説明

有機発光デバイス、それを製造するための方法、および複数の有機発光デバイスを備えるアレイ

【課題】 有機発光デバイス、それを製造するための方法、および複数の有機発光デバイスを備えるアレイを提供する。
【解決手段】 本発明は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に配置された少なくとも1つの有機材料層と、当該第1の電極とは反対側の当該第2の電極上に配置された誘電体キャッピング層とを有し、当該キャッピング層が、当該少なくとも1つの有機材料層内で生成された光を発するために、当該第2の電極と反対側の外側表面を備える多層構造を備えた有機発光デバイスに関する。キャッピング層は、外部光の反射率は低減するが、少なくとも1つの有機材料層内で生成された光の当該キャッピング層を介したアウトカップリングは増加する効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光デバイス、それを製造するための方法、および複数の有機発光デバイスを備えるアレイを提供する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、ノートブックおよび携帯情報端末などの移動体情報および電気通信デバイスが急速に発達してきた。対応するデバイスは、より軽量化およびより効率化されつつある。近年、こうしたデバイス向けのフラット・パネル・ディスプレイがますます普及してきている。現在では、フラット・パネル・ディスプレイとしていわゆる液晶ディスプレイ(LCD)が使用されているが、LCDには、たとえば背景照明が必要であることおよび視野角が限られていることなど、いくつかの欠点がある。
【0003】
フラット・パネル・ディスプレイには、液晶に加えて、有機発光ダイオード、いわゆる有機LEDまたはOLEDを使用することができる。こうした有機LEDは、より高い発光効率およびより広い視野角を有する。有機LEDの基本的特徴は、特定有機材料のエレクトロルミネッセンスである。特定の有機材料は、第1の近似で、対応する有機LEDによって発せられる光の色、すなわち波長を決定する。
【0004】
図1は、既知の有機LED100を示す概略図である。一般的な有機LED100は、一般に、ガラスまたは同様の透明材料で作られた基板101を備える。基板101の上に、アノード層102が形成される。好ましくは、アノード層102は比較的高い仕事関数を有する材料で作られ、可視光線に対してほぼ透明である。したがって、アノード層102の典型的な材料はインジウム錫酸化物(ITO)である。アノード層102の上にエレクトロルミネッセンス材料の層103が形成され、有機LED100の発光層103として働く。発光層103を形成するための一般的な材料は、Poly(p−phenylenvinylen)(PPV)などの高分子およびtris(8−oxychinolinato)アルミニウム(Alq)などの分子である。分子の場合、発光層103は、通常、いくつかの分子層を備える。アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、またはマグネシウム(Mg)などのより低い仕事関数を有する材料のカソード層104が、発光層103の上に形成される。カソード層104およびアノード層102は、動作時に電源105に接続される。
【0005】
エレクトロルミネッセンスの基本原理、それ故、有機LEDの基本原理は、以下のとおりである。アノード層102およびカソード層104は、電荷担体、すなわち電子および正孔を、発光層103、すなわちアクティブ層に注入する。発光層103内を電荷担体が輸送され、反対の電荷の電荷担体がいわゆるエキシトン、すなわち励起状態を形成する。光を生成することによって、エキシトンは放射状に基底状態に崩壊する。生成された光は、その後、有機LEDにより、ITOなどの透明材料で作られたアノード層102を介して発せられる。生成される光の色は、有機層103に使用される材料によって異なる。
【0006】
さらに、いわゆる多層有機LEDも知られている。多層有機LEDは、複数のカソード層、複数の有機層、または複数のアノード層もしくはそれらの任意の組合せを備える。複数の有機層を使用することにより、単一の有機層を備える有機LEDに比べて、有機LEDの効率を上げることができる。複数の有機層の2つの有機層間の境界面は、少なくとも1つの電荷担体タイプ(電子または正孔)について、ダイオードを通過する電流を減少させる障壁として働くことができる。それ故、少なくとも1つの電荷担体タイプが境界面に蓄積し、それ故、電子および正孔の再結合の可能性が上がることにより、有機LEDの効率向上につながる。
【0007】
L.S. Hung他の、「Application of an Ultrathin LiF/Al bilayer in Organic Surface−Emitting Diodes」、Applied Physics Letters Vol.78、No.4(2001年1月22日)、544〜546ページでは、生成された光が有機LEDのアノードを介して発せられる代わりにカソードを介して発せられる有機LEDが開示されている。こうした有機LEDの概略図が図2に示されている。有機LED200の基板として、インジウム錫酸化物(ITO)層201が与えられる。アルファ−ナフチルフェニルビフェニル(α−naphtylphenylbiphenyl)ジアミン(NPB)層202がITO基板201上に形成され、正孔輸送層として働く。ITO基板201の下には、反射銀ミラー209が形成される。Alq層203が正孔輸送層202上に形成され、電子輸送/発光層として働く。さらに、Alq層203の上にカソード204が形成される。
【0008】
カソード204は、光学的に透過性であり、有機LEDに対する電子注入接点として効果的な、いわゆる多層カソード構造として、複数のカソード層によって形成される。多層カソード構造は、フッ化リチウム(LiF)の極薄層205、電子注入接点としてのAl層206、およびシート抵抗削減のための銀層207を備える。さらに、光の透過を向上させるための透明な誘電体層208が、多層カソード構造の上に形成される。この透明な誘電体層208は、カソード204、すなわち多層カソード構造を介した光の発光効率を向上させるために使用される。
