説明

有機物の処理装置

【課題】有機物に含有される灰分を有効に利用し、新たに触媒を使用することなく、有機物から効率良くエネルギーを回収することが望まれていた。
【解決手段】有機物101が含有する灰分を貯留し、それをガス化前の有機物101に混合する。有機物101内の灰分濃度が高くなると、必然的に固形分と灰分の接触確率も高くなり、灰分が有する有機物101の分解能力を十分に発揮し、水素等の燃料として価値の高いガスを多量に生成することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物である食品廃棄物の水蒸気ガス化反応において、食品廃棄物に含有される灰分の触媒効果を利用して反応を促進させる有機物の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機化合物や有機廃棄物を熱分解あるいはガス化して、原料が有するエネルギーを回収し、有効利用するシステムの研究、開発が盛んに行われている。
【0003】
このようなシステムで重要なのは、原料が有するエネルギーを最大限に回収することと、その回収に消費するエネルギーを最小限にし、エネルギー回収の効率を向上させることである。
【0004】
前者の指標としては、回収したガス発熱量を原料発熱量で除した冷ガス効率がある。また、後者の指標は、定義や実測が困難であり、明確な指標や検討例等の報告はほとんど見当たらない。
【0005】
また、前記有機化合物の水蒸気ガス化反応では、水素等のエネルギーとして価値の高いガスのほかに、タールおよびチャー、灰分等の残渣がある。前記冷ガス効率を向上させるためには、前記タールやチャーをうまくガスに転換することが必要である。また、前記タールは、排気系統の低温部で凝縮し、例えば、長時間運転した場合、排気管の閉塞等の原因となるため、非凝縮性ガスになるまで低分子化することが好ましい。
【0006】
さらに、前記タールをガス化する方法として、分解触媒を利用する方法がある。ここでいうタールとは、高分子の炭化水素が主成分であるので、石油精製プロセスで使用されるニッケル等を分解触媒とすることにより、効果があると期待されている。また、前記ニッケルより高性能な触媒としてはルテニウム等がある。
【0007】
また、生成した揮発成分を多孔質粒子で一時的に捕捉し、その後酸素や空気により燃焼する方法がある。この場合、燃焼熱をシステム内で利用することにより、システムのエネルギー消費量を低減することができる。
【0008】
例えば、媒体粒子を循環させることにより、媒体粒子中に捕集されたチャーの燃焼熱を原料の熱分解に利用する循環流動床がある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
図3は、上記特許文献1に記載された従来の統合型循環流動床ガス化炉の基本的構成図である。
【0010】
図3に示すように、統合型循環流動床ガス化炉は、ガス化室1、捕集装置2、燃焼室3を併せ持つことにより構成されている。ガス化室1には原料aが供給され、このガス化室1において原料aの熱分解ガス化、および生成ガスの分解、改質が行われる。
【0011】
ガス化室1内で生成されたチャーや生成ガスは、矢印dで示すように流動媒体とともに捕集装置2に流入する。
【0012】
捕集装置2では、飛散粒子の捕集と可燃ガスcの分離回収を行い、ここで分離された飛散粒子は、矢印eで示すように燃焼室3へ導入される。燃焼室3では、飛散粒子中にあるチャー等の可燃分の燃焼を行う。
【0013】
また、ガス化室1の下部には、濃厚流動層または高速流動層が形成されている。そして、ガス化室1の下部が濃厚流動層である場合には、濃厚流動層上部から蒸気または窒素等のガスを、流動化ガスb2として供給することによってガス化室1上部を高速流動層としている。
【0014】
さらに、ガス化室1では、熱分解ガス化により生成したガスを分解、改質することを目的として、高速流動層を高温化するために酸素を含むガスを流動化ガスb1、b2として供給してもよく、生成したガスの一部を燃焼させてもよい。前記酸素を含むガスは、流動化ガスb1とb2のいずれか一方もしくは双方に供給する。
【0015】
そして、燃焼室3でチャー等を燃焼した飛散粒子は、矢印fで示す如く再度ガス化室1に戻される。
【0016】
以上の動作を繰り返すことにより、有機化合物の熱分解ガス化プロセスにおいて発生するタール等を分解、改質し、さらにチャーを燃焼した燃焼熱を再度熱分解に利用することにより、ガス転換率を向上させるとともに、システムの消費エネルギーを低減することができる。
