説明

有機化合物

貯蔵中に医薬原体が凝集しおよび//または塊形成する傾向を減らす方法。本方法は、医薬原体を微粉化して約10μm未満の平均粒子径を得て、および該微粉化医薬原体を、40℃〜120℃の高温の乾燥環境に少なくとも6時間曝すことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の製造、より具体的には、微粉化医薬原体が凝集しおよび/または塊を形成する傾向を減らす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物理化学的特性により製剤が困難である有効成分について、その有効成分の最も熱力学的に安定な結晶形態を使用することがしばしば有益である。不運なことに、いくつかの医薬原体、特に微粉化医薬原体は貯蔵すると凝集しおよび/または大気から水を吸収し、塊を形成する傾向にある。この凝集および/または塊形成は、さらに処理を困難なものに、または少なくとも低効率のものとする。それは、医薬原体の安定性を含む物理化学的特性に顕著に影響を与えさえする。
【0003】
微粉化グリコピロレートは、特に、凝集しおよび/または塊を形成する強い傾向を有し、製薬下流部門での処理、特に吸入投与用乾燥粉末製剤の製造を妨げる。
【0004】
微粉化医薬原体を処理して、該医薬原体の物理化学的特性を変えるための種々方法が提案されている。しかしながらこれらの方法の幾つかは、理想的に言えば、大きな商業規模での製造には適さない可燃性溶媒の使用を含む。水または水蒸気を使用する方法を含む、他の既知の溶媒処理方法は、粒子成長、凝集および塊形成に至る局所的溶媒和工程を引き起こす傾向にある。
【0005】
Brodka-Pfeiffer et alは、Drug Development and Industrial Pharmacy, Vol 29 No. 10 pages 1077-1084 (2003)において、硫酸サルブタモールの微粉化が非晶部分の形成をもたらし、該微粉化物質を5時間、70℃のサーマル・オーブンで加熱しても、再結晶化に至らず、安定な製品が形成されなかったことを開示している。
【発明の概要】
【0006】
驚くべきことに、本発明により、微粉化医薬原体を乾式加熱に曝し、その凝集しおよび/または塊を形成する傾向を減らすことができることが判明した。これは、医薬原体が、何等かの顕著な非晶内容物を含まないときでさえ、起こる。
【0007】
従って、第一の局面において、本発明は、貯蔵中に医薬原体が凝集しおよび/または塊形成する傾向を減らす方法に関し、該方法は:
(a) 医薬原体を微粉化して約10μm未満の平均粒子径を得て;そして
(b) 該微粉化医薬原体を、40℃〜120℃の高温の乾燥環境に少なくとも6時間曝す
工程を含む。
【0008】
医薬原体は、1種以上の他の医薬原体および/または1種以上の抗付着剤と、一緒に微粉化しても、“共微粉化(co-micronised)”してもよい。
好ましくは高温は60℃〜100℃、または適切には60〜90℃である。
【0009】
好ましくは、微粉化医薬原体を、乾燥環境に高温で12〜96時間、より好ましくは24〜50時間、特に約24時間曝す。
【0010】
ある好ましい態様において、医薬原体が非晶部分を含む結晶形態で存在するとき、本方法は、医薬原体の非晶部分の存在を減らし得る。
好ましくは医薬原体はグリコピロニウム塩、特にグリコピロレートである。
【0011】
第二の局面において、本発明は、上記の本発明の方法を使用して処理されている医薬原体を含む、吸入可能乾燥粉末製剤に関する。
【0012】
第三の局面において、本発明は、噴射剤中に懸濁された医薬原体(ここで、該医薬原体は、上記の本発明の方法を使用して処理されている)を含む、定量吸入器において使用するための吸入可能製剤に関する。
【0013】
本明細書において使用する用語は、次の意味を有する:
ここで使用する、“凝集する”は、一緒に集まるまたは結合することを意味する。新たに微粉化した医薬原体は、時間と共に自然に合体し、医薬原体の凝集体を形成する傾向にある、微粉末の形を取る傾向にある。これらの凝集体は、あまり細かくない、または粗くさえある粉末に似る。
【0014】
ここで使用する“塊形成”は、特に湿気の存在下、塊または一団を形成することを意味する。微粉化医薬原体またはその凝集体は、貯蔵に際し、特に湿気の存在下、医薬原体の粗い粉末、凝集塊、または実質的に1個の塊でさえ形成する傾向にある。
【0015】
ここで使用する“非晶”は、医薬原体(結晶化工程、乾燥、製粉)または医薬品(造粒、圧縮)の製造中に現れ得る、不規則な固体状態を意味する。非晶固体のX線粉末回折パターンは、鋭いピークを示さない。
【0016】
ここで使用する“抗付着剤”は、粒子間の付着を減らし、微粒子が吸入器の内部表面に付着するのを妨げる物質、またはかかる物質の混合物を意味する。抗付着剤はまた、吸入器中で粉末製剤の良好な流動特性を付与する、減摩剤または流動促進剤も含む。通常、それらは良好な用量再現性およびより高い微粒子画分をもたらす。典型的抗付着剤は、アミノ酸、例えばロイシン、リン脂質、例えばレシチンまたは脂肪酸誘導体、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムを含む。
