説明

有機ケイ素化合物をベースとする架橋可能なコンパウンド

本発明は、有機ケイ素化合物をベースとし、酸捕捉剤を含有する架橋可能なコンパウンド、該コンパウンドから架橋により製造された成形体ならびに液体状または気体状の環境で酸を吸収および中和するための該成形体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物をベースとする架橋可能なコンパウンド、該コンパウンドから架橋により製造される成形体ならびに酸を吸収および中和するための該成形体の使用に関する。
【0002】
異なった種類の充填剤および添加剤を含有する有機ケイ素化合物をベースとする架橋可能なコンパウンドは多種多様なものが公知である。このためにたとえば、特に架橋後に乾いた手触りの表面を有する加硫物が得られる、オルガノポリシロキサンコンパウンドが記載されているEP−B841377を参照されたい。
【0003】
本発明の対象は、有機ケイ素化合物ベースの架橋可能なコンパウンドであって、これは酸捕捉剤を含有することを特徴とする。
【0004】
本発明によるコンパウンド中に含有されている酸捕捉剤は、酸を中和することができる任意の物質であってよい。
【0005】
酸捕捉剤のための例は、金属酸化物、たとえば酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウム、第2および第3主族および第2副族の金属水酸化物、たとえば水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムならびにこれらの水和物、弱酸と強塩基とからの塩、たとえば炭酸亜鉛、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムならびに相応する炭酸水素塩、アンモニウム塩、たとえば炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウム、酸を中和することができる有機物質、たとえば尿素およびテトラメチル尿素、アミン、たとえばやし油アミン、アミノシランおよびアミノ官能性シロキサンならびにカルバメート、たとえばカルバミン酸アンモニウムである。
【0006】
本発明により使用される酸捕捉剤は、室温および大気圧、つまり900〜1100hPaで固体もしくは液状であり、有利に固体である。
【0007】
本発明により使用される固体の酸捕捉剤は有利には粉末状の固体であり、その際、平均粒径は有利に100μm未満、特に有利には50μm未満、特に20μm未満である。
【0008】
本発明により使用される液状の酸捕捉剤は、低粘性ないし高粘性の液体であってよい。
【0009】
本発明により使用される酸捕捉剤は市販品であるか、もしくはその化学分野で一般に行われる方法により製造することができる。
【0010】
本発明によるコンパウンド中の酸捕捉剤の量は、適用分野もしくは該コンパウンドのその他の成分の選択に応じて広い範囲で変化することができる。そのつど架橋可能なコンパウンド100質量部に対して、0.5〜80質量部の量が有利であり、1〜70質量部の量は特に有利であり、2〜60質量部の量はとりわけ有利である。架橋可能なコンパウンドを製造するために酸性の成分を使用すべき場合には、酸捕捉剤を相応して高い量で化学量論的な過剰で使用しなくてはならない。
【0011】
本発明によるコンパウンドは、有機ケイ素化合物をベースとする、従来公知の種類のエラストマーへと架橋可能な任意のコンパウンド、たとえば一成分もしくは二成分の室温加硫型(いわゆるRTVコンパウンド)または高温加硫型(いわゆるHTVコンパウンド)のオルガノポリシロキサンコンパウンドであってよく、その際、架橋は、縮合、脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加または過酸化物によるラジカルの形成によって行うことができる。その際、架橋可能なコンパウンドは、充填剤を含有していなくてもよいが、しかし活性充填剤または不活性充填剤を含有していてもよい。
【0012】
通常、このようなコンパウンド中で使用される成分の種類および量は既に公知である。このためにたとえば、US−A5,268,441、DE−A4401606、DE−A4405245およびDE−A4336345を参照されたい。
【0013】
この場合、本発明により使用される酸捕捉剤は、本発明による架橋可能なコンパウンドのその他の成分と任意で混合することができる。たとえばその他の点では完成したシリコーンゴム調製物に最後の工程で混合するか、またはシリコーンゴム混合物を製造する間に混合することができる。しかし酸捕捉剤は、使用される成分の1もしくは複数の成分に予め混合することもできる。
【0014】
本発明によるコンパウンドを製造するための混合プロセスは有利には簡単な機械的混合である。ベース媒体の粘稠度および粘度に応じて、混合工程はローラー、混練機、溶解機、Z型混合機、ボールミルまたは簡単な攪拌装置により行うことができる。混合工程は有利にはすでに簡単に行うことができるために、周囲圧力で実施する。しかし減圧下または高めた圧力での混合も可能である。同様に簡単に行うことができるために、混合工程は有利には周囲温度で実施する。しかし高めた温度または冷却下に混合することも可能である。
【0015】
本発明によるコンパウンドは、該コンパウンドの製造が容易であり、良好に加工可能であるという利点を有する。
【0016】
さらに本発明によるコンパウンドは、該コンパウンドから、酸に対して高い安定性を有する、つまり酸性の環境でより長期間安定しているか、または環境中の酸を中和することさえできる加硫物を製造することができるという利点を有する。
【0017】
本発明によるコンパウンドは、有機ケイ素化合物をベースとする従来公知の架橋可能なコンパウンドと同様の条件下で架橋させることができる。その際、製造法として、シリコーンゴムを加工するために適用することができる全ての通例の方法を適用することができる。この例は、カレンダリング、プレス成形、射出成形、押出成形および注型である。
