有機物含有排水の処理方法
【課題】有機物含有排水を効果的に処理できると共に、汚泥の抜き取り処理を要さず結果として余剰汚泥を十分に減容化できる、有機物含有排水の処理方法を提供する。
【解決手段】有機物含有排水の処理方法は、有機物含有排水を好気性雰囲気下に維持して排水の流量を調整する流量調整工程1、排水を微好気性雰囲気下で微生物処理する微好気性微生物処理工程2、3、微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程4、得られた汚泥を嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程5、汚泥濃縮工程で処理された汚泥を微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程6、微好気性汚泥消化工程で得られた上澄み液を回収し、微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程7を含み、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気整備生物処理工程に返送し、汚泥濃縮工程から上澄み液を流量調整工程に返送する。
【解決手段】有機物含有排水の処理方法は、有機物含有排水を好気性雰囲気下に維持して排水の流量を調整する流量調整工程1、排水を微好気性雰囲気下で微生物処理する微好気性微生物処理工程2、3、微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程4、得られた汚泥を嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程5、汚泥濃縮工程で処理された汚泥を微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程6、微好気性汚泥消化工程で得られた上澄み液を回収し、微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程7を含み、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気整備生物処理工程に返送し、汚泥濃縮工程から上澄み液を流量調整工程に返送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有排水の処理方法に関し、更に詳細には、有機物含有排水を効果的に処理できると共に、汚泥の抜き取りを要せず結果的に処理すべき余剰汚泥を十分に減容化できる、有機物含有排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物含有排水の処理に際しては、主として活性汚泥法が用いられている。活性汚泥法では、酸素呼吸する好気性バクテリアを主に使用し、分解させて流入汚水を浄化する方法を採用している。しかし、酸素呼吸する好気性バクテリアは増殖速度が速く処理槽内で必要以上に増加するため、この増加したバクテリア及びバクテリアの死骸や排泄物など余剰汚泥となりこれらを引き抜く作業が必要となる。この余剰汚泥は、産業廃棄物の約半数を占めるといわれ、最終処分場での埋め立て余地が少なくなっていることからその減容化対策が急務となっている。また、食品リサイクル法の施行により食品関連事業でも廃棄物の発生抑制や減容化対策が急務となっている。
【0003】
そこで、余剰汚泥を処理するか、又は余剰汚泥を排出しない排水の処理方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、微好気性の曝気処理により廃水処理を行う廃水処理装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、活性汚泥方式と生物膜方式の両方の特性を有する曝気処理方式が提案されている。
特許文献3には、曝気処理槽内において、汚水の曝気処理と汚泥沈殿とを同時に効果的に行うと共に、スカムの発生を極力抑え、わずかにでも発生したスカムは浄化水から自然に分離できるようにしてなる汚水処理装置が提案されている。
【0005】
特許文献4には、沈殿槽の底部に堆積した汚泥を吸い上げて、一定量の汚泥を曝気処理槽に返送できるようにし、残りの汚泥を沈殿槽に液面を乱すことなく戻し、かつ沈殿槽底部の堆積汚泥を適度に撹拌するようになされた汚水処理装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献5には、廃水原水に微生物の電子受容体調整水を混入し、溶存酸素量が実質的に1mg/l以下の条件で曝気し、汚泥を沈殿分離処理した後、更に溶存酸素量が実質的に1mg/l以下の条件で曝気すると共に上澄み水を電子受容体調整水として廃水原水に返送する処理方法を行うための処理装置が提案されている。
【0007】
しかし、上述の従来提案されている処理方法では、未だ十分に余剰汚泥を減容化できないか、又は余剰汚泥が発生しないとしても十分に効果的な有機物含有排水の処理ができないという問題がある。
【0008】
要するに、未だ十分に余剰汚泥を減容化できていないのが現状であり、余剰汚泥をさらに減容化できる有機物含有排水の処理方法の開発が要望されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004-188281号公報
【特許文献2】特開2004-223320号公報
【特許文献3】特開2004-223432号公報
【特許文献4】特開2004-237156号公報
【特許文献5】特許第3667254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、有機物含有排水を効果的に処理できると共に、汚泥の抜き取り処理を要さず余剰汚泥を十分に減容化できる、有機物含有排水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、有機物含有排水の好気性雰囲気下での微生物処理と微好気性雰囲気下での微生物処理とを組み合わせると共に、嫌気性雰囲気下で処理後の排水を汚泥と上澄み液とに沈降分離させることにより、上記目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、有機物含有排水を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下に維持して前記排水の流量を調整する流量調整工程、前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する微好気性微生物処理工程、次いで、微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程、得られた汚泥を嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程、汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程、微好気性汚泥消化工程で得られた上澄み液を回収して溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程を含み、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気性微生物処理工程に返送して、微好気性微生物を活性化させ、汚泥濃縮工程で得られた上澄み液を流量調整工程に返送し、上澄み液貯留工程から上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する有機物含有排水の処理方法である。
【0013】
本処理方法において、微好気性微生物処理工程は、流量調整工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する第1微好気性微生物処理工程と、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理して有機物の分解を進行させる第2微好気性微生物処理工程とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の処理方法によれば、有機物含有排水を微好気性雰囲気下で処理するので、増殖速度が遅く、必要最低限の菌体合成で有機物を分解する硝酸呼吸を主とする微生物の増殖が促され、逆に余剰汚泥を発生させる好気性微生物(酸素呼吸を主とする微生物)の増殖が抑制される。よって、有機物含有排水を効果的に処理できると共に、汚泥の抜き取り処理を要さず余剰汚泥を十分に減容化でき、特にメンテナンスなしに有機物含有排水を連続処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について図面を参照して更に詳細に説明する。
本発明で処理できる有機物含有排水としては、屎尿排水、家畜糞尿排水、農業排水、生活排水、工場排水などが挙げられる。
【0016】
図1は、本発明の処理方法の概要を示す模式図である。
