説明

有機エレクトロルミネッセンス装置

【課題】内部量子収率の向上に三重項−三重項消滅を効果的に利用可能とする技術を提供する。
【解決手段】本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、陽極ANDと、陰極CTDと、前記陽極ANDと前記陰極CTDとの間に位置し、正孔輸送性を有している第1ホスト材料と青色蛍光性を有している第1ドーパントとを含んだ発光層EMLと、前記陰極CTDと前記発光層EMLとの間で前記発光層EMLと接触し、電子輸送性を有している第2ホスト材料と蛍光性及び燐光性の少なくとも一方を有している第2ドーパントとを含み、前記第2ホスト材料は前記第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより大きく、前記第2ドーパントは前記第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより小さく、前記第2ドーパントが放出する最大強度の蛍光は、前記第1ドーパントが放出する最大強度の蛍光と比較して波長がより短い電荷エスケープ層CELとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELという)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子に電荷を注入することによって生じる励起子のうち、4分の1は一重項励起子であり、4分の3は三重項励起子である。そのため、一重項励起状態から基底状態への電子の遷移によって生じる蛍光のみを利用する有機EL素子については、理論的に達成可能な内部量子収率は、最大でも25%であるとされてきた。
【0003】
三重項励起状態から基底状態への電子遷移によって生じる燐光を利用する有機EL素子は、理論的には、蛍光のみを利用する有機EL素子と比較して、より高い内部量子収率を達成可能である。一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差を考慮すると、理論的には、最大で100%の内部量子収率を達成できる。
【0004】
しかしながら、一般に、燐光材料は重原子の錯体であり、また、燐光を利用する有機EL素子において三重項励起子のエネルギーを有効利用するためには、発光層が含んでいるホスト材料及び発光層に隣接した層の材料として、励起エネルギーが大きな材料を使用しなければならない。それ故、燐光を利用する有機EL素子には、輝度半減寿命が短いという短所がある。
【0005】
ところで、最近、非特許文献1に記載されているように、蛍光を利用する有機EL素子において、三重項励起子が三重項−三重項消滅することに伴って生じる一重項励起子を発光に利用することが検討されている。これを利用すると、理論的には、最大で40%の内部量子収率を達成できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D. Y. Kondakov, Characterization of triplet-triplet annihilation in organic light-emitting diodes based on anthracene derivatives", Journal of Applied Physics, Volume 102, Issue 11, Article number 114504 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内部量子収率の向上にTTF三重項−三重項消滅を効果的に利用可能とする技術は知られていない。
【0008】
そこで、本発明は、内部量子収率の向上に三重項−三重項消滅を効果的に利用可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置し、正孔輸送性を有している第1ホスト材料と青色蛍光性を有している第1ドーパントとを含んだ発光層と、前記陰極と前記発光層との間で前記発光層と接触し、電子輸送性を有している第2ホスト材料と蛍光性を有している第2ドーパントとを含み、前記第2ホスト材料は前記第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより大きく、前記第2ドーパントは前記第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより小さく、前記第2ドーパントが放出する最大強度の蛍光は、前記第1ドーパントが放出する最大強度の蛍光と比較して波長がより短い電荷エスケープ層とを具備した有機エレクトロルミネッセンス装置が提供される。
【0010】
本発明の第2側面によると、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置し、電子輸送性を有している第1ホスト材料と青色蛍光性を有している第1ドーパントとを含んだ発光層と、前記陽極と前記発光層との間で前記発光層と接触し、正孔輸送性を有している第2ホスト材料と蛍光性を有している第2ドーパントとを含み、前記第2ホスト材料は前記第1ホスト材料と比較して電子親和力がより小さく、前記第2ドーパントは前記第1ホスト材料と比較して電子親和力がより大きく、前記第2ドーパントが放出する最大強度の蛍光は、前記第1ドーパントが放出する最大強度の蛍光と比較して波長がより短い電荷エスケープ層とを具備した有機エレクトロルミネッセンス装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、内部量子収率の向上に三重項−三重項消滅を効果的に利用可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の有機EL装置において使用可能な有機EL素子の一例を概略的に示す断面図。
【図2】図1に示す有機EL素子におけるエネルギー準位の相関の一例を示す図。
【図3】本発明の有機EL装置において使用可能な有機EL素子の他の例を概略的に示す断面図。
【図4】図3に示す有機EL素子におけるエネルギー準位の相関の一例を示す図。
【図5】本発明の一態様に係る有機EL装置を概略的に示す平面図。
【図6】図5に示す有機EL装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図7】一変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図8】他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図9】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図10】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図11】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図12】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図13】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図14】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図15】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図16】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図17】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図18】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図19】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図20】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図21】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図22】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図23】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図24】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図25】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図26】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図27】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図28】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図29】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図30】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図31】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図32】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図33】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図34】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図35】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図36】更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図。
【図37】素子A及びBにおいて使用した第1ドーパント及び第1ホスト材料の吸収スペクトルと第2ドーパント及び第2ホスト材料の発光スペクトルとを示すグラフ。
【図38】素子A及びBについて得られた過渡応答を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の有機EL装置において使用可能な有機EL素子の一例を概略的に示す断面図である。
【0015】
図1に示す有機EL素子OLEDは、陽極AND、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、発光層EML、電荷エスケープ層CEL、電子輸送層ETL、電子注入層EIL、及び陰極CTDを含んだ多層構造を有している。
【0016】
陽極ANDは、例えば、金属、合金、導電性の金属化合物、又はそれらの組み合わせからなる。陽極ANDは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。陽極ANDとしては、例えば、インジウム錫酸化物(以下、ITOという)層を使用する。
【0017】
陰極CTDは、例えば、金属、合金、導電性の金属化合物、又はそれらの組み合わせからなる。陰極CTDは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。典型的には、陰極CTDは、陽極ANDと比較して仕事関数がより小さい。陰極CTDとしては、例えば、アルミニウム層を使用する。
【0018】
発光層EMLは、陽極ANDと陰極CTDとの間に介在している。発光層EMLは、有機物からなる層であって、例えば、第1ホスト材料と第1ドーパントとを含んだ混合物からなる。
【0019】
第1ホスト材料は、典型的には、発光層EMLが含んでいる成分のうち、質量分率が最も大きな成分である。典型的には、発光層EMLにおける第1ホスト材料の質量分率は50%よりも大きい。
【0020】
第1ホスト材料は、正孔輸送性を有している。典型的には、第1ホスト材料の正孔移動度は、第1ホスト材料の電子移動度と比較してより大きい。そのような材料としては、例えば、1,1’−(ジメトキシ−1,4’−フェニレン)ジピレン(以下、DOPPPという)を使用することができる。
【0021】
また、第1ホスト材料は、蛍光性及び燐光性の少なくとも一方、典型的には蛍光性を有している。第1ホスト材料は、その発光スペクトルが第1ドーパントの吸収スペクトルと少なくとも部分的に重なり合うように選ばれる。
【0022】
第1ドーパントは、例えば、蛍光性を有しているドーパントである。第1ドーパントは、蛍光性及び燐光性を有しているドーパントであってもよい。即ち、第1ドーパントは、蛍光性を有しているドーパントと燐光性を有しているドーパントとの混合物であってもよい。第1ドーパントとしては、例えば、4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル(以下、BDAVBiという)を使用することができる。ここでは、一例として、第1ドーパントは青色蛍光性を有していることとする。
【0023】
