説明

有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子、有機半導体装置および電子機器

【課題】優れた特性を発揮する有機半導体素子を製造し得る有機半導体素子の製造方法、かかる有機半導体素子の製造方法により製造された有機半導体素子、この有機半導体素子を備え、信頼性の高い有機半導体装置および信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】
有機EL素子(有機半導体素子)1は、陽極3と、正孔輸送層5aと、正孔輸送層5aと同一の機能を有する中間層5bと、発光層6と、陰極8とを備える。正孔輸送層(第1の有機半導体層)5aと中間層5bと発光層(第2の有機半導体層)6とは、正孔輸送層5aの構成材料を含有する第1の液状被膜、中間層5bの構成材料を含有する第3の液状被膜、および、発光層6の構成材料を含有する第2の液状被膜を固化させることにより一括して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子、有機半導体装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の有機半導体層を備える有機半導体素子として、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)や、有機薄膜トランジスタ等がある。
これらのうち、有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子(半導体素子)としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。
【0003】
一般に、有機EL素子は、陰極と陽極との間に発光層を有する構成であり、陰極と陽極との間に電界を印加すると、発光層に陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。
そして、注入された電子と正孔とが発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際の励起エネルギーを光エネルギーとして放出することにより、発光層が発光する。
【0004】
このような有機EL素子において、有機EL素子の高効率化、すなわち、高い発光を得るためには、電子または正孔のキャリア輸送性の異なる有機半導体材料で構成される有機半導体層を、発光層と、陰極および/または陽極との間に積層する素子構造が有効であることが判っている。
そこで、キャリア輸送特性の異なる発光層と有機半導体層と(以下、これらを併せて「有機半導体層」という。)を電極上に積層する必要があるが、従来の塗布法を用いる製造方法においては、有機半導体層を積層する際に、隣接する有機半導体層との間で相溶解が生じ、これら有機半導体層のキャリア輸送能が低減することに起因して、有機EL素子としての発光効率、発色の色純度またはパターン精度が悪くなる等の特性が低下するという問題があった。
【0005】
そのため、有機半導体層を積層する場合には、有機半導体材料として溶解性の異なるものを組み合わせて用いることにより、積層するのに限られていた。
このような問題点を解決する方法として、下層となる有機半導体層を構成する有機半導体材料同士を重合化させることにより、下層の耐久性すなわち耐溶剤性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、下層となる有機半導体層を構成する有機半導体材料に硬化性樹脂を添加し、この硬化性樹脂と一緒に硬化させることによって、下層の耐溶剤性を向上させる方法も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、これらのような方法を用いた場合においても、有機EL素子の特性の向上は、期待するほど得られていないのが実情である。
このような問題は、有機薄膜トランジスタ等にも同様に生じている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−255774号公報
【特許文献2】特開2002−151269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた特性を発揮する有機半導体素子を製造し得る有機半導体素子の製造方法、かかる有機半導体素子の製造方法により製造された有機半導体素子、この有機半導体素子を備え、信頼性の高い有機半導体装置および信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の有機半導体素子の製造方法は、基板上に、主として第1の有機半導体材料で構成される第1の有機半導体層と、主として前記第1の有機半導体材料と異種の第2の有機半導体材料で構成される第2の有機半導体層と、これらの間に、主として第3の有機半導体材料で構成される中間層とを積層してなる有機半導体素子を製造する有機半導体素子の製造方法であって、
第1の液体に前記第1の有機半導体材料を溶解または分散した第1の液状材料と、前記第1の液体と同種の第2の液体に前記第2の有機半導体材料を溶解または分散した第2の液状材料と、前記第1の液体および前記第2の液体と実質的に相溶しない第3の液体に前記第3の有機半導体材料を溶解または分散した第3の液状材料とを用意する第1の工程と、
前記基板上に、前記第1の液状材料を供給して第1の液状被膜を形成する第2の工程と、
前記第1の液状被膜が固化に至らない状態で、前記第1の液状被膜上に、前記第3の液状材料を供給して第3の液状被膜を形成する第3の工程と、
前記第1の液状被膜および第3の液状被膜が固化に至らない状態で、前記第3の液状被膜上に、前記第2の液状材料を供給して第2の液状被膜を形成する第4の工程と、
前記第1の液状被膜、第3の液状被膜および前記第2の液状被膜から前記第1の液体、前記第3の液体および前記第2の液体を除去することにより、これらの被膜を固化させて前記第1の半導体層、前記中間層および前記第2の半導体層を、この順で積層するように一括して形成する第5の工程とを有することを特徴とする。
これにより、第1の有機半導体層と中間層、および、第2の有機半導体層と中間層との間で、相溶解が生じるのが防止されて、均一な界面が形成されることから、これらの層同士の間でのキャリアの受け渡しを円滑に行うことができる。その結果、これらの層を備える有機半導体素子は、優れた特性を発揮するものとなる。
【0010】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第3の工程において、前記第3の液状材料は、液滴として前記第1の液状被膜上に供給されることが好ましい。
これにより、第1の液状被膜上に供給する第3の液状材料の量を比較的容易に制御することができる。その結果、形成される中間層の薄膜化を図ることができる。また、第3の液状材料を、目的とする領域内に選択的に供給することができるため、第3の液状材料のムダを省くことができる。
【0011】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第4の工程において、前記第2の液状材料は、液滴として前記第3の液状被膜上に供給されることが好ましい。
これにより、第3の液状被膜上に供給する第2の液状材料の量を比較的容易に制御することができる。その結果、形成される第2の有機半導体層の薄膜化を図ることができる。また、第2の液状材料を、目的とする領域内に選択的に供給することができるため、第2の液状材料のムダを省くことができる。
【0012】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第5の工程において、前記第1の液体、前記第3の液体および前記第2の液体の除去は、前記第2の液状被膜に平板を接触させ、次いで、前記第1の液状被膜、前記第3の液状被膜および前記第2の液状被膜が層状となるように、前記平板と前記基板との離間距離を規定した状態で行われることが好ましい。
これにより、第1の液状被膜、第3の液状被膜および第2の液状被膜が、それぞれ、その厚さをほぼ均一なものとした状態で、第1の液体、第3の液体および第2の液体の除去が行われることから、形成される第1の有機半導体層、中間層および第2の有機半導体層の膜厚をもほぼ均一なものとすることができる。
【0013】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記平板は、前記第2の液状材料を接触させる面に撥液性を有することが好ましい。
これにより、本工程において、第1の有機半導体層、中間層および第2の有機半導体層を一括して形成した後に、平板を第2の有機半導体層から容易に除去することができる。
【0014】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第5の工程において、前記第1の液体、前記第3の液体および前記第2の液体は、前記第1の液状材料、前記第3の液状材料および前記第2の液状材料を加熱および/または減圧することにより除去されることが好ましい。
これにより、第1の有機半導体材料と第2の有機半導体材料とが第3の液状被膜側に、第3の有機半導体材料が第1の液状被膜および第2の液状被膜側に不本意に拡散するのを好適に防止または抑制して、第1の液状被膜、第3の液状被膜および第2の液状被膜を迅速に固化させることができる。
【0015】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第3の液体は、極性溶媒であり、前記第1の液体および前記第2の液体は、前記極性溶媒よりも極性の低い溶媒であることが好ましい。
これにより、第3の液体が第1の液体および第2の液体とに相溶するようになるのを的確に防止または抑制することができる。