本発明の有機物含有排水の処理方法は、図1に示すように、流量調整槽1、第1微好気反応槽2、第2微好気反応槽3、沈殿槽4、汚泥濃縮槽5、微好気性汚泥消化槽6、上澄み液貯留槽7、上澄み液貯留槽7から流量調整槽1に至る循環用配管(消化上澄み液返送管)8、上澄み液貯留槽7から第1微好気反応槽2に至る循環用配管(消化上澄み液返送管)9及び汚泥濃縮槽5から流量調整槽1に至る循環用配管(濃縮汚泥返送管)10を具備するシステムで行うことができる。なお、本実施形態では、微好気性反応槽を第1及び第2微好気反応槽の2槽構造を採用しているが、必ずしも2槽構造である必要はない。
【0017】
流量調整槽1において、有機物含有排水(以下、「原水」ともいう)を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下に維持して前記排水の流量を調整する流量調整工程を行う。第1微好気反応槽2において、前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で処理する第1微好気性微生物処理工程を行う。第2微好気反応槽3において、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で処理して有機物の分解を進行させる第2微好気性微生物処理工程を行う。次いで、沈殿槽4において、第2微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程を行う。ここまでの工程は、本システムに供給される原水の自然流に従って連続的に行われる。沈殿槽4で得られる上澄み液は排水基準を満たしている限り、一般流域に放流してよい。一方、沈殿槽4で得られる汚泥は、通常は第1微好気性微生物処理工程に返送されて再び微生物の活性化に供されるが、1日に1〜2回の割合で汚泥濃縮槽5に送られ、嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程に供される。次いで、微好気性汚泥消化槽6において、汚泥濃縮工程で処理された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程を行う。微好気性汚泥消化工程は、滞留時間を約12〜24時間程度とすることが好ましい。次に、上澄み液貯留槽7において、微好気性汚泥消化工程で得られた消化上澄み液を回収し、溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程を行う。この上澄み液貯留工程も滞留時間を約12〜24時間程度として、消化還元用微生物の繁殖を促すことが好ましい。
【0018】
汚泥沈殿工程で得られた汚泥は、微好気性微生物処理工程に返送されて、微好気性微生物を活性化させる。汚泥濃縮工程で得られた上澄み液は、流量調整工程に返送され、再度、排水処理工程に利用される。上澄み液貯留工程から消化上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する。
【0019】
以下、各工程をさらに詳細に説明する。
1)流量調整工程
流量調整工程は、前記有機物含有排水を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下、好ましくは1.0超過〜2.0mg/lに維持して、前記排水の流量を調整する工程である。有機物含有排水は、水質・溶存酸素量・流入量など、常に変動し安定していない。続く第1及び第2微好気処理工程において、すばやく微生物を増殖活性化させる為に流量調整工程で有機物含有排水の溶存酸素量を1.0超過〜2.0mg/lの範囲で安定させて流出させ、第1微好気反応槽において溶存酸素量を1.0mg/l以下に調整するのが好ましい。
【0020】
溶存酸素量の調整は、本実施形態においては、図1に示すように流量調整槽1内に設けた曝気用配管1aから空気を送り込むことによって調整している。ここで、曝気用配管1aから供給される空気の流れによって流量調整槽1内の液の循環も行われる。
【0021】
流量は、図1に示すように、流量調整槽1内に存在する有機物含有排水並びに後述する汚泥濃縮槽5及び上澄み液貯留槽7から流量調整槽1に戻される上澄み液が、流量調整槽1から第1微好気反応槽2に1時間当たり日平均排水量の24分の1乃至1.5倍以下で流出するように調整する。第1微好気反応槽以降の処理槽容量は、基本的に1日の流入排水を16〜24時間以内で処理するように計画汚濁負荷量で設計されるため、前記流出量を超えて流出させると各処理に必要な滞留時間が確保できず好ましくない。一般的には、流量調整槽1へ戻される上澄み液は処理水量全体の約0.3〜約1.0vol%となるように設定するのが好ましい。
【0022】
2)第1微好気性微生物処理工程
第1微好気性微生物処理工程は、前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する工程である。
【0023】
本工程では、硝酸塩及びリン酸塩を消費する消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)が優占化する。化学合成菌は硝酸を産生し、メトファイル菌は硫化物を産生する。被処理液中に硫化物が増加すると、硫化物を電子受容体として消費する硫黄還元微生物(古細菌を含む)が増殖する。
【0024】
溶存酸素量が0.1mg/l未満であると消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)の増殖が著しく低下し、逆に1.0mg/lを超えると好気性微生物が増殖活性化してしまい微好気性雰囲気下で増殖活性化する微生物の発生を妨げる。また、好気性微生物は増殖力が強いため、汚泥の発生が増加する。
【0025】
この工程での処理は、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件で行うのが好ましい。また、処理時間である滞留時間は、4〜12時間の範囲で、有機物含有排水の負荷により設計することが好ましい。本実施形態においては、連続的に処理を行い流量調整槽1より流入したと同じ量の被処理液が第2微好気反応槽3に流出するため、被処理液が短絡し難い構造とする。一般的には、流量調整槽1から第1微好気反応槽2へ流れる水量は処理水量全体の1時間あたり日平均排水量の24分の1〜1.5となるように設定するのが好ましい。
【0026】
第1微好気反応槽2においても溶存酸素量の調整は、図1に示すように第1微好気反応槽2内に設けた曝気用配管2aから空気を送り込むことによって調整している。ここで、曝気用配管2aから供給される空気の流れによって第1微好気反応槽2内の液の循環も行われる。
【0027】
3)第2微好気性微生物処理工程
第2微好気性微生物処理工程は、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で処理して有機物の分解を進行させる工程である。
【0028】
本工程では、被処理液に含まれる有機物を消費する発酵性微生物(酵母、バシラス、アルカリゲネス、クロストリジウム、シュードモナス、乳酸菌など)を優占化させ、脱窒(N2ガス生成放出)を進行させると共に、有機物を電子供与体とする発酵反応により有機物の分解(H2、CO2等の生成)を進行させる。有機物の分解により発生したH2は、硫黄化合物を電子受容体とする硫黄還元微生物により分解されるので発酵性微生物の活性増殖が促進される。有機物の分解により発生する臭気物質(硫化メチル:メタン臭がなかったことからメタンの発生はないと考えられる)は消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)により消費される。
【0029】
溶存酸素量が0.1mg/l未満であると、発酵性微生物(酵母、バシラス、アルカリゲネス、クロストリジウム、シュードモナス、乳酸菌など)の増殖が著しく低下し、逆に1.0mg/lを超えると好気性微生物が増殖活性化してしまい、微好気性雰囲気下で増殖活性化する微生物の活性を妨げる。また、好気性微生物は増殖力が強いため、汚泥の発生が増加する。
【0030】
この工程での処理は、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件で行うことができる。また、処理時間である滞留時間は、4〜12時間の範囲で、有機物含有排水の負荷により設計することが好ましい。本実施形態においては、連続的に処理を行い第1微好気反応槽2より流入があると同量が沈殿槽3に流出するため、被処理液が短絡し難い構造とする。
【0031】
第2微好気反応槽3においても空気を供給する曝気用配管3aが設けられ、溶存酸素量の調整を行うと共に被処理液の循環を行っている。
【0032】
4)汚泥沈殿工程
汚泥沈殿工程は、第2微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる工程である。
【0033】
汚泥沈殿工程では、嫌気性雰囲気下に維持することによって発酵性微生物の増殖を停止させ、嫌気性微生物(通性嫌気性菌、硫黄還元菌)及びリン吸収性微生物(ポリリン酸蓄積菌などと考えられる)が増殖して汚泥を消化して、メタン、硝酸塩、硫黄化合物、リン酸塩などを産生する。
【0034】
