説明

有機性汚泥の脱水方法

【課題】難脱水性の有機性汚泥を処理して、ろ過性が良好であり、含水率が低い脱水ケーキを得ることができる有機性汚泥の脱水方法を提供する。
【解決手段】有機性汚泥にカチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤とを添加して脱水する有機性汚泥の脱水方法において、カチオン性高分子凝集剤が、ブルックフィールドB形回転粘度計を用いて、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定した0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s)を、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定した固有粘度(dL/g)で除した商が70以上であるカチオン性ビニル系高分子凝集剤であることを特徴とする有機性汚泥の脱水方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性汚泥の脱水方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、難脱水性の有機性汚泥を処理して、ろ過性が良好であり、含水率が低い脱水ケーキを得ることができる有機性汚泥の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場、化学工場、下水処理場などで発生する汚泥の脱水処理には、ほとんどの場合、高分子凝集剤が使用されている。高分子凝集剤としては、カチオン性構成単位を単独で重合、又は、カチオン性構成単位とノニオン性構成単位とを共重合したカチオン性高分子凝集剤が広く使われてきた。
【0003】
最近では、カチオン性構成単位に、アニオン性構成単位とノニオン性構成単位を共重合した両性高分子凝集剤がよく使用されるが、両性高分子凝集剤は、凝集時に分子間架橋をすることにより、はじめて高い凝集性能を発揮する。これらの高分子凝集剤は、汚泥の性質、汚泥の減容目標値に合わせて、使いこなされているが、汚泥の難脱水化に伴い、さらなる脱水性能向上、汚泥減容化が要望され、開発が進められている。
【0004】
例えば、低い添加率で難脱水性汚泥を効果的に脱水することができ、強固な凝集フロックを形成して汚泥処理能力を高めることができる汚泥脱水剤として、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤とを含む汚泥脱水剤であって、カチオン性高分子凝集剤のカチオン性構成単位(C)とノニオン性構成単位(N)のモル組成比C/Nが0.2以上であり、両性高分子凝集剤のアニオン性構成単位(A)とカチオン性構成単位(C)のモル組成比A/Cが0.8〜1.5であり、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤の重量比が35:65〜95:5である汚泥脱水剤が提案されている(特許文献1)。しかし、この汚泥脱水剤を用いても、下水処理場の混合汚泥、し尿処理場の三次汚泥を含んだ余剰汚泥、凝集汚泥を含んだ混合汚泥、消化汚泥、オキシデーションディッチ法による余剰汚泥、無機凝集剤が添加された余剰汚泥などの難脱水性汚泥を処理して、含水率の低い脱水ケーキを得ることは困難であった。
【0005】
食品工場、化学工場、下水処理場などで発生する汚泥の脱水処理では、前述の如く、汚泥の質、汚泥の減容目標に合わせて種々の脱水剤が使用されているが、近年の汚泥の難脱水化と汚泥減容の高度化の要求に対して、比較的高い凝集性能と脱水性が得られるカチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤が使用されるようになってきた。しかし、両者の高分子凝集剤をもってしても、十分な脱水効果を得ることは難しくなっているのが現状と言える。例えば、汚泥を長時間曝気するオキシデーションディッチ法では、汚泥は生物分解され、有機物含有量が低くはなるが、性状的には繊維分が少なくなり、汚泥粒子は粒子径分布が広い上に、高分子凝集剤と反応するための吸着点が少なくなり、高分子どうしを橋かけする溶解性のアニオン物質が少なくなるために、逆に脱水性が悪化する。また、汚泥を嫌気性にして消化分解する方法は、汚泥の減容化の目的には適っているが、この場合汚泥粒子が小さくなり、分散状態となるために、脱水時の高分子凝集剤の添加量が多くなるとか、脱水したときの含水率が高くなるという問題点が発生する。また、汚泥を減容化するための脱水機が、高い脱水効果を得るような構造になっている場合、フロックに強いせん断力がかかる。このために、適用する高分子凝集剤は、強いフロックを形成する性能を有することが必要となる。