【0009】
この有機LEDでは、生成された光はカソード204を介して発せられる。こうした有機LEDは、トップエミッション型有機LEDとも呼ばれる。トップエミッションは、カソード204がLiF/Al2重層を備えることから可能である。LiF層205の適切な厚さは約0.3nmとされ、Al層206の適切な厚さは0.1nmから1.0nmの間とされる。キャッピング層とも呼ばれる誘電体層208には、AlqまたはMgOが使用できる。
【0010】
この有機LEDの欠点の1つが、有機LEDの色、すなわち特定の有機LEDから発せられる光の波長に合わせて、屈折誘電体層208の厚さを調節しなければならないことである。すなわち、異なる色を発光する各有機LEDは、有機LEDの効率を上げるために、異なる厚さの屈折層208を有するものとしなければならない。したがって、異なる色を発光する有機LEDを備えるフラット・パネル・ディスプレイが製造される場合、各色の有機LEDについて、屈折誘電体層208の厚さが異なる。この欠点を概略的に示すために、図2は、図2(a)、図2(b)、図2(c)の3つの部分に分けられている。図2(a)と示された左側の部分は、たとえば青色光などの比較的短い波長の光を発するための有機LEDを示し、比較的薄い屈折誘電体層208を有する。図2(b)と示された中央の部分は、たとえば緑色光または黄色光などの中波長の光を発するための有機LEDを示し、図2(a)に示された屈折誘電体層208よりも厚い屈折誘電体層208を有する。図2(c)と示された右側の部分は、たとえば赤色光などの比較的長い波長の光を発するための有機LEDを示し、図2(a)および図2(b)に示されたものよりも厚い屈折誘電体層208を有する。波長が長くなるほど、屈折誘電体層208の目的を達成するために、すなわち有機LEDの光の出力を増加させるために、屈折誘電体層208内の光路長を長くしなければならない。さらに、有機LEDのアルファ−ナフチルフェニルビフェニル(α−naphtylphenylbiphenyl)ジアミン(NPB)層202およびAlq層203の厚さも、同様に適合させなければならない。
【0011】
したがって、各ピクセルが単一の有機LEDによって実現される、赤、緑および青の複数のピクセルを備えるディスプレイでは、各色について異なる厚さの層を有する屈折誘電体層208を有機LED上に堆積させなければならない。これにより、複数の有機LEDを備えるディスプレイを製造する方法の処理が複雑かつ困難になり、すなわち、あらゆる厚さの屈折誘電体層208に対して別々の処理ステップが必要となる。
【0012】
こうした有機LEDの他の欠点は、屈折誘電体層208が光の出力、すなわち輝度を増加させても、有機LEDのコントラスト比は依然として相対的に低いことである。
【特許文献1】WO 03/055275号
【非特許文献1】L.S. Hung他の、「Application of an Ultrathin LiF/Al bilayer in Organic Surface−Emitting Diodes」、Applied Physics Letters Vol.78、No.4(2001年1月22日)、544〜546ページ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来技術の有機LEDおよび複数の有機LEDを備えるディスプレイの少なくともいくつかの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に配置された少なくとも1つの有機材料層と、第2の電極上に配置された誘電体キャッピング層とを有する多層構造を備えた有機発光デバイスを対象とする。キャッピング層は、外部光の反射率は減少するが、キャッピング層を介した少なくとも1つの有機材料層内で生成される光のアウトカップリング(outcoupling)は増加するという効果を得るために選択される。好ましくは、反射率が極小まで減少する厚さを選択できるように、材料を選択することができ、同じ厚さで、輝度とも呼ばれる生成される光のアウトカップリングも極小または極小に近くなる。
【0015】
本発明の他の態様では、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に配置された少なくとも1つの有機材料層と、第1の電極とは反対側の第2の電極の側面上に配置され、少なくとも1つの有機材料層内で生成された光を発するための第2の電極とは反対側の外側表面を備えるキャッピング層とを有する有機発光デバイスを製造する方法が提供される。この方法は、第1の電極を提供するステップと、第1の電極上に少なくとも1つの有機層を形成するステップと、少なくとも1つの有機層上に第2の電極を形成するステップと、第2の電極上にキャッピング層を形成するステップとを含む。キャッピング層によって、外部光の反射率が低減し、キャッピング層の少なくとも1つの有機材料層内で生成された光のアウトカップリングが増加する。
【0016】
本発明の他の態様では、複数の有機発光デバイスのアレイが提供される。各有機発光デバイスは、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に配置された少なくとも1つの有機材料層と、第1の電極とは反対側の第2の電極上に配置された誘電体キャッピング層とを有する多層構造を備え、キャッピング層は、少なくとも1つの有機材料層内で生成された光を発するための第2の電極とは反対側の外部表面を備える。各有機発光デバイスのキャッピング層は、外部光の反射率低減を実現するが、少なくとも1つの有機材料層内で生成された光のキャッピング層を介したアウトカップリングは増加する。複数の有機発光デバイスのうちの少なくとも1つの有機発光デバイスは、複数の有機発光デバイスのうちの他の有機発光デバイスの光の色と異なる色の光を発する。さらに、複数の有機発光デバイスのうちのそれぞれの有機発光デバイスのキャッピング層は、ほぼ等しい厚さを有する。好ましくは、この厚さは、第1の電極および第2の電極のために選択された材料セットについて、外部光の反射率は低減するが、少なくとも1つの有機材料層内で生成された光のキャッピング層を介したアウトカップリングは増加するように適合される。
【0017】