【特許文献1】特開2003−176486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来の構成では、原料aから発生するチャーは、捕集装置2において粒子で捕捉されて燃焼室3で燃焼処理される。
【0018】
このため、チャーが有するエネルギーは熱として利用されることになる。また、前記チャーと同時に発生する灰分は、補修装置2か燃焼室3に蓄積されるか、チャーと一緒に粒子状態で捕捉される。
【0019】
前記蓄積された灰分は、使用用途がなく、通常はそのまま廃棄される。また、粒子に捕捉された灰分は、燃焼室3で捕捉チャーが燃焼されるときに高温となり、揮発する。前述の如く灰分が揮発した後の粒子は、矢印fで示すように加熱室1に運ばれる。このため、加熱室1内における原料aの単位重量あたりの灰分量は少なくなる。
【0020】
前記灰分は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を多量に含んでいるため、有機化合物である原料aのガス化や、原料aから発生するタール、チャーの水蒸気ガス化を促進させる機能を有する。
【0021】
しかしながら、ガス化室1内の灰分濃度が低下しているので、ガス化を促進しようとすると、別途触媒を使用する必要がある。
【0022】
本発明は、有機化合物に含有される灰分を有効に利用し、新たに触媒を使用することなく、有機化合物から効率良くエネルギーを回収する処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために本発明は、有機物を収納する収納手段と、前記有機物をガス生成物と固形残留物とに分解する反応手段と、前記反応手段から排出される前記固形残留物を一時的に貯留する貯留手段と、前記貯留手段に流動媒体を供給して前記貯留手段内の前記固形成分を前記収納手段に搬送する搬送手段を具備し、前記有機物を、前記収納手段内で予備乾燥した後に前記反応手段へ供給するようにしたものである。
【0024】
したがって、固形残留物である灰分を有機化合物と混合状態にして前記反応手段に供給するため、有機化合物内の灰分濃度を高めることができる。その結果、必然的に固形分と灰分の接触する確率も高くなり、灰分が有する有機化合物の分解能力を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、有機化合物が含有する灰分を貯留し、それをガス化前の有機化合物に混合し、反応手段にてガス成分と固形残留物(灰分)に分解するため、前記反応手段に供給する有機化合物内の灰分濃度を高くすることができ、その結果、必然的に固形分と灰分の接触確率を高くし、灰分が有する有機化合物の分解能力を十分に発揮させることができるものである。したがって、水素等の燃料として価値の高いガスを効率よく多量に生成することが可能となり、発電等の燃料として供給することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
請求項1に記載の発明は、有機物を収納する収納手段と、前記有機物を熱化学反応してガス生成物と固形残留物とに分解する反応手段と、前記反応手段から排出される前記固形残留物を一時的に貯留する貯留手段と、前記貯留手段に流動媒体を供給して前記貯留手段内の前記固形成分を前記収納手段に搬送する搬送手段を具備し、前記有機物を、前記収納手段内で予備乾燥した後に前記反応手段へ供給するようにしたものである。
【0027】
かかる構成とすることにより、前記有機物は、前記予備乾燥によって液架橋力が低減し、さらに粉粒化されて流動性が向上した状態となる。そして、前記流動性が向上した有機物と、前記固形残留物は収納手段内で混ざり合い、前記反応手段に供給される。
【0028】
このように、有機物に含まれる固形残留物は、系内を循環することにより、反応手段に供給される有機物と混ざり合う結果、前記有機物には多量の固形残留物を含有した状態になる。前記固形残留物には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を多く含むため、これらが有機物の分解を促進し、多くの燃料ガスを生成することができる。
【0029】
請求項2に記載の発明は、前記有機物を、前記有機物より温度が高い流動媒体と熱交換することにより前記予備乾燥を行うようにしたものである。
【0030】
かかることにより、前記流動媒体が保有する熱を高効率で有機物の加熱に利用することができる。また、前記流動媒体の有する運動エネルギーが、乾燥して脆くなった有機物の粉砕エネルギー源となり、そのエネルギーによって乾燥した有機物を細かい粉粒状とすることができる。このように粉粒状になった有機物は、表面積が大きくなり、その結果、前記固形残留物に含まれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の接触する頻度が高まり、前記有機物の分解をさらに促進し、より多くの燃料ガスを生成することができる。