【0018】
本発明のさらなる対象は、本発明によるコンパウンドの架橋により製造された成形体である。
【0019】
本発明による成形体は、従来、有機ケイ素化合物をベースとする架橋可能なコンパウンドから製造されていた成形体と同じ成形体であってよい。本発明による成形体の例は、ホース、シート、パッキング、射出成形部材、管のライニングならびに被覆である。
【0020】
本発明によるコンパウンドはたとえばテキスタイルおよびテキスタイル以外の平面状構造物、たとえば織布、ニット、レイドファブリック、ニット、フリースおよびフェルトならびに金属ワイヤもしくは金属繊維からなるレイドファブリック、および金属、プラスチック、木材、石こう、ガラス、セラミックまたは鉱物コンパウンドからなる成形部材、たとえば壁を被覆するために使用することができる。
【0021】
本発明による被覆は、任意の方法で、たとえばナイフ塗布法、浸漬法、押出法、射出法または噴霧法で施与することができる。更に、あらゆる種類のロール被覆、たとえばグラビアロール塗、パジングまたは多ロール系による塗布ならびにスクリーン印刷も可能である。
【0022】
その際、被覆の質量は、被覆コンパウンド中に含有されている酸捕捉剤の量が、完成品の後の使用において予測される酸の量を中和するために、少なくとも化学量論的に十分であるように選択されている。これは簡単な化学量論比により計算することができる。
【0023】
本発明により被覆される織布は、酸性の気体または液状の酸が、表面との接触により中和され、かつ酸性の環境中での被覆の安定性が高められるところであれば何処でも使用することが可能である。
【0024】
その例は、排ガス導管の補償装置、安全支援システム、熱気球、酸性の気体に対する保護ライニングまたは保護テントである。工業分野では、被覆された織布を有利にコンベアベルト、補償装置、フィルターまたは絶縁材料のために使用する。さらに、本発明による材料により被覆した支持体は、気体および液体を浄化するために運転される装置中で使用される。本発明により被覆した織布からなるカーテンは、室内の空気の酸性成分を中和することができる。
【0025】
本発明によるコンパウンドを架橋することにより、該コンパウンドで被覆された支持体の有利に高められた保護作用を有する加硫物が得られる。
【0026】
本発明による加硫物は、酸に対して高められた抵抗性を有するという利点を有する。
【0027】
本発明による加硫物はさらに、環境中の酸を中和することができるという利点を有する。
【0028】
本発明による加硫物は、従来も有機ケイ素化合物をベースとする加硫物が使用されていた全ての目的のために使用することができる。これらは特に、酸抵抗性および酸を中和する能力が重要な役割を果たす全ての目的のために適切である。
【0029】
本発明のもう1つの対象は、液状もしくは気体状の環境中の酸を吸収および中和する方法であり、この方法は、本発明による成形体を使用することを特徴とする。
【0030】
本発明による方法は、有利に−50℃〜1500℃、特に有利には−50℃〜1000℃の温度で実施することができる。
【0031】
本発明による方法は、有利に100〜200000hPa、特に有利には100〜50000hPaの圧力で実施することができる。
【0032】
本発明による方法において吸収もしくは中和される酸は、有利にハロゲン化水素、たとえばHCl、HBrおよびHF、含硝硫酸ガスおよび該ガスから生成する酸、H2SO3、H2SO4、リン酸、HCN、特に有利にはハロゲン化水素酸および硫酸である。
【0033】
酸がその中で吸収もしくは中和される液状の環境のための例は、水、水性の塩溶液、有機溶剤、鉱油、植物油および食用油であり、その際、水性の環境が有利である。
【0034】
酸がその中で吸収もしくは中和される気体状の環境のための例は、空気、燃焼装置からの排ガス、天然ガス、空気圧式装置中のガスおよび安全保障システムのための圧縮ガスであり、その際、空気および窒素が有利である。
【0035】
本発明による方法では、成形体を単に液状もしくは気体状の媒体と接触させるのみである。
【0036】
本発明による方法は、特に天然ガスの脱硫、排ガス浄化および安全保障システム中の圧縮ガス中の酸含分の低減において適用される。
【0037】
本発明による方法は、適用が容易であるという利点を有しており、この場合、酸を極めて効果的に吸収もしくは中和することができる。
【0038】
本発明による方法はさらに、付加的な部材(たとえばフィルター)を必要としないという利点を有する。
【0039】
有機ケイ素化合物をベースとする本発明によるコンパウンドは、水の排除下で貯蔵可能であり、水が添加されると室温で縮合してエラストマーへと架橋することができるコンパウンドであってよい。
【0040】
本発明による、縮合により架橋可能なコンパウンドは、有利には
(a)縮合可能な基を有する有機ケイ素化合物、
(b)少なくとも3つのSi結合した加水分解可能な基を有する有機ケイ素化合物、
(c)縮合触媒、
(d)酸捕捉剤および場合により
(e)その他の物質
を含有するコンパウンドである。
【0041】
本発明による縮合により架橋可能なコンパウンドは、一成分系コンパウンドであっても二成分系コンパウンドであってもよく、その際、二成分系の場合には、一つの成分が同時に成分(a)、(b)および(c)を含有していることはない。
【0042】
縮合可能な基を有する有機ケイ素化合物(a)として、有利には一般式
HO(SiR2O)mSiR2OH (I)
[式中、Rは、同じであるか、または異なった、場合により置換された一価の炭化水素基を表し、かつmは、少なくとも20の値の整数、有利には50〜100000の数である]を使用する。
【0043】
式(I)により記載されないが、ジオルガノシロキサン単位(SiR2O)に加えて、さらに別のシロキサン単位、たとえば式RSiO3/2、R3SiO1/2およびSiO4/2の単位が存在していてもよく、この場合、Rはそのつど上記の意味を有している。
【0044】