本発明のユニークな特徴は、有機発光デバイス(OLED)のキャッピング層がキャッピング層全体にわたって同じ厚さを示すことができると同時に、OLED全体、すなわちOLEDスタック(積層)全体の反射率は低減し、光の強さ、すなわち輝度は増加することである。驚いたことに発明者らは、反射率および輝度を同時に向上させることが可能であり、これがより輝度および効率が高く、よりコントラスト比の高い、有機発光デバイス(OLED)につながることを発見した。
【0018】
本発明によるOLEDのアレイの利点は、各単一のOLEDが発する光の色に関係なく、各OLEDのキャッピング層の厚さが実質的に同じであるように選択できることである。したがって、たとえばディスプレイなどのOLEDのアレイの製造方法を簡略化することができる。さらにこのアレイは、発光面、すなわちキャッピング層の外側表面によって形成される表面が、ほぼ均一な面であるように製造することができる。たとえば発光面は、平面として、またはOLEDの下にある層がすでに湾曲している場合は曲面として形成することができる。
【0019】
現状において、キャッピング層の厚さは、第2の電極とキャッピング層との間の境界面からキャッピング層の外側表面までが測定される。さらに、「反射率」という表現は、OLEDデバイス全体の反射率、すなわち、反射光の強さと入射光の強さの比として理解される。具体的に言えば、OLEDデバイス全体の反射率を低減させることによって、外部光、すなわち、たとえば太陽またはオフィス内の人工的な光源などの外部光源からの入射光の反射が低減される。これは、キャッピング層の厚さを、たとえばOLEDのキャッピング層の外側表面などの1つの境界面から反射される入射光と、たとえば第1の電極層に隣接する有機層とOLEDの第1の電極との間の境界面などの他の境界面から反射される他の入射光との間に減殺的干渉が発生するような厚さに適合することによって達成することができる。
【0020】
さらに本発明の好ましい実施形態について、従属請求の範囲で記述する。この実施形態は、本発明による有機発光デバイスに関連して説明されるが、本発明による方法および複数の有機発光デバイスを備えるアレイにも関する。
【0021】
第1の電極は、複数の副層(sublayer)を備えることができる。
【0022】
ある実施形態では、第1の電極は反射層を備える。好ましくは、反射層は、少なくとも1つの有機材料層とは反対側の第1の電極上に配置され、すなわち第1の電極は、反射層と少なくとも1つの有機材料層との間に配置される。
【0023】
好ましくは、反射層は誘電体層を備えることができる。他の実施形態では、反射層は、金属層、具体的にはアルミニウム層または銀層を備える。
【0024】
反射層は、生成された光が反射層から第2の電極方向に反射されるため、有機発光デバイスの効率を増加させることができるという利点を与える。具体的に言えば、アルミニウムは、一般的な処理ステップで容易に処理することができ、低コスト材料であるため、OLEDの反射層に好適な材料である。さらにアルミニウムは、高反射性を示すように容易に処理されるため、たとえば、WO 03/055275号に記載されたある方法で表面が処理された場合、同時にOLEDの電極として使用することができる反射層を提供するのに好適である。反射層を使用することによって、トップエミッション型OLEDの効率を、透明な第1の電極を介して発光するOLED、いわゆる基板透過エミッション型OLEDの効率よりも高い値に上げることができる。
【0025】
好ましくは、第1の電極はインジウム錫酸化物を備える。インジウム錫酸化物(ITO)は、ITOが透明であり、比較的高い仕事関数を示すことから、OLEDの第1の電極に好適な材料である。
【0026】
さらに他の実施形態では、有機発光デバイスは、第1の電極と第2の電極との間に配置された複数の有機材料層を備える。複数の有機材料層を使用することで、OLEDの効率をさらに上げることができる。複数の有機材料層のうちの2つの有機材料層間の境界面は、少なくとも1つの電荷担体タイプ(電子または正孔)について、OLEDを介する電流を防ぐ障壁として働くことができる。したがって、少なくとも1つの電荷担体タイプが境界面に蓄積し、それ故、電子および正孔の再結合の可能性が増加して、OLEDの効率を上げることにつながる。
【0027】
さらに他の実施形態では、第2の電極は複数の第2の電極の副層を備える。好ましくは、第2の電極は、LiF層、Al層、LiO層、CsF層、安息香酸Li層、Liアセトネート、カルシウム層、マグネシウム層、チタン層、銀層の1つまたはこれらの任意の組合せを備える。これらの材料はすべて、第2の電極用の材料として好適な材料であり、比較的低い仕事関数を提供する。具体的に言えば、LiF層またはAl層もしくは両方を有する第2の電極は、比較的低い仕事関数を提供するため、効率的である。同時に、薄いLiF/Al層を有する第2の電極は、OLEDによって生成された光を、それを介して発するのに適している。LiF層の適切な厚さは0.3nmの範囲であり、一方、Al層の適切な厚さは0.1nmおよび1.0nmの間である。
【0028】
好ましくは、キャッピング層の厚さは、異なる光の波長に対して外部光源の反射率を低減するように適合される。異なる光の波長に対してデバイスの性能が向上するようにキャッピング層の厚さを適合させることにより、たとえば赤、緑および青の異なる色の光についてキャッピング層の厚さが好適にはほぼ同じであるため、容易な方法で異なる色の光を発するOLEDを備えるディスプレイを製造することができる。
【0029】
さらに、異なる色について異なる厚さを有する電子または正孔もしくは両方の輸送層が使用される場合、電子または正孔もしくは両方の輸送層の厚さにおけるこれらの相違を補償してOLEDアレイの平滑な表面をもたらすように、キャッピング層の厚さも同様に適合させることができる。この適合は、OLEDの均一または平坦な表面が達成できるように、異なる波長に対して好適な屈折率を有する材料を選択することによって、達成することができる。すなわち、異なる色についての光路長の相違が、異なる色についての電子または正孔もしくは両方の輸送層の厚さの相違と同じであるように、異なる色についてのキャッピング層の材料または材料の屈折率もしくはこれら両方が選択される。光路長は、OLEDの、および好ましくはOLED全体、すなわちOLEDスタック全体の、いくつかの色の反射率を低減し、光の強さ、すなわち輝度を増加させるものである。