【0031】
請求項3に記載の発明は、前記流動媒体に、180℃以上の過熱水蒸気を用いたものである。
【0032】
かかることにより、高温空気による乾燥速度よりも速い逆転点以上の過熱水蒸気乾燥を行うことにより、さらに短い時間で有機物の乾燥と粉砕を行うことができる。このため、前記有機物と固形残留物に含まれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属が接触する頻度が一層高まり、有機物の分解をさらに促進し、より多くの燃料ガスを生成することができる。
【0033】
請求項4に記載の発明は、前記収納手段を、上段に設けられた収納室と、前記収納室に収納された乾燥状態にある有機物が通過する排出路と、前記収納室の下段に設けられ、前記搬送手段からの搬送物を流動媒体と固形残留物に分離する固気分離手段と、前記排出路から運ばれた有機物と前記固気分離手段で分離された固形残留物を混合する混合手段を具備し、前記固気分離手段で分離された前記流動媒体を、前記収納室に供給するようにしたものである。
【0034】
かかる構成とすることにより、前記収納室には、搬送手段からの流動媒体が供給され、その流動媒体のエネルギーによって収納された有機物の乾燥と、脆化(脆く、粉粒化し易い状態)が促進される。したがって、前記有機物の乾燥および脆化が、反応後の有機化合物に含有された灰分を利用して行えるため、合理的であり、有機化合物から効率良くエネルギーを回収することができる。
【0035】
請求項5に記載の発明は、前記収納手段を構成する収納室を、有機物を投入する第1の収納室と、前記第1の収納室と前記固気分離手段の間に位置し、前記第1の収納室で乾燥され、紛粒化した灰状の有機物を収納する第2の収納室を具備する構成とし、さらに、前記第1の収納室と前記第2の収納室を、前記排出路と連通させ、前記固気分離手段で分離された前記流動媒体を、前記第2の収納室および前記第1の収納室に供給するようにしたものである。
【0036】
かかる構成とすることにより、乾燥した有機物と固形残留物を効率よく混合することができ、有機物と固形残留物に含まれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属が接触する頻度が高まり、有機物の分解をさらに促進し、より多くの燃料ガスを生成することができる。
【0037】
請求項6に記載の発明は、前記有機物を、食品廃棄物としたものである。
【0038】
前記食品廃棄物は、一般的に含有水分量が多く、さらに灰分も一般的な有機物と比較しても多い。このため、前記食品廃棄物は、前記収納手段に収納された状態でガス化に適した状態となっており、固形残留物中の炭素残留量がさらに低減し、有機物の単位重量当りの灰分量が増加する。その結果、前記有機物の分解をさらに促進し、より多くの燃料ガスを生成することができる。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における有機物の処理システムである処理装置の構成図である。図2は、同実施の形態1における収納手段の詳細を示す構成図である。
【0041】
はじめに、図1に基づき処理装置について説明する。
【0042】
本処理装置に用いる有機物101は、食品廃棄物、木屑、汚泥等のいわゆるバイオマスである。例えば、食品廃棄物は、重量基準で約80%が水分であり、約2%が灰分である。この灰分は卵殻や魚類等の骨に由来するものが多く、カルシウムやナトリウムを含む化合物が主成分である。なお、有機物101は、バイオマス以外では石炭等の化石燃料等を用いても差し支えない。
【0043】
収納手段102は、処理前の有機物101を一時的に収納する容器である。収納手段102は、略大気圧で通常180〜200℃程度の条件で運転されるため、有機物101の投入口等は、シリコンやブチルゴム等の耐熱性に優れたシール材で封止される構成となっている。
【0044】
反応手段103は、上下端がフランジ形状に形成された円筒反応容器である。反応手段103の外周にはヒーター104が備えられ、反応手段103を壁面外側から加熱する構成となっている。反応手段103の材質は、反応手段105の設定温度(機能温度)が低い場合には、ステンレス等の汎用材料で構成されるが、600℃以上の温度で機能する場合には、インコネルやハステロイ等の耐熱性に優れた材料を用いる。また、熱衝撃が少ない場合には、セラミック材料を用いても構わない。