正孔輸送層HTLは、陽極ANDと発光層EMLとの間に介在している。正孔輸送層HTLは有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、陽極ANDの仕事関数と発光層EMLのイオン化エネルギーとの間にある。正孔輸送層HTLの材料としては、例えば、ビス−ナフチル−フェニルアミノ−ビフェニル(以下、α−NPDという)を使用することができる。正孔輸送層HTLは省略することができる。
【0024】
正孔注入層HILは、陽極ANDと正孔輸送層HTLとの間に介在している。正孔注入層HILは有機物、無機物、又は有機金属化合物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、陽極ANDの仕事関数と正孔輸送層HTLのイオン化エネルギーとの間にある。正孔注入層HILの材料としては、例えば、アモルファスカーボン又は銅フタロシアニン(以下、CuPcという)を使用することができる。正孔注入層HILは省略することができる。
【0025】
電子輸送層ETLは、発光層EMLと陰極CTDとの間に介在している。電子輸送層ETLは例えば有機物からなり、その電子親和力は、典型的には、発光層EMLの電子親和力と陰極CTDの仕事関数との間にある。電子輸送層ETLの材料としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alq3という)又は2−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下、OXDという)を使用することができる。
【0026】
電子注入層EILは、電子輸送層ETLと陰極CTDとの間に介在している。電子注入層EILは有機物、無機物、又は有機金属化合物からなり、その電子親和力は、典型的には、電子輸送層ETLの電子親和力と陰極CTDの仕事関数との間にある。電子注入層EILの材料としては、例えば、弗化リチウムを使用することができる。電子注入層EILは省略することができる。
【0027】
電荷エスケープ層CELは、発光層EMLと電子輸送層ETLとの間で、発光層EMLと接触している。電荷エスケープ層CELは、第2ホスト材料と第2ドーパントとを含んでいる。
【0028】
第2ホスト材料は、例えば、電荷エスケープ層CELが含んでいる成分のうち、質量分率が最も大きな成分である。典型的には、電荷エスケープ層CELにおける第2ホスト材料の質量分率は50%よりも大きい。
【0029】
第2ホスト材料は、電子輸送性を有している。典型的には、第2ホスト材料の電子移動度は、第2ホスト材料の正孔移動度と比較してより大きい。そのような材料としては、例えば、バソクプロイン(以下、BCPという)を使用することができる。
【0030】
第2ホスト材料は、第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより大きい。第2ホスト材料は、例えば、第1ホスト材料と比較して電子親和力がより小さい。
【0031】
第2ホスト材料は、蛍光性及び燐光性の少なくとも一方、例えば蛍光性を有していてもよい。この場合、第2ホスト材料は、例えば、その発光スペクトルが、第2ドーパントの吸収スペクトル、第1ホスト材料の吸収スペクトル、第1ドーパントの吸収スペクトル、又はそれらの2つ以上と少なくとも部分的に重なり合うように選択することができる。
【0032】
第2ドーパントは、蛍光性を有していてもよく、燐光性を有していてもよい。或いは、第2ドーパントは蛍光性及び燐光性を有していてもよい。即ち、第2ドーパントは、蛍光性を有しているドーパントと燐光性を有しているドーパントとの混合物であってもよい。
【0033】
第2ドーパントは、第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより小さい。また、典型的には、第2ドーパントが放出する最大強度の光は、第1ドーパントが放出する最大強度の蛍光と比較して波長がより短い。この場合、第2ドーパントが放出する光を、第1ドーパントの励起に利用することができる。例えば、第2ドーパントの発光スペクトルが第1ドーパントの吸収スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている場合、第2ドーパントが放出する蛍光及び/又は燐光は、第1ドーパントの励起光として直接的に利用され得る。
【0034】
第2ドーパントとしては、例えば、1,3−ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)ベンゼン(以下、BSBという)を使用することができる。ここでは、一例として、第2ドーパントは、蛍光性を有しており、紫色の可視光線又は紫外線を放出することとする。
【0035】
上述した構成を採用すると、三重項−三重項消滅に伴って生じる一重項励起子を効果的に利用することが可能となる。これについて、以下に説明する。
【0036】
三重項−三重項消滅は、以下の式に示すように、三重項励起子同士が衝突して一重項励起子を生じる現象である。
4(3M*+3M*)→1M*+33M*+4M
なお、上記式において、記号「3M*」は三重項励起子を表し、記号「1M*」は一重項励起子を表し、記号「M」は互いから解離した電子と正孔との組を表している。
【0037】
発光層へのキャリアの注入によって生じた一重項励起子に加え、三重項励起子同士の衝突によって生じる一重項励起子を発光層による蛍光に利用できれば、発光層へのキャリアの注入によって生じた一重項励起子のみを発光層による蛍光に利用した場合と比較して、より高い内部量子収率を達成できる。高い内部量子収率は、高輝度化、低消費電力化及び長寿命化に有利である。
【0038】
ところで、一般的な有機EL素子では、内部量子収率を高めるため、発光層に注入された電荷が隣接した層へと放出され難い構成を採用している。例えば、発光層において正孔移動度が電子移動度と比較してより大きく、発光層への正孔注入効率が発光層への電子注入効率と比較してより大きい場合には、発光層に注入した正孔が励起子の生成に利用されずに電子輸送層へと放出されるのを抑制するために、電子輸送層のイオン化エネルギーが発光層のイオン化エネルギーと比較してより大きい構成を採用する。
【0039】
この構成を採用した場合、励起子は、主に、発光層のうち電子輸送層との界面近傍の領域において生成する。しかしながら、この領域には、電荷、ここでは正孔も高い密度で存在している。励起子が電荷と衝突すると、励起状態から基底状態への非放射遷移を生じる。そのため、発光層内に三重項励起子を高い密度で存在させることができない。それ故、発光層に注入した電荷に対する三重項励起子同士の衝突に伴って生じる一重項励起子の比は小さい。
【0040】
図2は、図1に示す有機EL素子OLEDにおけるエネルギー準位の相関の一例を示す図である。
【0041】
図2において、参照符号「EAHTL」及び「IEHTL」は、それぞれ、正孔輸送層HTLの電子親和力及びイオン化エネルギーを表している。参照符号「EAETL」及び「IEETL」は、それぞれ、電子輸送層ETLの電子親和力及びイオン化エネルギーを表している。参照符号「EAHST1」及び「IEHST1」は、それぞれ、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力及びイオン化エネルギーを表している。参照符号「EADPT1」及び「IEDPT1」は、それぞれ、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力及びイオン化エネルギーを表している。参照符号「EAHST2」及び「IEHST2」は、それぞれ、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料の電子親和力及びイオン化エネルギーを表している。参照符号「EADPT2」及び「IEDPT2」は、それぞれ、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントの電子親和力及びイオン化エネルギーを表している。
【0042】
図2では、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより小さい。また、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1と比較してより小さい。
【0043】
正孔輸送層HTLのイオン化エネルギーIEHTLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより小さく、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより大きい。また、正孔輸送層HTLの電子親和力EAHTLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較してより小さい。
【0044】
電子輸送層ETLのイオン化エネルギーIEETLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより大きい。また、電子輸送層ETLの電子親和力EAETLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較してより小さい。
【0045】
電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより大きく、電子輸送層ETLのイオン化エネルギーIEETLとほぼ等しい。そして、この第2ホスト材料の電子親和力EAHST2は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較してより小さく、電子輸送層ETLの電子親和力EAETLとほぼ等しい。
【0046】
電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT2は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2と比較してより小さく、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより小さく、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより大きく、電子輸送層ETLのイオン化エネルギーIEETLと比較してより小さい。また、この第2ドーパントの電子親和力EADPT2は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントの電子親和力EADPT2と比較して僅かに小さく、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較してより小さく、電子輸送層ETLの電子親和力EAETLと比較して僅かに小さい。
【0047】
上記の通り、図2において、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより大きい。それ故、例えば、発光層EMLにおいて正孔移動度が電子移動度と比較してより大きく、発光層EMLへの正孔注入効率が発光層EMLへの電子注入効率と比較してより大きい場合には、発光層EMLのうち電荷エスケープ層CELとの界面近傍の領域に、励起子を高い密度で発生させることができる。
【0048】
また、図2において、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT2は、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより小さい。それ故、発光層EMLから電荷エスケープ層CELへと正孔を逃がし、先の領域における正孔の密度が過剰に高くなるのを防止できる。
【0049】
このように、図2の構成を採用すると、発光層EMLの特定の領域において電荷の密度が過剰に高くなるのを防止しつつ、この領域において三重項励起子を高い密度で存在させることができる。従って、発光層EMLに注入した電荷に対する三重項励起子同士の衝突に伴って生じる一重項励起子の比を大きくすることができる。それ故、内部量子収率の向上に、三重項−三重項消滅を効果的に利用することが可能となる。
【0050】
また、図2の構成を採用した場合、発光層EMLから電荷エスケープ層CELへと逃がした正孔は、電子輸送層ETLから電荷エスケープ層CELへと注入される電子とともに励起子を生成し得る。これら励起子が励起状態から基底状態へと遷移するのに伴って放出するエネルギーは、第1ドーパントの励起に直接的又は間接的に利用することができる。このエネルギーを第1ドーパントの励起に利用すると、内部量子収率を更に向上させることができる。
【0051】
以上の通り、図1及び図2を参照しながら説明した有機EL素子OLEDでは、発光層EMLのうち電荷エスケープ層CELと隣接した領域に正孔を蓄積させ、この領域において励起子を高密度に発生させるとともに、この領域から過剰な正孔を電荷エスケープ層CELへと速やかに移動させる構成を採用している。その代わりに、以下に説明するように、発光層EMLのうち電荷エスケープ層CELと隣接した領域に電子を蓄積させ、この領域において励起子を高密度に発生させるとともに、この領域から過剰な電子を電荷エスケープ層CELへと速やかに移動させる構成を採用してもよい。
【0052】
図3は、本発明の有機EL装置において使用可能な有機EL素子の他の例を概略的に示す断面図である。
