有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置,及び、有機性汚泥固形化燃料の品質管理プログラム
【課題】有機性汚泥固形化燃料の生成コストの増加を最小限に抑えつつ、複数の汚泥排出事業所において生成される有機性汚泥固形化燃料の全体としての品質を所定値に保つ有機性汚泥固形化燃料の品質管理システムを、提供する。
【解決手段】中央コンピュータ2は、各汚泥排出事業所側システム1から受信した有機性汚泥固形化燃料の生成量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回回収時における、全汚泥排出事業所100から回収されるであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの平均発熱量を予測する。予測した単位当たりの平均発熱量が燃料引取業者が指定した値を満たしていない場合には、中央コンピュータ2は、単位当たりの発熱量の平均が燃料引取業者が指定した値から大きく乖離している汚泥排出事業所側システム1について、生成される有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げるための処理条件を通知する。
【解決手段】中央コンピュータ2は、各汚泥排出事業所側システム1から受信した有機性汚泥固形化燃料の生成量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回回収時における、全汚泥排出事業所100から回収されるであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの平均発熱量を予測する。予測した単位当たりの平均発熱量が燃料引取業者が指定した値を満たしていない場合には、中央コンピュータ2は、単位当たりの発熱量の平均が燃料引取業者が指定した値から大きく乖離している汚泥排出事業所側システム1について、生成される有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げるための処理条件を通知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性汚泥を固形化燃料として流通させる際に固形化燃料の品質管理を行うための品質管理装置,コンピュータをかかる品質管理装置として機能させるための品質管理プログラムに、関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場,化学工場,製紙工場,下水処理場等の汚泥排出事業所から排出される有機性汚泥は、脱水機により脱水処理した後に、乾燥機により乾燥処理をすることにより、固形燃料として用いることができる。例えば、本来石炭を燃料とするボイラーにおいて、かかる固形燃料(以下、「有機性汚泥固形化燃料」という)を、石炭に代用することができる。このようなリサイクルのモデルが実現されるならば、汚泥を廃棄することによる環境破壊が防止されるばかりか、化石燃料の節約にもなり、リサイクルの系全体におけるCO2
の排出力の削減にもなる。
【0003】
但し、汚泥排出事業所の運用業者とボイラー設置事業所の運用業者とは、相互に異なるケースが多い。また、汚泥排出事業所に脱水機及び乾燥機を設置させ、有機性汚泥固形化燃料の生成まで当該汚泥排出事業所の運用業者に行わしめることとしても、一つのボイラー設置事業所が本来必要としている燃料の量に比較して、一つの汚泥排出事業所において生成される有機性汚泥固形化燃料の量は少ないので、複数の汚泥排出事業所において生成された有機性汚泥固形化燃料を纏めて、ボイラー設置事業所に納入する必要がある。そのため、上述したリサイクルのモデルを実用化するには、かかる有機性汚泥固形化燃料を汚泥排出事業所とボイラー設置事業所との間で流通させる流通業者が必要となる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-146306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の汚泥排出事業所において生成された有機性汚泥固形化燃料を纏めて一つのボイラー設置事業所に納入する場合には、以下の問題が生じる。即ち、各汚泥排出事業所において排出される有機性汚泥の固形分の含有比率(即ち、含水率)は、各汚泥排出事業所における事業内容に依り千差万別であるので、生成される有機性汚泥固形化燃料の品質(即ち、単位量当たりの発熱量)も均等にはなりえない。従って、複数の汚泥排出事業所において生成された有機性汚泥固形化燃料を集めると、集めた有機性汚泥固形化燃料の全体としての品質(総発熱量)が、ボイラー設置事業所が要求する品質(総発熱量)を満たさない場合が生じうる。
【0006】
かかる場合に、品質の悪い(単位量当たりの発熱量が少ない)有機性汚泥固形化燃料の品質を上げるには、脱水機での脱水率を上げたり、木くず等の助剤を添加したり、乾燥機での乾燥率を上げることで、対処は可能である。
【0007】
しかしながら、脱水機での脱水率の向上には自ずから限界がある。また、助剤添加は、かかる助剤を排出しない業者にとっては、これを購入するコストが掛かってしまうという問題がある。また、乾燥機での乾燥率を上げると却って乾燥機での化石燃料の使用量が増
えてしまい、CO2の排出量を増やし、コストを上昇させてしまう。よって、全ての有機
性汚泥固形化燃料の品質を均等にすることは現実的ではない。
【0008】
なお、有機性汚泥固形化燃料は、ボイラー以外においても、従来の石炭や木材に代えて使用することができるので、以下、有機性汚泥固形化燃料を引き取る事業所を、「燃料引取事業所」という。
【0009】
一方、所定の最低水準を満たしている限り、個々の有機性汚泥固形化燃料の品質のばらつきがあったとしても、様々な品質の有機性汚泥固形化燃料を混合してボイラーに投入することで、ボイラーの出力を安定させることは可能である。
【0010】
そこで、本願発明の課題は、有機性汚泥固形化燃料の生成設備を備えた汚泥排出事業所と燃料引取事業所との間に介在して、有機性汚泥固形化燃料の流通を支援する場合において、有機性汚泥固形化燃料の生成コストの増加を最小限に抑えつつ、複数の汚泥排出事業所において生成される有機性汚泥固形化燃料の全体としての品質を所定値に保つための有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置,及び、コンピュータをかかる品質管理装置として機能させるための有機性汚泥固形化燃料の品質管理プログラムを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置,本発明による有機性汚泥固形化燃料の品質管理プログラムを実行したコンピュータは、各汚泥排出事業所において前記燃料化設備によって生成された有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量が入力される入力装置と、前回の回収時以後入力された各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に格納された前記各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回の回収時において各汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料の総和及び単位当たりの平均発熱量を算出するとともに、全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を算出する算出手段と、前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が所定条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしていないと判定された場合に、前記単位当たりの平均発熱量が前記所定条件から乖離する汚泥排出事業所を、処理条件変更対象と決定する決定手段と、前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所について、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する処理条件変更手段と、前記処理条件変更手段により変更された処理条件と、処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所に通知する通知手段とを、備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成された本発明によると、有機性汚泥固形化燃料の生成コストの増加を最小限に抑えつつ、複数の汚泥排出事業所において生成される有機性汚泥固形化燃料の全体としての品質を所定値に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有機性汚泥固形化燃料のリサイクル系の概念図
【図2】有機性汚泥固形化燃料の品質管理システムの実施の形態であるネットワークシステムの概略構成を示すブロック図
【図3】汚泥排出事業所側システムのハードディスクに格納されている処理条件テーブルのデータ構造を示す表
【図4】中央コンピュータのハードディスクに格納されている助剤データベースのデータ構造を示す表
【図5】中央コンピュータのハードディスクに格納されている乾燥データベースのデータ構造を示す表
【図6】中央コンピュータのハードディスクに格納されている乾燥データベースのデータ構造を示す表
【図7】中央コンピュータのハードディスクに格納されている乾燥データベースのデータ構造を示す表
【図8】汚泥排出事業所側システムにおいて実行される処理を示すフローチャート
【図9】汚泥性状入力画面を示す図
【図10】中央コンピュータにおいて実行される処理を示すフローチャート
【図11】図11のS105において実行される優先順位決定処理サブルーチンを示すフローチャート