【0045】
ヒーター104は、通常、温度制御が容易な電気ヒーターを用いるが、灯油バーナーやガスバーナーを用いると運転コストを安価にできる。ヒーター104の外周には、高温耐熱用の断熱材105を挟んで、改質器106が設けられている。改質器106内部には、アルミナ等の多孔質粒子を充填した充填層107を設けている。さらに、改質器106外周には、ヒーター108と断熱材109が備えられている。ヒーター104とヒーター108および、断熱材105と断熱材109はそれぞれ同定格のものを用いるとよい。
【0046】
反応手段103と改質器106は、反応手段103の下方に設けた開口103aを介して下方で繋がっており、反応手段103で発生するガス、揮発成分および水蒸気等は、開口103aから改質器106内に流入する。必要に応じて、開口103aに、反応手段103内の固形残留物112の流出を阻止する網等の手段を講じる構成を設けてもよい。
【0047】
また、反応手段103の下方には、貯留手段110がロータリーバルブ111を介して備えられており、貯留手段110には、反応手段103から排出される固形残留物112が蓄えられる。また、反応手段103の上部は、ロータリーバルブ113を介して収納手段102と接続されている。
【0048】
さらに、改質器108上方には、排気管114が備えられており、この排気管114には、改質器106からの高温排気ガスと水蒸気115を熱交換する熱交換器116が配設されている。
【0049】
熱交換器116、貯留手段110、収納手段102は、同図に示す如く搬送手段117によって接続されている。搬送手段117は、ステンレス管で構成され、また、熱交換器116と貯留手段110の間には、搬送手段117内を流れる水蒸気115を加熱するための蒸気過熱用ヒーター118が備えられており、これにより、水蒸気115は、搬送手段117内部で凝縮しないように十分に過熱される。また、水蒸気115は、ボイラー等の圧送手段(図示せず)にて加圧された状態にあり、その圧力は、貯留手段110内の固形残留物112が収納手段102へ圧送される程度に調整されている。
【0050】
次に、図2に基づき収納手段102の構成について説明する。
【0051】
図2に示すように、収納手段102は、外部から投入される有機物101を収納する第1の収納室121と、格子状の仕切り板122を介して第1の収納室121の下方に位置する第2の収納室123を備えている。
【0052】
第2の収納室123底面は、下方から供給される過熱水蒸気124の流れを整える整流板125である。整流板125は、その上に堆積する有機物101の一部が排出口126方向へ流動しやすいように傾斜して設置されている。
【0053】
一方、第1の収納室121側面には、有機物101を投入するための投入口127が設けられている。
【0054】
さらに、第1の収納室121と第2の収納室123の背面部には、それぞれの部屋の上部に設けた連通部129a、129bを介して各収納室121、123と連通した排出路129が設けられており、この排出路129は、第2の収納室123の下方に位置した混合手段128と連通している。
【0055】
第2の収納室123と混合手段129の間には、搬送手段117から搬送される過熱水蒸気124と固形残留物112の混合物を、ガス成分(加熱水蒸気124)と固形成分(固形残留物112)に分離する固気分離手段130が設けられている。そして、固気分離手段130は、混合手段128に接続されている。
【0056】
以上のように構成された有機物の処理装置について、以下その動作を説明する。
【0057】
まず、有機物101が投入口127から第1の収納室121に投入され、仕切り板122上に載せられる。
【0058】
有機物101の投入量は、本装置の設置が、飲食店や小店舗等の場合は、排出される有機物101の一日の排出量が比較的少量であり、また、ほとんどが食品廃棄物である。したがって、かかる場合であると、毎日閉店後に1回投入され、翌日の同時刻までに一連の処理が完了する程度の投入量でよい。
【0059】
一方、食品工場や汚泥処理場等のように大量の有機物102を処理する必要がある大規模装置の場合は、ベルトコンベアやスクリューフィーダー等の連続供給機を備えると作業性は向上する。
【0060】
第1の収納室121では、下方から供給される過熱水蒸気124によって、有機物101が乾燥される。
【0061】