しかし、ジオルガノシロキサン単位としての別のかかるシロキサン単位の量は、そのつどオルガノポリシロキサン(a)の質量に対して、有利には最大で10モル%、特に最大で1モル%である。
【0045】
有機ケイ素化合物(a)は、25℃で有利には100〜500000mm2/sの粘度を有する。
【0046】
基Rの例は、アルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基;ヘキシル基、たとえばn−ヘキシル基;ヘプチル基、たとえばn−ヘプチル基;オクチル基、たとえばn−オクチル基およびイソオクチル基、たとえば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、たとえばn−ノニル基;デシル基、たとえばn−デシル基;ドデシル基、たとえばn−ドデシル基;オクタデシル基、たとえばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、たとえばビニル基、1−プロペニル基および2−プロペニル基;アリール基、たとえばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、たとえばo−、m−、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、およびアラルキル基、たとえばベンジル基、α−およびβ−フェニルエチル基である。
【0047】
有利には基Rは、1〜18個の炭素原子を有する基、特に有利にはプロピル基、ヘキシル基およびオクチル基、特にメチル基である。
【0048】
少なくとも3つのSi結合した加水分解可能な基(b)を有する有機ケイ素化合物として、有利には一般式
14-nSiZn (II)
[式中、
1は、同じであるか、または異なっていてよく、かつRに関して記載した意味を有し、
nは、3または4であり、かつ
Zは、同じか、または異なった加水分解可能な基、たとえばアミノ基、アミド基、アミノキシ基、オキシモ基、たとえば−ON=C(CH3)(C25)、アルコキシ基、たとえばメトキシ基およびエトキシ基、アルコキシアルキル基、たとえばCH3−O−C25−O−またはアルケニルオキシ基、たとえばH2C=(CH3)COを表す]のシランおよび/または分子あたり2〜10個のケイ素原子を有する部分加水分解物を使用する。
【0049】
有利には加水分解可能な基Zは、アルコキシ基またはオキシモ基である。
【0050】
有利には基R1は、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、ビニル基およびメチル基であり、その際、ビニル基およびメチル基は特に有利である。
【0051】
有機ケイ素化合物(b)は、有機ケイ素化合物(a)100質量部あたり、有利には2〜10質量部の量で使用する。
【0052】
有利には、縮合触媒(c)は、(有機)金属化合物、たとえばカルボン酸の塩、金属Pb、Zn、Zr、Ti、Sb、Fe、Cd、Sn、Ba、CaおよびMnのアルコラートおよびハロゲン化物、たとえばオクタン酸スズ(II)、ジブチルスズジラウレート、オクチルスズトリアセテート、ジオクチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジアセテート、ジデシルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジブロミド、ジオクチルスズジラウレート、トリオクチルスズアセテート、チタンアルコラートおよび少なくとも1つのSi−O−Ti結合を有する有機チタン化合物である。
【0053】
縮合触媒(c)は、有機ケイ素化合物(a)100質量部あたり、有利には0.1〜2質量部の量で使用する。
【0054】
本発明により使用される酸捕捉剤(d)は、縮合反応により架橋可能なコンパウンド100質量部あたり、有利には2〜80質量部の量で使用する。
【0055】
そのつどの適用に相応して、本発明によりエラストマーへと加硫可能なコンパウンドに、別の物質(e)を添加することができるが、ただし、添加剤(e)は成分(a)、(b)、(c)および(d)とは異なっている。
【0056】
このような別の物質(e)のための例は、たとえば非活性充填剤、表面特性を改善するための物質、たとえばカップリング剤、加工助剤、たとえば可塑剤、顔料、可溶性の着色剤、香料、殺菌剤、純粋な有機樹脂、腐食防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、溶剤、電気的な特性に影響を与えるための薬剤、たとえば導電性カーボンブラック、難燃剤、光保護剤および被膜形成時間を延長するための薬剤であり、その際、成分(e)は有利には充填剤、可塑剤およびカップリング剤である。
【0057】
別の物質(e)として使用することができる強化充填剤のための例は、熱分解法もしくは沈降法による、少なくとも50m2/gのBET表面積を有するシリカ、ならびにファーネスブラックおよびアセチレンブラックであり、その際、前記のシリカ充填剤は、親水性特性を有するか、または公知の方法により疎水化されていてもよい。
【0058】
別の物質(e)として使用することができ、かつ成分(d)とは異なる非強化充填剤のための例は、石英粉、ケイソウ土、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、硫酸バリウム、石こうならびにプラスチック粉末、たとえばポリアクリルニトリル粉末またはポリテトラフルオロエチレン粉末である。さらに充填剤として繊維状の成分、たとえばガラス繊維およびプラスチック繊維を使用することができる。これらの充填剤のBET表面積は有利には50m2/g未満である。
【0059】
成分(e)として使用することができる可塑剤のための例は、トリメチルシリル基またはヒドロキシル基を末端基として有し、25℃で最大で1000mm2/sの粘度を有するポリジメチルシロキサンであるか、またはジフェニルシランジオールである。
【0060】