【図12】図11のS107において実行される予想発熱量再計算処理サブルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本案の実施の形態を説明する。
<有機性汚泥のリサイクル系>
図1は、本発明により実現される有機汚泥を有機性汚泥固形化燃料の形で流通させるリサイクル系の概念図である。
【0015】
中央コンピュータ2を運用している流通業者は、固形燃料に対応したボイラ121を有する燃料引取事業所120を運用する業者との間で、有機性汚泥固形化燃料の継続的供給契約を締結しており、当該契約により合意された平均品質(例えば、単位当りの発熱量=3000kcl/kg)を満たす一定量の有機性汚泥固形化燃料を、定期的に納入する債務を負う。
【0016】
一方、流通業者と有機性汚泥固形化燃料の製造売買契約を締結した食品工場,化学工場,下水処理場のような汚泥発生源101を有する汚泥排出事業所100には、脱水機102及び乾燥機103が設置されている。これら脱水機102及び乾燥機103は、当該汚泥排出事業所100の運用業者が、自ら購入して設置するか、後述する流通業者から借り受けて設置したものである。
【0017】
上記汚泥発生源101から発生する汚泥は、汚泥発生源101の種類により多少のばらつきがあるものの、大体含水率97.5〜99.5%程度である。なお、汚泥中の固形分に占める有機質の比率は、汚泥発生源101の種類に依りバラツキはあるものの、どの汚泥においても、含水率が低ければ低い程、汚泥の品質(発熱量)が高くなる。ここで、汚泥の単位当たりの発熱量は、含水率0%の汚泥の単位当たりの発熱量を基に計算することができる。そのため、各汚泥排出事業所の汚泥について、含水率と単位当たりの発熱量との関係を用意しておくことで、汚泥の単位当たりの発熱量を含水率で評価することができる。
【0018】
脱水機102は、汚泥発生源101から発生した汚泥を脱水処理することにより、その含水率を45〜85%に下げる。乾燥機103は、脱水機102により脱水処理された汚泥を加熱することにより、その含水率を30%以下に下げる。乾燥機103によって乾燥処理された汚泥を適度なサイズに調整したものが、有機性汚泥固形化燃料Cであり、図示せぬ貯蔵庫に蓄えられる。なお、有機性汚泥固定化燃料Cの含水率(従って、品質)は、脱水機102及び乾燥機103の性能等の要因に依り異なる。これら脱水機102及び乾燥機103を総称して、「燃料化設備」といい、これら脱水機102及び乾燥機103による汚泥に対する処理を、「燃料化処理」という。
【0019】
各汚泥排出事業所100に設置された汚泥排出事業所側システム1は、流通業者が運用する中央コンピュータ2に接続されており、中央コンピュータ2に対して燃料化処理に関する実測データを通知するとともに、中央コンピュータ2からの処理条件を受信する。
【0020】
この処理条件は、各汚泥排出事業所100から収集した有機性汚泥固形化燃料Cの平均の品質が、上記燃料引取事業所120を運用する業者との継続的供給契約において合意された平均品質を満たすようにするために、中央コンピュータ2により決定された条件であり、具体的には、助剤添加率,目標含水率,乾燥機運転条件である。このように中央コンピュータ2から受信した処理条件のうち乾燥機運転条件(乾燥機風量条件及び乾燥機温度条件)は、汚泥排出事業所100におけるシステム構成に依り、LAN(ローカルエリアネットワーク)を通じて直接乾燥機103に設定されるか、担当者によって乾燥機103にマニュアル設定される。その結果、乾燥機103は、設定された風量で、設定された温度の熱風を汚泥に吹きつける。また、作業者は、助剤添加率に従って、脱水機に投入した汚泥に助剤を添加し、乾燥後の汚泥の含水率が目標含水率となるように乾燥機103の運転時間を調整する。
【0021】
そして、流通業者が運用する回収車111が、定期的(例えば、週に1回)に各汚泥排出事業所100を巡回して有機性汚泥固形化燃料Cを収集し、まとめて、燃料引取事業所120に納入(ホッパ122に投入)する。
【0022】
上記継続的供給契約における同意に基づき、流通業者は、燃料引取事業所120の運用業者から有機性汚泥固形化燃料Cの代金を徴収する。そして、自らの経費及び利益を引いた残額を、有機性汚泥固形化燃料Cの回収量(ないし、その発熱量)に応じて、個々の汚泥排出事業所100の運用業者に分配するのである。
<ネットワークシステム>
次に、以上のようなリサイクル系を実現するために構築されたネットワーシステムの構成を、図2に基づいて説明する。
【0023】
図2に示すように、このネットワークシステムは、上述した各汚泥排出事業所100に夫々設置された複数の汚泥排出事業所側システム1と、中央コンピュータ2とを、ネットワークNWを通じて接続することによって、構成されている。
【0024】
各汚泥排出事業所側システム1は、ネットワーク接続機能を有するクライアントコンピュータであり、相互にバスBによって接続されたCPU10,RAM11,キーボード12,ディスプレイ13,通信アダプタ14及びハードディスク15から、構成されている。
【0025】
CPU10は、ハードディスク15からプログラムを読み出し、当該プログラムに従った処理を実行する処理装置である。
【0026】
RAM11は、CPU10が上記処理をする際に作業領域を展開する主記憶装置である。
【0027】
キーボード12は、CPU10に対して各種コマンド又はデータを入力するためのキーボードであり、ポインティングデバイスを含む。
【0028】
ディスプレイ13は、CPU10による処理結果を表示するための表示装置である。
【0029】
通信アダプタ14は、ネットワークNWのプロトコルに従ったデータ通信を司るインタフェースである。
【0030】
ハードディスク15は、各種プログラム及び各種データを格納する固定記憶媒体である。このハードディスク15が格納している各種プログラムには、図8の処理を実行するプログラム16が含まれている。また、このハードディスク15が格納している各種データには、上記処理条件を記録する処理条件テーブル17が含まれている。図3は、この処理条件テーブル17の具体的データ構造を示す表である。この図3に示すようにこの処理条件テーブル17には、中央コンピュータ2から通知された助剤添加率,目標含水率,乾燥機風量条件,乾燥機温度条件の他、乾燥機103の延べ運転時間を示す乾燥機運転時間が、登録される。
【0031】
一方中央コンピュータ2は、ネットワークサーバとして機能するコンピュータであり、バスによって相互に接続接続されたCPU20,RAM21,キーボード22,ディスプレイ23,通信アダプタ24及びハードディスク25から、構成されている。これらのハードウェア20〜25の機能は、上述した汚泥排出事業者側システム1のものと同じであるので、その説明を省略する。但し、ハードディスク25には、Webサーバプログラム及び図10〜図12に示す処理を実行するプログラム26,図4に示す助剤データベース28,図5〜図7に示す乾燥データベース27が格納されている。なお、キーボード22及び通信アダプタ24が入力装置に当たり、ハードディスク25が記憶装置に当たる。
【0032】
助剤データベース28は、脱水機102に投入される汚泥の含水率の各具体値及び助剤の添加率の各具体値の組合せ毎に、実験により求められた脱水後における汚泥の含水率を対応付けたテーブルである。なお、かかる含水率と助剤添加率との関係は、脱水機102の種類に依存するので、助剤データベース28は脱水機102の種類毎に用意する必要がある。なお、図4(a)は、当該助剤データベース28の具体例をマトリックス形式で示した表であり、同(b)は、同具体例をグラフ形式で示したグラフである。
【0033】
乾燥データベース27は、各汚泥排出事業所100に設置されている乾燥機103毎,及び、目標とする有機性汚泥固形化燃料Cの含水率毎に用意されており、乾燥機103に設定される風量条件の各具体値及び投入される汚泥の含水率の各具体値の組合せ毎に、対応する乾燥機103において目標とする含水率の有機性汚泥固形化燃料Cを得るために必要な温度条件を対応付けたテーブルである。なお、図5は、A工場の乾燥機103により含水率30%の有機性汚泥固形化燃料Cを目標とする場合の乾燥データベース27,図6は、A工場の乾燥機103により含水率35%の有機性汚泥固形化燃料Cを目標とする場合の乾燥データベース27,A工場の乾燥機103により含水率25%の有機性汚泥固形化燃料Cを目標とする場合の乾燥データベース27である。また、各図(a)は、各乾燥データベース27の具体例をマトリックス形式で示した表であり、各図(b)は、同具体例をグラフ形式で示したグラフである。
<プログラム>
[汚泥排出事業所側]
図8は、汚泥排出事業所側システム1のCPU10がプログラム16に従って実行する処理のうち、担当者によって毎日所定時刻に実行される実測データの送信及び処理条件テーブル17の更新のための処理である。
【0034】
当該処理は、担当者が入力装置12を用いて所定コマンドを入力することによりスタートする。そして、スタート後最初のS001において、CPU10は、ディスプレイ13上に、図9に示す汚泥性状入力画面を表示する。図9に示すように、この汚泥性状入力画面には、汚泥量入力欄31,含水率入力欄32,脱水機運転時間入力欄33,脱水後含水率入力欄34,脱水汚泥量入力欄35,乾燥後含水率入力欄36,乾燥汚泥量入力欄37,乾燥機使用ガス量入力欄38,送信ボタン39及び終了ボタン40が、含まれている。
【0035】
これらのうち、汚泥量入力欄31には、担当者が実測した汚泥発生源101から発生した汚泥の入力日における発生量が入力される。また、含水率入力欄32には、担当者が実測した汚泥発生源101から発生した汚泥の含水率が入力される。また、脱水機運転時間入力欄33には、担当者が実測した脱水機102の入力日における運転時間が入力される。また、脱水後含水率入力欄34には、担当者が実測した脱水機102による脱水後における汚泥の含水率が入力される。また、脱水汚泥量入力欄35には、担当者が実測した脱水機102による入力日における脱水後の汚泥量が入力される。また、乾燥後含水率入力欄36には、担当者が実測した乾燥機103による乾燥後における汚泥の含水率が入力される。また、乾燥汚泥量入力欄37には、担当者が実測した乾燥機103による入力日における乾燥後の汚泥量が入力される。また、乾燥機使用ガス量入力欄38には、担当者が実測した入力日における乾燥機103のガス使用量が入力される。