【0016】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第3の液状材料は、前記第3の有機半導体材料の前記第3の液体中への分散性を向上させる分散剤を含んでいることが好ましい。
これにより、第3の有機半導体材料を分散剤で取り囲むことにより得られるミセルが第3の液体中において形成されることから、第3の有機半導体材料を第3の液体中に確実に分散させることができる。
【0017】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第3の液状材料中における前記第3の有機半導体材料と前記分散剤との混合比は、重量比で10:1〜50:1であることが好ましい。
これにより、第3の液体中においてより適切な大きさのミセルが形成されることから、第3の液体中に第3の有機半導体材料をより確実に分散させることができる。
【0018】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第3の有機半導体材料は、前記第1の有機半導体材料と同種であることが好ましい。
これにより、第1の有機半導体層と中間層とが同一の機能を発揮するものとなる。すなわち、第1の有機半導体層と中間層とを、2層構成の1つの層と言うことができる。
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記第2の液体の沸点をA[℃]とし、前記第3の液体の沸点をB[℃]としたとき、A−Bの絶対値が75以下なる関係を満足することが好ましい。
これにより、形成される中間層と第2の有機半導体層との界面付近で第3の有機半導体材料と第2の有機半導体材料とが混ざり合うのを的確に防止または抑制することができる。
【0019】
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記中間層は、その膜厚が前記第1の有機半導体層の膜厚と前記第2の有機半導体層の膜厚との双方よりも薄くなるように形成されることが好ましい。
本発明の有機半導体素子の製造方法では、前記有機半導体素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であり、
前記第1の有機半導体層および前記中間層は、正孔輸送層の少なくとも一部を構成し、前記第2の有機半導体層は、発光層の少なくとも一部を構成することが好ましい。
これにより、中間層と発光層との界面を均一に形成することができることから、これらの層同士間における正孔の受け渡しを円滑に行うことができる。その結果、これらの層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率等の特性に優れたものとなる。
【0020】
本発明の有機半導体素子は、本発明の有機半導体素子の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、優れた特性を有する有機半導体素子を製造することができる。
本発明の有機半導体装置は、本発明の有機半導体素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い有機半導体装置が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の有機半導体装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子、有機半導体装置および電子機器について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、本発明の有機半導体装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の一例について説明する。
<アクティブマトリクス型表示装置>
図1は、本発明の有機半導体装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の一例を示す縦断面図、図2〜図4は、図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図であり、図2は、縦断面図、図3および図4は、模式図である。なお、以下の説明では、図1〜図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0022】
図1に示すアクティブマトリクス型表示装置(以下、単に「表示装置」と言う。)10は、TFT回路基板(対向基板)20と、この基体20上に設けられた有機EL素子(有機半導体素子)1と、TFT回路基板20に対向する上基板9とを有している。
TFT回路基板20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
【0023】
基板21は、表示装置10を構成する各部の支持体となるものであり、上基板9は、例えば、有機EL素子1を保護する保護層等として機能するものである。
また、本実施形態の表示装置10は、基板21側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板21は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされ、一方、上基板9は、特に、透明性は要求されない。
このような基板21には、各種ガラス材料基板が好適であるが、各種高硬度の樹脂基板を用いることもできる。
【0024】
一方、上基板9には、基板21の構成材料として挙げたものの他、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンのようなポリエーテル系樹脂等を主材料として構成される基板を用いることができる。中でも、ポリイミド系樹脂は、熱膨張率や熱収縮率が小さいため、ポリイミド系樹脂を主材料とする基板は、熱収縮率を低く抑えることができる。また、ポリエステル系樹脂を主材料として構成される基板は、寸法安定性が良いという利点がある。
【0025】
さらに、このような樹脂材料に充填材、繊維を入れて積層したり、前熱処理や架橋度を調整することにより、上基板9の収縮率を低下させて、寸法安定性を向上させることもできる。
なお、上基板9の構成材料としては、上述したようなものの他、例えば、セラミックス材料、金属材料、炭素繊維等のような炭素系材料を用いることもできる。
【0026】
基板21の平均厚さは、特に限定されないが、1〜30mm程度であるのが好ましく、5〜20mm程度であるのがより好ましい。一方、上基板9の平均厚さも、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
回路部22は、基板21上に形成された下地保護層23と、下地保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
【0027】
駆動用TFT24は、半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、有機EL素子1が設けられている。また、隣接する有機EL素子1同士は、隔壁部(バンク)31により区画されている。
【0028】
本実施形態では、各有機EL素子1の陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、正孔輸送層5および発光層6は、各有機EL素子1に対して個別に形成されており、陰極8は、共通電極とされている。
表示装置10は、単色表示であってもよく、各有機EL素子1に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
【0029】
以下、有機EL素子1について詳述する。
図1に示すように、有機EL素子1は、陽極3と、陰極8と、陽極3と陰極8との間に、陽極3側から順に、正孔輸送層5a、中間層5bおよび発光層6が介挿されている。
陽極3は、正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。
この陽極3の構成材料(陽極材料)としては、仕事関数が大きく、導電性に優れ、また透光性を有する材料を用いるのが好ましい。
【0030】
このような陽極材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムと酸化亜鉛との複合物)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3の厚さが薄すぎると、陽極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、有機EL素子1の構成がボトムエミッション型の場合、実用に適さなくなるおそれがある。
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
【0031】
一方、陰極8は、発光層6に電子を注入する電極である。
この陰極8の構成材料(陰極材料)としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
このような陰極材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
特に、陰極材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極材料として用いることにより、陰極8の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
陰極8の平均厚さは、特に限定されないが、100nm〜3000nm程度であるのが好ましく、500〜2000nm程度であるのがより好ましい。陰極8の厚さが薄すぎると、陰極8の機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極8が厚過ぎると、有機EL素子1の発光効率等の特性が低下するおそれがある。
【0033】