沈降分離は、貯留させた被処理液を一定時間、好ましくは3〜4時間、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下に放置することにより行うことが好ましい。沈殿槽4には、処理済みの上澄み液を一般流域に放出するための上澄み液放出用配管4aが設けられている。また、汚泥を自然沈降させるため、沈殿槽4下部にはホッパー4bが設けられ、日平均排水量の1〜2倍の量で常時沈降汚泥を第1微好気反応槽2に返送し、汚泥濃縮槽5にも分配調整できる構造とする。なお、沈殿槽4内に貯留させた被処理液の高さ方向に分離用水準線(図中、点線で示す)を設定し、分離用水準線よりも上側に存在する被処理液を上澄み液とし、第2微好気反応槽3からの被処理液の流入は分離水準線よりも下側にて行うようにしてもよい。第2微好気反応槽からの流入速度は1時間当たり日平均排水量の24分の2〜3とするのが好ましい。
【0035】
5)汚泥濃縮工程
汚泥濃縮工程は、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を嫌気性雰囲気下でさらに濃縮沈降させて、上澄み水と汚泥とに分離させる工程である。
【0036】
汚泥濃縮工程では、汚泥沈殿工程で精製された沈殿汚泥を、さらに嫌気性雰囲気下に維持することによって発酵性微生物の増殖を抑制し、消化性微生物(メタン生成菌、硫黄還元菌など)の増殖を促し、汚泥の消化がさらに進行し、余剰汚泥が減量する。
【0037】
本実施形態においては、約12〜24時間に1回の割合で沈殿槽4の下端から汚泥を抜き取り汚泥濃縮槽5に投入し、任意の所定量貯留した後、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下で約12〜24時間の滞留時間で濃縮させることが好ましい。
【0038】
汚泥濃縮槽5には、分離された上澄み液を流量調整槽1に戻すための循環用配管10が設けられている。また、汚泥を自然沈降させるため、汚泥濃縮槽5下部にはホッパー5bが設けられている。
【0039】
本実施形態の濃縮処理は連続的に行うものであるが、汚泥濃縮工程には所定量の汚泥の存在が必要となり、汚泥沈降工程で所定量の汚泥が沈降するまでの時間を要し、また汚泥が消化されて所定量まで減量するまでの時間を要するので、汚泥の移送は約12〜24時間に1回の割合で行うことが好ましい。
【0040】
6)微好気性汚泥消化工程
微好気性汚泥消化工程は、汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する工程である。
【0041】
汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥中の有機物はほとんど消化されてほぼ無機物となっており、発酵性微生物は激減している。微好気性汚泥消化工程では、消化性微生物(メタン生成菌、硫黄還元菌など)及び消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)の共存により、微量に残存している有機物を分解消化して、硝酸塩、硫黄化合物、リン酸塩などの無機成分に富む溶液(消化上澄み液)が生成される。
【0042】
溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lに維持し、消化性微生物と消臭性微生物を適度に増殖させることで、結果的に汚泥は減容される。
溶存酸素量が1.0mg/lを超えると消化性微生物や消臭性微生物の活性が低下する。
【0043】
本実施形態においては、汚泥濃縮槽5の下端から汚泥を抜き取り微好気性汚泥消化槽6に投入し、任意の所定量貯留した後、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下、12〜24時間の滞留時間で反応を行うことが好ましい。
【0044】
本実施形態の処理方法は連続的に行うものであるが、微好気性汚泥消化工程には所定量の汚泥の存在が必要となり、先行する汚泥濃縮工程と同様に約12〜24時間に1回の割合で汚泥の移送を行うのが好ましい。
【0045】
微好気性汚泥消化槽6においても曝気用配管6aが設けられ、溶存酸素量の調整を行うと共に被処理液の循環を行っている。
微好気性汚泥消化工程により得られた無機成分に富む上澄み液は、自然流出により次の上澄み液貯留工程に送られる。
【0046】
7)上澄み液貯留工程
上澄み液貯留工程は、微好気性汚泥消化工程で得られた上澄み液(以下、この上澄み液を「消化上澄み液」という)を回収し、溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する工程である。また、わずかに残存している汚泥を消化させる工程でもある。
【0047】
消化上澄み液には、微生物がエネルギー源とする化学物質が多量に含まれている。例えば、微生物学的に産生される硝酸塩、硫黄化合物、リン酸塩などを多量に含む無機液体などである。したがって、この消化上澄み液を流量調整槽1又は微好気反応槽2に戻すことによって、原水中の微生物の代謝を助長することができ、微生物を活性な状態に維持することが容易となる。このため、消化上澄み液を微生物の餌として好適な硝酸4.0〜6.0mg/Lとなる濃度範囲となるように調整しながら貯留するのが好ましい。
【0048】
溶存酸素量が0.1mg/l未満であると、消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)の活性が著しく低下し、逆に1.0mg/lを超えると消化性微生物や消臭性微生物の活性が低下する。
【0049】
本実施形態においては、微好気性汚泥消化槽6の上端部分から上澄み液を自然流出により抜き取り上澄み液貯留槽7に投入し、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下で約12〜24時間貯留する。
【0050】
上澄み液貯留槽7においても曝気用配管7aが設けられ、溶存酸素量の調整を行うと共に被処理液の循環を行っている。
【0051】
8)循環工程
本発明において、循環工程には、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気性微生物処理工程に返送して微好気性微生物を活性化させる工程と、汚泥濃縮工程で得られた上澄み液を流量調整工程に返送する工程と、上澄み液貯留工程から上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する工程とがある。
【0052】
汚泥沈殿槽4からの汚泥は、汚泥返送管4cを通して微好気性微生物処理工程(第1微好気反応槽2)に返送される。汚泥濃縮槽5からの上澄み液は、上澄み液返送管10を通して流量調整槽1に返送される。上澄み液貯留槽7からの消化上澄み液は、消化上澄み液返送管8及び9を通して流量調整槽1及び微好気性微生物処理工程(第1微好気反応槽2)にそれぞれ返送される。
【0053】
消化上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に戻す際には、一日に処理する排水の総量を基準としてそれぞれ0.3〜1.0vol%となるように各槽に投入するのが好ましい。
【0054】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0055】
[実験系]
図1に示す装置を用いて、1日あたりの処理量を20m3として有機物含有排水の処理を行った。
【0056】
流量調整槽1の溶存酸素量を1.0超過〜2.0mg/l、第1微好気反応槽2及び第2微好気反応槽3の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、沈殿槽4及び汚泥濃縮槽5を嫌気性条件とし、微好気性汚泥消化槽6の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、上澄み液貯留槽7の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/lに調整した。流量調整槽1への原水の流入量を20m3/日として、流量調整槽から第1微好気性反応槽2への流出量を0.9 m3/分に調製して連続供給した。第1微好気反応槽2から第2微好気反応槽3、沈殿槽4まではオーバーフローにより連続供給とした。沈殿槽4にて、処理済みの上澄み液を処理水放流へ回し、汚泥を沈降させた。約24時間かけて沈降させた汚泥を槽底部から抜き出して汚泥濃縮槽5に移送し、さらに約24時間かけて汚泥を沈降させて活性汚泥を濃縮させた。その後、汚泥濃縮槽5の上澄み液を流量調整槽1及び第1微好気反応槽2にそれぞれ返送すると共に、濃縮後の汚泥を汚泥濃縮槽5の底部から抜き出して微好気性汚泥消化槽6に移送し、さらに約24時間かけて汚泥を消化させた。微好気性汚泥消化槽6で得られる上澄み液を上澄み液貯留槽7に移送して、さらに約24時間かけて微好気性雰囲気下で微生物代謝を進行させて無機塩類などに富む上済み液を調製した。上澄み液を流量調整槽1及び/又は第1微好気反応槽2に移送して、次の水処理を行った。
【0057】
用いた排水は、学校給食設備から排出された有機物含有排水であった。
