12と第2の封止材20との二重封止構造を採用し、さらに第1の封止材12と第2の封止材20との間に枠状に乾燥剤9を配置しているので、大きな幅の間隙29を有する構成に比しては劣るものの、依然として極めて良好な封止性、信頼性を具備した有機EL装置を得ることができる。
【0060】
なお、上記封止基板13の配設工程は、減圧下で実施される。そのため、第1の封止材12を形成するための第2の樹脂材料としては、減圧真空下で塗布形成するために、流動性に優れかつ溶媒成分がない全てが高分子骨格の原料となる有機化合物材料である必要があり、好ましくはエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーである(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。
【0061】
例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどがあり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0062】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透明性に優れかつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として1,6−ヘキサンジオールなど分子量が大きく揮発しにくいアルコール類を添加することで低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60〜100℃の範囲の加熱でおこなわれ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。
また、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラアミンなどの脂肪族アミンや、ジアミノジフェニルメタンやジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミン、光重合開始剤などを補助硬化剤として添加することで、より低温で硬化しやすくさせてもよい。
さらに、保護層11との密着性を向上させるシランカップリング剤や、イソシアネート化合物などの捕水剤、フッ素化合物など塗布材料の表面エネルギーを低下させて濡れ性を上げる平坦化剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子などの添加剤が全量1%以下に微量添加されていても良い。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、発光素子3上に保護層11を設けた後に樹脂材料や乾燥剤形成材料の配置を行うようになっているので、封止工程中に樹脂材料や乾燥剤形成材料に含まれる溶剤等が発光素子3と接触して発光素子3を劣化させるのを防止でき、高歩留まりに有機EL装置50を製造することができる。また、第1の樹脂材料と第2の樹脂材料との間に乾燥剤9が配置されているので、広範囲に均一な層厚で形成する必要のある第1の封止材12を形成するための第2の樹脂材料を配置した際に、当該第2の樹脂材料が濡れ広がって第2の封止材20(第1の樹脂材料)と接触し、両者が混合されて所望の強度、光学特性を得られなくなるといった問題を回避できる。
【0064】
(有機EL装置の他の形態)
図7は、本発明の他の実施の形態である有機EL装置51の平面構成図及び断面構成図である。本実施形態の有機EL装置51が、先の実施形態の有機EL装置50と異なる点は、乾燥剤9と第2の封止材20とが隙間無く密着して形成されている点であり、その他の構成は先の実施形態と同様である。
【0065】
上述したように、有機EL装置の製造工程において、第1の封止材12を形成するために基板1上に第2の樹脂材料を配置し、かかる第2の樹脂材料の上から封止基板13を被着すると、第2の樹脂材料が乾燥剤9を外側に押し出して、あらかじめ乾燥剤9と第2の封止材20との間に設けておいた間隙29が無くなってしまうことが考えられる。したがって本実施形態の有機EL装置51は、先の実施形態と同様の工程により製造することができるものである。
【0066】
先の実施形態の有機EL装置50では、間隙29が設けられていることで、第2の封止材20を通過した水分や酸素が乾燥剤9より内側に進入するのを防止できるので、発光素子3の保護をより万全なものとすることができる。これに対して、本実施形態の有機EL装置51では、上記間隙29の作用効果は得られないため、水分等の進入防止の点において有機EL装置50に劣ると考えられるが、発光素子3上に保護層11と第1の封止材12とを積層配置し、さらに第1の封止材12を、乾燥剤9と第2の封止材20とで二重に取り囲んでいるので、優れた封止性を具備していることに変わりはなく、高信頼性、長寿命の有機EL装置となっている。
【実施例】
【0067】
(有機EL表示装置)
次に、図8から図11を参照して、本発明に係る有機EL装置の一実施例である有機EL表示装置70について説明する。図8は有機EL表示装置70の回路構成図であり、図9は、同表示装置の平面構成図である。
図10は、同表示装置の画素71の平面構造を示す図であって、(a)は画素71のうち主にTFT(薄膜トランジスタ)等の画素駆動部分を示す図であり、(b)は画素間を区画するバンク(隔壁部材)等を示す図である。図11は、図9のB−B’線に沿う断面構成図である。
【0068】
図8に示す回路構成において、有機EL表示装置70は、複数の走査線131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線133とがそれぞれ配線されたもので、走査線131及び信号線132の各交点毎に、画素71が設けられて構成されたものである。