【0017】
ここで使用する“グリコピロニウム塩”は、臭化グリコピロニウム(グリコピロレート)、塩化グリコピロニウム、ヨウ化またはグリコピロニウムを含み、これらに限定されない、グリコピロニウムの全ての塩形態または対イオン、ならびに任意のおよび全ての分割された立体異性体およびその立体異性体の混合物を包含することを意図する。グリコピロニウム塩の誘導体も包含する。適当な対イオンは、例えば、フルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、ニトレート、スルフェート、ホスフェート、ホルメート、アセテート、トリフルオロアセテート、プロピオネート、ブチレート、ラクテート、シトレート、タートレート、マレート、マレアート、スクシネート、ベンゾエート、p−クロロベンゾエート、ジフェニル−アセテートまたはトリフェニルアセテート、o−ヒドロキシ−ベンゾエート、p−ヒドロキシベンゾエート、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボキシレート、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボキシレート、メタンスルホネートおよびベンゼン−スルホネートを含む、薬学的に許容される対イオンである。
【0018】
“平均粒子径”は、レーザー光回折により測定した、粒子の平均直径である。x90平均粒子径は、サンプル中90%の粒子がそれより小さい平均粒子径を有する平均粒子径である。x50平均粒子径は、サンプル中50%の粒子がそれより小さい平均粒子径を有する平均粒子径である。x10平均粒子径は、サンプル中10%の粒子がそれより小さい平均粒子径を有する平均粒子径である。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈から他の解釈が必要でない限り、用語“含む”、または“含み”または“含んで”のようなその変化形は、記載する整数または整数の群を包含するが、任意の他の整数または整数の群を排除しないことを意味することは理解されよう。
【0020】
本発明は、医薬原体が凝集しおよび/または塊形成する傾向を減らす方法に関する。本方法は、(a)医薬原体を微粉化して約10μm未満の平均粒子径を得て;そして(b)該微粉化医薬原体を、40℃〜120℃の高温の乾燥環境に少なくとも6時間曝すことを含む。
【0021】
医薬原体は、任意の薬理学的有効成分であり得るが、本発明の方法は、物理化学的特性により、特に吸入投与用乾燥粉末製剤の製造において、慣用的製剤が困難である、結晶性医薬原体に特に有用である。一般に、かかる物質は、活性化表面および用いる温度での処理に耐える十分な化学安定性を有する。
【0022】
かかる医薬原体は、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、鬱血除去剤および鎮咳剤医薬原体、例えばβ−アドレナリン受容体アゴニスト、抗ムスカリン剤、ステロイド、PDE4阻害剤、A2aアゴニストまたはカルシウムブロッカーを含む。好ましい医薬原体(その塩、多形、または水和物または溶媒和物を含む)は、抗ムスカリン剤、例えばイプラトロピウムブロマイド、チオトロピウムブロマイド、他のチオトロピウム塩、結晶性臭化チオトロピウム水和物、臭化オキシトロピウム、臭化アクリジニウム(aclidinium)、ダロトロピウム、BEA−2180、BEA−2108、CHF 4226(Chiesi)、GSK423405、GSK202423、LAS35201、SVT−40776、(R)−3−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトキシ)−1−(イソキサゾール−3−イル−カルバモイル−メチル)−1−アゾニア−ビシクロ−[2.2.2]オクタンブロマイドおよびグリコピロニウム塩;β−アドレナリン受容体アゴニスト、例えばフォルモテロール、インダカテロール、アルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、カルモテロール、ミルベテロール(milveterol)、BI−1744−CL、GSK159797、GSK−159802、GSK642444、PF−610355およびそれらの塩;およびステロイド、例えばブデソニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン(beclamethasone)、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、GSK−685698および3−メチル−チオフェン−2−カルボン酸(6S,9R,10S,11S,−13S,16R,17R)−9−クロロ−6−フルオロ−11−ヒドロキシ−17−メトキシ−カルボニル−10,13,16−トリメチル−3−オキソ−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカ−ヒドロ−3H−シクロ−ペンタ[a]フェナントレン−17−イルエステルを含む。これらの物質の溶解度および他の物理化学的特性は、特定の医薬原体の凝集しおよび/または塊形成する傾向を減らすのに必要な条件に有利に影響を与え得る。