【0053】
図3に示す有機EL素子OLEDは、以下の点を除き、図1を参照しながら説明した有機EL素子OLEDと同様である。
【0054】
発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料は、典型的には、発光層EMLが含んでいる成分のうち、質量分率が最も大きな成分である。典型的には、発光層EMLにおける第1ホスト材料の質量分率は50%よりも大きい。
【0055】
第1ホスト材料は、電子輸送性を有している。典型的には、第1ホスト材料の電子移動度は、第1ホスト材料の正孔移動度と比較してより大きい。そのような材料としては、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(以下、ADNという)を使用することができる。
【0056】
また、第1ホスト材料は、蛍光性及び燐光性の少なくとも一方、典型的には蛍光性を有している。第1ホスト材料は、その発光スペクトルが第1ドーパントの吸収スペクトルと少なくとも部分的に重なり合うように選ばれる。
【0057】
発光層EMLが含んでいる第1ドーパントは、例えば、蛍光性を有しているドーパントである。第1ドーパントは、蛍光性及び燐光性を有しているドーパントであってもよい。即ち、第1ドーパントは、蛍光性を有しているドーパントと燐光性を有しているドーパントとの混合物であってもよい。第1ドーパントとしては、例えば、BDAVBiを使用することができる。ここでは、一例として、第1ドーパントは青色蛍光性を有していることとする。
【0058】
電荷エスケープ層CELは、発光層EMLと電子輸送層ETLとの間で、発光層EMLと接触している。
【0059】
電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料は、例えば、電荷エスケープ層CELが含んでいる成分のうち、質量分率が最も大きな成分である。典型的には、電荷エスケープ層CELにおける第2ホスト材料の質量分率は50%よりも大きい。
【0060】
第2ホスト材料は、正孔輸送性を有している。典型的には、第2ホスト材料の正孔移動度は、第2ホスト材料の電子移動度と比較してより大きい。そのような材料としては、例えば、4,4’−ビス[N,N’−(3トリル)アミノ]−3,3’−ジメチルビフェニル(以下、HMTPDという)を使用することができる。
【0061】
第2ホスト材料は、第1ホスト材料と比較して電子親和力がより小さい。第2ホスト材料は、例えば、第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより小さい。
【0062】
第2ホスト材料は、蛍光性及び燐光性の少なくとも一方、例えば蛍光性を有していてもよい。この場合、第2ホスト材料は、例えば、その発光スペクトルが、第2ドーパントの吸収スペクトル、第1ホスト材料の吸収スペクトル、第1ドーパントの吸収スペクトル、又はそれらの2つ以上と少なくとも部分的に重なり合うように選択することができる。
【0063】
第2ドーパントは、蛍光性を有していてもよく、燐光性を有していてもよい。或いは、第2ドーパントは蛍光性及び燐光性を有していてもよい。即ち、第2ドーパントは、蛍光性を有しているドーパントと燐光性を有しているドーパントとの混合物であってもよい。
【0064】
第2ドーパントは、第1ホスト材料と比較して電子親和力がより大きい。また、典型的には、第2ドーパントが放出する最大強度の光は、第1ドーパントが放出する最大強度の蛍光と比較して波長がより短い。この場合、第2ドーパントが放出する光を、第1ドーパントの励起に利用することができる。例えば、第2ドーパントの発光スペクトルが第1ドーパントの吸収スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている場合、第2ドーパントが放出する蛍光及び/又は燐光は、第1ドーパントの励起光として直接的に利用され得る。
【0065】
第2ドーパントとしては、例えば、2,3,6,7,10,11−ヘキサトリルトリフェニレン(以下、HTPという)を使用することができる。ここでは、一例として、第2ドーパントは、蛍光性を有しており、紫色の可視光線又は紫外線を放出することとする。
【0066】
上述した構成を採用した場合も、三重項−三重項消滅に伴って生じる一重項励起子を効果的に利用することが可能となる。これについて、以下に説明する。
【0067】
上記の通り、一般的な有機EL素子では、内部量子収率を高めるため、発光層に注入された電荷が隣接した層へと放出され難い構成を採用している。例えば、発光層において電子移動度が正孔移動度と比較してより大きく、発光層への電子注入効率が発光層への正孔注入効率と比較してより大きい場合には、発光層に注入した電子が励起子の生成に利用されずに正孔輸送層へと放出されるのを抑制するために、正孔輸送層の電子親和力が発光層の電子親和力と比較してより小さい構成を採用する。
【0068】
この構成を採用した場合、励起子は、主に、発光層のうち正孔輸送層との界面近傍の領域において生成する。しかしながら、この領域には、電荷、ここでは電子も高い密度で存在している。励起子が電荷と衝突すると、励起状態から基底状態への非放射遷移を生じる。そのため、発光層内に三重項励起子を高い密度で存在させることができない。それ故、発光層に注入した電荷に対する三重項励起子同士の衝突に伴って生じる一重項励起子の比は小さい。
【0069】
図4は、図3に示す有機EL素子OLEDにおけるエネルギー準位の相関の一例を示す図である。
【0070】
図4では、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより小さい。また、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1と比較して僅かに小さい。
【0071】
正孔輸送層HTLのイオン化エネルギーIEHTLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより小さく、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1とほぼ等しい。また、正孔輸送層HTLの電子親和力EAHTLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1とほぼ等しい。
【0072】
電子輸送層ETLのイオン化エネルギーIEETLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1とほぼ等しく、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより大きい。また、電子輸送層ETLの電子親和力EAETLは、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1とほぼ等しく、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較して僅かに大きい。
【0073】
電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより小さく、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより大きく、正孔輸送層HTLのイオン化エネルギーIEHTLと比較してより大きい。そして、この第2ホスト材料の電子親和力EAHST2は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較してより小さく、正孔輸送層HTLの電子親和力EAHTLと比較してより小さい。
【0074】
電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT2は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2と比較して僅かに大きく、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1と比較してより小さく、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と比較してより大きく、正孔輸送層HTLのイオン化エネルギーIEHTLと比較してより大きい。また、この第2ドーパントの電子親和力EADPT2は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料の電子親和力EAHST2と比較してより大きく、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1及び発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較してより大きく、正孔輸送層HTLの電子親和力EAHTLと比較してより大きい。
【0075】
上記の通り、図4において、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ホスト材料の電子親和力EAHST2は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1と比較してより小さい。それ故、例えば、発光層EMLにおいて電子移動度が正孔移動度と比較してより大きく、発光層EMLへの電子注入効率が発光層EMLへの正孔注入効率と比較してより大きい場合には、発光層EMLのうち電荷エスケープ層CELとの界面近傍の領域に、励起子を高い密度で発生させることができる。
【0076】
また、図4において、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントの電子親和力EADPT2は、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1と比較してより大きい。それ故、発光層EMLから電荷エスケープ層CELへと電子を逃がし、先の領域における電子の密度が過剰に高くなるのを防止できる。
【0077】
このように、図4の構成を採用すると、発光層EMLの特定の領域において電荷の密度が過剰に高くなるのを防止しつつ、この領域において三重項励起子を高い密度で存在させることができる。従って、発光層EMLに注入した電荷に対する三重項励起子同士の衝突に伴って生じる一重項励起子の比を大きくすることができる。それ故、内部量子収率の向上に、三重項−三重項消滅を効果的に利用することが可能となる。
【0078】
また、図4の構成を採用した場合、発光層EMLから電荷エスケープ層CELへと逃がした電子は、正孔輸送HETLから電荷エスケープ層CELへと注入される正孔とともに励起子を生成し得る。これら励起子が励起状態から基底状態へと遷移するのに伴って放出するエネルギーは、第1ドーパントの励起に直接的又は間接的に利用することができる。このエネルギーを第1ドーパントの励起に利用すると、内部量子収率を更に向上させることができる。
【0079】
図1乃至図4を参照しながら説明した有機EL素子OLEDには、様々な変形が可能である。
【0080】
例えば、図1及び図2を参照しながら説明した有機EL素子OLEDにおいては、第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1以上であってもよい。発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1は、第1ホスト材料の電子親和力EAHST1以上でもあってもよい。また、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントの電子親和力EADPT2と第2ホスト材料の電子親和力EADPT2との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。また、第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントイオン化エネルギーIEDPT2と第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2との間であってもよいし、それらよりも大きくてもよく、それらの何れかと等しくてもよい。第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントイオン化エネルギーIEDPT2と第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2との間であってよいし、それらよりも小さくてもよく、それらの何れかと等しくてもよい。
【0081】
図1及び図2を参照しながら説明した有機EL素子OLEDにおいて、正孔輸送層HTLのイオン化エネルギーIEHTLは、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEDPT1との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。正孔輸送層HTLの電子親和力EAHTLは、発光層EMLが含んでいる電子親和力EADPT1と第1ホスト材料の電子親和力EADPT1と間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。電子輸送層ETLのイオン化エネルギーIEETLは、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT2と第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。電子輸送層ETLの電子親和力EAETLはm第2ドーパントの電子親和力EADPT2と第2ホスト材料の電子親和力EADPT2との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。