【0030】
さらに他の実施形態では、キャッピング層は複数のキャッピング副層を備える。好ましくは、各キャッピング副層の屈折率は異なる。個々のキャッピング副層の屈折率は、第1の電極からの個々のキャッピング副層それぞれの距離を基準に、単調に増加または減少することができる。説明する方法では、副層の屈折率の単調増加または単調減少によって、キャッピング層の厚さ全体にわたるキャッピング層の屈折率に傾斜が与えられる。
【0031】
一実施形態によれば、キャッピング層は異常分散を伴う材料を含む。キャッピング層について異常分散を伴う材料を使用することによって、異なる光の波長に適合するキャッピング層を達成することができるが、異なる色の光を発するOLEDのキャッピング層は同じ厚さを有する。これは、異常分散を伴う材料が光の波長の増加に伴って屈折率も増加するという事実によって可能である。このように、キャッピング層の使用に欠かせない光路長は、波長と共に増加する。したがって、波長に伴う屈折率の増加および光路長の増加を、互いに一致させることができる。それ故、たとえば赤、緑、または青色の光を発するOLEDなどの、対応するOLEDによって発せられる光の色に関係なく、すべてのキャッピング層について同じキャッピング層の厚さを達成することができる。
【0032】
キャッピング層の材料は、PbSe、PbS、ZnSe、ZnS、PbTeの1つまたはこれらの組合せとすることができる。これらの材料はすべて、一般的なOLEDが参照する波長間隔、すなわち、原則的に約400nmから700nmの可視光の間隔の、全部または一部において、異常分散を示す材料である。キャッピング層に好適な材料は、1.6から4の間、好ましくは2から3の間の屈折率を有する。キャッピング層の材料の分散は、最も好ましくは、屈折率が、波長400nmの光で約2.3、波長700nmの光で約2.7の範囲内である。しかしながら、1.6から2.2などの低い屈折率または2.8から4などの高い屈折率を有する材料は、キャッピング層なしのOLEDに比べて、すでに改善されている。それ故、これらの材料を使用すると、キャッピング層の外側表面の反射率の低減およびキャッピング層の透過率の増加に関して、キャッピング層による改善が容易に達成できる。
【0033】
他の実施形態では、キャッピング層は強誘電体材料または液晶材料あるいはその両方を含む。強誘電体材料ならびに液晶材料は、材料の屈折率を制御する可能性を示す。それ故、屈折率を、および屈折率に関して光路長を制御することができる。したがって、屈折率を調整すること、ならびに、生成された光のキャッピング層を介したアウトカップリングは増加するが、たとえばアノードなどの第1の電極材料およびたとえばカソードなどの第2の電極材料の選択されたセットについて、外部光の反射率を低減させるために働くキャッピング層の厚さを計算することが可能である。強誘電体材料および液晶材料は、異常分散を有する材料として動作する、具体的には制御可能な分散を有する材料として動作するように制御することができる。
【0034】
キャッピング層は、第3の電極と第4の電極との間に配置することができる。強誘電体材料または液晶材料を含むキャッピング層を2つの電極間に配置することによって、キャッピング層の屈折率を制御するための効率的な方法が提供される。これらの材料は、それらがさらされる電界の強度によって、それらの屈折率を変化させる。それ故、各色についての屈折率は、第3の電極と第4の電極の間にキャッピング層を配置し、これらの電極によって提供される電界を変化させることによって、キャッピング層の異常分散をシミュレートしながら個々に設定することができる。たとえば、液晶材料MBBA(p−methoxy− bezylidene− p’−butylaniline)およびBMAOB(p− butyl− p’− methoxy− azooxybenzene)は、それらの屈折率を1.5から1.8および1.6から2.0に、それぞれ変化させる。キャッピング層としての液晶材料の場合、第3の電極は好ましくは、たとえばダイアモンド・ライク・カーボンを使用して、液晶材料が配置された層の向きと液晶材料が整列するように処理される。本発明によれば、第1の電極または第2の電極も、第3の電極と同様に使用することができる。
【0035】
要約すると、本発明の一態様によれば、たとえば、有機発光ダイオード、または電流がデバイスを通って流れている場合に光を発する任意のデバイスなどの、トップエミッション型有機発光デバイス(OLED)の輝度およびとりわけコントラスト比は、OLEDの1つの電極層上に誘電体キャッピング層を形成することによって増加する。この特徴を示す好適な材料は、この有利な機能を提供するように選択することができる。より好ましい方法では、好ましくは0から50nmの間の所定のキャッピング層厚さの範囲内でのキャッピング層厚さの増加と共に、輝度が増加する材料を選択することができる。さらにより好ましい方法では、所定の厚さ範囲内でのキャッピング層厚さの増加と共に、反射率が低減する材料を選択することができ、より好ましくは、同じ厚さ範囲内で輝度が増加する材料が使用できる。最も好ましい実施形態では、輝度が少なくとも極小を示し、反射率が少なくとも極小を示すかまたは少なくとも極小に比較的近いキャッピング層の厚さを選択することができる。ここで比較的近いというのは、次の最小から10nmの範囲内、好ましくは最小から5nm未満の距離であると解釈することができる。誘電体キャッピング層は、OLEDによってどちらの電極を通じて光が発せられるかの選択に依存して、OLEDのアノードまたはカソードのいずれかの上に形成することができる。キャッピング層の厚さは、外部光の反射および生成された光のキャッピング層を介したアウトカップリングを、物理的に可能な範囲内の所望の値まで向上させるように適合することができる。具体的に言えば、この厚さは、OLEDによって発せられる光の異なる波長に対して厚さが等しくなるように決定することができる。
【0036】
具体的に言えば、キャッピング層の表面の反射率を適合させることによって、外部光源からの入射光の反射が低減され、それによりOLEDのコントラスト比が向上する。これは、たとえばOLEDのキャッピング層の外部表面などの、1つの境界面から反射される入射光と、たとえば、OLEDの第1の有機層とたとえばアノードなどの第1の電極層との間の境界面からなど、他の境界面から反射される他の入射光との間で減殺的干渉が発生するような厚さへとキャッピング層の厚さを適合させることによって達成することができる。