【特許文献1】特許第3183809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、難脱水性の有機性汚泥を処理して、ろ過性が良好であり、含水率が低い脱水ケーキを得ることができる有機性汚泥の脱水方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、有機性汚泥の脱水処理に際してカチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤とを併用し、かつ溶液粘度/固有粘度の比の大きいカチオン性高分子凝集剤を用いることにより、ろ過性が良好であって、含水率が低い脱水ケーキを得ることができ、さらに特定の構成単位を有する両性高分子凝集剤を用いることにより、脱水性がいっそう向上することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)有機性汚泥にカチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤とを添加して脱水する有機性汚泥の脱水方法において、カチオン性高分子凝集剤が、ブルックフィールドB形回転粘度計を用いて、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定した0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s)を、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定した固有粘度(dL/g)で除した商が70以上であるカチオン性ビニル系高分子凝集剤であることを特徴とする有機性汚泥の脱水方法、
(2)両性高分子凝集剤が、カチオン性構成単位20〜50モル%、アニオン性構成単位10〜40モル%及びノニオン性構成単位10〜70モル%からなる(1)記載の有機性汚泥の脱水方法、及び、
(3)有機性汚泥が、下水処理場の混合汚泥、し尿処理場の三次汚泥を含んだ余剰汚泥、凝集汚泥を含んだ混合汚泥、消化汚泥、オキシデーションディッチ法による余剰汚泥又は無機凝集剤が添加された余剰汚泥である(1)又は(2)記載の有機性汚泥の脱水方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機性汚泥の処理方法によれば、難脱水性の汚泥を処理して、ろ過性が良好であり、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる。本発明方法によれば、従来の方法と比べて、脱水ケーキの含水率が約2重量%低下し、ケーキ収量が30〜50重量%向上する。この結果から、汚泥は約10体積%減容化され、脱水時の処理量は30〜50重量%向上することが推定される。そして、最終的には汚泥の処理処分費の低減に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の有機性汚泥の脱水方法においては、有機性汚泥にカチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤とを添加して脱水する有機性汚泥の脱水方法において、カチオン性高分子凝集剤が、ブルックフィールドB形回転粘度計を用いて、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定した0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s)を、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定した固有粘度(dL/g)で除した商が70以上であるカチオン性ビニル系高分子凝集剤である。
【0011】
カチオン性高分子凝集剤の0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s)は、基本的にはJIS K 7117−1にしたがって測定することができるが、本発明においては、測定温度は30℃で測定される。ブルックフィールドB形回転粘度計としては、(株)東京計器製のB型粘度計を用いることができる。また、カチオン性高分子凝集剤の0.2重量%水溶液は、精製した高分子約1gを精秤し、500mLガラス製ビーカーに移した後に、カチオン性高分子凝集剤濃度が0.2重量%となるようスターラーで撹拌しながら脱イオン水をビーカーに添加していき、その後500rpmで2時間撹拌したのち、室温で1日放置して溶解させたものを用いる。なお、高分子凝集剤の製品形態がエマルション、ディスパージョン又は水溶液などの液状品である場合には、アセトンなどの溶媒を用いて予め精製してから0.2重量%水溶液を調製する。ブルックフィールドB形回転粘度計を用いて、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定したカチオン性高分子凝集剤の0.2重量%水溶液の粘度は、400〜1,000mPa・sであることが好ましく、500〜900mPa・sであることがより好ましい。0.2重量%水溶液の粘度が400mPa・s未満であると、凝集力が弱く、汚泥の処理性能が低下するおそれがある。0.2重量%水溶液の粘度が1,000mPa・sを超えると、水溶液が高粘度になって、作業性が低下するおそれがある。
【0012】