正孔輸送層5aは、陽極3から注入された正孔を、中間層5bまで輸送する機能を有するものである。また、中間層5bは、正孔輸送層5aから注入された正孔を、発光層6まで輸送する機能を有するものである。
すなわち、正孔輸送層5aと中間層5bは、陽極3から注入された正孔を、発光層6まで輸送する機能を有する2層構成の正孔輸送層ということもできる。
【0034】
この正孔輸送層5aの構成材料(正孔輸送材料)としては、各種の高分子材料や、各種の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
高分子の正孔輸送材料としては、例えば、ポリアリールアミンのようなアリールアミン骨格を有するもの、フルオレン−ビチオフェン共重合体のようなフルオレン骨格を有するもの、フルオレン−アリールアミン共重合体のようなアリールアミン骨格およびフルオレン骨格の双方を有するもの、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
【0035】
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることができる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
一方、低分子の正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTE、4,4’,4’’ −トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)のようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
【0036】
このような正孔輸送層5aの平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
中間層5bの構成材料としては、前述したような正孔輸送材料の他、分散剤52bが含まれるが、この分散剤52bについては後述する。
このような中間層5bの平均厚さは、特に限定されないが、1〜50nm程度であるのが好ましく、5〜15nm程度であるのがより好ましい。
【0037】
なお、正孔輸送層5aと中間層5bとに含まれる正孔輸送材料としては、前述したようなもののうち同一のもので構成されていてもよいし、異なるもので構成されていてもよい。
なお、陽極3と正孔輸送層5との間には、例えば、陽極3からの正孔注入効率を向上させる正孔注入層を設けるようにしてもよい。
【0038】
この正孔注入層の構成材料(正孔注入材料)としては、例えば、銅フタロシアニンや、4,4‘,4‘‘−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられる。
ここで、陽極3と陰極8との間に通電(電圧を印加)すると、正孔輸送層5aおよび中間層5b中を移動した正孔が発光層6に注入され、また、陰極8から電子が発光層6に注入され、この発光層6において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層6ではエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
【0039】
発光層6の構成材料(発光材料)としては、各種の高分子材料や、各種の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
【0040】
一方、低分子の発光材料としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体等が挙げられる。
【0041】
発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、陰極8と発光層6との間には、例えば、陰極8から注入された電子を発光層6まで輸送する機能を有する電子輸送層を設けるようにしてもよい。さらには、この電子輸送層と陰極8との間に、陰極8から電子輸送層への電子の注入効率を向上させる電子注入層を設けるようにしてもよい。
【0042】
電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレンのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセンのようなクリセン系化合物、ペリレンのようなペリレン系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエンのようなブタジエン系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、キノリンのようなキノリン系化合物、ビスチリルのようなビスチリル系化合物、ピラジン、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリンのようなキノキサリン系化合物、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノンのようなナフトキノン系化合物、アントラキノンのようなアントラキノン系化合物、オキサジアゾール、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、BMD、BND、BDD、BAPDのようなオキサジアゾール系化合物、トリアゾール、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロンのようなアントロン系化合物、フルオレノン、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、ジフェノキノン、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、スチルベンキノン、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられる。
【0043】
その他、電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、オキサジアゾール系高分子(ポリオキサジアゾール)、トリアゾール系高分子(ポリトリアゾール)等の高分子系の材料を用いることもできる。
電子輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0044】
また、電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン、オキサジアゾール、または、これらの誘導体(例えば、8−ヒドロキシキノリンを含む金属キレートオキシノイド化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて(例えば、複数層の積層体等として)用いることができる他、各種の無機絶縁材料や、各種の無機半導体材料等を用いることができる。
【0045】
無機絶縁材料や無機半導体材料を主材料として電子注入層を構成することにより、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることや、耐久性の向上を図ることができる。
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。
【0046】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0047】
また、無機半導体材料としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、このような無機材料で電子注入層を構成する場合、この無機材料は、微結晶または非晶質であることが好ましい。これにより、電子注入層は、より均質なものとなるため、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。
本実施形態の表示装置10は、TFT回路基板20上に、複数の有機EL素子1を形成した後、これらの有機EL素子1を介して、TFT回路基板20と上基板9とを接合することにより製造されるが、この有機EL素子1の形成に、本発明の有機半導体素子の製造方法が適用される。
【0048】
以下、表示装置10の製造方法について説明する。
[1]まず、TFT回路基板20を用意する。
[1−A]まず、基板21を用意し、基板21上に、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約200〜500nmの酸化シリコンを主材料として構成される下地保護層23を形成する。
【0049】
[1−B]次に、下地保護層23上に、駆動用TFT24を形成する。
[1−Ba]まず、基板21を約350℃に加熱した状態で、下地保護層23上に、例えばプラズマCVD法等により、平均厚さが約30〜70nmのアモルファスシリコンを主材料として構成される半導体膜を形成する。
[1−Bb]次いで、半導体膜に対して、レーザアニールまたは固相成長法等により結晶化処理を行い、アモルファスシリコンをポリシリコンに変化させる。
ここで、レーザアニール法では、例えば、エキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cm程度に設定される。また、ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0050】
[1−Bc]次いで、半導体膜をパターニングして島状とし、各島状の半導体膜241を覆うように、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約60〜150nmの酸化シリコンまたは窒化シリコン等を主材料として構成されるゲート絶縁層242を形成する。