【0082】
図3及び図4を参照しながら説明した有機EL素子OLEDにおいては、第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1以上であってもよい。また、第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントイオン化エネルギーIEDPT2と第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2との間であってもよいし、それらより大きくてもよく、それらの一方と等しくてもよい。発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST1は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT2と第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2との間であってもよいし、それらより小さくてもよく、それらの一方と等しくてもよい。発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1は、発光層EMLが含んでいる第1ホスト材料の電子親和力EAHST1以上であってもよい。また、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントの電子親和力EADPT1は、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントの電子親和力EADPT2及び第2ホスト材料の電子親和力EADPT2より大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。
【0083】
図3及び図4を参照しながら説明した有機EL素子OLEDにおいて、正孔輸送層HTLの電子親和力EAHTLは、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントの電子親和力EADPT2と第2ホスト材料の電子親和力EADPT2との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。正孔輸送層HTLのイオン化エネルギーIEHTLは、電荷エスケープ層CELが含んでいる第2ドーパントイオン化エネルギーIEDPT2と第2ホスト材料のイオン化エネルギーIEHST2との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。電子輸送層ETLのイオン化エネルギーIEETLは、発光層EMLが含んでいる第1ドーパントのイオン化エネルギーIEDPT1と第1ホスト材料のイオン化エネルギーIEDPT1との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。電子輸送層ETLの電子親和力EAETLは、発光層EMLが含んでいる電子親和力EADPT1と第1ホスト材料の電子親和力EADPT1との間であってもよいし、それらより大きくても小さくてもよく、それらの一方と同じであってもよい。
【0084】
上述した有機EL素子OLEDは、様々な有機EL装置に使用することができる。例えば、この有機EL素子OLEDは、有機EL表示装置、屋内若しくは屋外照明装置及び表示パネルのバックライトなどの照明装置、電子写真装置の感光ドラムに潜像を書き込むための書込装置、又は光通信において利用する送信機において使用することができる。以下、有機EL素子OLEDを有機EL表示装置に適用した例を説明する。
【0085】
図5は、本発明の一態様に係る有機EL装置を概略的に示す平面図である。
図5に示す表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した上面発光型の有機EL表示装置である。この表示装置は、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRと、コントローラCNTとを含んでいる。
【0086】
表示パネルDPは、基板SUBと、走査信号線SLと、映像信号線DLと、電源線PSLと、画素PX1乃至PX3とを含んでいる。なお、図5において、X方向は基板SUBの主面に平行な方向であり、Y方向は基板SUBの主面に平行であり且つX方向と交差する方向であり、Z方向はX方向及びY方向に対して垂直な方向である。
【0087】
走査信号線SLは、各々がX方向に延びており、Y方向に配列している。映像信号線DLは、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。
【0088】
電源線PSLは、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。電源線PSLは、各々がX方向に延び、Y方向に配列していてもよい。
【0089】
画素PX1乃至PX3は、走査信号線SLと映像信号線DLとの交差部に対応してマトリクス状に配列している。ここでは、画素PX1乃至PX3は、各々がY方向に延びた列を形成している。画素PX1からなる列と、画素PX2からなる列と、画素PX3からなる列とは、X方向に配列しており、ストライプパターンを形成している。
【0090】
画素PX1乃至PX3は、発光色が互いに異なっている。画素PX1乃至PX3の各々は、駆動トランジスタDRと、スイッチSWと、キャパシタCと、有機EL素子OLEDとを含んでいる。
【0091】
駆動トランジスタDRは、ここでは、pチャネル薄膜トランジスタである。駆動トランジスタDRのソースは、電源線PSLに接続されている。なお、電源線PSLは、高電位電源端子に接続されている。
【0092】
スイッチSWは、ここでは、pチャネル薄膜トランジスタである。スイッチSWは、映像信号線DLと駆動トランジスタDRのゲートとの間に接続されており、そのゲートは走査信号線SLに接続されている。
【0093】
キャパシタCは、ここでは、薄膜キャパシタである。キャパシタCは、駆動トランジスタDRのゲートとソースとの間に接続されている。
【0094】
有機EL素子OLEDは、図1又は図3を参照しながら説明したのと同様の構造を有している。有機EL素子OLEDは、陽極が駆動トランジスタDRのドレインに接続されており、陰極が低電位電源端子に接続されている。
【0095】
画素PX1乃至PX3は、有機EL素子OLEDの発光色が互いに異なっている。例えば、画素PX1は赤色に発光し、画素PX2は緑色に発光し、画素PX3は赤色に発光する。
【0096】
映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、基板SUB上に配置されている。即ち、映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、COG(chip on glass)実装している。映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、COG実装する代わりに、TCP(tape carrier package)実装してもよい。或いは、映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、基板SUB上に形成してもよい。
【0097】
映像信号線ドライバXDRには、映像信号線DLが接続されている。この例では、映像信号線ドライバXDRには、電源線PSLが更に接続されている。映像信号線ドライバXDRは、映像信号線SLに映像信号として電圧信号を出力するとともに、電源線PSLに電源電圧を供給する。
【0098】
走査信号線ドライバYDRには、走査信号線SLが接続されている。走査信号線ドライバYDRは、走査信号線SLに走査信号として電圧信号を出力する。
【0099】
コントローラCNTは、映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRに接続されている。コントローラCNTは、映像信号線ドライバXDRにその動作を制御するための制御信号を供給するとともに、走査信号線ドライバYDRにその動作を制御するための制御信号と電源電圧とを供給する。
【0100】
なお、ここでは、画素PX1乃至PX3に単純な回路構成を採用しているが、他の回路構成を採用してもよい。また、ここでは、映像信号として電圧信号を供給する電圧駆動方式を採用しているが、映像信号として電流信号を供給する電流駆動方式を採用してもよい。
【0101】
図6は、図5に示す有機EL表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0102】
図6には、表示パネルDPの断面を描いている。この表示パネルDPは、ガラス基板又はプラスチック基板などの絶縁基板SUBを含んでいる。基板SUB上には、図示しないアンダーコート層が形成されている。アンダーコート層は、例えば、基板SUB上にSiNx層とSiOx層とをこの順に積層してなる。
【0103】
アンダーコート層上には、例えば不純物を含有したポリシリコンからなる半導体パターンが形成されている。この半導体パターンの一部は、半導体層SCとして利用している。半導体層SCには、ソース及びドレインとして利用する不純物拡散領域が形成されている。また、この半導体パターンの他の一部は、図5を参照しながら説明したキャパシタCの下部電極として利用している。下部電極は、図5を参照しながら説明した画素PX1乃至PX3に対応して配列している。
【0104】
半導体パターンは、ゲート絶縁膜GIで被覆されている。ゲート絶縁膜GIは、例えばTEOS(tetraethyl orthosilicate)を用いて形成することができる。
【0105】
ゲート絶縁膜GI上には、図5を参照しながら説明した走査信号線SLが形成されている。走査信号線SLは、例えばMoWなどからなる。
【0106】
ゲート絶縁膜GI上には、キャパシタCの上部電極が更に配置されている。上部電極は、画素PX1乃至PX3に対応して配列しており、下部電極と向き合っている。上部電極は、例えばMoWなどからなり、走査信号線SLと同一の工程で形成することができる。
【0107】
下部電極と上部電極とそれらの間に介在した絶縁膜GIとは、図5を参照しながら説明したキャパシタCを構成している。キャパシタCの上部電極は延長部Gを含んでおり、この延長部Gは、半導体層SCの一部と交差している。延長部Gと半導体層SCとの交差部は、駆動トランジスタDRを構成している。なお、延長部Gは、駆動トランジスタDRのゲートである。また、走査信号線SLは、他の半導体層SCと交差している。走査信号線SLと半導体層SCとの交差部は図2を参照しながら説明したスイッチSWを構成している。
【0108】
ゲート絶縁膜GI、走査信号線SL1及びSL2、並びに上部電極は、層間絶縁膜IIで被覆されている。層間絶縁膜IIは、例えば、プラズマCVD(chemical vapor deposition)法によって堆積させたSiOxからなる。
【0109】
層間絶縁膜II上には、ソース電極SE及びドレイン電極DEと、図5を参照しながら説明した映像信号線DL及び電源線PSLとが形成されている。一部のソース電極SEは、駆動トランジスタDRのソースと図5を参照しながら説明した電源線PSLとの間に接続されている。他のソース電極SEは、図5を参照しながら説明したスイッチSWのソースと駆動トランジスタDRのゲートGとの間に接続されている。
【0110】
ソース電極SE及びドレイン電極DEと、図5を参照しながら説明した映像信号線DL及び電源線PSLとは、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有している。これらは、同一工程で形成可能である。
【0111】
層間絶縁膜II上には、反射層REFが更に配置されている。反射層REFは、例えばアルミニウムなどの金属又は合金からなる。
【0112】
ソース電極SE、ドレイン電極DE及び反射層REFと、図5を参照しながら説明した映像信号線DL及び電源線PSLとは、パッシベーション膜PSで被覆されている。パッシベーション膜PSは、例えばSiNxからなる。
【0113】
パッシベーション膜PS上では、画素電極PEが、画素PX1乃至PX3に対応して配列している。各画素電極PEは、パッシベーション膜PSに設けたコンタクトホールを介してドレイン電極DEに接続されており、このドレイン電極は駆動トランジスタDRのドレインに接続されている。
【0114】
画素電極PEは、この例では背面電極である。また、画素電極PEは、この例では陽極である。画素電極PEの材料としては、例えば、ITOなどの透明導電性酸化物を使用することができる。
【0115】
パッシベーション膜PS上には、隔壁絶縁層PIが更に形成されている。隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられているか、又は、画素電極PEが形成する列に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられていることとする。