原水、第2微好気反応槽3から採取した微好気処理水、微好気性汚泥消化槽6から採取した微好気性汚泥消化水、沈殿槽4の上澄み液から採取した処理水について、pH(JIS K 0102 12.1)、BOD(JIS K 0102 21)、COD(JIS K 0102 17)、SS(昭和46年環境庁告示第59号付表8)、N−Hx(ノルマルヘキサン抽出物含有量:昭和49年環境庁告示第64号付表4)、T-N(総窒素含有量:JIS K 0102 54.2)、T-P(総リン含有量:JIS K 0102 46.3.1)、透視度(クリンメジャー法による測定)、30分間で沈降する汚泥の高さの比率であるSV30(活性汚泥沈殿率30分値)、活性汚泥浮遊物質の指標であるMLSS(透過光式MLSS計による測定)、ORP(酸化還元電位計:JIS C 0920)をJIS法に準拠して測定した。水質測定結果を表1〜表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
[対照系1]
図1に示す同じ装置を用いて、実験系と同様の実験を行った。ただし、流量調整槽1の溶存酸素量を1.0超過〜2.0mg/l、第1好気反応槽2及び第2好気反応槽3の溶存酸素量を2.55〜3.20mg/l、沈殿槽4及び汚泥濃縮槽5を嫌気性条件(0.8mg/l以下)とし、汚泥消化槽6の溶存酸素量を0mg/l、上澄み液貯留槽7の溶存酸素量を0mg/lに調整した。結果を表3〜表4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
[対照系2]
図1に示す同じ装置を用いて、実験系と同様の実験を行った。ただし、流量調整槽1の溶存酸素量を1.0mg/l未満、第1微好気反応槽2及び第2微好気反応槽3の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、沈殿槽4を嫌気性条件とし、汚泥濃縮槽5を溶存酸素量を1.0mg/l未満の微好気性条件とし、微好気性汚泥消化槽6の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、上澄み液貯留槽7の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/lに調整した。結果を表5〜表6に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
実験系及び対照系1〜2の水質測定結果をグラフに示す(図2〜図14)。図2〜図13に示す水質推移グラフから、BOD、COD、SS、ノルマルヘキサン抽出物含有量(N-Hex)、総窒素含有量(T-N)及び総リン含有量(T-P)の全ての項目において実験系が対照系1及び2よりも処理水中含有量が少なく、良好な処理が達成されていることがわかる。特に、それぞれの原水からの処理率を比較すると本発明の実験系ではBODで86%以上、CODで70%以上、SSで85%以上ときわめて良好に処理されていることがわかる。また、総窒素含有量では実験系が対照系1及び2の1/2〜1/4と非常に低い値を示し、及び総リン含有量では実験系が対照系1及び2の1/4〜1/10と極めて低い値を示している。このように、本発明の方法では、BOD、COD、SSをきわめて良好に処理できるだけでなく、窒素及びリンの含有量を著しく低下させることができる。また、本発明の方法により処理した場合には、BOD、COD、SS、N-Hex、T-Pについて常に公共用水域への排水基準(たとえば、水質汚濁防止法に基づいて各地方自治体が定めることができる上乗せ基準として、BOD:20mg/L以下、COD:10mg/L以下、SS:20mg/L以下、N-Hex:5mg/L以下、T-N:20mg/L以下、T-P:1mg/L以下)を満たし、原水の変動に関わらず一定となり、良好に処理されていることがわかる。
【0067】
また、図14に示すSV30の推移グラフから、本発明の実験系では、微好気性汚泥消化工程においてSV30の値が10日目くらいから95%〜98%で安定して推移しており、一方、対照系1では27日目に100%に達したことがわかる。対照系1では、29日目に汚泥の抜き出しを行ったので30日目には75%程度に低下した。SV30の値が100%であるということは、汚泥が飽和状態になり、汚泥の消化がもはや進行せず、汚泥の抜き取りを必要とする状態、すなわち余剰汚泥の発生を意味する。これに対して、本発明の実験系では、80日目を経過してもSV30の値が100%に達していない。これは、汚泥の消化が進行しており、汚泥の抜き取りを要せずに、上澄み液をそのまま流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に戻して再利用できるので、結果的に廃棄処分しなければならない汚泥(余剰汚泥)はほとんど発生せず、減容化が達成されたことを意味する。
【0068】
以上の結果より、本発明の処理方法によれば、廃棄処分しなければならない汚泥(余剰汚泥)をほとんど発生させずに余剰汚泥の減容化を達成することができると共に、水質基準分析項目のすべて(BOD、COD、SS、ノルマルヘキサン抽出物含有量、総窒素含有量及び総リン含有量)において極めて良好な処理効率を達成でき、特に総リン含有量に関して極めて優れた処理を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の処理方法の概要を示す模式図である。
【図2】図2は、実験プラントでの実験系及び対照系のBOD測定値の推移を示すグラフである。
【図3】図3は、実験プラントでの実験系及び対照系のBOD処理率の推移を示すグラフである
【図4】図4は、実験プラントでの実験系及び対照系のCOD測定値の推移を示すグラフである。
【図5】図5は、実験プラントでの実験系及び対照系のCOD処理率の推移を示すグラフである。
【図6】図6は、実験プラントでの実験系及び対照系のSS測定値の推移を示すグラフである。
【図7】図7は、実験プラントでの実験系及び対照系のSS処理率の推移を示すグラフである。
【図8】図8は、実験プラントでの実験系及び対照系のN-Hex測定値の推移を示すグラフである。
【図9】図9は、実験プラントでの実験系及び対照系のN-Hex処理率の推移を示すグラフである。
【図10】図10は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-N測定値の推移を示すグラフである。
【図11】図11は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-N処理率の推移を示すグラフである。
【図12】図12は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-P測定値の推移を示すグラフである。
【図13】図13は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-P処理率の推移を示すグラフである。
【図14】図14は、実験プラントでの実験系及び対照系のSV30推移を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1 流量調整槽
2 第1微好気反応槽
3 第2微好気反応槽
4 沈殿槽
5 汚泥濃縮槽
6 微好気性汚泥消化槽
7 上澄み液貯留槽
8〜10 再循環用配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有排水の処理方法に関し、更に詳細には、有機物含有排水を効果的に処理できると共に、汚泥の抜き取りを要せず結果的に処理すべき余剰汚泥を十分に減容化できる、有機物含有排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物含有排水の処理に際しては、主として活性汚泥法が用いられている。活性汚泥法では、酸素呼吸する好気性バクテリアを主に使用し、分解させて流入汚水を浄化する方法を採用している。しかし、酸素呼吸する好気性バクテリアは増殖速度が速く処理槽内で必要以上に増加するため、この増加したバクテリア及びバクテリアの死骸や排泄物など余剰汚泥となりこれらを引き抜く作業が必要となる。この余剰汚泥は、産業廃棄物の約半数を占めるといわれ、最終処分場での埋め立て余地が少なくなっていることからその減容化対策が急務となっている。また、食品リサイクル法の施行により食品関連事業でも廃棄物の発生抑制や減容化対策が急務となっている。
【0003】
そこで、余剰汚泥を処理するか、又は余剰汚泥を排出しない排水の処理方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、微好気性の曝気処理により廃水処理を行う廃水処理装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、活性汚泥方式と生物膜方式の両方の特性を有する曝気処理方式が提案されている。
特許文献3には、曝気処理槽内において、汚水の曝気処理と汚泥沈殿とを同時に効果的に行うと共に、スカムの発生を極力抑え、わずかにでも発生したスカムは浄化水から自然に分離できるようにしてなる汚水処理装置が提案されている。
【0005】