【0023】
ある態様において、医薬原体は、1種以上の他の医薬原体および/または1種以上の抗付着剤と、一緒に微粉化しても、“共微粉化”してもよい。
本発明の方法の好ましい態様において、医薬原体はグリコピロニウム塩、特にグリコピロニウムブロマイドまたはグリコピロレートである。
【0024】
化学名3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチル−ピロリジニウムブロマイドを有するグリコピロレートは、現在、麻酔の分泌を減らすために注射により投与されるか、胃潰瘍の処置のために経口で摂取される、抗ムスカリン剤である。しかしながら、ごく最近、それが呼吸器疾患の処置に有用であることが証明されつつある。
【0025】
グリコピロレートは、次の化学構造を有する:
【化1】

グリコピロレート端版されており、または、その内容を援用により本明細書に包含させる米国特許US2956062に記載された方法を使用して、製造できる。好ましくは結晶性であり、検出可能な非晶部分を含まない。
【0026】
グリコピロレートは、米国特許明細書US6307060およびUS6,613,795に記載の通り、2個所の立体中心を有し、故に4種の異性形態、すなわち(3R,2’R)−、(3S,2’R)−、(3R,2’S)−および(3S,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロマイドで存在する。これらの特許明細書の内容は援用により本明細書に包含させる。本発明は、これらの異性形態の1種以上、特に3S,2’R異性体、3R,2’R異性体または2S,3’R異性体の使用を包含し、故に、単一鏡像体、ジアステレオマー混合物、またはラセミ体、特に(3S,2’R/3R,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシ−フェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロマイドを含む。
【0027】
医薬原体は、10μm未満、好ましくは5μm未満の平均粒子径を与える任意の適当な手段を使用して、微粉化できる。一般に、このサイズの薬物粒子は、吸入による投与に適当である。微粉化は、一般用語として、機械的手段を使用して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の得られた粒子状物質が、直径約10ミクロン未満の平均粒子径を有するように、医薬原体を微粉砕するまたは他の方法で小さくすることを意味する。ある態様において、平均粒子径は直径約7ミクロン未満であり、他の態様において、直径約5ミクロン未満である。
【0028】
約10μmより大きい平均粒子径を有する粒子は、咽喉の壁に衝突する傾向にあり、一般に肺に到達しない。約2μm〜約5μmの範囲の平均粒子径を有する粒子は、一般に呼吸細気管支に沈着するが、約0.05μm〜約2μmの範囲の平均粒子径を有する小さな粒子は放出されるか、または肺胞に沈着し、血流に吸収される傾向にある可能性がある。
【0029】
微粉化装置は当分野で既知であり、種々の粉砕および製粉機、例えば圧縮型のミル、例えばメカノフュージョン(mechanofusion)ミル、衝突式ミル、例えばボールミル、ホモジェナイザーおよびマイクロフルイダイザー、およびジェットミルを含む。好ましい態様において、結晶性グリコピロニウム塩を、Hosokawa Alpine(登録商標) 100 AFG流動床カウンタジェットミル(opposed jet mill)を使用してジェットミルで製粉する。他の適当なジェットミル装置は、Hosokawa Alpine(登録商標) AFG140、AFG200、AFG280およびAFG400ジェットミル、およびスパイラルジェットミルまたは、窒素、空気、または他の製粉ガスまたはそれらの混合物で働く他の製粉装置を含む。
【0030】
ある態様において、さらに医薬原体が塊形成する傾向を減らし、故に、得られた医薬原体の安定性を改善するために、医薬原体を抗付着剤と微粉化するのが適切であり得る。好ましくは、抗付着剤は、1種以上のステアリン酸金属塩、1種以上の結晶性糖類またはそれらの混合物である。特に好ましいステアリン酸金属塩は、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムを含み、またはアミノ酸、例えばロイシンである。特に好ましい結晶性糖類は、ラクトース、より具体的にラクトース一水和物または無水ラクトースを含む。
【0031】
