説明

有機圧電材料、有機圧電体膜の製造方法、超音波振動子、及び超音波探触子

【課題】圧電特性に優れ、熱や機械刺激を電気エネルギーに変換するために用いることができる圧電性や焦電性を持つ有機圧電材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物であることを特徴とする有機圧電材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロモノマー用いて形成された有機圧電材料に関する。詳しくは、例えば、マイクロホン、スピーカー用の振動板等の音響機器、各種熱センサー、圧力センサー、赤外性検出器等の測定機器、超音波探蝕子、遺伝子やタンパク等の変異を高感度に検出する振動センサー等、熱や機械刺激を電気エネルギーに変換するために用いることができる圧電性や焦電性を持つ有機圧電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
圧焦電体としては、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した、いわゆる無機圧電材料が広く利用されている。しかしながら、これら無機材質の圧電材料は、弾性スティフネスが高く、機械的損失係数が高い、密度が高く誘電率も高いなどの特徴を持っている。
【0003】
一方でポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」と略す。)、ポリシアノビニリデン(以下「PVDCN」と略す。)等の有機圧電材料も開発されている(特許文献1参照)。この有機圧電材料は、薄膜化、大面積化等の加工性に優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、センサーとしての使用を考えたときに、高感度な検出を可能とする特徴を持っている。一方で有機圧電材料は、耐熱性が低く高い温度ではその圧焦電特性を失うほか、弾性スティフネスなどの物性も大きく減じるため使用できる温度域に限界があった。
【0004】
このような限界に対して、ウレイン基から構成されるポリウレア樹脂含有組成物は、ウレイン基の双極子モーメントが大きく、樹脂としての温度特性に優れるため、有機圧電材料として種々の検討が行われてきた。例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のようなジイソシアネート化合物と4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)のようなジアミン化合物を同時に蒸発させてポリ尿素膜を形成する、いわゆる蒸着重合法が開示されている(特許文献2及び特許文献3参照)。しかしながら、蒸着重合法では、蒸着重合に使用可能な原料は限られており、複数の原料を用いた場合、反応性の制御が困難である等の課題があった。
【0005】
一方、ポリウレア樹脂含有組成物を溶液で重合した場合、重合度のコントロールが困難であり、生成した樹脂組成物は剛直性が高く、強固な樹脂となってしまうため、膜物性や取り扱い性の改善が求められていた。又、3種以上の原料を用いて樹脂組成物に重合した場合、各原料の反応性が異なるため、所望の組成を有する樹脂組成物を得ることは困難であった。これらを改善するために、ポリウレア樹脂含有組成物の分子鎖中にウレタン結合を導入し、且つ、定序性を持たせる検討が行われてきた(特許文献4)。しかしながら、特許文献に記載の樹脂組成物を超音波振動子又は超音波探触子に用いた場合、圧電特性が十分でなく、更なる圧電特性の向上が求められていた。
【特許文献1】特開平6−216422号公報
【特許文献2】特開平2−284485号公報
【特許文献3】特開平5−311399号公報
【特許文献4】特開2003−238648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、圧電特性に優れ、熱や機械刺激を電気エネルギーに変換するために用いることができる圧電性や焦電性を持つ有機圧電材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
【0008】
1.下記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物であることを特徴とする有機圧電材料。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Lは、アルキレン基又はアリーレン基を表す。Lは、単なる結合種、アルキレンオキシ基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Xは、酸素原子又は窒素原子を表し、窒素原子は、置換基を有していても良い。)
2.前記1に記載の有機圧電材料を用いた有機圧電体膜の製造方法であって、当該有機圧電材料を基板上に塗布することを特徴とする有機圧電体膜の製造方法。
【0011】
3.前記1に記載の有機圧電材料を用いたことを特徴とする超音波振動子。
【0012】
4.超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子であって、前記1に記載の有機圧電材料を用いた超音波振動子を超音波受信用振動子として具備したことを特徴とする超音波探触子。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記手段により、優れた圧電性を有する有機圧電体膜を形成するための有機圧電材料とその製造方法を提供することができる。また、当該有機圧電材料を用いて形成された有機圧電体膜を用いた超音波振動子及び超音波探触子を提供することができる。
【0014】
すなわち、本発明に係る部分構造を樹脂組成物に導入することにより、圧電特性を損なうことなく、樹脂組成物の溶解性や剛直性を改善することできる。
【0015】
なお、本発明の有機圧電材料を用いて、焦電性においても優れている有機圧電体膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の有機圧電材料は、前記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物(以下「樹脂組成物」ともいう。)であることを特徴とする。この特徴は、請求項1〜4に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0017】