【0036】
次のS002では、CPU10は、送信ボタン39又は終了ボタン40が入力されるのを待つ。そして、何れかのボタン39,40が入力されると、CPU10は、入力されたボタンが送信ボタン39であるか終了ボタン40であるかのチェックを行う。そして、送信ボタン39が入力された場合には、CPU10は、S004において、汚泥性状入力画面の各欄31〜37に入力されたデータを、中央コンピュータ2へ送信する。
【0037】
次のS003では、CPU10は、中央コンピュータ2から処理条件の応答(S110)が送信されて来るのを待つ。そして、処理条件の応答があると、CPU10は、S006において、受信した処理条件により、処理条件テーブル17を更新する。また、実際の乾燥機の運転時間を、同処理条件テーブル17上の乾燥機運転時間に加算する。S006を完了すると、CPU10は、処理をS001に戻す。
【0038】
一方、終了ボタン40が入力されたとS003にて判断した場合には、CPU10は、当該プログラムによる処理を終了する。
[中央コンピュータ側]
図10は、中央コンピュータ2のCPU20がプログラム26に従って実行する処理のうち、毎日所定時間に自動実行される各汚泥排出事業所毎の処理条件を決定するための処理である。
【0039】
当該処理がスタートして最初のS100では、CPU20は、各汚泥排出事業所側システム1から送信(S004)されたデータの受信を待つ。そして、全ての汚泥排出事業所側システム1から通信アダプタ24を通じてデータを受信すると、CPU20は、処理をS101へ進める。なお、各汚泥排出事業所側システム1から取得されたデータは、担当者により、キーボード22を用いて入力されても良い。即ち、これら通信アダプタ24及びキーボード22が、入力装置に相当する。
【0040】
S101では、CPU20は、入力された各汚泥排出事業所側システム1から得られたデータを、ハードディスク25内に記憶する。当該処理がなされることにより、ハードディスク25内には、過去に各汚泥排出事業所側システム1から得られたデータの履歴が、蓄積されることとなる。
【0041】
次のS102では、CPU20は、次回の各汚泥排出事業所100からの有機性汚泥固形化燃料Cの回収時において回収される有機性汚泥固形化燃料Cの平均発熱量を算出する。即ち、各汚泥排出事業所100毎に、前回の回収時から当該処理時までに受信してハードディスク25内に記憶されているデータ中の乾燥後汚泥量及び乾燥後含水率に基づいて、現在貯蔵庫に貯蔵されている有機性汚泥固形化燃料Cの量及び発熱量の総和を算出するとともに、当該値に基づいて一日当たりの乾燥後汚泥量及び乾燥後含水率の平均を算出し、乾燥後汚泥量平均に次回回収時までの残り日数を掛け合わせることにより、次回回収時
までに追加されるであろう有機性汚泥固形化燃料Cの量の総和を算出した上で、前者の有機性汚泥固形化燃料Cの量及び後者の有機性汚泥固形化燃料Cの量の総和を合算する。このようにして各汚泥排出事業所100毎に計算した有機性汚泥固形化燃料Cの量の総和及び発熱量の平均値の積の全汚泥排出事業所100についての総和(即ち、次回回収時において全汚泥排出事業所100から回収されるであろう全ての有機性汚泥固形化燃料Cの発熱量の総和)を、有機性汚泥固形化燃料Cの量の全汚泥排出事業所100についての総和により除することにより、次回回収時において全汚泥排出事業所100から回収されるであろう全ての有機性汚泥固形化燃料Cの予想平均発熱量を算出する。そして、CPU20は、算出した予想平均発熱量が、燃料引取事業所120の運用業者との間で合意された品質(所定条件)を満たしているか否かを判定する(判定手段に相当)。
【0042】
そして、予想平均発熱量が品質を満たしているとS102にて判定した場合には、CPU20は、S110において、前日において各汚泥排出事業所側システム1に提示していた処理条件を、そのまま、各汚泥排出事業所側システム1に送信する。
【0043】
一方、予想平均発熱量が品質を満たしていないとS102にて判定した場合には、CPU20は、S103において、各汚泥排出事業所側システム1についてS102にて算出した発熱量の平均が、燃料引取事業所120の運用業者との間で合意された品質から乖離している程度(乖離度)を、チェックする。
【0044】
次のS104では、S103にてチェックした乖離度の大きい汚泥排出事業所100を、大きいものから順に所定数リストアップする。
【0045】
次のS105では、CPU20は、優先順位決定処理を実行する。図11は、S105にて実行される優先順位決定処理サブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンに入って最初のS201では、CPU20は、S104にてリストアップされた汚泥排出事業所100を、S102にて算出した有機性汚泥固形化燃料Cの総和が大きい順にソートすることにより、優先順位を決定する。
【0046】
S202では、CPU20は、S201にて決定された順位をチェックして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があるか否かを判定する。そして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所がなければ、そのまま当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0047】
これに対して、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があれば、CPU20は、次のS203において、同順位となっている複数の汚泥排出事業所100のうち、助剤制約(即ち、予め、助剤の使用拒否を流通業者に申し出ていること)がない方の汚泥排出事業所100を、優先度を高く決定する。
【0048】
次のS204では、CPU20は、再度順位をチェックして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があるか否かを判定する。そして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所がなければ、そのまま当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0049】
これに対して、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があれば、CPU20は、次のS205において、同順位となっている複数の汚泥排出事業所100を、処理コスト(即ち、予め申告されている有機性汚泥固形化燃料Cの単位量当たりのコスト)が少ない順に、優先順位を付け直す。
【0050】
次のS206では、CPU20は、再度順位をチェックして、複数の汚泥排出事業所1
00が同順位となっている箇所があるか否かを判定する。そして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所がなければ、そのまま当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0051】
これに対して、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があれば、CPU20は、次のS207において、同順位となっている複数の汚泥排出事業所100を、排出CO2(即ち、S102にて算出された一日当たリの乾燥後汚泥量に対する乾燥機使
用ガス量の比率)が少ない順に、優先順位を付け直す。S207を完了すると、CPU20は、当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0052】
優先順位決定サブルーチンから処理が戻された図10のメインルーチンでは、CPU20は、処理をS105からS106へ進める。
【0053】
S106では、S105にて決定された優先順位が最も高い汚泥排出事業所100を処理対象と決定としてから、処理をS107へ進める。これらS104乃至S106の処理,及び、後述するS109の処理を実行するCPU20が、決定手段に相当する。
【0054】
S107では、CPU20は、S106(若しくは、後述するS109)にて処理対象と決定された汚泥排出事業所100について、予想発熱量再計算処理を実行する。図12は、S107にて実行される予想発熱量再計算処理サブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンに入って最初のS301では、CPU20は、処理対象汚泥排出事業所100について助剤制約があるか否かをチェックする。そして、CPU20は、助剤制約があれば処理をS302へ進め、助剤制約がなければ処理をS304へ進める。
【0055】
S304では、CPU20は、当該処理対象汚泥排出事業所100に処理条件として通知すべき助剤添加率の値を、前日に当該処理対象汚泥排出事業所100に通知していた値よりも、助剤データベース28において1段上の値に変更する。
【0056】
次のS305では、CPU20は、助剤データベース28における、S101にて受信した含水率及びS304にて決定した助剤添加量に対応した脱水後含水率を読み出す。また、CPU20は、101にて受信した乾燥後含水率の値よりも1段低い含水率を特定し(含水率特定手段に相当)、特定した含水率を目標とする当該処理対象汚泥排出事業所100についての乾燥データベース27を読み出す。次に、CPU20は、読み出した乾燥データベース27における、上記脱水後含水率に対応する欄から、前日に当該処理対象汚泥排出事業所100に通知していた値よりも一段大きい、乾燥機風量条件及び乾燥機温度条件の組合せを読み出す。これらS304及びS305の処理を実行するCPU20が、処理条件変更手段に相当する。