カップリング剤のための例は、アミノシラン、たとえばアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、またはアミノエチルアミノプロピルシロキシ基を有するポリシロキサンである。
【0061】
熱安定剤のための例は、遷移金属脂肪酸塩、たとえばオクタン酸鉄、遷移金属のシラノラート、たとえば鉄シラノラート、ならびにセリウム(IV)化合物である。
【0062】
成分(a)〜(e)以外に本発明により、縮合により架橋可能なコンパウンドは有利にはその他の物質を含有していない。
【0063】
本発明による、縮合により架橋可能なコンパウンド中で使用される個々の成分は、そのつどこれらの成分の種類ならびにこれらの成分の少なくとも2つからなる混合物であってよい。
【0064】
本発明による、有機ケイ素化合物をベースとする、縮合により架橋可能なコンパウンドの製造は、公知の方法で、たとえば個々の成分を単に混合することによって行うことができる。混合は有利には室温で行い、かつ有利にはこの混合の際に水の添加を回避する。あるいはまた所望の場合には、この混合を高めた温度で、たとえば25〜80℃の範囲の温度で行うことができる。
【0065】
本発明によるコンパウンドの架橋のためには、空気の通常の含水量で十分である。架橋は、所望の場合には、室温よりも高い温度、たとえば25〜120℃で、または室温よりも低い温度、たとえば−10〜25℃で実施することができる。同様に架橋は、空気の通常の含水率よりも高い水の濃度で実施することもできる。
【0066】
本発明によるコンパウンドは、特にたとえば10〜40mmの内幅を有する継ぎ目および同様の隙間のためのシーラントコンパウンドとして、または窓構造における接着剤またはパテコンパウンドとして、または保護被覆を製造するために、または接着剤を拒絶する被覆を製造するために、または従来公知の、室温でエラストマーへと架橋するコンパウンドを使用することができたその他の適用のために、たとえば電気的な、もしくは電子的な装置を絶縁するために、ならびにプラスチック、金属およびエラストマーからなる成形部材を被覆するために、およびテキスタイルの平面状構造物を被覆するために適切である。
【0067】
有機ケイ素化合物をベースとする本発明によるコンパウンドは、Si結合した水素が、脂肪族炭素−炭素多重結合へ付加することによって架橋可能なコンパウンドであってよい。
【0068】
有利には本発明による有機ケイ素化合物をベースとする付加架橋可能なコンパウンドは、以下の成分を含有している:
(1)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した基を有する有機ケイ素化合物、
(2)Si結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物、または(1)および(2)の代わりに
(3)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した基と、Si結合した水素原子とを有する有機ケイ素化合物、
(4)脂肪族多重結合へのSi結合した水素の付加を促進する触媒、
(5)酸捕捉剤
および場合により
(6)別の物質。
【0069】
本発明によるコンパウンドが、付加架橋性の二成分シリコーンゴムコンパウンドである場合、本発明によるシリコーンゴムコンパウンドの両方の成分は、全ての成分を任意の組み合わせおよび量比で含有していてよく、ただしその際、1つの成分が同時に成分(1)、(2)および(3)を含有することはない。
【0070】
有機ケイ素化合物(1)は、式
2s3tSiO(4-s-t)/2 (III)
[式中、
2は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつSiC結合した脂肪族不飽和炭化水素基を表し、
3は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ場合により置換された、SiC結合した脂肪族の飽和炭化水素基を表し、
sは、0、1、2または3、有利には0、1または2であり、かつ
tは、0、1、2または3であるが、ただしその際、s+tの合計は、3以下であり、かつ分子あたり少なくとも2つの基R2が存在している]の単位からなる、有利には線状、環式もしくは分枝鎖状のシロキサンである。
【0071】
有機ケイ素化合物(1)は、25℃で有利には102〜106mm2/sの粘度を有する。
【0072】
有利には基R2は、2〜18個の炭素原子を有し、脂肪族の多重結合を有する炭化水素基、たとえばビニル基、アリル基、メタリル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、エチニル基、プロパルギル基および2−プロピニル基であり、その際、2〜6個の炭素原子を有する基R2が特に有利であり、とりわけビニル基およびアリル基が有利である。
【0073】
基R3のための例は、基Rに関して記載した脂肪族の飽和基のための全ての例である。
【0074】
基R3は、有利には場合により置換された、1〜18個の炭素原子を有する脂肪族の一価の飽和炭化水素基、特に有利には1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基、殊にメチル基である。
【0075】
特に有利には、有機ケイ素化合物(1)は、構造
(ViMe2SiO1/2)(ViMeSiO)0-50(Me2SiO)30-2000(ViMe2SiO1/2
を有し、25℃で200〜105mm2/sの粘度を有する線状のオルガノポリシロキサンであり、上記式中で、Meは、メチル基を表し、かつViは、ビニル基を表す。
【0076】
Si結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物(2)として、式
4uvSiO(4-u-v)/2 (IV)
[式中、R4は、同じであるか、または異なっていてよく、かつ上記でR3に関して記載した意味を有し、uは、0、1、2または3であり、かつvは、0、1または2、有利には0または1であるが、ただしその際、u+vの合計は、3以下であり、かつ分子あたり平均して少なくとも2つのSi結合した水素原子が存在している]の単位からなる線状、環式または分枝鎖状のシロキサンを使用する。