【0037】
好ましくは、キャッピング層は、キャッピング層を介する光路長が通過光の波長の増加に伴って増加するような異常分散を示す誘電体材料で作られる。従来の誘電体材料は正常(normal)分散を示すが、いくつかの誘電体材料、たとえば、PbTe、PbSe、何らかのガラスまたは液体、あるいはPbSまたはZnSまたはZeSnまたはそれらの組み合わせなどの狭バンドギャップ半導体は、異常分散を示すため、これらの材料はキャッピング層用に選択するのに好適であるとみなされる。異常分散材料を使用する場合、光路長はキャッピング層の所与の厚さでの波長の増加と共に増加するが、正常の分散を示す従来の誘電体材料では、波長の増加と共に光路長の減少が見られる。キャッピング層の材料の屈折率は、好ましくは400nmの波長に対して約2.3、700nmの波長に対して約2.7である。しかしながら、1.6から2.2の間の低い屈折率または2.7を超える高い屈折率の材料は、キャッピング層のないOLEDに比べてすでに改善されている。それ故、キャッピング層に対する異常分散を示す誘電体材料を使用することによって、異なる色の光を発するOLEDのカソード上に配置された同じ厚さのキャッピング層を使用することができる容易な方法が提供される。これは、異なるOLED、すなわち異なる色の光を発するOLEDのアレイをパターン化する作業の少ない製造方法の簡略化という利点につながる。
【0038】
別の方法または追加の方法として、キャッピング層は、外部電界によって設定可能な屈折率を有する強誘電体材料または液晶材料を含むことができる。それ故、これらの材料を含むキャッピング層が2つの電極間に挟まれている場合、各色、すなわち1つの色の光を発する各OLEDの屈折率を個々に設定することができる。
【0039】
本発明は、すべての色について均一のキャッピング層厚さを有するデバイスを製造するため、および電気的に調整可能な光学特性をOLEDに提供するための方法について説明する。本発明の他の利点は、光の出力の増加に加えて、より高いコントラスト比を達成するために反射性の低減が得られるように、キャッピング層が調整できることである。
【0040】
さらに、キャッピング層の厚さの調整に加えて、反射率を低減させること、および同時に層のアウトカップリング効率を増加させる、すなわちOLEDの光の出力を増加させることによって、OLEDを最適化するために、OLEDのすべての層の厚さを調整することができる。アウトカップリング効率は、視野角、すなわち、ユーザがOLEDを見る角度に合わせることもできる。厚さの調整による反射率の低減は、OLEDの異なる層間の異なる境界で反射される光線間の減殺的干渉の効果を使用することによって達成することができる。所定の屈折率および吸収係数を備えた電極金属を選択することによって、干渉を微調整することができる。減殺的干渉では、λ/2、すなわち、波長の半分または波長の半分の奇数倍の干渉に至る光線間の相対的位相シフトが使用される。振幅の合計が一致した場合、完全な消滅(annihilation)が発生する。
【0041】
OLEDのアノード、カソード、または有機層もしくはそれらの組合せは、単層構造によって、または複数層構造、いわゆるスタック(積層)のいずれかによって形成することができる。さらに、反射層は、OLEDの効率を上げるために、OLEDの一側面上に形成することができる。反射層は、金属材料または誘電体材料を含むことができる。
【0042】
以下で、図面に表された実施形態を参照しながら本発明について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図3(a)〜図3(c)は、有機発光デバイス(OLED)を備える3つのサブピクセルのアレイを示す概略図である。本発明の実施形態では、有機発光デバイスは有機発光ダイオードである。アレイ300の各OLEDは、基板309を備える。示された実施形態では、基板309はガラス基板であり、その上にインジウム錫酸化物(ITO)層301が形成される。ガラス基板309の下、すなわちITO層301と反対側には、ミラー層310が形成される。ITO層301は、有機発光ダイオードの第1の電極、たとえばアノードとして使用され、図3には示されていない電源に接続される。ミラー層310は、OLEDの効率を上げるために形成される。こうしたミラー層310は、たとえば銀層または誘電体材料によって形成することができる。
【0044】
別の方法としては、アルミニウムの層によってアノード301を形成することができる。この場合、ミラー層310は、アノード301のアルミニウムが反射性を有し、ミラー層それ自体として働くように、アノード301のアルミニウム層を処理することによって形成することができる。ミラー層310が誘電体反射材料によって形成される場合、ミラー層310は電極として使用されず、したがって誘電体ミラー層310の場合、別の電極層が配置される。
【0045】
OLEDのアクティブ部分、すなわちOLEDの有機部分は、ITO層301上に形成することができる。図3に示されたOLEDでは、アクティブ部分は2つの副層を備える。第1の副層302は正孔輸送層302として形成される。正孔輸送層302は、α−ナフチルフェニルビフェニル・ジアミン(NPB)または従来技術で周知の他の等価の材料で作ることができる。第2の副層303は電子輸送層として形成され、トリス(8−オキシチノリナト)(tris(8−oxychinolinato))アルミニウム(Alq)で形成することができる。別の方法としては、アクティブ部分は、たとえばAlqで作られた単一の発光層を備えることができる。第1の副層302ならびに第2の副層303の好ましい厚さは、それぞれ約60nmである。OLEDの有機部分は、エレクトロルミネッセンスを示す有機材料、たとえばポリ(p−フェニレンビニレン)(poly(p−phenylenvinylen))(PPV)などの高分子で形成することができる。
【0046】