【0116】
隔壁絶縁層PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0117】
各画素電極PE上には、有機物層ORGが形成されている。有機物層ORGは、図1又は図3を参照しながら説明した発光層EML及び電子輸送層ETLなどを含んでいる。
【0118】
隔壁絶縁層PI及び有機物層ORGは、対向電極CEで被覆されている。この例では、対向電極CEは、前面電極であって、画素PX1乃至PX3で共用する共通電極である。また、この例では、対向電極CEは陰極である。対向電極CEは、例えば、パッシベーション膜PSと隔壁絶縁層PIとに設けられたコンタクトホールを介して、映像信号線DLと同一の層上に形成された電極配線(図示せず)に電気的に接続されている。
【0119】
画素電極PEと有機物層ORGと対向電極CEとは、画素電極PEに対応して配列した有機EL素子OLEDを形成している。各有機EL素子OLEDは、図1又は図3を参照しながら説明した構成を有している。
【0120】
なお、この表示パネルDPにおいて、図1又は図3を参照しながら説明した正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電荷エスケープ層CEL、電子輸送層HTL、電子注入層EIL及び陰極CTDは、隣り合った画素間の位置で分断されている必要はない。
【0121】
この有機EL表示装置は、有機EL素子OLEDに、図1及び図2を参照しながら説明した構成、又は、図3及び図4を参照しながら説明した構成を採用している。従って、この有機EL表示装置では、三重項−三重項消滅を効果的に利用して内部量子収率を向上させることができ、それ故、例えば、高輝度化、低消費電力化及び長寿命化が可能である。
【0122】
この有機EL表示装置には、様々な変形が可能である。
図7は、一変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図7には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
【0123】
図7に示す構造は、以下の点を除き、図3乃至図6を参照しながら説明した構造と同様である。
図7に示す構造では、画素PX1の有機EL素子OLEDは発光層として発光層EML1乃至EML3を含み、画素PX2の有機EL素子OLEDは発光層として発光層EML2及びEML3を含み、画素PX3の有機EL素子OLEDは発光層として発光層EML3を含んでいる。画素PX1の有機EL素子OLEDでは、発光層EML2は発光層EML1と電子輸送層ETLとの間に介在しており、発光層EML3は発光層EML2と電子輸送層ETLとの間に介在している。画素PX2の有機EL素子OLEDでは、発光層EML3は発光層EML2と電子輸送層ETLとの間に介在している。発光層EML2は、発光層EML1と比較して波長がより短い光を放出し、発光層EML3は、発光層EML2と比較して波長がより短い光を放出する。例えば、発光層EML1の発光色は赤色であり、発光層EML2の発光色は緑色であり、発光層EML3の発光色は青色である。
【0124】
この構成を採用した場合、例えば、画素PX1において、発光層EML3が放出する光を、発光層EML1及びEML2の少なくとも一方を発光させるための励起光として利用させることができ、画素PX2においては、発光層EML2が放出する光を、発光層EML1を発光させるための励起光として利用させることができる。それ故、画素PX1では、発光色が異なる発光層EML1乃至EML3を積層していながらも、発光層EML1の発光色とほぼ同じ色を表示させることができる。同様に、画素PX2では、発光色が異なる発光層EML2及びEML3を積層していながらも、発光層EML2の発光色とほぼ同じ色を表示させることができる。
【0125】
また、この構成を採用した場合、発光層EML2は、画素PX1及びPX2間の位置で分断されている必要はない。そして、発光層EML3は、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子輸送層HTL、電子注入層EIL、陰極CTD並びに以下に説明する調整層MCと同様に、画素PX1及びPX2間の位置で分断されている必要はなく、画素PX2及びPX3間の位置で分断されている必要はなく、画素PX3及びPX1間の位置で分断されている必要もない。
【0126】
また、図4に示す構造は、調整層MCを更に含んでいる。調整層MCは、陽極AND及び陰極CTD並びにそれらの間に介在した層が、この調整層MCと反射層REFとによって挟まれるように配置されている。調整層MCは、光透過性の層であって、反射層REFから遠い主面は、光透過性の反射面として機能する。調整層MCの厚さは、画素PX1乃至PX3の各々において、その有機EL素子OLEDから取り出すべき光が共振を生じるように定められている。調整層MCとしては、例えば、SiN層などの透明無機絶縁層、ITO層などの透明無機導電層、有機物層ORGが含んでいる層などの透明有機物層を使用することができる。
【0127】
図8は、他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図8には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図8に示す構造は、以下の点を除き、図1、図2、図5及び図6を参照しながら説明した構造と同様である。
【0128】
図8に示す構造では、電子輸送層ETLを省略している。
また、図8に示す構造は、正孔輸送層HTLの代わりに、正孔輸送層HTL1及びHTL2を含んでいる。正孔輸送層HTL1は、正孔輸送層HTL2と正孔注入層HILとの間に介在している。正孔輸送層HTL1は有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、陽極ANDの仕事関数と発光層EMLのイオン化エネルギーとの間にある。正孔輸送層HTL2は有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、正孔輸送層HTL1のイオン化エネルギーと以下に説明する発光層EML1乃至EML3の各々のイオン化エネルギーとの間にある。
【0129】
そして、図8に示す構造では、図7に示す構造と同様に、画素PX1の有機EL素子OLEDは発光層として発光層EML1乃至EML3を含み、画素PX2の有機EL素子OLEDは発光層として発光層EML2及びEML3を含み、画素PX3の有機EL素子OLEDは発光層として発光層EML3を含んでいる。画素PX1の有機EL素子OLEDでは、発光層EML2は発光層EML1と電荷エスケープ層CELとの間に介在しており、発光層EML3は発光層EML2と電荷エスケープ層CELとの間に介在している。画素PX2の有機EL素子OLEDでは、発光層EML3は発光層EML2と電荷エスケープ層CELとの間に介在している。発光層EML2は、発光層EML1と比較して波長がより短い光を放出し、発光層EML3は、発光層EML2と比較して波長がより短い光を放出する。例えば、発光層EML1の発光色は赤色であり、発光層EML2の発光色は緑色であり、発光層EML3の発光色は青色である。
【0130】
この構成を採用した場合、例えば、画素PX1において、発光層EML3が放出する光を、発光層EML1及びEML2の少なくとも一方を発光させるための励起光として利用させることができ、画素PX2においては、発光層EML2が放出する光を、発光層EML1を発光させるための励起光として利用させることができる。それ故、画素PX1では、発光色が異なる発光層EML1乃至EML3を積層していながらも、発光層EML1の発光色とほぼ同じ色を表示させることができる。同様に、画素PX2では、発光色が異なる発光層EML2及びEML3を積層していながらも、発光層EML2の発光色とほぼ同じ色を表示させることができる。
【0131】
また、この構成を採用した場合、発光層EML2は、画素PX1及びPX2間の位置で分断されている必要はない。そして、発光層EML3は、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子輸送層HTL、電子注入層EIL、陰極CTD並びに以下に記載する調整層MCと同様に、画素PX1及びPX2間の位置で分断されている必要はなく、画素PX2及びPX3間の位置で分断されている必要はなく、画素PX3及びPX1間の位置で分断されている必要もない。
【0132】
また、図8に示す構造は、図7を参照しながら説明した調整層MCを更に含んでいる。調整層MCは、陽極AND及び陰極CTD並びにそれらの間に介在した層が、この調整層MCと反射層REFとによって挟まれるように配置されている。調整層MCは、光透過性の層であって、反射層REFから遠い主面は、光透過性の反射面として機能する。調整層MCの厚さは、画素PX1乃至PX3の各々において、その有機EL素子OLEDから取り出すべき光が共振を生じるように定められている。調整層MCとしては、例えば、SiN層などの透明無機絶縁層、ITO層などの透明無機導電層、有機物層ORGが含んでいる層などの透明有機物層を使用することができる。
【0133】
図9は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図9には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図9に示す構造は、以下の点を除き、図7を参照しながら説明した構造と同様である。
【0134】
図9に示す構造では、画素PX1及びPX2の有機EL素子OLEDは正孔輸送層HTLの代わりに正孔輸送層HTL1を含み、画素PX3の有機EL素子OLEDは正孔輸送層HTL1及びHTL2を更に含んでいる。画素PX3において、正孔輸送層HTL2は、正孔輸送層HTL1と電荷エスケープ層CELとの間に介在している。正孔輸送層HTL1は有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、陽極ANDの仕事関数と発光層EMLのイオン化エネルギーとの間にある。正孔輸送層HTL2は有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、正孔輸送層HTL1のイオン化エネルギーと発光層EML1乃至EML3の各々のイオン化エネルギーとの間にある。
【0135】
また、図9に示す構造では、画素PX1は発光層EML2を含んでおらず、画素PX3は発光層EML3を含んでいない。
【0136】
このように、図7に示す構造においては、画素PX1から発光層EML2を省略することができ、画素PX2から発光層EML3を省略することができる。また、図7に示す構造においては、画素PX3には、正孔輸送層HTL2を追加することができる。それ故、積層構造を例えば図9を参照しながら説明したように変更することにより、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0137】
図10は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図10には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図10に示す構造は、以下の点を除き、図8を参照しながら説明した構造と同様である。
【0138】
図10に示す構造では、画素PX1及びPX2の有機EL素子OLEDは正孔輸送層HTL2の代わりに正孔輸送層HTL3を含み、画素PX3の有機EL素子OLEDは正孔輸送層HTL3を更に含んでいる。画素PX3において、正孔輸送層HTL3は、正孔輸送層HTL2と発光層EML3との間に介在している。正孔輸送層HTL3は有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、正孔輸送層HTL2のイオン化エネルギーと発光層EML1乃至EML3の各々のイオン化エネルギーとの間にある。
【0139】
また、図10に示す構造では、画素PX1は発光層EML2を含んでおらず、画素PX3は発光層EML3を含んでいない。
【0140】
このように、図8に示す構造においては、画素PX1から発光層EML2を省略することができ、画素PX2から発光層EML3を省略することができる。また、図8に示す構造においては、画素PX1乃至PX3の一部から正孔輸送層HTL2を省略し、画素PX1乃至PX3の全てに正孔輸送層HTL3を追加することができる。それ故、積層構造を例えば図10を参照しながら説明したように変更することにより、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0141】
図11は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図11には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図11に示す構造は、以下の点を除き、図10を参照しながら説明した構造と同様である。
【0142】
