説明

有機溶剤分解菌及びそれを用いた有機溶剤の分解処理方法

【課題】1種の微生物で芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤等の多種の溶剤を効率的に分解することができる有機溶剤分解菌を提供すること。
【解決手段】ロドコッカス(Rhodococcus)sp.3A(NITE P−456)及びロドコッカス(Rhodococcus)sp.1B(NITE P−455)より選ばれるロドコッカス属微生物、ならびにそれを芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤及びアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤又はそれを含有する液体もしくは気体と接触させることからなる有機溶剤の分解処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機溶剤分解菌及びそれを用いた有機溶剤の分解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化水素類などの化合物に対する微生物の分解作用については、環境汚染防止の観点から多くの研究がなされており、例えば、芳香族化合物を微生物分解する場合には、芳香族化合物を直接培地中に懸濁させ微生物分解させるか、あるいは僅かの芳香族化合物を溶媒に溶かして微生物分解させる方法が採用されている。しかしながら、前者の方法では、芳香族化合物が溶解しないために微生物との接触が不十分で分解効率が悪く、また、後者の場合では、芳香族化合物との接触はよくなるが、有機溶媒に対する抵抗性がないために微生物の反応性が抑制され分解効率が極めて低くるという問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機溶媒中でもこれらに対する耐性を有する微生物を用いて、石油中に多く含まれる難分解性の多環芳香族炭化水素を効率的に分解することが開示されている。
【0004】
一方、塗装プラント等のような種々の有機溶剤が混在している環境下においては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、有機酸類等が発生するため、例えば、特許文献2や特許文献3には、これらを含有する水性廃液の処理方法として、これらを効率よく分解する微生物が開示されている。また、特許文献4には、化学工場、塗装工場等から発生するトルエン、キシレン、メチルエチルケトン等の混合有機溶剤を含有する悪臭ガスを、トルエン分解能を有する微生物、キシレン分解能を有する微生物、メチルエチルケトン分解能を有する微生物及び/又はメチルエチルケトン分解能を有する微生物を組合せて用いることによって、効率よく分解する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の微生物では、アルコール類やエステル類などの溶剤を分解することはできず、また、特許文献2や特許文献3に記載の微生物でも、芳香族炭化水素までは分解することはできず、さらに、種々の有機溶剤が混在している場合には、特許文献4のように、一度に複数種の微生物を使用する必要があり、生育状態が変化してしまったり、設備が大掛かりになったりする等の不具合がある。
【0006】
【特許文献1】特開平7−155175号公報
【特許文献2】特開平10−33163号公報
【特許文献3】特開2001−224361号公報
【特許文献4】特開平11−155560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1種の微生物で芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤等の多種の溶剤を効率的に分解することができる有機溶剤分解菌を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、また、該有機溶剤分解菌を用いた有機溶剤の分解処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、有機溶剤を分解する微生物を種々探索した結果、今回、神奈川県平塚市
内(関西ペイント株式会社開発センター)の土壌中から、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤及びアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を炭素源として分解資化する能力を有する特定のロドコッカス属微生物を分離、同定し、本発明を完成するに至った。そして、このロドコッカス属微生物、その培養物又は処理物を用いて、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤及びアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤又はそれを含有する液体もしくは気体と接触させることにより有機溶剤を分解処理する方法を確立した。
【0010】
かくして、本発明は、ロドコッカス(Rhodococcus)sp.3A(NITE
P−456)及びロドコッカス(Rhodococcus)sp.1B(NITE P−455)より選ばれるロドコッカス属微生物を提供するものである。
【0011】
本発明は、また、少なくとも1種の上記ロドコッカス属微生物、その培養物又は処理物を、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤及びアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤又はそれを含有する液体もしくは気体と接触させることを特徴とする有機溶剤の分解処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1種の微生物で、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤及びアルコール系溶剤等の多種の溶剤を効率的に分解することができ、実用上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明により提供されるロドコッカス属微生物は、ロドコッカス(Rhodococcus)sp.3A(NITE P−456)及びロドコッカス(Rhodococcus)sp.1B(NITE P−455)である。