特許文献4には、沈殿槽の底部に堆積した汚泥を吸い上げて、一定量の汚泥を曝気処理槽に返送できるようにし、残りの汚泥を沈殿槽に液面を乱すことなく戻し、かつ沈殿槽底部の堆積汚泥を適度に撹拌するようになされた汚水処理装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献5には、廃水原水に微生物の電子受容体調整水を混入し、溶存酸素量が実質的に1mg/l以下の条件で曝気し、汚泥を沈殿分離処理した後、更に溶存酸素量が実質的に1mg/l以下の条件で曝気すると共に上澄み水を電子受容体調整水として廃水原水に返送する処理方法を行うための処理装置が提案されている。
【0007】
しかし、上述の従来提案されている処理方法では、未だ十分に余剰汚泥を減容化できないか、又は余剰汚泥が発生しないとしても十分に効果的な有機物含有排水の処理ができないという問題がある。
【0008】
要するに、未だ十分に余剰汚泥を減容化できていないのが現状であり、余剰汚泥をさらに減容化できる有機物含有排水の処理方法の開発が要望されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004-188281号公報
【特許文献2】特開2004-223320号公報
【特許文献3】特開2004-223432号公報
【特許文献4】特開2004-237156号公報
【特許文献5】特許第3667254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、有機物含有排水を効果的に処理できると共に、汚泥の抜き取り処理を要さず余剰汚泥を十分に減容化できる、有機物含有排水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、有機物含有排水の好気性雰囲気下での微生物処理と微好気性雰囲気下での微生物処理とを組み合わせると共に、嫌気性雰囲気下で処理後の排水を汚泥と上澄み液とに沈降分離させることにより、上記目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、有機物含有排水を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下に維持して前記排水の流量を調整する流量調整工程、前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する微好気性微生物処理工程、次いで、微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程、得られた汚泥を嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程、汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程、微好気性汚泥消化工程で得られた上澄み液を回収して溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程を含み、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気性微生物処理工程に返送して、微好気性微生物を活性化させ、汚泥濃縮工程で得られた上澄み液を流量調整工程に返送し、上澄み液貯留工程から上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する有機物含有排水の処理方法である。
【0013】
本処理方法において、微好気性微生物処理工程は、流量調整工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する第1微好気性微生物処理工程と、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理して有機物の分解を進行させる第2微好気性微生物処理工程とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の処理方法によれば、有機物含有排水を微好気性雰囲気下で処理するので、増殖速度が遅く、必要最低限の菌体合成で有機物を分解する硝酸呼吸を主とする微生物の増殖が促され、逆に余剰汚泥を発生させる好気性微生物(酸素呼吸を主とする微生物)の増殖が抑制される。よって、有機物含有排水を効果的に処理できると共に、汚泥の抜き取り処理を要さず余剰汚泥を十分に減容化でき、特にメンテナンスなしに有機物含有排水を連続処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について図面を参照して更に詳細に説明する。
本発明で処理できる有機物含有排水としては、屎尿排水、家畜糞尿排水、農業排水、生活排水、工場排水などが挙げられる。
【0016】
図1は、本発明の処理方法の概要を示す模式図である。
本発明の有機物含有排水の処理方法は、図1に示すように、流量調整槽1、第1微好気反応槽2、第2微好気反応槽3、沈殿槽4、汚泥濃縮槽5、微好気性汚泥消化槽6、上澄み液貯留槽7、上澄み液貯留槽7から流量調整槽1に至る循環用配管(消化上澄み液返送管)8、上澄み液貯留槽7から第1微好気反応槽2に至る循環用配管(消化上澄み液返送管)9及び汚泥濃縮槽5から流量調整槽1に至る循環用配管(濃縮汚泥返送管)10を具備するシステムで行うことができる。なお、本実施形態では、微好気性反応槽を第1及び第2微好気反応槽の2槽構造を採用しているが、必ずしも2槽構造である必要はない。
【0017】
流量調整槽1において、有機物含有排水(以下、「原水」ともいう)を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下に維持して前記排水の流量を調整する流量調整工程を行う。第1微好気反応槽2において、前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で処理する第1微好気性微生物処理工程を行う。第2微好気反応槽3において、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で処理して有機物の分解を進行させる第2微好気性微生物処理工程を行う。次いで、沈殿槽4において、第2微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程を行う。ここまでの工程は、本システムに供給される原水の自然流に従って連続的に行われる。沈殿槽4で得られる上澄み液は排水基準を満たしている限り、一般流域に放流してよい。一方、沈殿槽4で得られる汚泥は、通常は第1微好気性微生物処理工程に返送されて再び微生物の活性化に供されるが、1日に1〜2回の割合で汚泥濃縮槽5に送られ、嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程に供される。次いで、微好気性汚泥消化槽6において、汚泥濃縮工程で処理された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程を行う。微好気性汚泥消化工程は、滞留時間を約12〜24時間程度とすることが好ましい。次に、上澄み液貯留槽7において、微好気性汚泥消化工程で得られた消化上澄み液を回収し、溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程を行う。この上澄み液貯留工程も滞留時間を約12〜24時間程度として、消化還元用微生物の繁殖を促すことが好ましい。
【0018】
汚泥沈殿工程で得られた汚泥は、微好気性微生物処理工程に返送されて、微好気性微生物を活性化させる。汚泥濃縮工程で得られた上澄み液は、流量調整工程に返送され、再度、排水処理工程に利用される。上澄み液貯留工程から消化上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する。
【0019】
以下、各工程をさらに詳細に説明する。
1)流量調整工程
流量調整工程は、前記有機物含有排水を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下、好ましくは1.0超過〜2.0mg/lに維持して、前記排水の流量を調整する工程である。有機物含有排水は、水質・溶存酸素量・流入量など、常に変動し安定していない。続く第1及び第2微好気処理工程において、すばやく微生物を増殖活性化させる為に流量調整工程で有機物含有排水の溶存酸素量を1.0超過〜2.0mg/lの範囲で安定させて流出させ、第1微好気反応槽において溶存酸素量を1.0mg/l以下に調整するのが好ましい。
【0020】
溶存酸素量の調整は、本実施形態においては、図1に示すように流量調整槽1内に設けた曝気用配管1aから空気を送り込むことによって調整している。ここで、曝気用配管1aから供給される空気の流れによって流量調整槽1内の液の循環も行われる。
【0021】