図11に示す構造では、画素PX1は、正孔輸送層HTL3の代わりに、正孔輸送層HTL4を含んでいる。正孔輸送層HTL4は有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、正孔輸送層HTL1のイオン化エネルギーと発光層EML1のイオン化エネルギーとの間にある。
【0143】
また、図11に示す構造では、画素PX2は、発光層EML3を更に含んでいる。画素PX2において、発光層EML3は、発光層EML2と電荷エスケープ層CELとの間に介在している。
【0144】
このように、図10に示す構造においては、画素PX1と画素PX2とは同一の正孔輸送層HTL3を含んでいる必要はなく、また、画素PX2は発光層EML3を更に含むことができる。それ故、積層構造を例えば図11を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0145】
図12は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図12には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図12に示す構造は、以下の点を除き、図9を参照しながら説明した構造と同様である。
【0146】
図12に示す構造では、画素PX1は、電荷エスケープ層CELの代わりに、正孔輸送層HTL5を含んでいる。正孔輸送層HTL5は有機物からなり、そのイオン化エネルギーは、典型的には、正孔輸送層HTL1のイオン化エネルギーと発光層EML1のイオン化エネルギーとの間にある。
【0147】
また、図12に示す構造では、画素PX2は、電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL4を含み、発光層EML3を更に含んでいる。画素PX2において、発光層EML3は、発光層EML2と電子輸送層ETLとの間に介在している。
【0148】
このように、図9に示す構造においては、画素PX2は発光層EML3を更に含むことができ、画素PX1及びPX2はそれぞれ電荷エスケープ層CELの代わりに電荷輸送層HTL5及びHTL4を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図12を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0149】
図13は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図13には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図13に示す構造は、以下の点を除き、図12を参照しながら説明した構造と同様である。
【0150】
図13に示す構造では、画素PX2は、正孔輸送層HTL4の代わりに、電荷エスケープ層CELを含んでいる。また、図13に示す構造では、画素PX3は、電荷エスケープ層CELの代わりに、正孔輸送層HTL3を含んでいる。
【0151】
このように、図12に示す構造においては、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができ、画素PX3は電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図13を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0152】
この構成を採用した場合、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを、正孔輸送層HTL1、HTL2、HTL3及びHTL5、発光層EML1乃至EML3、並びに電荷エスケープ層CELを利用して調節することができる。
【0153】
図14は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図14には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図14に示す構造は、以下の点を除き、図12を参照しながら説明した構造と同様である。
【0154】
図14に示す構造では、画素PX1は、正孔輸送層HTL5の代わりに、正孔輸送層HTL3を含んでいる。また、図14に示す構造では、画素PX2は、正孔輸送層HTL4の代わりに、電荷エスケープ層CELを含んでいる。
【0155】
このように、図12に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL5の代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができ、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図14を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0156】
図15は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図15には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図15に示す構造は、以下の点を除き、図12を参照しながら説明した構造と同様である。
【0157】
図15に示す構造では、画素PX1は、正孔輸送層HTL5の代わりに、電荷エスケープ層CEL2を含んでいる。電荷エスケープ層CEL2としては、例えば、電荷エスケープ層CELについて上述した層を使用することができる。
【0158】
また、図15に示す構造では、画素PX2は、正孔輸送層HTL4の代わりに、電荷エスケープ層CEL1を含んでいる。電荷エスケープ層CEL1としては、例えば、電荷エスケープ層CELについて上述した層を使用することができる。電荷エスケープ層CEL1及びCEL2は、厚さ及び組成の少なくとも一方が異なっている。
【0159】
そして、図15に示す構造では、画素PX3は、電荷エスケープ層CELの代わりに、正孔輸送層HTL3を含んでいる。
【0160】
このように、図12に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CEL2を含むことができ、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CEL1を含むことができ、画素PX3は電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図15を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0161】
また、厚さ及び組成の少なくとも一方が互いに異なる複数の電荷エスケープ層を使用した場合、発光色が互いに異なる2つ以上の画素において内部量子収率を最大化することが容易である。ここでは、電荷エスケープ層CEL1及びCEL2を使用しているので、画素PX1及びPX2において内部量子収率を最大化することが容易である。
【0162】
図16は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図16には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図16に示す構造は、以下の点を除き、図15を参照しながら説明した構造と同様である。
【0163】
図16に示す構造では、画素PX2は、電荷エスケープ層CEL1の代わりに、正孔輸送層HTL3を含んでいる。また、図16に示す構造では、画素PX3は、正孔輸送層HTL3の代わりに、電荷エスケープ層CEL1を含んでいる。
【0164】
このように、図15に示す構造においては、画素PX2は電荷エスケープ層CEL1の代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができ、画素PX3は正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CEL2を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図16を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。また、図16に示すように画素PX1及びPX3において電荷エスケープ層CEL1及びCEL2をそれぞれ使用すると、画素PX1及びPX3において内部量子収率を最大化することが容易である。
【0165】
図17は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図17には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図17に示す構造は、以下の点を除き、図15を参照しながら説明した構造と同様である。
【0166】
図17に示す構造では、画素PX1は、電荷エスケープ層CEL2の代わりに、電荷エスケープ層CEL3を含んでいる。電荷エスケープ層CEL3としては、例えば、電荷エスケープ層CELについて上述した層を使用することができる。電荷エスケープ層CEL1乃至CEL3は、厚さ及び組成の少なくとも一方が異なっている。
【0167】
また、図17に示す構造では、画素PX2は、電荷エスケープ層CEL1の代わりに、電荷エスケープ層CEL2を含んでいる。
【0168】
そして、図17に示す構造では、画素PX3は、正孔輸送層HTL2の代わりに、電荷エスケープ層CEL1を含んでいる。
【0169】
このように、図15に示す構造においては、画素PX1は電荷エスケープ層CEL2の代わりに電荷エスケープ層CEL3を含むことができ、画素PX2は電荷エスケープ層CEL1の代わりに電荷エスケープ層CEL2を含むことができ、画素PX3は正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CEL1を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図17を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。また、図17に示すように画素PX1乃至PX3において電荷エスケープ層CEL3乃至CEL1をそれぞれ使用すると、画素PX1乃至PX3において内部量子収率を最大化することが容易である。
【0170】
図18は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図18には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図18に示す構造は、画素PX1が発光層EML3の代わりに発光層EML2を含んでいることを除き、図10を参照しながら説明した構造と同様である。
【0171】
このように、図10に示す構造においては、画素PX1は発光層EML3の代わりに発光層EML2を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図18を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0172】
図19は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図19には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図19に示す構造は、画素PX1が発光層EML3の代わりに発光層EML2を含んでいることを除き、図9を参照しながら説明した構造と同様である。
【0173】
このように、図9に示す構造においては、画素PX1は発光層EML3の代わりに発光層EML2を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図18を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0174】
図20は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図20には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図20に示す構造は、以下の点を除き、図8を参照しながら説明した構造と同様である。
【0175】
図20に示す構造では、画素PX1は正孔輸送層HTL2の代わりに正孔輸送層HTL5を含み、画素PX2は正孔輸送層HTL2の代わりに正孔輸送層HTL4を含み、画素PX3は正孔輸送層HTL3を更に含んでいる。画素PX3において、正孔輸送層HTL3は、正孔輸送層HTL2と以下に説明する発光層EML3aとの間に介在している。
【0176】
また、図20に示す構造では、画素PX1乃至PX3の各々は、発光層EML3の代わりに発光層EML3a及びEML3bを含んでいる。発光層EML3a及びEML3bの発光色は、例えば青色である。発光層EML3aは、発光層EML1と発光層EML3bとの間に介在している。発光層EML3bの正孔移動度は、例えば、発光層EML3aの正孔移動度と比較してより小さい。或いは、発光層EML3bのHOMO(highest occupied molecular orbital)レベルは、例えば、発光層EML3aのHOMOレベルと比較してより大きい。
【0177】