カチオン性高分子凝集剤の固有粘度は、キャノンフェンスケ粘度計、オストワルド粘度計、ウベローデ型粘度計などを用いて測定することができ、キャノンフェンスケ粘度計を好適に用いることができる。1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定したカチオン性高分子凝集剤の固有粘度は、1〜15dL/gであることが好ましく、3〜12dL/gであることがより好ましい。固有粘度が1dL/g未満であると、凝集力が弱く、汚泥の処理性能が低下するおそれがある。固有粘度が15dL/gを超えると、水溶液が高粘度になって、作業性が低下するおそれがある。
【0013】
本発明方法においては、カチオン性高分子凝集剤が、ブルックフィールドB形回転粘度計を用いて、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定した0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s)を、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定した固有粘度(dL/g)で除した商が70以上であり、より好ましくは70〜200であり、さらに好ましくは120〜160である。該溶液粘度を該固有粘度で除した商が70未満であると、有機性汚泥に対する凝集作用が弱く、脱水ケーキの含水率が十分に低下しないおそれがある。該溶液粘度を該固有粘度で除した商が200を超えると、高分子凝集剤の水に対する溶解性が低下するおそれがある。
【0014】
本発明方法に用いるカチオン性高分子凝集剤は、カチオン性ビニル単量体とノニオン性ビニル単量体の共重合によって得られる共重合物であり、カチオン性構成単位(C)とノニオン性構成単位(N)のモル比C/Nが0.2以上の共重合物であることが好ましい。カチオン性ビニル単量体としては、例えば、一般式[1]で表される単量体を挙げることができる。
【化1】

【0015】
一般式[1]において、R1は水素又はメチル基であり、R2はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基であり、プロピレン基及びブチレン基は直鎖状であってもよく、側鎖を有するものであってもよい。R3はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基であり、R4は水素、炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基である。また、−A−は−O−又は−NH−であり、X-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、1/2SO42-、NO3-、CH3COO-、CH3SO4-、C25SO4-などのアニオンである。
【0016】
一般式[1]で表される単量体としては、例えば、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミドなどのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、酢酸などによる中和塩、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などによる四級化物などを挙げることができる。ハロゲン化水素としては、例えば、塩化水素、臭化水素などを、ハロゲン化アルキルとしては、例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチルなどを、ハロゲン化ベンジルとしては、塩化ベンジル、臭化ベンジルなどを挙げることができる。これらのカチオン性ビニル系単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0017】
カチオン性有機高分子凝集剤の合成に用いるノニオン性ビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、酢酸ビニルなどのビニルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物などを挙げることができる。これらのノニオン性ビニル単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本発明において、カチオン性高分子凝集剤のカチオン性構成単位(C)とノニオン性構成単位(N)のモル比はC/Nは、0.2以上であることが好ましく、0.4〜5であることがより好ましい。C/Nが0.2未満であると、汚泥脱水剤の最適添加率が高くなり、重力ろ過性が劣り、ケーキの含水率とろ液の濁度が高くなるなど、全般的に凝集脱水性能が低下するおそれがある。
【0019】