流量は、図1に示すように、流量調整槽1内に存在する有機物含有排水並びに後述する汚泥濃縮槽5及び上澄み液貯留槽7から流量調整槽1に戻される上澄み液が、流量調整槽1から第1微好気反応槽2に1時間当たり日平均排水量の24分の1乃至1.5倍以下で流出するように調整する。第1微好気反応槽以降の処理槽容量は、基本的に1日の流入排水を16〜24時間以内で処理するように計画汚濁負荷量で設計されるため、前記流出量を超えて流出させると各処理に必要な滞留時間が確保できず好ましくない。一般的には、流量調整槽1へ戻される上澄み液は処理水量全体の約0.3〜約1.0vol%となるように設定するのが好ましい。
【0022】
2)第1微好気性微生物処理工程
第1微好気性微生物処理工程は、前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する工程である。
【0023】
本工程では、硝酸塩及びリン酸塩を消費する消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)が優占化する。化学合成菌は硝酸を産生し、メトファイル菌は硫化物を産生する。被処理液中に硫化物が増加すると、硫化物を電子受容体として消費する硫黄還元微生物(古細菌を含む)が増殖する。
【0024】
溶存酸素量が0.1mg/l未満であると消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)の増殖が著しく低下し、逆に1.0mg/lを超えると好気性微生物が増殖活性化してしまい微好気性雰囲気下で増殖活性化する微生物の発生を妨げる。また、好気性微生物は増殖力が強いため、汚泥の発生が増加する。
【0025】
この工程での処理は、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件で行うのが好ましい。また、処理時間である滞留時間は、4〜12時間の範囲で、有機物含有排水の負荷により設計することが好ましい。本実施形態においては、連続的に処理を行い流量調整槽1より流入したと同じ量の被処理液が第2微好気反応槽3に流出するため、被処理液が短絡し難い構造とする。一般的には、流量調整槽1から第1微好気反応槽2へ流れる水量は処理水量全体の1時間あたり日平均排水量の24分の1〜1.5となるように設定するのが好ましい。
【0026】
第1微好気反応槽2においても溶存酸素量の調整は、図1に示すように第1微好気反応槽2内に設けた曝気用配管2aから空気を送り込むことによって調整している。ここで、曝気用配管2aから供給される空気の流れによって第1微好気反応槽2内の液の循環も行われる。
【0027】
3)第2微好気性微生物処理工程
第2微好気性微生物処理工程は、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で処理して有機物の分解を進行させる工程である。
【0028】
本工程では、被処理液に含まれる有機物を消費する発酵性微生物(酵母、バシラス、アルカリゲネス、クロストリジウム、シュードモナス、乳酸菌など)を優占化させ、脱窒(N2ガス生成放出)を進行させると共に、有機物を電子供与体とする発酵反応により有機物の分解(H2、CO2等の生成)を進行させる。有機物の分解により発生したH2は、硫黄化合物を電子受容体とする硫黄還元微生物により分解されるので発酵性微生物の活性増殖が促進される。有機物の分解により発生する臭気物質(硫化メチル:メタン臭がなかったことからメタンの発生はないと考えられる)は消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)により消費される。
【0029】
溶存酸素量が0.1mg/l未満であると、発酵性微生物(酵母、バシラス、アルカリゲネス、クロストリジウム、シュードモナス、乳酸菌など)の増殖が著しく低下し、逆に1.0mg/lを超えると好気性微生物が増殖活性化してしまい、微好気性雰囲気下で増殖活性化する微生物の活性を妨げる。また、好気性微生物は増殖力が強いため、汚泥の発生が増加する。
【0030】
この工程での処理は、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件で行うことができる。また、処理時間である滞留時間は、4〜12時間の範囲で、有機物含有排水の負荷により設計することが好ましい。本実施形態においては、連続的に処理を行い第1微好気反応槽2より流入があると同量が沈殿槽3に流出するため、被処理液が短絡し難い構造とする。
【0031】
第2微好気反応槽3においても空気を供給する曝気用配管3aが設けられ、溶存酸素量の調整を行うと共に被処理液の循環を行っている。
【0032】
4)汚泥沈殿工程
汚泥沈殿工程は、第2微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる工程である。
【0033】
汚泥沈殿工程では、嫌気性雰囲気下に維持することによって発酵性微生物の増殖を停止させ、嫌気性微生物(通性嫌気性菌、硫黄還元菌)及びリン吸収性微生物(ポリリン酸蓄積菌などと考えられる)が増殖して汚泥を消化して、メタン、硝酸塩、硫黄化合物、リン酸塩などを産生する。
【0034】
沈降分離は、貯留させた被処理液を一定時間、好ましくは3〜4時間、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下に放置することにより行うことが好ましい。沈殿槽4には、処理済みの上澄み液を一般流域に放出するための上澄み液放出用配管4aが設けられている。また、汚泥を自然沈降させるため、沈殿槽4下部にはホッパー4bが設けられ、日平均排水量の1〜2倍の量で常時沈降汚泥を第1微好気反応槽2に返送し、汚泥濃縮槽5にも分配調整できる構造とする。なお、沈殿槽4内に貯留させた被処理液の高さ方向に分離用水準線(図中、点線で示す)を設定し、分離用水準線よりも上側に存在する被処理液を上澄み液とし、第2微好気反応槽3からの被処理液の流入は分離水準線よりも下側にて行うようにしてもよい。第2微好気反応槽からの流入速度は1時間当たり日平均排水量の24分の2〜3とするのが好ましい。
【0035】
5)汚泥濃縮工程
汚泥濃縮工程は、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を嫌気性雰囲気下でさらに濃縮沈降させて、上澄み水と汚泥とに分離させる工程である。
【0036】
汚泥濃縮工程では、汚泥沈殿工程で精製された沈殿汚泥を、さらに嫌気性雰囲気下に維持することによって発酵性微生物の増殖を抑制し、消化性微生物(メタン生成菌、硫黄還元菌など)の増殖を促し、汚泥の消化がさらに進行し、余剰汚泥が減量する。
【0037】
本実施形態においては、約12〜24時間に1回の割合で沈殿槽4の下端から汚泥を抜き取り汚泥濃縮槽5に投入し、任意の所定量貯留した後、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下で約12〜24時間の滞留時間で濃縮させることが好ましい。
【0038】
汚泥濃縮槽5には、分離された上澄み液を流量調整槽1に戻すための循環用配管10が設けられている。また、汚泥を自然沈降させるため、汚泥濃縮槽5下部にはホッパー5bが設けられている。
【0039】
本実施形態の濃縮処理は連続的に行うものであるが、汚泥濃縮工程には所定量の汚泥の存在が必要となり、汚泥沈降工程で所定量の汚泥が沈降するまでの時間を要し、また汚泥が消化されて所定量まで減量するまでの時間を要するので、汚泥の移送は約12〜24時間に1回の割合で行うことが好ましい。
【0040】
6)微好気性汚泥消化工程
微好気性汚泥消化工程は、汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する工程である。
【0041】
汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥中の有機物はほとんど消化されてほぼ無機物となっており、発酵性微生物は激減している。微好気性汚泥消化工程では、消化性微生物(メタン生成菌、硫黄還元菌など)及び消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)の共存により、微量に残存している有機物を分解消化して、硝酸塩、硫黄化合物、リン酸塩などの無機成分に富む溶液(消化上澄み液)が生成される。
【0042】
溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lに維持し、消化性微生物と消臭性微生物を適度に増殖させることで、結果的に汚泥は減容される。
溶存酸素量が1.0mg/lを超えると消化性微生物や消臭性微生物の活性が低下する。
【0043】
本実施形態においては、汚泥濃縮槽5の下端から汚泥を抜き取り微好気性汚泥消化槽6に投入し、任意の所定量貯留した後、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下、12〜24時間の滞留時間で反応を行うことが好ましい。
【0044】
本実施形態の処理方法は連続的に行うものであるが、微好気性汚泥消化工程には所定量の汚泥の存在が必要となり、先行する汚泥濃縮工程と同様に約12〜24時間に1回の割合で汚泥の移送を行うのが好ましい。
【0045】
微好気性汚泥消化槽6においても曝気用配管6aが設けられ、溶存酸素量の調整を行うと共に被処理液の循環を行っている。