【0069】
信号線132に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路72が設けられている。一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路73が設けられている。画素71の各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142と、このスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT143と、この駆動用TFT143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141と、この画素電極141と共通電極154との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。前記画素電極141と共通電極154と、発光部140とによって構成される素子が有機EL素子(発光素子)である。
【0070】
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング用TFT142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、駆動用TFT143のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて共通電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0071】
次に、図9に平面構成を示すように、有機EL表示装置70は、矩形状の素子基板110の略中央部に、複数の画素71が平面視マトリクス状に配列された表示領域74を備えており、表示領域74を覆って第1の封止材160が形成されている。表示領域74及び第1の封止材160を取り囲んで平面視矩形枠状の乾燥剤169が設けられており、乾燥剤169を取り囲んで平面視矩形枠状の第2の封止材170が設けられている。そして、封止基板180が、表示領域74、第1の封止材160、乾燥剤169、及び第2の封止材170を平面的に覆うように配置されている。
【0072】
すなわち、有機EL表示装置70は、先の実施形態の有機EL装置50と同様の基本構成を具備した表示装置であり、有機EL装置50の発光素子3に対応する有機EL素子を有する画素71を配列してなる表示領域74を、第1の封止材160と第2の封止材170とによって二重に封止するとともに、これらの封止材160,170間に乾燥剤169を設けた構成を具備したものとなっている。
また、乾燥剤169と第2の封止材170との間には、間隙161が設けられており、先の実施形態と同様、第2の封止材170を通過して内部に進入した水分等を拡散させ、乾燥剤169への負荷をその周面で均一化し、乾燥剤169の局所的な劣化を抑え、信頼性を向上させることができるようになっている。
【0073】
次に、図10(a)に示す画素71の平面構造をみると、画素71は、平面視略矩形状の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。画素電極141の近傍にはスイッチング用TFT142と、駆動用TFT143とが設けられている。
【0074】
スイッチング用TFT142は、矩形の島状の半導体層209を主体としてなるトップゲート型の薄膜トランジスタであり、半導体層209と交差する走査線131が、当該交差部分でTFT142のゲート電極となっている。また、半導体層209には、図示上下方向に延在する信号線132から走査線131に沿う方向に延びた分岐配線132aがコンタクトホールc1を介して電気的に接続されている。さらに、半導体層209には、画素電極141の図示右側に配された平面視矩形状の中継電極134が、コンタクトホールc2を介して電気的に接続されている。
【0075】
駆動用TFT143は、矩形の島状の半導体層210を主体としてなるトップゲート型の薄膜トランジスタであり、ゲート電極143gと、ソース電極238(電源線133の一部)と、ドレイン電極236とを備えている。ドレイン電極236は、図示略のコンタクトホール(図11参照)を介して画素電極141と電気的に接続されている。ゲート電極143gは、半導体層210と重なる位置から図示下側へ延びて保持容量capの電極135と一体に形成されている。さらに、上記電極135は、図示下側へ延びており、それと平面的に重なって配置された中継電極134とコンタクトホールc3を介して電気的に接続されている。従って、中継電極134を介して駆動用TFT143のゲートと、スイッチング用TFT142のドレインとが、電気的に接続されている。
【0076】
また、図11に示す画素71の断面構造をみると、素子基板110上に、駆動用TFT143が設けられており、駆動用TFT143を覆って形成された複数の絶縁膜を介した素子基板110上に、有機EL素子200が形成されている。有機EL素子200は、素子基板110上に立設されたバンク(無機バンク149及び有機バンク150)に囲まれる領域内に設けられた有機機能層(発光部)140を主体として構成され、この有機機能層を、画素電極141と共通電極154との間に挟持した構成を備えている。ここで、図10(b)に示す平面構造をみると、有機バンク150は、画素電極141の形成領域に対応した平面視略矩形状の開口部151を有しており、この開口部151に先の有機機能層140が形成されるようになっている。
【0077】