したがって、必要に応じて第1の収納室121に、図2の破線で示す如く、モータによって駆動される軸に、放射状に延びる羽根を設けた周知の構成からなる攪拌手段Mを具備する構成とすることも可能である。かかる構成の場合は、投入された有機物101と加熱水蒸気124が攪拌によって混合されるため、加熱水蒸気124による予備加熱がより効率よく行えるものである。
【0062】
過熱水蒸気124は、空気乾燥よりも乾燥速度が速くなる逆転点である180℃以上に過熱されている。
【0063】
上記乾燥過程で有機物101から発生する水蒸気は、上部の連通部129aから排出路129に流通する。また、乾燥状態になった有機物101は脆化し、仕切り板122から下方の第2の収納室123に落下する。ここに落下した有機物101は、粉粒状であるので第1の収納室121にある有機物101と比較して流動性に優れ、特に粉体状になった有機物101は、整流板125を通過した過熱水蒸気124の流れにより流動する。
【0064】
そして、その一部は、上方の第1の収納室121に投入された有機物101と混合し、また一部は、背面上部に設けた連通部129bを通って排出路129流れ込み、混合手段128に供給される。
【0065】
混合手段128では、固気分離手段130から送られる固形残留物112と、排出路129から供給される粉状の有機物101およびその搬送媒体である水蒸気が混合され、下部のロータリーバルブ113に運ばれる。ロータリーバルブ113は、モータ(図示せず)によって駆動され、連続式に準じた供給が行えるものであり、インバーター制御を用いることにより回転数を可変して単位時間あたりの供給量を調整することができるものである。
【0066】
ロータリーバルブ113より反応手段103に供給された有機物101と固形残留物112の混合物は、ここで加熱される。加熱温度は目的に応じて適宜設定可能で、例えば、水素を多く生成しようとすると800℃以上にすることが好ましい。この反応場は、水蒸気に富んだ還元雰囲気であり、有機物101は水素、メタンを主成分とする非凝縮性ガス、タール等の凝縮性成分および固形残留物112に分解される。
【0067】
この処理装置では、有機物101に以前の反応によって生成した固形残留物112を混合している。そのため、この固形残留物112には、多くのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含んでいる。これらには、有機物101の分解を促進する機能を有しており、したがって、反応手段103に供給される有機物101には、元来含有していたよりも多くのアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている。
【0068】
さらに、これらは混合手段128での混合作用によって有機物101表面に一様に分散しているので、有機物101との接触頻度が高くなっており、分解促進の機能が良好に発揮できる状態になっている。
【0069】
このような状態のため、有機物101に含まれる炭素と水蒸気が高温場で反応して、水素と一酸化炭素および二酸化炭素が豊富に生成される。
【0070】
有機物101が食品廃棄物の場合、それに含有される水分も水蒸気となり、炭素と反応して、水素等を生成する。また、これらの生成ガスと反応剤である水蒸気115の流れ方向が一致しているので、反応場における生成ガスが迅速に取り除かれ、その結果、化学平衡が崩れてさらに反応が進行し易くなっている。
【0071】
有機物101から発生した非凝縮性ガスおよび凝縮性成分は、反応手段103下方に設けた開口103aから改質器106に流入する。
【0072】
改質器106内部の多孔質粒子107は約800℃に加熱されており、ここで分子量の大きな凝縮性成分は、水素やメタン等の非凝縮性ガスに再度分解される。多孔質粒子107における雰囲気は、反応手段103と同様に水蒸気の還元雰囲気が好ましいが、多孔質粒子107表面に炭素分が堆積することにより、凝縮性成分の分解能力が低下するようなことがあれば、酸素等によって酸化除去しても構わない。ただし、この操作をする場合は、価値の高い水素やメタン等の燃料ガスまで燃焼しないように、操作条件を最適化する必要がある。
【0073】
このようにして得られた非凝縮性ガスは、改質器106から排気管114へ流れ、その途中において保有する顕熱を熱交換器116で水蒸気115に与えることにより、冷却されて系外に排気される。
【0074】
なお、図示していなが、前記排出した非凝縮性ガスをさらに浄化して、ガスエンジン発電機や燃料電池の燃料として用いることにより電力を生み出すことができる。
【0075】
そして、反応手段103の固形残留物112は、ロータリーバルブ111を介して貯留手段110に排出される。
【0076】