本発明の有機圧電材料を用いた有機圧電体膜の製造方法としては、当該有機圧電材料を基板上に塗布する態様の製造方法であることが好ましい。また、当該有機圧電材料は、有機圧電体膜として、超音波振動子、更には超音波探触子に好適に用いることができる。
【0018】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態・態様について詳細な説明をする。
【0019】
(一般式(1)で表される部分構造)
本発明の本発明の有機圧電材料は、前記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物であることを特徴とする。
【0020】
本発明の実施態様としては、前記一般式(1)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリール基(フェニル基等)、シアノ基、ヒドロキシル基等を挙げることができる。好ましくは、水素原子、又はアルキル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0021】
nは1〜3の整数を表し、好ましくはnが1の場合である。
【0022】
、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等を挙げることが出来る。又、R及びR4は、互いに結合して環構造を形成していても良い。好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基又はプロピル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0023】
及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等を挙げることが出来る。好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はプロピル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0024】
は、アルキレン基又はアリーレン基を表す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。
【0025】
は、単なる結合種、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。ここで、「単なる結合種」とは、当該一般式(1)におけるLの左右の結合が直接的に連結していることをいう。
【0026】
アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。アラルキレン基としては、例えば、ベンジレン基、フェネチレン基等を挙げることができる。
【0027】
及びLは、各々独立に、置換基を有していても良く、置換基としては、前記R及びRで挙げた置換基を挙げることが出来る。
【0028】
好ましくは、Lがアルキレン基、Lが単なる結合種又はアリーレン基の場合であり、更に好ましくは、Lがアルキレン基及びLが単なる結合種の場合である。
【0029】
は、酸素原子又は窒素原子を表し、好ましくは窒素原子である。窒素原子は置換基を有していても良い。置換基としては、前記R及びRで挙げた置換基を挙げることができ、好ましくは、水素原子又はアルキル基である。
【0030】
前記一般式(1)で表される部分構造は、下記一般式(2)で表される化合物と下記一般式(3)で表される化合物を反応させた後、活性水素を有する化合物又はイソシアナート基を有する化合物を反応させることにより形成することが出来る。
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、R及びRは、前記一般式(1)のR及びRと同義である。nは、前記一般式(1)のnと同義である。R及びRは、前記一般式(1)のR及びRと同義である。Aは、イソシアナート基又はアミノ基を表す。mは0又は1を表し、Aがイソシアナート基の場合、mは0を表す。)
前記一般式(2)で表される化合物の炭素原子に結合したAは、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であった得も良い。前記一般式(2)で表される化合物としては、Aがイソシアナート基の場合、例えば、イソシアナトベンジルイソシアナート、イソシアナトフェネチルイソシアナート、α−(イソシアナトフェニル)−エチルイソシアナート等が挙げられる。A1がアミノ基の場合、例えば、アミノベンジルアミン、2−(4−アミノフェニル)エチルアミン等が挙げられるが、好ましくは、イソシアナトベンジルイソシアナート又はイソシアナトフェネチルイソシアナートであり、更に好ましくは、イソシアナトベンジルイソシアナートである。
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、R及びRは、前記一般式(1)のR及びRと同義である。L及びLは、前記一般式(1)のL及びLと同義である。R5及びRは、前記一般式(1)のR及びRと同義である。Bは、イソシアナート基又はアミノ基を表す。rは0又は1を表し、B1がイソシアナート基の場合、rは0を表す。)
前記一般式(3)で表される化合物としては、Bがアミノ基の場合、例えば、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、ジエチレングリコール−ビス(3−アミノプロピル)エーテル、m−キシリレンジアミン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ピペラジン等が挙げられる。
【0035】
がイソシアナート基の場合、例えば、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物を反応させた後、更に反応させる活性水素を有する化合物としては、分子内にアミノ基を2つ以上有するポリアミン、分子内に水酸基を2つ以上有するポリオール又はアミノアルコールが挙げられる。
【0037】