[1−Bd]次いで、ゲート絶縁層上に、例えば、スパッタ法等により、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を主材料として構成される導電膜を形成した後、パターニングし、ゲート電極243を形成する。
[1−Be]次いで、この状態で、高濃度のリンイオンを打ち込んで、ゲート電極243に対して自己整合的にソース・ドレイン領域を形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。
【0051】
[1−C]次に、駆動用TFT24に電気的に接続されるソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
[1−Ca]まず、ゲート電極243を覆うように、第1層間絶縁層25を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Cb]次いで、コンタクトホール内にソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
【0052】
[1−D]次に、ドレイン電極245と陽極3とを電気的に接続する配線(中継電極)27を形成する。
[1−Da]まず、第1層間絶縁層25上に、第2層間絶縁層26を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Db]次いで、コンタクトホール内に配線27を形成する。
以上のようにして、TFT回路基板20が得られる。
【0053】
[2]次に、TFT回路基板20上に有機EL素子1を形成する。
前述したように、この有機EL素子1の形成に本発明の有機半導体素子の製造方法が適用され、第1の有機半導体層、第2の有機半導体層および、これら第1の有機半導体層と第2の有機半導体層との間に中間層が形成されるが、本実施形態では、第1の有機半導体層により正孔輸送層5aが構成され、第2の有機半導体層により発光層6が構成されることとなる。また、中間層5bが正孔を輸送する機能を発揮することとなる。
【0054】
本発明の有機半導体素子の製造方法を適用して、かかる構成の正孔輸送層5a、中間層5bおよび発光層6を形成することにより、正孔輸送層5aと中間層5bとの界面付近、さらには、発光層6と中間層5bとの界面付近において、これらの構成材料同士が混ざり合うのを確実に防止することができることから、正孔輸送層5aと中間層5bとの界面、および、発光層6と中間層5bとの界面を均一なものとすることができる。
以下、この有機EL素子(有機半導体素子)1の製造方法について説明する。
【0055】
[2−A]まず、図2(a)に示すように、TFT回路基板20が備える第2層間絶縁層26上に、配線27に接触するように陽極(画素電極)3を形成する。
この陽極3は、ゲート電極243と同様にして形成することができる。
[2−B]次に、図2(b)に示すように、第2層間絶縁層26上に、各陽極3を区画するように、隔壁部31を形成する。
【0056】
隔壁部31は、陽極3および第2層間絶縁膜26を覆うように絶縁膜を形成した後、フォトリソグラフィー法等を用いてパターニングすること等により形成することができる。
絶縁膜(隔壁部31)の構成材料は、耐熱性、撥液性、インク溶剤耐性、下地層との密着性等を考慮して選択される。
このような材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂のような有機材料や、SiOのような無機材料が挙げられる。
【0057】
特に、陽極3が酸化物材料を主材料として構成される場合には、隔壁部31の構成材料としては、SiOを用いるのが好ましい。これにより、陽極3と隔壁部31との密着性の向上を図ることができる。
また、撥液性を示す隔壁部31は、例えば、フッ素系樹脂を用いて形成することや、隔壁部31の表面にフッ素プラズマ処理を施すこと等により得ることができる。
また、隔壁部31の開口の形状は、例えば、円形、楕円形、四角形、六角形等の多角形等、いかなるものであってもよい。
【0058】
なお、隔壁部31の開口の形状を多角形とする場合には、角部は丸みを帯びているのが好ましい。これにより、正孔輸送層5および発光層6を、後述するような、第1の液状材料および第2の液状材料を用いて形成する際に、これらの液状材料を、隔壁部31の内側の空間の隅々にまで確実に供給することができる。
このような隔壁部31の高さは、陽極3、正孔輸送層5および発光層6の合計の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、30〜500nm程度とするのが好ましい。かかる高さとすることにより、十分に隔壁(バンク)としての機能が発揮される。
【0059】
[2−C]次に、図2(c)に示すように、各陽極3上に、それぞれ、正孔輸送層5a、中間層5bおよび発光層6がこの順で積層されるように一括して形成する。
以下、この過程を、図3および図4を参照しつつ説明する。
[2−Ca]まず、第1の液体に前述した正孔輸送材料(第1の有機半導体材料)を溶解または分散した正孔輸送層形成用材料(第1の液状材料)と、この第1の液体と同種の第2の液体に、前述した発光材料(第2の有機半導体材料)を溶解または分散した第2の液状材料と、これら第1の液体および第2の液体と実質的に相溶しない第3の液体に、正孔輸送材料(第1の有機半導体材料)と同種の第3の有機半導体材料を溶解または分散した第3の液状材料とを用意する(第1の工程)。
ここで、第1の液体と第2の液体とは、同種または同一のものが選択され、第3の液体は、第1の液体と第2の液体との双方に実質的に相溶しないものが選択される。
【0060】
このような第1の液体、第2の液体および第3の液体の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば、第3の液体として極性溶媒を用いた場合には、第1の液体および第2の液体として、第3の液体(極性溶媒)よりも極性の低い溶媒を選択するようにすればよい。第1の液体、第2の液体および第3の液体を、このような組み合わせとすることにより、第3の液体と第1の液体とが、さらには、第3の液体と第2の液体とが相溶するのを的確に防止または抑制することができる。
【0061】
極性溶媒としては、例えば、水、二硫化炭素、エチレンカーボネイト等の各種無機溶媒や、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、アセトン、ホルムアルデヒドなどのカルボニル系溶媒、エチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、ピペリジン等のアミン系溶媒等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
また、このような極性溶媒の内、第3の液体として、水を選択した場合には、第1の液体および第2の液体としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、ペンタクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノンの脂肪族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル等のエステル系溶媒、1−ペンタノール、フェノール等のアルコール系溶媒を用いることができる。これにより、第3の液体と第1の液体とが、さらには、第3の液体と第2の液体とが相溶するのを的確に防止または抑制することができる。
以下では、第3の液体として水を用い、第1の液体および第2の液体として、上述したようなハロゲン化合物系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族系溶媒およびエステル系溶媒のうちのいずれかを用いる場合を代表に説明する。
【0063】
<<第1の液状材料>>
第1の液体としては、ハロゲン化合物系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族系溶媒およびエステル系溶媒のうちのいずれかが選択されるが、通常、正孔輸送材料(第1の有機半導体材料)の溶解度の高いものが好適に用いられる。
また、正孔輸送層形成用材料中における正孔輸送材料51aの含有率は、20〜2wt%/vol程度であるのが好ましく、10〜5wt%/vol程度であるのがより好ましい。正孔輸送材料51aの含有率が少な過ぎると、その分、第1の液体の割合が多くなるため、後工程[2−Ce]において第1の液体の除去に長時間を要し、製造効率の低下を招くおそれがある。一方、正孔輸送材料51aの含有率が多過ぎると、第1の液体中に正孔輸送材料51aを均一に溶解させるのが困難になるおそれがある。
【0064】
<<第2の液状材料>>
次に、第2の液体としても、ハロゲン化合物系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族系溶媒およびエステル系溶媒のうちのいずれかが選択されるが、通常、発光材料(第2の有機半導体材料)の溶解度の高いものが好適に用いられる。なおこの第2の液体は、第1の液体と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0065】
さらに、第2の液体としては、第3の液体(水)の沸点をA[℃]とし、第2の液体の沸点をB[℃]としたとき、|A−B|が、好ましくは75以下なる関係を満足するものが、より好ましくは50以下なる関係を満足するものが選択される。第3の液体(水)の沸点と第2の液体の沸点の差をできるだけ小さく設定することにより、後工程[2−Ce]において、第2の液体と第3の液体とをほぼ同時に除去することができることから、二層分離を行うことの効果が確実に得られ、形成される中間層5bと発光層6との界面付近で正孔輸送材料51bと発光材料61とが混ざり合うのを的確に防止または抑制することができる。一方、第3の液体(水)の沸点と第2の液体の沸点の差が大き過ぎると、後工程[2−Ce]において沸点が高い方の液体の除去に長時間を要し、製造効率の低下を招くおそれがある。