複数の副層302、303を備えるアクティブ部分を使用して、OLEDの効率を上げることができる。アクティブ部分の2つの副層302、303間の境界面は、少なくとも1つの電荷担体タイプ(電子または正孔)について、OLEDを介した流れを減らすかまたは阻止する、障壁として働く。したがって、少なくとも1つの電荷担体タイプが境界面に累積し、電子および正孔の再結合の可能性が増加して、OLEDの効率を上げることにつながる。
【0047】
多層構造、いわゆるスタックが、アクティブ部分上に形成される。多層構造は、OLEDの第2の電極、たとえばカソードとして使用される。それ故、図3(a)〜図3(c)に示される概略的OLEDは、多層カソード構造、すなわち複数の層を含むカソードを備える。多層カソード構造の第1の層305は、フッ化リチウム(LiF)層305である。LiF層305の好ましい厚さは、約0.3nmである。多層カソード構造の第1の層305は、アクティブ部分302、303上に形成される。多層カソード構造の第2の層306は、第1の層305上に形成される。第2の層306はアルミニウム(Al)で形成され、0.1nmから0.6nmの間の好ましい厚さを有する。図3(a)〜図3(c)に示された実施形態では、また、多層カソード構造は第3の層307を備える。第3の層307は銀で作られ、約20nmの好ましい厚さを有する。銀層307の目的は、カソードの抵抗を低減することである。
【0048】
カソードは、多層カソード構造に限定されることなく、単層で形成することもできる。こうした単層カソードには、アルミニウムまたはカルシウムまたはマグネシウムまたはマグネシウム/銀の合金を含む材料を使用することができる。通常、カルシウムまたはマグネシウム・カソードを有するOLEDは、カルシウムまたはマグネシウム層の厚さがアルミニウム層の厚さと同じである場合、光の可視スペクトル(たとえば波長約550nm)において、アルミニウムで形成されたカソードを有するOLEDによって提供される輝度よりも約30%高い輝度を提供する。
【0049】
キャッピング層308は、カソード・スタック上に、すなわち図3のカソード・スタックの第3の層307上に形成される。この例では、キャッピング層308は、可視光の範囲内、すなわち波長が400nmから700nmの間の光で異常分散を示す誘電体材料で作られる。異常分散は、屈折率nが角周波数ωと共に減少する、すなわち屈折率nが波長λと共に増加する分散のタイプである。キャッピング層308に好適な材料はセレン化鉛(PbSe)または硫化鉛(PbS)またはセレン化亜鉛(ZnSe)または硫化亜鉛(ZnS)またはテルル化鉛(PbTe)である。異常分散を示す材料を使用することで、異なる色を発するOLEDに対して同じ厚さのキャッピング層308が使用できるようになる。
【0050】
キャッピング層308は、外部光の反射が低減され、同時に、OLEDによって生成された光のキャッピング層308を介したアウトカップリングが増加する効果を有するように選択される。これは、本明細書でより詳細に説明するように、材料および厚さの選択の問題である。
【0051】
図3(a)〜図3(c)では、正孔輸送層302および電子輸送層303が異なる色に対して同じ厚さを有するように示されているが、電子輸送層または正孔輸送層もしくは両方302、303は、異なる色に対して異なる厚さを有することができる。この場合、キャッピング層308の厚さは、電子輸送層または正孔輸送層もしくは両方302、303の厚さにおけるこれらの差異を補償するようにも適合することができ、これにより均一または平坦な面が生じる。この適合は、異なる波長に対して好適な屈折率の材料を選択することによって達成することができる。すなわち、異なる色に対する光路長における差異が、異なる色に対する電子輸送層または正孔輸送層もしくは両方の厚さにおける差異と同じであるように、異なる色に対するキャッピング層308の材料または材料の屈折率もしくは両方が選択される。光路長は、OLED全体、すなわちOLEDスタック全体の反射率が減少し、輝度が増加するように選択される。
【0052】
図4は、本発明の他の実施形態によるOLED400を示す概略図である。図4の実施形態では、OLED400は銀を含むミラー層401を備える。ミラー層401は、光を反射させて戻すことによって、OLEDの光の出力を増加させるために使用される。インジウム錫酸化物で作られた電極層402が、ミラー層401上に形成される。ITO層402は、OLED400の第1の電極、たとえばアノードとして使用され、図4には示されていない電源に接続される。別の方法としては、アノード402はアルミニウムで形成することが可能であり、アノード402が反射性を有するようにアノード402のアルミニウムが処理された場合、ミラー層401は省略することができる。
【0053】
OLEDのアクティブ部分403、すなわち有機部分が、アノード402上に形成される。図4に概略的に示されたOLEDでは、OLEDの発光層として働くアクティブ部分はAlqで作ることができる。発光層403の好ましい厚さは約120nmである。別の方法としては、アクティブ部分403は、図3に関して説明されたように、OLEDの効率を上げるために、複数の副層を備える多層として形成することができる。
【0054】
第2の電極層404が、アクティブ部分403上に形成される。第2の電極層404は、OLEDの第2の電極404、たとえばカソードとして使用される。図4に示された概略的OLEDでは、カソード404はアルミニウムで作られる。別の方法としては、図3に関して説明されたように、カソード404は多層カソード構造として形成することができる。
【0055】
第3の電極405がカソード404上に形成される。第3の電極405は、強誘電体材料または液晶材料で作られ、第3の電極405上に形成されるキャッピング層406の屈折率を制御するために使用される。
【0056】
第4の電極407がキャッピング層406上に形成される。第3の電極405および第4の電極407は、キャッピング層406の屈折率を制御するために使用される。
【0057】
すでに述べたように、強誘電体材料ならびに液晶材料は、それらの屈折率を制御する可能性を示す。それ故、こうした材料によって形成されるキャッピング層406の屈折率、および屈折率に関連する光路長を制御することができる。したがって、OLEDスタック全体の反射率が低減され、キャッピング層406を介したアウトカップリングが増加するように、キャッピング層406の屈折率を調整することおよび厚さを計算することが可能である。記述された方法では、強誘電体材料および液晶材料が、異常分散を有する材料として動作するように、具体的には制御可能な分散を有する材料として動作するように制御することができると言える。