【0077】
有機ケイ素化合物(2)は、25℃で有利には10〜2×104mm2/sの粘度を有する。
【0078】
分子あたり、3以上のSiH結合を有する有機ケイ素化合物(2)の使用は有利である。分子あたり、2つのSiH結合を有するのみの成分(2)を使用する場合、有機ケイ素化合物(1)は、有利には分子あたり少なくとも3つの脂肪族炭素−炭素多重結合を有する。従って有利には有機ケイ素化合物(2)を架橋剤として使用する。
【0079】
有機ケイ素化合物(2)は、有利にSi結合水素0.002〜1.7質量%、特に有利には水素0.1〜1.7質量%の含有率を有する。
【0080】
特に有利には、有機ケイ素化合物(2)は、25℃で20〜1000mm2/sの粘度を有するオルガノポリシロキサンである。
【0081】
ポリオルガノシロキサン(2)は、有利には、成分(1)の脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基に対するSiH基のモル比が、0.5〜5、有利には1.0〜3.0であるような量で、硬化可能なシリコーンゴムコンパウンド中に含有されている。
【0082】
有機ケイ素化合物(3)を使用する場合、これは式
3fSiO(4-f)/2、R3g2SiO(3-g)/2およびR3hHSiO(3-h)/2
[式中、
2およびR3は、上記の意味を有しており、
fは、0、1、2または3であり、
gは、0、1または2であり、かつ
hは、0、1または2であるが、
ただしその際、分子あたり、少なくとも2の基R2および少なくとも2のSi結合した水素原子が存在している]の単位からなる化合物である。
【0083】
有機ケイ素化合物(3)のための例は、SiO4/2単位、R33SiO1/2単位、R322SiO1/2単位およびR32HSiO1/2単位からなる化合物、いわゆるMQ樹脂であり、その際、該樹脂はさらにR3SiO3/2単位およびR32SiO単位を含有していてもよく、ならびに実質的にR322SiO1/2単位、R32SiO単位およびR3HSiO単位からなる(R2およびR3は、上記の意味と同じである)線状オルガノポリシロキサンである。
【0084】
有機ケイ素化合物(3)は、そのつど25℃で、有利には、0.01〜500000Pa・s、特に有利には0.1〜100000Pa・sの粘度を有する。
【0085】
脂肪族炭素−炭素多重結合を有する基と、Si結合した水素との間の付加反応(ヒドロシリル化)を促進する成分(4)として、本発明によるコンパウンド中で、全ての従来公知のヒドロシリル化触媒を使用することができる。
【0086】
ヒドロシリル化触媒(4)のための例は、金属、たとえば白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよびイリジウム、有利には白金であり、これらは場合により微粒子状の担持材料、たとえば活性炭、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素上に固定されていてもよい。
【0087】
有利には触媒(4)として白金ならびにその化合物および錯体を使用する。
【0088】
触媒(4)の量は、所望の架橋速度およびそのつどの使用ならびに経済学的な観点に応じて調整する。本発明によるコンパウンドは、触媒(4)を、そのつど架橋可能なコンパウンドの全質量に対して、有利には0.05〜500質量ppm(=百万質量部当たりの質量部)、特に有利には0.5〜100質量ppm、特に1〜50質量ppmの白金含有量が生じる量で含有する。
【0089】
本発明により使用される酸捕捉剤(5)は、有利には付加架橋のために使用される触媒を妨げないもの、たとえば金属酸化物、たとえば酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウム、第2および第3主族および第2副族の水酸化金属、たとえば水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムならびにこれらの水和物、弱酸と強塩基との塩、たとえば炭酸亜鉛、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムならびに相応する炭酸水素塩、アンモニウム塩、たとえば炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウム、酸を中和することができる有機物質、たとえば尿素およびテトラメチル尿素、ならびにカルバミン酸塩、たとえばカルバミン酸アンモニウムである。
【0090】
本発明により使用される酸捕捉剤(5)は、付加反応により架橋可能なコンパウンド100質量部あたり、有利には2〜80質量部の量で使用する。
【0091】
成分(1)〜(5)以外に、本発明による硬化可能な組成物は、さらに、従来、付加架橋可能なコンパウンドを製造するために使用されていた全てのその他の物質(6)を含有するが、ただしその際、その他の物質(6)は、成分(1)〜(5)とは異なっている。。
【0092】
別の物質(6)のための例は、強化充填剤、非強化充填剤、樹脂状の、シロキサン(1)、(2)および(3)とは異なるポリオルガノシロキサン、分散助剤、溶剤、カップリング剤、顔料、着色剤、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤、抑制剤および安定剤である。
【0093】
