説明

有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法及び製造装置

【課題】長寿命化を実現することができる有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法
を提供する。
【解決手段】基板上に有機層を成膜する第1工程と、基板上に成膜された有機層を不活性
ガス雰囲気中で加熱する第2工程と、基板1上に成膜された有機層を大気雰囲気中で加熱
する第3工程とを有し、第3工程を、第2工程の前及び後の少なくとも一方で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL:electroluminescence)装置の製造
方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置は、発光可能な発光層を含む有機層を陽極及び陰極で挟んだ構成の発光素
子(有機EL素子)を有しており、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された
電子とを発光層内で再結合し、励起状態から失括する際に発光する現象を利用して所望の
光を発光する。有機EL装置には、例えば高輝度であることや長寿命であることなど、種
々の性能が求められており、その性能を実現するために、有機EL装置を製造する際の製
造方法にも様々な工夫が施されている。下記特許文献1、2には、基板上に有機層を成膜
した後、その成膜後の有機層に所定の処理を施す技術の一例が開示されている。
【特許文献1】特開2002−313567号公報
【特許文献2】特開2005−005159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術は、基板上に成膜後の有機層を焼成する際の焼成条件を調整すること
によって、有機層の隣接層との界面に凹凸を形成しているが、その凹凸の形成とともにピ
ンホールが形成されることが懸念される。ピンホールが多数形成された場合、発光効率の
低下や寿命の低下が予想される。また、有機層は水分により劣化するため、特許文献2の
技術のように、基板上に成膜後の有機層を水の蒸発温度以上の温度で焼成して水分を除去
することは有効であるが、未だ十分な発光寿命を得られていないのが現状である。そのた
め、有機EL素子の長寿命化を実現できる製造方法及び製造装置の案出が望まれる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、長寿命化を実現することができる有機エレ
クトロルミネッセンス装置の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は、発光可能な有機層を有する有機エレクトロルミ
ネッセンス装置の製造方法において、基板上に前記有機層を成膜する第1工程と、前記基
板上に成膜された前記有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱する第2工程と、前記基板上に
成膜された前記有機層を大気雰囲気中で加熱する第3工程とを有し、前記第3工程を、前
記第2工程の前及び後の少なくとも一方で行う有機エレクトロルミネッセンス装置の製造
方法を提供する。
【0006】
本発明者は、基板上に成膜された有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱する前及び後の少
なくとも一方で、基板上に成膜された有機層を大気雰囲気中で加熱することにより、有機
EL装置の発光寿命が延びることを見出した。そこで、本発明によれば、基板上に成膜さ
れた有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱する前及び後の少なくとも一方で、基板上に成膜
された有機層を大気雰囲気中で加熱することによって、有機EL装置の長寿命化を実現す
ることができる。
【0007】
前記第1工程は、前記基板上に形成された第1電極上に前記有機層を成膜し、前記第2
工程及び前記第3工程が完了した後、前記有機層上に第2電極を形成する構成を採用する
ことができる。
【0008】
すなわち、本発明者は、基板上に形成された第1電極上に有機層を成膜した後、その基
板上の第1電極上に成膜された有機層に対して、第2工程及び第3工程のいずれか一方を
行った後、他方を行い、それら第2工程及び第3工程が完了した後、その有機層上に第2
電極を形成することによって、有機EL装置の長寿命化を実現することができることを見
出した。
【0009】
前記第2工程は、第1温度で前記有機層を加熱して焼成し、前記第3工程は、前記第1
温度よりも低い第2温度で前記有機層を加熱する構成を採用することができる。
【0010】
すなわち、本発明者は、例えば第2工程を約130℃で行い、第3工程を100℃未満
の温度で加熱することで、有機EL装置の長寿命化を実現することができることを見出し
た。
【0011】
前記不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、キセノン、及びクリプトンの
少なくとも1つを含む構成を採用することができる。
【0012】
これにより、第2工程中における有機層の劣化を防止できる。
【0013】
前記第1工程は、前記有機層を形成するための材料を含む液体材料を液滴吐出法に基づ
いて前記基板上に吐出することを含む構成を採用することができる。
【0014】
これにより、有機層を効率良く成膜することができる。
【0015】
また本発明は、発光可能な有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造装
置において、基板上に成膜された前記有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱可能な第1処理
装置と、基板上に成膜された前記有機層を大気雰囲気中で加熱可能な第2処理装置と、前
記基板上に成膜された前記有機層を前記第1処理装置で処理する前及び後の少なくとも一
方で、前記有機層を前記第2処理装置で処理する制御装置とを備えた有機エレクトロルミ
ネッセンス装置の製造装置を提供する。
【0016】
本発明によれば、基板上に成膜された有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱する前及び後