本発明の方法の重要な工程は、該微粉化医薬原体を、40℃〜120℃の高温の乾燥環境に少なくとも6時間曝すことを含む。かかる環境は、全ての有機溶媒または水を含む、溶媒または溶媒蒸気がない、または少なくとも実質的にないことある。この方法は、そうしなければ粒子成長、凝集および/または塊形成をもたらし得る、局所的溶媒和工程(粒子表面上の活性化部位の高い水蒸気親和性のため)が起こり得ない。
【0032】
微粉化医薬原体は、好ましくは利用可能な表面積を最大にするためにトレイ上に薄く広げ、そのトレイをチャンバーに入れ、そこで、40℃〜120℃の高温の乾燥環境に少なくとも6時間曝される。
【0033】
驚くべきことに、本発明の方法が、医薬原体、特に結晶性医薬原体の表面安定性を高める。走査型電子顕微鏡(SEM)写真は、新たに微粉化した医薬原体、例えばグリコピロレートを高い湿度に曝すことにより、粒子凝集および粒子表面の平滑化に至ることを示す。しかしながら、本発明の方法に従い処理した、新たに微粉化した医薬原体、例えばグリコピロレートは、観察可能な粒子凝集を示さず、粒子表面はでこぼこのままである。同じ物質を続けて高い湿度に曝した場合でさえこれは維持され、本発明の方法を用いることにより、表面特性がより安定な方向で変化することを明確に示す。
【0034】
理論に縛られることを望まないが、医薬原体の乾燥環境での処理は、医薬原体の表面の急速な再秩序化(re-ordering)をもたらすように見える。これは、微粉化医薬原体が溶媒または溶媒蒸気で処理されたとき、特に医薬原体が使用する溶媒に可溶性であるときに観察され得る、局所溶解および凝集効果を避ける。
【0035】
高温および処理時間は、処理する医薬原体により変わる。好ましくは高温は40℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃、特に60℃〜約90℃である。好ましくは、粉化医薬原体を、高温で、乾燥環境に12〜96時間、より好ましくは24〜50時間、特に約24時間曝す。
【0036】
医薬原体がグリコピロレートであるとき、高温は好ましくは60℃〜120℃、より好ましくは70℃〜90℃、特に約75℃である。微粉化グリコピロレートを、好ましくは、高温で、乾燥環境に12〜72時間、より好ましくは20〜60時間、特に約24時間曝す。
【0037】
ある好ましい態様において、医薬原体が非晶部分を含む結晶形態で存在するとき、本方法は、医薬原体における非晶部分の存在を減らし得る。例えば、Burnett et al International Journal of Pharmaceutics 287 (2004) pp123-133から、非晶物質が製粉または圧縮中に意図せずに製造される可能性があり、医薬系におけるその物質の存在は、その物質の加工、貯蔵、バイオアベイラビリティおよび送達特性に直接影響し得ることは既知である。
【0038】
医薬原体がグリコピロレートであるとき、凝集および塊形成する傾向が減少することは、グリコピロレートが検出可能な非晶部分を含まないため、非晶部分をなくすることによっては説明できない。凝集および塊形成する傾向の減少は、医薬原体の表面でのまたは表面近くでの再秩序化および表面エネルギー減少の結果であるように見える。
【0039】
本発明の方法により処理されている医薬原体は、凝集しおよび/または塊を形成する傾向が少なく、故に、吸入可能乾燥粉末を得るためのさらなる処理、すなわちラクトース担体粒子との混合が容易である、実質的に安定な固体バルク医薬原体を提供する。この処理はまた本発明の方法が医薬原体粒子の表面を変えているため、相対湿度の少し乃至中程度の上昇に医薬原体が耐える能力も高め得る。
【0040】
本発明を次の実施例により説明する。
【実施例1】
【0041】
グリコピロレートの微粉化および無溶媒加熱処理
1kgの結晶性グリコピロレートを、次のパラメータ:分類器速度、17000rpm;製粉ガス圧、4barのHosokawa Alpine(登録商標) 100 AFG流動床カウンタジェットミルを使用して、5%ステアリン酸マグネシウムと共微粉化する。このミルは、1.9mm直径の3個のノズルを備える。
【0042】
共微粉化したグリコピロレートおよびステアリン酸マグネシウムの粒子径を、Sympatec GmbH(Germany)からのHELOS粒子径分析器を使用したレーザー光回折により測定し、平均粒子径が2.5μmであることが判明する。
【0043】
共微粉化したグリコピロレートおよびステアリン酸マグネシウムの非晶内容物を示差走査熱量測定(DSC)、ハイパーDSCおよび微小熱量測定により測定する。非晶内容物は検出されない。
【0044】
共微粉化したグリコピロレートおよびステアリン酸マグネシウムをトレイに薄く広げ、大気条件の乾燥チャンバーに入れる。乾燥チャンバー内の温度を1時間以内に70℃に上げ、その温度に48時間維持する。その後、トレイを乾燥チャンバーから出し、冷ます。
【0045】