本発明方法に用いるカチオン性高分子凝集剤の製造方法は特に限定されるものではないが、通常は、カチオン性ビニル単量体とノニオン性ビニル単量体と架橋剤(メチレンビスアクリルアミド等の架橋性単量体を含む)とを重合開始剤の存在下にW/O型乳化重合することによって好適に製造することができる。なお、ブルックフィールドB形回転粘度計を用いて、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定した0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s)を、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定した固有粘度(dL/g)で除した商は、製造方法、具体的には単量体濃度、架橋剤濃度、重合開始剤濃度や重合温度などを種々調整することにより調整され、一般には架橋剤濃度が高いほど、当該値は大きくなる傾向にある。
【0020】
本発明方法に用いる両性高分子凝集剤は、カチオン性構成単位が20〜50モル%であることが好ましく、25〜40モル%であることがより好ましく、アニオン性構成単位が10〜40モル%であることが好ましく、15〜35モル%であることがより好ましく、ノニオン性構成単位が10〜70モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。両性高分子凝集剤のカチオン性構成単位が20〜50モル%、アニオン性構成単位が10〜40モル%、ノニオン性構成単位が10〜70モル%であると、有機性汚泥の処理において、重力ろ過性が良好であり、脱水ケーキの含水率が低く、ケーキ収量が多く、濁度の低いろ液を得ることができる。本発明方法に用いる両性高分子凝集剤の1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度は、2〜15dL/gであることが好ましく、4〜10dL/gであることがより好ましい。
【0021】
本発明方法に用いる両性高分子凝集剤は、カチオン性ビニル単量体とアニオン性ビニル単量体とノニオン性ビニル単量体を共重合することにより得ることができる。カチオン性ビニル単量体としては、例えば、一般式[1]で表される化合物を挙げることができる。
【化2】

【0022】
一般式[1]において、R1は水素又はメチル基であり、R2はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基であり、プロピレン基及びブチレン基は直鎖状であってもよく、側鎖を有するものであってもよい。R3はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基であり、R4は水素、炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基である。また、−A−は−O−又は−NH−であり、X-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、1/2SO42-、NO3-、CH3COO-、CH3SO4-、C25SO4-などのアニオンである。
【0023】
一般式[1]で表される単量体としては、例えば、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミドなどのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、酢酸などによる中和塩、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などによる四級化物などを挙げることができる。ハロゲン化水素としては、例えば、塩化水素、臭化水素などを、ハロゲン化アルキルとしては、例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチルなどを、ハロゲン化ベンジルとしては、塩化ベンジル、臭化ベンジルなどを挙げることができる。これらのカチオン性ビニル系単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
本発明方法に用いる両性有機高分子凝集剤のアニオン性構成単位となるアニオン性ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらのアニオン性ビニル単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
本発明方法に用いる両性有機高分子凝集剤のノニオン性構成単位となるノニオン性ビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、酢酸ビニルなどのビニルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物などを挙げることができる。これらのノニオン性ビニル単量体は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
本発明方法に用いる両性高分子凝集剤の製造方法に特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、エマルション重合などを挙げることができる。水溶液重合においては、単量体を水に溶解し、雰囲気を不活性ガスで置換し、重合温度まで昇温したのち、重合開始剤として、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性重合開始剤を加えて重合することができる。
【0027】