の少なくとも一方で、基板上に成膜された有機層を大気雰囲気中で加熱することができ、
有機EL装置の長寿命化を実現することができる。
【0017】
前記有機層が成膜された前記基板を収容可能な第1空間を形成する第1収容装置と、前
記第1空間を不活性ガス雰囲気及び大気雰囲気のいずれか一方に調整可能な調整装置とを
備え、前記第1処理装置は、前記不活性ガス雰囲気にされた前記第1空間に収容された前
記基板上に成膜された前記有機層を第1温度で加熱して焼成する第1加熱装置を含み、前
記第2処理装置は、前記大気雰囲気にされた前記第1空間に収容された前記基板上に成膜
された前記有機層を前記第1温度よりも低い第2温度で加熱する第2加熱装置を含む構成
を採用することができる。
【0018】
これにより、第1空間において、有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱することと、大気
雰囲気中で加熱することを行うことができ、処理効率を向上できる。
【0019】
前記基板上に前記有機層を成膜するために、該有機層を形成するための材料を含む液体
材料を前記基板上に吐出する液滴吐出装置を備えた構成を採用することができる。
【0020】
これにより、有機層を効率良く成膜することができる。
【0021】
前記液滴吐出装置は、前記基板上に形成された第1電極上に前記有機層を成膜し、前記
第1処理装置及び前記第2処理装置の処理が完了した後、前記有機層上に第2電極を形成
する電極形成装置を備えた構成を採用することができる。
【0022】
これにより、基板上に形成された第1電極上に有機層を成膜することができる。そして
、その基板上の第1電極上に成膜された有機層に対して、第2処理装置及び第3処理装置
のいずれか一方を用いた処理を行った後、他方を用いた処理を行い、それらの処理が完了
した後、その有機層上に第2電極を形成することによって、有機EL装置の長寿命化を実
現することができる。
【0023】
前記電極形成装置は第2空間を有し、前記第2空間に前記有機層が成膜された前記基板
を収容して蒸着により前記第2電極を形成する構成を採用することができる。
【0024】
これにより、有機層が処理される第1空間とは別の第2空間で、第1空間で処理された
有機層上に、蒸着によって第2電極を円滑に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明にお
いては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関
係について説明する。そして、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内において
X軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(
すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。更には、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転方向
をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0026】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る有機EL装置を示す側断面
図である。図1において、有機EL装置Sは、基板1と、基板1上に設けられた発光素子
(有機EL素子)2と、基板1に接続され、発光素子2を覆う封止部材20とを備えてい
る。発光素子2は基板1の表面(能動面)1Aに設けられている。また、有機EL装置S
は、発光素子2を駆動するための不図示の駆動素子(チップ)を備えている。駆動素子は
、例えば封止部材20によって形成される封止空間10の外部に設けられる。そして、基
板1の表面1Aには、発光素子2と駆動素子とを電気的に接続する接続部材(配線)が設
けられている。封止部材20は、基板1との間に発光素子2を配置するための封止空間1
0を形成しつつ、基板1に接着剤8を介して接続されている。
【0027】
封止部材20は断面視下向きコ状に形成されており、基板1との間で封止空間10を形
成している。封止部材20は、基板1の第1領域41と貼り合わせられる第2領域42を
有している。第1領域41は、基板1の表面1Aのうち発光素子2が設けられている部分
の外側に設定されている。第2領域42は、封止部材20の下端面に設定されており、第
1領域41と対向している。そして、第1領域41と第2領域42とが接着剤8を介して
貼り合わせられることによって、平板状の基板1と封止部材20との間で、発光素子2を
封止する封止空間10が形成される。
【0028】
発光素子2は、基板1の表面1Aに形成された陽極3と、発光可能な有機層11と、陰
極7とを備えている。陽極3及び陰極7は、有機層11を挟むように設けられている。有
機層11は、正孔注入層4と、正孔輸送性中間層5と、発光層6とを含む。正孔注入層4
及び正孔輸送性中間層5は、発光層6と陽極3との間に設けられた層である。
【0029】
封止空間10に設けられた発光素子2の陽極3は、駆動素子と接続部材(配線)を介し
て電気的に接続されている。また不図示ではあるが、発光素子2の陰極7も駆動素子と電
気的に接続されている。発光素子2の陽極3及び陰極7には、駆動素子より駆動信号を含
む電力(電流)が供給される。また、封止空間10にはゲッター剤と呼ばれる乾燥剤9が
設けられている。乾燥剤9は、封止部材20のうち、基板1の表面1Aと対向する天井面
20Bに設けられている。乾燥剤9により、発光素子2の水分等による劣化が抑制され、
良好な封止性能を長期間維持することができる。
【0030】
封止部材20は、外部空間から封止空間10に対して、水分及び酸素等を含む大気が侵
入することを遮断するものである。封止部材20を形成するための形成材料としては、所
望の封止性能を有していれば特に限定されず、例えばガラスや石英、合成樹脂、あるいは
金属など水分透過率の小さい材料を用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソー
ダ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガ
ラスなどを用いることができる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポ
リアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などを用
いることができる。金属としては、アルミニウムやステンレス等を用いることができる。
【0031】
乾燥剤9としては、封止空間10において所望の乾燥機能(吸湿機能)を有していれば
特に限定されないが、例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、酸化カルシウム、酸化
ゲルマニウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、五酸化リン、塩化カルシウムなどを用
いることができる。
【0032】
接着剤8は、第1領域41(又は第2領域42)の全域に設けられる。接着剤8として
は、安定した接着強度を維持することができ、気密性が良好なものであれば特に限定され
ない。本実施形態の接着剤8には、紫外光(UV)の照射により硬化する光硬化性エポキ
シ樹脂が用いられている。なお、接着剤8としては、光硬化性材料に限られず、熱硬化性
材料でもよいし、互いに異なる2種類以上の材料を混合することによって硬化させるもの
であってもよい。
【0033】
本実施形態の有機EL装置Sは、発光素子2からの発光を基板1側から装置外部に取り
出す形態、所謂ボトム・エミッションである。基板1は、光を透過可能な透明あるいは半
透明材料、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアク
リレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などによって形
成されている。
【0034】
陽極3は、印加された電圧によって正孔を正孔注入層4に注入するものであり、例えば
、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)などの透明導電膜により形成されて
いる。
【0035】
正孔注入層4は、陽極3の正孔を発光層6に輸送・注入するためのものであり、陽極3
上に設けられている。正孔注入層4としては、公知の材料を用いることができ、例えば、
ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどを用いることができる。更に具体的に
は、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/
PSS)などを用いることができる。
【0036】
正孔輸送性中間層5は、正孔注入層4と発光層6との間に設けられており、陽極3から
発光層6に対する正孔の輸送性(注入性)を向上するために設けられている。また、正孔
輸送性中間層5は、電子をブロックすることで発光層内に電子をとどめる機能を有してい
てもよい。正孔輸送性中間層5は、例えば正孔輸送性の良好なトリフェニルアミン系ポリ
マーを含んで構成されている。
【0037】
発光層6は、陽極3から正孔注入層4を経て注入された正孔と、陰極7から注入された
電子とを結合して蛍光を発生させる機能を有する。発光層6を形成する材料としては、蛍
光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。例えば、
ポリフルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポ
リフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバ
ゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)など
のポリシラン系などを用いることができる。
【0038】
また、発光層6と陰極7との間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層は、発光層6
に電子を注入する役割を果たすものである。電子輸送層を形成する材料としては、オキサ
ジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体
、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラ
キノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びそ
の誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体な
どを用いることができる。
【0039】
陰極7は、発光層6へ効率的に電子注入を行うことができる仕事関数の低い金属、例え
ばアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)又はカルシウ
ム(Ca)等の金属材料から形成されている。
【0040】
そして、駆動素子より発光素子2に駆動信号が供給されると、陽極3と陰極7との間に
電流が流れ、発光素子2が発光して透明な基板1の外面側に光が射出される。
【0041】
次に、上述した構成を有する有機EL装置Sの製造方法について、図2に示すフローチ
ャート図を参照しながら説明する。有機EL装置Sは、後述するような液滴吐出装置IJ
及び処理装置Tを含む製造装置によって製造される。
【0042】
図2に示すように、本実施形態における有機EL装置Sの製造方法は、基板1上に上述
の発光層6を含む有機層11を成膜する第1工程SP1と、基板1上に成膜された有機層
11を大気雰囲気中で加熱する第2工程SP2と、基板1上に成膜された有機層11を不
活性ガス雰囲気中で加熱する第3工程SP3とを有する。なお、正孔注入層4、正孔輸送
性中間層5、及び発光層6を含む有機層11を成膜する前には、基板1上に陽極3を形成
する工程が行われ、第1工程SP1においては、その基板1上に形成された陽極3上に有
機層11が成膜される。
【0043】
図3に示すように、基板1の表面(能動面)1Aには、陽極3、正孔注入層4、及び正
孔輸送性中間層5がこの順で設けられる。これら各層を設ける場合には、例えばフォトリ
ソグラフィ法や液滴吐出法等、公知の所定の手法を用いることができる。なお、図3には
不図示であるが、基板1の表面1Aには既に配線(接続部材)等が形成されている。
【0044】
図3において、発光層6を形成するための材料を含む液体材料が液滴吐出法(インクジ
ェット法)に基づいて基板1上に設けられた正孔輸送性中間層5上に吐出される。液滴吐
出法とは、形成しようとする材料層を形成するための形成材料を液体材料にし、その液体