ポリアミンとして、例えば、前記一般式(2)及び(3)で挙げたジアミンの他に、2,7−ジアミノ−9H−フルオレン、3,6−ジアミノアクリジン、アクリフラビン、アクリジンイエロー、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4−(フェニルジアゼニル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,8−ジアミノナフタレン等を挙げることが出来る。
【0038】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられるが、圧電特性を低下させないために、総炭素数10以下のポリオールが好ましい。
【0039】
アミノアルコールとしては、例えば、アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノ−2−プロパノール等を挙げることができる。
【0040】
前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物を反応させた後、更に反応させるイソシアナート基を有する化合物としては、分子内にイソシアナート基を2つ以上有するポリイソシアナートが挙げられる。
【0041】
ポリイソシアナートとして、例えば、前記一般式(2)及び(3)で挙げたジイソシアナートの他に、9H−フルオレン−2,7−ジイソシアネート、9H−フルオレン−9−オン−2,7−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3−フェニレン−ジイソシアナート、トリレン−2,4−ジイソシアナート、トリレン−2,6−ジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5−ジイソシアナトナフタレン等が挙げられる。
【0042】
以下、前記一般式(1)で表される部分構造の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
(前記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物の製造方法)
本発明に係る樹脂含有組成物は、前記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂であることを特徴とするが、当該組成物には、当該樹脂のほかに、原料物質や、特別な機能を付与するための添加剤等を含有していてもよい。
【0051】
以下、特別な添加剤を含有していない組成物の製造方法について説明する。
【0052】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物は、前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物を反応させた後、活性水素を有する化合物を反応させることによって得られる。
【0053】
前記一般式(3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が同一の場合、原料となるモノマーの添加順に制限は無く、前記一般式(2)で表される化合物に対して前記一般式(3)で表される化合物を添加しても良く、添加順が逆の場合でも良い。前記一般式(2)に対する前記一般式(3)の使用量は、0.8〜1.2倍モルが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.1倍モルであり、特に好ましくは1.0倍モルである。
【0054】
前記一般式(3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が異なる場合、前記一般式(2)で表される化合物に対して前記一般式(3)で表される化合物を添加した後、活性水素を有する化合物を添加しても良く、前記一般式(3)で表される化合物と活性水素を有する化合物を混合して、前記一般式(2)で表される化合物に添加しても良い。前記一般式(2)に対する前記一般式(3)の使用量は、0.4〜0.6倍モルが好ましく、更に好ましくは0.45〜0.55倍モルであり、特に好ましくは0.49〜0.51倍モルである。前記一般式(2)に対する活性水素を有する化合物の使用量は、0.4〜0.6倍モルが好ましく、更に好ましくは0.45〜0.55倍モルであり、特に好ましくは0.49〜0.51倍モルである。
【0055】
前記一般式(3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が同一の場合、反応温度に制限は無いが、0℃〜100℃が好ましく、更に好ましくは10℃〜80℃である。更に好ましくは、20℃〜70℃である。
【0056】
前記一般式(3)で表される化合物と活性水素を有する化合物が異なる場合、反応温度は、−40〜60℃が好ましく、更に好ましくは−20〜30℃であり、特に好ましくは−10〜10℃である。又、活性水素を有する化合物の添加を終了した後、一定の温度で反応を継続しても良く、昇温させて反応を完結させても良い。
【0057】
反応に用いる溶媒は、目的の樹脂組成物が高極性であることと、重合を効率的に進行させるため、高極性溶媒を用いる必要がある。例えば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を選択することが好ましいが、反応基質及び目的物が良好に溶解しさえすればシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの溶媒であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
【0058】
活性水素を有する化合物の末端基が水酸基の場合、ウレタン結合生成を効率よく進行させるため、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アルキルアミン類、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−エンなどの縮環アミン類、DBTL、テトラブチルスズ、トリブチルスズ酢酸エステルなどのアルキルスズ類等、公知のウレタン結合生成触媒を用いることができる。
【0059】