【0066】
また、発光層形成用材料中における発光材料61の含有率は、20〜1wt%/vol程度であるのが好ましく、8〜2wt%/vol程度であるのがより好ましい。発光材料61の含有率が少な過ぎると、その分、第2の液体の割合が多くなるため、後工程[2−Ce]において第2の液体の除去に長時間を要し、製造効率の低下を招くおそれがある。一方、発光材料61の含有率が多過ぎると、第2の液体に均一に発光材料61を溶解させるのが困難になるおそれがある。
【0067】
<<第3の液状材料>>
ここで、極性溶媒(第3の液体)として水を用いる場合には、通常、中間層形成用材料(第3の液状材料)は、前述したような正孔輸送材料(第1の有機半導体材料と同種のもの)51bを第3の液体中に分散させることにより得られる。
このような中間層形成用材料中には、本実施形態のように、正孔輸送材料の水(第3の液体)中への分散性を向上させる分散剤52bが含まれているのが好ましい。これにより、図3(b)に示すように、正孔輸送材料51bを分散剤52bで取り囲むことにより得られるミセル55bが水中において形成されることから、正孔輸送材料51bを水中に確実に分散させることができる。
【0068】
なお、このような分散剤52bを含有させることにより得られる分散液(第3の液状材料)としては、例えば、懸濁液(サスペンジョン)や乳化液(エマルジョン、乳濁液、乳状液)等が挙げられるが、これらのうちのいずれであってもよい。
このような分散剤52bとしては、例えば、非イオン系(ノニオン系)分散剤、アニオン系分散剤、カチオン系分散剤、両性分散剤等が挙げられる。
【0069】
非イオン系(ノニオン系)分散剤としては、例えば、エーテル系分散剤、エステル系分散剤、エーテルエステル系分散剤、アルキルアミン系分散剤、含窒素系分散剤等が挙げられる。
アニオン系分散剤としては、例えば、各種ロジン、各種カルボン酸塩、各種硫酸エステル塩、各種スルホン酸塩、各種リン酸エステル塩等が挙げられる。
【0070】
カチオン系分散剤としては、例えば、1級アンモニウム塩、2級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩等の各種アンモニウム塩等が挙げられる。
両性分散剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン等の各種ベタイン、各種アミノカルボン酸、各種リン酸エステル塩等が挙げられる。
これらの中でも、分散剤52bとしては、カチオン系分散剤または非イオン系分散剤を用いるのが好ましい。これにより、中間層5b中に残存する分散剤52bにより、中間層5b中を移動する正孔が捕捉(トラップ)されるのを確実に防止でき、中間層5b中の正孔を発光層6まで確実に輸送することができる。
【0071】
中間層形成用材料中における正孔輸送材料51bと分散剤52bとの混合比は、重量比で10:1〜50:1程度であるのが好ましく、20:1〜40:1程度であるのがより好ましい。これにより、水中においてより適切な大きさのミセル55bが形成されることから、水(第3の液体)中に正孔輸送材料51bをより確実に分散させることができる。
また、中間層形成用材料中における正孔輸送材料51bと分散剤52bとの合計の含有率は、20〜1%wt/vol程度であるのが好ましく、10〜2%wt/vol程度であるのがより好ましい。正孔輸送材料51bと分散剤52bとの合計の含有率が少な過ぎると、その分、水(第3の液体)の割合が多くなるため、後工程[2−Ce]において水の除去に長時間を要し、製造効率の低下を招くおそれがある。一方、正孔輸送材料51bと分散剤52bとの合計の含有率が多過ぎると、ミセル55bを形成することができず、第3の液体中に正孔輸送材料51bを均一に分散させるのが困難になるおそれがある。
【0072】
[2−Cb]次に、図3(a)に示すように、隔壁部31内に露出するTFT回路基板20上に形成された陽極3上に、正孔輸送層形成用材料(第1の液状材料)を供給して第1の液状被膜5a’を形成する(第2の工程)。
正孔輸送層形成用材料(第1の液状材料)を供給する方法としては、例えば、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法のような各種塗布法が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、陽極3上に正孔輸送層形成用材料を液滴として供給し得る方法を選択するのが好ましい。これにより、正孔輸送層形成用材料を、隔壁部31の内に選択的に供給することができるため、正孔輸送層形成用材料のムダを省くことができる。
具体的には、正孔輸送層形成用材料を液滴として供給し得る方法としては、例えば、インクジェット法(液滴吐出法)が挙げられる。インクジェット法を用いることにより、隔壁部31内に供給する正孔輸送層形成用材料の量を比較的容易に制御することができることから、後工程[2−Ce]において形成される正孔輸送層5aの薄膜化、画素サイズの微小化を図ることができる。
【0074】
[2−Cc]次に、図3(b)に示すように、第1の液状被膜5a’が固化に至らない状態で、隔壁部31内に露出する第1の液状被膜5a’上に、中間層形成用材料(第3の液状材料)を供給して第3の液状被膜5b’を形成する(第3の工程)。
前述したように、第1の液体と第3の液体とは、実質的に相溶しないものが選択されていることから、第1の液状被膜5a’と第3の液状被膜5b’とが混ざり合う(界面が乱れる)ようになるのを防止して、第1の液状被膜5a’と第3の液状被膜5b’とを確実に形成することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、中間層形成用材料(第3の液状材料)中に分散剤52bが含まれていることから、図3(b)に示すように、この分散剤52bが第1の液状被膜5a’と第3の液状被膜5b’との界面に配列することとなる。その結果、この界面において、正孔輸送層形成用材料と中間層形成用材料とが反発し合うのを確実に防止して、第1の液状被膜5a’と第3の液状被膜5b’との界面を均一なものとすることができる。
【0076】
また、正孔輸送材料51aの正孔輸送層形成用材料側への移行およびミセル55bすなわち正孔輸送材料51bの中間層形成用材料側への移行を防止するバリア層としての機能を分散剤52bに発揮させることができる。これにより、次工程[2−Ce]で形成される正孔輸送層5aと中間層5bとの界面をより均一なものとすることができる。
この第3の液状材料を供給する方法としても、各種塗布法を用いることができるが、前述したのと同様の理由から、第1の液状被膜5a’上に中間層形成用材料を液滴として供給し得る方法を選択するのが好ましい。
【0077】
なお、本明細書中において、「第1の液状被膜5a’が固化に至らない状態」とは、第1の液状被膜5a’中に含まれる第1の液体が、完全に除去されていない状態すなわち第1の液状被膜5a’が完全に固化していない状態をさし、半固化状態のものを含むものとする。ただし、第1の液状材料を供給して第1の液状被膜5a’が形成された後、第1の液体の揮発により、正孔輸送材料(第1の有機半導体材料)51aの濃度が、好ましくは50%、より好ましくは20%上昇するまでの間に中間層形成用材料(第3の液状材料)を供給するようにすればよい。これにより、正孔輸送層5aと中間層5bとを一括して形成する際に得られる効果を顕著に発揮させることができる。
【0078】
[2−Cd]次に、図3(c)に示すように、第1の液状被膜5a’および第3の液状被膜5b’が固化に至らない状態で、隔壁部31内に露出する第3の液状被膜5b’上に、発光層形成用材料(第2の液状材料)を供給して第2の液状被膜6’を形成する(第4の工程)。
また、前述したように、第3の液体と第2の液体とは、実質的に相溶しないものが選択されていることから、第3の液状被膜5b’と第2の液状被膜6’とが混ざり合う(界面が乱れる)ようになるのを防止して、第3の液状被膜5b’と第2の液状被膜6’とを確実に形成することができる。
【0079】
さらに、本実施形態では、前述したように、中間層形成用材料(第3の液状材料)中に分散剤52bが含まれていることから、第3の液状被膜5b’と第2の液状被膜6’との界面を均一なものとすることができる。また、ミセル55bすなわち正孔輸送材料51bの発光層形成用材料側への移行および発光材料61の中間層形成用材料側への移行を防止するバリア層としての機能を分散剤52bに発揮させることができる。これにより、次工程[2−Ce]で形成される中間層5bと発光層6との界面がより均一なものとなる。
【0080】
この第2の液状材料を供給する方法としても、各種塗布法を用いることができるが、前述したのと同様の理由から、第3の液状被膜5b’上に発光層形成用材料を液滴として供給し得る方法を選択するのが好ましい。また、発光層形成用材料を液滴として供給することにより、複数色の発光層6を設ける場合には、各色毎にパターンの塗り分けを容易に行うことができるという利点もある。
なお、本明細書中において、「第3の液状被膜5b’が固化に至らない状態」とは、前述した「第1の液状被膜5a’が固化に至らない状態」と同様に取り扱うこととする。
【0081】
[2−Ce]次に、第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’から、第1の液体、第3の液体および第2の液体を除去して、これらの被膜を固化させることにより、正孔輸送層(第1の有機半導体層)5a、中間層5bおよび発光層(第2の有機半導体層)6をこの順で一括して形成する(第5の工程)。