材料をディスペンサやインクジェット装置などの液滴吐出装置を用いて定量的に吐出する
ことによって、所望領域に前記形成材料を塗布する方法である。すなわち、液滴吐出ヘッ
ド(インクジェットヘッド)301に設けられたノズル325と基板1とを対向させた状
態でノズル325と基板1とを相対移動させつつ、ノズル325から1滴あたりの液量が
制御された液体材料の液滴を吐出することによって、基板1上(正孔輸送性中間層5上)
に液体材料による所望形状の膜パターンが形成される。こうして、基板1上(正孔輸送性
中間層5上)に発光層6が成膜される。
【0045】
図4は、液滴吐出法(インクジェット法)に用いられる液滴吐出装置(インクジェット
装置)IJの概略構成を示す斜視図である。この液滴吐出装置IJは、基板1上に発光層
6を含む有機層11を成膜するために、その有機層11を形成するための材料を含む液体
材料を基板1上に液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)301のノズル325から吐
出するものである。液滴吐出装置IJは、基台309と、基台309上に設けられ、基板
1を支持するステージ307と、基台309上でステージ307をY軸方向に駆動するY
軸方向駆動モータ303と、ステージ307のY軸方向への移動をガイドするY軸方向ガ
イド軸305と、ステージ307に支持された基板1上に対して液体材料を吐出する液滴
吐出ヘッド301と、液滴吐出ヘッド301をX軸方向に駆動するX軸方向駆動モータ3
02と、液滴吐出ヘッド301のX軸方向への移動をガイドするX軸方向ガイド軸304
と、クリーニング機構308と、液滴吐出装置IJの動作を制御する制御装置C1とを備
えている。
【0046】
ステージ307は、基板1を支持するものであって、基板1を基準位置に固定する不図
示の固定機構を備えている。Y軸方向ガイド軸305は、基台309に対して動かないよ
うに固定されている。ステージ307は、Y軸方向駆動モータ303を備えている。Y軸
方向駆動モータ303はステッピングモータ等であり、制御装置C1からY軸方向の駆動
信号が供給されると、ステージ307をY軸方向に移動する。
【0047】
液滴吐出ヘッド301は、複数のノズル325を備えたマルチノズルタイプの液滴吐出
ヘッドであり、その長手方向とX軸方向とが一致している。複数のノズル325は、液滴
吐出ヘッド301の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド
301のノズル325からは、ステージ307に支持されている基板1に対して液体材料
の液滴が吐出される。X軸方向ガイド軸304には、X軸方向駆動モータ302が接続さ
れている。X軸方向駆動モータ302はステッピングモータ等であり、制御装置C1から
X軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向ガイド軸304を回転させる。X軸方向ガ
イド軸304が回転すると、液滴吐出ヘッド301はX軸方向に移動する。
【0048】
制御装置C1は、液滴吐出ヘッド301に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、
X軸方向駆動モータ302に液滴吐出ヘッド301のX軸方向の移動を制御する駆動パル
ス信号を、Y軸方向駆動モータ303にステージ307のY軸方向の移動を制御する駆動
パルス信号を供給する。
【0049】
クリーニング機構308は、液滴吐出ヘッド301をクリーニングするものである。ク
リーニング機構308には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY
軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構308は、Y軸方向ガイド軸305
に沿って移動する。クリーニング機構308の移動も制御装置C1により制御される。
【0050】
図5は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための液滴吐出ヘッドの概略
構成図である。図5において、液体材料を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子3
22が設置されている。液体室321には、供給系323を介して液体材料が供給される
。ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピ
エゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させて液体室321を弾性変形
させる。そして、この弾性変形時の内容積の変化によってノズル325から液体材料の液
滴が吐出されるようになっている。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピ
エゾ素子322の歪み量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させる
ことにより、ピエゾ素子322の歪み速度を制御することができる。ピエゾ方式による液
滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0051】
発光層6を液滴吐出法を用いて成膜することにより、製造コストを低減することができ
る。すなわち、液滴吐出法では、基板1上の所望の局所領域に材料を配置することが可能
であるから、フォトリソグラフィ法等に比べて膜形成のプロセスが簡素であるとともに使
用材料に無駄が少ない。
【0052】
なおここでは、液滴吐出法を用いて発光層6を成膜するように説明したが、もちろん、
正孔注入層4や正孔輸送性中間層5を液滴吐出装置IJを用いて成膜するようにしてもよ
い。
【0053】
また、本実施形態においては、正孔注入層4、正孔輸送性中間層5、及び発光層6を含
む有機層11を成膜する第1工程SP1は、大気雰囲気中で行われる。本実施形態におい
ては、大気雰囲気(大気状態)とは、例えば温度が15℃以上、湿度が20%以上、酸素
濃度が18%以上の雰囲気(状態)を含む。
【0054】
なお、有機層11を成膜する第1工程SP1を、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、キセノン、及びクリプトンの