このように、図8に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL2の代わりに正孔輸送層HTL5を含み、画素PX2は正孔輸送層HTL2の代わりに正孔輸送層HTL4を含み、画素PX3は正孔輸送層HTL3を更に含むことができる。それ故、積層構造を例えば図20を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0178】
また、図20に示すように、発光層EML3の代わりに発光層EML3a及びEML3bを設けると、注入した正孔のより多くを発光に寄与させることができる。従って、駆動電圧の上昇が抑制される。
【0179】
図21は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図21には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図21に示す構造は、以下の点を除き、図18を参照しながら説明した構造と同様である。
【0180】
図21に示す構造では、画素PX1乃至PX3の各々は、電子輸送層ETLを更に含んでいる。電子輸送層ETLは、電荷エスケープ層CELと電子注入層EILとの間に介在している。
【0181】
また、図21に示す構造では、画素PX1は、正孔輸送層HTL3の代わりに正孔輸送層HTL5を含み、発光層EML2の代わりに発光層EML3を含んでいる。
【0182】
そして、図21に示す構造では、画素PX2は、正孔輸送層HTL3の代わりに正孔輸送層HTL4を含み、発光層EML3を更に含んでいる。画素PX3において、発光層EML3は、発光層EML2と電荷エスケープ層CELとの間に介在している。
【0183】
このように、図18に示す構造においては、画素PX1乃至PX3の各々は電子輸送層ETLを更に含むことができ、画素PX1は正孔輸送層HTL3及び発光層EML2の代わりに正孔輸送層HTL5及び発光層EML3をそれぞれ含むことができ、画素PX2は正孔輸送層HTL3の代わりに正孔輸送層HTL4を含むとともに発光層EML3を更に含むことができる。それ故、積層構造を例えば図21を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0184】
図22は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図22には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図22に示す構造は、以下の点を除き、図12を参照しながら説明した構造と同様である。
【0185】
図22に示す構造では、画素PX1乃至PX3の各々は、発光層EML3の代わりに発光層EML3a及びEML3bを含んでいる。発光層EML3aは、発光層EML1と発光層EML3bとの間に介在している。
【0186】
また、図22に示す構造では、画素PX1は、正孔輸送層HTL5の代わりに、正孔輸送層HTL4を含んでいる。そして、画素PX2は、正孔輸送層HTL4の代わりに、正孔輸送層HTL3を含んでいる。
【0187】
このように、図12に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL5の代わりに正孔輸送層HTL4を含むことができ、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図22を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0188】
また、図22に示すように、発光層EML3の代わりに発光層EML3a及びEML3bを設けると、注入した正孔のより多くを発光に寄与させることができる。従って、駆動電圧の上昇が抑制される。
【0189】
図23は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図23には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図23に示す構造は、以下の点を除き、図22を参照しながら説明した構造と同様である。
【0190】
図23に示す構造では、画素PX2は、正孔輸送層HTL3の代わりに、電荷エスケープ層CELを含んでいる。そして、画素PX3は、電荷エスケープ層CELの代わりに、正孔輸送層HTL3を含んでいる。
【0191】
このように、図22に示す構造においては、画素PX2は正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができ、画素PX3は電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図23を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0192】
図24は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図24には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図24に示す構造は、以下の点を除き、図22を参照しながら説明した構造と同様である。
【0193】
図24に示す構造では、画素PX1は、正孔輸送層HTL4の代わりに、電荷エスケープ層CELを含んでいる。また、画素PX2は、正孔輸送層HTL3の代わりに、正孔輸送層HTL4を含んでいる。そして、画素PX3は、電荷エスケープ層CELの代わりに、正孔輸送層HTL3を含んでいる。
【0194】
このように、図22に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができ、画素PX2は正孔輸送層HTL3の代わりに正孔輸送層HTL4を含むことができ、画素PX3は電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図24を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0195】
図25は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図25には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図25に示す構造は、画素PX2が正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図24を参照しながら説明した構造と同様である。
【0196】
このように、図24に示す構造においては、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図25を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0197】
図26は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図26には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図26に示す構造は、画素PX2が正孔輸送層HTL4の代わりに正孔輸送層HTL3を含み、画素PX3が正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図24を参照しながら説明した構造と同様である。
【0198】
このように、図24に示す構造においては、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができ、画素PX3は正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図26を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0199】
図27は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図27には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図27に示す構造は、画素PX1が電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL4を含み、画素PX2が正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図26を参照しながら説明した構造と同様である。
【0200】
このように、図26に示す構造においては、画素PX1は電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL4を含むことができ、画素PX2は正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図27を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0201】
図28は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図28には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図28に示す構造は、画素PX2が正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図26を参照しながら説明した構造と同様である。
【0202】
このように、図26に示す構造においては、画素PX2は正孔輸送層HTL3の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図28を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0203】
図29は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図29には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図29に示す構造は、以下の点を除き、図20を参照しながら説明した構造と同様である。
【0204】
図29に示す構造では、画素PX1は発光層EML3a及びEML3bの代わりに発光層EML2を含み、画素PX2は発光層EML3a及びEML3bを含んでおらず、画素PX3は発光層EML3a及びEML3bの代わりに発光層EML3を含んでいる。
【0205】
また、図29に示す構造では、画素PX1乃至PX3の各々は、界面混合層MIXを更に含んでいる。界面混合層MIXは、画素PX1及びPX2においては発光層EML2と電荷エスケープ層CELとの間に介在しており、画素PX3においては発光層EML3と電荷エスケープ層CELとの間に介在している。
【0206】
界面混合層MIXは、電子輸送性を有している発光層である。界面混合層MIXは、電子輸送層において使用される材料と、発光層において使用されるホスト材料及びドーパントの少なくとも一方とを含んでおり、例えば青色に発光する。典型的には、界面混合層MIXの電子親和力は、電荷エスケープ層CELの電子親和力と発光層EML1乃至EML3の各々の電子親和力との間にある。
【0207】
このように、図20に示す構造においては、画素PX1は発光層EML3a及びEML3bの代わりに発光層EML2を含むことができ、画素PX2からは発光層EML3a及びEML3bを省略することができ、画素PX3は発光層EML3a及びEML3bの代わりに発光層EML3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図29を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0208】
また、図29に示すように界面混合層MIXを設けた場合、電荷エスケープ層CELから発光層EML1乃至EML3への電子の注入が促進される。従って、駆動電圧の上昇が抑制される。
【0209】
図30は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図30には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図30に示す構造は、以下の点を除き、図12を参照しながら説明した構造と同様である。
【0210】
図30に示す構造では、画素PX1は発光層EML3の代わりに発光層EML2を含み、画素PX2は発光層EML3を含んでいない。
【0211】
また、図30に示す構造では、画素PX1乃至PX3の各々は、界面混合層MIXを更に含んでいる。界面混合層MIXは、画素PX1及びPX2においては発光層EML2と電子輸送層ETLとの間に介在しており、画素PX3においては発光層EML3と電子輸送層ETLとの間に介在している。ここでは、界面混合層MIXの電子親和力は、典型的には、電子輸送層ETLの電子親和力と発光層EML1乃至EML3の各々の電子親和力との間にある。
【0212】
このように、図12に示す構造においては、画素PX1は発光層EML3の代わりに発光層EML2を含むことができ、画素PX2からは発光層EML3を省略することができる。それ故、積層構造を例えば図30を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0213】
また、図30に示すように界面混合層MIXを設けた場合、電荷エスケープ層CELから発光層EML1乃至EML3への電子の注入が促進される。従って、駆動電圧の上昇が抑制される。