なお、第1の液体、第3の液体および第2の液体の除去は、図3(d)に示すように、第2の液状被膜6’に平板65を接触させ、次いで、第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’が層状となるように、平板65とTFT回路基板20との離間距離を規定した(接近させた)状態で行うのが好ましい。これにより、各被膜は、その厚さがほぼ均一なものとなった状態で、第1の液体、第3の液体および第2の液体の除去が行われることから、図3(e)に示すように、形成される正孔輸送層5a、中間層5bおよび発光層6の膜厚もほぼ均一なものとなる。
【0082】
平板65の構成材料としては、上基板9の構成材料で説明したのと同様のものを用いることができる。
また、平板65は、第2の液状被膜6’すなわち発光層形成用材料と接触させる面に撥液性を有するものであるのが好ましい。これにより、本工程において、正孔輸送層5および発光層6を一括して形成した後に、図3(f)に示すように、平板65を発光層6から容易に除去する(離脱させる)ことができる。
【0083】
平板65に撥液性を付与する方法としては、各種の方法を用いることができるが、例えば、発光層形成用材料と接触させる面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系の樹脂材料や撥液性を有するシラン系カップリング剤等で構成される撥液膜を形成する方法等が挙げられる。
このように第1の液状被膜5a’の膜厚、第3の液状被膜5b’の膜厚および第2の液状被膜6’の膜厚がほぼ均一となった状態で、第1の液体、第3の液体および第2の液体をそれぞれの被膜から除去する。ここで、前述したように、第1の液体および第2の液体は、第3の液体と実質的に相溶しないものが選択されていることから、この状態を維持したまま、正孔輸送層5a、中間層5bおよび発光層6が形成されることとなる。すなわち、第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’の界面が均一に形成されていることから、これらの液状被膜から溶媒または分散媒を除去することにより得られる正孔輸送層5a、中間層5bおよび発光層6の界面も均一なものとなる。その結果、中間層5bを介した正孔輸送層5aから発光層6への正孔の受け渡しが円滑に行われるようになり、得られる有機EL素子1は、優れた発光効率等の特性を発揮するものとなる。
【0084】
さらに、本実施形態では、中間層形成用材料として正孔輸送材料51aと分散剤52bとで構成されるミセル55bを水中に分散させた分散液を用い、正孔輸送層形成用材料として正孔輸送材料51aを水よりも極性の低い溶媒中に溶解させた溶液を用い、発光層形成用材料として発光材料61を水よりも極性の低い溶媒中に溶解させた溶液を用いる構成となっている。この場合、ミセル55bは、分散剤52bに含まれる極性基を外側に向けた状態で存在している。そのため、ミセル55bが、水よりも極性の低い溶媒により構成されている第1の液状被膜5a’および第2の液状被膜6’側に移行することを好適に阻害することができる。
【0085】
また、正孔輸送材料51aおよび発光材料61は、水よりも極性の低い溶媒中に溶解した状態で存在している。このような安定な状態から、正孔輸送材料51aおよび発光材料61を水中に分散させるというより不安定な状態に移行させるには、より多くのエネルギーを必要とする。そのため、正孔輸送材料51aおよび発光材料61が、水(プロトン性の極性溶媒)を分散媒として構成されている第3の液状被膜5b’側に移行することを好適に阻害することができる。
以上のことから、第3の液状被膜5b’は、第1の液状被膜5a’と第2の液状被膜6’が相溶するのを防止するバリア層と考えることもできる。
【0086】
また、第3の液体(水)、第1の液体および第2の液体を除去する方法としては、特に限定されず、自然乾燥により行うものであってもよいが、第1の液状被膜(第1の液状材料)5a’、第3の液状被膜(第3の液状材料)5b’および第2の液状被膜(第2の液状材料)6’を加熱および/または減圧することにより行うものであるのが好ましい。これにより、正孔輸送材料51aと発光材料61とが第3の液状被膜5b’側に、正孔輸送材料51bが第1の液状被膜5a’および第2の液状被膜6’側に不本意に拡散するのを的確に防止または抑制して、第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’を迅速に固化させることができる。また、製造工程の時間の短縮を図ることができるとともに、形成される中間層5bに分散剤52bが残存するようになるのを的確に防止または抑制することができる。
【0087】
この加熱の温度は、第1の有機半導体材料、第3の有機半導体材料および第2の有機半導体材料のうちのいずれかガラス転移温度(Tg)の低いものの温度か、または、そのガラス転移温度より低い温度とするのが好ましく、第1の有機半導体材料、第3の有機半導体材料、および第2の有機半導体材料によっても若干異なり、特に限定されないが、60〜200℃程度であるのが好ましく、90〜150℃程度であるのがより好ましい。
【0088】
また、減圧する際の雰囲気の圧力は、特に限定されないが、10〜10Pa程度であるのが好ましく、10〜10Pa程度であるのがより好ましい。
さらに、第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’を加熱および/または減圧する時間は、選択する第1の液体および第2の液体の種類によっても若干異なるが、10〜120分程度であるのが好ましく、30〜90分程度であるのがより好ましい。
【0089】
第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’を加熱および/または減圧する際の条件をかかる範囲内に設定することにより、第1の有機半導体材料、第3の有機半導体材料および第2の有機半導体材料の変質・劣化を確実に防止しつつ、正孔輸送材料51aおよび発光材料61が第3の液状被膜5b’側に、正孔輸送材料51bが第1の液状被膜5a’および第2の液状被膜6’側に不本意に拡散するのを的確に防止または抑制して、第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’を迅速に固化させることができる。
なお、第1の液体、第3の液体、第2の液体、第1の有機半導体材料、第3の有機半導体材料および第2の有機半導体材料と、第1の液状被膜5a’、第3の液状被膜5b’および第2の液状被膜6’を加熱および/または減圧する際の条件との関係は、実験的に予め求めておくことができる。
【0090】
[2−D]次に、図2(d)に示すように、各発光層6上および各隔壁部31上に、すなわち、各発光層6および各隔壁部31を覆うように、各共通の陰極8を形成する。
この陰極8は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等を用いた気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を用いた液相プロセス等で形成することができる。
【0091】
なお、これらの方法は、陰極8の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して選択される。
なお、本実施形態では、発光層6および隔壁部31の全面に、陰極8を形成することから、マスクを用いる必要がないため、これらの形成には、真空蒸着法を用いた気相プロセス等が好適に用いられる。
以上のようにして、有機EL素子1が製造される。
【0092】
なお、本実施形態では、本発明の有機半導体素子の製造方法により、有機EL素子1が備える正孔輸送層5aと発光層6とをこれらの間に正孔輸送能を有する中間層5bを介在させた状態で形成する場合について説明したが、このような場合に限定されず、例えば、有機EL素子1が前述したような電子輸送層を備える場合には、この電子輸送層と発光層6との間に電子輸送能を有する中間層を介在させた状態で形成する場合にも本発明の有機半導体素子の製造方法を適用することもできる。
また、第3の有機半導体材料は、本実施形態のように、第1の有機半導体材料と同種のものである場合の他、例えば、第2の有機半導体材料と同種のものであってもよいし、第1の有機半導体材料および第2の有機半導体材料と異種の導電性材料であってもよい。
【0093】
[3] 次に、上基板9を用意し、図2(e)に示すように、この上基板9により陰極8を覆うようにして、陰極8と上基板9とを接合する。
この陰極8と上基板9との接合は、陰極8と上基板9との間に、エポキシ系の接着剤を介在させた状態で、この接着剤を乾燥させること等により行うことができる。
この上基板9は、有機EL素子1を保護する保護基板としての機能を有する。このような上基板9を、陰極8上に設けることにより、有機EL素子1が酸素や水分に接触するのを防止または低減できることから、有機EL素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果を得ることができる。
以上のような工程を経て、表示装置10を製造することができる。
【0094】
なお、本発明の有機半導体素子の製造方法において、本実施形態のように、第3の有機半導体材料が第1の有機半導体材料と同種のものである場合、すなわち第1の有機半導体層と中間層とが同一の機能を発揮する場合、形成される第1の有機半導体層と第2の有機半導体層とは、いずれも有機半導体層、いずれも有機絶縁体層、いずれか一方が有機半導体層であり他方が有機絶縁体層である組み合わせが挙げられるが、特に、いずれも有機半導体層である場合への適用に適する。この場合において、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0095】
なお、いずれも有機半導体層である場合としては、本実施形態で説明した有機EL素子1のような発光素子の他、例えば、太陽電池のような光電変換素子に適用することができる。また、いずれか一方が有機半導体層であり他方が有機絶縁体層である場合としては、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)のようなスイッチング素子に適用することができる。