少なくとも1つを用いることができる。また、本実施形態においては、不活性ガス雰囲気
(不活性ガス状態)とは、酸素濃度及び水分濃度のそれぞれが、1ppm以下である雰囲
気(状態)を含む。
【0055】
液滴吐出法に基づいて基板1上(正孔輸送性中間層5上)に発光層6を成膜した後、基
板1上に成膜された発光層6(有機層11)に対して大気雰囲気中で加熱処理が施される
。図6は、基板1上に成膜された有機層11を処理する処理装置Tを示す模式図である。
【0056】
図6において、処理装置Tは、有機層11が成膜された基板1を収容可能な第1空間5
6を形成する第1収容装置50と、第1空間56とは別に設けられ、有機層11が成膜さ
れた基板1を収容可能な第2空間66を形成する第2収容装置60と、第1空間56を不
活性ガス雰囲気にするための不活性ガス供給装置51と、第1空間56を大気雰囲気にす
るための大気供給装置52と、基板1上に成膜された有機層11を加熱可能な加熱装置5
3と、第2収容装置60に設けられ、第2空間66に有機層11が成膜された基板1を収
容して、有機層11(発光層6)上に陰極7を蒸着により形成可能な電極形成装置63と
、第1空間56と第2空間66との間で基板1を搬送可能な搬送装置57と、処理装置T
の動作を制御する制御装置C2とを備えている。
【0057】
第1空間56と第2空間66とは通路59を介して接続されており、搬送装置57は通
路59を移動可能である。また、第1空間56と通路59との間には扉58Aが設けられ
、第2空間66と通路59との間には扉58Bが設けられている。制御装置C2は、扉5
8A、58Bを用いて、通路59を閉じることにより、第1空間56と第2空間66との
間でのガスの出入りを防止している。
【0058】
不活性ガス供給装置51には流路51Aの一端が接続され、大気供給装置52には流路
52Aの一端が接続されている。流路51Aの他端及び流路52Aの他端のそれぞれには
バルブを含む流路切替機構54が接続されている。また、流路切替機構54と第1空間5
6とは流路55を介して接続されている。制御装置C2は、流路切替機構54を制御する
ことにより、不活性ガス供給装置51と第1空間56とを流路51A及び流路55を介し
て接続可能である。そして、不活性ガス供給装置51と第1空間56とが流路51A及び
流路55を介して接続されているときには、流路切替機構54によって、大気供給装置5
2と第1空間56とを接続する流路52A及び流路55の途中が遮断される。同様に、制
御装置C2は、流路切替機構54を制御することにより、大気供給装置52と第1空間5
6とを流路52A及び流路55を介して接続可能である。そして、大気供給装置52と第
1空間56とが流路52A及び流路55を介して接続されているときには、流路切替機構
54によって、不活性ガス供給装置51と第1空間56とを接続する流路51A及び流路
55の途中が遮断される。すなわち、制御装置C2は、不活性ガス供給装置51から流路
51A及び流路55を介して第1空間56に不活性ガスを供給可能な状態においては、大
気供給装置52から流路52A及び流路55を介して第1空間56に大気を供給不能な状
態にする。また、制御装置C2は、大気供給装置52から流路52A及び流路55を介し
て第1空間56に活性ガスを供給可能な状態においては、不活性ガス供給装置51から流
路51A及び流路55を介して第1空間56に不活性ガスを供給不能な状態にする。
【0059】
不活性ガス供給装置51は、第1空間56に対して不活性ガスを供給することにより、
第1空間56を不活性ガス雰囲気にする。上述のように、不活性ガスとしては、ヘリウム
、アルゴン、窒素、ネオン、キセノン、及びクリプトンの少なくとも1つを用いることが
できる。本実施形態においては、不活性ガス供給装置51は第1空間56に対して窒素を
供給する。制御装置C2は、不活性ガス供給装置51を用いることにより、第1空間56
の不活性ガス濃度(不活性ガスと大気(活性ガス)との割合)を調整することができる。
本実施形態においては、制御装置C2は、第1空間56における酸素濃度が1ppm以下
となるように、第1空間56を窒素で満たす。また、制御装置C2は、不活性ガス供給装
置51を用いることにより、第1空間56における水分濃度が1ppm以下となるように
、第1空間56を窒素で満たす。
【0060】
また、大気供給装置52は、第1空間56に対して大気を供給することにより、第1空
間56を大気雰囲気(酸素濃度が約20%、窒素濃度が約80%の雰囲気)にする。
【0061】
このように、本実施形態においては、制御装置C2は、不活性ガス供給装置51、大気
供給装置52、及び流路切替機構54などを用いて、第1空間56を、不活性ガス雰囲気
及び大気雰囲気のいずれか一方に調整可能である。
【0062】
加熱装置53は、例えばホットプレート、又はオーブンを含む。本実施形態においては
、加熱装置53はホットプレートを備え、基板1を保持する保持面を有している。加熱装
置53は、保持面で基板1を保持した状態で、基板1及びその基板1上に成膜された発光
層6を含む有機層11を加熱することができる。
【0063】
発光層6を含む有機層11が成膜された基板1が第1空間56に収容された後、制御装
置C2は、大気供給装置52を用いて、基板1が収容された第1空間56を大気雰囲気に
するとともに、加熱装置53を用いて、基板1上に成膜された発光層6を含む有機層11
を加熱する。このように、制御装置C2は、基板1上に成膜された有機層11を、大気雰
囲気中で加熱する。
【0064】
制御装置C2は、基板1上に成膜された有機層11を大気雰囲気中で加熱する際、その
有機層11を100℃未満で所定時間加熱する。本実施形態においては、制御装置C2は
、基板1上に成膜された有機層11を大気雰囲気中で、約50℃で約10分間加熱する。
このように、処理装置Tは、大気雰囲気にされた第1空間56に収容された基板1上に成
膜された有機層11を100℃未満の所定温度で加熱する。
【0065】
なお、第1空間56において有機層11に対して処理が行われている間は、扉58A、
58Bが閉じられているとともに、搬送装置57は通路59に配置されている。
【0066】
次に、制御装置C2は、流路切替機構54を駆動し、第1空間56に対して不活性ガス
供給装置51より不活性ガスを供給する。不活性ガス供給装置51は、第1空間56に対
して不活性ガスを供給することにより、第1空間56を不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲
気)にする。
【0067】
制御装置C2は、不活性ガス供給装置51を用いて、基板1が収容された第1空間56
を不活性ガス雰囲気にするとともに、加熱装置53を用いて、基板1上に成膜された発光
層6を含む有機層11を加熱して焼成する。このように、制御装置C2は、基板1上に成
膜された有機層11を、不活性ガス雰囲気中で加熱する。
【0068】
制御装置C2は、基板1上に成膜された有機層11を不活性ガス雰囲気中で加熱する際
、その有機層11を100℃以上で所定時間加熱する。本実施形態においては、制御装置
C2は、基板1上に成膜された有機層11を不活性ガス中で、約130℃で約60分間加
熱して焼成する。このように、処理装置Tは、不活性ガス雰囲気にされた第1空間56に
収容された基板1上に成膜された有機層11を、上述の所定温度よりも高い温度で加熱し
て焼成する。
【0069】
なお、第1空間56において有機層11に対して処理が行われている間は、扉58A、
58Bが閉じられているとともに、搬送装置57は通路59に配置されている。
【0070】
第2工程SP2及び第3工程SP3が完了した後、制御装置C2は、電極形成装置63
を用いて、有機層11(発光層6)上に、陰極7を形成する。制御装置C2は、第1空間
56における有機層11に対する処理が完了した後、扉58Aを開けて搬送装置57を第
1空間56に進入させ、搬送装置57を用いて第1空間56から基板1を搬出する。搬送
装置57を用いて第1空間56から基板1を搬出した後、制御装置C2は扉58Aを閉じ
る。制御装置C2は扉58Aを閉じた後、扉58Bを開け、基板1を保持した搬送装置5
7を第2空間66に進入させる。そして、制御装置C2は、基板1を第2空間66に設け
られた不図示の保持部材に載置した後、搬送装置57を通路59に移動し、扉58Bを閉
じる。これにより、第2空間66に有機層11が成膜された基板1が収容されたことにな
る。
【0071】
第2収容装置60の第2空間66に設けられている電極形成装置63は蒸着装置を含み
、制御装置C2は、第1空間56での処理が完了し、第2空間66に収容された基板1上
に成膜された有機層11(発光層6)上に、蒸着により陰極7を形成する。本実施形態に
おいては、電極形成装置63は、有機層11上にアルミニウムを蒸着する。また、有機層
11上にアルミニウムを蒸着するとき、制御装置C2は第2空間66を真空にして、真空
蒸着する。これにより、有機層11上にはアルミニウムからなる陰極7が形成される。以
上により、基板1上には、陽極3、有機層11、及び陰極7を有する発光素子2が形成さ
れる。
【0072】
なお、第1空間56から第2空間66に基板1を搬送するとき、第1空間56、通路5
9、及び第2空間66の大気(酸素、水分を含む)は十分に低減されており、制御装置C
2は、焼成工程である第3工程SP3が完了した後、有機層11を大気に触れされること
なく、第2空間66に収容して、真空蒸着することができる。
【0073】
また、第2空間66において有機層11に対して処理が行われている間は、扉58A、
58Bが閉じられているとともに、搬送装置57は通路59に配置されている。
【0074】
基板1上に発光素子2が形成された後、基板1の第1領域41に接着剤8が塗布される
。接着剤8を基板1上に塗布する際には、液滴吐出法を用いることができる。基板1の第
1領域41に接着剤8が塗布された後、基板1の第1領域41と乾燥剤9を備えた封止部
材20の第2領域42とが接着剤8を介して貼り合わせられる。次いで、接着剤8として
光硬化性接着剤が用いられている場合には、接着剤8に対して所定の波長を有する光(紫
外光)が照射される。この場合、接着剤8を硬化させるための光が発光素子2に照射され
ないように、所定位置に光を遮るマスクを配置することができる。このように、基板1に
封止部材20を接続することによって、基板1と封止部材20との間に、発光素子2を配
置するための封止空間10が形成される。こうして、有機EL装置Sが製造される。
【0075】
本実施形態においては、基板1上に陽極3を形成し、その陽極3上に発光層6を含む有
機層11を成膜した後、その基板1上に成膜された有機層11を不活性ガス雰囲気中で加
熱して焼成する前に、大気雰囲気中で加熱することによって、発光素子2(有機EL装置
S)の発光寿命を延ばすことができた。
【0076】
これは、発光層6を含む有機層11を大気雰囲気中で所定温度で加熱することにより、
有機層11に残留していた酸素成分が有機物と反応し、製造後の有機EL装置Sの駆動時
(有機層11に対する電力の印加時)における酸化還元反応が抑制されることが一因であ
ると考えられる。すなわち、有機層11を形成するための材料を含む液体材料の溶媒に溶
解している酸素などに起因して、第1工程SP1において成膜された有機層11に酸素が
存在している可能性がある。その酸素を放置しておくと、製造後の有機EL装置Sの駆動
時(有機層11に対する電力の印加時)に酸化還元反応が発生し、その酸化還元反応によ
って、有機層11が劣化して、発光寿命が低下する可能性がある。本実施形態においては
、第1工程SP1において成膜された有機層11に酸素が存在していても、第1工程SP
1の後、陰極7を形成するまでの間に、有機層11を大気雰囲気中で所定温度で加熱し、
有機層11に存在する酸素を有機物と反応させることにより、製造後の有機EL装置Sの
駆動時(有機層11に対する電力の印加時)における酸化還元反応を抑制することができ
る可能性がある。
【0077】
以上説明したように、基板1上に成膜された有機層11を大気雰囲気中で加熱した後、
不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、発光素子2(有機EL装置S)の発光寿命を
延ばすことができる。
【0078】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の第1実施形態と同
一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0079】
図7は第2実施形態に係る有機EL装置Sの製造方法を説明するためのフローチャート
図である。図7に示すように、本実施形態における有機EL装置Sの製造方法は、基板1
上に上述の発光層6を含む有機層11を成膜する第1工程SP1と、基板1上に成膜され
た有機層11を大気雰囲気中で加熱する第2工程SP2と、基板1上に成膜された有機層