【0214】
図31は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図31には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図31に示す構造は、画素PX2が正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含み、画素PX3が電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含んでいること以外は、図30を参照しながら説明した構造と同様である。
このように、図30に示す構造においては、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができ、画素PX3は電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図31を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0215】
図32は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図32には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図32に示す構造は、画素PX1が正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含み、画素PX3が電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含んでいること以外は、図30を参照しながら説明した構造と同様である。
このように、図30に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができ、画素PX3は電荷エスケープ層CELの代わりに正孔輸送層HTL3を含むことができる。それ故、積層構造を例えば図32を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0216】
図33は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図33には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図33に示す構造は、画素PX2が正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図30を参照しながら説明した構造と同様である。
このように、図30に示す構造においては、画素PX2は正孔輸送層HTL4の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図33を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0217】
図34は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図34には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図34に示す構造は、画素PX1が正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図30を参照しながら説明した構造と同様である。
このように、図30に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図34を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0218】
図35は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図35には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図35に示す構造は、画素PX1が正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図31を参照しながら説明した構造と同様である。
このように、図31に示す構造においては、画素PX1が正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図35を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【0219】
図36は、更に他の変形例に係る有機EL装置を概略的に示す断面図である。図36には、表示パネルDPを、その構成要素の一部を省略して描いている。
図36に示す構造は、画素PX1が正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含んでいること以外は、図33を参照しながら説明した構造と同様である。
このように、図33に示す構造においては、画素PX1は正孔輸送層HTL5の代わりに電荷エスケープ層CELを含むことができる。それ故、積層構造を例えば図36を参照しながら説明したように変更することによっても、発光層EML1乃至EML3におけるキャリアバランスや、上述した共振を生じさせるべき構造の光学的厚さを調節することができる。
【実施例】
【0220】
以下に本発明の実施例を記載する。
【0221】
<素子Aの製造>
本例では、図3に示す有機EL素子OLEDを、これを構成している層又は材料のイオン化エネルギー及び電子親和力が図4に示す関係を満たすように製造した。
【0222】
具体的には、まず、ガラス基板上に、スパッタリング法により陽極ANDを形成した。ここでは、陽極ANDの材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)を使用した。
【0223】
次に、真空蒸着法により、陽極AND上に、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、発光層EML、電荷エスケープ層CEL、電子輸送層ETL、電子注入層EIL及び陰極CTDをこの順に形成した。
【0224】
正孔注入層HILとしては、厚さが10nmのCuPc層を形成した。正孔輸送層HTLとしては、厚さが50nmのα−NPD層を形成した。電荷エスケープ層CELとしては、第2ホスト材料としてHMTPDを含み、第2ドーパントとしてHTPを5質量%の濃度で含み、厚さが10nmである層を形成した。発光層EMLとしては、第1ホスト材料としてADNを含み、第1ドーパントとしてBDAVBiを1質量%の濃度で含み、厚さが30nmであり、蛍光として青色光を放射する層を形成した。電子輸送層ETLとしては、厚さが30nmのAlq3層を形成した。電子注入層EILとしては、厚さが1nmのLiF層を形成した。陰極CTDとしては、厚さが100nmのアルミニウム層を形成した。
【0225】
以上のようにして、有機EL素子を得た。以下、このようにして得られた有機EL素子を「素子A」と呼ぶ。
【0226】
図37に、例1において使用した第1ドーパント及び第1ホスト材料の吸収スペクトルと第2ドーパント及び第2ホスト材料の発光スペクトルとを示す。
【0227】
図37において、曲線SPHST1及びSPDPT1は、それぞれ、第1ホスト材料及び第1ドーパントの吸収スペクトルを表している。また、曲線SPHST2及びSPDPT2は、それぞれ、第2ホスト材料及び第2ドーパントの発光スペクトルを表している。
【0228】
図37から明らかなように、ここでは、電荷エスケープ層CELの発光を、発光層EMLにおいて励起光として利用可能な構成を採用した。
【0229】
<素子Bの製造>
電荷エスケープ層CELから第2ドーパントを省略したこと以外は、素子Aについて説明したのと同様の方法により有機EL素子を製造した。以下、このようにして得られた有機EL素子を「素子B」と呼ぶ。
【0230】
<評価>
素子A及びBに通電して、これらを発光させた。そして、通電停止からの経過時間に対する発光強度の変化を測定した。
【0231】
図38は、素子A及びBについて得られた過渡応答を示すグラフである。図38において、曲線C1及びC2は、それぞれ、素子A及びBについて得られた応答曲線である。
【0232】
図38から、素子Aでは、素子Bと比較して、三重項−三重項消滅に伴って生成した一重項励起子の発光への寄与がより大きいことが分かる。
【0233】
次に、図38に示す応答曲線A及びBを解析して、そして、それらの過渡応答から、素子への電荷注入によって直接的に生成した一重項励起子の発光への寄与と、三重項−三重項消滅に伴って生成した一重項励起子の発光への寄与とを求めた。その結果を、以下の表1に纏める。
【表1】

【0234】
表1において、「励起子の発光への寄与率」は、発光に利用された励起子の数と、有機EL素子への電荷注入によって直接的に生成された全励起子の数との比を表している。また、表1において、「直接発光」は、有機EL素子への電荷注入によって直接的に生成された一重項励起子による発光を表し、「TTF発光」は、三重項−三重項消滅に伴って生じた一重項励起子による発光を表している。
【0235】
表1に示すように、素子Aは、素子Bと比較して、三重項−三重項消滅に伴って生成した一重項励起子による発光の強度が遥かに高かった。また、表1に示すように、素子Aは、素子Bと比較して、内部量子収率も遥かに大きかった。
【0236】
なお、表1に示すように、素子Aは、素子Bと比較して、素子への電荷注入によって直接的に生成した一重項励起子による発光の強度が僅かに低かった。これは、発光層EMLにおけるキャリアバランスが、僅かに崩れたためであると推定される。
【符号の説明】
【0237】
AND…陽極、C…キャパシタ、CE…対向電極、CEL…電荷エスケープ層、CNT…コントローラ、CTD…陰極、DE…ドレイン電極、DL…映像信号線、DP…表示パネル、DR…駆動トランジスタ、EIL…電子注入層、EML…発光層、EML1…発光層、EML2…発光層、EML3…発光層、ETL…電子輸送層、ETL1…電子輸送層、ETL2…電子輸送層、ETL3…電子輸送層、ETL4…電子輸送層、ETL5…電子輸送層、G…ゲート、GI…ゲート絶縁膜、HIL…正孔注入層、HTL…正孔輸送層、II…層間絶縁膜、MC…調整層、MIX…界面混合層、OLED…有機EL素子、ORG…有機物層、PE…画素電極、PI…隔壁絶縁層、PS…パッシベーション膜、PSL…電源線、PX1…画素、PX2…画素、PX3…画素、REF…反射層、SC…半導体層、SE…ソース電極、SL…走査信号線、SUB…基板、SW…スイッチ、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置し、正孔輸送性を有している第1ホスト材料と青色蛍光性を有している第1ドーパントとを含んだ発光層と、
前記陰極と前記発光層との間で前記発光層と接触し、電子輸送性を有している第2ホスト材料と蛍光性及び燐光性の少なくとも一方を有している第2ドーパントとを含み、前記第2ホスト材料は前記第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより大きく、前記第2ドーパントは前記第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより小さく、前記第2ドーパントが放出する最大強度の蛍光は、前記第1ドーパントが放出する最大強度の蛍光と比較して波長がより短い電荷エスケープ層と
を具備した有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記第2ホスト材料は前記第1ホスト材料と比較して電子親和力がより小さい請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置し、電子輸送性を有している第1ホスト材料と青色蛍光性を有している第1ドーパントとを含んだ発光層と、
前記陽極と前記発光層との間で前記発光層と接触し、正孔輸送性を有している第2ホスト材料と蛍光性及び燐光性の少なくとも一方を有している第2ドーパントとを含み、前記第2ホスト材料は前記第1ホスト材料と比較して電子親和力がより小さく、前記第2ドーパントは前記第1ホスト材料と比較して電子親和力がより大きく、前記第2ドーパントが放出する最大強度の蛍光は、前記第1ドーパントが放出する最大強度の蛍光と比較して波長がより短い電荷エスケープ層と
を具備した有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記第2ホスト材料は前記第1ホスト材料と比較してイオン化エネルギーがより小さい請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記第2ドーパントは紫色の可視光線又は紫外線を放射する請求項1乃至4の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2011−204801(P2011−204801A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68939(P2010−68939)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】