本発明方法において、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤の重量比は、20:80〜80:20であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤の重量比が20:80未満でカチオン性高分子凝集剤が少ないと、最適添加率が上昇して多量の高分子凝集剤が必要となり、重力ろ過性が不良でろ過速度が遅く、ケーキの含水率とろ液の濁度が高くなるおそれがある。カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤の重量比が80:20を超えてカチオン性高分子凝集剤が多いと、最適添加率が上昇して多量の高分子凝集剤が必要となり、重力ろ過性が不良でろ過速度が遅く、ケーキの含水率とろ液の濁度が高くなるおそれがある。
【0028】
本発明方法においては、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤に加えて、酸性物質を添加することができる。酸性物質は、両性高分子凝集剤のカルボキシル基の解離を抑え、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤の反応物の生成を防止する効果を有する。本発明方法において使用する酸性物質に特に制限はなく、例えば、スルファミン酸、硫酸水素ナトリウム、塩化水素、硫酸などを挙げることができる。
【0029】
本発明方法において、有機性汚泥にカチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を添加する順序に特に制限はないが、カチオン性高分子凝集剤を先に添加するか、あるいは、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤とを同時に添加することが好ましい。添加する前の状態としては、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を溶解槽で別々に溶解することができ、あるいは、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を同じ溶解槽で溶解することもできる。カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を同じ溶解槽で溶解する場合、高分子凝集剤の合計濃度は、0.1〜1重量%であることが好ましい。
【0030】
本発明方法によれば、カチオン性高分子凝集剤は、凝集時に汚泥中の微細粒子を架橋性カチオン性高分子凝集剤の網目構造の中に取り込み、微細粒子から粗粒子まで幅広く吸着することによりフロック化する。一方、両性高分子凝集剤は、粗粒子から、架橋性カチオン性高分子凝集剤で生成されたフロックどうしまでをさらに吸着して、粗大フロックを形成する。このようにしてできたフロックは剛直であるが、せん断力が加わったときには、未使用の官能基、すなわち、架橋性カチオン性高分子凝集剤のカチオン基と両性高分子凝集剤のアニオン基が、徐々に未中和の汚泥と反応するために、壊れかかったフロックが再凝集するとともに、フロックの緻密化が行われる。このようにして高い脱水性が得られるものと考えられる。
【0031】
また、汚泥によっては、有機物量が非常に多く、高分子凝集剤だけでは十分な脱水効果が得られない場合がある。このような場合には、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などの無機凝集剤を併用すると、より高い脱水効果を得ることができる。この際に、無機凝集剤が汚泥と反応した状態として、汚泥粒子のマイナス荷電が高く、荷電中和が十分に行われないために、あるいは、汚泥のアルカリ度が高く荷電中和が行われる前に、アルミニウム又は鉄が金属水酸化物となってしまうために、生成した粒子の粒度分布が広くなっていると考えられる。このような場合においても、架橋性カチオン性高分子凝集剤が、微細粒子から粗粒子までを幅広く吸着してフロック化し、両性高分子凝集剤によりさらにフロックが粗大化されると考えられる。
【0032】
本発明方法を好適に適用することができる有機性汚泥としては、下水処理場の混合汚泥、し尿処理場の三次汚泥を含んだ余剰汚泥、凝集汚泥を含んだ混合汚泥、消化汚泥、オキシデーションディッチ法による余剰汚泥、無機凝集剤が添加された余剰汚泥などを挙げることができる。下水処理場の混合汚泥は、下水処理場において発生する初沈汚泥と余剰汚泥が混合された汚泥である。し尿処理場の三次汚泥を含んだ余剰汚泥は、し尿処理場における活性汚泥処理によって発生した余剰汚泥に、硫酸バンドやPAC等の無機凝集剤を当該活性汚泥処理水に添加して、凝集沈殿処理又は凝集加圧浮上処理して分離された汚泥(三次汚泥)が添加された汚泥である。凝集汚泥を含んだ混合汚泥は、凝集槽内に滞留した凝集汚泥と余剰汚泥が混合された汚泥である。消化汚泥は、濃縮汚泥を密閉し、メタン菌の作用によりメタンガスや二酸化炭素を発生させて分解した汚泥である。オキシデーションディッチ法による余剰汚泥は、家庭汚水を主とする下水を機械曝気装置を設置した無終端水路を反応槽として低負荷で行う活性汚泥処理により発生する汚泥である。無機凝集剤が添加された余剰汚泥は、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などの無機凝集剤が添加されて生成した粒子の粒度分布が広くなった汚泥であり、この場合の余剰汚泥としては、下水処理場やし尿処理場で発生する余剰汚泥のみならず、食品、化学工場などで排出される有機性廃水を生物処理した際に発生する余剰汚泥も含まれる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、用いた高分子凝集剤のモノマー単位の略号を下記に示す。