微好気性汚泥消化工程により得られた無機成分に富む上澄み液は、自然流出により次の上澄み液貯留工程に送られる。
【0046】
7)上澄み液貯留工程
上澄み液貯留工程は、微好気性汚泥消化工程で得られた上澄み液(以下、この上澄み液を「消化上澄み液」という)を回収し、溶存酸素量が0.1〜1.0mg/l、好ましくは0.5〜0.8mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する工程である。また、わずかに残存している汚泥を消化させる工程でもある。
【0047】
消化上澄み液には、微生物がエネルギー源とする化学物質が多量に含まれている。例えば、微生物学的に産生される硝酸塩、硫黄化合物、リン酸塩などを多量に含む無機液体などである。したがって、この消化上澄み液を流量調整槽1又は微好気反応槽2に戻すことによって、原水中の微生物の代謝を助長することができ、微生物を活性な状態に維持することが容易となる。このため、消化上澄み液を微生物の餌として好適な硝酸4.0〜6.0mg/Lとなる濃度範囲となるように調整しながら貯留するのが好ましい。
【0048】
溶存酸素量が0.1mg/l未満であると、消臭微生物(化学合成菌、メトファイル菌など)の活性が著しく低下し、逆に1.0mg/lを超えると消化性微生物や消臭性微生物の活性が低下する。
【0049】
本実施形態においては、微好気性汚泥消化槽6の上端部分から上澄み液を自然流出により抜き取り上澄み液貯留槽7に投入し、周囲温度、好ましくは20℃〜30℃の温度条件下で約12〜24時間貯留する。
【0050】
上澄み液貯留槽7においても曝気用配管7aが設けられ、溶存酸素量の調整を行うと共に被処理液の循環を行っている。
【0051】
8)循環工程
本発明において、循環工程には、汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気性微生物処理工程に返送して微好気性微生物を活性化させる工程と、汚泥濃縮工程で得られた上澄み液を流量調整工程に返送する工程と、上澄み液貯留工程から上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する工程とがある。
【0052】
汚泥沈殿槽4からの汚泥は、汚泥返送管4cを通して微好気性微生物処理工程(第1微好気反応槽2)に返送される。汚泥濃縮槽5からの上澄み液は、上澄み液返送管10を通して流量調整槽1に返送される。上澄み液貯留槽7からの消化上澄み液は、消化上澄み液返送管8及び9を通して流量調整槽1及び微好気性微生物処理工程(第1微好気反応槽2)にそれぞれ返送される。
【0053】
消化上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に戻す際には、一日に処理する排水の総量を基準としてそれぞれ0.3〜1.0vol%となるように各槽に投入するのが好ましい。
【0054】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0055】
[実験系]
図1に示す装置を用いて、1日あたりの処理量を20m3として有機物含有排水の処理を行った。
【0056】
流量調整槽1の溶存酸素量を1.0超過〜2.0mg/l、第1微好気反応槽2及び第2微好気反応槽3の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、沈殿槽4及び汚泥濃縮槽5を嫌気性条件とし、微好気性汚泥消化槽6の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、上澄み液貯留槽7の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/lに調整した。流量調整槽1への原水の流入量を20m3/日として、流量調整槽から第1微好気性反応槽2への流出量を0.9 m3/分に調製して連続供給した。第1微好気反応槽2から第2微好気反応槽3、沈殿槽4まではオーバーフローにより連続供給とした。沈殿槽4にて、処理済みの上澄み液を処理水放流へ回し、汚泥を沈降させた。約24時間かけて沈降させた汚泥を槽底部から抜き出して汚泥濃縮槽5に移送し、さらに約24時間かけて汚泥を沈降させて活性汚泥を濃縮させた。その後、汚泥濃縮槽5の上澄み液を流量調整槽1及び第1微好気反応槽2にそれぞれ返送すると共に、濃縮後の汚泥を汚泥濃縮槽5の底部から抜き出して微好気性汚泥消化槽6に移送し、さらに約24時間かけて汚泥を消化させた。微好気性汚泥消化槽6で得られる上澄み液を上澄み液貯留槽7に移送して、さらに約24時間かけて微好気性雰囲気下で微生物代謝を進行させて無機塩類などに富む上済み液を調製した。上澄み液を流量調整槽1及び/又は第1微好気反応槽2に移送して、次の水処理を行った。
【0057】
用いた排水は、学校給食設備から排出された有機物含有排水であった。
原水、第2微好気反応槽3から採取した微好気処理水、微好気性汚泥消化槽6から採取した微好気性汚泥消化水、沈殿槽4の上澄み液から採取した処理水について、pH(JIS K 0102 12.1)、BOD(JIS K 0102 21)、COD(JIS K 0102 17)、SS(昭和46年環境庁告示第59号付表8)、N−Hx(ノルマルヘキサン抽出物含有量:昭和49年環境庁告示第64号付表4)、T-N(総窒素含有量:JIS K 0102 54.2)、T-P(総リン含有量:JIS K 0102 46.3.1)、透視度(クリンメジャー法による測定)、30分間で沈降する汚泥の高さの比率であるSV30(活性汚泥沈殿率30分値)、活性汚泥浮遊物質の指標であるMLSS(透過光式MLSS計による測定)、ORP(酸化還元電位計:JIS C 0920)をJIS法に準拠して測定した。水質測定結果を表1〜表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
[対照系1]
図1に示す同じ装置を用いて、実験系と同様の実験を行った。ただし、流量調整槽1の溶存酸素量を1.0超過〜2.0mg/l、第1好気反応槽2及び第2好気反応槽3の溶存酸素量を2.55〜3.20mg/l、沈殿槽4及び汚泥濃縮槽5を嫌気性条件(0.8mg/l以下)とし、汚泥消化槽6の溶存酸素量を0mg/l、上澄み液貯留槽7の溶存酸素量を0mg/lに調整した。結果を表3〜表4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
[対照系2]
図1に示す同じ装置を用いて、実験系と同様の実験を行った。ただし、流量調整槽1の溶存酸素量を1.0mg/l未満、第1微好気反応槽2及び第2微好気反応槽3の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、沈殿槽4を嫌気性条件とし、汚泥濃縮槽5を溶存酸素量を1.0mg/l未満の微好気性条件とし、微好気性汚泥消化槽6の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/l、上澄み液貯留槽7の溶存酸素量を0.1〜1.0mg/lに調整した。結果を表5〜表6に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
実験系及び対照系1〜2の水質測定結果をグラフに示す(図2〜図14)。図2〜図13に示す水質推移グラフから、BOD、COD、SS、ノルマルヘキサン抽出物含有量(N-Hex)、総窒素含有量(T-N)及び総リン含有量(T-P)の全ての項目において実験系が対照系1及び2よりも処理水中含有量が少なく、良好な処理が達成されていることがわかる。特に、それぞれの原水からの処理率を比較すると本発明の実験系ではBODで86%以上、CODで70%以上、SSで85%以上ときわめて良好に処理されていることがわかる。また、総窒素含有量では実験系が対照系1及び2の1/2〜1/4と非常に低い値を示し、及び総リン含有量では実験系が対照系1及び2の1/4〜1/10と極めて低い値を示している。このように、本発明の方法では、BOD、COD、SSをきわめて良好に処理できるだけでなく、窒素及びリンの含有量を著しく低下させることができる。また、本発明の方法により処理した場合には、BOD、COD、SS、N-Hex、T-Pについて常に公共用水域への排水基準(たとえば、水質汚濁防止法に基づいて各地方自治体が定めることができる上乗せ基準として、BOD:20mg/L以下、COD:10mg/L以下、SS:20mg/L以下、N-Hex:5mg/L以下、T-N:20mg/L以下、T-P:1mg/L以下)を満たし、原水の変動に関わらず一定となり、良好に処理されていることがわかる。
【0067】
また、図14に示すSV30の推移グラフから、本発明の実験系では、微好気性汚泥消化工程においてSV30の値が10日目くらいから95%〜98%で安定して推移しており、一方、対照系1では27日目に100%に達したことがわかる。対照系1では、29日目に汚泥の抜き出しを行ったので30日目には75%程度に低下した。SV30の値が100%であるということは、汚泥が飽和状態になり、汚泥の消化がもはや進行せず、汚泥の抜き取りを必要とする状態、すなわち余剰汚泥の発生を意味する。これに対して、本発明の実験系では、80日目を経過してもSV30の値が100%に達していない。これは、汚泥の消化が進行しており、汚泥の抜き取りを要せずに、上澄み液をそのまま流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に戻して再利用できるので、結果的に廃棄処分しなければならない汚泥(余剰汚泥)はほとんど発生せず、減容化が達成されたことを意味する。