【0014】
これらの微生物は、神奈川県平塚市内(関西ペイント株式会社開発センター)の土壌中から採取、分離されたものであり、その培養は好気性細菌に用いられる一般的な培地を用いて行うことができる。
【0015】
なお、本明細書において、培地A(Yeast extract 0.5g/l、MgSO4・7HO 0.1g/l、CaCl・2HO 0.1g/l、ferric
citrate 0.002g/l、Vitamin solution 1.0ml/l、Metal solution 10.0ml/l)と培地B(KHPO 1.0g/l、KHPO 0.5g/l)とを4:1の割合で混合し、滅菌処理したものを「BM液体培地」と称し、培地Aと培地Bを4:1の割合で混合し、さらにAgerを1.5%加えて滅菌処理したものを「BM寒天培地」と称する。
【0016】
上記のMetal solutionは、CaCl・2HO 0.4g/l、HPO 0.5g/l、CuSO・5HO 0.04g/l、KI 0.1g/l、FeSO・7HO 0.2g/l、MnSO・4〜7HO 0.4g/l、ZnSO・7HO 0.1g/l、NaMoO・2HO 0.1g/l、12N HCl 2.0g/lからなり、Vitamin solutionは、Ca−Pantothenate 0.4g/l、Inositol 0.2g/l、P−Aminobenzonate 0.2g/l、P−Aminobenzonate 0.2g/l、Pyridoxin 0.4g/l、Thiamin 0.4g/l、Biotin 0.002g/l、Vitamin B12 0.0005g/l、Naiacin 0.4g/lからなる。
【0017】
また、本発明の微生物の単離、同定は以下のようにして行った。
【0018】
培養方法:
液体培地の場合には、ねじ口試験管を用い、基質添加後、30℃、150rpmで振とう培養する。また、寒天培地の場合には、滅菌シャーレを用い、30℃で培養する。
【0019】
単離方法(段階希釈法・100倍希釈法):
あらかじめ用意しておいた0.85%生理食塩水(9.9mL)に、土壌から採取した微生物を含む培養液を100μL加え、原液より10−2倍濃度に薄められた培養液を調製する。この希釈培養液を新たな生理食塩水(9.9mL)に100μLほど加えて、原液の10−4倍濃度の希釈培養液を調製する。これを繰り返して10−6倍濃度及び10−8倍濃度の希釈培養液を調製し、ボルテックスでよく攪拌したのち、寒天培地にそれぞれの濃度の希釈培養液を100μL塗沫する。
【0020】
分析方法:
菌の生育度の測定:
タイテック株式会社製デジタル比色計(商品名:mini photo 518R)を用い、無菌コントロールを0点に調整した後、希釈培養液の菌体濁度OD660 nmを測定する。
【0021】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析:
ジエチルエーテル2mlでサンプルを抽出し、10μl容量のシリンジで摂取し、GC分析を行う。GCで測定を3回行い、検量線から濃度を求め、溶剤分解能を調べる。
【0022】
GC分析条件:
シクロヘキサノン・酢酸エチル以外の有機溶剤の場合
Column Packing PEG 20M−PT Uniport B
Column size 2.6mm×2m
Flow rate 40ml/min,N gas
Injection temp. 180℃
Column temp. 100℃
Detection FID

シクロヘキサノンの場合
Column Packing PEG 20M−PT Uniport B
Column size 1.6mm×2m
Flow rate 40ml/min,N gas
Injection temp. 180℃
Column temp. 100℃
Detection FID

酢酸エチルの場合
Column Packing PEG 20M−PT Uniport B
Column size 2.6mm×2m
Flow rate 40ml/min,N gas
Injection temp. 180℃
Column temp. 80℃
Detection FID
【0023】
基質としては、プロピレングリコールプロピルエーテル(PGPE)を選択した。
【0024】
1次スクリーニングは次のようにして行なった。
【0025】
工場敷地内より採取した土壌から三段階のスクリーニングを経てPGPEを分解可能な5つの菌群サンプルを選抜した。この中から、よりよい分解活性を有している菌を取得するために、PGPE500ppm及びPGPE1000ppmでの生育と分解能を検討した。その結果、1000ppmにおいて生育が非常に高く、ほぼ完全に分解した菌群3番サンプルおよび1番サンプルを得た。
【0026】
次に、3番サンプルおよび1番サンプルから、後記実施例に記載の方法による2次スクリーニングを行うことにより、3A株および1B株を単離した。
【0027】
これらの菌株の16SrDNAをコードするDNAの塩基配列の一部を決定し、部分塩基配列解析(国際塩基配列データベースBLAST検索)により同定を行った。その結果、これらの菌株は、ロドコッカス属に属する微生物であることが判明し、ロドコッカスに属する公知の菌株とは有機溶剤分解能において異なる性質を示すことから、これらの菌株を新菌種と認定し、それぞれ、ロドコッカス(Rhodococcus)sp.3A及びロドコッカス(Rhodococcus)sp.1Bと命名した。これらの微生物は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、それぞれ、NITE P−456及びNITE P−455なる受託番号が付与されている。