ロータリーバルブ111は、モータ(図示せず)によって駆動されるもので、反応手段103内に堆積する固形残留物112の量によって、ON・OFFおよび回転数が制御される。かかる制御として、例えば、固形残留物112の上表面位置を検知する位置センサー等を用い、所定の残留量を検出してロータリーバルブ111を動作させることができる。
【0077】
貯留手段110に落下した固形残留物112は、水蒸気115の圧送流によって搬送手段117を流動しながら収納手段102の固気分離手段130まで搬送され、ここで前述の如く加熱水蒸気124と固形残留物112に分離され、以下上述の動作が繰り返される。
【0078】
なお、図示していないが、固形残留物112が循環経路内に過剰になったときには、貯留手段110から適宜量を抜き出す構成とすることによって、適量を維持することができる。
【0079】
このように、本実施の形態1における有機物の処理装置は、有機物101を高温の水蒸気還元雰囲気でガス化するもので、固形残留物112である灰分中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機物分解能力を十分に発揮し、水素等の燃料として価値の高いガスを多量に生成することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかる有機物の処理装置は、例えば燃料電池用の燃料である水素を石炭やバイオマスから小規模でも高効率に製造することができ、発電作用に供することが可能となる。このため、ホテル、飲食店、住宅等のような電力消費地での水素製造が可能となり、送電によるロスが少ない分散型電源システムに適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1における有機物の処理装置の構成図
【図2】同実施の形態1における処理装置の収納手段の詳細を示す構成図
【図3】従来技術を示す統合型循環流動床ガス化炉の構成図
【符号の説明】
【0082】
101 有機物
102 収納手段
103 反応手段
110 貯留手段
112 固形残留物
115 水蒸気
117 搬送手段
121 第1の収納室
122 仕切り板
123 第2の収納室
124 過熱水蒸気
128 混合手段
129 排出路
130 固気分離手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を収納する収納手段と、前記有機物を熱化学反応してガス生成物と固形残留物とに分解する反応手段と、前記反応手段から排出される前記固形残留物を一時的に貯留する貯留手段と、前記貯留手段に流動媒体を供給して前記貯留手段内の前記固形成分を前記収納手段に搬送する搬送手段を具備し、前記有機物を、前記収納手段内で予備乾燥した後に前記反応手段へ供給するようにした有機物の処理装置。
【請求項2】
前記有機物を、前記有機物より温度が高い流動媒体と熱交換することにより前記予備乾燥を行うようにした請求項1に記載の有機物の処理装置。
【請求項3】
前記流動媒体に、180℃以上の過熱水蒸気を用いた請求項1または2に記載の有機物の処理装置。
【請求項4】
前記収納手段を、上段に設けられた収納室と、前記収納室に収納された乾燥状態にある有機物が通過する排出路と、前記収納室の下段に設けられ、前記搬送手段からの搬送物を流動媒体と固形残留物に分離する固気分離手段と、前記排出路から運ばれた有機物と前記固気分離手段で分離された固形残留物を混合する混合手段を具備し、前記固気分離手段で分離された前記流動媒体を、前記収納室に供給するようにした請求項1から3のいずれか一項に記載の有機物の処理装置。
【請求項5】
前記収納手段を構成する収納室を、有機物を投入する第1の収納室と、前記第1の収納室と前記固気分離手段の間に位置し、前記第1の収納室で乾燥され、紛粒化した灰状の有機物を収納する第2の収納室を具備する構成とし、さらに、前記第1の収納室と前記第2の収納室を、前記排出路と連通させ、前記固気分離手段で分離された前記流動媒体を、前記第2の収納室および前記第1の収納室に供給するようにした請求項4に記載の有機物の処理装置。
【請求項6】
前記有機物を、食品廃棄物とした請求項1から5のいずれか一項に記載の有機物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−36458(P2008−36458A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209679(P2006−209679)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】