【0057】
次のS306では、CPU20は、S305にて選択した含水率の有機性汚泥固形化燃料Cが明日から次回回収までの間に当該処理対象汚泥排出事業所100から得られると想定した上で、S102における予想平均発熱量の再計算を実行する(再計算手段に相当)。S306を完了すると、CPU20は、当該予想発熱量再計算サブルーチンを終了して、処理を図10のメインルーチンに戻す。
【0058】
一方、S302では、CPU20は、101にて受信した乾燥後含水率の値よりも1段低い含水率を特定し(含水率特定手段に相当)、特定した含水率を目標とする当該処理対象汚泥排出事業所100についての乾燥データベース27を読み出す。次に、CPU20は、読み出した乾燥データベース27における、S101にて受信した脱水後含水率に対応する欄から、前日に当該処理対象汚泥排出事業所100に通知していた値よりも一段大きい、乾燥機風量条件及び乾燥機温度条件の組合せを読み出す(処理条件変更手段に相当
)。
【0059】
次のS303では、CPU20は、S302にて選択した含水率の有機性汚泥固形化燃料Cが明日から次回回収までの間に当該処理対象汚泥排出事業所100から得られると想定した上で、S102における予想平均発熱量の再計算を実行する(再計算手段に相当)。S303を完了すると、CPU20は、当該予想発熱量再計算サブルーチンを終了して、処理を図10のメインルーチンに戻す。
【0060】
処理が戻された図10のメインルーチンでは、CPU20は、処理をS107からS108へ進め、S303又はS306にて算出した条件変更後の予想平均発熱量が、燃料引取事業所120の運用業者との間で合意された品質を満たしているか否かを再判定する(再判定手段)。
【0061】
そして、予想平均発熱量が上記品質を満たしていないとS108にて判定した場合には、CPU20は、S109において、次の優先順位の汚泥排出事業所100を処理対象と決定する(決定手段に相当)。なお、S104にてリストアップした汚泥排出事業所100のうち未処理のものがなくなった場合には、優先順位が最上位の汚泥排出事業所を、再度処理対象と決定する。この場合、S304での助剤添加率の変更は、前回の処理において変更された助剤添加率から、更に1段高い助剤添加率に変更することになる。また、S305又はS302にて読み出す乾燥データベース27は、前回の処理において読み出したものよりも一段低い含水率を目標とするものに変更されることになる。
【0062】
これに対して、予想平均発熱量が上記品質を満たしているとS108にて判定した場合には、CPU20は、S110において、S107の処理対象とされていない汚泥排出事業所100については、前日において各汚泥排出事業所側システム1に提示していた処理条件を、そのまま、汚泥排出事業所側システム1に送信し、S107の処理対象とされた汚泥排出事業所100については、S304及びS305又はS302にて変更された処理条件を、汚泥排出事業所側システム1に送信する。
【0063】
S110の次に実行されるS111では、CPU20は、S110での処理条件の送信が全ての汚泥排出事業所側システム1について完了するのを待つ。
【0064】
次のS112では、終了コマンドが入力されているか否かをチェックして、終了コマンドが入力されていなければ、翌日における各汚泥排出事業所側システム1からのデータ受信を待つために、処理をS101へ戻す。これに対して、終了コマンドが入力されている場合には、当該プログラム26による処理を終了する。
【0065】
なお、本実施例例では、直接乾燥式の乾燥機を用いたが、水蒸気等で加熱する間接乾燥式の乾燥機を用いることもできる。その場合、乾燥機運転条件は、例えば、乾燥機内の滞留時間等である。
【符号の説明】
【0066】
1 汚泥排出事業所側システム
2 中央コンピュータ
17 処理条件テーブル
20 CPU
22 キーボード
24 通信アダプタ
25 ハードディスク
26 プログラム
27 乾燥データベース
28 助剤データベース
100 汚泥排出事業所
101 汚泥発生源
102 脱水機
103 乾燥機
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性汚泥を固形化燃料として流通させる際に固形化燃料の品質管理を行うための品質管理装置,コンピュータをかかる品質管理装置として機能させるための品質管理プログラムに、関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場,化学工場,製紙工場,下水処理場等の汚泥排出事業所から排出される有機性汚泥は、脱水機により脱水処理した後に、乾燥機により乾燥処理をすることにより、固形燃料として用いることができる。例えば、本来石炭を燃料とするボイラーにおいて、かかる固形燃料(以下、「有機性汚泥固形化燃料」という)を、石炭に代用することができる。このようなリサイクルのモデルが実現されるならば、汚泥を廃棄することによる環境破壊が防止されるばかりか、化石燃料の節約にもなり、リサイクルの系全体におけるCO2
の排出力の削減にもなる。
【0003】
但し、汚泥排出事業所の運用業者とボイラー設置事業所の運用業者とは、相互に異なるケースが多い。また、汚泥排出事業所に脱水機及び乾燥機を設置させ、有機性汚泥固形化燃料の生成まで当該汚泥排出事業所の運用業者に行わしめることとしても、一つのボイラー設置事業所が本来必要としている燃料の量に比較して、一つの汚泥排出事業所において生成される有機性汚泥固形化燃料の量は少ないので、複数の汚泥排出事業所において生成された有機性汚泥固形化燃料を纏めて、ボイラー設置事業所に納入する必要がある。そのため、上述したリサイクルのモデルを実用化するには、かかる有機性汚泥固形化燃料を汚泥排出事業所とボイラー設置事業所との間で流通させる流通業者が必要となる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-146306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の汚泥排出事業所において生成された有機性汚泥固形化燃料を纏めて一つのボイラー設置事業所に納入する場合には、以下の問題が生じる。即ち、各汚泥排出事業所において排出される有機性汚泥の固形分の含有比率(即ち、含水率)は、各汚泥排出事業所における事業内容に依り千差万別であるので、生成される有機性汚泥固形化燃料の品質(即ち、単位量当たりの発熱量)も均等にはなりえない。従って、複数の汚泥排出事業所において生成された有機性汚泥固形化燃料を集めると、集めた有機性汚泥固形化燃料の全体としての品質(総発熱量)が、ボイラー設置事業所が要求する品質(総発熱量)を満たさない場合が生じうる。
【0006】
かかる場合に、品質の悪い(単位量当たりの発熱量が少ない)有機性汚泥固形化燃料の品質を上げるには、脱水機での脱水率を上げたり、木くず等の助剤を添加したり、乾燥機での乾燥率を上げることで、対処は可能である。
【0007】
しかしながら、脱水機での脱水率の向上には自ずから限界がある。また、助剤添加は、かかる助剤を排出しない業者にとっては、これを購入するコストが掛かってしまうという問題がある。また、乾燥機での乾燥率を上げると却って乾燥機での化石燃料の使用量が増
えてしまい、CO2の排出量を増やし、コストを上昇させてしまう。よって、全ての有機
性汚泥固形化燃料の品質を均等にすることは現実的ではない。
【0008】
なお、有機性汚泥固形化燃料は、ボイラー以外においても、従来の石炭や木材に代えて使用することができるので、以下、有機性汚泥固形化燃料を引き取る事業所を、「燃料引取事業所」という。
【0009】
一方、所定の最低水準を満たしている限り、個々の有機性汚泥固形化燃料の品質のばらつきがあったとしても、様々な品質の有機性汚泥固形化燃料を混合してボイラーに投入することで、ボイラーの出力を安定させることは可能である。
【0010】
そこで、本願発明の課題は、有機性汚泥固形化燃料の生成設備を備えた汚泥排出事業所と燃料引取事業所との間に介在して、有機性汚泥固形化燃料の流通を支援する場合において、有機性汚泥固形化燃料の生成コストの増加を最小限に抑えつつ、複数の汚泥排出事業所において生成される有機性汚泥固形化燃料の全体としての品質を所定値に保つための有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置,及び、コンピュータをかかる品質管理装置として機能させるための有機性汚泥固形化燃料の品質管理プログラムを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置,本発明による有機性汚泥固形化燃料の品質管理プログラムを実行したコンピュータは、各汚泥排出事業所において前記燃料化設備によって生成された有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量が入力される入力装置と、前回の回収時以後入力された各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に格納された前記各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回の回収時において各汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料の総和及び単位当たりの平均発熱量を算出するとともに、全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を算出する算出手段と、前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が所定条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしていないと判定された場合に、前記単位当たりの平均発熱量が前記所定条件から乖離する汚泥排出事業所を、処理条件変更対象と決定する決定手段と、前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所について、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する処理条件変更手段と、前記処理条件変更手段により変更された処理条件と、処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所に通知する通知手段とを、備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成された本発明によると、有機性汚泥固形化燃料の生成コストの増加を最小限に抑えつつ、複数の汚泥排出事業所において生成される有機性汚泥固形化燃料の全体としての品質を所定値に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有機性汚泥固形化燃料のリサイクル系の概念図