【0028】
これらの単離微生物による有機溶剤の分解資化能を調べるため、各種有機溶剤を基質として選択し、500ppmの各基質含有BM液体培地5mlにそれぞれ上記単離菌株を植菌し、72時間、30℃、150rpmで振とう培養を行なった。
【0029】
その結果、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;プロピレングリコールプロピルエーテルなどのエーテル系溶剤及びn−ブタノールなどのアルコール系溶剤に対し、高い分解能を有することが判明した。特に、エーテル系溶剤及びアルコール系溶剤に対し、非常に高い分解能を有することが判明した。
【0030】
上記単離菌株による上記有機溶剤の分解はそれ自体既知の方法によって行うことができ、例えば、菌体を無機質、水分及び空気の存在下に、上記有機溶剤又はそれを含有する液体もしくは気体と接触させることにより行うことができる。菌体としては、単離生細胞、その培養物又は処理物(例えば、凍結物、凍結乾燥物など)のいずれを用いることもできる。また、これら菌体を固定化した固定化担体を用いることも可能である。
【0031】
これら菌体の担体への固定化は、それ自体既知の方法によって行うことができ、例えば、包括法、物理的吸着法、共有結合法等が挙げられる。
【0032】
担体としては、中空状、凹凸状、多孔質状等の形態で単位体積当たりの表面積が大きいもの或いは水を吸収して膨潤するものであって、流動性を持ち、容易に反応系から流出しない粒径及び比重を有するものが好適であり、担体形状としては、例えば、板状、繊維状、円筒状等の特殊形状、スポンジ状、粒・塊状、立方体状等いずれでもよいが、中でも、流動性と充分な表面積を確保しやすい微小な粒状体が好ましい。担体素材としては、微生物や酵素等の担体材料として従来から用いられている各種の有機・無機材料を用いることができ、例えば、粒状活性炭、破砕活性炭、木炭、ゼオライト、雲母、砂粒等の無機材料;光硬化性樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、寒天、アルギン酸、カラギーナン、セルロース、デキストラン、アガロース、イオン交換樹脂等の高分子材料;シリカゲル等の多孔質セラ
ミックス;アンスラサイト;樹脂材料に活性炭等を混入したもの等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組合わせて用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
実施例1:3A株による各種有機溶剤の分解
<2次スクリーニング>
三段階の1次スクリーニングを経て、PGPE500ppm及びPGPE1000ppmで生育且つ分解する菌群を得た。これを100倍希釈法により希釈し、PNP1000mg/Lを含むBM平板培地に接種し、30℃で培養した。数日後、得られたコロニーを単離した。こうして得られた菌株をPGPE200mg/Lを含むBM培地に接種して5日間振とう培養した。120時間後、サンプリングを行いガスクロマトグラフフィー(GC)により分析した。その結果、生育良好でPGPEを完全に分解する能力を有する菌株3Aを得た。さらに、高濃度(500ppm)のPGPEの分解能を同様にして調べたところ、生育も良好で且つ完全に分解した。また、ジプロピレングリコールブチルエーテル(DPGBE)200ppmの分解能についても同様に調べたところ、分解率は60%ほどであった。なお、一連のGC分析において、中間代謝物と思しきピークは特に検出されなかった。
【0035】
<分解試験>
各種有機溶剤をBM液体培地に500ppm添加し、これに菌株3Aの前培養液50μlを加え、3日間又は10日間培養し、その間経日的にOD660 nmおよびGC測定を行い、菌の生育度と溶剤分解能を評価した。分解率の高い基質に対しては1000ppmで、そして低い基質に対しては200ppmで同様の操作を行った。その結果を以下に示す。
【0036】
工業用キシレンに対する分解特性
500ppmでは10日間で40%分解し、200ppmでは10日間で完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは殆ど上昇しなかったが、200ppmでは最大で0.4になった。
【0037】
トルエンに対する分解特性
500ppmでは生育及び分解能を示し、10日間で80%程度分解した。OD660
nmは最大で0.6を超えた。
【0038】
シクロヘキサノンに対する分解特性
生育度は良好であり、500ppmでは3日間で完全に分解し、1000ppmでは10日間で完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは最大で0.6を超え、1000ppmでは1.0を超えた。
【0039】
酢酸エチルに対する分解特性
200ppm、500ppm及び1000ppm全ての濃度において生育が見られなかったが、200ppm及び500ppmでは完全に分解し、1000ppmでも10日間で75%分解した。
【0040】
n−ブタノールに対する分解特性
500ppmでは1日間で完全に分解し、1000ppmでは4日間で完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは最大で0.8に達し、1000ppmでは最大で
1.0を超えた。
【0041】
メチルエチルケトンに対する分解特性
高い生育度を示し、500ppm及び1000ppmともに2日間で完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは最大で0.7を超え、1000ppmでは最大で1.0を超えた。
【0042】
メチルイソブチルケトンに対する分解特性
生育は良好であり、500ppm及び1000ppm共に2日間で完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは最大で0.7を超え、1000ppmでは最大で1.0を超えた。
【0043】