触媒の使用量は、効率のよい反応及び反応操作を考慮して、モノマー基質に対して0.1〜30mol%用いるのが好ましい。
【0060】
重合を行った樹脂組成物は再沈で精製を行うことが好ましい。
【0061】
樹脂組成物の再沈の方法は、特に限定されないが、樹脂組成物を良溶媒に溶解した後、貧溶媒に滴下して析出させる方法が好ましい。
【0062】
ここで言う「良溶媒」とは、樹脂組成物が溶解する溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、好ましくは極性溶媒であり、具体的には、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を挙げることができる。
【0063】
又、「貧溶媒」とは、樹脂組成物が溶解しない溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を挙げることができる。
【0064】
(有機圧電材料)
本発明の有機圧電材料は、形成された樹脂を含有する樹脂組成物を用いて膜を形成することにより、或いは、樹脂組成物の膜に対して更に分極処理を施すことにより、有機圧電体膜を形成することができる。
【0065】
有機圧電体膜は、当該圧電体膜に応力が加わると、それに比例して当該圧電体膜の両端面に反対符号の電荷が現れる、すなわち電気分極という現象を生じ、逆に当該圧電材料を伝場に入れる(電界を加える)ことで、それに比例した歪みを生じるという性質(圧電性能)を有する。特に本発明の有機圧電材料よりなる有機圧電体膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな圧電効果が生じる。
【0066】
一方、当該圧電体膜にエネルギー(熱)が加わると、それに対応して当該圧電体膜内部の自発分極の大きさが変化する。このとき、当該圧電体膜表面に自発分極を中和するように存在する表面電荷は、上記自発分極ほどにすばやくエネルギー変化に対応できないことから、短時間の間ではあるが、圧電体膜表面には自発分極の変化分だけ電荷が存在することになる。このエネルギー変化に伴う電気の発生を焦電性というが、特に本発明の有機圧電材料よりなる有機圧電体膜にあっては、高分子の主鎖や側鎖の双極子モーメントの配向凍結による分極により大きな焦電性能が生じる。
【0067】
(有機圧電体膜の形成方法)
有機圧電体膜の形成は、塗布によって膜を形成する方法が好ましい。塗布方法として、例えば、スピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法等が挙げられる。
【0068】
(分極処理)
本発明に係る分極処理における分極処理方法としては、従来公知の種々の方法が適用され得る。
【0069】
例えば、コロナ放電処理法による場合には、コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。
【0070】
放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択することが好ましいが、高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、1〜10cmが好ましく、印加電圧は、0.5〜2.0MV/mであることが好ましい。
【0071】
電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極が好ましいが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0072】
またコロナ放電中に加熱を行うので、本発明により作製した基板が接触している電極の下部に絶縁体を介して、ヒーターを設置する必要がある。
【0073】
なお、本発明において前記原料溶液の溶媒が残留している状態で、分極処理としてコロナ放電処理をする場合には、引火爆発などの危険性を避けるために溶媒の揮発成分が除去されるように十分換気しながら行うことが安全上必要である。
【0074】
(基板)
基板としては、本発明に係る有機圧電体膜の用途・使用方法等により基板の選択は異なる。ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板又はフィルムでもよいし、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。またアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板又はフィルムでもかまわない。
【0075】
更に複層圧電素子の上に形成してもよい。圧電素子を積相する複層の使用方法においては、セラミック圧電素子の上に本発明の有機圧電体膜を電極を介して、重畳層する方法がある。セラミック圧電素子としては、PZTが使用されているが、近年は鉛を含まないものが推奨されている。PZTは、Pb(Zr1−nTi)O(0.47≦n≦1)の式の範囲以内であることが好ましく、脱鉛としては、天然又は人工の水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブサンタンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO)等である。各種セラミック材料はその使用性能において組成を適宜選択することができる。
【0076】
(超音波振動子)
本発明に係る超音波振動子は、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電体膜を用いたことを特徴とする。当該超音波振動子は、超音波送信用振動子と超音波送信用振動子を具備する超音波医用画像診断装置用探触子(プローブ)に用いられる超音波受信用振動子とすることが好ましい。
【0077】
なお、一般に、超音波振動子は膜状の圧電材料からなる層(又は膜)(「圧電膜」、「圧電体膜」、又は「圧電体層」ともいう。)を挟んで一対の電極を配設して構成され、複数の振動子を例えば1次元配列して超音波探触子が構成される。
【0078】
そして、複数の振動子が配列された長軸方向の所定数の振動子を口径として設定し、その口径に属する複数の振動子を駆動して被検体内の計測部位に超音波ビームを収束させて照射すると共に、その口径に属する複数の振動子により被検体から発する超音波の反射エコー等を受信して電気信号に変換する機能を有している。