【0058】
強誘電体材料または液晶材料を含むキャッピング層406を第3の電極405と第4の電極407との間に配置することによって、キャッピング層406の屈折率を制御するための効率的な方法が提供される。これらの材料は、現在の電界の強さに従ってそれらの屈折率を変化させる。それ故、各色に対する屈折率を個々に設定し、キャッピング層406を第3の電極405と第4の電極407との間に配置すること、およびこれらの電極405、407によって提供される電界を変化させることによって、キャッピング層406の異常分散をシミュレートすることができる。別の方法としては、OLEDの第2の電極404は、第3の電極405としても使用することができる。キャッピング層406として液晶材料を使用する場合、第3の電極405は、好ましくは、たとえばダイアモンド・ライク・カーボンを使用して、液晶材料が整列するように処理される。
【0059】
図5にはシミュレーションの結果が示される。反射率および輝度が同時に向上されるという本発明の態様の実現可能性を示すために、シミュレーションが実行された。図5では、白色光の反射率、ならびに赤、緑および青の光の発光輝度に関するシミュレーション結果が描かれている。さらに、ガラス基板309、70nmの厚さを有するアルミニウムで作られたたとえばアノード層などの第1の電極層301、5nmの厚さを有するフッ素化炭素(CF)で作られた副層、40nmから80nmの間の厚さを有するNPBで作られた正孔輸送層として働く第1の副層302、10nmの厚さを有する発光層、40nmから70nmの厚さのAlqの電子輸送層303、および10nmの厚さを有するアルミニウムで作られたたとえばカソードなどの第2の電極305〜307を備えるOLEDに基づいてシミュレーションが実行された。ZnSeで作られたキャッピング層308が、カソード305〜307上に形成される。シミュレーションでは、キャッピング層308の厚さは30nmから70nmの間で、5nmずつ変化した。さらに、波長が20nmずつ変動する380nmから780nmの間の波長の光について、反射率および輝度が調べられた。
【0060】
図5(a)は、緑色光のアウトカップリングされた輝度および白色光の反射率に対するキャッピング層308の厚さ(Alq:65nm、NPB:55nm)を描いた図である。厚さは、0nmから70nmの間で変動させた。反射率は、約45nmのキャッピング層厚さで65%から約30%への減少を示した後、70nmのキャッピング層厚さで50%への増加を示す。同時に、アウトカップリングされた輝度は、0nm厚さのキャッピング層308に対する相対値0.15から、45nmの同じキャッピング層厚さに対する最大値0.33へと増加し、ここで反射率はその最小値となった。
【0061】
図5(b)は、青色光の反射率およびアウトカップリングされた輝度に対するキャッピング層308の厚さを描いた図である。厚さは0nmから70nmの間で変動させた(Alq:55nm、NPB:50nm)。青色光の輝度は、0nmキャッピングでの0.15から、対応する35nmのキャッピング層厚さでの0.28への増加を示し、その後70nmのキャッピング層厚さで0.16へとわずかな減少を示す。対応する反射率は、35nmで最小15%という反対の挙動を示す。
【0062】
図5(c)は、赤色光の輝度および反射率に対するキャッピング層308の厚さを描いた図である。厚さは、0nmから70nmの間で変動させた(Alq:70nm、NPB:55nm)。赤色光の輝度は、0nmのキャッピング層厚さに対応する0.09から、約45nmのキャッピング層厚さでの最大0.19への増加を示し、その後、70nmのキャッピング層厚さで0.13への減少を示す。さらに反射率は、45nmのキャッピング層で最小値29%を有する。
【0063】
図5(a)、図5(b)および図5(c)から、白色光の最小反射率とほぼ同じキャッピング層厚さで、緑、赤および青色の光の最大輝度を達成できることがわかる。対応するキャッピング層308の厚さは、35nmから45nmの間で変動させる。それ故、所定のキャッピング層308の厚さは、外部光源の反射率が低減する一方で、生成される光のキャッピング層308を介したアウトカップリングされる輝度は増加するように適合させることができる。
【0064】
要約すると、本明細書では、すべての色についてほぼ1つのみのキャッピング層厚さを有する改良されたディスプレイを製造するための方法、および電気的に調整可能な光学的特性を有するOLEDを提供するための方法が説明される。本発明の他の利点は、出力される光は増加するのに対して、より高いコントラスト比を達成するために反射率の低減が得られるように、キャッピング層308が調整できることである。
【0065】
さらに、キャッピング層308の厚さを調整することに加えて、たとえば反射率を低減し、同時に層の透過性を増加させること、すなわちOLEDの出力光を増加させることによって、OLEDを改善するためにOLEDのすべての層の厚さを調整することができる。厚さの調整は、OLEDの異なる層間の異なる境界面で反射される光線間の減殺的干渉の効果を使用することによって達成することができる。減殺的干渉では、λ/2、すなわち、波長の半分の干渉に至る光線間の相対的位相シフトが使用される。
【0066】
以上、本発明およびその利点について詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、および修正が行えることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】従来技術による一般的な有機発光ダイオードを示す概略図である。
【図2】従来技術による有機発光ダイオードを備える異なる波長の光を発する3つのサブピクセルを示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態による有機発光デバイスを備えるアレイを示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態による有機発光デバイスを示す概略図である。