酢酸ブチルに対する分解特性
200ppmでは1日間で完全に分解し、OD660 nmは最大で0.4を超えた。500ppmでは3日間で完全に分解したが生育は見られなかった。1000ppmでは、10日間で90%の基質の分解が見られたが、生育は見られなかった。
【0044】
実施例2:1B株による各種有機溶剤の分解
<2次スクリーニング>
三段階の1次スクリーニングを経て、PGPE500ppm及び1000ppmで生育且つ分解する菌群を得た。これを100倍希釈法により希釈し、PNP1000mg/Lを含むBM平板培地に接種し、30℃で培養した。数日後、得られたコロニーを単離した。こうして得られた菌株をPGPE200mg/L含むBM培地に接種して5日間振とう培養した。120時間後、サンプリングを行いガスクロマトグラフフィー(GC)により分析した。その結果、生育良好でPGPEを完全に分解する能力を有する菌株1Bを得た。さらに高濃度(500ppm)のPGPEの分解能を調べたところ、生育も良好で且つ90%程度分解した。また、ジプロピレングリコールブチルエーテル(DPGBE)200ppmは20%ほど分解した。なお、一連のGC分析において中間代謝物と思しきピークは特に検出されなかった。
【0045】
<分解試験>
工場由来の各種有機溶剤をBM液体培地に500ppm添加し、これに菌株1Bの前培養液50μlを加え、3日間又は10日間培養した。その間経日的にOD660 nmおよびGC測定を行い、菌の生育度と溶剤分解能を評価した。分解率の高い基質に対しては1000ppmで、そして低い基質に対しては200ppmで同様の操作を行った。その結果を以下に示す。
【0046】
工業用キシレンに対する分解特性
200ppmでは4日で完全に分解し、OD660 nmは最大で約0.4だった。
【0047】
トルエンに対する分解特性
500ppmでは良好に生育し、完全に分解した。OD660 nmは最大で0.8だった。
【0048】
シクロヘキサノンに対する分解特性
500ppmでは良好に生育し、5日間で完全に分解した。1000ppmでは高い生育度を示し、10日間でほぼ完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは最大で0.6を超え、1000ppmでは最大で1.0に達した。
【0049】
酢酸エチルに対する分解特性
全ての濃度で生育は見られなかったが、200ppm及び500ppmでは3日間で完全に分解し、1000ppmでも5日間で80〜90%の分解が見られた。
【0050】
n−ブタノールに対する分解特性
500ppmは1日間で完全に分解し、1000ppmは7日間で完全に分解し、どちらの濃度でもOD660 nmは最大で0.6を超えた。
【0051】
メチルエチルケトンに対する分解特性
高い生育度を示し、500ppmでは2日間で、そして1000ppmは4日間で完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは最大で0.6を超え、1000ppmでは最大で1.0に達した。
【0052】
メチルイソブチルケトンに対する分解特性
生育は良好であり、500ppmでは2日間で、そして1000ppmは4日間で完全に分解した。OD660 nmは500ppmでは最大で0.8に達し、1000ppmでは最大で1.0に達した。
【0053】
酢酸ブチルに対する分解特性
全ての濃度で生育は見られなかったが、200ppmでは1日で完全に分解し、500ppmでは3日で完全に分解し、1000ppmでは3日間で60%分解した。
【0054】
イソブタノールの分解特性
200ppmでは1日目で完全に分解し、OD660 nmは最大で0.3であった。
【0055】
酢酸イソブチルの分解特性
200ppmでは1日目で完全に分解し、OD660 nmは最大で0.4を超えた。
【0056】
酢酸−3−メトキシブチルの分解特性
200ppmでは顕著なOD660 nmの増加は見られなかったが、1日目で完全に分解した。
【0057】
プロピレングリコールモノメチルプロピオネートの分解特性
200ppmでは1日目で完全に分解し、OD660 nmは最大で0.3を超えた。
【0058】
2−ブトキシエタノールの分解特性
200ppmではOD660 nmの顕著な増加は見られなかったが、5日間で基質をほとんど分解した。
【0059】
1−メトキシ−2−プロパノールの分解特性
200ppmでは2日間で80%分解し、D660 nmは最大で0.4に達した。
【0060】
メタノールの分解特性
200ppmでは2日間で80%分解し、OD660 nmは最大で0.2を超えた。
【0061】
イソプロパノールの分解特性
200ppmでは2日間で完全に分解し、OD660 nmは最大で0.4を超えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロドコッカス(Rhodococcus)sp.3A(NITE P−456)及びロドコッカス(Rhodococcus)sp.1B(NITE P−455)より選ばれるロドコッカス属微生物。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1種のロドコッカス属微生物を担持又は固定化させてなる担体。
【請求項3】
請求項1に記載の少なくとも1種のロドコッカス属微生物、その培養物又は処理物を、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤及びアルコール系溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤又はそれを含有する液体もしくは気体と接触させることを特徴とする有機溶剤の分解処理方法。

【公開番号】特開2010−130949(P2010−130949A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309955(P2008−309955)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】