【図2】有機性汚泥固形化燃料の品質管理システムの実施の形態であるネットワークシステムの概略構成を示すブロック図
【図3】汚泥排出事業所側システムのハードディスクに格納されている処理条件テーブルのデータ構造を示す表
【図4】中央コンピュータのハードディスクに格納されている助剤データベースのデータ構造を示す表
【図5】中央コンピュータのハードディスクに格納されている乾燥データベースのデータ構造を示す表
【図6】中央コンピュータのハードディスクに格納されている乾燥データベースのデータ構造を示す表
【図7】中央コンピュータのハードディスクに格納されている乾燥データベースのデータ構造を示す表
【図8】汚泥排出事業所側システムにおいて実行される処理を示すフローチャート
【図9】汚泥性状入力画面を示す図
【図10】中央コンピュータにおいて実行される処理を示すフローチャート
【図11】図11のS105において実行される優先順位決定処理サブルーチンを示すフローチャート
【図12】図11のS107において実行される予想発熱量再計算処理サブルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本案の実施の形態を説明する。
<有機性汚泥のリサイクル系>
図1は、本発明により実現される有機汚泥を有機性汚泥固形化燃料の形で流通させるリサイクル系の概念図である。
【0015】
中央コンピュータ2を運用している流通業者は、固形燃料に対応したボイラ121を有する燃料引取事業所120を運用する業者との間で、有機性汚泥固形化燃料の継続的供給契約を締結しており、当該契約により合意された平均品質(例えば、単位当りの発熱量=3000kcl/kg)を満たす一定量の有機性汚泥固形化燃料を、定期的に納入する債務を負う。
【0016】
一方、流通業者と有機性汚泥固形化燃料の製造売買契約を締結した食品工場,化学工場,下水処理場のような汚泥発生源101を有する汚泥排出事業所100には、脱水機102及び乾燥機103が設置されている。これら脱水機102及び乾燥機103は、当該汚泥排出事業所100の運用業者が、自ら購入して設置するか、後述する流通業者から借り受けて設置したものである。
【0017】
上記汚泥発生源101から発生する汚泥は、汚泥発生源101の種類により多少のばらつきがあるものの、大体含水率97.5〜99.5%程度である。なお、汚泥中の固形分に占める有機質の比率は、汚泥発生源101の種類に依りバラツキはあるものの、どの汚泥においても、含水率が低ければ低い程、汚泥の品質(発熱量)が高くなる。ここで、汚泥の単位当たりの発熱量は、含水率0%の汚泥の単位当たりの発熱量を基に計算することができる。そのため、各汚泥排出事業所の汚泥について、含水率と単位当たりの発熱量との関係を用意しておくことで、汚泥の単位当たりの発熱量を含水率で評価することができる。
【0018】
脱水機102は、汚泥発生源101から発生した汚泥を脱水処理することにより、その含水率を45〜85%に下げる。乾燥機103は、脱水機102により脱水処理された汚泥を加熱することにより、その含水率を30%以下に下げる。乾燥機103によって乾燥処理された汚泥を適度なサイズに調整したものが、有機性汚泥固形化燃料Cであり、図示せぬ貯蔵庫に蓄えられる。なお、有機性汚泥固定化燃料Cの含水率(従って、品質)は、脱水機102及び乾燥機103の性能等の要因に依り異なる。これら脱水機102及び乾燥機103を総称して、「燃料化設備」といい、これら脱水機102及び乾燥機103による汚泥に対する処理を、「燃料化処理」という。
【0019】
各汚泥排出事業所100に設置された汚泥排出事業所側システム1は、流通業者が運用する中央コンピュータ2に接続されており、中央コンピュータ2に対して燃料化処理に関する実測データを通知するとともに、中央コンピュータ2からの処理条件を受信する。
【0020】
この処理条件は、各汚泥排出事業所100から収集した有機性汚泥固形化燃料Cの平均の品質が、上記燃料引取事業所120を運用する業者との継続的供給契約において合意された平均品質を満たすようにするために、中央コンピュータ2により決定された条件であり、具体的には、助剤添加率,目標含水率,乾燥機運転条件である。このように中央コンピュータ2から受信した処理条件のうち乾燥機運転条件(乾燥機風量条件及び乾燥機温度条件)は、汚泥排出事業所100におけるシステム構成に依り、LAN(ローカルエリアネットワーク)を通じて直接乾燥機103に設定されるか、担当者によって乾燥機103にマニュアル設定される。その結果、乾燥機103は、設定された風量で、設定された温度の熱風を汚泥に吹きつける。また、作業者は、助剤添加率に従って、脱水機に投入した汚泥に助剤を添加し、乾燥後の汚泥の含水率が目標含水率となるように乾燥機103の運転時間を調整する。
【0021】
そして、流通業者が運用する回収車111が、定期的(例えば、週に1回)に各汚泥排出事業所100を巡回して有機性汚泥固形化燃料Cを収集し、まとめて、燃料引取事業所120に納入(ホッパ122に投入)する。
【0022】
上記継続的供給契約における同意に基づき、流通業者は、燃料引取事業所120の運用業者から有機性汚泥固形化燃料Cの代金を徴収する。そして、自らの経費及び利益を引いた残額を、有機性汚泥固形化燃料Cの回収量(ないし、その発熱量)に応じて、個々の汚泥排出事業所100の運用業者に分配するのである。
<ネットワークシステム>
次に、以上のようなリサイクル系を実現するために構築されたネットワーシステムの構成を、図2に基づいて説明する。
【0023】
図2に示すように、このネットワークシステムは、上述した各汚泥排出事業所100に夫々設置された複数の汚泥排出事業所側システム1と、中央コンピュータ2とを、ネットワークNWを通じて接続することによって、構成されている。
【0024】
各汚泥排出事業所側システム1は、ネットワーク接続機能を有するクライアントコンピュータであり、相互にバスBによって接続されたCPU10,RAM11,キーボード12,ディスプレイ13,通信アダプタ14及びハードディスク15から、構成されている。
【0025】
CPU10は、ハードディスク15からプログラムを読み出し、当該プログラムに従った処理を実行する処理装置である。
【0026】
RAM11は、CPU10が上記処理をする際に作業領域を展開する主記憶装置である。
【0027】
キーボード12は、CPU10に対して各種コマンド又はデータを入力するためのキーボードであり、ポインティングデバイスを含む。
【0028】
ディスプレイ13は、CPU10による処理結果を表示するための表示装置である。
【0029】
通信アダプタ14は、ネットワークNWのプロトコルに従ったデータ通信を司るインタフェースである。
【0030】
ハードディスク15は、各種プログラム及び各種データを格納する固定記憶媒体である。このハードディスク15が格納している各種プログラムには、図8の処理を実行するプログラム16が含まれている。また、このハードディスク15が格納している各種データには、上記処理条件を記録する処理条件テーブル17が含まれている。図3は、この処理条件テーブル17の具体的データ構造を示す表である。この図3に示すようにこの処理条件テーブル17には、中央コンピュータ2から通知された助剤添加率,目標含水率,乾燥機風量条件,乾燥機温度条件の他、乾燥機103の延べ運転時間を示す乾燥機運転時間が、登録される。
【0031】
一方中央コンピュータ2は、ネットワークサーバとして機能するコンピュータであり、バスによって相互に接続接続されたCPU20,RAM21,キーボード22,ディスプレイ23,通信アダプタ24及びハードディスク25から、構成されている。これらのハードウェア20〜25の機能は、上述した汚泥排出事業者側システム1のものと同じであるので、その説明を省略する。但し、ハードディスク25には、Webサーバプログラム及び図10〜図12に示す処理を実行するプログラム26,図4に示す助剤データベース28,図5〜図7に示す乾燥データベース27が格納されている。なお、キーボード22及び通信アダプタ24が入力装置に当たり、ハードディスク25が記憶装置に当たる。
【0032】
助剤データベース28は、脱水機102に投入される汚泥の含水率の各具体値及び助剤の添加率の各具体値の組合せ毎に、実験により求められた脱水後における汚泥の含水率を対応付けたテーブルである。なお、かかる含水率と助剤添加率との関係は、脱水機102の種類に依存するので、助剤データベース28は脱水機102の種類毎に用意する必要がある。なお、図4(a)は、当該助剤データベース28の具体例をマトリックス形式で示した表であり、同(b)は、同具体例をグラフ形式で示したグラフである。
【0033】
乾燥データベース27は、各汚泥排出事業所100に設置されている乾燥機103毎,及び、目標とする有機性汚泥固形化燃料Cの含水率毎に用意されており、乾燥機103に設定される風量条件の各具体値及び投入される汚泥の含水率の各具体値の組合せ毎に、対応する乾燥機103において目標とする含水率の有機性汚泥固形化燃料Cを得るために必要な温度条件を対応付けたテーブルである。なお、図5は、A工場の乾燥機103により含水率30%の有機性汚泥固形化燃料Cを目標とする場合の乾燥データベース27,図6は、A工場の乾燥機103により含水率35%の有機性汚泥固形化燃料Cを目標とする場合の乾燥データベース27,A工場の乾燥機103により含水率25%の有機性汚泥固形化燃料Cを目標とする場合の乾燥データベース27である。また、各図(a)は、各乾燥データベース27の具体例をマトリックス形式で示した表であり、各図(b)は、同具体例をグラフ形式で示したグラフである。