乾式加熱処理した共微粉化したグリコピロレートおよびステアリン酸マグネシウムの非晶内容物をDSC、ハイパーDSCおよび微小熱量測定で測定し、非晶内容物は検出されない。従って、グリコピロレートは、非晶部分の再結晶化の点では、相変化を受けていない。しかしながら表面再構成および表面エネルギー低下がアルカン類、n−デカン、n−ノナン、n−オクタン、ヘプタン、ヘキサンおよびアセトニトリルを用いた、および、分散的表面エネルギーおよび表面特性の酸・塩基比を測定するためのプローブ分子としてエタノールおよび酢酸エチルを使用した、逆ガスクロマトグラフ(IGC, Surface Measurement Systems)を使用した逆ガスクロマトグラフィー(iGC)により示される。
【0046】
微粉化前、本物質は48mJ/mの分散的表面エネルギーを示し、これは製粉中約70mJ/mまで上昇する。高温に曝すことによりこの物質を処理した後、この表面エネルギーは52mJ/mまで低下することが判明する。
【0047】
ka/kb値(表面特性を説明する酸・塩基比)の変化も、極性プローブ分子としてアセトニトリル、エタノールおよび酢酸エチルを使用したiGCで測定して、示される:粗い粉砕していない医薬原体は、1.0のka/kb比を示す。微粉化後、恐らく、新たに作られた表面のために、約1.2のka/kb比である。加熱処理後、ka/kb比は約0.9である。分散的表面エネルギーおよびka/kbにおけるこれらの変化は、表面特性の変化を明らかに示す。それらは、高い熱力学的状態に向かう表面再秩序化が起こっていることを示す。Sympatec GmbH, GermanyからのHELOS粒子径分析器を使用したレーザー光回折で測定して、この工程中粒子径は変化しない。
【0048】
対照的に、本物質を上記の通りに処理しないが、共微粉化したグリコピロレートおよびステアリン酸マグネシウムをトレイに薄くひろげ、大気条件でチャンバーに入れる方法で、高湿度と組み合わせた高温で処理し、1時間以内にチャンバー内の温度を30℃に上げ、相対的湿度を75%RHに調節し、その温度で72時間維持したならば、分散的表面エネルギーは約65mJ/mに低下し、同時に1.4のka/kb比を有し、他の表面特性を示す。これは、熱力学的に安定であり、故に、低い表面エネルギーを有する微粉化物質を得る目的についで、記載の方法の利益および可能性を強調する。
【0049】
得られた物質は、記載の方法に曝さなかった物質と異なった挙動をした。例えば、新たに微粉化した(または何らかの力制御、例えばステアリン酸マグネシウムと共微粉化した)物質を高湿度に曝したならば、粒子凝集および粒子表面の平滑化が観察される(例えばSEM写真で見られる)。対照的に、製粉工程後に物質を記載の方法に、高温に曝したならば、この物質をその後高湿度に曝しても粒子凝集は観察されず、表面はでこぼこのままである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵中に医薬原体が凝集しおよび/または塊形成する傾向を減らす方法であって:
(a) 医薬原体を微粉化して約10μm未満の平均粒子径とし;そして
(b) 該微粉化医薬原体を、40℃〜120℃の高温の乾燥環境に少なくとも6時間曝する、
各工程を含む、方法。
【請求項2】
医薬原体を、1種以上の他の医薬原体または1種以上の抗付着剤と共微粉化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高温が60℃〜100℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
微粉化医薬原体を、乾燥環境に12〜96時間曝す、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
医薬原体がグリコピロニウム塩である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
医薬原体がグリコピロレートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
高温が60℃〜120℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
微粉化医薬原体を乾燥環境に12〜72時間曝す、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法を使用して処理されている医薬原体を含む、吸入可能乾燥粉末製剤。
【請求項10】
噴射剤中に懸濁された医薬原体(ここで、該医薬原体は請求項1〜8のいずれかに記載の方法を使用して処理されている)を含む、定量吸入器において使用するための吸入可能製剤。

【公表番号】特表2011−506399(P2011−506399A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537455(P2010−537455)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067359
【国際公開番号】WO2009/074662
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】