成分(6)として使用することができる慣用の抑制剤の例は、アセチレン性アルコール、たとえば1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オールおよび3,5−ジメチル−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ドデシン−3−オール、ポリメチルビニルシクロシロキサン、たとえば1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサン、トリアルキルシアヌレート、アルキルマレエート、たとえばジアリルマレエート、ジメチルマレエートおよびジエチルマレエート、アルキルフマレート、たとえばジアリルフマレートおよびジエチルフマレート、有機ヒドロペルオキシド、たとえばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミンおよびアミド、ホスファンおよびホスファイト、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジンおよびオキシムである。
【0094】
本発明によるコンパウンドの抑制剤含有率は、有利には0〜50000ppm、特に有利には50〜2000ppm、とりわけ100〜800ppmである。
【0095】
充填剤のための例は、縮合架橋可能なコンパウンドとの関連で上に記載した例である。
【0096】
充填剤を使用する場合、これはそのつど成分(1)100質量部に対して、有利には2〜100質量部、特に有利には5〜60質量部の量である。
【0097】
本発明によるコンパウンドは、所望の場合に、液体中に、溶解、分散、懸濁または乳化されてよい。本発明によるコンパウンドは、特に成分の粘度ならびに充填物質含有率に応じて、低粘度および注型適性であってよく、ペースト状の粘稠性を有してよく、粉末状であってよく、あるいはまた弾性で高粘度のコンパウンドであってよく、これはたとえば、周知のとおり業界においてしばしばRTV−1、RTV−2、LSRおよびHTVとよばれているコンパウンドが該当しうる。特に本発明によるコンパウンドは、高粘性である場合、顆粒の形で調製することができる。
【0098】
本発明によるオルガノポリシロキサンコンパウンドの製造は、公知の方法に従って、たとえば個々の成分を均一に混合することによって実施することができる。
【0099】
本発明により使用される成分(1)〜(6)は、そのつどこれらの成分の個々の種類、ならびにこれらの成分の少なくとも2種類らなる混合物であってよい。
【0100】
成分(1)〜(6)以外に本発明による、付加反応により架橋可能なコンパウンドは有利にはその他の物質を含有していない。
【0101】
Si結合水素を脂肪族多重結合に付加させることによって架橋可能な本発明によるコンパウンドは、今までに知られているヒドロシリル化反応によって架橋可能なコンパウンドと同じ条件下で架橋させることができる。この場合、100〜220℃、特に好ましくは130〜190℃の温度が好ましく、かつ900〜1100hPaの圧力が好ましい。しかしながら、より高いまたはより低い温度および圧力を適用することもできる。
【0102】
本発明によるコンパウンドならびに本発明により該コンパウンドから製造される架橋生成物は、従来エラストマーへと架橋可能なオルガノポリシロキサンコンパウンドもしくはエラストマーが使用されていた全ての目的のために使用することができる。これは、特に任意の支持体のシリコーン被覆もしくは含浸、成形部材の、たとえば射出成形法、真空押出法、押出成形法、注型法およびプレス成形法での製造、および離型、封止コンパウンド、埋め込みコンパウンドおよび注型コンパウンド等としての使用である。
【0103】
有機ケイ素化合物をベースとする本発明によるコンパウンドは、過酸化物により架橋可能なコンパウンドであってよい。
【0104】
有機ケイ素化合物をベースとする、本発明による過酸化物により架橋可能なコンパウンドは有利には、
(A)一般式
5rSiO(4-r)/2 (V)
[式中、
5は、同じであるか、または異なっていてよく、かつ一価の、場合により置換された炭化水素基、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を表し、かつ
rは、0、1、2または3であり、かつ1.9〜2.1の平均的な数値を有する]の単位からなる有機ケイ素化合物、
(B)遊離基を介して架橋をもたらす薬剤、
(C)酸捕捉剤
および場合により
(D)その他の物質
を含有する。
【0105】
基R5のための例は、基Rに関して上に挙げた例である。有利には基R5は、1〜18個の炭素原子を有する一価の、場合により置換された炭化水素基であり、特に有利には1〜8個の炭素原子を有する一価の、場合により置換された炭化水素基であり、特にメチル基、ビニル基、フェニル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0106】
有利には、有機ケイ素化合物(A)は、式中で、全ての基R5の少なくとも70%が、Si結合したアルキル基、特にメチル基の意味を有する式(V)の単位からなるオルガノポリシロキサンであり、その際、式(V)の単位は有利にはジオルガノシロキサン単位である。
【0107】
有機ケイ素化合物(A)の末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基であるか、またはジメチルビニルシロキシ基であってよく、あるいはまた、これらのアルキル基の1もしくは複数はヒドロキシ基またはアルコキシ基、たとえばメトキシ基またはエトキシ基により置換されていてもよい。
【0108】
有機ケイ素化合物(A)は、液体であっても、高粘性の物質であってもよい。有利には有機ケイ素化合物(A)は、25℃で103〜108mm2/sの粘度を有する。
【0109】
成分(B)は、一般に、従来、過酸化物により架橋可能なコンパウンド中でも使用されていた、ラジカルにより架橋を開始するか、架橋をもたらす薬剤であってよく、その際、過酸化物、特に有機過酸化物が有利である。
【0110】
このような有機過酸化物の例は、ペルオキシケタール、たとえば1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、ジアシルペルオキシド、たとえばアセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、たとえばジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)−ペルオキシド、および過酸エステル、たとえばt−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートである。