<プログラム>
[汚泥排出事業所側]
図8は、汚泥排出事業所側システム1のCPU10がプログラム16に従って実行する処理のうち、担当者によって毎日所定時刻に実行される実測データの送信及び処理条件テーブル17の更新のための処理である。
【0034】
当該処理は、担当者が入力装置12を用いて所定コマンドを入力することによりスタートする。そして、スタート後最初のS001において、CPU10は、ディスプレイ13上に、図9に示す汚泥性状入力画面を表示する。図9に示すように、この汚泥性状入力画面には、汚泥量入力欄31,含水率入力欄32,脱水機運転時間入力欄33,脱水後含水率入力欄34,脱水汚泥量入力欄35,乾燥後含水率入力欄36,乾燥汚泥量入力欄37,乾燥機使用ガス量入力欄38,送信ボタン39及び終了ボタン40が、含まれている。
【0035】
これらのうち、汚泥量入力欄31には、担当者が実測した汚泥発生源101から発生した汚泥の入力日における発生量が入力される。また、含水率入力欄32には、担当者が実測した汚泥発生源101から発生した汚泥の含水率が入力される。また、脱水機運転時間入力欄33には、担当者が実測した脱水機102の入力日における運転時間が入力される。また、脱水後含水率入力欄34には、担当者が実測した脱水機102による脱水後における汚泥の含水率が入力される。また、脱水汚泥量入力欄35には、担当者が実測した脱水機102による入力日における脱水後の汚泥量が入力される。また、乾燥後含水率入力欄36には、担当者が実測した乾燥機103による乾燥後における汚泥の含水率が入力される。また、乾燥汚泥量入力欄37には、担当者が実測した乾燥機103による入力日における乾燥後の汚泥量が入力される。また、乾燥機使用ガス量入力欄38には、担当者が実測した入力日における乾燥機103のガス使用量が入力される。
【0036】
次のS002では、CPU10は、送信ボタン39又は終了ボタン40が入力されるのを待つ。そして、何れかのボタン39,40が入力されると、CPU10は、入力されたボタンが送信ボタン39であるか終了ボタン40であるかのチェックを行う。そして、送信ボタン39が入力された場合には、CPU10は、S004において、汚泥性状入力画面の各欄31〜37に入力されたデータを、中央コンピュータ2へ送信する。
【0037】
次のS003では、CPU10は、中央コンピュータ2から処理条件の応答(S110)が送信されて来るのを待つ。そして、処理条件の応答があると、CPU10は、S006において、受信した処理条件により、処理条件テーブル17を更新する。また、実際の乾燥機の運転時間を、同処理条件テーブル17上の乾燥機運転時間に加算する。S006を完了すると、CPU10は、処理をS001に戻す。
【0038】
一方、終了ボタン40が入力されたとS003にて判断した場合には、CPU10は、当該プログラムによる処理を終了する。
[中央コンピュータ側]
図10は、中央コンピュータ2のCPU20がプログラム26に従って実行する処理のうち、毎日所定時間に自動実行される各汚泥排出事業所毎の処理条件を決定するための処理である。
【0039】
当該処理がスタートして最初のS100では、CPU20は、各汚泥排出事業所側システム1から送信(S004)されたデータの受信を待つ。そして、全ての汚泥排出事業所側システム1から通信アダプタ24を通じてデータを受信すると、CPU20は、処理をS101へ進める。なお、各汚泥排出事業所側システム1から取得されたデータは、担当者により、キーボード22を用いて入力されても良い。即ち、これら通信アダプタ24及びキーボード22が、入力装置に相当する。
【0040】
S101では、CPU20は、入力された各汚泥排出事業所側システム1から得られたデータを、ハードディスク25内に記憶する。当該処理がなされることにより、ハードディスク25内には、過去に各汚泥排出事業所側システム1から得られたデータの履歴が、蓄積されることとなる。
【0041】
次のS102では、CPU20は、次回の各汚泥排出事業所100からの有機性汚泥固形化燃料Cの回収時において回収される有機性汚泥固形化燃料Cの平均発熱量を算出する。即ち、各汚泥排出事業所100毎に、前回の回収時から当該処理時までに受信してハードディスク25内に記憶されているデータ中の乾燥後汚泥量及び乾燥後含水率に基づいて、現在貯蔵庫に貯蔵されている有機性汚泥固形化燃料Cの量及び発熱量の総和を算出するとともに、当該値に基づいて一日当たりの乾燥後汚泥量及び乾燥後含水率の平均を算出し、乾燥後汚泥量平均に次回回収時までの残り日数を掛け合わせることにより、次回回収時
までに追加されるであろう有機性汚泥固形化燃料Cの量の総和を算出した上で、前者の有機性汚泥固形化燃料Cの量及び後者の有機性汚泥固形化燃料Cの量の総和を合算する。このようにして各汚泥排出事業所100毎に計算した有機性汚泥固形化燃料Cの量の総和及び発熱量の平均値の積の全汚泥排出事業所100についての総和(即ち、次回回収時において全汚泥排出事業所100から回収されるであろう全ての有機性汚泥固形化燃料Cの発熱量の総和)を、有機性汚泥固形化燃料Cの量の全汚泥排出事業所100についての総和により除することにより、次回回収時において全汚泥排出事業所100から回収されるであろう全ての有機性汚泥固形化燃料Cの予想平均発熱量を算出する。そして、CPU20は、算出した予想平均発熱量が、燃料引取事業所120の運用業者との間で合意された品質(所定条件)を満たしているか否かを判定する(判定手段に相当)。
【0042】
そして、予想平均発熱量が品質を満たしているとS102にて判定した場合には、CPU20は、S110において、前日において各汚泥排出事業所側システム1に提示していた処理条件を、そのまま、各汚泥排出事業所側システム1に送信する。
【0043】
一方、予想平均発熱量が品質を満たしていないとS102にて判定した場合には、CPU20は、S103において、各汚泥排出事業所側システム1についてS102にて算出した発熱量の平均が、燃料引取事業所120の運用業者との間で合意された品質から乖離している程度(乖離度)を、チェックする。
【0044】
次のS104では、S103にてチェックした乖離度の大きい汚泥排出事業所100を、大きいものから順に所定数リストアップする。
【0045】
次のS105では、CPU20は、優先順位決定処理を実行する。図11は、S105にて実行される優先順位決定処理サブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンに入って最初のS201では、CPU20は、S104にてリストアップされた汚泥排出事業所100を、S102にて算出した有機性汚泥固形化燃料Cの総和が大きい順にソートすることにより、優先順位を決定する。
【0046】
S202では、CPU20は、S201にて決定された順位をチェックして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があるか否かを判定する。そして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所がなければ、そのまま当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0047】
これに対して、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があれば、CPU20は、次のS203において、同順位となっている複数の汚泥排出事業所100のうち、助剤制約(即ち、予め、助剤の使用拒否を流通業者に申し出ていること)がない方の汚泥排出事業所100を、優先度を高く決定する。
【0048】
次のS204では、CPU20は、再度順位をチェックして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があるか否かを判定する。そして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所がなければ、そのまま当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0049】
これに対して、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があれば、CPU20は、次のS205において、同順位となっている複数の汚泥排出事業所100を、処理コスト(即ち、予め申告されている有機性汚泥固形化燃料Cの単位量当たりのコスト)が少ない順に、優先順位を付け直す。
【0050】
次のS206では、CPU20は、再度順位をチェックして、複数の汚泥排出事業所1
00が同順位となっている箇所があるか否かを判定する。そして、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所がなければ、そのまま当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0051】
これに対して、複数の汚泥排出事業所100が同順位となっている箇所があれば、CPU20は、次のS207において、同順位となっている複数の汚泥排出事業所100を、排出CO2(即ち、S102にて算出された一日当たリの乾燥後汚泥量に対する乾燥機使
用ガス量の比率)が少ない順に、優先順位を付け直す。S207を完了すると、CPU20は、当該優先順位決定サブルーチンを終了する。
【0052】
優先順位決定サブルーチンから処理が戻された図10のメインルーチンでは、CPU20は、処理をS105からS106へ進める。
【0053】