【0068】
以上の結果より、本発明の処理方法によれば、廃棄処分しなければならない汚泥(余剰汚泥)をほとんど発生させずに余剰汚泥の減容化を達成することができると共に、水質基準分析項目のすべて(BOD、COD、SS、ノルマルヘキサン抽出物含有量、総窒素含有量及び総リン含有量)において極めて良好な処理効率を達成でき、特に総リン含有量に関して極めて優れた処理を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の処理方法の概要を示す模式図である。
【図2】図2は、実験プラントでの実験系及び対照系のBOD測定値の推移を示すグラフである。
【図3】図3は、実験プラントでの実験系及び対照系のBOD処理率の推移を示すグラフである
【図4】図4は、実験プラントでの実験系及び対照系のCOD測定値の推移を示すグラフである。
【図5】図5は、実験プラントでの実験系及び対照系のCOD処理率の推移を示すグラフである。
【図6】図6は、実験プラントでの実験系及び対照系のSS測定値の推移を示すグラフである。
【図7】図7は、実験プラントでの実験系及び対照系のSS処理率の推移を示すグラフである。
【図8】図8は、実験プラントでの実験系及び対照系のN-Hex測定値の推移を示すグラフである。
【図9】図9は、実験プラントでの実験系及び対照系のN-Hex処理率の推移を示すグラフである。
【図10】図10は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-N測定値の推移を示すグラフである。
【図11】図11は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-N処理率の推移を示すグラフである。
【図12】図12は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-P測定値の推移を示すグラフである。
【図13】図13は、実験プラントでの実験系及び対照系のT-P処理率の推移を示すグラフである。
【図14】図14は、実験プラントでの実験系及び対照系のSV30推移を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1 流量調整槽
2 第1微好気反応槽
3 第2微好気反応槽
4 沈殿槽
5 汚泥濃縮槽
6 微好気性汚泥消化槽
7 上澄み液貯留槽
8〜10 再循環用配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有排水を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下に維持して、前記排水の流量を調整する流量調整工程、
前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する微好気性微生物処理工程、
次いで、微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程、
汚泥沈殿工程で得られた汚泥を嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程、
汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程、
微好気性汚泥消化工程で得られた消化上澄み液を回収し、溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程、
を含み、
汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気性微生物処理工程に返送し、
汚泥濃縮工程で得られた上澄み液を流量調整工程に返送し、
上澄み液貯留工程から消化上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する有機物含有排水の処理方法。
【請求項2】
前記微好気性微生物処理工程、前記微好気性汚泥消化工程及び前記上澄み液貯留工程における溶存酸素量が0.5〜0.8mg/lである請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記微好気性微生物処理工程は、前記流量調整工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する第1微好気性微生物処理工程と、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理して有機物の分解を進行させる第2微好気性微生物処理工程とを含む請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記上澄み液貯留工程からの消化上澄み液は前記第1微好気性微生物処理工程に返送される請求項3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記汚泥濃縮工程及び前記微好気性汚泥消化工程において、滞留時間を12〜24時間とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項1】
有機物含有排水を溶存酸素量が1.0mg/lを超える好気性雰囲気下に維持して、前記排水の流量を調整する流量調整工程、
前記排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する微好気性微生物処理工程、
次いで、微好気性微生物処理工程からの排水を嫌気性雰囲気下で汚泥と上澄み液とに沈降分離させる汚泥沈殿工程、
汚泥沈殿工程で得られた汚泥を嫌気性雰囲気下で濃縮沈降させる汚泥濃縮工程、
汚泥濃縮工程で濃縮された汚泥を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で更に消化する微好気性汚泥消化工程、
微好気性汚泥消化工程で得られた消化上澄み液を回収し、溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で貯留する上澄み液貯留工程、
を含み、
汚泥沈殿工程で得られた汚泥を微好気性微生物処理工程に返送し、
汚泥濃縮工程で得られた上澄み液を流量調整工程に返送し、
上澄み液貯留工程から消化上澄み液を流量調整工程及び/又は微好気性微生物処理工程に定量注入する有機物含有排水の処理方法。
【請求項2】
前記微好気性微生物処理工程、前記微好気性汚泥消化工程及び前記上澄み液貯留工程における溶存酸素量が0.5〜0.8mg/lである請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記微好気性微生物処理工程は、前記流量調整工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理する第1微好気性微生物処理工程と、前記第1微好気性微生物処理工程からの排水を溶存酸素量が0.1〜1.0mg/lである微好気性雰囲気下で微生物処理して有機物の分解を進行させる第2微好気性微生物処理工程とを含む請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記上澄み液貯留工程からの消化上澄み液は前記第1微好気性微生物処理工程に返送される請求項3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記汚泥濃縮工程及び前記微好気性汚泥消化工程において、滞留時間を12〜24時間とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−284428(P2008−284428A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129781(P2007−129781)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【特許番号】特許第4017657号(P4017657)
【特許公報発行日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(507157757)株式会社日本プラント建設 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【特許番号】特許第4017657号(P4017657)
【特許公報発行日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(507157757)株式会社日本プラント建設 (1)
【Fターム(参考)】
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