【0111】
本発明による、エラストマーに架橋可能なオルガノポリシロキサンコンパウンドは、成分(B)を、そのつど過酸化物により架橋可能なコンパウンドの全質量に対して、有利には0.4〜2.0質量%、特に有利には0.7〜1.5質量%の量で含有する。
【0112】
本発明により使用される酸捕捉剤(C)の場合、使用される過酸化物の早すぎる分解が触媒されえないもの、たとえば上記で付加架橋可能なコンパウンドとの関連で挙げた酸捕捉剤(5)のための例が有利である。
【0113】
本発明により使用される酸捕捉剤(C)は、過酸化物により架橋可能なコンパウンド100質量部あたり、有利には2〜100質量部の量で使用する。
【0114】
そのつどの適用に相応して、本発明によりエラストマーへと加硫可能なコンパウンドに、別の物質(D)を添加することができるが、ただし、添加剤(D)は成分(A)〜(C)とは異なっている。
【0115】
このような別の物質(D)のための例は、充填剤、可塑剤、顔料および安定剤、たとえば熱安定剤である。
【0116】
強化および非強化充填剤のための例は、上記で充填剤のための縮合架橋可能なコンパウンドとの関連で記載した例である。
【0117】
本発明による、過酸化物により架橋可能なコンパウンドが、充填剤を成分(D)として含有している場合、これは、そのつど有機ケイ素化合物(A)100質量部に対して、有利には1〜200質量部、特に有利には30〜100質量部の量である。
【0118】
成分(D)として添加することができる可塑剤および熱安定剤のための例は、上記でこのために記載した例である。
【0119】
さらに本発明による過酸化物により架橋可能なコンパウンドは、有利には別の物質を含有していない。
【0120】
本発明による過酸化物により架橋可能なコンパウンドを製造するためのそのつど使用される成分は、そのつどこれらの成分の個々の種類、ならびにこれらの成分の少なくとも2種類の異なった種類からなる混合物であってよい。
【0121】
本発明による過酸化物により架橋可能なオルガノポリシロキサンコンパウンドの製造は、公知の方法に従って、たとえば個々の成分を単に混合することによって実施することができる。
【0122】
本発明による過酸化物により架橋可能なコンパウンドは、従来公知の過酸化物により架橋可能なコンパウンドと同一の条件で架橋させることができる。
【0123】
本発明によるコンパウンドならびに本発明により該コンパウンドから製造されるエラストマーは、今までにもエラストマーへと架橋可能なオルガノポリシロキサンコンパウンドもしくはエラストマーが使用されていた全ての目的のために使用することができる。本発明によるコンパウンドは、カレンダー法でシートを製造するために、ならびにテキスタイルもしくはテキスタイル以外の平面状構造物上にカレンダーを用いて、または幅広ノズルからの押出により施与するために特に好適である。
【0124】
以下に記載される実施例では、部およびパーセンテージで示される全ての表示は、特にその他の記載がない限り、質量に対するものである。その他の記載がない限り、以下の実施例は、周囲大気の圧力で、従って約1000hPaで、かつ室温で、従って約20℃で、もしくは反応物を室温で付加的加熱または冷却をせずに添加した時に生じる温度で実施される。実施例中に記載された全ての粘度表示は、25℃の温度に関する。
【0125】
比較例1
粘度20000mPasを有するα,ω−ビニル末端ジメチルポリシロキサン120gおよび粘度1000mPasを有するα,ω−ビニル末端ジメチルポリシロキサン156gを、BET表面積300g/m2を有する高分散シリカ(Wacker Chemie社(ドイツ国ミュンヘン在)からの市販品、商品名HDK(登録商標)T30)55gと混合する。該混合物に、テトラメチルジビニルジシロキサンの白金錯体0.06g、水素含有率1.2%および粘度40mPasを有するメチル水素ポリシロキサン10gおよびエチニルシクロヘキサノール1.5gを配合する。こうして得られたコンパウンドを、ナイロン織布上にナイフで施与し、かつ150℃で5分間加硫させる。加硫後の被覆の質量は、30g/m2である。
【0126】
例1
比較例1に記載したコンパウンド100gに、平均粒径20μmを有する水酸化アルミニウム25gを攪拌機で配合する。
【0127】
こうして得られたコンパウンドは粘度140000mPasを有し、これをナイロン織布上にナイフで施与し、かつ150℃で5分間加硫させる。加硫後の被覆の質量は、30g/m2である。
【0128】
比較例2
粘度80000mPasを有するα,ω−ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサン164gおよびBET表面積130g/m2を有する疎水化された高分散性シリカ(Wacker Chemie社(ドイツ国ミュンヘン在)からの市販品、商品名HDK(登録商標)H20)96gを混練機中で混合する。均質な混合物中に、粘度1000mPasを有するα,ω−ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサン103gを配合する。次いで、n−プロパノール1.5g、メチルトリエトキシシラン18.4gおよびジブチルスズジアセテート0.26gを添加する。
【0129】
こうして得られたコンパウンドをナイロン織布上にナイフで施与し、かつ25℃および相対空気湿度50%で48時間加硫する。加硫後の被覆の質量は、30g/m2である。
【0130】
例2
比較例2に記載したコンパウンド100gに、平均粒径10μmを有する炭酸カルシウム25gを攪拌機で配合する。
【0131】
こうして得られたコンパウンドをナイロン織布上にナイフで施与し、かつ25℃および相対空気湿度50%で48時間加硫する。加硫後の被覆の質量は、30g/m2である。
【0132】
比較例3