11を不活性ガス雰囲気中で加熱する第3工程SP3とを有しており、第3工程SP3は
、第1工程SP1の後、且つ第2工程SP2の前に設けられている。すなわち、第2実施
形態の製造方法は、上述の第1実施形態の製造方法に比べて、第2工程SP2と第3工程
SP3との順番が入れ替わっている。
【0080】
上述の第1実施形態と同様、基板1の表面(能動面)1Aには、陽極3、正孔注入層4
、正孔輸送性中間層5、及び発光層6がこの順で設けられる。液滴吐出法などに基づいて
基板1上(正孔輸送性中間層5上)に発光層6を成膜した後、基板1上に成膜された発光
層6(有機層11)に対して不活性ガス雰囲気中で加熱処理が施される。
【0081】
発光層6を含む有機層11が成膜された基板1が第1空間56に収容された後、制御装
置C2は、不活性ガス供給装置51を用いて、基板1が収容された第1空間56を不活性
ガス雰囲気にするとともに、加熱装置53を用いて、基板1上に成膜された発光層6を含
む有機層11を加熱する。このように、制御装置C2は、基板1上に成膜された有機層1
1を、不活性ガス雰囲気中で加熱する。
【0082】
上述の第1実施形態同様、制御装置C2は、基板1上に成膜された有機層11を不活性
ガス雰囲気中で、約130℃で約60分間加熱して焼成する。
【0083】
次に、制御装置C2は、流路切替機構54を駆動し、第1空間56に対して大気供給装
置52より大気を供給する。大気供給装置52は、第1空間56に対して大気を供給する
ことにより、第1空間56を大気雰囲気にする。
【0084】
制御装置C2は、大気供給装置52を用いて、基板1が収容された第1空間56を大気
雰囲気にするとともに、加熱装置53を用いて、基板1上に成膜された発光層6を含む有
機層11を加熱する。
【0085】
上述の第1実施形態同様、制御装置C2は、基板1上に成膜された有機層11を大気雰
囲気中で、約50℃で約10分間加熱する。
【0086】
第3工程SP3及び第2工程SP2が完了した後、制御装置C2は、搬送装置57を用
いて第1空間56から第2空間66へ基板1を搬送し、電極形成装置63を用いて、有機
層11(発光層6)上に、陰極7を形成する。以上により、基板1上には、陽極3、有機
層11、及び陰極7を有する発光素子2が形成される。
【0087】
基板1上に発光素子2が形成された後、基板1の第1領域41に接着剤8が塗布され、
基板1の第1領域41と乾燥剤9を備えた封止部材20の第2領域42とが接着剤8を介
して貼り合わせられる。次いで、接着剤8として光硬化性接着剤が用いられている場合に
は、接着剤8に対して所定の波長を有する光(紫外光)が照射される。このように、基板
1に封止部材20を接続することによって、基板1と封止部材20との間に、発光素子2
を配置するための封止空間10が形成される。こうして、有機EL装置Sが製造される。
【0088】
本実施形態においては、基板1上に陽極3を形成し、その陽極3上に発光層6を含む有
機層11を成膜した後、その基板1上に成膜された有機層11を不活性ガス雰囲気中で加
熱して焼成した後に、大気雰囲気中で加熱することによって、発光素子2(有機EL装置
S)の発光寿命を延ばすことができた。
【0089】
以上説明したように、基板1上に成膜された有機層11を不活性ガス雰囲気中で加熱し
た後、大気雰囲気中で加熱することによっても、発光素子2(有機EL装置S)の発光寿
命を延ばすことができる。
【0090】
なお、上述の第1、第2実施形態においては、基板1上に成膜された有機層11を不活
性ガス雰囲気中で加熱する工程と、基板1上に成膜された有機層11を大気雰囲気中で加
熱する工程とのそれぞれを、同一の第1空間56で行っているが、互いに異なる空間で行
ってもよい。
【0091】
また、上述の第1、第2実施形態においては、基板1上に成膜された有機層11を不活
性ガス雰囲気中で加熱するときと、基板1上に成膜された有機層11を大気雰囲気中で加
熱するときとで、同じ加熱装置53を用いているが、異なる加熱装置で加熱するようにし
てもよい。
【0092】
<光書き込みヘッド>
図8は、上述の有機EL装置Sを、電子写真方式プリンタの光書き込みヘッド(プリン
タヘッド)に適用した場合の一例を示す図である。図8において、有機EL装置Sの基板
1の上方には光学系70が設けられており、光学系70の上方には感光ドラム(感光体)
71が設けられている。有機EL装置Sは、光学系70を介して、感光ドラム71に対し
て光を照射する。有機EL装置Sの基板1から射出された光は、光学系70を通って感光
ドラム71上に集光されるようになっている。有機EL装置Sは長寿命化されているため
、感光ドラム71を良好に感光させることができ、その感光ドラム71を用いて良好に画
像形成することができる。
【0093】
<電子機器>
次に、上記実施の形態の有機EL装置Sを備えた電子機器の例について説明する。
図9(A)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(A)において、符号10
00は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置Sを用いたフルカラーの
表示部を示している。
【0094】
図9(B)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(B)において、
符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記の有機EL装置Sを用いたフルカラ
ーの表示部を示している。
【0095】
図9(C)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図で
ある。図9(C)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードな
どの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記の有機EL装置Sを
用いたフルカラーの表示部を示している。
【0096】
図9(A)〜図9(C)に示す電子機器は、上記実施の形態の有機EL装置Sを備えて
いるので、コンパクトで所望の性能を有する電子機器を提供することができる。
【0097】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨
を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0098】