図11に示すように、駆動用TFT143は、半導体膜210に形成されたソース領域143a、ドレイン領域143b、及びチャネル領域143cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜220を介してチャネル領域143cに対向するゲート電極143gとを主体として構成されている。半導体膜210及びゲート絶縁膜220を覆う第1層間絶縁膜230が形成されており、この第1層間絶縁膜230を貫通して半導体膜210に達するコンタクトホール232,234内に、それぞれドレイン電極236、ソース電極238が埋設され、各々の電極はドレイン領域143b、ソース領域143aに導電接続されている。第1層間絶縁膜230には、第2層間絶縁膜240が形成されており、この第2層間絶縁膜240に貫設されたコンタクトホールに画素電極141の一部が埋設されている。そして画素電極141とドレイン電極236とが導電接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141(有機EL素子200)とが電気的に接続されている。
【0078】
第2層間絶縁膜240上には、無機絶縁材料からなる無機バンク(第1隔壁層)149が形成されており、無機バンク149は画素電極141の周縁部に一部乗り上げるように配置されている。無機バンク149上には、有機材料からなる有機バンク(第2隔壁層)150が積層され、この有機EL装置における隔壁部材を成している。
【0079】
上記有機EL素子200は、画素電極141上に、正孔輸送層140Aと発光層140Bとを積層し、この発光層140Bと有機バンク150とを覆う共通電極154を形成することにより構成されている。すなわち、本実施例に係る有機EL素子200が、先の実施形態に係る発光素子3に対応するものであり、画素電極141、正孔輸送層140A、発光層140B、及び共通電極154は、それぞれ発光素子3の陽極4、正孔輸送層5、発光層6、及び陰極7に相当する構成要素である。
正孔輸送層140Aは、画素電極141の表面を覆って形成されており、その周縁部は、有機バンク150の下端側から画素電極141中央側に延出された無機バンク149の端縁部を覆っている。
【0080】
共通電極154上には、先の実施形態の保護層11に対応する保護層156が形成され、かかる保護層156を覆って第1の封止材160が形成されている。この第1の封止材160を介して、封止基板180が素子基板110と接着されており、保護層156と、第1の封止材160と、封止基板180とにより、発光素子である有機EL素子200を保護する構造となっている。
【0081】
以上の構成を具備した有機EL表示装置70は、先の実施形態に係る有機EL装置50と同様に、有機EL素子200上に保護層11と第1の封止材160と封止基板180とを間に空間を設けることなく接着し、さらに第1の封止材160を取り囲む乾燥剤169、乾燥剤169を取り囲む第2の封止材170を設けた構成とされている。これにより、第1の封止材160と第2の封止材170との二重封止構造によって有機EL素子200に対する良好な封止性能を実現でき、さらに厚さ及び幅を小さくすることで装置全体のコンパクト化を実現できるものとなっている。
【0082】
(光書き込みヘッド)
次に、他の実施例として、本発明に係る有機EL装置を用いた光書き込みヘッドについて図12及び図13を参照して説明する。図12は、光書き込みヘッド用途に好適な構成を具備した有機EL装置の平面構成図である。
【0083】
図12に示すように、有機EL装置90を構成する素子基板310上には、図示略の有機EL素子が配列形成された発光素子領域372が素子基板310の長さ方向に沿って長手に設けられており、発光素子領域372に沿って複数の駆動素子375が配列されている。詳細は省略しているが、発光素子領域372に設けられた各有機EL素子は、各駆動素子375から延びる接続配線376と電気的に接続され、駆動素子375から供給される電気信号により駆動されるようになっている。
【0084】
本実施例の有機EL装置90も、先の実施形態の有機EL装置50と同様の封止構造を具備したものとなっている。すなわち、発光素子領域372に設けられた有機EL素子の表面には図示略の保護層が形成され、発光素子領域372を覆って第1の封止材360が形成されており、第1の封止材360を取り囲む乾燥剤369と、乾燥剤369を取り囲む第2の封止材370とが形成されている。そして、第1の封止材360、乾燥剤369、及び第2の封止材370を覆うようにして封止基板380が被着されている。
【0085】
上記構成を具備した有機EL装置90は、先の実施形態に係る有機EL装置50と同様に、有機EL素子が形成された発光素子領域372上に第1の封止材360と封止基板380とを間に空間を設けることなく接着し、さらに第1の封止材360を取り囲む乾燥剤369、乾燥剤369を取り囲む第2の封止材370を設けた構成とされている。これにより、第1の封止材360と第2の封止材370との二重封止構造によって有機EL素子に対する良好な封止性能を実現でき、さらに厚さ及び幅を小さくすることで装置全体のコンパクト化を実現できるものとなっている。
【0086】
図13は、上述の有機EL装置90を、電子写真方式プリンタの光書き込みヘッド(プリンタヘッド)に適用した場合の一例を示す図である。図13において、有機EL装置90の光射出方向(図示上方)には光学系60が設けられており、光学系60の上方には感光ドラム(感光体)61が設けられている。有機EL装置90は、光学系60に対して光を射出し、光学系60に入射した光は光学系60により集光されて感光ドラム61に入射する。本例では、有機EL装置90の十分なコンパクト化が図られているため、光学系60、感光ドラム61をも小型化することが可能であり、電子写真方式プリンタ全体のコンパクト化を実現することができる。