ブラベンダーの塑性5.2Nmを有するα,ω−ビニル末端ジメチルポリシロキサン728gを、混練機中で粘度65mPasを有するα,ω−ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサン10.9gおよび式HO[SiO(CH3)CH=CH210[SiO(CH3240OHのポリシロキサン4.3gと混合する。この混合物に、BET表面積150g/m2を有する高分散性シリカ(Wacker Chemie社(ドイツ国ミュンヘン在)からの市販品、商品名HDK(登録商標)H15)265gを配合する。混合作業の終わりに、ジベンゾイルペルオキシド8gを配合する。
【0133】
こうして得られたシリコーンゴムペーストをカレンダーでナイロン織布上に施与し、かつ170℃で3分間架橋させる。被覆の質量は、加硫後に40g/m2である。
【0134】
例3
比較例3に記載したコンパウンド100gに、尿素20gを混練機で配合する。
【0135】
こうして得られたシリコーンゴムペーストを、カレンダー法によりナイロン織布上にカレンダーで塗布し、かつ170℃で3分間架橋させる。加硫後の被覆の質量は、40g/m2である。
【0136】
例4
そのつど容量1000mlを有するガラス容器中で、例1〜3および比較例V1〜V3で被覆した織布を100cm2を有する切片として装入する。
【0137】
ガラス容器をそのつど、HClガス100ppmを含有する空気で充填する。
【0138】
引き続き、該容器を閉鎖し、炉中、150℃で3分間貯蔵し、かつ次いで室温に冷却させて、ガスチャンバ中のHCl含有率を測定した。この結果は第1表に記載されている。
【0139】
【表1】

【0140】
例5
容量約0.5m3を有する安全容器を、例2により被覆した織布から製造する。該容器に、窒素およびHCl50ppmからなるガス混合物を充填する。時間に依存してガス混合物中のHCl含有率は低減する。
【0141】
例6
例3に記載のコンパウンドから、押出機を用いて内径10mmおよび壁厚2mmを有するホースを押出成形し、かつ加硫させる。こうして得られたホース10mに、窒素およびHCl50ppmからなるガス混合物を導通する。貫流速度に依存して該ホースの端部におけるHCl含有率は低減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸捕捉剤を含有することを特徴とする、有機ケイ素化合物をベースとする架橋可能なコンパウンド。
【請求項2】
前記コンパウンドが、水の排除下で貯蔵可能であり、水が添加されると室温で縮合することによってエラストマーへと架橋可能なコンパウンドであることを特徴とする、請求項1記載のコンパウンド。
【請求項3】
縮合により架橋可能なコンパウンドが、
(a)縮合可能な基を有する有機ケイ素化合物、
(b)少なくとも3つのSi結合した加水分解可能な基を有する有機ケイ素化合物、
(c)縮合触媒
(d)酸捕捉剤
および場合により
(e)その他の物質
を含有するコンパウンドであることを特徴とする、請求項2記載のコンパウンド。
【請求項4】
前記コンパウンドは、Si結合した水素が脂肪族炭素−炭素多重結合に付加することにより架橋可能である有機ケイ素化合物をベースとするコンパウンドであることを特徴とする、請求項1記載のコンパウンド。
【請求項5】
付加反応によりにより架橋可能なコンパウンドが、
(1)脂肪族炭素−炭素多重結合を有するSiC結合した基を有する有機ケイ素化合物、
(2)Si結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物、または(1)および(2)に代えて、
(3)脂肪族炭素−炭素多重結合を有するSiC結合した基と、Si結合した水素原子とを有する有機ケイ素化合物、
(4)脂肪族多重結合へのSi結合した水素の付加を促進する触媒
(5)酸捕捉剤
および場合により
(6)その他の物質
を含有するコンパウンドであることを特徴とする、請求項4記載のコンパウンド。
【請求項6】
前記コンパウンドは、過酸化物により架橋可能な有機ケイ素化合物をベースとするコンパウンドであることを特徴とする、請求項1記載のコンパウンド。
【請求項7】
過酸化物により架橋可能なコンパウンドが、
(A)一般式
5rSiO(4-r)/2 (V)
[式中、
5は、同じであるか、または異なっていてよく、かつ一価の、置換されていてよい炭化水素基、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を表し、かつ
rは、0、1、2または3であり、かつ1.9〜2.1の平均的な数値を有する]の単位からなる有機ケイ素化合物、
(B)遊離基により架橋をもたらす薬剤、
(C)酸捕捉剤
および場合により
(D)その他の物質
を含有するコンパウンドであることを特徴とする、請求項6記載のコンパウンド。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載のコンパウンドを架橋することにより製造された成形体。
【請求項9】
液体状または気体状の環境で酸を吸収および中和する方法において、請求項8記載の成形体を使用することを特徴とする、液体状または気体状の環境で酸を吸収および中和する方法。
【請求項10】
酸が、ハロゲン化水素、たとえばHCl、HBrおよびHF、含硝硫酸ガスおよびこれらから生じる酸、H2SO3、H2SO4、リン酸またはHCNであることを特徴とする、請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2008−530282(P2008−530282A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554467(P2007−554467)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000693
【国際公開番号】WO2006/084585
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】