例えば、上述の有機EL装置Sは、面発光が可能な照明用光源として用いることができ
、例えば、液晶表示装置の表示部を構成するバックライトとして用いることができる。ま
た、上述の各実施形態の有機EL装置Sは、例えばモノクロームのディスプレイに適用す
ることができる。
【0099】
また、上述の実施形態では、発光素子2の発光が基板1を介して外面側に射出される形
式、所謂ボトム・エミッションの例を用いて説明したが、発光素子2の発光が基板1と逆
側の陰極7側から封止部材20を介して射出される形式、所謂トップ・エミッションであ
っても適用可能である。この場合、封止部材20や陰極7としては、光の取り出しが可能
な透明あるいは半透明材料が用いられる。
【0100】
また、上記実施形態では、上述の発光層6や接着剤8を成膜する際に、液滴吐出法(イ
ンクジェット法)を用いているが、他の所定の手法を用いることももちろん可能である。
例えば発光層6を成膜するために、スピンコート法やディップ法などを用いることも可能
である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置を示す要部断面図である。
【図2】第1実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明するためのフローチャート図である。
【図3】発光層を成膜している様子を説明するための模式図である。
【図4】液滴吐出装置を説明するための図である。
【図5】液滴吐出ヘッドを説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係る有機EL装置の製造装置を説明するための図である。
【図7】第2実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明するためのフローチャート図である。
【図8】有機EL装置を光書き込みヘッドに適用した例を説明するための図である。
【図9】有機EL装置を備えた電子機器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
1…基板、2…発光素子、3…陽極、4…正孔注入層、5…正孔輸送性中間層、6…発
光層、7…陰極、11…陰極、50…第1収容装置、51…不活性ガス供給装置、52…
大気供給装置、53…加熱装置、56…第1空間、60…第2収容装置、63…電極形成
装置、66…第2空間、C1、C2…制御装置、IJ…液滴吐出装置、S…有機EL装置
、T…処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光可能な有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、
基板上に前記有機層を成膜する第1工程と、
前記基板上に成膜された前記有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱する第2工程と、
前記基板上に成膜された前記有機層を大気雰囲気中で加熱する第3工程とを有し、
前記第3工程を、前記第2工程の前及び後の少なくとも一方で行うことを特徴とする有
機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記基板上に形成された第1電極上に前記有機層を成膜し、
前記第2工程及び前記第3工程が完了した後、前記有機層上に第2電極を形成すること
を特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程は、第1温度で前記有機層を加熱して焼成し、
前記第3工程は、前記第1温度よりも低い第2温度で前記有機層を加熱することを特徴
とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、キセノン、及びクリプトンの
少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1工程は、前記有機層を形成するための材料を含む液体材料を液滴吐出法に基づ
いて前記基板上に吐出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法

【請求項6】
発光可能な有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造装置において、
基板上に成膜された前記有機層を不活性ガス雰囲気中で加熱可能な第1処理装置と、
基板上に成膜された前記有機層を大気雰囲気中で加熱可能な第2処理装置と、
前記基板上に成膜された前記有機層を前記第1処理装置で処理する前及び後の少なくと
も一方で、前記有機層を前記第2処理装置で処理する制御装置とを備えたことを特徴とす
る有機エレクトロルミネッセンス装置の製造装置。
【請求項7】
前記有機層が成膜された前記基板を収容可能な第1空間を形成する第1収容装置と、
前記第1空間を不活性ガス雰囲気及び大気雰囲気のいずれか一方に調整可能な調整装置
とを備え、
前記第1処理装置は、前記不活性ガス雰囲気にされた前記第1空間に収容された前記基
板上に成膜された前記有機層を第1温度で加熱して焼成する第1加熱装置を含み、
前記第2処理装置は、前記大気雰囲気にされた前記第1空間に収容された前記基板上に
成膜された前記有機層を前記第1温度よりも低い第2温度で加熱する第2加熱装置を含む
ことを特徴とする請求項6記載の製造装置。
【請求項8】
前記基板上に前記有機層を成膜するために、該有機層を形成するための材料を含む液体
材料を前記基板上に吐出する液滴吐出装置を備えたことを特徴とする請求項6又は7記載
の製造装置。
【請求項9】
前記液滴吐出装置は、前記基板上に形成された第1電極上に前記有機層を成膜し、
前記第1処理装置及び前記第2処理装置の処理が完了した後、前記有機層上に第2電極
を形成する電極形成装置を備えたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項記載の製
造装置。
【請求項10】
前記電極形成装置は第2空間を有し、前記第2空間に前記有機層が成膜された前記基板
を収容して蒸着により前記第2電極を形成することを特徴とする請求項9記載の製造装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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