【0079】
以下、本発明に係る超音波受信用振動子と超音波送信用振動子それぞれについて詳細に説明する。
【0080】
〈超音波受信用振動子〉
本発明に係る超音波受信用振動子は、超音波医用画像診断装置用探触子に用いられる振動子であって、それを構成する圧電材料として、本発明の有機圧電材料を用いて形成した有機圧電体膜を用いたことを特徴とする。
【0081】
なお、超音波受信用振動子に用いる有機圧電材料ないし有機圧電体膜は、厚み共振周波数における比誘電率が10〜50であることが好ましい。比誘電率の調整は、当該有機圧電材料を構成する化合物が有する前記置換基R、CF基、CN基のような極性官能基の数量、組成、重合度等の調整、及び上記の分極処理によって行うことができる。
【0082】
〈超音波送信用振動子〉
本発明に係る超音波送信用振動子は、上記受信用振動子との関係で適切な比誘電率を有する圧電体材料により構成されることが好ましい。また、耐熱性・耐電圧性に優れた圧電材料を用いることが好ましい。
【0083】
超音波送信用振動子構成用材料としては、公知の種々の有機圧電材料及び無機圧電材料を用いることができる。
【0084】
有機圧電材料としては、上記超音波受信用振動子構成用有機圧電材料と同様の高分子材料を用いることできる。
【0085】
無機材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)等を用いることができる。尚、PZTはPb(Zr1−nTi)O(0.47≦n≦1)が好ましい。
【0086】
〈電極〉
本発明に係る圧電(体)振動子は、圧電体膜(層)の両面上又は片面上に電極を形成し、その圧電体膜を分極処理することによって作製されるものである。当該電極は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などを主体とした電極材料を用いて形成する。
【0087】
電極の形成に際しては、まず、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属及びそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する。これらの電極形成はスパッタ法以外でも微粉末の金属粉末と低融点ガラスを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。
【0088】
さらに、圧電体膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電体膜を分極することで圧電素子が得られる。
【0089】
(超音波探触子)
本発明に係る超音波探触子は、超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波画像診断装置用探触子(プローブ)であり、受信用振動子として、本発明に係る上記超音波受信用振動子を用いることを特徴とする。
【0090】
本発明においては、超音波の送受信の両方をひとつの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて探触子内に構成される。
【0091】
送信用振動子を構成する圧電材料としては、従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0092】
本発明に係る超音波探触子においては、送信用振動子の上もしくは並列に本発明の超音波受信用振動子を配置することができる。
【0093】
より好ましい実施形態としては、超音波送信用振動子の上に本発明の超音波受信用振動子を積層する構造が良く、その際には、本発明の超音波受信用振動子は他の高分子材料(支持体として上記の比誘電率が比較的低い高分子(樹脂)フィルム、例えば、ポリエステルフィルム)の上に添合した形で送信用振動子の上に積層してもよい。その際の受信用振動子と他の高分子材料と合わせた膜厚は、探触子の設計上好ましい受信周波数帯域に合わせることが好ましい。実用的な超音波医用画像診断装置および生体情報収集に現実的な周波数帯から鑑みると、その膜厚は、40〜150μmであることが好ましい。
【0094】
なお、当該探触子には、バッキング層、音響整合層、音響レンズなどを設けても良い。また、多数の圧電材料を有する振動子を2次元に並べた探触子とすることもできる。複数の2次元配列した探触子を順次走査して、画像化するスキャナーとして構成させることもできる。
【0095】
(超音波医用画像診断装置)
本発明に係る上記超音波探触子は、種々の態様の超音波診断装置に用いることができる。例えば、図1及び図2に示すような超音波医用画像診断装置において好適に使用することができる。
【0096】
図1は、本発明の実施形態の超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図である。この超音波医用画像診断装置は、患者などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する圧電体振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。また当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、当該超音波探触子の各圧電体振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路を備えている。
【0097】
更に、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波医用画像診断装置全体の制御を行う制御回路を備えている。
【0098】
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各圧電体振動子に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
【0099】
なお、上記送受信回路が「電気信号を発生する手段」に相当し、画像データ変換回路が「画像処理手段」に相当する。
【0100】