S106では、S105にて決定された優先順位が最も高い汚泥排出事業所100を処理対象と決定としてから、処理をS107へ進める。これらS104乃至S106の処理,及び、後述するS109の処理を実行するCPU20が、決定手段に相当する。
【0054】
S107では、CPU20は、S106(若しくは、後述するS109)にて処理対象と決定された汚泥排出事業所100について、予想発熱量再計算処理を実行する。図12は、S107にて実行される予想発熱量再計算処理サブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンに入って最初のS301では、CPU20は、処理対象汚泥排出事業所100について助剤制約があるか否かをチェックする。そして、CPU20は、助剤制約があれば処理をS302へ進め、助剤制約がなければ処理をS304へ進める。
【0055】
S304では、CPU20は、当該処理対象汚泥排出事業所100に処理条件として通知すべき助剤添加率の値を、前日に当該処理対象汚泥排出事業所100に通知していた値よりも、助剤データベース28において1段上の値に変更する。
【0056】
次のS305では、CPU20は、助剤データベース28における、S101にて受信した含水率及びS304にて決定した助剤添加量に対応した脱水後含水率を読み出す。また、CPU20は、101にて受信した乾燥後含水率の値よりも1段低い含水率を特定し(含水率特定手段に相当)、特定した含水率を目標とする当該処理対象汚泥排出事業所100についての乾燥データベース27を読み出す。次に、CPU20は、読み出した乾燥データベース27における、上記脱水後含水率に対応する欄から、前日に当該処理対象汚泥排出事業所100に通知していた値よりも一段大きい、乾燥機風量条件及び乾燥機温度条件の組合せを読み出す。これらS304及びS305の処理を実行するCPU20が、処理条件変更手段に相当する。
【0057】
次のS306では、CPU20は、S305にて選択した含水率の有機性汚泥固形化燃料Cが明日から次回回収までの間に当該処理対象汚泥排出事業所100から得られると想定した上で、S102における予想平均発熱量の再計算を実行する(再計算手段に相当)。S306を完了すると、CPU20は、当該予想発熱量再計算サブルーチンを終了して、処理を図10のメインルーチンに戻す。
【0058】
一方、S302では、CPU20は、101にて受信した乾燥後含水率の値よりも1段低い含水率を特定し(含水率特定手段に相当)、特定した含水率を目標とする当該処理対象汚泥排出事業所100についての乾燥データベース27を読み出す。次に、CPU20は、読み出した乾燥データベース27における、S101にて受信した脱水後含水率に対応する欄から、前日に当該処理対象汚泥排出事業所100に通知していた値よりも一段大きい、乾燥機風量条件及び乾燥機温度条件の組合せを読み出す(処理条件変更手段に相当
)。
【0059】
次のS303では、CPU20は、S302にて選択した含水率の有機性汚泥固形化燃料Cが明日から次回回収までの間に当該処理対象汚泥排出事業所100から得られると想定した上で、S102における予想平均発熱量の再計算を実行する(再計算手段に相当)。S303を完了すると、CPU20は、当該予想発熱量再計算サブルーチンを終了して、処理を図10のメインルーチンに戻す。
【0060】
処理が戻された図10のメインルーチンでは、CPU20は、処理をS107からS108へ進め、S303又はS306にて算出した条件変更後の予想平均発熱量が、燃料引取事業所120の運用業者との間で合意された品質を満たしているか否かを再判定する(再判定手段)。
【0061】
そして、予想平均発熱量が上記品質を満たしていないとS108にて判定した場合には、CPU20は、S109において、次の優先順位の汚泥排出事業所100を処理対象と決定する(決定手段に相当)。なお、S104にてリストアップした汚泥排出事業所100のうち未処理のものがなくなった場合には、優先順位が最上位の汚泥排出事業所を、再度処理対象と決定する。この場合、S304での助剤添加率の変更は、前回の処理において変更された助剤添加率から、更に1段高い助剤添加率に変更することになる。また、S305又はS302にて読み出す乾燥データベース27は、前回の処理において読み出したものよりも一段低い含水率を目標とするものに変更されることになる。
【0062】
これに対して、予想平均発熱量が上記品質を満たしているとS108にて判定した場合には、CPU20は、S110において、S107の処理対象とされていない汚泥排出事業所100については、前日において各汚泥排出事業所側システム1に提示していた処理条件を、そのまま、汚泥排出事業所側システム1に送信し、S107の処理対象とされた汚泥排出事業所100については、S304及びS305又はS302にて変更された処理条件を、汚泥排出事業所側システム1に送信する。
【0063】
S110の次に実行されるS111では、CPU20は、S110での処理条件の送信が全ての汚泥排出事業所側システム1について完了するのを待つ。
【0064】
次のS112では、終了コマンドが入力されているか否かをチェックして、終了コマンドが入力されていなければ、翌日における各汚泥排出事業所側システム1からのデータ受信を待つために、処理をS101へ戻す。これに対して、終了コマンドが入力されている場合には、当該プログラム26による処理を終了する。
【0065】
なお、本実施例例では、直接乾燥式の乾燥機を用いたが、水蒸気等で加熱する間接乾燥式の乾燥機を用いることもできる。その場合、乾燥機運転条件は、例えば、乾燥機内の滞留時間等である。
【符号の説明】
【0066】
1 汚泥排出事業所側システム
2 中央コンピュータ
17 処理条件テーブル
20 CPU
22 キーボード
24 通信アダプタ
25 ハードディスク
26 プログラム
27 乾燥データベース
28 助剤データベース
100 汚泥排出事業所
101 汚泥発生源
102 脱水機
103 乾燥機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された処理条件に従って汚泥を処理することにより有機性汚泥固形化燃料を生成する燃料化設備を夫々有する複数の汚泥排出事業所から定期的に回収される有機性汚泥固形化燃料の品質を管理するための品質管理装置であって、
各汚泥排出事業所において前記燃料化設備によって生成された有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量が入力される入力装置と、
前回の回収時以後入力された各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に格納された前記各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回の回収時において各汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料の総和及び単位当たりの平均発熱量を算出するとともに、全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を算出する算出手段と、
前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が所定条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしていないと判定された場合に、前記単位当たりの平均発熱量が前記所定条件から乖離する汚泥排出事業所を、処理条件変更対象と決定する決定手段と、
前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所について、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する処理条件変更手段と、
前記処理条件変更手段により変更された処理条件と、処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所に通知する通知手段と
を備えたことを特徴とする有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項2】
前記決定手段により変更された処理条件下において処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所の燃料化設備において生成される有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を特定する単位当たりの発熱量特定手段と、
前記単位当たりの発熱量特定手段によって特定された単位当たりの発熱量下において、次回の回収時において全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を再計算する再計算手段と、
前記再計算手段によって算出された単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしているか否かを再判定する再判定手段とを更に備え、
前記決定手段は、前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所についても、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する
ことを特徴とする請求項1記載の品質管理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記単位当たりの平均発熱量の前記所定条件からの乖離の程度が大きい順から幾つかの汚泥排出事業所を、有機性汚泥固形化燃料の処理量が大きい順に優先順位付けし、優先順位が高いものから順に、一つずつ、処理条件変更対象と決定する
ことを特徴とする請求項2記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項4】
前記燃料化設備は乾燥機を含むとともに、前記処理条件は、当該乾燥機における設定温度である