【0096】
<電子機器>
このような表示装置(本発明の有機半導体装置)10は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0097】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0098】
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0099】
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0100】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0101】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0102】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0103】
なお、本発明の電子機器は、図5のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図6の携帯電話機、図7のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0104】
以上、本発明の有機半導体素子の製造方法、有機半導体素子、有機半導体装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
また、本発明の有機半導体素子の製造方法は、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよい。
【実施例】
【0105】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.表示装置の製造
以下の各実施例および各比較例では、それぞれ、10個の表示装置を製造した。
(実施例1)
[正孔輸送層形成用材料の調製]
まず、正孔輸送材料として、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)(分子量:488)を用い、TPD2をキシレンに溶解させて、TPD2の5.0wt%キシレン溶液を調製して正孔輸送層形成用材料を得た。
【0106】
[中間層形成用材料の調製]
まず、正孔輸送材料として、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)(分子量:488)を用い、TPD2をキシレンに溶解させて、TPD2の5.0wt%キシレン溶液を調製した。
【0107】
次に、このTPD2の5.0wt%キシレン溶液に純水を容積比で1:2となるように加えた後、攪拌しつつ、TPD2に対して5.0wt%となるように、分散剤としてアルキルアミン系分散剤(ライオン社製、「エソミンS/25」)を滴下した。その後、ここで得られた混合物を100℃で30分間攪拌することにより、正孔輸送層形成用材料(エマルジョン)を調製した。
【0108】
[発光層形成用材料の調製]
発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)(重量平均分子量200000)を用い、このものをキシレン(沸点:144℃)に溶解させて、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)の0.1wt%キシレン溶液に調製して発光層形成用材料を得た。
【0109】
[表示装置の製造]
<1A> まず、平均厚さ5mmの透明なガラス基板を用意し、このガラス基板上に、前述したようにして回路部を形成した。
<2A> 次に、回路部上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法により、陽極(画素電極)を得た。
【0110】
<3A> 次に、各陽極の縁部を覆うように、ポリイミド(絶縁性の感光性樹脂)塗布した後、露光することにより、隔壁部を形成した。
<4A> 次に、隔壁部の内側に、インクジェット法により、ここで調製した正孔輸送層形成用材料を供給して、陽極上に、この正孔輸送層形成用材料で構成される液状被膜を形成した。
【0111】
<5A> 次に、隔壁部の内側に、インクジェット法により、ここで調製した中間層形成用材料を供給して、正孔輸送層形成用材料で構成される液状被膜上に、この中間層形成用材料で構成される液状被膜を形成した。
<6A> 次に、隔壁部の内側に、インクジェット法により、ここで調製した電子輸送層形成用材料を供給して、中間層形成用材料で構成される液状被膜上に、発光層形成用材料で構成される液状被膜を形成した。
【0112】
<7A> 次に、発光層形成用材料で構成される液状被膜上に、ポリテトラフルオロエチレンによる表面処理が施されたガラス製の平板を接触させた後、これらの液状被膜の膜厚が一定となるようにガラス製の平板をガラス基板側に接近させた。
<8A> 次に、ガラス製の平板側からヒータにより140℃×60分間、大気圧下の条件で加熱することにより、正孔輸送層形成用材料で構成される液状被膜、中間層形成用材料で構成される液状被膜および発光層形成用材料で構成される液状被膜を固化させた。これにより、陽極上に、平均厚さ60nmの正孔輸送層と、平均厚さ10nmの中間層と、平均厚さ60nmの発光層とを一括して形成した。
【0113】
<9A> 次に、隔壁部および発光層を覆うように、真空蒸着法により、Alを供給して、平均厚さ1500nmの陰極(共通電極)を形成した。
<10A> また、平均厚さ0.5mmのポリイミド基板を用意し、このポリイミド基板を陰極上に、エポキシ系の接着剤を介して接合することにより、図1に示すのと同様の表示装置を得た。
【0114】
(実施例2)
前記工程<8A>の加熱を、10Paの雰囲気下で行った以外は、前記実施例1と同様にして、表示装置を製造した。
(実施例3)
前記工程<8A>の加熱を、60℃×120分、大気圧下の条件に代えた以外は、前記実施例1と同様にして、表示装置を製造した。
【0115】
(実施例4)
正孔輸送層形成用材料および中間層形成用材料の調製に用いる正孔輸送材料として、TPD2に代えて、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)(重量平均分子量120,000)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、表示装置を製造した。
【0116】
(実施例5)
正孔輸送層形成用材料および発光層形成用材料の調製に用いる水よりも極性の低い溶媒として、キシレンに代えて、ジエチルエーテル(沸点:34.5℃)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、表示装置を製造した。
(実施例6)
中間層形成用材料の調製に用いる分散剤として、アルキルアミン系分散剤に代えて、ノニオン系分散剤の1種であるポリエチレングリコール(和光純薬社製、平均重合度n=10〜50)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、表示装置を製造した。
【0117】
(比較例1)
[正孔輸送層形成用材料の調製]
まず、正孔輸送材料として、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)(分子量:488)を用い、TPD2をキシレンに溶解させて、TPD2の5.0wt%キシレン溶液を調製して正孔輸送層形成用材料を得た。
【0118】
[発光層形成用材料の調製]
発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)(重量平均分子量200000)を用い、このものをキシレンに溶解させて、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)の0.1wt%キシレン溶液に調製して発光層形成用材料を得た。
【0119】
[表示装置の製造]
<1B> まず、平均厚さ5mmの透明なガラス基板を用意し、このガラス基板上に、前述したようにして回路部を形成した。
<2B> 次に、回路部上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法により、陽極(画素電極)を得た。
【0120】
<3B> 次に、各陽極の縁部を覆うように、ポリイミド(絶縁性の感光性樹脂)塗布した後、露光することにより、隔壁部を形成した。
<4B> 次に、隔壁部の内側に、インクジェット法により、ここで調製した正孔輸送層形成用材料を供給した後、乾燥して、陽極上に、平均厚さ70nmの正孔輸送層を形成した。
【0121】
<5B> 次に、隔壁部の内側に、インクジェット法により、ここで調製した電子輸送層形成用材料を供給した後、乾燥して、正孔輸送層上に、平均厚さ60nmの電子輸送層を形成した。
<6B> 次に、隔壁部および発光層を覆うように、真空蒸着法により、Alを供給して、平均厚さ1500nmの陰極(共通電極)を形成した。
<7B> また、平均厚さ0.5mmのポリイミド基板を用意し、このポリイミド基板を陰極上に、エポキシ系の接着剤を介して接合することにより、図1に示すのと同様の表示装置を得た。
【0122】
(比較例2)
[正孔輸送層形成用材料の調製]
まず、正孔輸送材料として、TPD2(分子量:488)を用い、光架橋剤としてポリエステルアクリレート化合物(東亞合成社製、「アロニックス M−8030」)を用いて、TPD2と、ポリエステルアクリレート化合物と、光ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)とを重量比で30:65:5の比率でジクロロエタンに混合して、正孔輸送層形成用材料を得た。