上記のような超音波診断装置によれば、本発明の圧電特性及び耐熱性に優れかつ高周波・広帯域に適した超音波受信用振動子の特徴を生かして、従来技術と比較して画質とその再現・安定性が向上した超音波像を得ることができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0102】
(実施例1)樹脂含有組成物及び有機圧電体膜の作製
<重合方法A>
一般式(2)で表される化合物(表1に記載)をDMFに溶解し、0℃に冷却した。一般式(2)で表される化合物と当モルの一般式(3)で表される化合物(表1に記載)をDMFに溶解して添加した。0℃で1時間攪拌を行った後、活性水素を有する化合物(表1に記載)をDMFに溶解して添加し、30℃に昇温して24時間攪拌を行った。更に、反応溶液を80℃まで昇温して8時間攪拌を行い、減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈後、70℃で減圧乾燥を行うことにより目的とする樹脂組成物を得た。
【0103】
<重合方法B>
一般式(2)で表される化合物(表1に記載)をDMFに溶解し、0℃に冷却した。一般式(2)で表される化合物と当モルの一般式(3)で表される化合物(表1に記載)をDMFに溶解して添加した。0℃で1時間攪拌を行った後、活性水素を有する化合物(表1に記載)をDMFに溶解して添加し、続いてDBTL0.1gを添加した。反応溶液を30℃に昇温して24時間攪拌を行った後、減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈を行った。ろ過後、70℃で減圧乾燥を行うことにより目的とする樹脂組成物を得た。
【0104】
<重合方法C>
一般式(2)で表される化合物(表1に記載)をDMFに溶解し、0℃に冷却した。一般式(2)で表される化合物に対して2倍モルの一般式(3)で表される化合物(表1に記載)をDMFに溶解して添加した。0℃で1時間攪拌を行った後、30℃に昇温して24時間攪拌を行った。減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈後、70℃で減圧乾燥を行うことにより目的とする樹脂組成物を得た。
【0105】
樹脂組成物の重量平均分子量及び分子量分布は、GPCの測定を行い、ポリスチレン換算で求めた。
【0106】
本実施例において、重量平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出した。測定条件は以下の通りである。
【0107】
溶媒 :30mMLiBr in N−メチルピロリドン
装置 :HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperAWM−H×2本(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :1.0g/L
注入量 :40μl
流量 :0.5ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=580〜2,560,000までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
【0108】
<有機圧電体膜作製>
これらの得られた樹脂組成物を、あらかじめ表面にアルミ蒸着済みの25μmのポリイミドフィルムに、1%の重合度500のポリビニルアルコールのメタノール溶液を乾燥膜圧が0.1μmに成るように塗布乾燥を行った基盤上に、乾燥膜圧が7μmになるように塗布乾燥を行った。次に、このようにして樹脂組成物の膜が形成された基板の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けたあとで、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、200℃まで5℃/minの割合で上昇し、200℃で15分間保持したあとで電圧は印加したままで室温まで徐冷し、ポーリング処理を施し有機圧電体膜を作製した。なお、当該有機圧電体膜は電極を具備しているので超音波振動子と使用可能のものである。
【0109】
(比較例1)比較樹脂組成物及び比較有機圧電体膜の作製
p−イソシアナトベンジルイソシアネート0.87gをDMF10mlに溶解し、0℃に冷却した。2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン1.30g及びエチレングリコール0.16gをDMF10mlに溶解した溶液をワンポットで添加し、1時間攪拌を行った。反応液にDBTL0.1gを添加し、30℃に昇温して24時間攪拌を行った。減圧条件下で、反応溶液の液量が半分になるまで濃縮し、メタノールで再沈後、70℃で減圧乾燥を行うことにより比較樹脂組成物(1)2.2gを得た。
【0110】
得られた樹脂組成物を、あらかじめ表面にアルミ蒸着済みの25μmのポリイミドフィルムに、1%の重合度500のポリビニルアルコールのメタノール溶液を乾燥膜圧が0.1μmに成るように塗布乾燥を行った基盤上に、乾燥膜圧が7μmになるように塗布乾燥を行った。次に、このようにして樹脂組成物の膜が形成された基板の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けたあとで、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、200℃まで5℃/minの割合で上昇し、200℃で15分間保持したあとで電圧は印加したままで室温まで徐冷し、ポーリング処理を施し比較有機圧電体膜−1を作製した。
【0111】
(比較例2)比較有機圧電体膜の作製
真空処理室内に前述のポリイミド基盤を取り付け、蒸発用容器の一方に4,4′−ジアミノジフェニルメタンと、他方に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを夫々充填し、シャッターを閉じた状態で処理室内の全圧を真空排気系で1.33×10−1Pa(1×10−3Torr)に設定した。4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを温度70±2℃に、また、4,4′−ジアミノジフェニルメタンを温度110±2℃に加熱し、ポリイミド基板上に蒸着重合を行い、7μmまで蒸着を行った。このようにしてポリウレア膜の形成された基板を取り出し、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)と針状電極を用いて0.2MV/mになるように電圧を加えながら、180℃まで5℃毎分の割合で昇温し、180℃で15分間保持したあとで電圧は印下したままで室温まで徐冷し、ポーリング処理を施し、比較樹脂組成物膜−2を作製した。