DAA:ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロリド四級化物
DAM:ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロリド四級化物
AAm:アクリルアミド
AA:アクリル酸
また、カチオン性高分子凝集剤の溶液粘度は、0.2重量%水溶液について、ブルックフィールドB形回転粘度計を用い、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定した。固有粘度は、キャノンフェンスケ粘度計を用い、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定した。
【0034】
実施例1
造粒濃縮とベルトプレス脱水を想定して、下水混合生汚泥について机上試験を行った。
汚泥の性状は、懸濁物質(TS)1.8重量%、有機物量(VTS/TS)78重量%、繊維分27重量%であり、粒度分布は、10μm以下が10体積%、10〜100μmが20体積%、100〜150μmが40体積%、150μm以上が30体積%であった。
カチオン性高分子凝集剤として、DAA(80モル%)/AAm(20モル%)共重合体を用いた。この共重合体の0.2重量%水溶液の粘度は600mPa・s、固有粘度は5dL/gであり、溶液粘度/固有粘度の比は120であった。両性高分子凝集剤として、DAA(28モル%)/DAM(2モル%)/AAm(35モル%)/AA(35モル%)共重合体を用いた。高分子凝集剤水溶液として、カチオン性高分子凝集剤0.1重量%と両性高分子凝集剤0.1重量%とを含有する水溶液を調製した。
汚泥200mLを容量300mLのビーカーにとり、ポリ塩化アルミニウム0.36gを添加して、撹拌速度750rpmで20秒間撹拌し、次いで、高分子凝集剤水溶液25.2gを添加して、撹拌速度180rpmで60秒間撹拌した。60メッシュのナイロンろ布を敷いたブフナーロートに内径5cmの塩化ビニル樹脂製円筒を置き、その中に凝集した汚泥を一気に注ぎ込んだ。10秒後の重力ろ液量は、144mLであった。さらに、ナイロンろ布上の汚泥を98kPaの圧力で60秒間圧搾して脱水した。得られた脱水ケーキの含水率は71.6重量%であり、ろ布上のケーキ収量は乾燥重量で124mg/cm2であった。
【0035】
実施例2〜10
第1表に示す高分子凝集剤を調製し、実施例1と同様にして、下水混合生汚泥について机上試験を行った。
比較例1〜9
第2表に示す高分子凝集剤を調製し、実施例1と同様にして、下水混合生汚泥について机上試験を行った。
実施例1〜10で用いた高分子凝集剤の構成を第1表に、比較例1〜9で用いた高分子凝集剤の構成を第2表に、実施例1〜10及び比較例1〜9の評価結果を第3表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
第1〜3表に見られるように、溶液粘度/固有粘度の比が75〜160であるカチオン性高分子凝集剤と、DAA(28モル%)/DAM(2モル%)/AAm(35モル%)/AA(35モル%)共重合体からなる両性高分子凝集剤を、重量比1:1、1:2又は2:1で混合した高分子凝集剤を用いた実施例1〜10では、10秒間の重力ろ液量が138〜164mLであってろ過性が良好であり、脱水ケーキの含水率が71.2〜74.0重量%と低く、ろ布1cm2当たり113〜133mgのケーキが得られている。
これに対して、カチオン性高分子凝集剤のみを用いた比較例1〜4、両性高分子凝集剤のみを用いた比較例5、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を、重量比1:1で混合した高分子凝集剤を用いているが、カチオン性高分子凝集剤の溶液粘度/固有粘度の比が36〜50である比較例6〜9では、10秒間の重力ろ液量が66〜136mLであってろ過性が不良であり、脱水ケーキの含水率が73.5〜76.9重量%と高く、ろ布1cm2当たり68〜97mgのケーキしか得られていない。
【0040】
実施例11
遠心脱水を想定して、オキシデーションディッチ方式余剰汚泥について机上試験を行った。
汚泥の性状は、懸濁物質(TS)1.2重量%、有機物量(VTS/TS)72重量%、繊維分3.4重量%であり、粒度分布は、10μm以下が30体積%、10〜100μmが35体積%、100〜150μmが30体積%、150μm以上が5体積%であった。