【0123】
[表示装置の製造]
前記工程<4B>を以下のように変更した以外は、前記比較例1と同様にして、表示装置を製造した。
<4B’> 次に、隔壁部の内側に、インクジェット法により、ここで調製した正孔輸送層形成用材料を供給した後、乾燥した。
その後、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、大気中で波長185nm、照射強度3mW/cmの紫外線を400秒間照射することにより、ポリエステルアクリレート化合物を架橋させて、平均厚さ70nmの正孔輸送層を形成した。
【0124】
(比較例3)
[正孔輸送層形成用材料の調製]
まず、正孔輸送材料として、下記化合物(A)を用い、化合物(A)と光ラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)とを重量比で95:5の比率でジクロロエタンに溶解させて、正孔輸送層形成用材料を得た。
[表示装置の製造]
ここで調製した正孔輸送層形成用材料を用いて、化合物(A)を重合反応させることにより、平均厚さ70nmの正孔輸送層を形成した以外は、前記比較例2と同様にして、表示装置を製造した。
【0125】
【化1】

【0126】
2.評価
各実施例および各比較例の表示装置が備える有機EL素子について、それぞれ、発光輝度(cd/m)、最大発光効率(lm/W)を測定すると共に、発光輝度が初期値の半分になる時間(半減期)を測定した。
なお、発光輝度の測定は、ITO電極とAlLi電極との間に6Vの電圧を印加することで行った。
そして、比較例1で測定された各測定値(発光輝度、最大発光効率、半減期)を基準値として、各実施例および各比較例で測定された各測定値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
【0127】
◎:比較例1の測定値に対し、1.50倍以上である
○:比較例1の測定値に対し、1.25倍以上、1.50倍未満である
△:比較例1の測定値に対し、1.00倍以上、1.25倍未満である
×:比較例1の測定値に対し、0.75倍以上、1.00倍未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表1に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
表1に示すように、各実施例の表示装置が備える有機EL素子は、いずれも、各比較例の表示装置が備える有機EL素子と比較して、発光輝度、最大発光効率および半減期ともに、優れた結果が得られた。
これにより、本発明の有機半導体素子は、正孔輸送層と中間層、および、発光層と中間層との界面付近における相溶解が好適に防止され、均一な界面が形成されていることが明らかとなった。
また、正孔輸送材料同士を重合反応させた場合や、正孔輸送材料を架橋剤により固定する場合に生じる、正孔輸送材料同士の相互作用の発生をも、中間層において、好適に抑制されていると推察された。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の有機半導体装置を適用したアクティブマトリクス型表示装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図(模式図)である。
【図4】図1に示すアクティブマトリクス型表示装置の製造方法を説明するための図(模式図)である。
【図5】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0131】
1……有機EL素子 3……陽極 5……正孔輸送層 5a……正孔輸送層(第1の有機半導体層) 5b……中間層 5a’……第1の液状被膜 5b’……第3の液状被膜 51a、51b……正孔輸送材料 52b……分散剤 55b……ミセル 6……発光層(第2の有機半導体層) 6’……第2の液状被膜 61……発光材料 65……平板 8……陰極 9……上基板 10……表示装置 20……TFT回路基板 21……基板 22……回路部 23……下地保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306…………シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、主として第1の有機半導体材料で構成される第1の有機半導体層と、主として前記第1の有機半導体材料と異種の第2の有機半導体材料で構成される第2の有機半導体層と、これらの間に、主として第3の有機半導体材料で構成される中間層とを積層してなる有機半導体素子を製造する有機半導体素子の製造方法であって、
第1の液体に前記第1の有機半導体材料を溶解または分散した第1の液状材料と、前記第1の液体と同種の第2の液体に前記第2の有機半導体材料を溶解または分散した第2の液状材料と、前記第1の液体および前記第2の液体と実質的に相溶しない第3の液体に前記第3の有機半導体材料を溶解または分散した第3の液状材料とを用意する第1の工程と、
前記基板上に、前記第1の液状材料を供給して第1の液状被膜を形成する第2の工程と、
前記第1の液状被膜が固化に至らない状態で、前記第1の液状被膜上に、前記第3の液状材料を供給して第3の液状被膜を形成する第3の工程と、
前記第1の液状被膜および第3の液状被膜が固化に至らない状態で、前記第3の液状被膜上に、前記第2の液状材料を供給して第2の液状被膜を形成する第4の工程と、
前記第1の液状被膜、第3の液状被膜および前記第2の液状被膜から前記第1の液体、前記第3の液体および前記第2の液体を除去することにより、これらの被膜を固化させて前記第1の半導体層、前記中間層および前記第2の半導体層を、この順で積層するように一括して形成する第5の工程とを有することを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程において、前記第3の液状材料は、液滴として前記第1の液状被膜上に供給される請求項1に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記第4の工程において、前記第2の液状材料は、液滴として前記第3の液状被膜上に供給される請求項1または2に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記第5の工程において、前記第1の液体、前記第3の液体および前記第2の液体の除去は、前記第2の液状被膜に平板を接触させ、次いで、前記第1の液状被膜、前記第3の液状被膜および前記第2の液状被膜が層状となるように、前記平板と前記基板との離間距離を規定した状態で行われる請求項1ないし3のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記平板は、前記第2の液状材料を接触させる面に撥液性を有する請求項4に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記第5の工程において、前記第1の液体、前記第3の液体および前記第2の液体は、前記第1の液状材料、前記第3の液状材料および前記第2の液状材料を加熱および/または減圧することにより除去される請求項1ないし5のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記第3の液体は、極性溶媒であり、前記第1の液体および前記第2の液体は、前記極性溶媒よりも極性の低い溶媒である請求項1ないし6のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記第3の液状材料は、前記第3の有機半導体材料の前記第3の液体中への分散性を向上させる分散剤を含んでいる請求項7に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第3の液状材料中における前記第3の有機半導体材料と前記分散剤との混合比は、重量比で10:1〜50:1である請求項8に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記第3の有機半導体材料は、前記第1の有機半導体材料と同種である請求項1ないし9のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記第2の液体の沸点をA[℃]とし、前記第3の液体の沸点をB[℃]としたとき、A−Bの絶対値が75以下なる関係を満足する請求項10に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記中間層は、その膜厚が前記第1の有機半導体層の膜厚と前記第2の有機半導体層の膜厚との双方よりも薄くなるように形成される請求項10または11に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記有機半導体素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であり、
前記第1の有機半導体層および前記中間層は、正孔輸送層の少なくとも一部を構成し、前記第2の有機半導体層は、発光層の少なくとも一部を構成する請求項12に記載の有機半導体素子の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の有機半導体素子の製造方法により製造されたことを特徴とする有機半導体素子。
【請求項15】
請求項14に記載の有機半導体素子を備えることを特徴とする有機半導体装置。
【請求項16】
請求項15に記載の有機半導体装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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