【0112】
(実施例2)
得られた上記各種有機圧電体膜を超音波振動子として、共振法にて圧電性の評価を室温と、100℃まで加熱した状態で行った。なお圧電特性は、PVDF膜の室温で測定した時の値を100%とした相対値として示す。
【0113】
(実施例3)
得られた上記各種有機圧電体膜のうちの一部有機圧電体膜について、2cm平方に切り出し、焦電性を、摂氏−100度から150度まで温度が可変の温度槽にセットし温度上昇率を変えて発生する電荷を微小電流計により観測し焦電率を測定した。なお焦電率は、PVDF膜の値を100%として相対値で示した。
【0114】
上記測定結果等をまとめて表1及び表2に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
表2に示した結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物より形成された有機圧電体膜の圧電特性及び焦電性は、比較例に比べ優れていることが分かる。
【0118】
(実施例4)
(超音波探触子の作製と評価)
〈送信用圧電材料の作製〉
成分原料であるCaCO、La、BiとTiO、及び副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti15となるように秤量した。次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を、仮成形し、空気中、800℃で2時間仮焼を行い仮焼物を作製した。次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。次に、上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは20μmの焼結体を得た。なお、焼成温度は、それぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。
【0119】
〈受信用積層振動子の作製〉
前記実施例1において作製した有機圧電体膜と厚さ50μmのポリエステルフィルムをエポキシ系接着剤にて貼り合わせた積層振動子を作製した。その後、上記と同様に分極処理をした。
【0120】
次に、常法に従って、上記の送信用圧電材料の上に受信用積層振動子を積層し、かつバッキング層と音響整合層を設置し超音波探触子を試作した。
【0121】
なお、比較例として、上記受信用積層振動子の代わりに、比較樹脂組成物膜−1を用い、上記超音波探触子と同様の探触子を作製した。
【0122】
次いで、上記2種の超音波探触子について受信感度と絶縁破壊強度の測定をして評価した。
【0123】
なお、受信感度については、5MHzの基本周波数fを発信させ、受信2次高調波fとして10MHz、3次高調波として15MHz、4次高調波として20MHzの受信相対感度を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)を使用した。
【0124】
絶縁破壊強度の測定は、負荷電力Pを5倍にして、10時間試験した後、負荷電力を基準に戻して、相対受信感度を評価した。感度の低下が負荷試験前の1%以内のときを良、1%を超え10%未満を可、10%以上を不良として評価した。
【0125】
上記評価において、本発明に係る受信用圧電(体)積層振動子を具備した超音波探触子は、比較例に対して約1.3倍の相対受信感度を有しており、かつ絶縁破壊強度は良好であることを確認した。すなわち、本発明の超音波受信用振動子は、図1に示したような超音波医用画像診断装置に用いる探触子にも好適に使用できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】超音波医用画像診断装置の主要部の構成を示す概念図
【図2】超音波医用画像診断装置の外観構成図
【符号の説明】
【0127】
P1 受信用圧電材料(膜)
P2 支持体
P3 送信用圧電材料(膜)
P4 バッキング層
P5 電極
P6 音響レンズ
S 超音波医用画像診断装置
S1 超音波医用画像診断装置の本体
S2 超音波探触子
S3 操作入力部
S4 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される部分構造を有する樹脂含有組成物であることを特徴とする有機圧電材料。
【化1】

(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Lは、アルキレン基又はアリーレン基を表す。Lは、単なる結合種、アルキレンオキシ基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Xは、酸素原子又は窒素原子を表し、窒素原子は、置換基を有していても良い。)
【請求項2】
請求項1に記載の有機圧電材料を用いた有機圧電体膜の製造方法であって、当該有機圧電材料を基板上に塗布することを特徴とする有機圧電体膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の有機圧電材料を用いたことを特徴とする超音波振動子。
【請求項4】
超音波送信用振動子と超音波受信用振動子を具備する超音波探触子であって、請求項1に記載の有機圧電材料を用いた超音波振動子を超音波受信用振動子として具備したことを特徴とする超音波探触子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−298922(P2009−298922A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155132(P2008−155132)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】