ことを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項5】
前記燃料化設備は乾燥機を含むとともに、前記処理条件は、当該乾燥機における送風量である
ことを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項6】
前記燃料化設備は脱水機を含むとともに、前記処理条件は、当該脱水機に投入する助剤の汚泥に対する添加率である
ことを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項7】
設定された処理条件に従って汚泥を処理することにより有機性汚泥固形化燃料を生成する燃料化設備を夫々有する複数の汚泥排出事業所から定期的に回収される有機性汚泥固形化燃料の品質を管理するための品質管理プログラムであって、コンピュータを、
各汚泥排出事業所において前記燃料化設備によって生成された有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量が入力される入力装置と、
前回の回収時以後入力された各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に格納された前記各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回の回収時において各汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料の総和及び単位当たりの平均発熱量を算出するとともに、全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を算出する算出手段と、
前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が所定条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしていないと判定された場合に、前記単位当たりの平均発熱量が前記所定条件から乖離する汚泥排出事業所を、処理条件変更対象と決定する決定手段と、
前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所について、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する処理条件変更手段と、
前記処理条件変更手段により変更された処理条件と、処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所に通知する通知手段と
して機能させることを特徴とする有機性汚泥固形化燃料の品質管理プログラム。
【請求項1】
設定された処理条件に従って汚泥を処理することにより有機性汚泥固形化燃料を生成する燃料化設備を夫々有する複数の汚泥排出事業所から定期的に回収される有機性汚泥固形化燃料の品質を管理するための品質管理装置であって、
各汚泥排出事業所において前記燃料化設備によって生成された有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量が入力される入力装置と、
前回の回収時以後入力された各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に格納された前記各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回の回収時において各汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料の総和及び単位当たりの平均発熱量を算出するとともに、全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を算出する算出手段と、
前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が所定条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしていないと判定された場合に、前記単位当たりの平均発熱量が前記所定条件から乖離する汚泥排出事業所を、処理条件変更対象と決定する決定手段と、
前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所について、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する処理条件変更手段と、
前記処理条件変更手段により変更された処理条件と、処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所に通知する通知手段と
を備えたことを特徴とする有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項2】
前記決定手段により変更された処理条件下において処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所の燃料化設備において生成される有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を特定する単位当たりの発熱量特定手段と、
前記単位当たりの発熱量特定手段によって特定された単位当たりの発熱量下において、次回の回収時において全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を再計算する再計算手段と、
前記再計算手段によって算出された単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしているか否かを再判定する再判定手段とを更に備え、
前記決定手段は、前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所についても、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する
ことを特徴とする請求項1記載の品質管理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記単位当たりの平均発熱量の前記所定条件からの乖離の程度が大きい順から幾つかの汚泥排出事業所を、有機性汚泥固形化燃料の処理量が大きい順に優先順位付けし、優先順位が高いものから順に、一つずつ、処理条件変更対象と決定する
ことを特徴とする請求項2記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項4】
前記燃料化設備は乾燥機を含むとともに、前記処理条件は、当該乾燥機における設定温度である
ことを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項5】
前記燃料化設備は乾燥機を含むとともに、前記処理条件は、当該乾燥機における送風量である
ことを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項6】
前記燃料化設備は脱水機を含むとともに、前記処理条件は、当該脱水機に投入する助剤の汚泥に対する添加率である
ことを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥固形化燃料の品質管理装置。
【請求項7】
設定された処理条件に従って汚泥を処理することにより有機性汚泥固形化燃料を生成する燃料化設備を夫々有する複数の汚泥排出事業所から定期的に回収される有機性汚泥固形化燃料の品質を管理するための品質管理プログラムであって、コンピュータを、
各汚泥排出事業所において前記燃料化設備によって生成された有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量が入力される入力装置と、
前回の回収時以後入力された各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に格納された前記各汚泥排出事業所毎の有機性汚泥固形化燃料の量及び単位当たりの発熱量に基づいて、次回の回収時において各汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料の総和及び単位当たりの平均発熱量を算出するとともに、全汚泥排出事業所に貯蔵されているであろう有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量を算出する算出手段と、
前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が所定条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記有機性汚泥固形化燃料全体の単位当たりの予測平均発熱量が前記所定条件を満たしていないと判定された場合に、前記単位当たりの平均発熱量が前記所定条件から乖離する汚泥排出事業所を、処理条件変更対象と決定する決定手段と、
前記決定手段により処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所について、前記処理条件を、前記有機性汚泥固形化燃料の単位当たりの発熱量を下げる方向に変更する処理条件変更手段と、
前記処理条件変更手段により変更された処理条件と、処理条件変更対象と決定された汚泥排出事業所に通知する通知手段と
して機能させることを特徴とする有機性汚泥固形化燃料の品質管理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−65598(P2011−65598A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218043(P2009−218043)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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