【図5】本発明によるOLEDに関するシミュレーションの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造を備える有機発光デバイスであって、
第1の電極(301)と、
第2の電極(305〜307)と、
前記第1の電極(301)と前記第2の電極(305〜307)との間に配置された少なくとも1つの有機材料層(302,303)と、
前記第2の電極(305〜307)上に配置され、外部光の反射率の低減、および前記少なくとも1つの有機材料層で生成された光のキャッピング層(308)を介したアウトカップリングの増加を提供する誘電体キャッピング層(308)と、
を有する有機発光デバイス。
【請求項2】
反射層(310)をさらに備える、請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
前記反射層(310)が、誘電体層および金属層のうちの1つ、好ましくはアルミニウム層および銀層のうちの1つを備える、請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記反射層(310)が、前記少なくとも1つの有機材料層(302,303)と反対の前記第1の電極の側面上に配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記第1の電極(301)がインジウム錫酸化物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記第2の電極(305〜307)が、LiF層、Al層、LiO層、CsF層、安息香酸Li、Liアセトネート、カルシウム層、マグネシウム層、チタン層、および銀層の1つまたはこれらの任意の組合わせを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
前記キャッピング層(308)の厚さが、外部光源からの光の反射率を前記光の異なる波長に対して低減させるように適合される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
前記キャッピング層(308)が、異なる屈折率を有する複数のキャッピング副層を備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
前記キャッピング副層の屈折率が、前記第1の電極(301)からの個々のキャッピング副層それぞれの距離に関して単調に増加または減少する、請求項8に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
前記キャッピング層(308)が異常分散を有する材料を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項11】
前記キャッピング層(308)が、PbSe、PbS、ZnSe、ZnS、PbTe、強誘電体材料および液晶材料のうちの1つまたは複数を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項12】
前記キャッピング層(308)が、第3の電極(405)と第4の電極(407)の間に配置される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機発光デバイス。
【請求項13】
第1の電極(301)と、第2の電極(305〜307)と、前記第1の電極(301)と前記第2の電極(305〜307)との間に配置された少なくとも1つの有機材料層(302,303)と、前記第1の電極(301)とは反対側の前記第2の電極(305〜307)上に配置され、前記少なくとも1つの有機材料層(302,303)内で生成された光を発するための前記第2の電極(305〜307)とは反対側の外側表面を備える誘電体キャッピング層(308)とを備える有機発光デバイスを製造するための方法であって、
前記第1の電極(301)を設けるステップと、
前記第1の電極(301)上に前記少なくとも1つの有機層(302,303)を形成するステップと、
前記少なくとも1つの有機層(302,303)上に前記第2の電極(305〜307)を形成するステップと、
前記第2の電極(305〜307)上に前記誘電体キャッピング層(308)を形成するステップであって、前記キャッピング層(308)は、
外部光の反射率が低減し、前記少なくとも1つの有機材料層(302,303)内で生成された光の前記キャッピング層(308)を介したアウトカップリングが増加する効果を与えるように選択されるステップと、
を有する方法。
【請求項14】
少なくとも2つの有機発光デバイスのアレイであって、
各有機発光デバイスが、
第1の電極(301)と、
第2の電極(305〜307)と、
前記第1の電極(301)と前記第2の電極(305〜307)との間に配置された少なくとも1つの有機材料層(302,303)と、
前記第1の電極(301)とは反対側の前記第2の電極(305〜307)上に配置され、前記少なくとも1つの有機材料層(302,303)内で生成された光を発するための外側表面を備える誘電体キャッピング層(308)と、
を有する多層構造を備え、
前記キャッピング層(308)が、外部光の反射率の低減、および前記少なくとも1つの有機材料層(302,303)で生成された光の前記キャッピング層(308)を介したアウトカップリングの増加を提供し、
前記少なくとも2つの有機発光デバイスが異なる色の光を発し、
前記少なくとも2つの有機発光デバイスそれぞれの前記キャッピング層(308)が、実質的に等しい厚さを有する、
少なくとも2つの有機発光デバイスのアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−521165(P2008−521165A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540734(P2007−540734)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003316
【国際公開番号】WO2006/054137
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】