【0087】
(電子機器)
次に、上記実施の形態の有機EL表示装置70を備えた電子機器の例について説明する。図14は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図14に示す携帯電話1300は、上記実施例の有機EL表示装置70を用いた表示部1301と、操作ボタン部1302と、受話部1303と、送話部1304とを備えて構成されている。図14に示す電子機器は、上記実施の形態の有機EL表示装置を備えているので、薄型化、コンパクト化が図られた電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施形態に係る有機EL装置の平面構成図及び断面構成図。
【図2】同、製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図3】同、製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図4】同、製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図5】同、製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図6】同、製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図7】有機EL装置の他の形態を示す平面構成図及び断面構成図。
【図8】実施例に係る有機EL表示装置の回路構成図。
【図9】同、平面構成図。
【図10】同、1画素領域を示す平面構成図。
【図11】同、1画素領域の断面構成図。
【図12】実施例に係る光書き込みヘッド用有機EL装置の平面構成図。
【図13】光書き込みヘッドの概略構成図。
【図14】電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0089】
1…基板、3…発光素子、9…乾燥剤、11…保護層、12…第1の封止材、13…封止基板(封止部材)、20…第2の封止材、29…間隙、50…有機EL装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
発光素子と、
前記発光素子を覆って形成された保護層と、
前記発光素子を覆って前記保護層上に形成された第1の封止材と、
前記第1の封止材を取り囲んで設けられた乾燥剤と、
前記乾燥剤を取り囲んで設けられた第2の封止材と、
前記第1の封止材、乾燥剤、及び第2の封止材を挟持して前記基板に対向配置された封止部材と
を備えたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記第2の封止材と前記乾燥剤とが非接触状態に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記乾燥剤が、前記第1の封止材の周囲に渡って前記基板及び封止部材の双方に当接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記乾燥剤が、無機物の吸湿材料と、有機物のバインダとを混合してなるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記第2の封止材の水分透過率が、前記第1の封止材の水分透過率より低いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記第1の封止材の弾性率が、前記第2の封止材の弾性率より小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
基板上に発光素子を形成する工程と、
前記発光素子を覆う保護層を形成する工程と、
前記発光素子を取り囲む第1の樹脂材料を前記基板上に配置する工程と、
前記発光素子と前記第1の樹脂材料との間に、前記発光素子及び保護層を取り囲む乾燥剤を配置する工程と、
前記乾燥剤に囲まれた領域に、前記発光素子及び保護層を覆う第2の樹脂材料を配置する工程と、
前記第1の樹脂材料、乾燥剤、及び第2の樹脂材料を覆う封止部材を配置する工程と、
前記第1の樹脂材料と第2の樹脂材料とを硬化する工程と
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2の樹脂材料を配置する工程において、前記基板上に配置された乾燥剤により前記第2の樹脂材料の輪郭を規定することを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項9】
前記基板上に配置した前記第1の樹脂材料を、前記乾燥剤を配置するに先立って仮硬化することを特徴とする請求項7又は8に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥剤を、前記第2の樹脂材料より高い粘度を有する材料を用いて形成することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥剤を、前記第1の樹脂材料から離間して配置することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥剤を配置する工程において、前記基板上に粘性を有する乾燥剤形成材料を配置し、
前記封止部材を配設する工程において、前記乾燥剤形成材料に対して前記封止部材を押圧して密着させることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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