カチオン性高分子凝集剤として、DAA(80モル%)/AAm(20モル%)共重合体を用いた。この共重合体の0.2重量%水溶液の粘度は600mPa・s、固有粘度は5dL/gであり、溶液粘度/固有粘度の比は120であった。両性高分子凝集剤として、DAA(15モル%)/DAM(10モル%)/AAm(60モル%)/AA(15モル%)共重合体を用いた。高分子凝集剤水溶液として、カチオン性高分子凝集剤0.1重量%と両性高分子凝集剤0.1重量%とを含有する水溶液を調製した。
汚泥200mLを容量300mLのビーカーにとり、高分子凝集剤水溶液16.8gを添加して、撹拌速度1,000rpmで30秒間撹拌した。次いで、60メッシュのナイロンろ布を敷いたブフナーロートに内径5cmの塩化ビニル樹脂製円筒を置き、その中に凝集した汚泥を一気に注ぎ込んだ。10秒後の重力ろ液量は、126mLであった。さらに、ナイロンろ布上の汚泥を49kPaの圧力で60秒間圧搾して脱水した。得られた脱水ケーキの含水率は81.5重量%であり、ろ布上のケーキ収量は乾燥重量で45mg/cm2であった。
【0041】
実施例12〜14
第4表に示す高分子凝集剤を調製し、実施例11と同様にして、オキシデーションディッチ方式余剰汚泥について机上試験を行った。
比較例10〜13
第4表に示す高分子凝集剤を調製し、実施例11と同様にして、オキシデーションディッチ方式余剰汚泥について机上試験を行った。
実施例11〜14及び比較例10〜13で用いた高分子凝集剤の構成を第4表に、実施例11〜14及び比較例10〜13の評価結果を第5表に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
第4〜5表に見られるように、溶液粘度/固有粘度の比が120〜160であるカチオン性高分子凝集剤と、DAA(15〜25モル%)/DAM(0〜10モル%)/AAm(60モル%)/AA(15モル%)共重合体からなる両性高分子凝集剤を、重量比1:1で混合した高分子凝集剤を用いた実施例11〜14では、10秒間の重力ろ液量が124〜156mLであってろ過性が良好であり、脱水ケーキの含水率が81.5〜83.1重量%と低く、ろ布1cm2当たり40〜45mgのケーキが得られている。
これに対して、カチオン性高分子凝集剤のみを用いた比較例10、両性高分子凝集剤のみを用いた比較例11、カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を、重量比1:1で混合した高分子凝集剤を用いているが、カチオン性高分子凝集剤の溶液粘度/固有粘度の比が36〜43である比較例12〜13では、10秒間の重力ろ液量が67〜132mLであってろ過性が不良であり、脱水ケーキの含水率が82.8〜84.1重量%と高く、ろ布1cm2当たり33〜38mgのケーキしか得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の有機性汚泥の処理方法によれば、難脱水性の汚泥を処理して、ろ過性が良好であり、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる。本発明方法によれば、従来の方法と比べて、脱水ケーキの含水率が約2重量%低下し、ケーキ収量が30〜50重量%向上する。この結果から、汚泥は約10体積%減容化され、脱水時の処理量は30〜50重量%向上することが推定される。そして、最終的には汚泥の処理処分費の低減に寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚泥にカチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤とを添加して脱水する有機性汚泥の脱水方法において、カチオン性高分子凝集剤が、ブルックフィールドB形回転粘度計を用いて、回転速度30rpm、SB2号スピンドル、30℃で測定した0.2重量%水溶液の粘度(mPa・s)を、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として、30℃で測定した固有粘度(dL/g)で除した商が70以上であるカチオン性ビニル系高分子凝集剤であることを特徴とする有機性汚泥の脱水方法。
【請求項2】
両性高分子凝集剤が、カチオン性構成単位20〜50モル%、アニオン性構成単位10〜40モル%及びノニオン性構成単位10〜70モル%からなる請求項1記載の有機性汚泥の脱水方法。
【請求項3】
有機性汚泥が、下水処理場の混合汚泥、し尿処理場の三次汚泥を含んだ余剰汚泥、凝集汚泥を含んだ混合汚泥、消化汚泥、オキシデーションディッチ法による余剰汚泥又は無機凝集剤が添加された余剰汚泥である請求項1又は請求項2記載の有機性汚泥の脱水方法。

【公開番号】特開2007−268414(P2007−268414A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97272(P2006−97272)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】